説明

空気調和機の制御システムおよびその制御方法

【課題】消費電力を抑える待機制御が可能であり、リモコンの通常操作で空気調和機を待機制御の状態から通常運転の状態へ復帰させる。
【解決手段】待機制御許可情報認識手段22がリモコン信号受信手段21の受信した制御信号中の待機制御許可情報30を認識すると、待機制御実行手段23が、室内機2の運転が停止される際に待機制御の実行条件が成立していれば待機制御を実行し、制御信号を高速なメインクロックから低速なサブクロックに切り換えて消費電力を低減させる。待機解除信号認識手段24が制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除信号を認識すると、マイコン動作モード切換手段25が待機解除信号の受信時に室内機2のマイコン4の動作速度を低速モードから高速モードに切り換える。待機制御無し運転実行手段26は、制御信号中の待機制御許可情報30が許可とならない場合は待機制御無しでの運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の制御システムおよびその制御方法に係り、詳細には、停止中の消費電力を抑える空気調和機の制御システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、停止中における空気調和機の消費電力を低く抑えるために、通常制御の待機モードである電力消費が少ない待機制御の運転機能を備えた空気調和機が広く知られている。例えば、空気調和機の室内機を運転/停止するために、マイコンと、そのマイコンに電源を供給するためのスイッチング電源と、マイコンとスイッチング電源とを電気的に接続/遮断するためのトランジスタスイッチとを備える。そして、空気調和機の停止中においてはトランジスタスイッチでマイコンの電源を遮断して室内機の消費電力を下げるとともに、運転開始に当たっては、マイコンの電源を遮断したままの状態から通常のリモコン操作で直ちに運転動作に移行することができるような制御システムを備えた電気機器の電源回路に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この技術によれば、空気調和機の待機中においては、電源回路を開閉するためのトランジスタスイッチがOFFになり、スイッチング電源からマイコンへの電源供給が遮断されるので、消費電力を低く抑えることができる。次に、運転を再開するときには、リモコンを操作することによってHigh(H)信号のパルスがトランジスタスイッチへ送信されて、そのトランジスタスイッチが瞬間的にONとなる。さらに、ラッチ回路によってそのトランジスタスイッチのON状態が持続されるので、スイッチング電源からマイコンへの電源供給が継続される。したがって、そのままリモコンを操作することによって、直ちに所望の運転操作(例えば、通常運転状態)に移行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−44841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の待機制御方式では、室内機の運転/停止を制御するためのマイコンと、そのマイコンへ供給する電源を作るための電源回路とを電気的に接続/遮断するための電源回路開閉用のスイッチ回路(トランジスタスイッチ)が必要となる。そのため、電気回路の部品点数が増加してしまい、コストアップの要因となる。
また、空気調和機の待機制御の状態では、マイコンがリモコンからの各種制御信号を受け取れないため、マイコンの機能を通常状態へ復帰させてから各種制御信号の受信を開始することになるので、それに対応できるようにリモコンの送信フォーマットを変更することが必要となる。言い換えると、一種類のリモコンを用いた場合、単純なリモコン操作では空気調和機の過年度機種(旧モデル)との互換性がとれなくなる。
【0006】
このような互換性が取れなくなる場合の解決方法として、例えば、リモコンからの送信を2回続けて行い、1回目の送信信号で空気調和機を待機状態から通常運転状態へ復帰させ、2回目の送信信号で各種制御を行うための制御信号の受信を行うという制御方法が知られている。ところが、このような制御方法では送信時間と消費電流が約2倍になるため、使い勝手が悪くなるとともに消費電力の低減に逆行するという新たな問題が発生する。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、消費電力を抑える待機制御が可能であり、リモコンの通常操作で空気調和機を待機制御の状態から通常運転の状態へ復帰させることができる空気調和機の制御システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御システムであって、前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信するリモコン信号受信手段と、前記リモコン信号受信手段が受信した制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する待機制御許可情報認識手段と、前記室内機が運転を停止する際に(待機制御の実行条件が成立しているとき)、前記待機制御許可情報認識手段が認識した待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する待機制御実行手段と、前記待機制御実行手段が前記待機制御を実行したとき、前記制御信号の処理速度を相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換えるマイコン動作モード切替手段とを備えている。
【0009】
第2の本発明は、室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御方法であって、前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信する第1のステップと、前記第1のステップで受信された制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する第2のステップと、前記室内機が運転を停止する際に(待機制御の実行条件が成立しているとき)、前記第2のステップで認識された待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する第3のステップと、前記第3のステップで前記待機制御が実行されたとき、前記制御信号の処理速度を相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換える第4のステップとを含むことを特徴とする空気調和機の制御方法を提供する。
【0010】
第3の本発明は、室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御方法であって、前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信する第1のステップと、前記第1のステップで受信された制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する第2のステップと、前記室内機が通常運転を停止する際に待機制御の実行条件が成立しているとき、前記第2のステップで認識された待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する第3のステップと、前記第3のステップで前記待機制御が実行されたとき、前記制御信号の処理速度を相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換える第4のステップと、前記室内機を前記待機制御の状態から前記通常運転の状態へ復帰させるために、前記リモコンから送信された制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除用の信号を認識する第5のステップと、前記第5のステップで待機解除信号が認識されたときに、前記サブクロックを前記メインクロックに切り換えるとともに、前記室内機のマイコンの動作速度を低速モードから高速モードへ切り換える第6のステップとを含むことを特徴とする空気調和機の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、消費電力を抑える待機制御が可能であり、リモコンの通常操作で空気調和機を待機制御の状態から通常運転の状態へ復帰させることができる空気調和機の制御システムおよびその制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機のシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す空気調和機の動作の流れを示すタイムチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る空気調和機の制御システムを実現するための待機制御課題解決手段の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す待機制御課題解決手段の動作の流れを示すタイムチャートである。
【図5】本発明の一実施形態において、待機制御状態からリモコン信号の受信によって通常運転状態に復帰するまでの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態において、過年度機種のリモコンとの互換性を保持する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る空気調和機の制御システムは、空気調和機の待機中はマイコンの動作速度を低速モードに切り換えて低消費電力化を図り、空気調和機の運転を再開するに際してリモコンを操作するときには、マイコンの動作速度を高速モードに切り換えて通常の消費電力で所望の制御を行うようにしている。このとき、リモコンから送信される制御信号には、正規の制御信号のコードの前に待機解除信号が付加されているので、待機解除時における制御信号の送信時の消費電流と送信時間の増加を最小限に抑えることができる。
以下、本発明に係る空気調和機の制御システムの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態を説明するための全図において、同一の構成要素は同一の符号を付して示し、重複する説明は省略する。
【0014】
《実施形態》
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機の制御システム全体の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の一実施形態に係る空気調和機Cの制御システムの構成と待機制御の概要について、冷房運転を一例として説明する。
【0015】
まず、図1に示す空気調和機の構成について説明する。
図1に示す空気調和機Cは、冷凍サイクルの室内空気との熱交換により室内の冷暖房等を行う室内機2と、ユーザが所望の運転を行うために室内機2に向けて操作するリモコン1と、室内機2と冷凍サイクルで接続され冷凍サイクルが外気との熱交換を行う室外機3とを備え構成されている。
リモコン1と室内機2との間は、電気的には、赤外線通信等によりワイヤレス(無線)で接続されるか、または、有線で接続されている。室内機2と室外機3との間は通信線による有線で接続されている。
【0016】
室内機2には、その室内機2を制御するためのマイコン4と、マイコン4の動作モードに応じてクロック周波数を切り換えるためのメインクロック5およびサブクロック6と、マイコン4へ供給する電源を切り換えるための電源切換回路7とが搭載されている。
【0017】
図2は、図1に示す空気調和機の制御の流れを示すタイムチャートであり、横軸に時間をとり、縦軸に各制御要素の動作状態とっている。
次に、図2のタイムチャートを参照しながら、図1に示す空気調和機Cの制御について説明する。
まず、ユーザによるリモコン1からの指令(リモコン指令)により、室内機2は、時刻t1で冷房運転指令8を受信して空気調和機Cの状態を冷房運転状態10へ遷移させる。このとき、マイコン4を高速モードで動作させるため、クロック(処理速度)を、例えば、10MHz程度で動作可能なメインクロック(高速)5に切り換える。さらに、電源切換回路7によって、マイコン4の電源として5V電源12を供給する。また、冷房運転状態10では、室内ファンや風向板等のアクチュエータを動作させるため、電源切換回路7により、アクチュエータの電源である12V電源14も併せてONにすることにより、マイコン4の制御状態を通常運転の状態(通常制御状態)16にする。
【0018】
次に、リモコン1からの指令(リモコン指令)により、室内機2は、時刻t2において停止指令9を受信して、空気調和機Cの状態を停止状態11へ遷移する際には、マイコン4の消費電力が抑えられる低速モードで動作させるため、クロック(処理速度)を、例えば、32kHz程度で動作するサブクロック(低速)6に切り換える。さらに、マイコン4の電源を5V電源12から3V電源13へ切り換え、かつ、室内ファンや風向板等のアクチュエータが停止状態になることから12V電源をOFF15にすることによって、マイコン4の制御状態を待機制御状態17にする。
【0019】
さらに、時刻t3において、リモコン1からの指令(リモコン指令)によって再び冷房運転指令8が送信されると、前述の時刻t1以降の冷房運転状態10と同様の動作モードに移行する。
【0020】
次に、本実施形態に係る空気調和機Cの制御システムを実現するための待機制御課題解決手段について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る空気調和機の制御システムを実現するための待機制御課題解決手段の構成を示すブロック図である。図4は、空気調和機Cの図3に示す待機制御課題解決手段の動作の流れを示すタイムチャートであり、横軸に時間をとり、縦軸にリモコン1からの制御信号または各動作状態をとっている。
【0021】
図3に示す待機制御課題解決手段20の構成について図4を参照しながら説明する。
待機制御課題解決手段20は、リモコン信号受信手段21、待機制御許可ビット認識手段(待機制御許可情報認識手段)22、待機制御実行手段23、待機解除信号認識手段24、およびマイコン動作モード切換手段25を備えて構成されている。さらに、オプションとして、待機制御無し運転実行手段26を追加して構成してもよい。
【0022】
リモコン信号受信手段21は、本実施形態の空気調和機Cにおいて、ユーザの操作でリモコン1から送信された制御信号を室内機2で受信するための機能を有している。
待機制御許可ビット認識手段(待機制御許可情報認識手段)22は、リモコン信号受信手段21がリモコン1から受信した受信データである制御信号中に含まれる待機制御許可ビット(待機制御許可情報)30を認識する機能を有している。
【0023】
待機制御実行手段23は、リモコン信号受信手段21がリモコン1から受信した受信データの制御信号中に待機制御許可ビット30(図4参照)がある場合に、室内機2が運転を停止する際に通常の制御(通常制御状態16(図2参照))を終了させて待機制御(待機制御状態17)を実行させる機能を有している。
待機解除信号認識手段24は、空気調和機Cを図2の待機制御状態17から通常制御状態16へ復帰させるために、リモコン1から送信された制御信号の中に含まれる正規制御信号のリーダー部29の前に新たに追加した、待機制御を解除するための待機解除信号27を認識する機能を有している。リモコン1から送信された制御信号に、待機解除信号27が正規制御信号のリーダー部29の前に付加されていることで、制御状態が、待機制御状態17から通常制御状態16に切り換わることとなる。
【0024】
マイコン動作モード切換手段25は、室内機2が待機制御状態17(図2参照)においてリモコン1から待機解除信号27を受信したときに、その室内機2のマイコン4の動作速度を高速に切り換えるため、クロックをサブクロック6からメインクロック5へ切り換えて、マイコン4の動作モードをサブアクティブモード(待機制御状態17)からアクティブモード(通常制御状態16)に切り換える機能を有している。
【0025】
オプションとしての待機制御無し運転実行手段26は、待機制御許可ビット(待機制御許可情報)30が無い過年度製品のリモコンのリモコン信号(制御信号)を受信した場合に、待機制御は実行せずに従来の待機制御無しでの運転を可能とするような機能を有している(詳細は後記)。
【0026】
待機制御課題解決手段20を図3に示す構成にすることにより、リモコン1から送信されてくるリモコン信号(制御信号)として、待機解除信号27より後に送られてくる正規制御信号のリーダー部29以降の信号を受信したときには、従来の信号(待機制御許可ビット30が無い正規制御信号)を受信するのと同様に、通常制御状態16で受信処理を行うことができる。そのため、空気調和機Cの停止中は、消費電力を低く抑えられる低速モードに切り換えられるので、待機制御が実現可能となる。なお、図3に示す待機制御課題解決手段20において待機制御無し運転実行手段26を含めない構成であっても、前記のような低速モードに切り換える待機制御を実現することが可能である。
【0027】
また、図4の時刻t1で待機解除信号27を検出する場合、周波数が50Hzや60Hzのインバータ照明で発生する10msや8.3msのノイズで誤判定しないような値、例えば、図4に示すように、7ms間隔で受信ポートのサンプリングを行う。そして、サンプリング回数として、例えば、4回中、3回以上の有効信号を検出した場合には、有効信号の検出時刻t1において待機解除条件成立28として、待機制御状態17から通常制御状態16への遷移が行われる。
【0028】
なお、過年度製品のリモコンから送信される制御信号には図4に示すような待機解除信号27が付加されず、最初から、図4の待機制御許可ビット30を含まない正規制御信号が送信されてくるため、マイコン4が待機制御の状態(図2の待機制御状態17)にあるときは、高速モードで送信されてくるリモコン信号(正規制御信号)を受信することができない。
そこで、図3の待機制御無し運転実行手段26を設けて、電源投入後の一定時間以内、例えば5分以内に、待機制御許可ビット30が無い過年度製品のリモコンからの制御信号(正規制御信号)を受信した場合には、待機制御無しでの運転ができるようにすれば、待機制御の機能がない過年度機種のリモコンとの互換性を図ることができる。
【0029】
図3に示す待機制御課題解決手段20の構成および動作についてさらに詳細に説明する。
待機制御課題解決手段20として、リモコン1から送信された制御信号を室内機2で受信するリモコン信号受信手段21と、リモコン信号受信手段21が受信した制御信号の中に含まれる待機制御許可ビット30を認識する待機制御許可ビット認識手段(待機制御許可情報認識手段)22と、室内機2が運転を停止する際に待機制御の実行条件が成立しているとき、待機制御許可ビット認識手段22が認識した待機制御許可ビット30に基づいて待機制御を実行する待機制御実行手段23とを設ける。
【0030】
このような構成により、リモコン1から送信される従来通りの正規制御信号中の未使用ビットを待機制御許可ビット30とし、この待機制御許可ビット30が存在する新リモコン信号を受信後に室内機2が停止した場合は、メインクロック5(通常制御状態16)をサブクロック6(待機制御状態17)に移行させることにより、待機時における室内機2およびマイコン4の消費電力を低減させることができる。
【0031】
さらに、上記の構成に加えて待機制御無し運転実行手段26を設けることにより、室内機2の通電後の所定時間以内(例えば、5分以内)にリモコン1からの制御信号を受信したとき、正規制御信号の中に待機制御許可ビット30が存在しない従来のリモコン信号(待機制御許可ビット30が存在しない正規制御信号(図4参照))を受信した場合には、メインクロック5をサブクロック6に移行させる処理を行わないで、待機制御無しでの運転をできるようにするので、過年度製品のリモコンとの互換性をとることができる。
【0032】
また、室内機2を通電した後の所定時間以内にリモコン1からの制御信号の受信がない場合には、メインクロック5をサブクロック6に移行させることで通常制御状態16から待機制御状態17に移行し、待機時における室内機2およびマイコン4の消費電力を低減させることができる。
【0033】
さらに、待機制御の状態から通常運転の状態へ復帰させるためにリモコン1から送信された制御信号の中の正規コード(すなわち、リーダー部29および待機制御許可ビット30を含む制御信号)の前に付加された待機解除信号27を認識する待機解除信号認識手段24と、待機解除信号27を受信したときに、サブクロック6をメインクロック5に切り換えるとともに、室内機2のマイコン4の動作速度を低速モードから高速モードに切り換えるマイコン動作モード切換手段25とを設けることにより、待機解除信号27以降に送信されてくる正規のリモコン信号(正規制御信号(図4参照))の受信を可能とすることができる。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態において、待機制御状態からリモコン信号の受信によって通常運転状態に復帰するまでの処理の流れを示すフローチャートである。
以下、図5を用いて、待機制御状態17から、リモコン1から送られるリモコン信号(制御信号)の受信によって通常運転状態(通常制御状態16)に復帰するまでの処理の流れを説明する。
【0035】
図5において、まず、待機制御状態17においてリモコン1からの指令信号(制御信号)があるか否かを判定し(ステップS1)、リモコン1からの指令信号がなければ(ステップS1でNo)、ステップS1を継続して指令信号があるまで待ち続ける。一方、リモコン1からの指令信号がある場合には(ステップS1でYes)、指令信号(制御信号)に待機解除条件である待機解除信号27(図4参照)があるか否かを確認する(ステップS2)。
【0036】
待機解除条件の待機解除信号27がある場合には(ステップS2でYes)、クロックを低速のサブクロック6から高速のメインクロック5に切り換え(ステップS3)、さらに、マイコン電源を5V電源12に切り換え(ステップS4)、かつ、空気調和機Cを通常制御状態16に切り換え(ステップS5)、リモコン1からの受信データの内容に従った運転状態に切り換えて(ステップS6)、処理を終了する。
【0037】
一方、ステップS2において、リモコン1からの指令信号(制御信号)に待機解除条件の待機解除信号27(図4参照)がない場合には(ステップS2でNo)、クロックは低速なサブクロック6の状態を保持し(ステップS7)、さらに、マイコン電源は3V電源13を保持し(ステップS8)、かつ、待機制御状態17も保持したままとし(ステップS9)、リモコン1からの受信データ(制御信号)を無効として空気調和機Cの停止状態を保持したまま(ステップS10)、処理を終了する。
【0038】
図6は、本発明の一実施形態において、過年度機種のリモコンとの互換性を保持する処理の流れを示すフローチャートである。
以下、図6を用いて、空気調和機Cが過年度機種のリモコン1との互換性を保持する処理の流れについて説明する。
【0039】
まず、空気調和機Cの電源投入後、所定時間(例えば5分)以内であるか否かを判定し(ステップS11)、電源投入後所定時間(例えば5分以内)であれば(ステップS11でYes)、リモコン1からの指令信号(制御信号)があるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12で、リモコン1から送られる指令信号(制御信号)があれば(ステップS12でYes)、指令信号(制御信号)に待機制御許可ビット30(図4参照)が無いか否かを判定し(ステップS13)、待機制御許可ビット30が無い場合には(ステップS13でYes)、すなわち、ステップS11、S12、S13の全ての条件がYesで揃った場合には、待機制御禁止条件をセットして(ステップS14)、処理を終了する。
【0040】
一方、図6のステップS11で、空気調和機Cの電源投入後、所定時間(例えば5分)以内でない場合(ステップS11でNoの場合)、または、リモコン1からの指令信号がない場合(ステップS12でNoの場合)、または、待機制御許可ビット30がある場合(ステップS13でNoの場合)には、空気調和機Cは停止中の状態であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0041】
ここで、空気調和機Cが停止中であれば(ステップS15でYes)、待機制御禁止条件が無いか否かを判定して(ステップS16)、待機制御禁止条件が無い場合には(ステップS16でYes)、待機制御を実行する(ステップS17)。すなわち、新機種の空気調和機Cに対応した省電力モードの処理を行う。
一方、ステップS15において、空気調和機Cが運転中の場合(ステップS15でNo)、または、ステップS16において、待機制御禁止条件がある場合には(ステップS16でNo)、通常制御状態16を保持する(ステップS18)。
これにより、過年度機種のリモコン1との互換性を保持することができる。
なお、図6のステップS11では、空気調和機Cの電源投入後、一つのメドとして5分以内の場合を例示して説明したが、空気調和機Cの電源投入後の所定時間であれば、必ずしも5分以内でなくともよく、適宜選択可能である。
【0042】
以上述べたように、本実施形態に係る空気調和機Cの制御システムによれば、リモコン信号受信手段21がリモコン1から送信された制御信号を室内機2で受信すると、待機制御許可ビット認識手段22が、リモコン信号受信手段21の受信した制御信号の中に含まれる待機制御許可ビット30を認識する。そして、待機制御許可ビット認識手段22が、待機制御許可ビット30が存在することを認識した場合には、待機制御実行手段23が、室内機2の運転が停止される際に、下記の待機制御の実行条件が成立していれば待機制御を実行する。これによって、室内機2を停止する際には制御信号の処理速度が高速なメインクロック5から低速なサブクロック6に切り換えられるので、空気調和機Cの消費電力を低減させることができる。
【0043】
ここで、待機制御の実行条件が成立する状態について説明する。
室内機2のタイマ予約がリモコン1で設定されていると室内機2のランプが点灯し、このような設定がなされている場合には空気調和機Cの停止時に待機制御に入ることはできない。例えば、リモコン1で「毎日予約」が設定されていると室内機2のランプが点灯し、空気調和機Cの停止時に待機制御に入ることはできない。或いは、「カビ見張り予約」がリモコン1で設定されていると室内機2のランプが点灯し、このような設定がなされている場合にはカビが発生しそうなとき、除湿運転を行うために停止時に待機制御に入ることはできない。
【0044】
言い換えると、タイマ予約が設定されていない場合は室内機2のランプが消灯していて、空気調和機Cの停止時に待機制御に入ることができる。また、カビ見張り予約が設定されていない場合も室内機2のランプが消灯していて、空気調和機Cの停止時に待機制御に入ることができる。
すなわち、ユーザによるタイマ予約の設定がない場合、ユーザによるカビ見張り予約の設定がない場合等の予約機能(運転)の設定がない場合には、待機制御の実行条件が成立しているので、空気調和機Cの停止時に待機制御に入ることができる。
【0045】
また、待機解除信号認識手段24が、待機制御の状態(待機制御状態17)から通常運転の状態(通常制御状態16)へ復帰させるときに、リモコン1から送信された制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除信号27(図4参照)を認識すると、マイコン動作モード切換手段25が、待機解除信号27を受信したときに室内機2のマイコン4の動作速度を低速モードから高速モードに切り換える。これによって、リモコン1から待機解除信号27以降に送られてくる正規の制御信号の受信が可能となるとともに、空気調和機Cの停止中は待機制御によって低速モードに切り換えておくことができるので、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0046】
また、待機制御無し運転実行手段26を設けることにより、リモコン1から受信した制御信号中の待機制御許可ビット30が存在しない従来のリモコン1からの制御信号を受信した場合は、待機制御は実行されず、従来の待機制御無しでの運転を行うことができる。すなわち、待機制御無し運転実行手段26を設けることによって過年度機種のリモコンとの互換性をとることができる。
【0047】
すなわち、従来の空気調和機の制御システムでは、室内機の運転/停止を制御するマイコンとこのマイコンに電源を供給するための電源回路とを電気的に接続/遮断するための電源開閉回路が必要となるため、電気回路の部品点数が増加してコストアップの要因となっていた。また、待機制御の状態のままではリモコンからの制御信号を受信できないため、一旦、通常状態へ復帰させてから正規の制御信号の受信を開始することになるため、リモコンの送信フォーマットの変更が必要となるので過年度機種のリモコンとの互換性がとれなくなるおそれもあった。
【0048】
ところが、本発明の空気調和機Cの制御システムによれば、空気調和機Cの停止中は室内機2のマイコン4の動作速度を低消費電力となる低速モードへ切り換え、リモコン1からの制御信号の受信時には高速モードに切り換えることによって、電源開閉回路を追加することなく、制御ソフトの記述のみによって所望の待機制御を実現することができる。また、正規の制御信号の中に待機制御許可情報(待機制御許可ビット30)を設けると共に、正規の制御信号の送信コードの前に待機解除信号27を付加して送信することにより、制御信号の送信時の消費電流と送信時間の増加を最小限に抑えることができると共に、過年度機種のリモコンとの互換性も確保することができる。
従って、空気調和機Cの低コスト化、省エネ化、および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、使用される空気調和機Cの種類に応じて、待機制御課題解決手段20の構成要素に待機制御無し運転実行手段26も含めたフル実装としてもよいし、必要に応じて待機制御無し運転実行手段26をオプションとして付加するような構成としてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、待機制御許可情報として待機制御許可ビット30を例示して説明したが、待機制御許可情報は待機制御許可バイトであってもよく、待機制御許可情報として認識できる情報であれば、任意に設定可能である。
【0051】
なお、前記実施形態では、「毎日予約」のタイマ予約、「カビ見張り予約」等の予約運転(機能)の設定がないときを実行条件として、待機運転を行う場合を例示したが、「毎日予約」のタイマ予約、「カビ見張り予約」等の予約運転(機能)の設定がある場合に、マイコンを省電力のモードで予約運転(機能)の監視のみを行うように構成し、常時、待機運転に入るように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る空気調和機の制御システムによれば、マイコンのハード構成を変更することなく、制御ソフトのプログラム変更のみによって待機制御機能を有する新機種にも対応することができるし、待機制御機能を有しない過年度機種のリモコンにも対応することができるので、新製品および過年度製品を含めた汎用の空気調和機に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 リモコン
2 室内機
3 室外機
4 マイコン
5 メインクロック(高速)
6 サブクロック(低速)
7 電源切換回路
8 冷房運転指令(制御信号)
9 停止指令(制御信号)
10 冷房運転状態
11 停止状態
12 5V電源
13 3V電源
14 12V電源
15 12V電源OFF
16 通常制御状態(通常運転の状態)
17 待機制御状態(待機制御の状態)
20 待機制御課題解決手段
21 リモコン信号受信手段
22 待機制御許可ビット認識手段(待機制御許可情報認識手段)
23 待機制御実行手段
24 待機解除信号認識手段
25 マイコン動作モード切換手段
26 待機制御無し運転実行手段
27 待機解除信号(制御信号)
28 待機解除条件成立
29 正規制御信号リーダー部(制御信号、正規コード)
30 待機制御許可ビット(待機制御許可情報、制御信号)
C 空気調和機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御システムであって、
前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信するリモコン信号受信手段と、
前記リモコン信号受信手段が受信した制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する待機制御許可情報認識手段と、
前記室内機が通常運転を停止する際に、前記待機制御許可情報認識手段が認識した待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する待機制御実行手段と、
前記待機制御実行手段が前記待機制御を実行したとき、前記制御信号の処理速度を、相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換えるマイコン動作モード切替手段と
を備えることを特徴とする空気調和機の制御システム。
【請求項2】
前記待機制御実行手段は、前記室内機が運転を停止する際に、予約運転の設定がない前記待機制御の実行条件が成立しているとき、前記待機制御許可情報に基づいて前記待機制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の制御システム。
【請求項3】
前記室内機に通電後の所定時間以内に前記リモコン信号受信手段が前記リモコンから受信した制御信号が、前記待機制御の不可を示す場合、前記メインクロックから前記サブクロックへの切り換え処理を行わない待機制御無し運転を実行する待機制御無し運転実行手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機の制御システム。
【請求項4】
前記リモコン信号受信手段が、前記室内機に通電後の所定時間以内に前記リモコンから制御信号を受信しないとき、前記マイコン動作モード切替手段は、前記メインクロックから前記サブクロックに切り換えることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の制御システム。
【請求項5】
前記室内機を前記待機制御の状態から前記通常運転の状態へ復帰させるために、前記リモコンから送信された制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除信号を認識する待機解除信号認識手段を備え、
前記マイコン動作モード切替手段は、前記待機解除信号認識手段が待機解除信号を認識したときに、前記サブクロックを前記メインクロックに切り換えるとともに、前記室内機のマイコンの動作速度を低速モードから高速モードへ切り換える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の空気調和機の制御システム。
【請求項6】
室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御方法であって、
前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信する第1のステップと、
前記第1のステップで受信された制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する第2のステップと、
前記室内機が通常運転を停止する際に、前記第2のステップで認識された待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する第3のステップと、
前記第3のステップで前記待機制御が実行されたとき、前記制御信号の処理速度を相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換える第4のステップとを
含むことを特徴とする空気調和機の制御方法。
【請求項7】
前記第3のステップは、前記室内機が運転を停止する際に、予約運転の設定がない前記待機制御の実行条件が成立しているとき、前記待機制御許可情報に基づいて前記待機制御を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項8】
前記第1のステップにおいて、前記室内機に通電後の所定時間以内に前記リモコンから制御信号が受信され、前記第2のステップにおいて、前記制御信号が前記待機制御の不可を示す場合、前記メインクロックから前記サブクロックへの切り換え処理を行わない
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項9】
前記第1のステップにおいて前記室内機に通電後の所定時間以内に前記リモコンから制御信号を受信しないときは、前記メインクロックから前記サブクロックに切り換えることを特徴とする請求項8に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項10】
前記室内機を前記待機制御の状態から前記通常運転の状態へ復帰させるために、前記リモコンから送信された制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除信号を認識する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて待機解除信号が認識されたとき、前記サブクロックを前記メインクロックに切り換えるとともに、前記室内機のマイコンの動作速度を低速モードから高速モードへ切り換える第6のステップとを
さらに含むことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項11】
室内機と室外機と前記室内機を制御するリモコンとを備えて構成される空気調和機の制御方法であって、
前記リモコンから送信された制御信号を室内機で受信する第1のステップと、
前記第1のステップで受信された制御信号の中に含まれる待機制御許可情報を認識する第2のステップと、
前記室内機が通常運転を停止する際に待機制御の実行条件が成立しているとき、前記第2のステップで認識された待機制御許可情報に基づいて、前記通常運転の制御より電力消費が少ない待機制御を実行する第3のステップと、
前記第3のステップで前記待機制御が実行されたとき、前記制御信号の処理速度を相対的に高速なメインクロックから相対的に低速なサブクロックに切り換える第4のステップと、
前記室内機を前記待機制御の状態から前記通常運転の状態へ復帰させるために、前記リモコンから送信された制御信号中の正規コードの前に付加された待機解除用の信号を認識する第5のステップと、
前記第5のステップで待機解除信号が認識されたときに、前記サブクロックを前記メインクロックに切り換えるとともに、前記室内機のマイコンの動作速度を低速モードから高速モードへ切り換える第6のステップと
を含むことを特徴とする空気調和機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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