説明

空気調和機

【課題】 宅外からの遠隔操作による運転制御が可能であるが、在室者にとって不適切な運転制御となることを防止しつつ遠隔制御機能の利便性を保つことができる空気調和機を提供する。
【解決手段】 遠隔操作レベル1〜4を設定し、各レベルにおいて遠隔操作により空気調和機の運転制御可能な範囲が内容に応じて段階的に制限される。更に、各レベルの在室状態では運転制御可能範囲を狭め、不在状態では運転制御可能範囲を広げる。その時々によって、遠隔制御レベルがいずれかに動的に設定されることにより、遠隔操作の誤操作などによって在室者にとって不適切な運転制御を行う可能性をなくし、不正アクセスにより悪意を持った運転制御の設定を防止することができる。その一方、制限の範囲内では遠隔操作機能が利用でき、その範囲内での遠隔制御の利便性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローカル側からの運転制御指令と通信機能を介した外部装置からの遠隔制御指令との2系統によって運転制御される空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機においては、その運転の開始/停止、冷房/暖房等の運転モードの設定、及び設定温度やタイマー運転の詳細設定等が標準的に可能となっているが、これらの操作は、通常、空気調和機に付属のリモコンを操作することによって行われている。一方、外部からの遠隔操作を受け付けるために、HA端子や無線モジュール等の通信手段を併せて備えている機種もあり、こうした機種では、当該通信手段を電話回線やインターネット等の通信網に接続しておくことにより、外出先から通信網を介して自宅の空気調和機の操作を行なうことが可能となっている。
【0003】
これらローカル側からの運転制御と、通信機能を介した外部装置からの遠隔制御との2系統による運転制御に関して、人の在室の有無によって、どちらの運転制御指令を有効、あるいは無効とするかの制御を行なう空気調和機及びその制御方法が提案されている。この提案によれば、空気調和機は、リモコンによる運転制御と遠隔制御装置を介する遠隔制御とによって運転が可能であり、人体検出センサーによって部屋内に人がいることが検知された場合には、制御部は遠隔制御装置からの操作入力を無効とし、リモコンによる操作入力に基づいて運転制御を行なうように構成されている。こうした構成によって、空気調和機が設置された部屋に人が在室中であるにもかかわらず、遠隔制御が行なわれるといった不具合を防止することを図っている。
【特許文献1】特開2003−120984号公報(段落[0035]〜[0038]、図2)
【0004】
近年、インターネットへの接続環境として常時接続が定着しており、部外者からの不正アクセスへの対応は必須課題となっている。これについてネットワークシステム上での対策が通常であるが、最終の被操作対象となる機器側での対応も重要となる。
【0005】
外部からの遠隔操作により受信した運転制御指令に基づいて空気調和機を運転する場合には、この運転指令が部外者からの不正アクセスによるものであっても、また正規ユーザーの誤操作によるものであっても、空気調和機の運転に反映される。部外者からの不正アクセスがあった場合、もし人が在室中のようなことがあれば、在室当人の意図しない運転条件に推移した空調が行われることになる。また逆に、人が在室状態の間は、全ての遠隔操作を無効としてしまうと、ローカル側からの遠隔操作に対する利便性が悪化する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、通信手段を介して外部に設置された遠隔制御装置からの外部運転制御指令及びリモコンによるローカル運転制御指令の2系統によって空気調和機本体の運転を行う場合に、外部運転制御指令によって空気調和機本体のすべての運転を許容するのではなく、運転指令の内容によっては実際の運転への反映には制限を課す点で解決すべき課題がある。
【0007】
この発明の目的は、空気調和機本体の運転について外部運転制御指令があったときに、空気調和機本体の運転指令の内容に応じて外部運転制御指令の受け付けの可否を定めることによって、ローカル側からの遠隔操作に対する利便性を確保しながらも、在室当人への影響が大きい意図しない運転条件に推移した空調が行われるのを防止することができる空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による空気調和機は、外部に設置された遠隔制御装置との通信手段を有しており、前記遠隔制御装置からの外部運転制御指令及びリモコンによるローカル運転制御指令の有無に基づいて空気調和機本体の運転を行う空気調和機であり、前記外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルを動的に管理する遠隔制御レベル管理手段を有しており、前記外部運転制御指令を受信した場合には、前記遠隔制御レベル管理手段にて有効であると判定されたときのみ、前記空気調和機本体の運転に反映させることを特徴としている。
【0009】
この空気調和機によれば、遠隔制御レベル管理手段は、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルを複数段のレベルで区分けし且つ動的に管理しており、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルがその時々で定められている。外部運転制御指令を受信した場合には、レベルの程度に応じて外部運転制御指令の有効・無効或いは制限が定められ、遠隔制御レベル管理手段にて有効であると判定されたときのみ、外部運転制御指令の指令内容が空気調和機本体の運転に反映される。即ち、空気調和機本体は、有効であると判定された外部運転制御指令の場合にはその指令に基づく運転が行われ、有効ではない(無効)と判定された外部運転制御指令の場合にはその指令に基づく運転は行われない。外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルは居住者が受ける空気調和環境の影響度・重要度に応じて定めることができるので、外部運転制御指令による操作が許容されることがあっても、居住者に対する空気調和の影響は小さい範囲に止められる。
【0010】
この空気調和機において、遠隔制御レベル管理手段は、ローカル運転制御指令による現在の運転状況、及びローカル運転制御指令を受信した時点からの状態継続時間に基づいて、操作可能な制御範囲のレベルを動的に変更することができる。ローカル運転制御指令によって現在運転されている空気調和機本体の運転状況と、ローカル運転制御指令を受信した時点からの状態継続時間とについては、空気調和機本体の運転制御上、認識可能である。即ち、現在の運転状況がどの程度長く継続しているかが判るので、これらのその時々に変わり得る情報に基づいて操作可能な制御範囲のレベルが動的に変更され、外部運転制御指令による操作についても、その変更された操作可能な制御範囲に応じて空気調和機本体の運転に反映される。
【0011】
上記の空気調和機において、遠隔制御レベル管理手段は、ローカル運転制御指令による操作履歴を複数分保持し、外部運転制御指令を受信した場合に、外部運転制御指令の内容が保持されている操作履歴の内容と一致した場合のみ受信した外部運転制御指令を有効と判定することができる。遠隔制御レベル管理手段にて有効であると判定するときの、有効性の根拠の一つが挙げられている。即ち、遠隔制御レベル管理手段がローカル運転制御指令による操作履歴を複数分保持しており、受信した外部運転制御指令の内容が保持されている複数の操作履歴のどれかと一致した場合には、実績のある外部運転制御指令であるので、有効と判定する。
【0012】
上記の空気調和機において、空気調和機本体が設置された室内におけるユーザーの在室状態を検知する人体検知手段を設け、遠隔制御レベル管理手段は、人体検知手段によりユーザーの在室を確認した場合には外部運転制御指令で操作可能な制御範囲を縮小する方向へ、ユーザーの不在を確認した場合には操作可能な制御範囲を拡大する方向へ遠隔制御レベルを変更することができる。空気調和機本体が設置された室内におけるユーザーの在室状態を検知する人体検知手段を設けておき、人体検知手段によりユーザーの在室を確認した場合には、ローカル運転制御を優先すべきとするほうが好ましいので、遠隔制御レベル管理手段は外部運転制御指令で操作可能な制御範囲を縮小する方向へ遠隔制御レベルを変更する。また、ユーザーの不在を確認した場合には、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲を拡大しても、ユーザーへの影響は少ないと判定されるので、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲を拡大する方向へ遠隔制御レベルを変更する。
【0013】
更に、上記の空気調和機において、現在時刻を管理する時刻管理手段と、ユーザーにより設定された複数の時間帯と時間帯毎の遠隔制御レベルとを記憶する遠隔制御時間管理テーブルを有し、前記遠隔制御レベル管理手段は、前記遠隔制御時間管理テーブルの内容に基づいて、現在時刻に対する前記遠隔制御レベルを動的に変更することができる。ユーザーが就寝している夜間等のように、ユーザーが設定した運転条件は変更しない方が好ましい時間帯がある。そこで、時刻管理手段によって現在時刻を管理し、遠隔制御時間管理テーブルには、ユーザーにより設定された複数の時間帯と当該時間帯毎の遠隔制御レベルとを記憶しておくことで、遠隔制御レベル管理手段は、遠隔制御時間管理テーブルの内容に基づいて、現在時刻に対する遠隔制御レベルを動的に変更することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による空気調和機によれば、外部運転制御指令による空気調和機の遠隔操作可能な制御範囲が、そのレベルに応じて動的に管理されているので、遠隔制御レベル管理手段にて有効であると判定された外部運転制御指令の運転指令内容のみが、空気調和機本体の運転に反映される。また、こうした制御範囲レベルの動的な管理によって、現在の運転状況や在室状態の条件に応じて遠隔操作の制限を行うことが可能となり、外部運転制御指令の形を採って不正アクセスや誤操作があったとしても、空気調和機本体の運転をユーザーの意図しない運転条件へ推移するのを抑制することができる。また、特に極度な温度変化をもたらす運転条件への推移のみ優先的に制限することも可能となる。更に、空気調和機の遠隔操作可能な制御範囲が動的に変更されるため、その時々に応じて、空調運転に対する最低限のセキュリティを確保しつつ、遠隔操作に対する利便性を最大限生かした運転制御を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明による空気調和機における全体の構成を示す機能ブロック図である。空気調和機(以下、「エアコン」と記す)1は、その全体制御を司る制御部7への運転制御信号の入力系統として、ローカル側からの入力としてリモコン5からの信号を受信処理するリモコン入力部3と、外部側からの入力として、ここでは、インターネット網9を介して携帯電話14から操作された結果に基づいてエアコン1へ制御信号を生成し伝送する家電ゲートウェイ11との通信処理を行なう無線モジュール10とを備えている。無線モジュール10は、通信処理部2を介して制御部7に接続されている。また、制御部7には記憶部8との間で、データの遣り取りが可能である。
【0016】
無線モジュール10は、IEEE802.11bを利用するものとするが、特定小電力無線やBluetooth等の他の無線媒体であっても良い。制御部7は、リモコン入力部3と無線モジュール10の両経路から入力された運転制御信号で伝達される運転条件に基づいて、センサー入力部13に接続されたサーミスタ値を読込んで、負荷駆動部12に接続されたコンプレッサ、四方弁、送風機、イオン放出装置等の機能負荷部品の制御を行い、所要の運転を行う。また、制御部7には、室内に人が在室しているか否かを検知するために焦電センサー等を利用した人感センサー6と、エアコン1の運転動作状況を表示するための表示処理部を介してLEDも接続されている。
【0017】
図2は、図1に示す制御部の内部構造を示す機能ブロック図の一例が示されている。制御部7は、入力処理手段20と、遠隔制御レベル管理手段21と、運転制御手段22と、出力処理手段23とを備えることができる。入力処理手段20は、無線モジュール10及び通信処理部2からの信号に基づく外部運転制御指令の有無の確認、リモコン入力部3からの信号に基づくローカル運転指令(リモコン信号)の有無の確認、人感センサー6からのセンサー出力に基づくユーザー在室の有無の確認、各種タイマーからの信号に基づいてローカル操作検知タイマーの作動状態の確認、及びオフタイマーの作動状態の確認等を行う。また、遠隔制御レベル管理手段21は、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルを動的に管理する手段であり、記憶部8に記憶されている各種データ及び入力処理手段20からの各種確認情報に基づいて、記憶部8に記憶されている各種データの読出し・照合と、外部運転制御指令の有効性の確認及び遠隔制御レベルの設定・更新(記憶部8の遠隔制御レベルテーブルに更新の上、記憶される。)を行う。また、運転制御手段22は、入力処理手段20及び遠隔制御レベル管理手段21からの情報に基づいて、エアコン1の現在運転状態の確認と、必要な負荷運転等の演算・制御を行い、出力処理部23は、運転制御手段22からの情報に基づいて、表示部や負荷駆動部12、各種タイマー、通信処理部2を介しての外部等へ制御用の出力信号を出力する。なお、記憶部8は、図3、図5又は図8(a)を参照して後述するように制御可能範囲とその制御内容を規定するレベルを定めた遠隔制御レベルテーブル、図6を参照して後述するように過去のリモコン操作の履歴を記憶するリモコン操作履歴テーブル、及び図8(b)を参照して後述するように制御時間帯に応じて設定された設定遠隔制御レベルを規定する遠隔制御時間管理テーブルを備えている。
【0018】
図3は、外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルを動的に管理する遠隔制御レベル管理手段による遠隔制御レベルの説明図である。遠隔制御レベルとして1〜4まで規定されており、特に運転条件として重要な「運転モード設定」「設定温度の変更」「運転開始/停止設定」については、各々の遠隔制御レベル毎に条件が異なって規定されている。図3に示す例では、レベル1は制限が最も緩く、すべての制御可能範囲は有効に設定されている。レベルの数字が大きくなるほど制限が厳しく設定されており、例えば、レベル4では、すべての制御可能範囲が無効に設定されている。また、同じレベルでも、運転モードの変更や運転開始/停止については、在宅のユーザーへの影響が大きいため、各項目よりも厳しい制約が付けられている。
【0019】
図4は、図3に示す遠隔制御レベルに基づいた制御ルーチンを示すフローチャートである。このフローチャートによれば、エアコン1の電源投入後、遠隔制御レベルの初期値は1(S1)、つまり遠隔制御に対して全操作が許可された状態で起動する。起動後にリモコン信号を検知したか否かが判断される(S2)。S2においてリモコン信号を検知した場合、ローカル操作検知タイマーとして30分がセットされ(S3)、遠隔制御レベルを最も制約の厳しいレベル4に変更した(S4)後、検知したリモコン信号の内容をエアコン1の本体制御へ反映させる(S14)。
【0020】
S2においてリモコン信号を検知していない場合、30分としてセットされたローカル操作検知タイマーが終了したか否かが判断される(S5)。S5において、このタイマーが終了しておらず動作中であるときに、外部より制御要求電文の受信があるか否かが判断される(S12)。S12において外部からの制御要求電文を受信しても、この時点では遠隔制御レベルが4に設定されており全操作が禁止状態であるため、要求内容が許可されているか否かの判断(S13)においては不許可と判断されて、エアコン1本体への運転には反映されない。従って、リモコン操作を検知した時点から所定時間の間は人が在室中であるものと判定してローカルからの運転制御が優先される。
【0021】
ローカル操作検知タイマー動作中に再度リモコン操作がなされた場合(S2)においても、その時点からローカル操作検知タイマーが再設定され(S3)、遠隔制御レベル4、即ち、全操作の禁止状態が延長されることになる。ローカル操作検知タイマーのカウントが終了後、次に人感センサー6の入力の存否を確認することで、ユーザーの在室状態を確認する(S15)。
【0022】
S15において、ユーザーが不在となった場合には、続けて現在の運転状況を確認していく。まず、現在冷房あるいは暖房運転中であるかを確認し(S6)、合致しなければ遠隔制御レベルを1に戻す(S7)。S6の確認によって冷房又は暖房運転中であると確認され、且つオフタイマーが有効であるかの確認(S8)において、オフタイマーが有効である場合には、遠隔制御レベルを3とする(S10)。遠隔制御レベルが3の場合には、遠隔操作からは運転モードの変更、運転停止を行なうことができず、設定温度の変更も制限され(ここではリモコン5で設定された設定温度に対して±2℃までの範囲の変更のみ許可している)、風量やイオン放出等の付加機能の操作のみが操作可能となる。即ち、オフタイマーが有効であるので、将来の運転停止が意図されているので、その他操作のみを有効とするが、その他の重要な項目については無効、又は制限が課せられる。
【0023】
S6の確認においてエアコン1が冷房又は暖房運転中であり、S8の確認においてオフタイマーも有効でない場合には、運転開始から設定温度へ到達済みか否かが確認される(S9)。S9の確認において設定温度へは未到達であるとされる場合にも、同様に、遠隔制御レベルが3に設定される。遠隔制御レベルが3の場合には、リモコン5によって運転された冷房又は暖房運転について、オフタイマーが終了するまでの間、又は運転開始から設定温度へ一度到達するまでの間は優先されることになるため、暖房運転中に急に冷房運転に変わってしまって室温を低下させてしまうような空調運転は行われない。
【0024】
S6の確認においてエアコン1が冷房又は暖房運転中で、S8の確認においてオフタイマーも有効でなく、且つS9の確認において運転開始から設定温度へ一度到達した場合には、遠隔制御レベルが2に設定され(S11)、遠隔操作から運転停止の操作が可能となる。ここで人感センサー6からの入力を検知し在室状態を確認した場合は、S15の判断結果がYESとなり、再度遠隔制御レベルが3に上げられ(S16)、遠隔操作からの許可範囲がより制限される条件へ移行する。
【0025】
このようにリモコン操作検知からの経過時間、現在の運転状況、及び在室状態等によって遠隔制御レベルが動的に変更され、S12の確認において外部からの制御要求電文、即ち、外部運転制御指令の受信有りのときには、S13の確認において、その時点の遠隔制御レベルに応じた判定を行い、外部運転制御指令が有効であると判定される場合のみエアコン本体1への運転に反映される(S14)処理が繰り返されることとなる。
【0026】
[実施の形態2]
図5は、この発明による空気調和機において、実施の形態2で利用される遠隔制御レベルを示す表である。図5に示す遠隔管理レベルでは、遠隔制御レベルとして1〜3まで規定されており、レベル1及びレベル3は、それぞれ制御可能範囲を全操作有効又は無効とする規定であり、特に運転条件として重要な「運転モード設定」及び「設定温度の変更」について制限を行なうレベル2が、別途規定されている。図6は、操作履歴テーブルの一例を示す図であり、リモコン操作履歴がその内容とともに示されている。制御部7には記憶部8が接続されており(図1)、リモコン5からの操作履歴の内容は遠隔制御レベル管理手段21の管理の下で記憶部8に保持され、操作履歴テーブルとして管理されている。
【0027】
図7は、操作履歴テーブルの管理を含む制御ルーチンのフローチャートである。リモコン5からの操作があるか否かが確認され(S21)、S21においてリモコン5からの操作がある毎に、操作履歴テーブルの更新処理が行われる(S22)。操作履歴テーブルの更新処理は、まず検知されたリモコン信号から要求された運転モードと設定温度値を抽出し、図6に示すような操作履歴テーブル内に同一の管理データが存在するか否かの照合・確認が行われる。同一の管理データが既に存在している場合には、その管理データに対応する有効残り時間のカウント値を所定の初期時間に再設定する。ここでは43200分(30日間)としている。もし操作履歴テーブル内に同一の管理データが存在しない場合には、テーブル領域の空きがあれば空き領域に書き込まれ、空き領域がなければ有効残り時間の最も小さいもの、つまり最も古いものを抽出してその管理データと書き換える処理を行なう。
【0028】
これらの処理により、操作履歴テーブルには、最近操作された4件分の運転条件が保持される。S21の確認においてリモコン信号が検知されない場合には、操作履歴テーブル内に書き込まれた各管理データの有効残り時間が除算される(S23)。即ち、各管理データの有効残り時間が、時間の経過とともにカウントダウンされる。もし有効残り時間がゼロになる管理データが存在すれば、当該管理データは操作履歴テーブル内から消去される。
【0029】
次に、外部からの制御要求電文の受信があるか否かを確認し(S24)、当該受信があった場合には、制御要求の内容として、運転モードの変更なのかあるいは設定温度の変更なのかが確認される(S25)。S25の確認において制御要求内容が上記のいずれかの変更に合致していた場合には、要求された運転条件と同一の管理データが操作履歴テーブル内に存在するか否かが照合・確認される(S26)。例えば、現在暖房運転中であるときに、外部から設定温度を22℃に変更するような制御要求電文を受信した場合、「暖房運転、かつ設定温度22℃」へ運転条件を変更要求するものであり、照合の結果、図6に示す操作履歴テーブル内の操作履歴2と合致するので、操作履歴テーブル内に存在すると確認され、この場合には、エアコン1の本体制御へ反映される(S27)。
【0030】
逆に外部から設定温度を20℃に変更するような制御要求電文を受信した場合では、S24及びS25の確認はいずれもYESになるが、照合の結果、「暖房運転、かつ設定温度20℃」とう操作履歴がテーブル内に存在しないため、S26の確認はNOとなり、エアコン1の本体制御へは反映されない。このようにすることで、実際に室内にてリモコン5で操作され空調として実績のある運転条件(操作履歴テーブル内に保持・管理される)についてのみ、遠隔操作が受け付けられるため、ユーザーの意図しない運転条件への推移は発生しない。
【0031】
[実施の形態3]
図8は、この発明による空気調和機において実施の形態3で利用される遠隔制御レベルについての図であり、図8(a)は遠隔制御レベルを示す表、図8(b)は遠隔制御時間管理テーブルを示す。図8(a)に遠隔制御レベルとして規定されている条件は、前述の実施の形態1と同様である。しかしながら、この実施の形態3では、遠隔制御時間管理を行っており、図8(b)のテーブルに示すように、ここでは1日24時間が、2時間ずつ、計12の時間帯に分割されている。遠隔制御時間管理テーブルは、操作履歴テーブルと同様に、遠隔制御レベル管理手段21の管理の下で記憶部8に記憶されており、設定、更新、読み出し、照合等が可能である。なお、制御部7(図1)に設けられている時刻管理手段(詳細には、図2においては、タイマー処理の一部として入力処理手段20に含まれている)が、現在時刻を管理している。
【0032】
ユ−ザーは予め、パソコン15(図1参照)のWebブラウザから家電ゲートウェイ11にアクセスし、エアコン1の遠隔制御時間管理テーブルの設定入力を行う。設定された情報は、家電ゲートウェイ11から制御要求電文と同様に無線モジュール10を介して伝送され、記憶部8に保持される。エアコン1の制御部7では、外部からの制御要求電文を受信すると、遠隔制御レベル管理手段は、保持された遠隔制御時間管理テーブルから、時刻管理手段が管理するその時点での現在時刻に対する遠隔制御レベルを読み出し、要求内容の有効性を判定し、有効であった場合のみエアコン1への本体制御に反映させる。
【0033】
したがって、ユーザーが遠隔制御時間管理テーブルの上記時間帯毎の遠隔制御レベルを設定しておくことにより、生活パターンに応じた遠隔操作の制限を行うことが可能となる。例えば、遠隔制御時間管理テーブルにおいて深夜の時間帯は全てレベル4として遠隔操作を全禁止にしておけば、遠隔制御レベル管理手段21は、現在時刻が就寝中であると判断するときには遠隔操作を自動的に全面的に禁止するので、不正アクセス等がされることによって知らない間にエアコン1が動作してしまうことを防止し、エアコン1のユーザーの意図と反する運転制御を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による空気調和機の機能ブロック図。
【図2】本発明による空気調和機の制御部を中心とするブロック図。
【図3】実施の形態1における遠隔制御レベルとその制御可能範囲を示すテーブル。
【図4】実施の形態1における制御ルーチンのフローチャート。
【図5】実施の形態2における遠隔制御レベルとその制御可能範囲を示すテーブル。
【図6】実施の形態2における操作履歴テーブル。
【図7】実施の形態2における制御ルーチンのフローチャート。
【図8】実施の形態3における遠隔制御時間管理テーブル。
【符号の説明】
【0035】
1 エアコン
2 通信処理部
3 リモコン入力部
4 ルータモデム
5 リモコン
6 人感センサー
7 制御部
8 記憶部
9 インターネット網
10 無線モジュール
11 家電ゲートウェイ
12 負荷駆動部
13 センサー入力部
14 携帯電話
15 パソコン
20 入力処理部
21 遠隔制御レベル管理手段
22 運転制御部
23 出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設置された遠隔制御装置との通信手段を有しており、前記遠隔制御装置からの外部運転制御指令及びリモコンによるローカル運転制御指令の有無に基づいて空気調和機本体の運転を行う空気調和機において、
前記外部運転制御指令で操作可能な制御範囲のレベルを動的に管理する遠隔制御レベル管理手段を有しており、前記外部運転制御指令を受信した場合、前記遠隔制御レベル管理手段にて有効であると判定された前記外部運転制御指令のみを前記空気調和機本体の運転に反映させることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1記載の空気調和機において、前記遠隔制御レベル管理手段は、前記ローカル運転制御指令による現在の運転状況、及び前記ローカル運転制御指令を受信した時点からの状態継続時間に基づいて、操作可能な制御範囲のレベルを動的に変更することを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機において、前記遠隔制御レベル管理手段は、前記ローカル運転制御指令による操作履歴を複数分保持し、前記外部運転制御指令を受信した場合に、前記外部運転制御指令の内容が保持されている前記操作履歴の内容と一致した場合のみ前記受信した外部運転制御指令を有効と判定することを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和機において、前記空気調和機本体が設置された室内におけるユーザーの在室状態を検知する人体検知手段を設け、前記遠隔制御レベル管理手段は、前記人体検知手段によりユーザーの在室を確認した場合には前記外部運転制御指令で操作可能な制御範囲を縮小する方向へ、ユーザーの不在を確認した場合には操作可能な制御範囲を拡大する方向へ遠隔制御レベルを変更することを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気調和機において、現在時刻を管理する時刻管理手段と、ユーザーにより設定された複数の時間帯と当該時間帯毎の遠隔制御レベルとを記憶する遠隔制御時間管理テーブルを有し、前記遠隔制御レベル管理手段は、前記遠隔制御時間管理テーブルの内容に基づいて、現在時刻に対する前記遠隔制御レベルを動的に変更することを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−24420(P2007−24420A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208708(P2005−208708)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】