説明

空気調和機

【課題】
低外気温下で圧縮機が停止時に、電気ヒータで圧縮機を効率的に加熱する。また低外気温条件下で暖房運転を行った時の暖房能力向上を図る。
【解決手段】
空気調和機が運転を停止中に外気温と圧縮機外郭温度が各々所定の温度以下に低下したら圧縮機を電気ヒータにて加熱し、電気ヒータ通電中は圧縮機外郭の温度に応じて電気ヒータの発熱量を増減させる。また暖房運転中に外気温が所定の温度以下に低下したら圧縮機を電気ヒータにて加熱し、電気ヒータ通電中は外気温に応じて電気ヒータの加熱量を増減させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒータを用いて圧縮機を加熱することのできる空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は圧縮機,四方弁,室外熱交換器,減圧装置,室内熱交換器を配管接続して冷凍サイクルを構成し、圧縮機を駆動することによって冷凍サイクル内に冷媒を循環させ、四方弁で冷媒の流通方向を切換えて室外熱交換器を凝縮器として、室内熱交換器を蒸発器として作用させることにより冷房運転を、室外熱交換器を蒸発器として、室内熱交換器を凝縮器として作用させることにより暖房運転を行っている。
【0003】
上記冷凍サイクル中には冷媒以外に圧縮機の潤滑性向上のため冷凍機油が封入されているが、外気温が低い条件で圧縮機を停止させていると圧縮機の温度が低下し、冷凍機油に冷媒が溶解し、冷凍機油の粘度が低下してしまう。このような状態で空気調和機の運転を開始して圧縮機を始動させると、圧縮機の潤滑性低下により圧縮機に損傷を与えてしまう場合がある。これを防止するために圧縮機の外郭に電気ヒータを設け圧縮機を加熱するようにした空気調和機として、例えば特許文献1が知られている。
【0004】
特許文献1には、圧縮機,室外熱交換器,室外送風機,四方弁,絞り装置を有する室外機と、室内熱交換器,室内送風機を有する室内機とを接続し、圧縮機に複数個の電気ヒータと圧縮機外郭の温度を検出する圧縮機温度検出装置とを設け、少なくとも冷房運転または除湿運転または暖房運転を行う空気調和装置において、前記圧縮機停止時に圧縮機外郭温度の値により通電するヒータの個数を変更する制御装置を設けたことが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−2727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の空気調和機は、圧縮機停止時に、圧縮機外郭温度の値にかかわらず必ず通電する電気ヒータを少なくとも1個設けているため、外気温度が高い場合や、圧縮機の運転停止直後など圧縮機外郭温度が高く、圧縮機の加熱が不必要な場合でも電気ヒータに通電がされてしまい、運転停止中の消費電力量が増加してしまうという問題がある。また圧縮機への加熱量は通電する電気ヒータの個数によって決まってしまうので、圧縮機への加熱量をより多段階に切換え可能としようとすると、電気ヒータへの通電と非通電の切換えを行うリレーをより多く設けなくてはならず、コストアップや制御装置の大型化が必要になる。
【0007】
そこで本発明は、電気ヒータを用いて、圧縮機が停止中に圧縮機を効率的に加熱することが可能であり、更に従来は圧縮機が停止時のみ通電が行われていたヒータに、暖房運転中で外気温が低い場合においても通電を行うことにより、暖房能力の向上が可能な空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器と、減圧装置と、室内熱交換器とを冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機の外郭に電気ヒータを設けた空気調和機において、圧縮機が停止中に外気温を検出する外気温検出手段と圧縮機外郭温度を検出する圧縮機温度検出手段とが各々所定の温度以下を検出すると前記電気ヒータに通電を行い、前記電気ヒータ通電中は前記圧縮機温度検出手段にて検出した圧縮機外郭温度に応じて前記電気ヒータの発熱量を増減させる。また暖房運転時には前記外気温検出手段が所定の温度以下を検出すると前記電気ヒータに通電を行い、前記電気ヒータ通電中は前記外気温検出手段が検出した外気温度に応じて前記電気ヒータの発熱量を増減させるようにし、前記電気ヒータの発熱量を位相制御により増減可能とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気ヒータを用い、圧縮機が停止中は圧縮機を効率的に加熱することが可能であり、更に暖房運転時で外気温が低い条件時においても、暖房能力の向上が可能である空気調和機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例における空気調和機について図を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施例における空気調和機の構成図であり、室外機1に設けられた圧縮機2,四方弁3,室外熱交換器4,減圧装置5と、室内機10に設けられた室内熱交換器11を冷媒配管13,14で順次接続して冷凍サイクルを構成している。また、室外機1には、室外熱交換器4に空気を送る室外送風機6と外気温を検出する外気温センサー7が設けられており、室内機10には、室内熱交換器11に空気を送る室内送風機12が設けられている。さらに、圧縮機2には圧縮機の外郭温度を検出する圧縮機温度センサー8と圧縮機を加熱する電気ヒータ9が取り付けられている。
【0012】
次に暖房運転時の動作を図1を用いて説明する。図1の実線矢印は暖房運転時の冷媒の流れを示し、圧縮機2で圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒となって、四方弁3,冷媒配管14を通って凝縮器となる室内熱交換器11に入り、室内送風機12により送風される室内空気と熱交換し冷却されて凝縮され、液または気液混合の状態となる。液または気液混合状態となった冷媒は、冷媒配管13を通って減圧装置5に入り、膨張して減圧され、低圧の気液混合冷媒となる。この気液混合冷媒は、蒸発機となる室外熱交換器4に入り、室外送風機6により送風される室外空気と熱交換して加熱され、低温低圧のガス冷媒となり、四方弁3を経由して圧縮機2に戻る。このサイクルが繰り返されて暖房運転が継続される。
【0013】
係る暖房運転時おいて、所定の温度以下に外気温が低下して、室外熱交換器4での室外空気と冷媒の熱交換量が減少し、これに伴い室内熱交換器11での室内空気と冷媒の熱交換量も減少して室内を十分に暖房できなくなる場合には、圧縮機2に取り付けた電気ヒータ9に通電を行い、圧縮機を加熱する。これにより圧縮機で圧縮され吐出された冷媒は、低外気温時においても高温のガス冷媒になるので、室内熱交換器11での室内空気と冷媒の熱交換量が減少することがなく、低外気温時においても十分な暖房能力を得ることが可能となる。尚、暖房運転中の電気ヒータ9の制御については後段で詳述する。
【0014】
次に圧縮機停止中の電気ヒータ9の制御について図2,図3を用いて説明する。図2は、圧縮機停止中の圧縮機外郭温度と電気ヒータの発熱量の関係を示すグラフ、図3は、圧縮機停止中の電気ヒータの発熱量の時間的変化を示すグラフである。
【0015】
圧縮機停止中は外気温センサー7により外気温を、圧縮機温度センサー8により圧縮機外郭温度を所定時間ΔT毎に検出し、図2のグラフに示されるように外気温検出値が所定の温度T0℃以下に、且つ圧縮機外郭温度検出値が所定の目標圧縮機外郭温度t0℃以下になると、電気ヒータ9への通電が開始される。また外気温が上昇して外気温検出値がT0+5℃以上に、または圧縮機外郭温度検出値がt0℃以上になると電気ヒータ9への通電が停止される。また電気ヒータ9通電中は、位相制御により電気ヒータ9の通電率が前記所定時間ΔT毎に変更され、電気ヒータ9の発熱量の増減が行われる。
【0016】
電気ヒータ9通電中の電気ヒータ9の発熱量は、図3のグラフに示されるように、圧縮機温度センサー8が検出する圧縮機外郭温度t℃と前記目標圧縮機外郭温度t0℃との温度差Δtc(=t0−t)により決定され、Δtcが大きくなるに伴い電気ヒータ9の発熱量も増加し、Δtcが所定の温度tmax以上になると電気ヒータ9の発熱量は最大値Wmaxとなる。
【0017】
次に空気調和機が暖房運転中の電気ヒータ9の制御について図4を用いて説明する。図4は、暖房運転中の電気ヒータの発熱量の時間的変化を示すグラフである。
【0018】
暖房運転中は図4のグラフに示されるように外気温センサー7が検出する外気温がT1℃以下になると電気ヒータ9への通電が開始され、外気温が上昇して外気温センサー7が外気温2℃以上を所定のA秒間検出した場合に電気ヒータ9への通電が停止される。また電気ヒータ9通電中の電気ヒータ9の発熱量は、外気温センサー7の検出する外気温により多段階に切換えが可能であり、例えば電気ヒータ9の発熱量を3段階に切換える場合は、図4のグラフに示されるように、外気温低下時においては、外気温検出値がT1℃以下となると電気ヒータ9の発熱量はW1となり、外気温検出値がT2℃以下に低下すると電気ヒータ9の発熱量はW1からW2に上昇し、外気温検出値が更にT3℃以下に低下すると電気ヒータ9の発熱量はW2から最大値Wmaxに上昇する。外気温上昇時においては、外気温検出値がT3℃以上を前記所定のA秒間検出すると、電気ヒータ9の発熱量はWmaxからW2%に減少し、更に外気温検出値がT2℃以上を前記所定のA秒間検出すると、電気ヒータ9の通電率はW2からW1に減少する。
【0019】
以上、本実施形態によれば圧縮機が停止中に外気温と圧縮機外郭温度が低い場合は、電気ヒータに通電を行い、圧縮機の外郭温度に応じて電気ヒータの発熱量を増減させるので、圧縮機を効率的に加熱することが可能となり、また、暖房運転中に外気温が低下すると、電気ヒータに通電を行い、外気温に応じて電気ヒータの発熱量を増減させるので、低外気温条件時の暖房能力向上が可能な空気調和機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例における空気調和機の構成図。
【図2】圧縮機停止中の圧縮機外郭温度と電気ヒータの発熱量の関係図。
【図3】圧縮機停止中の電気ヒータの発熱量の時間的変化を示すグラフ。
【図4】暖房運転中の電気ヒータの発熱量の時間的変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0021】
1 室外機
2 圧縮機
3 四方弁
4 室外熱交換器
5 減圧装置
6 室外送風機
7 外気温センサー
8 圧縮機温度センサー
9 電気ヒータ
10 室内機
11 室内熱交換器
12 室内送風機
13,14 冷媒配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器と、減圧装置と、室内熱交換器とを冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機の外郭に電気ヒータを設けた空気調和機において、圧縮機が停止中に外気温を検出する外気温検出手段と圧縮機外郭温度を検出する圧縮機温度検出手段とが各々所定の温度以下を検出すると前記電気ヒータに通電を行い、前記電気ヒータ通電中は前記圧縮機温度検出手段にて検出した圧縮機外郭温度に応じて前記電気ヒータの発熱量を増減させるようにしたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
圧縮機と、四方弁と、室外熱交換器と、減圧装置と、室内熱交換器とを冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成し、前記圧縮機の外郭に電気ヒータを設けた空気調和機において、暖房運転時に外気温を検出する外気温検出手段が所定の温度以下を検出すると前記電気ヒータに通電を行い、前記電気ヒータ通電中は前記外気温検出手段が検出した外気温に応じて前記電気ヒータの発熱量を増減させるようにしたことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1,2において、前記電気ヒータの発熱量が位相制御によって、増減が可能としたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−71496(P2010−71496A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237301(P2008−237301)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】