説明

空気調和機

【課題】空気調和機のフィルター装置において、エアーフィルター1に絡まった塵埃などの埃を十分に除去し、吸引により高い清掃能力を保持するエアーフィルター1を提供することを目的とするものである。
【解決手段】空気調和機のフィルター装置のエアーフィルター1として、ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維2を用いて平織りしたものである。この構成によって、エアーフィルター1で捕集した塵埃がエアーフィルター1の繊維に絡まり難くすることができ、吸引ノズルにて容易に塵埃を除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターの清掃を自動的に行うようにしたフィルター装置を搭載した空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機のフィルター装置は、熱交換器の前面に、空気調和機の本体内部へ埃が侵入することを防ぐためのエアーフィルターが設けられており、このエアーフィルターは付着した塵埃を手で清掃できるように着脱自在に構成されている。こうした構成でのフィルター装置は頻繁なメンテナンスが必要となるだけでなく、メンテナンスが行われるまでの間にはエアーフィルターが徐々に目詰まりしていき、その結果、熱交換器を通過する風量が低下して空調能力が低下して消費電力の増大につながることとなる。
【0003】
このため、フィルターのメンテナンスの手間を低減する目的で、エアーフィルターに付着した塵埃を吸引ノズルにて吸引清掃し、吸引された塵埃を集塵装置に集塵するフィルター装置が考案されている。
【0004】
図6は前記従来技術における空気調和機のフィルター装置の全体構成を示した図である。この図において、本体1の前面上部および上面に設けられた吸込口2と、前面下部に設けられた吹出口3とを結ぶ空気通路に、フィルタ4と、熱交換器6と、送風ファン5とを夫々設けた構成の空気調和機において、前記フィルタ4を清掃するためにフィルタ4上を移動自在に形成されたフィルタ清掃装置9を設けるが、このフィルタ清掃装置9は、フィルタ4をフィルタ清掃装置9の内側に沿って回動させる回動手段10と、フィルタ4上のごみを除去するごみ除去手段11と、ごみを収納するごみ収納部12から構成されている。
【0005】
ごみ除去手段11は、フィルタ4上を移動自在に形成されたごみ吸引部13と、ごみ吸引部13とごみ収納部12とを連結する吸引ダクト部15とから構成されている。
【0006】
ごみ吸引部13は巻き取りモータ17の駆動により固定レール16に沿って左右方向に移動自在となっている。
【0007】
以上の構成により、このフィルタ清掃装置9のごみ吸引部13はフィルタ4上を左右方向に移動するにつれ、フィルタ4上に付着したごみは吸引され、ごみ収納部12に運ばれる。
【0008】
また、フィルタ清掃装置9のごみ吸引部13が左右に移動するとともに、フィルタ4が前記回動手段10によってごみ吸引部13の移動方向と直角方向(上下方向)に移動されるので、前記フィルタ4のほぼ全部の面積についてごみを吸引することができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、エアーフィルターの従来技術としては図7に示すように合成繊維を織り、枠体を結着させたものがある。
【0010】
同図に示すように枠体12および12aの間の網目状のフィルタ部3をポリプロピレンで一体成形してフィルター1を形成したものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−340395号公報
【特許文献2】特開平10−170064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来技術の取り外して清掃を行うタイプのエアーフィルターはポリプロピレン樹脂繊維で構成されているものが一般的であり、この場合ポリプロピレン樹脂自体の機械的強度が弱いためにエアーフィルターなどの繊維状として用いる場合には、最低でも百数十μm程度以上の繊維径が必要となる。
【0012】
このため、エアーフィルター全体としては凹凸をもつ形態となり、吸引ノズルとエアーフィルターとの間隔をある程度の距離で一定に保つことが困難となることから十分な埃の清掃除去ができない場合があった。
【0013】
また、従来のポリプロピレン樹脂繊維は凹凸を持つために、捕集した塵埃がエアーフィルターに絡みつき吸引だけでは充分に除去できない場合があった。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、エアーフィルターに絡まった塵埃などの埃を十分に除去し、吸引により高い清掃能力を有するフィルター装置を搭載した空気調和機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機は、熱交換器を通過する空気の塵埃を除去するエアーフィルターを構成する繊維をポリエチレンテレフタレート樹脂としたものである。
【0016】
この構成によって、エアーフィルターで捕集した塵埃がエアーフィルターの繊維に絡まり難くすることができ、吸引ノズルにて容易に塵埃を除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気調和機は、エアーフィルターを構成する繊維素材の塵離れ性を向上し、エアーフィルターへの塵埃の絡み付きを防止することにより、油分などを含んだ塵埃に対しても、吸引ノズルによる吸引清掃機能が十分な清掃能力を発揮できる構成を可能としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、熱交換器を通過する空気の塵埃を除去するエアーフィルターを構成する繊維をポリエチレンテレフタレート樹脂とすることにより、エアーフィルターで捕集した塵埃がエアーフィルターの繊維に絡まり難くすることができ、容易に塵埃を除去することができる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明のエアーフィルターと、前記エアーフィルター上に形成されたフィルター清掃装置により構成されるフィルター装置を具備し、前記フィルター清掃装置は、前記エアーフィルターを前記フィルター清掃装置の内側に沿って回動させる回動手段と、前記エアーフィルター上のごみを除去するごみ除去手段と、ごみを収納するごみ収納部から構成されていることにより、エアーフィルターで捕集した塵埃がエアーフィルターの繊維に絡まり難くすることができ、ごみ除去手段にて容易に塵埃を除去することができる。
【0020】
第3の発明は、熱交換器を通過する空気の塵埃を除去するエアーフィルターと、前記エアーフィルター上に形成されたフィルター清掃装置により構成されるフィルター装置を具備し、前記フィルター清掃装置は、前記エアーフィルターを前記フィルター清掃装置の内
側に沿って回動させる回動手段と、前記エアーフィルター上のごみを除去するごみ除去手段と、ごみを収納するごみ収納部から構成され、前記エアーフィルターはごみ除去手段と前記エアーフィルターとの間隔を所定の距離で一定に保つことができる形状とすることにより、エアーフィルターで捕集した塵埃をごみ除去手段にて均一に除去することができる。
【0021】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明のエアーフィルターを、フィルター網の凹凸が少ない構造とすることにより、エアーフィルターで捕集した塵埃がエアーフィルターの繊維に絡まり難くすることができ、ごみ除去手段にて容易に塵埃を除去することができる。
【0022】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のエアーフィルターを、フィルター網が平織りの構造とすることにより、エアーフィルターで捕集した塵埃がエアーフィルターの繊維に絡まり難くすることができ、ごみ除去手段にて容易に塵埃を除去することができる。
【0023】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のエアーフィルターを、フィルター網の繊維同士が交わる交点の樹脂層同士を溶着した構造とすることにより、繊維同士が重なる部分の厚みを抑制するとともに、繊維の移動やズレなどによる偏りを防止することができる。
【0024】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明のフィルター網を、芯線に高融点タイプの樹脂を用い、その表面に低融点タイプの樹脂の層を施した2層からなる樹脂繊維で構成することにより、繊維同士が重なる部分の厚みを抑制するとともに、繊維の移動やズレなどによる偏りを防止することができる。
【0025】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明のエアーフィルターは、格子を有するフィルター枠とフィルター網とから成り、前記フィルター枠はABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂で成型加工された構造とすることにより、フィルター網の弛みを抑制することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
以下、図1を用い、実施の形態1について説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるエアーフィルターの概略外観図を示すものである。
【0029】
図1において、1はエアーフィルター、2はPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂繊維である。
【0030】
エアーフィルター1は、100μm以下のPET樹脂繊維2を織り込んで形成されたフィルター網102とフィルター枠101とから構成されており、PET樹脂繊維2は芯線に高融点タイプのPET樹脂を用い、その表面に低融点タイプのPET樹脂の層を施した2層からなるPET樹脂繊維2で構成されている。
【0031】
この高融点と低融点の2層からなるPET樹脂繊維2を織り込み繊維同士が交わる交点の低融点PET樹脂層同士を溶着することにより、繊維同士が重なる部分の厚みを抑制す
るとともに、繊維の移動やズレなどによる偏りを防止する構造となっている。
【0032】
このような構造からなるフィルター網102を、例えばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂からなるフィルター枠101で周囲や格子を成型加工し、フィルター網102の弛みを抑制することにより、エアーフィルター1となる。
【0033】
このようにしてなされたエアーフィルター1を空気調和機のフィルター装置100として用いることにより、フィルター網102の凹凸や撓みが少ないため、吸引ノズルと103エアーフィルター1との間隔を間隔で一定に保つことできるため、エアーフィルター1で捕集した塵埃を均一に除去することができる。
【0034】
さらに、フィルター網102の凹凸が少ないためにエアーフィルター1で捕集した塵埃がエアーフィルター1の繊維に絡まり難くすることができ、吸引ノズル103にて容易に塵埃を除去することが可能となる。
(実施の形態2)
以下、図2を用い実施の形態2について説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態2におけるエアーフィルターの概略外観図である。
【0036】
図2において、3はフッ素加工樹脂繊維である。なお、空気調和機のフィルター装置の全体構成は実施の形態1(図1)と同じであるため説明は省略する。
【0037】
エアーフィルター1は、フィルター網102として樹脂繊維の表面にフッ素加工を施した、フッ素加工樹脂繊維3を用いたものである。
【0038】
このフッ素加工樹脂繊維3は、例えばPET樹脂繊維2の表面にバインダーなどを用いフッ素樹脂をコーティングしたものであり、その後で、例えば平織りなどによりフィルター状に加工し、フィルター網102として成型する。また、樹脂繊維を平織りなどによりフィルター状に加工した後、フッ素樹脂加工を施すことも可能である。
【0039】
このようにフィルター網102として、フッ素樹脂加工繊維3を用いてエアーフィルター1を形成することにより、油分などを含んだ塵埃をエアーフィルター1で捕集した場合に、エアーフィルター1の表面に施されたフッ素樹脂加工の影響で、油分などがエアーフィルター1に固着することを防止することが可能となり、フィルター網102表面からの塵埃などの塵離れ性の向上ができ、吸引ノズル103にて容易に塵埃を吸引除去することができる。
(実施の形態3)
以下、図3を用い実施の形態3について説明する。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態3におけるエアーフィルターの概略外観図である。
【0041】
図3において、4は金属材料蒸着繊維である。なお、空気調和機のフィルター装置の全体構成は実施の形態1(図1)と同じであるため説明は省略する。
【0042】
エアーフィルター1は、フィルター網102として、樹脂繊維の表面に、例えば、ステンレスの微細な金属粉末を真空蒸着などの手段を用いて加工した繊維を平織りなどの工法によりフィルター状に加工したものを用いたものである。
【0043】
このようにフィルター網102として金属材料蒸着繊維4を用いてエアーフィルター1を形成することにより、エアーフィルター1の表面に施された金属材料でフィルター網1
02の表面を鏡面状とすることが可能となり、油分などを含んだ塵埃をエアーフィルター1にて捕集した場合でも、油分などとエアーフィルター1との剥離性を向上することができ、吸引ノズル103にて容易に塵埃を除去することができる。
【0044】
なお、この例は金属微粉末としてステンレスを用いたが、導電性を有する金属の微粉末であれば同様の効果を得ることが可能であるとともに、蒸着手段も真空蒸着に拘ることなく金属の特性に合わせた方法での対応で可能である。
【0045】
(実施の形態4)
以下、図4を用い実施の形態4について説明する。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態4におけるエアーフィルターの概略外観図である。
【0047】
図4において、5は導電繊維である。なお、空気調和機のフィルター装置の全体構成は実施の形態1(図1)と同じであるため説明は省略する。
【0048】
第4の発明のエアーフィルター1は、導電性を有する繊維5とPET樹脂繊維2とを混織してフィルター状に加工しフィルター網102としたものである。
【0049】
この例では、導電性樹脂繊維5はPET樹脂繊維と混織したフィルター網102を用いたが、全て導電性樹脂繊維5にてフィルター網102としたものを用いることや、縦糸のみや横糸のみに導電性樹脂繊維5を用いることも可能であり、同様の効果も得られる。
【0050】
このようにフィルター網102の一部または全体に導電性樹脂繊維5を用いてエアーフィルター1を形成することにより、空気中に浮遊する塵埃の殆どが電荷を帯びている(帯電)状態であるため、導電性樹脂繊維5との電位差によりエアーフィルター1での塵埃の捕集効率を向上することができるとともに、帯電している塵埃を瞬間的に除電することもでき、吸引ノズル103にて容易に塵埃を除去することができる。
(実施の形態5)
以下、図5を用い実施の形態5について説明する。
【0051】
図5は、本発明の実施の形態5におけるエアーフィルターの概略外観図である。
【0052】
図5において、6は金属繊維である。なお、空気調和機のフィルター装置の全体構成は実施の形態1(図1)と同じであるため説明は省略する。
【0053】
エアーフィルター1は、フィルター網102として、例えば、ステンレスの微細な金属繊維6を用いて平織りなどの工法によりフィルター状に加工したものを用いたものである。
【0054】
このようにフィルター網102として金属繊維5を用いてエアーフィルター1を形成することにより、エアーフィルター1の表面を鏡面状とすることが可能となり、油分などを含んだ塵埃をエアーフィルター1にて捕集した場合でも、油分などとエアーフィルター1との剥離性を向上することができ、吸引ノズル103にて容易に塵埃を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように本発明にかかる空気調和機はエアーフィルターの塵離れ性を向上し、フィルター清掃装置の集塵能力を向上することができるので、空気清浄機や掃除機等の塵埃を収集分離する機器への用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1のエアーフィルターの概略外観図
【図2】本発明の実施の形態2のエアーフィルターの概略外観図
【図3】本発明の実施の形態3のエアーフィルターの概略外観図
【図4】本発明の実施の形態4のエアーフィルターの概略外観図
【図5】本発明の実施の形態5のエアーフィルターの概略外観図
【図6】従来の空気調和機の概略構造図
【図7】従来のフィルターの概略構造図
【符号の説明】
【0057】
1 エアーフィルター
2 PET樹脂繊維
3 フッ素加工樹脂繊維
4 金属材料蒸着繊維
5 導電繊維
6 金属繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器を通過する空気の塵埃を除去するエアーフィルターを構成する繊維はポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
エアーフィルターと、前記エアーフィルター上に形成されたフィルター清掃装置により構成されるフィルター装置を具備し、前記フィルター清掃装置は、前記エアーフィルターを前記フィルター清掃装置の内側に沿って回動させる回動手段と、前記エアーフィルター上のごみを除去するごみ除去手段と、ごみを収納するごみ収納部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
熱交換器を通過する空気の塵埃を除去するエアーフィルターと、前記エアーフィルター上に形成されたフィルター清掃装置により構成されるフィルター装置を具備し、前記フィルター清掃装置は、前記エアーフィルターを前記フィルター清掃装置の内側に沿って回動させる回動手段と、前記エアーフィルター上のごみを除去するごみ除去手段と、ごみを収納するごみ収納部から構成され、前記エアーフィルターはごみ除去手段と前記エアーフィルターとの間隔を所定の距離で一定に保つことができる形状であることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
エアーフィルターは、フィルター網の凹凸が少ないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
エアーフィルターは、フィルター網が平織りの構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
エアーフィルターは、フィルター網の繊維同士が交わる交点の樹脂層同士を溶着したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
フィルター網は、芯線に高融点タイプの樹脂を用い、その表面に低融点タイプの樹脂の層を施した2層からなる樹脂繊維で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の空気調和機。
【請求項8】
エアーフィルターは、格子を有するフィルター枠とフィルター網とから成り、前記フィルター枠はABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂で成型加工されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−153445(P2006−153445A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48236(P2006−48236)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【分割の表示】特願2004−317870(P2004−317870)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】