説明

空気調和機

【課題】オーストラリア規格に準拠したデマンド管理運転を実施することが可能でありデマンド期間中の快適性を考慮する空気調和機を提供することを課題とする。
【解決手段】室外機104はオーストラリ規格で定められたDRED20との接続が可能な中継部111を備えDREDから発信される信号を検出する室外電気回路基板110とその内部に配置されたマイクロプロセッサ106が受信したデマンド指令に合わせて圧縮機107を制御するソフトウェアを有し、室内機100側では室外機からのデマンド運転中情報を室内基板102で受信し、それをもとにデマンド管理中であることを表示する表示LED基板101を備えことで解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力会社等からのデマンド要求情報に応じたデマンド管理制御を行う空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策への取り組みが世界的に進められており、その一環として各種の家電製品についても省エネルギー化が求められている。また空気調和機では、最大需要電力の増大から電力需要に合わせた使用電力のデマンド管理が求められてきており、ビルなどの空調システムだけでなく一般家庭でのデマンド管理も求められてきている。なかでも、オーストラリアではオーストラリア規格[AS4755]に基づいたデマンド管理が必要になってきている。
オーストラリア規格では、図1のような構成でデマンド管理を行うと定義されており、規格内でDRED(DEMAND RESPONSE ENABLING DEVICE)と呼ばれる装置と空気調和機は図2のように接続することが求められている。
【0003】
また、デマンド管理技術の一つとして特許文献1には、従来型のデマンド管理方法の一つであったON−OFF運転によるデマンド管理では快適性を損なうとして快適性をなるべく損なわず瞬間的な消費電力が逆に大きくならないような方法として設定温度を条件に合わせて変化させデマンド管理を行う方法が示されている(特許文献1)。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−30834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする第一の課題はオーストラリア規格に準拠し外部から送信されるデマンド指令を受信した後、その受信指令に合わせたデマンド管理運転を達成することである。
【0006】
本発明が解決しようとする第二の課題はデマンド管理運転下にてユーザーの快適性をできる限り落とさないようにすることである。
【0007】
しかし、従来の特許文献1では快適性の観点から温度設定をもとに目標となるピークを抑えるように制御されているためオーストラリア規格で定められている30分という区切られた時間内で管理指定値内に抑えるようなデマンド管理運転はできない。また、従来技術の一つであるON−OFF運転でデマンド管理すると抑制は可能だが運転停止が頻繁に発生するためユーザーへ与える不満が大きくなる。そこで、本発明ではオーストラリア規格に準拠したデマンド管理を実施でき、なおかつ使用ユーザーの快適性をできる限り落とさない空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、空気調和機内で図2の接続が可能な接続部を有し、DREDと呼ばれる外部機器から送信される信号を検出する電気回路部を備え、受信したデマンド指令に合わせて各制御対象を制御するソフトウェアおよびユーザーにデマンド管理中であることを知らせる表示部を備えることで達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オーストラリア規格に準拠したデマンド管理を行う空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】デマンド管理システムの構成。
【図2】DREDと空気調和機の接続方法。
【図3】空気調和機内のシステム概略図。
【図4】電気回路概略図。
【図5】デマンド指令とマイクロプロセッサ入力電圧の関係。
【図6】運転開始時でのデマンド管理運転の一例。
【図7】室温安定下でのデマンド管理運転の一例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を用いた空気調和機の一実施例について説明する。オーストラリア規格では図2のDRED内R1、R2、R3の各リレーに対してデマンド管理内容がそれぞれ割り当てられており、R1のリレーONは圧縮機の運転停止指令、R2のリレーONは定格電力に対して50%以下の電力値に制限する運転指令、そしてR3のリレーONは定格電力に対して75%以下の電力値に制限する運転指令と定義されている。空気調和機はこのDREDの各リレーのON、OFFを把握してデマンド管理を行う必要がある。
【0012】
このため、一般的には図2の各リレー端子から出る接続線を室外電気回路基板110上のコネクタや端子台を介して接続し、リレーのON、OFFデータをマイクロプロセッサ106へ送信するが、本実施例では図3のようにDRED20と接続できる中継基板111を間に入れ図4のような分圧抵抗回路105を通してマイクロプロセッサ106にデータを送信する仕組みとしている。中継基板111を用いるとデマンド管理機能を削除する場合に中継基板111を取り除くだけで可能であり室外電気回路基板上の変更が不要となる。また、中継基板部分のみを他機種などに展開することもできる。また、分圧抵抗回路を用いることでDRED20のR1、R2、R3の各リレーON時のデータを0〜5Vのアナログ値に割付けマイクロプロセッサ106が取り扱う信号を3本から1本に減少させている。
【0013】
上記接続方法によりマイクロプロセッサ106は入力電圧値をもとにデマンド指令内容を判断する。ここで、図4のRa、Rb、Rc、Rdが同一抵抗値であれば、分圧抵抗回路105の働きによりデマンド指令の判断は図5のように表すことができる。本実施例では抵抗の定数を統一しているが割付ける電圧値は任意であるため定数は必ずしも統一しなくてもよい。なお、図5内での初期値とはマイクロプロセッサ106が電源ONと同時にデマンド指令電圧が入力されていない状態で計測される電圧値を任意回数和算して平均した値である。図5内のヒス値とはノイズによる揺らぎを考慮し任意に設定できる値であり、デマンド指令電圧がノイズにより瞬間的に下がった場合にデマンド指令が解除または変更されないように空気調和機の特性に合わせて基準値を決めるものである。
【0014】
マイクロプロセッサは図5の判断により入力電圧からデマンド指令の状態を把握すると規格により10秒以内にデマンド指令に合わせた動作運転に切替えなければならない。本実施例ではこの切替えに室外電気回路基板110に流れる入力電流を利用している。室外機104は通常運転時中室外電気基板110に流れる入力電流をマイクロプロセッサ106で計測しながら、記憶媒体109に保管されている運転時下での設定電流値と比較して入力電流値が設定電流値を超えないように運転の制御を行う。そこで、デマンド管理時には指令の電力値を達成し、なおかつユーザーの快適性をできる限り落とさないような設定電流値に値を変更することで実現することが可能である。
【0015】
設定電流値の第一の実施形態としてデマンド指令が入力された場合に比較する設定電流値の値を一律に変更する方法がある。オーストラリア規格ではデマンド管理は30分単位で管理されるため、デマンド指令を受けた直後から30分間について設定電流値を一律に制限する。この実施例では定格電力の50%運転、75%運転となる設定電流値を記憶媒体109に予め保管しておき、デマンド運転開始時に記憶媒体109から読み出して通常運転時下での設定電流値からデマンド用の設定電流値に変更する。この時、マイクロプロセッサ106が、室外電気回路基板110に流れる入力電流値を変更した設定電流値以下とするように圧縮機107へ制御指令を送信することでデマンド指令による電力値を達成することができる。
【0016】
第二の実施形態はデマンド指令内容と現在の運転状況下の内容に合わせて設定電流値を可変させながら制御する方法である。オーストラリア規格ではデマンド指令後は30分ごとに消費される電力量が指令電力値を超えてはならないとあるが、30分の期間内での変動については触れていない。
【0017】
このことから、区切られた30分間について指令電力を超えない範囲で可変させることができる。例えば、設定温度と目標温度の開きが大きい場合(運転開始時)には図6のように運転開始直後は出力を上げ空気調和機を運転する。この時の運転時間は運転開始時の室温とユーザー設定温度の差から時間の長さを段階的に分け予め記憶媒体109に保管しておくことで設定することが可能である。設定時間中空気調和機を運転させた後デマンド期間30分の残り時間にて消費電力をデマンド管理値内に抑えるよう圧縮機107の運転を抑制する。但し、ユーザーの快適性を考慮し抑制時にはできる限り緩やかに運転を抑制する。このため、設定電流値を段階的に落としていくこととする。つまり、図6の斜線部面積Aで表される30分間での使用電力の総和が指令電力値以下になるように設定電流値を変化させて運転することでデマンド管理が達成でき、なおかつ運転開始時の部分では急速に冷やし(温め)立ち上がりをよくすることでユーザーの快適性を上げることができる。
【0018】
また、設定温度と目標温度の差が小さい場合(室温安定時)は図7のようにデマンド管理に入る前の安定時下での入力電流値αを設定電流の初期値として斜線部面積Bで表される30分間での使用電力が指令電力値内に収まるように設定電流値を緩やかに変化させ制限をかけるようにする。上記のように変化させることで、安定時下では急激な室温変動を抑えながら制御しユーザーの快適性をできる限り保つようにできる。
【0019】
なおこれらの、実施例を実施する場合にはデマンド期間中はユーザーの指示動作と異なる動作を空気調和機が始めるためユーザーが確実にデマンド期間中であることを認識できるようにする必要がある。本実施例では室内機100に備え付けている表示LED基板101に搭載されている全てのLEDを0.5秒点灯、0.5秒消灯を繰り返す点滅表示とし、通常運転中および、エラー表示中のLED点灯と全く異なる表示方式として注意を喚起しデマンド管理運転を行う。
【符号の説明】
【0020】
10 空気調和機
20 DRED(DEMAND RESPONSE ENABLING DEVICE)
30 REMOTE AGENT
100 室内機
101 表示LED基板
102 室内電気回路基板
103 室内ファンモータ
104 室外機
105 分圧抵抗回路
106 マイクロプロセッサ
107 圧縮機
108 室外ファンモータ
109 記憶媒体
110 室外電気回路基板
111 中継基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力のデマンド管理指令を受信する中継基板と、前記中継基板からの指令信号を受信し電力管理制御を行う室外電気基板と、前記室外電気基板に制御される圧縮機及び室外ファンモータを備えた室外機と、
前記室外機と室内機の運転内容について相互通信が行え前記室内機の内部のファンモータを制御する室内電気基板と、室前記内電気基板の制御によりLEDを点灯する表示LED基板と、を備えた室内機と、
を備えた空気調和機において、
前記デマンド指令に対して適切な抑制制御を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、前記圧縮機の停止制御、定格電力の50%抑制運転制御、定格電力の75%抑制運転制御が可能であり、電力抑制運転には定格電力運転時に前記室外電気回路基板に入力される電流値をもとにデマンド指令に合致した電流値の制限をかけることでデマンド指令を達成することを特徴とした空気調和機。
【請求項3】
請求項2において、ユーザー側での快適性を維持できるように、デマンド管理運転中の動作を周囲状況と前記デマンド指令をもとにして適切に変更できることを特徴とした空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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