説明

空気調和機

【課題】暖房時において、室内の窓から生じる冷気を緩和して快適な暖房を行うことができる空気調和機を提供する。
【解決手段】本発明に係る空気調和機1cは、輻射部5cと、送風部2とを備える。輻射部5cは、室内Rの窓WD近傍に略鉛直方向に延設され、温かい第1空気が流れる内部空間PSを有し、輻射によって室内Rの暖房を行う。送風部2は、輻射部5cの内部空間PSへと第1空気を送る。また、輻射部5cは、少なくとも一部が所定の輻射率を有する繊維系材料によって形成されており、繊維系材料によって形成され略鉛直方向に延び所定の間隔を隔てて並設された複数の凸部59を表面に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
吹出しダクトを備える空気調和機が室内の空気調和によく利用されている。この空気調和機では、温かい空気が吹出しダクトによって案内され室内へと吹き出ることによって、室内の暖房が行われる。しかし、暖房時の温かい空気は室内の上方に滞留し易いため、室内の居住者等の足元を十分に温めることは困難である。そこで、従来、室内の側壁上部に設けられた温風発生器から下方向けて形成された吹出しダクト(温風誘導体)を備える空気調和機が案出され開示されている。(特許文献1参照)。この空気調和機では、吹出しダクトの正面に多数の小孔が設けられており、吹出しダクトの内部を通る温かい空気が吹出しダクトの小孔から室内の居住空間へ向けて吹き出される。このような従来の空気調和機によれば、室内の床面へと温かい空気を送ることができると共に、温かい空気の一部は正面の小孔から室内へと流れる。このため、部屋全体がよく温まり、快適な暖房が行われる。
【特許文献1】実開平2−100167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような従来の空気調和機によっても、床面近傍に冷気が滞留し足元の暖房が十分ではない場合がある。すなわち、外気温度が低い冬などには、室内の窓近傍において冷気が発生し易い。例えば、窓が外気によって冷やされて室内の空気と熱交換が行われる場合や、窓の隙間から冷たい外気が侵入する場合などがある。このような場合、従来の空気調和機によっても、窓から生じる冷気が床面に滞留することによって居住者等の足元が冷やされ、快適な暖房を行うことが困難となる。
【0004】
本発明の課題は、暖房時において、室内の窓から生じる冷気を緩和して快適な暖房を行うことができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の空気調和機は、輻射部と送風部とを備える。輻射部は、室内の窓近傍に窓に沿って略鉛直方向に延設され、温かい第1空気が流れる内部空間を有し、輻射によって室内の暖房を行う。送風部は、輻射部の内部空間へと第1空気を送る。また、輻射部は、少なくとも一部が所定の輻射率を有する繊維系材料によって形成されており、複数の凸部を表面に有する。複数の凸部は、上記の繊維系材料によって形成されており、略鉛直方向に延び所定の間隔を隔てて並設される。
【0006】
請求項2に記載の空気調和機は、請求項1に記載の空気調和機であって、凸部は、輻射部の窓側と室内側との両面に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る空気調和機では、内部空間を流れる第1空気によって、凸部と凸部との間の空間にある空気が温められる。すると、煙突効果によって、凸部と凸部との間の空間に沿って上昇する空気の流れが生じる。そして、この空気の流れによって、室内の下方に滞留している冷気が持ち上げられる。このため、室内の下方に滞留する冷気が低減される。これにより、この空気調和機では、窓から生じる冷気を緩和して快適な暖房を行うことができる。また、この空気調和機では、輻射部の少なくとも一部および凸部が、所定の輻射率を有する繊維系材料によって形成される。このため、輻射部の内部空間を流れる空気によって輻射部が温められることによって、輻射部において輻射が生じる。また、内部空間を流れる第1空気の内圧によって、輻射部の繊維の隙間から、温かい第1空気が穏やかに吹き出す。これにより、この空気調和機では、輻射と穏やかな空気の吹出しと両方によって室内の暖房を行うことができる。従って、ドラフトによる不快感が低減されたより快適な暖房を行うことができる。
【0008】
請求項2に係る空気調和機では、輻射部の窓側と室内側との両方において凸部と凸部との間の空間に沿って上昇する空気の流れが生じる。そして、この空気の流れによって、室内の下方に滞留している冷気が持ち上げられる。このため、室内の下方に滞留する冷気が低減される。これにより、この空気調和機では、窓から生じる冷気を緩和して快適な暖房を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1参考例>
[全体構成]
本発明の第1参考例にかかる空気調和機1aを図1に示す。この空気調和機1aは、後述する本発明の実施形態に係る空気調和機1cと多くの構成を共通にしており、参考としてその構成を以下に説明する。
【0010】
この空気調和機1aは、一般家庭の室内Rの空気調和を行う空気調和機であり、室内機2と室外機3と輻射パネル組立体5aとを備えている。室内Rには、床面FLおよび天井面CLが設けられており、床面FLに対して垂直に窓WDが設けられている。空気調和機1aは、輻射と温度調整された空気の吹き出しとによって冷暖房等の室内Rの空気調和を行うことができる。なお、図1では、理解の容易のため、空気調和機1aの一部が断面図として示されている。
【0011】
室外機3は、室外に配置され、図2に示すように、圧縮機31、四路切換弁32、電動弁33、室外ファン(図示せず)、室外ファンモータ34、室外機温度センサ35、室外熱交換器(図示せず)等を備えている。
【0012】
圧縮機31、電動弁33、四路切換弁32、室外熱交換器等は、後述する室内熱交換器と共に冷媒回路を構成している。室外ファンは、室外ファンモータ34によって回転駆動され、室外熱交換器を通る空気の流れを生成する。室外機温度センサ35には、室外熱交換器の温度や室外空気の温度を検出する各種の温度センサが含まれる。
【0013】
室内機2は、図1に示すように、室内Rの天井面CL近傍の側壁に配置され、室内機ケーシング21、室内熱交換器22、第1室内ファン23、第1室内ファンモータ24(図2参照)、室内機温度センサ25(図2参照)などを備えている。
【0014】
室内機ケーシング21は、室内熱交換器22や第1室内ファン23等を内部に収納しており、吸込み口26、接続口27などを備えている。吸込み口26は、室内Rから室内機ケーシング21内へと取り入れられる空気が通る開口である。接続口27は、室内機ケーシング21内で室内熱交換器22を通って輻射パネル組立体5aへと送られる空気が通る開口であり、後述する輻射パネル組立体5aの空気取入れ口51aに接続される。
【0015】
室内熱交換器22は、室外熱交換器や圧縮機31等と冷媒配管4を介して接続されている。室内熱交換器22は、通過する空気との間で熱交換を行うことによって、空気の温度調整を行う。
【0016】
第1室内ファン23は、第1室内ファンモータ24によって回転駆動され、調和された空気の流れを生成する。調和された空気の流れは、室内Rから取り込まれ輻射パネル組立体5aへと送られる空気流である。この調和された空気は、吸込み口26から室内機ケーシング21の内部に取り込まれ、室内熱交換器22、接続口27および空気取入れ口51aを通って輻射パネル組立体5aの内部の圧力発生空間PS(図3参照)へと到る。
【0017】
室内機温度センサ25には、室内熱交換器の温度や室内空気の温度等を検出する各種の温度センサが含まれる。
【0018】
輻射パネル組立体5aは、平板状の外形を有しており、天井面CLの近傍から室内Rの窓WDに沿って鉛直方向下向きに床面FL近傍まで延設されている。輻射パネル組立体5aは、室内機2によって温度調整された空気の温度を利用した輻射と温度調整された空気の吹出しとによって、冷暖房等の空気調和を行う。輻射パネル組立体5aの構成については、後に詳細に説明する。
【0019】
また、空気調和機1aは、制御部6を備えている。制御部6は、室外機3と室内機2とに分かれて設けられており、空気調和機1aの運転制御を行う。制御部6は、図2に示すように、圧縮機31、四路切換弁32、電動弁33、室外ファンモータ34、室外機温度センサ35、第1室内ファンモータ24、室内機温度センサ25などの構成部品と接続されている。制御部6は、リモコン70から運転指令を受けると、各構成部品を制御して空気調和機1aの運転制御を行う。
【0020】
[輻射パネル組立体の構成]
図3に輻射パネル組立体5aの外観図を示す。
【0021】
輻射パネル組立体5aは、薄い平板状の外形を有しており、平面的な形状となっている。輻射パネル組立体5aは、窓WDに略平行に窓WDの近傍に配置される。輻射パネル組立体5aは、輻射パネル本体7aおよび仕切り部材9aとを備えている。
【0022】
〈輻射パネル本体〉
輻射パネル本体7aは、室内Rの窓WDの近傍に窓WDに沿って略鉛直方向に延設されており、輻射と空気の吹出しとによって室内Rの空気調和を行う。輻射パネル本体7aは、室内機2が設けられた天井面CL近傍から床面FL近傍に達するまで延設されており、室内Rの鉛直方向に幅広く暖房又は冷房を行うことができる。輻射パネル本体7aは、空気取入れ口51a、第1面54a、第2面55a、2つの側面56aおよび下面57aを有し、薄い平板状の形状を有する。輻射パネル本体7aは、空気によって大気圧より大きな圧力が生じる圧力発生空間PSを内部に構成する。圧力発生空間PSには、室内機2によって調和された空気が通り、圧力発生空間PSに生じる内圧によって輻射パネル本体7aの表面から調和された空気が吹出す。
【0023】
空気取入れ口51aは、温度調整された空気を取り入れる部分であり、輻射パネル本体7aの上面部分に設けられた開口である。空気取入れ口51aは、室内機ケーシング21の接続口27に脱着自在に接続され、第1室内ファン23によって送られる空気(白抜き矢印A1参照)が通過する。なお、空気取入れ口51aは、既存の対流型空気調和機の吹出し口に接続可能な構造となってもよい。さらに、この空気取入れ口51aと対流型空気調和機の吹出し口とは着脱自在となってもよい。
【0024】
第1面54aは、四角形の薄いシート状の形状を有しており、圧力発生空間PSの側方を閉じる。第1面54aは、室内Rの窓WDとは反対側に位置しており、窓WDと略平行に配置されている。また、第1面54aは、約0.9の輻射率を有する織布によって形成されている。従って、第1面54aが圧力発生空間PSを流れる空気によって温度調整されると、熱輻射又は冷輻射が第1面54aから室内Rの居住空間へ向けて放射される。また、圧力発生空間PSにおいて生じる内圧によって、調和された空気が、第1面54aの繊維の隙間から室内Rの居住空間へと吹き出る。
【0025】
第2面55aは、第1面54aと同様の形状を有しており、第1面54aと同様の織布によって形成されている。第2面55aは、圧力発生空間PSを隔てて第1面54aと対向しており、圧力発生空間PSの側方を閉じる。第2面55aは、窓WD側に窓WDに略平行に配置されている。従って、圧力発生空間PSにおいて生じる内圧によって、調和された空気が、第2輻射面55aの繊維の隙間から窓WD側へと吹き出る。また、第2輻射面55aが圧力発生空間PS内の空気によって温度調整されることによって、窓WD側へ向けて熱輻射又は冷輻射が生じる。
【0026】
2つの側面56aは、細長い長方形の形状を有しており、圧力発生空間PSの側方を閉じる。下面57aも細長い長方形の形状を有しており、圧力発生空間PSの下方を閉じる。また、2つの側面56aおよび下面57aは、第1面54aと同じ織布で形成されている。
【0027】
以上のように、輻射パネル本体7aは、空気取入れ口51aを除いて閉じられた袋状の形状を有している。
【0028】
〈仕切り部材〉
仕切り部材9aは、調和された空気が通る複数の部屋に圧力発生空間PSを仕切っている。仕切り部材9aは、圧力発生空間PSの空気の流れ方向(白抜き矢印A1参照)に平行に配置されており、一端が第1面54aに固定され他端が第2面55aに固定される。このため、仕切り部材9aは、第1面54aと第2面55aとの間の距離を一定に保持することができる。従って、仕切り部材9aは、圧力発生空間PSに大気圧より大きな圧力が生じた場合に、輻射パネル本体7aが膨張することを抑えることができる。すなわち、仕切り部材9aは、平板形状の対向する平面間の距離を一定に保持することによって、輻射パネル組立体5aの外形を平板状の形状に保持することができる。
【0029】
[空気調和機の運転動作]
〈暖房運転〉
次に、この空気調和機1aによって室内Rの空気調和を行う場合の運転動作について説明する。
【0030】
暖房運転時には、室内熱交換器22が凝縮器として機能して、通過する空気を加熱する。温められた空気(以下、「第1空気」という)は、図4に示すように、接続口27および空気取入れ口51aを通って、輻射パネル本体7a内の圧力発生空間PSへと送られる(実線矢印A1参照)。第1空気が圧力発生空間PSに送られると、大気圧より大きな正の静圧が圧力発生空間PSに生じる。すなわち、窓WDに平行に流れる空気の流れ(実線矢印A1参照)に対して垂直な方向に大気圧より大きな圧力が生じる。このため、温かい第1空気が、輻射パネル本体7aの織布の繊維の隙間から押し出され、室内Rへと穏やかに吹き出される(実線矢印A2参照)。特に、第1面54aから吹き出る第1空気は、窓WDとは反対側、すなわち室内Rの居住空間側へと吹き出される。また、第2面55aから吹き出る第1空気は、窓WD側へと吹き出される。また、輻射パネル本体7aは、温かい第1空気と接触することによって、加熱される。このため、輻射パネル本体7aから熱輻射が生じる(破線矢印A3参照)。特に、第1面54aから生じる熱輻射は、窓WDとは反対側、すなわち室内Rの居住空間側へと放射される。また、第2面55aから生じる熱輻射は、窓WD側へと放射される。
【0031】
このように、この空気調和機1aでは、輻射パネル本体7aの繊維の隙間からの穏やかな吹出しと、輻射パネル本体7aの熱輻射とによって、室内Rの暖房が行われる。すなわち、輻射パネル本体7aのうち第1面54aからの温かい第1空気の吹出しと熱輻射とによって、居住空間が穏やかに温められる。また、第2面55aからの温かい第1空気の吹出しと熱輻射とによって、窓WDから生じる冷気(実線矢印A4,A5参照)が緩和あるいは除去される。
【0032】
〈冷房運転〉
冷房運転時には、室内熱交換器22が、蒸発器として機能して、通過する空気から熱を奪う。第1室内ファン23によって吸込み口26から室内機ケーシング21内に取り込まれた室内Rの空気は、室内熱交換器22を通過する際に熱を奪われて冷却される。この冷却された空気は、接続口27および空気取入れ口51aを通って、輻射パネル本体7a内の圧力発生空間PSへと送られる。空気が圧力発生空間PSに送られると、冷却された空気が、輻射パネル本体7aの織布の繊維の隙間から押し出され、室内Rへと穏やかに吹き出される。また、輻射パネル本体7aは、冷却された空気と接触することによって、冷却される。このため、輻射パネル本体7aから冷輻射が生じる。このように、この空気調和機1aでは、輻射パネル本体7aの繊維の隙間からの穏やかな吹き出しと、輻射パネル本体7aの冷輻射とによって、室内Rの冷房が行われる。
【0033】
[特徴]
(1)
従来、食品工場等でよく利用されている吹出しダクトは、冷房運転を主として想定しており、暖房運転についてはあまり考慮されていない。従って、従来の吹出しダクトのように天井面近傍に配置される吹出しダクトでは、冷房時においては天井面から冷気が落ちてくるため、頭寒足熱の快適な環境が実現される。しかし、暖房時においては、暖気は軽い空気であるために床面まで届き難い。従って、暖気を床面へと到達させるためには、大きな風速が必要となる。しかし、そのような大きな風速で暖気が床面へ向けて吹き出される場合、居住者等は、温風が直接に当たることによって不快感を感じ易くなる。また、小さな風速で暖気が吹き出される場合、床面近傍が暖まり難く、快適な環境を実現することは困難である。
【0034】
特に、一般家庭においては、暖房シーズンには、外気によって冷やされた窓WDとの熱交換によって室内Rの窓WD近傍から冷気が生じる(図4の実線矢印A4参照)。また、窓WDからの隙間風によっても窓WD近傍から冷気が生じる((図4の実線矢印A5参照)。そして、このような冷気は、窓WDに沿って下降し床面FL付近に滞留し易やすい。床面FL付近に冷気が滞留すると、足元が寒くなり居住者等が不快感を感じ易くなる。
【0035】
この空気調和機1aでは、輻射パネル組立体5aが床面FLに垂直に窓WDの前に配置されている。そして、暖房時には、輻射パネル本体7aの第2面55aからの温かい第1空気の吹出しと熱輻射とによって、窓WD付近から生じる冷気が緩和あるいは除去される。このため、暖房時において、床面FLの冷気が減らされて足元の寒さが緩和される。
【0036】
また、この空気調和機1aでは、第1面54aからの第1空気の吹出しと熱輻射とによって、居住空間が穏やかに暖められる。このため、空気調和機1aからの風が居住者等に当たることが抑えられ、ドラフトによる不快感が低減する。
【0037】
さらに、この空気調和機1aでは、暖房時の風が低減されるため、床面FL等の埃が舞い上がることが少なくなる。このため、暖房時において、埃による室内空気の汚染を減らすことができる。
【0038】
このように、この空気調和機1aでは、居住者等に対して不快感を与えることが少なく、快適な暖房を行うことができる。
【0039】
(2)
外気の温度が低い冬には、窓WDが外気によって冷やされることによって、窓WDにおいて結露が生じることがある。
【0040】
この空気調和機1aでは、温かい第1空気が輻射パネル本体7aの第2面55aから窓WD側へと吹き出される。このため、窓WDが第1空気によって温められ、窓WDでの結露の発生を防止することができる。
【0041】
(3)
輻射パネル本体7aが織布などの柔軟な材料で形成されている場合には、圧力発生空間PSを通る第1空気の内圧によって、輻射パネル本体7aが膨張し易く輻射パネル本体の平板状の外形を維持することが困難である。
【0042】
しかし、この輻射パネル組立体5aでは、仕切り部材9aによって、輻射パネル本体7aの外形が膨張することが抑えられる。このため、この輻射パネル組立体5aでは、輻射パネル本体7aの外形を維持することができる。
【0043】
(4)
なお、窓WDから生じる冷気の緩和や窓WDにおける結露発生を防止する効果については、少なくとも第2面55aから温かい第1空気が吹き出せばよく、必ずしも輻射パネル本体7aの他の部分から第1空気が吹き出さなくてもよい。
【0044】
また、窓WDから生じる冷気の緩和や窓WDにおける結露発生の防止のために、図5に示すように、輻射パネル本体7aの第2面55aの下端近傍に吹出し口58が設けられてもよい。この吹出し口58は、窓WD側へ吹き出る第1空気が通る開口である。この吹出し口58から温かい第1空気が吹き出ることによっても、窓WDから生じる冷気が床面FLに滞留することを抑えることができる(白抜き矢印A6参照)。なお、冷気の緩和や結露発生の防止のためには、この吹出し口58からの吹出しと第2面55aからの吹出しが併用されることがより効果的であるが、吹出し口58からの吹出しのみが行われてもよい。
【0045】
<第2参考例>
[構成]
本発明の第2参考例にかかる空気調和機1bを図6に示す。
【0046】
この空気調和機1bでは、室内機2に、室内機吹出し口28が設けられている。室内機吹出し口28は、接続口27と室内機2の背面との間に設けられている。室内機吹出し口28は、室内機ケーシング21内で室内熱交換器22を通って、輻射パネル組立体5bと窓WDとの間に送られる空気が通る開口である。
【0047】
室内機2は、暖房時には、輻射パネル本体7bの圧力発生空間PSへと温かい第1空気を送ると共に、室内機吹出し口28から温かい第2空気を床面FLへ向けて吹き出す。第2空気は、室内Rから取り込まれ輻射パネル組立体5bと窓WDとの間へと送られる。すなわち、第2空気は、吸込み口26から室内機ケーシング21の内部に取り込まれ、室内熱交換器22、室内機吹出し口28、輻射パネル組立体5bと窓WDとの間を通って、床面FL近傍へと到る。
【0048】
他の構成ついては、第1参考例にかかる空気調和機1aと同様である。
【0049】
[特徴]
(1)
この空気調和機1bでは、室内機2の室内機吹出し口28から室内熱交換器22によって温められた第2空気が吹き出される。吹き出された第2空気は、輻射パネル本体7bの第2面55bに沿って輻射パネル本体7bと窓WDとの間を通り、床面FL近傍へと到達する(実線矢印A7参照)。
【0050】
この空気調和機1bでは、輻射パネル組立体5bと窓WDとの間が通風経路として利用されており、温かい第2空気が輻射パネル組立体5bと窓WDとの間を通って床面FLへと容易に到達することができる。このため、窓WDから生じる冷気(実線矢印A4,A5参照)が第2空気によって緩和あるいは除去される。このため、冷気が床面FL近傍に滞留することが抑えられる。
【0051】
また、第2空気は、輻射パネル本体7bと窓WDとの間を通るため、第2空気の吹出しによる風が居住者等に直接に当たることが低減される。従って、この空気調和機1bでは、ドラフトによる不快感を低減することができる。
【0052】
さらに、この空気調和機1bでは、天井面CL近傍から床面FLへ向けて直接に温風を吹き出す空気調和機と比べて、より少ない風速で床面FLへと温かい第2空気を到達させることができる。従って、この空気調和機1bでは、ドラフトによる不快感をより低減することができる。
【0053】
以上のように、この空気調和機1bでは、より快適な暖房を行うことができる。
【0054】
(2)
この空気調和機1bでは、窓WD近傍が第2空気によって温められることによって、第1参考例にかかる空気調和機1aと同様に、窓WDでの結露を防止することができる。
【0055】
(3)
なお、第2面55bからの第1空気の吹出しや第2面55bからの輻射が第2空気の吹出しと共に併用されることによって、上記の効果がより顕著に発揮されるが、第2空気の吹出しのみによっても上記の効果を奏することができる。
【0056】
<本発明の実施形態>
[構成]
本発明の一実施形態にかかる空気調和機1c(図8(b)参照)が備える輻射パネル組立体5cを図7(a)および図7(b)に示す。なお、図7(b)は、図7(a)におけるB−B断面である。
【0057】
この輻射パネル組立体5cは、複数の凸部59を有する。凸部59は、第1面54cおよび第2面55cにそれぞれ複数個が設けられている。第1面54cに設けられている凸部59は、第1面54cから窓WDの反対側へと突出している。第2面55cに設けられている凸部59は第2面55cから窓WD側へと突出している。また、凸部59は、輻射パネル組立体5cの下端から上端近傍まで略鉛直方向に延設されており、鉛直方向に長い形状を有している。凸部59は、所定の間隔を隔てて並設されている。従って、各凸部59の間には、略鉛直方向に延びる溝状の凹部60が形成されている。なお、凸部59は、第1面54cや第2面55cと同様の織布によって形成されている。
【0058】
他の構成については第1参考例にかかる空気調和機1aと同様である。
【0059】
[特徴]
(1)
この空気調和機1cでは、暖房時において、輻射パネル構造体5cの凸部59が温かい第1空気によって温められることによって、ラジエータのように煙突効果による自然対流が発生する。この自然対流は、床面FL近傍から各凸部59の間の凹部60を通って上昇する空気の流れである(図8(a)および図8(b)の実線矢印A8参照)。このため、窓WDから生じて床面FL近傍へと滞留する冷気(図8(b)の実線矢印A4,A5参照)が床面FLから吸い上げられ、温められて天井CL近傍まで持ち上げられる。このため、窓WDから生じて床面FL近傍に滞留する冷気が緩和あるいは除去される。これにより、この空気調和機1cでは、快適な暖房を行うことができる。
【0060】
また、この空気調和機1cでは、室内Rへと直接に空気が吹き出される場合と比べて、送風音が小さくて静かである。
【0061】
(2)
なお、第2面55cからの第1空気の吹出しや熱輻射が併用されることによって、快適な暖房を行う効果がより顕著に現れるが、第2面55cからの第1空気の吹出しや熱輻射が行われない場合であっても、上記の自然対流の発生による冷気の緩和の効果を奏することができる。
【0062】
<第3参考例>
[構成]
本発明の第3参考例にかかる空気調和機1dを図9に示す。
【0063】
この空気調和機1dの輻射パネル組立体5dでは、輻射パネル本体7dが透明あるいは半透明な材料で形成されている。すなわち、輻射パネル本体7dの第1面54dおよび第2面55dが透明あるいは半透明な織布によって形成されている。
【0064】
他の構成については、第1参考例にかかる空気調和機1aと同様である。
【0065】
[特徴]
(1)
一般に、輻射パネル組立体が窓WDを覆うと、室外の光が輻射パネル組立体によって遮られて、室内Rが暗くなる恐れがある。また、輻射によって室内の冷暖房を行う場合には、輻射が生じる部分の面積すなわち第1面54dの面積を大きくすることが望ましいが、第1面54dの面積が大きくなるほど窓WDを覆う面積が大きくなり、室内Rが暗くなる恐れが高くなる。
【0066】
この空気調和機1dでは、第1面54dおよび第2面55dが透明または半透明な織布によって形成されている。このため、窓WDから差し込む室外の光は、第1面54dおよび第2面55dを透過して室内Rの居住空間へと到達することができる(破線矢印A9参照)。このため、この空気調和機1dでは、昼間でも室内が暗くならず、且つ、大きな輻射面積を確保することができる。
【0067】
(2)
第1面54dおよび第2面55dを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンが考えられる。このような透明な材料であっても、ある程度の厚さを有することによって輻射の放射が可能である。従って、十分に室内Rの暖房を行うことができる。
【0068】
(3)
なお、輻射パネル本体7dの全部が透明または半透明であるのではなく、その一部が透明または半透明であってもよい。
【0069】
また、本参考例の内容が実施形態にかかる空気調和機1cに対して適用されてもよい。
【0070】
<他の実施形態>
(1)
上記の実施形態では、輻射パネル本体7a−7dは平板状の形状を有しているが、円筒形状など他の形状を有するものであってもよい。ただし、平板状の輻射パネル本体の方が、輻射や吹出しが行われる部分の面積を大きくすることが容易であり、快適な冷暖房をより効率よく行うことができる。
【0071】
(2)
上記の実施形態では、室内Rの空気が室内機ケーシング21に取り込まれて輻射パネル組立体5a−5dへと送られているが、室外から取り込んだ空気が輻射パネル組立体5a−5dへと送られてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、室内機ケーシング21の接続口27に輻射パネル組立体5a−5dが接続されているが、空気が吹き出るダクト出口が室内Rの側壁や天井面CL等に直接に設けられている場合には、輻射パネル組立体5a−5dがダクト出口に接続されてもよい。
【0073】
(3)
上記の実施形態では、輻射パネル本体7a−7dの材料として織布が使用されているが、織布以外の繊維系材料が使用されてもよい。
【0074】
(4)
上記の実施形態では、0.9の輻射率を有する織布が使用されているが、0.6以上、より望ましくは0.7以上もしくは0.8以上の輻射率を有する織布であればよい。さらに、必要な輻射能力や用途に応じて0.6以下の輻射率であってもよく、この場合も輻射による室内Rの温度調整は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、暖房時において、室内の窓から生じる冷気を緩和して快適な暖房を行うことができる効果を有し、空気調和機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1参考例にかかる空気調和機を示す図。
【図2】空気調和機の制御ブロック図。
【図3】輻射パネル組立体の構成を示す図。
【図4】暖房時における空気の吹出しと熱輻射とを示す図。
【図5】第1参考例にかかる空気調和機の変形例を示す図。
【図6】第2参考例にかかる空気調和機を示す図。
【図7】(a)本発明の実施形態にかかる空気調和機の輻射パネル組立体の正面図。(b)図7(a)のB−B断面図。
【図8】(a)暖房時における空気の流れを示す輻射パネル組立体の正面図。(b)暖房時における空気の流れを示す輻射パネル組立体の側面図。
【図9】第3参考例にかかる空気調和機を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1c 空気調和機
2 室内機(送風部)
5c 輻射パネル組立体(輻射部)
59 凸部
PS 圧力発生空間(内部空間)
R 室内
WD 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内(R)の窓(WD)近傍に略鉛直方向に延設され、温かい第1空気が流れる内部空間(PS)を有し、輻射によって前記室内(R)の暖房を行う輻射部(5c)と、
前記輻射部(5c)の前記内部空間(PS)へと前記第1空気を送る送風部(2)と、
を備え、
前記輻射部(5c)は、少なくとも一部が所定の輻射率を有する繊維系材料によって形成されており、前記繊維系材料によって形成され略鉛直方向に延び所定の間隔を隔てて並設された複数の凸部(59)を表面に有する、
空気調和機(1c)。
【請求項2】
前記凸部は、前記輻射部(5c)の窓側と室内側との両面に設けられる、
請求項1に記載の空気調和機(1c)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−139016(P2008−139016A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334908(P2007−334908)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2003−155318(P2003−155318)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】