説明

空気清浄機及び加湿器

【課題】従来品よりも集塵力、メンテナンス性及び動作の信頼性がより向上した、小型化可能な空気清浄機及び加湿機を提供すること。
【解決手段】波状に曲折した導電性フィルター及びロータを含むロータリーフィルターと、導電性フィルターとの間でコロナ放電を行なうための電極と、ロータリーフィルター等を収納するケーシングを具備する空気清浄機であって、ケーシング内部においてロータを空気吸入口側に配置し、ロータの支持部材に傾斜をつけてプロペラ様の作用を持たせた空気清浄機を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機及び加湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファンとフィルターを利用した空気清浄機が種々知られている。これらの原理は、ファンを用いて空気を強制的にフィルターに送り込んでフィルターを通過させることにより空気中の塵埃等をフィルターに捕捉させて空気を清浄化するものである。通常多く用いられている空気清浄機は、ファンとフィルターを完全に分離し、ファンによって風をフィルターに当てるタイプのものである。また、特開平8-206436号公報には、円筒状のシロッコファンの側壁部分をフィルターで構成し、羽根車を回転させて空気流を該円筒の内側から外側に、フィルターを通して流通させることにより空気清浄を行う空気清浄機も提案されている。
【0003】
本願発明者らは、先に、フィルターを波状に曲折させると共に該フィルター自体を回転させることにより、フィルターに羽根車の翼とフィルターの機能の両方を持たせることができ、このようにすることにより同一性能ならば従来の空気清浄機よりも小型化することができることを見出し、この原理に基づく空気清浄機及び加湿機を特許出願した(特開2001-120933号公報)。さらに、この先に出願した空気清浄機及び加湿機において、前記フィルターを導電性材料で構成すると共に特定の位置に電極を設け、フィルターと電極との間に電圧をかけることにより、空気清浄機及び加湿機の効率をさらに高めることができることを見出し、この原理に基づく空気清浄機及び加湿機について特許を取得している(特許第3350031号)。
【0004】
【特許文献1】特開平8-206436号公報
【特許文献2】特開2001-120933号公報
【特許文献3】特許第3350031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記特許文献3記載の空気清浄機及び加湿機の構成に改良を加え、集塵力、メンテナンス性及び動作の信頼性がより向上した、小型化可能な空気清浄機及び加湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、波状に曲折したリング状の導電性フィルターを保持させる部材を、円板ではなくリング状のロータとし、このロータとモータの軸とを、ひねりのある板状の支持部材で連結させ、この支持部材がケーシング内部において空気吸入口側に配置されるような構成とすること、すなわち、空気吸入口を天井側としてフィルター部分を横方向から見たときに、フィルターがロータに吊り下げられる方向でロータに取り付けられる構成とすることにより、支持部材の回転により風量を増大させて集塵力を向上させることができる等の有利な効果が奏されることを見出し、本願発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
リング状のロータと、
該ロータに取り付けられたリング状のフィルターユニットであって、該ロータの内側領域を囲包し、該ロータの半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された導電性フィルターを含むフィルターユニットと、
前記ロータを回転させるための回転手段と、
前記フィルターにより囲包された空間内に設けられた、前記フィルターとの間で連続的にコロナ放電を行なうための電極と、
該電極と前記フィルターの間に電圧を印加する手段と、
前記ロータ及び前記フィルターユニットを収納するケーシングであって、前記フィルターにより囲包される空間内に清浄すべき空気を外部より吸入する空気吸入口と、前記フィルターを通って排出されてきた空気を外部に排出する空気吹き出し口とを有するケーシングと
を具備し、
前記ロータは、ロータ回転軸に垂直な平面に対して傾斜を有するように設けられた板状の支持部材を介して前記回転手段の回転軸に連結し、前記ケーシング内部において、前記ロータが前記フィルターユニットの空気吸入口側に配置され、前記空気吸入口から吸入された空気は、前記ロータと前記支持部材により規定される開口部を通ってフィルターにより囲包される空間内に入る、空気清浄機を提供する。また、本発明は、上記本発明の空気清浄機における前記フィルターに水分を保持させた空気加湿機を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空気清浄機は、特許文献3の空気清浄機のようにフィルターが円板により下から支えられて回転する構造ではなく、フィルターが上部からロータに吊り下げられて回転する構造を有する(空気吸入口を上側にしてフィルターを水平方向に維持して見た場合)。このような構造にすることにより、以下のような有利な効果が奏される。
(1) 空気吸入口側にロータが位置するため、ロータの支持部材に傾斜をつけて飛行機のプロペラのように作用させることにより、フィルターを通過させるべき空気の吸入量を増加させ、集塵力を向上させることができる。
(2) 上部ケーシングの一部を分離してパネルとして着脱可能な構成にすることができ、フィルターや電極の交換が容易になる。
(3) 電極及び高圧発生器等の高圧部材を下部ケーシング側に固定し、かつ、摺動面を介することなく電極に直接的に高圧を伝えることが可能になる。そのため、動作の安定性及び信頼性が高まる。
(4) 電極及び高圧発生器等の高圧部材を下部ケーシング側に設けるので、人が触れるケーシング外面と電極の沿面距離を大きくとることができる。そのため、電極部周辺が埃で汚れても汚れを伝わって高圧電気がケーシング外面に漏れ難く、感電の危険性が低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の空気清浄機の基本原理を図1及び図2に基づき説明する。図1は、本発明に用いられるロータリーフィルター(フィルターユニットを取り付けたロータ)の斜視図であり、図2は本発明の空気清浄機又は加湿機の好ましい一例の分解斜視図である。
【0010】
図1に示すロータリーフィルター6は、フィルターユニットを保持するリング状のロータ10と、該ロータに取り付けられたリング状のフィルターユニット18で構成される。フィルターユニット18は、上部フィルター枠14及び下部フィルター枠16と、これらのフィルター枠の間に保持されるフィルター12とで構成される。上部フィルター枠14と下部フィルター枠16は、例えば図示される支柱17等の機械的な手段で連結することができる。フィルター12は、回転半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された形状を有する。各フィルター枠の幅は、フィルター12の波状構造全体の幅(すなわち図3中に示されるW)と同程度にすることが好ましい。清浄すべき空気は、後述するケーシングの空気吸入口からケーシング内部に取り込まれた後、フィルターにより囲包される空間内に入り、次いで、フィルターにより囲包される空間の外に向かってフィルターを通過して、ケーシングの空気排出口から排出される。
【0011】
なお、フィルター12の凹凸の形状は、図1及び図2においては、回転軸32を中心とした半径方向に放射状になっているが、外周側の先端(折れ曲がり部)が内周側の隣り合う2つの先端の(放射線上の)中央にある必要はなく、時計方向あるいは反時計方向にずれていても良い。すなわち、凹凸の形状は、図1及び図2に示される形状に限定されず、回転軸32を中心に外周側へ向かう放物線のような形状ないしは風車のような形状であっても良い。フィルターの曲折数(ひだの数)は特に限定されないが、外径310mm程度のフィルターの場合、通常100回〜400回程度である。フィルターの外径と内径の差は、フィルターにより囲包される空間内に電極を設けることができる程度の内径サイズを確保できればよく、特に限定されないが、外径310mm程度のフィルターの場合、通常50mm〜100mm程度である。内径は、特に限定されないが、200mm程度以上あることが好ましい。このようなフィルターの形状自体は、特許文献3に記載されるように公知である。
【0012】
ロータ10は、板状の支持部材8を介し、軸受34を経て回転手段の回転軸に連結する。支持部材8は、ロータの回転軸に垂直な平面に対して傾斜を有するようにして設けられる。例えば、板状の支持部材の全体を同一の角度で傾斜させたものであってもよいし、また、支持部材の一部にひねりを加えることで部分的に傾斜をつけたものであってもよい。図1に示す支持部材8は、ひねりを加えて傾斜をつけた例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、図示される支持部材8は、回転軸32を中心とした放射状の直線に沿った形状を有するが、これに限定されず、例えば回転軸32を中心に外周側へ向かう放物線に沿って湾曲した形状であってもよい。この支持部材は、航空機のプロペラのように作用し、空気をロータリーフィルター内部空間(フィルター12により囲包される空間であって、かつ、支持部材8よりも下側の空間を意味する)に送り込む方向(図1(a)中の矢印B)の風量を増加させる効果を奏する。従って、傾斜の方向は、ロータ回転時に矢印B方向の空気の流れが促進される方向に設定する。支持部材8の数は、特に限定されないが、強度の観点から3本以上が好ましく、また、製造及びメンテナンスの簡便さの観点からあまりに本数が多いものは好ましくなく、通常8本程度以下である。
【0013】
上記した各部材は、ケーシング内に収納されている。該ケーシングとしては、例えば、カタツムリ形状の隔壁により空気吹き出し口を1箇所にまとめたもの(図2参照)を好ましく採用することができる。図2に示す装置は、ロータリーフィルター6が鉛直方向(図1(b)の方向)に維持される縦置き型であるが、本発明の空気清浄機は、このような縦置き型に限定されず、ロータリーフィルター6が水平方向(図1(a)の方向)に維持される横置き型や、これら以外の方向に維持した型にして用いることもできる。ただし、設置スペースのコンパクト化等の観点からは、ロータリーフィルター6が鉛直方向ないしはそれに類する方向に維持される縦置き型が好ましい。なお、本明細書においては、説明の便宜上、ロータリーフィルター6をロータ10が上側となるように水平方向に維持した場合の位置関係に基づいて「上部」、「下部」、「上」、「下」、「上面」、「下面」等の言葉を用いることがあるが、このような表現は本発明の範囲を横置き型装置に限定するものではない。従って、上述した「上部フィルター枠」、「下部フィルター枠」という語も、ロータリーフィルターを上述のように水平方向に維持した場合における「上部」、「下部」をそれぞれ意味する。その他の部材に関するこれらの表現も同様である。
【0014】
本発明の好ましい態様の一例である縦置き型空気清浄機の基本原理について、図2〜4に基づいて説明する(電圧印加手段については後述する)。図2は分解図であるが、組み立てる場合には、一点鎖線で示される位置が一本の直線上に来るように配置される。図3及び図4は、図2に示される空気清浄機の模式断面図であり、ロータリーフィルター6をロータ10が上側となるようにして水平方向に維持した状態(横置き状態)で観察した図を示す。この状態では、空気吸入口24が上側に、回転手段(図中のモータ30)が下側に位置する。
【0015】
本発明の空気清浄機は、図3に示す方向から見たときに、フィルターがロータに吊り下げられる状態で保持されることを特徴とする。図3は、このような本発明の特徴を明瞭に示す目的で、構成の一部を省略して極めて簡潔に記載されている。図4にはより具体的な製品の模式断面図を示す。
【0016】
この具体例では、ケーシングは上部ケーシング20と下部ケーシング22とで構成される。上部ケーシング20の上面には、ロータリーフィルター内部空間に空気を吸入するための空気吸入口24が設けられ、また、下部ケーシング22には、ロータリーフィルター6を部分的に囲包する形状の隔壁26が設けられる。該隔壁26は、ロータリーフィルター6を完全に囲包せず、一部がケーシング外部に開口して空気吹き出し口28(図4)となっている。ロータリーフィルター6は隔壁26の内側に収容される。回転手段であるモータ30は、下部ケーシング側に設けられる。図3に示されるように、下部ケーシング22は2段構造であり、図4に示されるように、モータ30は下部ケーシング22内部に固定される(図3ではこの点は省略されている)。
【0017】
図2〜4の具体例において、上部ケーシング20は、その一部がパネル21として分離可能になっている。このように、上部ケーシング20において、ロータリーフィルター6の上面に位置する一部分を着脱可能なパネル21とすることで、ロータリーフィルター6や後述する高圧電極50の取り外しが容易となり、フィルター及び電極の交換作業が容易になるので好ましい。なお、上述した通り、上部ケーシング20において、ロータリーフィルター6の上面部分には空気吸入口24が設けられるので、パネル21が形成される場合、空気吸入口24は該パネル21に設けられることになる。
【0018】
下部フィルター枠16と下部ケーシング22との間の間隙40が大きくなると、フィルター12を通過せずに間隙40を通過して排出される空気の量が多くなってしまうため、空気を清浄化する効率が低下する。従って、間隙40は十分に狭くすることが好ましい。
【0019】
本発明の空気清浄機では、フィルター12は導電性である。そして、本発明の空気清浄機は、該導電性フィルター12との間で連続的にコロナ放電を行なうための電極と、該電極及びフィルター12の間に電圧を印加する手段(以下、「電圧印加手段」ということがある)とをさらに具備する。これは、例えば、フィルターをアースし、電極に高電位を付与するものであって良いし、あるいは、フィルターと電極とのそれぞれに反対の極性の電位を付与するものであってもよい。電極とフィルターの間の電圧は、特に限定されないが、5kV〜20kV程度が適当である。なお、電極に付与する電位はプラスでもマイナスでもよい。
【0020】
フィルター12に導電性材料を含ませることにより、フィルター12に導電性を付与することができる。導電性材料としては、例えば、活性炭素、炭素、銅、ステンレス、錫、ニッケル、亜鉛、チタン等の粒子又は繊維が挙げられるが、これらに限定されない。このような導電性材料をフィルター12の一部又は全部に用いてフィルターを構成したり、あるいは、錫、ニッケル、亜鉛等の金属を含有する周知の導電性塗料をフィルター表面に塗布したり、該導電性塗料中にフィルターを含浸させること等によって、導電性のフィルターを得ることができる。より具体的には、例えば、層状の活性炭を市販の不織布で両側から挟み込んだものをフィルター素材として用いることができるが、これに限定されない。
【0021】
以下、電極と電圧印加手段について、図3〜5に基づき本発明を説明する。図3及び4は、フィルターをアースする具体例である。なお、図3及び4中に示される電極及び電圧印加手段も、他の各部材と同様に、本発明の好ましい一例を示すものであり、本発明の範囲は図3及び4中に具体的に示される形状及び構造等に限定されるものではない。
【0022】
高圧電極50を設ける位置は、ケーシング内の、ロータリーフィルター内部空間である。すなわち、下部ケーシング22の隔壁26内であって、フィルター12により囲包され、かつ、支持部材8よりも下側の空間内である。この空間内に位置するようにして、下部ケーシング22上に高圧電極50が取り付けられる。このような構成にすると、高圧電極50に電位を付与するための高圧発生器54を下部ケーシング22側に固定でき、さらに、摺動面を介することなく直接高圧電極50に高圧を伝えることができる。そのため、特許文献3に記載されるような、上部ケーシング側に高圧発生器を設ける構成とは異なり、フィルター交換時の高圧発生器の着脱が不要になるので、装置の信頼性が高まる。また、上部ケーシング側に高圧電極を設ける構成よりも、ケーシング外面との沿面距離をとることができるので、高圧電極部周辺が塵埃で汚れた時に高圧が汚れを伝わってケーシング外面に達して起きる感電を防ぐことができる。高圧電極50とフィルター12との間に高電圧をかけることにより、高圧電極50とフィルター12との間でコロナ放電が起きる。後述するように、フィルター12により清浄すべき空気は、フィルター通過前にこの放電空間を通過することになるため、清浄すべき空気中に含まれる埃が帯電してフィルターに付着し易くなり、結果として空気清浄機の集塵効果が向上する。
【0023】
図2〜4に示される具体例では、高圧電極50はリング状であり、ホルダー52に支持されたリング状の電線から成る(図5)。高圧発生器54は、下部ケーシング22側に設けられる。ホルダー52の足の一つを高圧発生器54に接続するための接点51として構成し、端子56が存在する下部ケーシング22側の接点53と合わせて取り付けることで、高圧電極50が端子56及び高圧電線58を経て高圧発生器54と電気的に接続する。
【0024】
高圧電極をリング状とし、ロータリーフィルターの回転中心点とリング状電極の中心点とを合わせて配置することにより、回転動作中も、フィルターと、ケーシングに固定された高圧電極との距離を一定に保つことができるので、フィルターとの間で均一に電荷を印加することができ好ましい。リングの大きさは、フィルター12の内周側折れ曲がり部に近接するサイズが好ましく、特に限定されないが、通常、フィルター12内径の2分の1以上の直径を有するサイズであればよい。ただし、電極の形状はリング状に限定されず、フィルターと電極との距離を一定に保つことができる形状の電極であれば、リング状の電線から成る電極と同様に好ましく、例えば円筒状の電極等も好ましく用いることができる。なお、高圧電極は消耗部品であるため、下部ケーシング22から着脱可能に取り付けられている。図示の例では、パネル21を外してロータリーフィルター6を取り外せば、高圧電極50をホルダー52ごと着脱することができる。
【0025】
図3及び4の具体例では、上部フィルター枠14の下部面側には、図1(b)に太線で示すように、フィルター12と接触するように導電塗料60が塗布されている。導電塗料60は塗布時には液体なので、例えば上述したように、活性炭層等の導電性層を不織布等で挟み込んだ素材でフィルター12が構成されていても、図1(b)のように塗布すれば、フィルターの内部にまで導電塗料が浸み込んで導電性層と繋がることができる。図1(b)に示される導電塗料60は、一部において(図1中の*印)上部フィルター枠14の側面を通って上面側へと繋がっており、上面側においては、図1(a)及び図3に示されるように、上部フィルター枠14、ロータ10、支持部材8、フランジ部36の穴38にわたって線状に塗布されている。穴38の内部において、軸受34と導電塗料60が繋がっている。軸受34は、金属等の導電性材料から成るので、導電塗料60及び軸受34を介して導電性フィルター12とモータ軸(回転軸32)が電気的に繋がった状態となる。このモータ軸は、ベアリングを介してモータケーシングと電気的に繋がっている(ベアリング及びモータケーシングは図3中では省略されている)。従って、モータケーシングをアースすることにより、フィルターのアースが達成され、フィルターの電位を0Vとすることができる。
【0026】
使用時には、モータ30を回転させることにより、ロータ10及びフィルター12を回転させると共に高圧発生器54に高電圧を発生させ、高圧電極50に電位を付与する。モータ30の回転速度は、特に限定されず、フィルターの形状や装置の寸法により適宜選択されるが、通常、50〜3000rpm程度、好ましくは100〜1000rpm程度である。そうすると、フィルター12は、図示の通り波状に曲折しているので、フィルター12が羽根車の翼として機能して風が起こり、フィルター12により囲包された、ロータリーフィルター内部空間中に存在する空気は、フィルター12を通過して、下部ケーシング22の側面に設けられた空気吹き出し口28から吹き出される。これと同時に、上部ケーシング20の上面(図示の例ではパネル21に設けられた空気吸入口24)から空気が吸入される(図4(b)中の矢印C(吸入空気)、矢印D(吹き出し空気)参照)。ここで、ロータの回転により、ひねりを有する支持部材8が飛行機のプロペラのように作用するので、ロータリーフィルター内部空間への空気の吸入が促進される。なお、フィルター12は、空気を通すものであるが、フィルター12の回転速度が大きいため、フィルター12の空気抵抗によりフィルター12が羽根車の翼の役割を果たすことができる。このように、フィルター12により囲包されるロータリーフィルター内部空間中に位置する空気が、フィルター12を通過した後外部に排出されるので、外部に排出される空気はフィルター12を通過することにより清浄されたものとなる。さらに、高圧発生器54により大きな電位が付与された高圧電極50と、アースされたフィルター12との間で、コロナ放電が起きるので、ロータリーフィルター内部空間に位置する、清浄すべき空気は、放電空間を通過してからフィルター12を通過する。これにより、清浄すべき空気中に含まれる埃が帯電してフィルターに付着し易くなるので、空気清浄効果が一層高まる。また、放電空間ではオゾンが発生して臭い成分が分解されるため、フィルターによる臭い成分の吸着とあわせて消臭効果も一層高まる。
【0027】
なお、オゾンは高濃度では有害であるが、この分野で公知の通り、活性炭と接触させることにより、オゾンを無害な炭酸ガスに分解することができる。フィルター12にオゾン分解作用を有する材料を含ませることで、オゾンを好ましく分解することができる。オゾン分解作用を有する素材はこの分野で公知であり、例えば活性炭等が挙げられる。活性炭は上述の通り導電性材料であるから、例えば上述のように活性炭層を不織布で挟み込む等の方法で、フィルター12に活性炭を含ませることにより、フィルター12に導電性とオゾン分解性を同時に付与することができ好ましい。
【0028】
上記したフィルターをアースする態様の空気清浄機を作製し、1 m3の密閉チャンバー内で運転して発生するオゾンの量を調べたところ、運転開始から24時間後でもオゾン濃度は0.05 ppm未満と極めて低かった。
【0029】
なお、上述した通り、本発明の空気清浄機は、フィルターをアースする態様に限定されず、フィルターと電極とのそれぞれに反対の極性の電位を付与するものであってもよい。例えば、上部フィルター枠14又は下部フィルター枠16の表面に導電性材料から成る帯状のラインを環状に設け、導電塗料の塗布等によりフィルター12と該ラインを電気的に接続し、かつ、該ラインに接するようにして導電性ブラシをケーシング上に設け、この導電性ブラシを高圧発生器に接続させることで、回転の摺動面を介してフィルターに電位を付与することができる。
【0030】
以上では、空気清浄機について説明したが、上記フィルター12に水分を保持させることにより、上記の空気清浄機を加湿機とすることができる。これは、例えば、フィルター12に、図示しない吸水管からシャワー状に水を連続的に吹き付けること等により容易に達成することができる。このようなフィルター12を用いると、フィルター12を通過する際に空気が水分を吸収するので、空気清浄と加湿の両方を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明で用いられるロータリーフィルターの好ましい一例を示す図である。矢印Aはロータリーフィルターの回転方向、矢印Bは空気の流れる方向を示す。
【図2】本発明の空気清浄機の好ましい一実施例を示す分解斜視図である。
【図3】フィルターをアースし、電極に高電位を付与することにより、フィルターと電極の間に高電圧を印加する本発明の空気清浄機の好ましい1具体例を示す模式断面図である。
【図4】図3に示す模式断面図をより具体的に記載した図である。
【図5】本発明で用いられる電極の好ましい一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
6 ロータリーフィルター
8 支持部材
10 ロータ
12 フィルター
14 上部フィルター枠
16 下部フィルター枠
17 支柱
18 フィルターユニット
20 上部ケーシング
21 パネル
22 下部ケーシング
24 空気吸入口
26 隔壁
28 空気吹き出し口
30 モータ
32 回転軸
34 軸受
36 フランジ部
38 穴
40 間隙
50 高圧電極
51 ホルダー側接点
52 ホルダー
53 下部ケーシング側接点
54 高圧発生器
56 端子
58 高圧電線
60 導電塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状のロータと、
該ロータに取り付けられたリング状のフィルターユニットであって、該ロータの内側領域を囲包し、該ロータの半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された導電性フィルターを含むフィルターユニットと、
前記ロータを回転させるための回転手段と、
前記フィルターにより囲包された空間内に設けられた、前記フィルターとの間で連続的にコロナ放電を行なうための電極と、
該電極と前記フィルターの間に電圧を印加する手段と、
前記ロータ及び前記フィルターユニットを収納するケーシングであって、前記フィルターにより囲包される空間内に清浄すべき空気を外部より吸入する空気吸入口と、前記フィルターを通って排出されてきた空気を外部に排出する空気吹き出し口とを有するケーシングと
を具備し、
前記ロータは、ロータ回転軸に垂直な平面に対して傾斜を有するように設けられた板状の支持部材を介して前記回転手段の回転軸に連結し、前記ケーシング内部において、前記ロータが前記フィルターユニットの空気吸入口側に配置され、前記空気吸入口から吸入された空気は、前記ロータと前記支持部材により規定される開口部を通ってフィルターにより囲包される空間内に入る、空気清浄機。
【請求項2】
前記フィルターがアースされている請求項1記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記フィルターが活性炭を含む請求項1又は2記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記電極は、前記フィルターの内径の2分の1以上のサイズの直径を有するリング状であり、リングの中心点が前記フィルターの回転軸と一致するように設けられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気清浄機における前記フィルターに水分を保持させた空気加湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202051(P2009−202051A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44279(P2008−44279)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000129194)株式会社カンキョー (1)
【Fターム(参考)】