説明

空気調和機の床置き室内機

【課題】熱交換効率の低下を防ぐ。
【解決手段】クロスフローファン21と室内熱交換器22とを収容するケーシング10は、その下端部に設けられ、床面近傍にある空気を吸い込む主吸込口10aと、その上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口10dとを有している。そして、ケーシング10において、室内熱交換器22の前面熱交換器22aと対向する前面パネル34に、主吸込口10aと吹出口10dとの間に設けられた補助吸込口10b、10cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングの下端部から床面近傍にある空気を吸い込み、ケーシングの上端部から空気を吹き出す空気調和機の床置き室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機の床置き室内機としては、ターボファンが用いられており、ケーシングの前面パネルの上下部および両側面にそれぞれ設けられた4つの吸込口から空気を吸い込み、前面パネルの上方および下方にそれぞれ設けられた吹出口から吹き出すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる床置き室内機においては、ターボファンは、4方向にそれぞれ設けられた4つ吸込口から空気を吸い込み、前面パネルとターボファンとの間に配置された熱交換器に空気を供給した後、上下の吹出口から空気を吹き出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−78274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、床置き室内機の構成としては、上記のような構成の他に、空気をケーシングの下端部に設けられた吸込口から吸い込んで、ケーシングの上端部に設けられた吹出口から吹き出すものも考えられる。このような構成において、ターボファンを用いると、吹出口がケーシングに対して小さいことから、騒音が大きくなる。したがって、ターボファンに代えてクロスフローファンを用いることが好ましい。
【0005】
また、このような構成の場合、吸込口から吸い込まれた空気は、前面パネルと略平行に配置された熱交換器と前面パネルとの間に形成されたすき間を下方から上方に向かって流れる。前面パネルと熱交換器との間のすき間は、床置き室内機を小型化する観点から比較的狭く設計されており、すき間における流路抵抗は大きい。したがって、吸込口から吸い込まれた空気を、熱交換器の上端部近傍まで供給することができず、熱交換効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、熱交換効率の低下を防ぐことができる空気調和機の床置き室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかる空気調和機の床置き室内機は、前面パネルを有するケーシングと、前記ケーシング内に収容されたクロスフローファンと、前記ケーシング内において前記前面パネルの裏面と対向する部分を有する熱交換器とを備え、前記ケーシングが、前記ケーシングの下端部に設けられ、床面近傍にある空気を吸い込む主吸込口と、前記ケーシングの上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口とを有していると共に、前記前面パネルが、前記主吸込口と前記吹出口との間に設けられた補助吸込口を有している。
【0008】
なお、「ケーシングの上端部に設けられ」とは、ケーシングの上壁に設けられている場合だけでなく、前面パネルの上端近傍に設けられている場合も含む。同様に、「ケーシングの下端部に設けられ」とは、ケーシングの下壁に設けられている場合だけでなく、前面パネルの下端近傍に設けられている場合も含む。
【0009】
この床置き室内機では、ケーシングの下端部に設けられた主吸込口に加えて、前面パネルに形成された補助吸込口を有している。主吸込口から吸い込まれた空気は、前面パネルと熱交換器との間のすき間を、下方から上方に向かって流れた後、熱交換器に供給される。補助吸込口は、主吸込口よりも上方に位置しているので、補助吸込口から吸い込まれ、前面パネルと熱交換器との間のすき間を流れる空気は、主吸込口から吸い込まれた空気よりも上方まで達する。したがって、補助吸込口から吸い吸い込まれた空気を熱交換器の上端近傍に供給することができる。よって、熱交換効率の低下を抑制できる。
【0010】
第2の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1の発明にかかる床置き室内機において、前記補助吸込口が、水平方向に沿って延在したスリット状の開口である。
【0011】
この床置き室内機では、補助吸込口から吸い込んだ空気を、熱交換器の全幅にわたって供給することができる。したがって、熱交換効率の低下を確実に抑制できる。
【0012】
第3の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1または第2の発明にかかる床置き室内機において、前記補助吸込口が、前記前面パネルの高さ方向中央の領域に設けられている。
【0013】
この床置き室内機では、補助吸込口から吸い込んだ空気が、熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。
【0014】
第4の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1〜第3のいずれかの発明にかかる床置き室内機において、前記補助吸込口が、前記熱交換器に対向する位置に設けられている。
【0015】
この床置き室内機では、補助吸込口から吸い込んだ空気が、熱交換器に供給されやすくなる。
【0016】
第5の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1〜第4のいずれかの発明にかかる床置き室内機において、前記前面パネルが、前記補助吸込口より上方に設けられ、冷媒回路を構成する配管の一部を有する輻射パネルを含んでいる。
【0017】
この床置き室内機では、輻射パネルが補助吸込口より上方に設けられているため、輻射パネルから放熱された熱によって加熱された空気が、補助吸込口から吸い込まれるのを抑制できる。
【0018】
第6の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1〜第5のいずれかの発明にかかる床置き室内機において、前記熱交換器が、前記前面パネルと略平行に配置された前面熱交換器と、前記前面熱交換器の下端近傍から背面に近付くにつれて上方に傾斜する背面熱交換器とを有する。
【0019】
この床置き室内機では、熱交換器を前面熱交換器と背面熱交換器とで構成しているので、熱交換器全体を板状に形成して、前面パネルと略平行に配置する場合に比べて、前面パネルに略平行に配置される熱交換器の高さを短くできる。したがって、ケーシングの高さ方向について小型化できる。また、熱交換器の高さを短くできることで、主吸込口から吸い込まれた空気が熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。すなわち、主吸込口から吸い込まれた空気を前面熱交換器の上端部近傍まで供給するために、前面パネルと前面熱交換器との間のすき間を大きくする必要がないので、ケーシングの奥行方向についても小型化できる。
【0020】
第7の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第1〜第7のいずれかの発明にかかる床置き室内機において、前記前面パネルが、前記補助吸込口の下端から背面に近付くにつれて上方に傾斜する突出部を有している。
【0021】
この床置き室内機では、補助吸込口から吸い込まれた空気が上方へ流れるようにできることから、その空気が熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。また、外部からケーシングの内部を見え難くできる。
【0022】
第8の発明にかかる空気調和機の床置き室内機では、第7の発明にかかる床置き室内機において、前記熱交換器の下方に設けられたドレンパンを備え、前記突出部が、前記ドレンパンより下方に設けられていない。
【0023】
この床置き室内機では、主吸込口の近傍において主吸込口から吸い込まれた空気が通る流路が、突出部によって狭くなるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0025】
第1の発明では、ケーシングの下端部に設けられた主吸込口に加えて、前面パネルに形成された補助吸込口を有している。主吸込口から吸い込まれた空気は、前面パネルと熱交換器との間のすき間を、下方から上方に向かって流れた後、熱交換器に供給される。補助吸込口は、主吸込口よりも上方に位置しているので、補助吸込口から吸い込まれ、前面パネルと熱交換器との間のすき間を流れる空気は、主吸込口から吸い込まれた空気よりも上方まで達する。したがって、補助吸込口から吸い吸い込まれた空気を熱交換器の上端近傍に供給することができる。よって、熱交換効率の低下を抑制できる。
【0026】
第2の発明では、補助吸込口から吸い込んだ空気を、熱交換器の全幅にわたって供給することができる。したがって、熱交換効率の低下を確実に抑制できる。
【0027】
第3の発明では、補助吸込口から吸い込んだ空気が、熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。
【0028】
第4の発明では、補助吸込口から吸い込んだ空気が、熱交換器に供給されやすくなる。
【0029】
第5の発明では、輻射パネルが補助吸込口より上方に設けられているため、輻射パネルから放熱された熱によって加熱された空気が、補助吸込口から吸い込まれるのを抑制できる。
【0030】
第6の発明では、熱交換器を前面熱交換器と背面熱交換器とで構成しているので、熱交換器全体を板状に形成して、前面パネルと略平行に配置する場合に比べて、前面パネルに略平行に配置される熱交換器の高さを短くできる。したがって、ケーシングの高さ方向について小型化できる。また、熱交換器の高さを短くできることで、主吸込口から吸い込まれた空気が熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。すなわち、主吸込口から吸い込まれた空気を前面熱交換器の上端部近傍まで供給するために、前面パネルと前面熱交換器との間のすき間を大きくする必要がないので、ケーシングの奥行方向についても小型化できる。
【0031】
第7の発明では、補助吸込口から吸い込まれた空気が上方へ流れるようにできることから、その空気が熱交換器の上端近傍に供給されやすくなる。また、外部からケーシングの内部を見え難くできる。
【0032】
第8の発明では、主吸込口の近傍において主吸込口から吸い込まれた空気が通る流路が、突出部によって狭くなるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態にかかる床置き室内機を備えた空気調和機の回路図である。
【図2】図1に示す床置き室内機の斜視図である。
【図3】図1に示す床置き室内機の正面図である。
【図4】図3に示す床置き室内機のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図3に示す床置き室内機の前面パネルおよび開閉パネルを外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態にかかる空気調和機100の床置き室内機(以下、単に「室内機」と称する)1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の室内機1は、室外機4と冷媒回路50を構成する配管により接続されており、室外機4と共に空気調和機100を構成するものである。
【0035】
<空気調和機100の概略構成>
まず、空気調和機100の概略構成について説明する。
室内機1は、室内熱交換器22と、室内熱交換器22の近傍に配置されたクロスフローファン21と、輻射パネル32と、室内電動弁15と、室内の気温を検知するための室内温度センサ36とを備えている。室外機4は、圧縮機40と、四路切換弁41と、室外熱交換器42と、室外熱交換器42の近傍に配置された室外ファン43と、室外電動弁44とを備えている。
【0036】
この空気調和機1では、室内熱交換器22、圧縮機40、四路切換弁41、室外熱交換器42、および室外電動弁44が接続されて環状の冷媒回路50が構成されている。室外熱交換器42には、室外熱交温度センサ47が付設されている。室内機1内の配管における室内熱交換器22の両側には、分岐部50a、50bがそれぞれ設けられている。そして、分岐部50a、50bには、バイパス配管51の両端が接続されている。すなわち、室内熱交換器22の両側の配管が、バイパス配管51によって接続されている。このバイパス配管51には、輻射パネル32と室内電動弁15とが設けられている。バイパス配管51における輻射パネル32の両側には、パネル入温度センサ27と、パネル出温度センサ28が付設されている。また、冷媒回路50における圧縮機40の吸入側と四路切換弁41との間にはアキュムレータ45が介設されており、冷媒回路50における圧縮機40の吐出側と四路切換弁41との間には、吐出温度センサ46が付設されている。
【0037】
室内熱交換器22は、冷媒回路50の一部を構成する配管を有しており、室内熱交温度センサ29が付設されている。室内熱交換器22は、クロスフローファン21の風上側に配置されている。室内熱交換器22との熱交換により加熱または冷却された空気が、クロスフローファン21によって温風または冷風として室内に吹き出されることで、温風暖房または冷房が行われる。
【0038】
輻射パネル32は、後で詳述するように、室内機1の表面の一部を構成しており、冷媒回路50の一部を構成する配管を有している。この配管を流れる冷媒の熱が、室内に輻射されることで、輻射暖房が行われる。室内電動弁15は、輻射パネル32に供給される冷媒の流量を調整するために設けられている。
【0039】
本実施形態の空気調和機100において実施される運転モードとしては、冷房モード、温風暖房モード、および輻射暖房モードがある。冷房モードは、輻射パネル32に冷媒を流さないで室内熱交換器22に冷媒を流して冷房を行うモードであって、暖房モードは、輻射パネル32に冷媒を流さないで室内熱交換器22に冷媒を流して温風暖房を行うモードである。輻射モードは、室内熱交換器22に冷媒を流して温風暖房を行いつつ、輻射パネル32に冷媒を流して輻射暖房を行うモードである。
【0040】
温風暖房モードにおいては、室内電動弁15が閉弁されると共に、四路切換弁41が図1中実線で示す状態に切り換えられる。そのため、図1中実線の矢印で示すように、圧縮機40から吐出された高温高圧冷媒は、四路切換弁41を通って、室内熱交換器22に流入する。そして、室内熱交換器22において凝縮した冷媒は、室外電動弁44で減圧された後、室外熱交換器42に流入する。そして、室外熱交換器42において蒸発した冷媒は、四路切換弁41およびアキュムレータ45を介して、圧縮機40に流入する。
【0041】
輻射暖房モードにおいては、室内電動弁15が開弁されると共に、四路切換弁41が図1中実線で示す状態に切り換えられる。そのため、図1中破線の矢印で示すように、圧縮機40から吐出された高温高圧冷媒は、四路切換弁41を通って、室内熱交換器22と輻射パネル32とに流入する。そして、室内熱交換器22と輻射パネル32において凝縮した冷媒は、室外電動弁44で減圧された後、室外熱交換器42に流入する。そして、室外熱交換器42において蒸発した冷媒は、四路切換弁41およびアキュムレータ45を介して、圧縮機40に流入する。
【0042】
<室内機1の構成>
次に、室内機1の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態の室内機1は、全体として直方体形状を有しており、室内の床面近傍に据え付けるものである。本実施形態においては、室内機1は、床面から10cm程度浮かした状態で、壁面に取り付けられている。なお、以下の説明において、室内機1が取り付けられる壁から突出する方向を「前方」と称し、その反対の方向を「後方」と称する。また、図2に示す左右方向を単に「左右方向」と称する。
【0043】
図4に示すように、室内機1は、ケーシング10と、ケーシング10内に収容されたクロスフローファン21、室内熱交換器22、吹出口ユニット25、および電装品ユニット26などの内部機器と、前面グリル12とを主に備えている。あとで詳述するように、ケーシング10は、その下壁に形成された主吸込口10aと、その前壁に形成された補助吸込口10b、10cとを有している。さらに、ケーシング10の上壁には、吹出口10dが形成されている。室内機1においては、クロスフローファン21の駆動により、主吸込口10aから床面近傍にある空気を吸い込みつつ、補助吸込口10b、10cからも空気を吸い込む。そして、室内熱交換器22において、吸い込んだ空気に対して加熱または冷却などを行い調和する。そして、調和後の空気を吹出口10dから吹き出し、室内へと返流させる。
【0044】
ケーシング10は、本体フレーム11、吹出口カバー31、輻射パネル32、および開閉パネル33で構成されている。なお、後述するように吹出口カバー31は前面パネル部31aを有しており、輻射パネル32は前面パネル部32aを有している。吹出口カバー31の前面パネル部31a、輻射パネル32の前面パネル部32a、および開閉パネル33は、ケーシング10の前面において面一となるように配置され、前面パネル34を構成する。図2に示すように、前面パネル34の右上端部、すなわち吹出口カバー31の前面パネル部31aの右端部には、電源ボタン18と、運転状況を示す発光表示部19とが設けられている。
【0045】
本体フレーム11は、壁面に取り付けられるものである。本体フレーム11は、上述の各種内部機器を支持していると共に、その前面に前面グリル12が取り付けられている。吹出口カバー31、輻射パネル32、及び開閉パネル33は、前面グリル12が取り付けられた状態の本体フレーム11の前面に取り付けられている。吹出口カバー31は、本体フレーム11の上端部に取り付けられており、その上壁に左右方向に長い矩形状の開口である吹出口10dが形成されている。輻射パネル32は吹出口カバー31の下方に、開閉パネル33は輻射パネル32の下方にそれぞれ取り付けられている。本体フレーム11の下前端と開閉パネル33の下端との間は、左右方向に長い開口である主吸込口10aとなっている。
【0046】
ここで、ケーシング10内に収容される各内部機器について説明する。
クロスフローファン21は、ケーシング10の高さ方向中央部分のやや上方において、その軸方向が左右方向に沿うように配置されている。クロスフローファン21は、下前方から空気を吸い込んで、上後方に吹き出すようになっている。
【0047】
室内熱交換器22は、前面パネル34と略平行に配置されており、前面パネル34の裏面と対向する前面熱交換器22aと、前面熱交換器22aの下端部近傍から背面に近付くにつれて上方に傾斜する背面熱交換器22bとで構成されている。前面熱交換器22aは、クロスフローファン21の前方に配置されており、その上半分がクロスフローファン21と対向している。図4に示すように、前面熱交換器22aの上端は、クロスフローファン21の上端よりも上方に位置している。背面熱交換器22bは、クロスフローファン21の下方に配置されている。すなわち、室内熱交換器22は、全体として略V字の形状を有しており、クロスフローファン21の前方と下方とを取り囲むように配置されている。
【0048】
正面視において室内熱交換器22の右側には、室外機4から送られてきた冷媒を室内熱交換器22および輻射パネル32に供給するための配管が配置されている。より具体的には、図1において、分岐部50aから室内熱交換器22および輻射パネル32にそれぞれ至る配管、および室内熱交換器22および輻射パネル32から分岐部50bにそれぞれ至る配管が、室内熱交換器22の右側に配置されている。図5に示すように、これらの配管の前方には防滴カバー23が取り付けられている。
【0049】
室内熱交換器22の下方には、左右方向に延在するドレンパン24が配置されている。図5に示すように、正面視において、ドレンパン24の左側の端部は、室内熱交換器22の端部とほぼ対向する位置にあり、右側の端部は、室内熱交換器22の右側に配置された配管と対向する位置にある。また、図4に示すように、ドレンパン24の前後方向の端部は、室内熱交換器22の前後方向の端部とほぼ対向する位置にある。
【0050】
吹出口ユニット25は、クロスフローファン21の上方に配置されており、クロスフローファン21から吹き出された空気をケーシング10の上壁に形成された吹出口10dへと導くものである。吹出口ユニット25は、吹出口10dの近傍に配置される水平フラップ25aを備えている。水平フラップ25aは、吹出口10dから吹き出される空気流の上下方向の風向きを変更すると共に、吹出口10dの開閉を行う。
【0051】
電装品ユニット26は、図5に示すように、ドレンパン24の下方に配置されており、回路基板(図示せず)などを収容する電装品箱26aと、電装品箱26aに収容された基板と電気的に接続される端子台26bとを有している。電装品箱26aは、室内熱交換器22の右半分とほぼ対向する位置に配置されており、端子台26bは、室内熱交換器22の右側に配置された配管と対向する位置に配置されている。また、電装品ユニット26から引き出された配線は、端子台26bの右側からまっすぐ上方に引き回され、前面パネル34の右上端部に設けられた電源ボタン18および発光表示部19のLED発光体に接続されている。
【0052】
前面グリル12は、上述のように、クロスフローファン21、室内熱交換器22、吹出口ユニット25、および電装品ユニット26などの内部機器が取り付けられた状態の本体フレーム11を覆うように、本体フレーム11に取り付けられる。より具体的には、前面グリル12は、前面熱交換器22aの上下方向略中央部分から、本体フレーム11の下端までを覆うように、本体フレーム11に取り付けられている。前面グリル12は、フィルタ保持部12aと、主吸込口10aに配置される吸込口グリル12bとを有している。
【0053】
フィルタ保持部12aには、下部フィルタ13と上部フィルタ14とが取り付けられる。図4に示すように、フィルタ保持部12aに保持された下部フィルタ13は、前面熱交換器22aの上下方向略中央部分から下方に延在していると共に、その下端部が後斜め方向に傾斜している。下部フィルタ13の下端は、主吸込口10aの後端縁近傍に位置している。また、上部フィルタ14は、前面熱交換器22aの上下方向略中央部分から上方に延在している。そして、これら下部フィルタ13と上部フィルタ14とによって、前面熱交換器22aと前面パネル34との間の空間が、前後方向に関して分割されている。
【0054】
吹出口カバー31は、吹出口ユニット25を覆っている。そして、上述のように、吹出口カバー31の上壁には吹出口10dが形成されている。また、吹出口カバー31の前面には、前面パネル部31aが設けられている。前面パネル部31aは、左右方向に長い矩形形状を有している。ここで、前面パネル部31aの上下方向の長さをLとする。
【0055】
輻射パネル32は、左右に長い矩形形状を有しており、その内部には、冷媒回路50を構成する配管の一部が配置されている。そして、室外機4から送られてきた冷媒は、正面視において輻射パネル32の右端部から輻射パネル32内に流入し、左側端部まで流れる。その後折り返して、左側端部から右側端部まで流れ、右側端部から輻射パネル32の外に流れでる。
【0056】
輻射パネル32の前面には、前面パネル部32aが設けられている。輻射パネル32の前面パネル部32aの上下方向の長さは、吹出口カバー31の前面パネル部31aのほぼ2倍である。すなわち、図3に示すように、前面パネル部32aの上下方向の長さは約2Lである。前面パネル部32aは、吹出口カバー31の前面パネル部31aの下方に位置している。図4に示すように、輻射パネル32の上下方向略中央部分は、前面熱交換器22aの上端部に対向している。
【0057】
開閉パネル33は、輻射パネル32の前面パネル部32aの下方に着脱可能に取り付けられている。開閉パネル33は、左右方向に長い矩形形状を有しており、その上下方向の長さは、吹出口カバー31の前面パネル部31aのほぼ4倍である。すなわち、図3に示すように、開閉パネル33の上下方向の長さは約4Lである。図4に示すように、開閉パネル33の上端の上下方向位置は、前面グリル12の上端とほぼ同じである。上述のように、開閉パネル33の下端は、主吸込口10aの一部を構成している。したがって、開閉パネル33を取り外すことにより、前面グリル12を露出させ、前面グリル12のフィルタ保持部12aに取り付けられている下部フィルタ13および上部フィルタ14の着脱を行うことができる。
【0058】
上述のように、前面パネル34は、吹出口カバー31に設けられた前面パネル部31aと、輻射パネル32に設けられた前面パネル部32aと、開閉パネル33とで構成されている。そして、輻射パネル32の前面パネル部32aと開閉パネル33との間には、左右方向(水平方向)に伸延するスリット状の開口である補助吸込口10bが形成されている。また、開閉パネル33の上端近傍にも、左右方向に伸延するスリット状の開口である補助吸込口10cが形成されている。図3に示すように、開閉パネル33の上端と補助吸込口10cとの上下方向に関する距離はLである。
【0059】
すなわち、前面パネル34の上下方向の長さは7Lであり、補助吸込口10bは、前面パネル34の上端から3Lの位置、補助吸込口10cは、前面パネル34の下端から3Lの位置にそれぞれ形成されている。つまり、補助吸込口10b、10cは、前面パネル34の上下方向(高さ方向)中央の領域に設けられている。また、図4に示すように、補助吸込口10b、10cは、前面熱交換器22aと対向している。
【0060】
また、図4に示すように、開閉パネル33には、2つの補助吸込口10b、10cの下端からそれぞれ突出する突出部33aが形成されている。突出部33aは、背面に近付くにつれて上方に傾斜している。
【0061】
<室内機1の動作>
次に、室内機1の動作について説明する。
クロスフローファン21を駆動させることにより、主吸込口10aおよび補助吸込口10b、10cから室内の空気がケーシング10内に吸い込まれる。
【0062】
主吸込口10aから吸い込まれた空気の一部は、前面パネル34と前面熱交換器22aとの間のすき間を下方から上方に向かって流れ、前面熱交換器22aに供給される。また、主吸込口10aから吸い込まれた空気の残りの一部は、ドレンパン24の下方において前方から後方に向かって流れ、ドレンパン24の後方を通って背面熱交換器22bに供給される。また、補助吸込口10b、10cから吸い込まれた空気は、前面パネル34と前面熱交換器22aとの間のすき間を下方から上方に向かって流れ、前面熱交換器22aに供給される。なお、主吸込口10aおよび補助吸込口10b、10cから吸い込まれた空気は、室内熱交換器22に供給される前に、下部フィルタ13または上部フィルタ14を通過する。このとき、空気に含まれる埃等が除去される。
【0063】
室内熱交換器22に供給された空気は、室内熱交換器22において室外機4から供給された冷媒との間で熱交換が行われる。その後、クロスフローファン21を通過して吹出口10dから吹き出される。
【0064】
<本実施形態の室内機1の特徴>
本実施形態の室内機1では、クロスフローファン21と室内熱交換器22とを収容するケーシング10が、その下端部に設けられ、床面近傍にある空気を吸い込む主吸込口10aと、その上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口10dとを有している。また、ケーシング10において、室内熱交換器22の前面熱交換器22aと対向する前面パネル34が、主吸込口10aと吹出口10dとの間に設けられた補助吸込口10b、10cを有している。したがって、主吸込口10aから吸い込まれた空気の一部は、前面パネル34と前面熱交換器22aとの間のすき間を、下方から上方に向かって流れた後、前面熱交換器22aに供給される。補助吸込口10b、10cは、主吸込口10aよりも上方に位置しているので、補助吸込口10b、10cから吸い込まれ、前面パネル34と前面熱交換器22aとの間のすき間を流れる空気は、主吸込口10aから吸い込まれた空気よりも上方まで達する。よって、補助吸込口10b、10cから吸い込まれた空気を前面熱交換器22aの上端近傍に供給することができる。これにより、熱交換効率の低下を抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の室内機1では、補助吸込口10b、10cは水平方向に沿って延在したスリット状の開口である。したがって、補助吸込口10b、10cから吸い込んだ空気を、前面熱交換器22aの全幅にわたって供給することができる。よって、熱交換効率の低下を確実に抑制できる。
【0066】
また、本実施形態の室内機1では、補助吸込口10b、10cが、前面パネル34の高さ方向中央の領域に設けられている。したがって、補助吸込口10b、10cから吸い込んだ空気が、前面熱交換器22aの上端近傍に供給されやすくなる。
【0067】
さらに、本実施形態の室内機1では、補助吸込口10b、10cが、前面熱交換器22aと対向する位置に設けられている。したがって、補助吸込口10b、10cから吸い込んだ空気が、前面熱交換器22aに供給されやすくなる。
【0068】
加えて、本実施形態の室内機1では、前面パネル34が、補助吸込口10b、10cよりも上方に設けられ、冷媒回路50を構成する配管の一部を有する輻射パネル32を含んでいる。したがって、輻射パネル32から放熱された熱によって加熱された空気が、補助吸込口10b、10cから吸い込まれるのを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態の室内機1では、室内熱交換器22が、前面パネル34と略平行に配置された前面熱交換器22aと、前面熱交換器22aの下端近傍から背面に近付くにつれて上方に傾斜する背面熱交換器22bとを有している。したがって、室内熱交換器全体を板状に形成して前面パネル34と略平行に配置する場合に比べて、前面パネル34に略平行に配置される前面熱交換器22aの高さを短くできる。よって、ケーシング10の高さ方向について小型化できる。また、前面熱交換器22aの高さを短くできることで、主吸込口10aから吸い込まれた空気が前面熱交換器22aの上端近傍に供給されやすくなる。すなわち、主吸込口10aから吸い込まれた空気を前面熱交換器22aの上端部近傍まで供給するために、前面パネル34と前面熱交換器22aとの間のすき間を大きくする必要がないので、ケーシング10の奥行方向についても小型化できる。
【0070】
さらに、本実施形態の室内機1は、前面パネル34が、補助吸込口10b、10cの下端から背面に近付くにつれて上方に傾斜する突出部33aを有している。したがって、補助吸込口10b、10cから吸い込まれた空気が上方へ流れるようにできることから、その空気が前面熱交換器22aの上端近傍に供給されやすくなる。また、外部からケーシング10の内部を見え難くできる。
【0071】
また、本実施形態の室内機1は、室内熱交換器22の下方に設けられたドレンパン24を備えており、突出部33aが、ドレンパン24よりも下方に設けられていない。したがって、主吸込口10aの近傍において主吸込口10aから吸い込まれた空気が通る流路が、突出部33aによって狭くなるのを防ぐことができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、補助吸込口10b、10cが水平方向に沿って延在したスリット状の開口である場合について説明したが、補助吸込口10b、10cの形状は、これに限定されるものではない。すなわち、補助吸込口10b、10cは、上下方向に沿って延在するスリット状の開口であってもよいし、円形の開口であってもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、補助吸込口10b、10cが、前面パネル34の高さ方向中央の領域に設けられている場合について説明したが、補助吸込口10b、10cの高さ方向に関する位置は、これに限定されるものではない。すなわち、補助吸込口10b、10cは、前面パネル34の下端部や上端部に設けられていてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、補助吸込口10b、10cが、前面熱交換器22aと対向する位置に設けられている場合について説明したが、補助吸込口10b、10cは、前面熱交換器22aと対向する位置に設けられていなくてもよい。
【0076】
加えて、上述の実施形態では、2つの補助吸込口10b、10cが形成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、補助吸込口は1つであってもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
【0077】
さらに、上述の実施形態では、前面パネル34が、補助吸込口10b、10cよりも上方に設けられた輻射パネル32を含んでいる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、輻射パネル32は、補助吸込口10b、10cよりも下方に設けられていてもよい。また、前面パネル34は、輻射パネル32を含んでいなくてもよい。
【0078】
加えて、上述の実施形態では、室内熱交換器22が、前面熱交換器22aと背面熱交換器22bとから構成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば、室内熱交換器22全体が、前面パネル34と略平行に配置された板状に形成されていてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、前面パネル34が、補助吸込口10b、10cの下端から背面に近付くにつれて上方に傾斜する突出部33aを有している場合について説明したが、突出部33aはなくてもよい。
【0080】
さらに、上述の実施形態では、突出部33aが、ドレンパン24よりも下方に設けられていない場合について説明したが、突出部33aは、ドレンパン24よりも下方に設けられていてもよい。
【0081】
加えて、上述の実施形態では、床面から10cm程度浮かした状態で、壁面に取り付けられる場合について説明したが、本発明は、床面近傍に設置される室内機全般に適用可能である。したがって、床面に設置される室内機に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明を利用すれば、熱交換効率の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 室内機
10 ケーシング
10a 主吸込口
10b、10c 補助吸込口
10d 吹出口
21 クロスフローファン
22 室内熱交換器
22a 前面熱交換器
22b 背面熱交換器
24 ドレンパン
32 輻射パネル
33a 突出部
34 前面パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルを有するケーシングと、
前記ケーシング内に収容されたクロスフローファンと、
前記ケーシング内において前記前面パネルの裏面と対向する部分を有する熱交換器とを備え、
前記ケーシングが、
前記ケーシングの下端部に設けられ、床面近傍にある空気を吸い込む主吸込口と、
前記ケーシングの上端部に設けられ、空気を吹き出す吹出口とを有していると共に、
前記前面パネルが、前記主吸込口と前記吹出口との間に設けられた補助吸込口を有していることを特徴とする空気調和機の床置き室内機。
【請求項2】
前記補助吸込口が、水平方向に沿って延在したスリット状の開口であることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項3】
前記補助吸込口が、前記前面パネルの高さ方向中央の領域に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項4】
前記補助吸込口が、前記熱交換器に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項5】
前記前面パネルが、前記補助吸込口より上方に設けられ、冷媒回路を構成する配管の一部を有する輻射パネルを含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項6】
前記熱交換器が、
前記前面パネルと略平行に配置された前面熱交換器と、
前記前面熱交換器の下端近傍から背面に近付くにつれて上方に傾斜する背面熱交換器とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項7】
前記前面パネルが、前記補助吸込口の下端から背面に近付くにつれて上方に傾斜する突出部を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気調和機の床置き室内機。
【請求項8】
前記熱交換器の下方に設けられたドレンパンを備え、
前記突出部が、前記ドレンパンより下方に設けられていないことを特徴とする請求項7に記載の空気調和機の床置き室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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