説明

空気清浄用部品および電子機器

【課題】本発明は、空気清浄用部品として光触媒を使用したパソコンや液晶表示装置などの装置について、光触媒が表面に露出しているために、光触媒の酸化作用により、装置に使用されている筐体やリード線などの部品が酸化、腐食し、装置の動作などに不具合が生じるのを防ぐことを目的とする。
【解決手段】本発明の空気清浄用部品20は、連通した通気穴を有する絶縁物よりなる外装体2、外装体2の通気穴中に配置される光触媒1を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いた空気清浄用部品およびそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンは低コスト太陽電池等の用途に研究されてきたが、バンドギャップの大きさに起因して変換効率が悪いため実用化されていない。しかし、近年このバンドギャップの大きさを利用して有機物を分解する光触媒として注目されており、すでに家屋の外壁用タイルなどでは実用化されている。
【0003】
この光触媒をランプや液晶テレビなどに使用して、これらの機器に悪影響を及ぼす有機物を分解する方法も多々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1、2では基板の上に酸化ケイ素などの膜を形成し、その上に光触媒を形成する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3、4では液晶パネルなどのディスプレイの表面や偏光フィルムのなかに光触媒を置き、パネル表面に付着する汚染物を分解することで表面を正常に保つ方法が提案されている。特許文献5においては、タッチパネルの表面に光触媒を使用する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献6、7においては、液晶表示装置のバックライトの部分に光触媒を用いて空気中の汚染物による輝度の低下などを防ぐ方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−129012号公報
【特許文献2】特許第3772388号公報
【特許文献3】特開2000−214327号公報
【特許文献4】特開2000−260355号公報
【特許文献5】特開2004−118747号公報
【特許文献6】特開2005−17414号公報
【特許文献7】特開2005−227542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの発明には何れも共通した問題がある。
【0009】
特許文献3〜7については、光触媒の酸化作用によりディスプレイの部品自身が酸化され破壊されてしまう。例えば、特許文献3では偏光フィルムの中に光触媒を含有させているが、光触媒の酸化作用で偏光フィルムが分解され壊れてしまう。また、他の例でも光触媒が表面に大きく露出しているために、水滴や導電性の異物などが付着して、樹脂製の筐体や導線などと接触した場合にこれらが酸化し腐食してしまうことが予想される。
【0010】
これに対して、特許文献1、2では、基板の上に酸化ケイ素などの膜を形成し、その上に光触媒を形成している。この方法では、基板と光触媒の間に絶縁物の膜を形成しているため、基板が光触媒により酸化、腐食することは防がれている。しかし、これらの発明も光触媒が表面に露出している。このため、この発明を例えば液晶パネルのバックライト用蛍光管などで小型化を要求される場所に使用すると、次のような問題が発生する。
【0011】
すなわち、蛍光管の表面に金属異物などの導電性の異物が付着し、該異物がさらに筐体やリード線などと接触した場合に、これらの部品が光触媒の酸化作用により酸化、腐食し製品として致命的な故障を起こす可能性がある。
【0012】
この発明はこのような課題を解決するためになされたもので、光触媒を使用した装置について、光触媒の酸化作用により部品が酸化、腐食するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の空気清浄用部品は、連通した通気穴を有する絶縁物よりなる外装体、外装体の通気穴中に配置される光触媒を備えて構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気清浄用部品の光触媒は、周辺部が絶縁物である外装体により覆われているために、異物や水滴などが光触媒に付着した場合でも、光触媒の酸化作用により部品が酸化、腐食するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0016】
<実施の形態1>
(構成)
本実施の形態はパソコンの吸気口部に当発明の空気清浄用部品を適用したものである。その構成を、図1〜3を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る、空気清浄用部品20の構成図を示す。左側に正面図、右側に正面図のA方向から見た側面図を示す。
【0018】
光触媒1は、粉末の酸化チタンを元に焼結法により形成され、多孔質である。光触媒1の形状や大きさは用途により任意である。ここでは、厚さ1mm、直径3cm、の円盤状とする。また、光触媒1は酸化チタンに限らず、酸化亜鉛あるいはそれらの混合で形成されても良い。
【0019】
この光触媒1は、図1に示すように、内径5cm、長さ3cm位の連通した通気穴を有する短い円柱管状の透光性絶縁物2(ガラス(酸化ケイ素)製)の中央に設置され、溶着などの方法で固定される。すなわち、透光性絶縁物2が光触媒1の外装体となる。また、透光性絶縁物2は酸化ケイ素に限らず、酸化アルミニウムや窒化ケイ素あるいはそれらの混合で形成されてもよい。
【0020】
図2は、パソコン21の吸気口部に、空気清浄用部品20を設置した場合の斜視図を示す。また、図3は図2に示したパソコン21について、B方向から見た側面図を示す。
【0021】
パソコン21は操作面側に吸気口部を有し、該吸気口部の表面には異物よけのためのカバー3が設置されている。また、パソコン21の内部について、カバー3の後方に空気清浄用部品20が設置されており、さらに空気清浄用部品20の後方に、光触媒1を活性化させるためのライト4が設置されている。空気清浄用部品20の設置場所は、操作面側に限らず任意である。
【0022】
パソコン21の反操作面側には、内部の発熱を放出するための排気ファン5が設置されている。
【0023】
(動作)
次に、動作の説明を行う。
【0024】
排気ファン5が動作されることにより、吸気口に設置された光触媒1を介して空気が吸気される。また、光触媒1は、ライト4から光が照射されることにより、活性化される。光触媒1は透光性である透光性絶縁物2に設置されているため、光の照射を受けやすい。吸気される空気は、空気中の有機物が分解された後装置内に吸気され、パソコン21内部を通過し、排気ファン5より排出される。
【0025】
(効果)
当発明の空気清浄用部品20を用いたパソコン21は、空気中の有機物を分解したのち装置内に吸気されるため、装置内の部品が清浄に保たれる。例えば、家庭などではホルムアルデヒドや酢酸(食酢)など有機物が存在することが予想されるが、これらが光触媒1により分解されるため、装置内のICや回路基板などの腐食を防止できる。
【0026】
また、異物や水滴などが光触媒1に付着した場合でも、光触媒1の周辺部が絶縁物である透光性絶縁物2により覆われているために、筐体12の樹脂やリード線などのパソコン21の部品を損傷することはない。
【0027】
なお、本実施の形態の空気清浄用部品20はパソコン21に使用しているが、このような部品を例えばビルなどの排気管や、浴室の換気扇、エアコンなどの吸気側に設けて、自身の機器内やそれが設置された室内を空気清浄し、各電子機器の寿命を延長したり、清掃頻度を減らすことも可能である。
【0028】
<実施の形態2>
(構成)
本実施の形態は液晶表示装置に当発明の空気清浄用部品を適用したものである。その構成を、図4〜6を用いて説明する。
【0029】
図4は、本実施の形態に係る空気清浄用部品22の構成図を示す。左側に正面図、右側に正面図のC方向から見た側面図を示す。
【0030】
長さ20mm、幅10mm、厚さ0.3mmのガラス基板上に直径0.4mm、長さ5mm程度の円柱状で多孔質な光触媒1(酸化チタンまたは酸化亜鉛)を略平行に3本配置する。上面に同じ大きさのガラス基板を載せて短辺方向の端面(図4の左右両端)を溶着などで接着し、光触媒1はガラス製の透光性絶縁物2で覆われた状態となる。すなわち、連通した通気穴を有する平板管状の透光性絶縁物2が光触媒1の外装体となる。透光性絶縁物2としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等が使用される。
【0031】
なお、光触媒1や透光性絶縁物2の形状、大きさ、数は任意であり、用途に合わせて自由に形成できるのは言うまでもない。光触媒1を球形のスペーサーとしてもよいし、透光性絶縁物2を液晶表示装置の外周部に合わせた矩形状にすることも可能である。
【0032】
図5は、液晶表示装置23において、空気清浄用部品22を設置した場合の正面図を示す。また、図6は図5に示した液晶表示装置23について、D−D'で示した部分の断面図を示す。
【0033】
図6に示すように、筐体7について液晶パネル6が設置される部分には開口部が形成されており、液晶パネル6は、前記開口部から表示される面が露出されるように筐体7内に設置される。また、空気清浄用部品22が筐体7の内側に貼付される形で、液晶パネル6の横に設置される。液晶パネル6の背面には導光板13が設置され、導光板13および空気清浄用部品22の両方に照射できる位置に、バックライト8(蛍光管)が設置される。
【0034】
また、筐体7について、液晶パネル6と筐体7の接触部分に切り込みが入れられ、吸気口14が形成される。吸気口14の近くには、空気清浄用部品22が設置される。空気清浄用部品22の設置場所は、上述した位置に限定されない。また、吸気口14との間に空気清浄用部品22を挟み込む形で、排気口11が形成される。排気口11には、図示されていないが、排気ファンが設置されている。また、吸気口14から排気口11へ流れる空気の影響を受ける領域に、ドライバーIC9が設置される。
【0035】
(動作)
次に、動作の説明を行う。
【0036】
排気ファンが動作されることにより、吸気口の近くに設置された光触媒1を介して空気が吸気される。また、光触媒1は、バックライト8から光が照射されることにより、活性化される。光触媒1は透光性である透光性絶縁物2に設置されているため、光の照射を受けやすい。図6において、矢印で示されている空気中の有機成分10は、線の太さで有機成分の量が表されている。すなわち、吸気される空気は、空気中の有機物が分解された後装置内に吸気され、液晶表示装置23内部を通過し、排気口11より排出される。
【0037】
(効果)
液晶パネルは、小型化薄型化が商品価値の向上につながるため部品も極力軽量薄型化することが重要となる。
【0038】
当発明の空気清浄用部品22は、薄型であり、液晶表示装置23の厚みや重さなどに影響が少なく、かつ絶縁物で覆われているために、筐体7や他の配線などを腐食することなく機器内に入る空気を清浄化できる。このため、蛍光管であるバックライト8や反射板に有機汚染物が付着し輝度が低下したり、IC9などの回路基板が腐食することによる品質不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気清浄用部品の正面図および側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパソコンの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るパソコンの側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る空気清浄用部品の正面図および側面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光触媒、2 透光性絶縁物、3 カバー、4 ライト、5 排気ファン、6 液晶パネル、7,12 筐体、8 バックライト、9 ドライバーIC、10 空気中の有機成分、11 排気口、13 導光板、14 吸気口、20,22 空気清浄用部品、21 パソコン、23 液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通した通気穴を有する絶縁物よりなる外装体と、
前記外装体の前記通気穴中に配置される光触媒と、
を備える空気清浄用部品。
【請求項2】
前記絶縁物は酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む透光性絶縁物である、請求項1に記載の空気清浄用部品。
【請求項3】
前記光触媒は酸化チタン、酸化亜鉛のうちの少なくとも1つを含む多孔質な光触媒である、請求項1または請求項2に記載の空気清浄用部品。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空気清浄用部品を備え、自身の機器内やそれが設置された室内を空気清浄する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−272032(P2008−272032A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116274(P2007−116274)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】