説明

空気清浄機

【課題】小型化及び静音化を達成することができる空気清浄機を提供する。
【解決手段】イオン化線2及び対向電極3からなるイオン化部4を備えた空気清浄機1であって、前記対向電極3の表面が、交換可能な伝導性膜30又は多孔性膜で被覆されるとともに、ファンブレードの形状を呈するとともに回転可能に構成されており、当該対向電極3の回転により送風される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄機に関する。さらに詳しくは、空気中の粉塵を帯電させて捕集する空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気集塵機能を有する空気清浄機は、装置内を通過する空気中に含まれる粉塵を、イオン化部において放出される電荷によってプラス又はマイナスに帯電させ、この帯電した粉塵を、イオン化部の後段に配置された集塵極板又はエレクトレットフィルタで捕捉することを基本構成としている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−57119号公報
【特許文献2】特開2005−342142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気清浄機の場合、当該空気清浄機を構成する要素ないしは部材としてイオン化部及び集塵部のほかに、装置内に空気を吸い込むとともに清浄にした空気を装置外に吹き出すための送風機が必要になるため、装置が大型化するという問題がある。
【0005】
また、イオン化部の後段にエレクトレットフィルタを配置する場合、このエレクトレットフィルタは送風経路をさえぎるように配設されることから当該フィルタによる圧力損失が大きくなるので、送風量を確保するために送風機の回転数を多くする必要があり、騒音が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型化及び静音化を達成することができる空気清浄機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気清浄機は、イオン化部及び対向電極からなる電気集塵部を備えた空気清浄機であって、
前記対向電極がファンブレードの形状を呈するとともに回転可能に構成されており、当該対向電極の回転により送風されることを特徴としている。
【0008】
本発明の空気清浄機では、電気集塵部を構成する対向電極がファンブレードの形状を呈するとともに回転可能に構成されているので、当該対向電極をモータなどにより回転させることで、送風機としても機能させることができる。したがって、送風機を別途用意する必要がないので、装置を小型化することができる。また、集塵機能を有する対向電極がファンブレードの形状を呈している、換言すれば、ファンブレードの形状に沿って集塵部が配設されている。このため、送風経路をさえぎるように配置されていた従来のフィルタとは異なり、送風経路をさえぎることがないので、圧力損失が小さくなる。その結果、少ない回転数で大きな風量を流すことが可能になり、装置の静音化を達成することができる。
【0009】
前記対向電極の表面が、交換可能な導電性膜又は多孔性膜で被覆されているのが好ましい。この場合、帯電した粉塵は導電性膜又は多孔性膜に捕捉されるので、これらの膜を定期的に交換するだけで集塵機能を維持することができ、メンテナンスが容易である。
【0010】
前記対向電極の接地が、導電性を有する磁性体からなる対向電極側接点と、導電性を有する磁性体からなる接地側接点との間の空隙に満たされた、導電性の磁性粉体若しくは粒子又は導電性の磁性流体を介して行われるのが好ましい。この場合、従来のスリップリングのように接点とブラシにより電気が流されるのではなく、対向電極側接点と接地側接点との間の空隙に満たされた、導電性の磁性粉体若しくは粒子又は導電性の磁性流体を介して電気が流されるので、接点において発生する音を小さくして装置の静音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の空気清浄機の一実施の形態の説明図である。
【図2】図1に示される空気清浄機における、対向電極であるファンブレードの説明図である。
【図3】回転板の回転軸付近の説明図である。
【図4】ファンブレードに被覆される導電性膜の説明図である。
【図5】ファンブレードに被覆される導電性膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の空気清浄機の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る空気清浄機1の説明図である。この空気清浄機1は、イオン化部としてのイオン化線(放電電極)2及び対向電極3からなる電気集塵部4を備えており、この電気集塵部4はケーシング6内に収容されている。
【0013】
ケーシング6は、合成樹脂や金属などで作製された直方体形状の筐体であり、その前面には矩形状の吸込口7が形成されており、また、その上面には同じく矩形状の吹出口8が形成されている。吸込口7及び吹出口8には、それぞれ指入れを規制する桟部材7a及び8aが設けられている。また、吸込口7の桟部材7aの機内側には、当該桟部材7aから所定距離だけ離間してプレフィルタ9が配設されている。吸込口7から吸い込まれる空気中の埃や粉塵のうち大きなものは、このプレフィルタ9により捕捉される。
【0014】
イオン化線2は、図2に示されるように、リング形状を呈しており、その中心が後述するモータの軸の軸心とほぼ一致するように、前記プレフィルタ9の更に機内側に配設されている。イオン化線2から対向電極3に向けて電荷が放出され、この電荷によって空気中の粉塵がプラス又マイナスに帯電される。なお、イオン化線2と対向電極3との間に高電圧を印加するための高電圧印加ユニットについては、図示を省略している。
【0015】
本実施の形態における対向電極3は、シロッコファンのファンブレードに類似した形状を呈しており、図2に示されるように、回転方向前方側が凹面とされた複数のファンブレードから構成されている。複数のファンブレードは、導電性を有する円形の回転板13の周縁部において等間隔に配置されている。回転板13の中央には、円柱状の回転軸13aが設けられており、この回転軸13aの一端の穴部13b内にモータ11の出力軸12の先端部が圧入されている。これにより、モータ11が回転すると、回転板13及び当該回転板13に配設されている対向電極であるファンブレードが回転するように構成されている。イオン化線2、対向電極3及び回転板13は、ファンケーシング10内に収容されており、対向電極(ファンブレード)3の回転によりつくられる空気の流れは、当該ファンケーシング10の吐出路10a、前記吹出口8を通って機外に排出される。また、対向電極(ファンブレード)3の回転により、空気清浄機1が設置されている部屋の空気は、吸込口7から機内に吸い込まれ、プレフィルタ9を通過して、イオン化線2及び対向電極3からなる電気集塵部4に導かれる。
【0016】
前記回転軸13aの他端(モータ11の出力軸12が連結される側と反対側の端部)には、図3に示されるように、磁化された磁性体である短円柱形状の磁石(永久磁石)20が配設されており、この磁石20の先端面(後述する磁石21と対向する対向面)は、有底短円筒形状の回転軸側低抵抗部材22で覆われている。回転軸側低抵抗部材22には、対向電極3又は回転板13からの配線26が接続されている。回転軸側低抵抗部材22は、導電体である銅で作製されている。回転軸側低抵抗部材22は、磁石20と密接しているので、当該回転軸側低抵抗部材22を磁力線が通過可能である。また、回転軸側低抵抗部材22は、導電性を有する銅で作製されているので、イオン化線2からファンブレードに発せられた電荷をアースへ流す(逃がす)ことができる。
【0017】
前記磁石20と対向して軸方向に所定距離だけ離れた位置に、磁石(永久磁石)21が配設されている。磁石20と磁石21は、互いに異なる極性が対向するように選定される。これにより、磁石20と磁石21との間の空隙には、磁場が形成される。
【0018】
磁石21の先端面(磁石20と対向する対向面)も、前記磁石20と同様に、有底短円筒形状のアース側低抵抗部材23で覆われている。アース側低抵抗部材23には、ケーシング6内に配設された電源プリント板16からのアース線14が接続されている。アース側低抵抗部材23は、導電体である銅で作製されている。アース側低抵抗部材23は、磁石21と密接しているので、当該アース側低抵抗部材23を磁力線が通過可能である。また、アース側低抵抗部材23は、導電性を有する銅で作製されているので、イオン化線2からファンブレードに発せられた電荷をアースへ流す(逃がす)ことができる。
【0019】
磁石20と磁石21との間の空隙、より正確には回転軸側低抵抗部材22とアース側低抵抗部材23との空隙Gには、導電性を有する磁性体からなる粉体又は粒子24が、接点間を連結するに足る量だけ満たされている。前述したように、回転軸側低抵抗部材22及びアース側低抵抗部材23は、磁化された磁性体である磁石に密接しているので、両低抵抗部材22、23を磁力線が通過することができる。したがって、両接点20、21間の空隙Gには磁場が形成されるので、この空隙Gに磁性体からなる粉体又は粒子24を満たすと、これら粉体又は粒子24は磁力によって空隙G間に保持される。また、両低抵抗部材22、23及び粉体又は粒子24は導電性を有しているので、粉体又は粒子24を介して接点20と接点21とを電気的に接続することができ、帯電した粉塵から対向電極であるファンブレードに移った電荷をアース線14に導くことができる。なお、導電性を有する磁性体からなる粉体又は粒子に代えて、例えば導電性を有する磁性流体を用いることもできる。
【0020】
このように、本実施の形態では、対向電極の接地が、導電性を有する磁性体からなる対向電極側接点と、導電性を有する磁性体からなる接地側接点との間の空隙に満たされた、導電性の磁性粉体若しくは粒子又は導電性の磁性流体を介して行われている。すなわち、従来のスリップリングのように接点とブラシにより電気(電荷)を流すのではなく、両接点間の空隙に満たされた、導電性の磁性粉体若しくは粒子又は導電性の磁性流体を介して電気を流すので、接点において発生する音を小さくして装置の静音化を図ることができる。
【0021】
前記磁石20、21として、例えばネオジウム磁石(電気抵抗が約130×10-6Ω・cm)やサマコバ磁石(電気抵抗が約86×10-6Ω・cm)などの電気抵抗の小さな磁石を用いると、前述した低抵抗部材22、23を設けなくても、回転軸側接点(磁石)とアース側接点(磁石)とを電気的に接続することができる。
【0022】
粉体又は粒子24の材質は、導電性を有する磁性体である限り、本発明において特に限定されるものではないが、例えば、銅と鉄からなる銅鉄合金、銅、鉄及びニッケルからなる合金(クニフェ)などを用いることができる。これらのうち銅鉄合金を用いた場合、鉄により磁性体としての機能を確保し、銅により導電性を確保することができる。純粋な鉄は、導電性を有しているが、使用環境により酸化されて酸化鉄になると絶縁体となるため、酸化されて酸化銅になっても導電性を維持することができる銅を成分として含んでいることで、長期に亘り磁性体としての機能及び導電性を確保することができる。
【0023】
粉体又は粒子24は、例えば前記合金を研磨又は研削することで得ることができ、そのサイズは、空隙Gの大きさや磁場の強さなどに応じて適宜選定することができ、本発明において特に限定されるものではないが、概ね1〜200μmが目安である。
【0024】
前記空隙Gの大きさは、粉体又は粒子24のサイズ、空隙Gにおける磁場の強さ、接点同士の接触の可能性などを考慮して選定されるが、通常、1〜5mmの範囲で選定される。この範囲内の空隙Gであると、接点同士の接触の可能性を回避しつつ、磁性体からなる粉体又は粒子24で空隙Gを満たして両接点20、21間を確実に電気的に接続することができる。
【0025】
本実施の形態では、図4〜5に示されるように、ファンブレード形状の対向電極3全体が交換可能な導電性膜30で覆われている。このため、イオン化線3において放出される電荷により帯電させられた粉塵は、前記導電性膜30により捕捉される。したがって、かかる導電性膜30を定期的に交換することにより、対向電極3を洗浄しなくても、長期に亘り集塵機能を維持することができるので、メンテナンスが容易である。この導電性膜30は、例えばABSなどの合成樹脂に炭素を混入させた帯電防止樹脂又は導電性樹脂で作製することができる。その厚さは、本発明において、特に限定されるものではないが、概ね1〜2mm程度とすることができる。なお、導電性膜30は、導電性を有している限り、他の材料、例えばアルミ箔などの金属箔で作製することもできる。
【0026】
また、導電性膜30に代えて、紙やHEPAフィルタのような微少な空隙を有する多孔性膜を用いることもできる。導電性膜30の場合、帯電した粉塵は、対向電極3に引き寄せられて当該導電性膜30に捕捉される。これに対し多孔性膜の場合は、微少な空隙が存在するため、帯電した粉塵が対向電極3に引き寄せられる電気的吸引力は維持され、対向電極3に引き寄せられる粉塵は、多孔性膜を構成する紙などの繊維により捕捉される。したがって、導電性膜30の場合も多孔性膜の場合も、帯電した粉塵が対向電極3に付着することはなく、当該導電性膜30や多孔性膜に捕捉される。
【0027】
〔その他の変形例〕
なお、前述した実施の形態は単なる例示に過ぎず、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。例えば、前述した実施の形態では、対向電極をシロッコファンのファンブレードに類似した形状としているが、他のファンブレードに類似した形状とすることもできる。
【0028】
また、前述した実施の形態では、イオン化部としてリング状のイオン化線を用いているが、針形状のものを用いることもできる。
【0029】
また、前述した実施の形態では、回転軸側低抵抗部材及びアース側低抵抗部材の両方を磁化された磁性体である磁石(永久磁石)に密接させているが、いずれか一方だけを磁石に密接させることもできる。この場合でも、磁石と密接していない方の低抵抗部材に密接して磁性体を配設することで、両接点間の空隙に磁場を形成することができ、この空隙に磁性体からなる粉体又は粒子を保持させることができる。
【0030】
また、前述した実施の形態では、低抵抗部材に密接させた磁石によって形成した磁場を利用して磁性体からなる粉体又は粒子を両接点間の空隙に保持させているが、磁石を用いることなく、導電性を有し且つ磁化された磁性体からなる粉体又は粒子を両接点間の空隙に満たすこともできる。この場合、磁石を省略することができるので、構成を簡略化することができる。
【0031】
また、前述した実施の形態では、磁化された磁性体として永久磁石を用いているが、これに限定されるものではなく、永久磁石に代えて電磁石を用いることもできる。
【0032】
また、前述した実施の形態では、磁石の先端面に低抵抗部材を配設しているが、磁石としてネオジウム磁石などのように低抵抗のものを用いると、かかる低抵抗部材を省略することができる。この場合、磁石自体が接点を構成することになる。
【符号の説明】
【0033】
1 空気清浄機
2 イオン化線(イオン化部)
3 対向電極
4 電気集塵部
6 ケーシング
7 吸込口
8 吹出口
9 プレフィルタ
10 ファンケーシング
11 モータ
12 出力軸
13 回転板
13a 回転軸
14 アース線
15 電源プリント板
20 磁石
21 磁石
22 低抵抗部材
23 低抵抗部材
24 粉体又は粒体
30 導電性膜
G 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化部(2)及び対向電極(3)からなる電気集塵部(4)を備えた空気清浄機(1)であって、
前記対向電極(3)がファンブレードの形状を呈するとともに回転可能に構成されており、当該対向電極(3)の回転により送風されることを特徴とする空気清浄機(1)。
【請求項2】
前記対向電極(3)の表面が、交換可能な導電性膜(30)又は多孔性膜で被覆されている請求項1に記載の空気清浄機(1)。
【請求項3】
前記対向電極(3)の接地が、導電性を有する磁性体からなる対向電極側接点(22)と、導電性を有する磁性体からなる接地側接点(23)との間の空隙(G)に満たされた、導電性の磁性粉体若しくは粒子(24)又は導電性の磁性流体を介して行われる請求項1又は2に記載の空気清浄機(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−88035(P2011−88035A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241502(P2009−241502)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】