説明

空気調和機の通信制御回路

【課題】通信信号レベルの低下による通信データの誤検知による誤動作が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供すること。
【解決手段】本発明の空気調和機の通信制御回路は、室外通信制御手段、室外送受信手段、基準電圧発生手段、基準抵抗手段、電圧検知手段、室外通信切替手段を有する室外機と、室内通信制御手段、室内送受信手段、室内通信切替手段を有する室内機とで構成される空気調和機の通信制御回路であって、室外機と室内機とは通信線で接続され、室外機に電源投入後、電圧検知手段により、室内送受信手段の抵抗値を算出することにより、抵抗値が所定の値以上であるか否かを判定し、所定の値未満である場合は、所定の値になるまで室外送受信手段との接続を遮断して、さらに電圧検知手段により電圧測定を続けて、抵抗値が所定の値以上になれば室外送受信手段との接続を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機と室外機間で、同一接続線にて通信を行う空気調和機の通信制御回路の通信方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の通信制御回路として、室内機又は室外機のどちらか一方から電源が供給され、電源の投入と同時に室内機と室外機の通信回路が接続され、互いに通信が行われるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来の空気調和機の通信回路を示すものである。図8に示すように、室外機と室内機の両機器間に交流主回路電流を供給しうる2本の電源線3,4と1本の通信線5を配設すると共に、電源線4,5の電圧からその電圧よりも低い通信用の直流電圧を得る直流電源手段7と、両機器側にそれぞれ直列に設けられた送信用および受信用フォトカプラPC1、PC2、PC1’、PC2’とを備え、室内機2の送信用および受信用フォトカプラPC1、PC2は、通信線5を介して室外機1の送信用および受信用フォトカプラPC1’、PC2’と直列に接続され、かつ直流電源手段7の出力端に接続され、さらに通信線5には、通信用の直流電源電圧を上回る電圧が印加された時に保護するツェナーダイオードZD、ZD’から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−039603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、施工時のミスにより室外機と室内機間の通信線が指定以外の抵抗値のものを使用したり、配線が規定以上に長く引き伸ばされた場合や、接続配線の間違いや接続される機器の台数が規定以上に多く接続された場合で、通信回路の抵抗値が変化することにより信号の立ち上がり、又は、立下りの通信波形のレベルが設計値以上に変化することにより通信回路を構成するフォトカプラがオンしなかったり、オフするタイミング時間に遅れが発生するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、室外機と室内機の通信回路の抵抗値を算出して、この抵抗値が所定の値以下の場合は、異常と判断して通信を行わないことにより、通信信号レベルの低下による通信データの誤検知による誤動作が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機の通信制御回路は、室外通信制御手段、室外送受信手段、基準電圧発生手段、基準抵抗手段、電圧検知手段、室外通信切替手段を有する室外機と、室内通信制御手段、室内送受信手段、室内通信切替手段を有する室内機とで構成される空気調和機の通信制御回路であって、室外機と室内機とは通信線で接続され、室外機に電源投入後、電圧検知手段により、室内送受信手段の抵抗値を算出することにより、抵抗値が所定の値以上であるか否かを判定し、所定の値未満である場合は、所定の値になるまで室外送受信手段との接続を遮断して、さらに電圧検知手段により電圧測定を続けて、抵抗値が所定の値以上になれば室外送受信手段との接続を行うことにより、通信回路の抵抗値が所定の範囲外の場合に、室内機と通信を行うことにより通信デ
ータの誤受信を回避することにより誤動作を避けることができることになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、通信信号レベルの低下による通信データの誤検知による誤動作が発生しない空気調和機の通信制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機の構成ブロック図
【図2】本発明の実施の形態2における空気調和機の構成ブロック図
【図3】本発明の実施の形態3における空気調和機の構成ブロック図
【図4】本発明の実施の形態4における空気調和機の構成ブロック図
【図5】本発明の実施の形態5における空気調和機の構成ブロック図
【図6】本発明の実施の形態1から5における空気調和機の制御フローチャート
【図7】本発明の実施の形態1から5における空気調和機の算出抵抗値と接続台数図
【図8】従来の空気調和機における構成ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明の空気調和機の通信制御回路は、室外通信制御手段、室外送受信手段、基準電圧発生手段、基準抵抗手段、電圧検知手段、室外通信切替手段を有する室外機と、室内通信制御手段、室内送受信手段、室内通信切替手段を有する室内機とで構成される空気調和機の通信制御回路であって、室外機と室内機とは通信線で接続され、室外機に電源投入後、電圧検知手段により、室内送受信手段の抵抗値を算出することにより、抵抗値が所定の値以上であるか否かを判定し、所定の値未満である場合は、所定の値になるまで室外送受信手段との接続を遮断して、さらに電圧検知手段により電圧測定を続けて、抵抗値が所定の値以上になれば室外送受信手段との接続を行うことにより、通信回路の抵抗値が所定の範囲外の場合に、室内機と通信を行うことにより通信データの誤受信を回避することにより誤動作を避けることができることになる。
【0011】
第2の発明の空気調和機の通信制御回路は、特に第1の発明において、室外機に、抵抗値が所定値以下であることを知らせる異常表示手段を設けたことにより、通信配線の改善を促すものである。
【0012】
第3の発明の空気調和機の通信制御回路は、特に第1または第2の発明において、室外機に電圧上昇手段を設け、抵抗値が所定以下であることを検知した後、電圧上昇手段により電圧を上げることにより、通信が正常に行われるようにしたことにより、正常に通信できるようにするものである。
【0013】
第4の発明の空気調和機の通信制御回路は、特に第1から第3の発明において、室外機に接続台数判定手段を設けておき、抵抗値から接続可能な室内機の台数を算出し、室外通信切替手段により室外送受信手段側に切り換えて室内機との通信を行い、室内機からの応答台数と照合して、算出された室内機の接続台を超えるときは、異常表示するようにしたことにより、通信線の改善を促すものである。
【0014】
第5の発明の空気調和機の通信制御回路は、特に第1から第4の発明において、室外機に接続台数表示手段を設けておき、接続台数判定手段からの接続台数と、通信により確認した接続台数との差を表示することにより、施工ミスの発生を防ぐものである。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和機の通信回路のブロック図である。同図において、図8と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。
【0017】
図1において、室外制御手段10と、室外送受信手段11と、基準電圧発生手段12と、基準抵抗手段13と、電圧検知手段14と、室外通信切替手段15とからなる室外機と、室内通信制御手段20と、室内送受信手段21と、室内通信切替手段22からなる室内機A2と室内機B3とからなる。
【0018】
図6は、本発明の算出抵抗値と接続台数の関係および検知回路を示す図である。図7は本発明の制御の流れを示すフローチャートである。
【0019】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下その動作、作用を説明する。
【0020】
まず、空気調和機の室外機1は、電源投入後、室外通信切替手段15を基準電圧発生手段12側に切り替えて(STEP1)、基準電圧発生手段12により抵抗値測定のための基準電圧を室内機A、室内機B側に出力する(STEP2)。
【0021】
この電圧を基準抵抗手段13を介して電圧検知手段14により、室内送受信手段21の抵抗値を以下に示す式により算出する(STEP3)。
【0022】
算出方法は、基準電圧発生手段12から測定のための基準電圧(この場合、交流2V)を基準抵抗手段13(この場合、10kΩ)を介して通信回路に印加し、基準抵抗手段13の後の電圧を測定して、下記の式にて抵抗値Z1を求める(図6の検知回路)。V1は電圧検知手段14により測定される検知電圧である。
【0023】
通信回路の電流:I1=V/(Z1+10kΩ)なお、基準電圧V=2V(AC)とする。
【0024】
検知電圧:V1=I1*Z1=2×Z1/(Z1+10kΩ)
抵抗値:Z1=V1×10kΩ/(2−V1)
この抵抗値Z1が所定の値(図6の算出抵抗値と接続台数の表の正常範囲、10kΩ〜40kΩ)であるか、否かを判定し、否の場合は、所定の値になるまで室外通信切替手段15をそのまま電圧検知手段14側に保持し、室外送受信手段11との接続を遮断して、電圧測定を続ける(STEP4)。
【0025】
抵抗値が所定の範囲内になれば室外送受信手段11側にすることにより室内機A2、室内機B3と通信を開始する(STEP5)。これにより、抵抗値異常で通信することによる誤動作を回避するものである。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における空気調和機の通信回路のブロック図である。同図において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。
【0027】
図2において、請求項2に記載の空気調和機の室外機1は、異常表示手段16からなる。
【0028】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
まず、室外機1の室外制御手段10は、請求項1に記載されたように室内送受信手段21の抵抗値を測定する。この抵抗値が図6に示す正常範囲の値であれば室外通信切替手段15を室外送受信手段11側に切替えて通常の通信を行うが、この抵抗値が範囲外であれば、異常表示手段16により通信回路の異常を表示させることで、通信回路の改善を促すものである。
【0030】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における空気調和機の通信回路のブロック図である。同図において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。
【0031】
図3において、請求項2に記載の空気調和機の室外機1は、電圧上昇手段17からなる。
【0032】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
室外機1の室外制御手段10は、請求項1に記載されたように室内機と室外機間の通信回路の抵抗値を測定する。この抵抗が図6に示す正常は抵抗値の範囲外であればこの抵抗値が範囲外で異常表示手段16により通信回路の異常を表示させるとともに、室外通信切替手段15を室外送受信手段11側に切り替え、電圧上昇手段17をオンさせて室内機A,室外機B側の通信回路の電圧を上昇させることで、抵抗値の低下による信号ベレルの低下を防ぐことにより通常の通信を行うことで、室内機との通信を正常に行うものである。
【0034】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における空気調和機の通信回路のブロック図である。同図において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。図4において、空気調和機の室外機1は、接続台数判定手段18を有する。
【0035】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
室外機1の室外制御手段10は、請求項1に記載されたように室内機との通信回路の抵抗値を算出する。この抵抗から接続台数判定手段18は、図.6に示す抵抗値と接続台数の関係から通信可能な接続台数を算出する。次に、室外通信切替手段15を室外送受信手段11側に切替え、室内機との通信を行うとともに、応答する室内機の台数を検出する。
【0037】
この台数が算出された接続台数以下であれば通信を継続し、多ければ異常表示手段16により異常表示を行うことで、接続台数の超過を知らせ、接続台数の改善を促すものである。
【0038】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5における空気調和機の通信回路のブロック図である。同図において、図2と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。図5において、空気調和機の室外機1は、接続台数表示手段19を有する。
【0039】
以上のように構成された空気調和機の通信制御回路について、以下その動作、作用を説明する。
【0040】
室外機1の室外制御手段10は、請求項4に記載されたように接続台数判定手段18に
より通信可能な接続台数を算出した後、室外通信切替手段15を室外送受信手段11側に切替え、室内機との通信を行い応答する室内機の台数を検出し、この台数と先に算出された接続台数との差を表示することにより、接続の台数の超過か、余裕が有るか知らせることにより、接続台数調整を可能にするものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる空気調和機の通信制御回路は、室外機と室内機の通信回路の抵抗値を算出して、この抵抗値が正常範囲外と判断した場合には、室内機との通信を行わないことにより、通信データの誤検知による誤動作を避けるとともに、異常表示手段、接続台数表示手段を設けて、接続台数や配線による施工ミスの改善をうながすことが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
7 直流電源手段
10 室外制御手段
11 室外送受信手段
12 基準電圧発生手段
13 基準抵抗手段
14 電圧検知手段
15 室外通信切替手段
16 異常表示手段
17 電圧上昇手段
18 接続台数判定手段
19 接続台数表示手段
20 室内通信制御手段
21 室内送受信手段
22 室内通信切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外通信制御手段、室外送受信手段、基準電圧発生手段、基準抵抗手段、電圧検知手段、室外通信切替手段を有する室外機と、室内通信制御手段、室内送受信手段、室内通信切替手段を有する室内機とで構成される空気調和機の通信制御回路であって、
前記室外機と前記室内機とは通信線で接続され、前記室外機に電源投入後、前記電圧検知手段により、前記室内送受信手段の抵抗値を算出することにより、前記抵抗値が所定の値以上であるか否かを判定し、所定の値未満である場合は、所定の値になるまで前記室外送受信手段との接続を遮断して、さらに前記電圧検知手段により電圧測定を続けて、抵抗値が所定の値以上になれば前記室外送受信手段との接続を行うことを特徴とする空気調和機の通信制御回路。
【請求項2】
前記室外機に、抵抗値が所定値以下であることを知らせる異常表示手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の通信制御回路。
【請求項3】
前記室外機に電圧上昇手段を設け、抵抗値が所定以下であることを検知した後、前記電圧上昇手段により電圧を上げることにより、通信が正常に行われるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の通信制御回路。
【請求項4】
前記室外機に接続台数判定手段を設けておき、抵抗値から接続可能な室内機の台数を算出し、室外通信切替手段により室外送受信手段側に切り換えて室内機との通信を行い、室内機からの応答台数と照合して、算出された室内機の接続台を超えるときは、異常表示するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和機の通信制御回路。
【請求項5】
前記室外機に接続台数表示手段を設けておき、接続台数判定手段からの接続台数と、通信により確認した接続台数との差を表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気調和機の通信制御回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−242035(P2012−242035A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114320(P2011−114320)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】