空気調和装置
【課題】冷却機と、加熱ヒータと、加湿装置を消費エネルギーが低い状態で平衡にさせて、試験室の環境を維持することができる空気調和装置を提供する。
【解決手段】試験室内の環境が目標環境に達すると、冷却機、加熱ヒータ及び加湿装置の内の2者または3者を平衡させて目標環境を維持する。この際、冷却機の出力が図3に示すマップに従って増減される。温度及び湿度が一定の時間の間、一定の範囲に収まっているならば、前記した図3の基本マップが徐々に最終目標マップに近づき、当初の基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
【解決手段】試験室内の環境が目標環境に達すると、冷却機、加熱ヒータ及び加湿装置の内の2者または3者を平衡させて目標環境を維持する。この際、冷却機の出力が図3に示すマップに従って増減される。温度及び湿度が一定の時間の間、一定の範囲に収まっているならば、前記した図3の基本マップが徐々に最終目標マップに近づき、当初の基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置や恒温恒湿装置に搭載される空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の耐久試験等を行う装置として恒温恒湿装置100が知られている。恒温恒湿装置100は、例えば図1の様な構成を有するものである。
恒温恒湿装置100は、試験室3、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却機5の蒸発器11と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。恒温恒湿装置100では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0003】
冷却機5は、相変化する熱媒体を使用した冷凍サイクルを構成するものであり、蒸発器11の他に、圧縮機20と、凝縮器21と、膨張弁22を有している。そしてこれらが配管で環状に接続されている。
冷却機5は、公知のそれと同様に、蒸発器11内で、冷媒を膨張させ、蒸発器11の表面温度を低下させて環境から熱を奪う。
【0004】
加熱ヒータ6は、公知の電気ヒータである。
【0005】
加湿装置7は、加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものであり、水皿26内の水を加湿ヒータ25で加熱して蒸発させる。
【0006】
湿度センサー13は、湿度を検知可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、乾湿球湿度計等が採用できる。
【0007】
恒温恒湿装置100は、内蔵される空気調和装置15によって、試験室3内に所望の温度・湿度環境を作るものである。
即ち、送風機8を駆動して試験室3内の空気を空気流路10に導入し、必要に応じて、加熱、冷却、加湿して試験室3内を所望の温度・湿度環境にする。
例えば、外気と同じ環境を開始環境とし、高温・高湿環境を作る場合には、加熱ヒータ6と加湿装置7を駆動して試験室3内を加熱及び加湿する。
逆に低温・低湿環境を作る場合には、冷却機5を駆動して、試験室3内の温度と湿度とを低下させ、さらに加湿装置7を駆動して試験室3内の湿度を調節する。
【0008】
また、低温・高湿環境を作る場合には、冷却機5を駆動して、試験室3内の温度と湿度とを低下させ、さらに加湿装置7を駆動して試験室3内の湿度を上昇させる。
【0009】
いずれの場合においても、試験室3が所望の環境に至った後は、冷却機5と、加熱ヒータ6及び加湿装置7を適宜動作させて、前記した所望の環境を維持する。
ここで、冷却機5単独、加熱ヒータ6単独、加湿装置7単独によって所望の環境を維持することは一般に困難であり、上記した三者の内の2者または3者を平衡させて所望の環境を維持する。
【0010】
この理由は、次の通りである。即ち冷却機5は、主として試験室3内の温度を低下させる作用と、湿度を低下させる作用がある。しかしながら、冷却機5によって温度だけを低下させることは困難である。同様に、冷却機5によって湿度だけを低下させることも困難である。即ち試験室3の温度を低下させるべく、冷却機5を駆動すると、蒸発器11の表面温度が低下し、試験室3の温度が目的通りに低下するが、蒸発器11の表面で結露するので、試験室3の絶対湿度が低下してしまい、当然に相対湿度も変わってしまう。
【0011】
また、試験室3の湿度を低下させるには、蒸発器11の表面で結露させる必要があるが、そのためには、蒸発器11の表面温度を環境温度よりも低くしなければならず、試験室3の温度も下がってしまう。
【0012】
加湿装置7についても同様であり、湿度を上昇させるべく、加湿装置7を駆動すると、加湿ヒータ25が発生する熱によって、試験室3内の温度も上昇してしまう。
そのため、例えば、試験室3の相対湿度が放置すると低下傾向となる場合であり、湿度低下を抑制して所望の環境に維持する場合には、加湿ヒータ25を駆動し、試験室3内を加湿し、加湿ヒータ25による試験室3の温度上昇を冷却機5で抑制する必要がある。
【0013】
同様に、試験室3の相対湿度が放置すると上昇傾向となる場合であって、湿度上昇を抑制して所望の環境に維持する場合には、冷却機5を駆動して試験室3内を除湿し、冷却機5による温度降下を加熱ヒータ6の発熱によって抑制する必要がある。
【0014】
また、冷却機5の出力はヒータ等に比べて制御精度が低いので、温度や湿度を微調整する際には、加熱ヒータ6や加湿装置7が補助的に使用される。
この様に、試験室3内の環境を維持する場合には、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7の3者の内の2者または3者を動作させて平衡させる必要がある。
冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7を平衡させるための具体的方策が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−327123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
試験室3内の環境を維持するためには、前記した様に、冷却機5と、加熱ヒータ6と、加湿装置7の平衡を保つ必要があるが、なるべく消費エネルギーが低い状態で平衡にさせることが望ましい。
前記した様な試験室3の相対湿度が放置すると低下傾向であり、これを所望の環境に維持する場合を例に説明すると、加湿ヒータ25を大出力で駆動し、試験室3内を加湿すると加湿ヒータ25による温度上昇が大きくなるが、冷却機5を大出力で駆動すれば、温度上昇を抑制することができ、試験室3を所望の環境に維持することができる。この場合は、高い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが高い状態で平衡状態を維持させていると言える。
【0017】
また同様の条件下において、加湿ヒータ25を小出力で駆動し、試験室3内を加湿すると、加湿ヒータ25による温度上昇が小さく、冷却機5を小出力で駆動すれば、温度上昇を抑制することができ、試験室3を所望の環境に維持することができる。この場合は、低い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持させていると言える。
【0018】
実際の環境試験に則して考えると、試験室3の環境が一旦、所望の環境に至った後、試験室3の環境が変化する要因は、断熱材2を介した外気との熱移動、換気や空気漏れに伴う温度・湿度の変化、被試験物の吸湿・吸温・発熱、送風機8の発熱等である。そのため、恒温恒湿装置100が正常に機能しておれば、試験室3の環境が大きく変わることは少ない。そのため、低い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持させても、試験環境に悪影響を与えることは少ない。また省エネルギーの観点からは、消費エネルギーが低い状態で平衡にさせることが望ましい。
特に、環境試験は、長時間に渡って行われる場合が多いので、低い消費エネルギーで平衡状態にし、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持することで、消費電力を抑制させたいという要求が強い。
【0019】
本発明は、上記した市場の要求に応えるものであり、冷却手段と、加熱手段と、加湿手段を消費エネルギーが低い状態で平衡にさせて、試験室等の環境を維持することができる空気調和装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、少なくとも冷却手段を有し、さらに加熱手段と加湿手段の少なくともいずれかを有し、冷却手段の冷却出力と、加熱手段及び/又は加湿手段の出力とを平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置において、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持するものであり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする空気調和装置である。
【0021】
ここで加熱手段は、主として環境の温度を上昇させる機能を有するものであり、代表的なものとしてジュール熱を発生させる電気ヒータが挙げられる。また他に、ヒートポンプを利用したヒータも考えられる。さらに燃料を燃焼させることによって発熱を得る装置も加熱手段に含まれる。加熱手段は、環境の温度を加熱ヒータ等によって直接的に昇温するものに限られず、間接的に昇温させるものも含まれる。例えば、ヒータによって熱媒体を昇温し、この熱媒体を循環させて環境の温度を上昇させる構成のものも加熱手段に含まれる。
加湿手段は、例えば水中に電気ヒータを挿入したものや、電気ヒータに水を滴下するものが使用される。また燃焼による熱を利用して水を気化させるものも考えられる。さらには超音波振動を利用して加湿するものも加湿手段に含まれる。
冷却手段は、相変化する冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成するものが普通に使用されるが、ペルチェ素子を使用する様な冷却機であってもよい。また冷却手段は、図1の様な蒸発器11を空気流路10に置くものに限らず、ブラインを循環させるものであってもよい。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1をより具体化したものであり、加熱手段と、加湿手段をヒータに限定したものである。
即ち請求項2に記載の発明は、加熱手段として加熱用ヒータを備え、加湿手段として加湿用ヒータを備え、冷却手段の冷却出力と、加熱用ヒータの出力と、加湿用ヒータの出力を平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置であり、出力検知手段は加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知するものであり、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置である。
【0023】
以下、請求項1,2の作用について説明する。
例えば加熱用ヒータ(請求項1では加熱手段 以下同じ)の出力及び加湿用ヒータ(請求項1では加湿手段 以下同じ)の出力が共に高い状態であるならば、消費エネルギーが高い状態で平衡状態を保っていると考えられ、省エネルギーの観点から望ましくない。
また、例えば、加熱用ヒータの出力と加湿用ヒータの出力が共に極めて小さいならば、冷却手段を含む三者が共に極めて低い出力で平衡していると考えられる。この状態は、エネルギー消費という点では望ましいが、外乱に対する反応速度が遅いという欠点を抱える。
【0024】
そこで、請求項1,2に記載の空気調和装置では、加熱用ヒータの出力あるいは加湿用ヒータの出力の少なくとも一方に基づいて冷却手段の冷却出力を変更する。即ち、本発明の空気調和装置では、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持する。
この様に本発明では、冷却出力増加条件と、冷却出力減少条件と、冷却出力維持条件が定められており、出力検知手段の検知信号に応じていずれかの条件に該当させる。
例えば、前記した様な加熱用ヒータの出力及び加湿用ヒータの出力が共に高い状態は、冷却出力減少条件に該当し、冷却手段の冷却出力を減少させる。その結果、ヒータの出力もこれに追従し、消費エネルギーが低い状態で平衡にする様に移行させることができる。
逆に加熱用ヒータの出力と加湿用ヒータの出力が共に極めて小さい場合は、冷却出力増加条件に該当し、冷却手段の冷却出力を増加させる。その結果、ヒータの出力もこれに追従し、省エネ的観点と、外乱に対する反応速度とのバランスが取れた状態で、ヒータと冷却手段が平衡する。
そして本発明では、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更する。そのためヒータの出力が安定すれば、冷却手段の出力がさらに減少傾向となり、冷却手段の消費電力を減少させることができる。
【0025】
加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したか否かは、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を監視することによって判断することが望ましい。そして、ヒータの出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることを条件として、ヒータの出力が安定したと判断する。
即ち、請求項4に記載の発明は、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を監視し、前記出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることが、出力が安定した条件であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0026】
また環境の温度及び/又は湿度が安定していることを条件の一つとして冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することが望ましい(請求項3)。
【0027】
請求項5に記載の発明は、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係には初期値があり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が、冷却出力が減少側に変更され易い方向に徐々に自動変更され、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0028】
本発明では、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を徐々に変更するので、ヒータ等と冷却手段の平衡を乱さずに冷却出力を減少させて行くことができる。
また、本発明では、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻る。例えば、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力の安定が崩れた場合には、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を初期値に戻す。そのため外乱に対して迅速に対応することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され易い方向に一旦急激に自動変更され、その後に徐々に自動変更されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0030】
本発明によると、冷却手段の出力をより迅速に低下させることができ、より早く省エネ運転状態に移行させることができる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、冷却手段の冷却出力の変化速度が可変であり、出力検知手段が検知した出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0032】
冷却手段の冷却出力の変化速度は、段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
本発明では、ヒータ等の出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いので、消費エネルギーが高い状態を早期に解消することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の空気調和装置は、冷却手段と、加熱手段と、加湿手段等を消費エネルギーがより低い状態で平衡にさせて、試験室等の環境を維持することができる。そのため、本発明の空気調和装置は、省エネルギーである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明及び従来技術の恒温恒湿装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態の恒温恒湿装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す基本マップである。
【図4】図3の各領域を示した基本マップである。
【図5】本発明の空気調和装置の加熱ヒータ、加湿ヒータ、冷却機、試験室温度、試験室湿度の時間変化を示すグラフである。
【図6】図5のグラフの時間経過側における加熱ヒータ、加湿ヒータ、冷却機の運転状況を運転率側のスケールを拡大して示すグラフである。
【図7】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す第1移行期マップである。
【図8】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す第2移行期マップである。
【図9】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す最終目標マップである。
【図10】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す変更開始時マップである。
【図11】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す基本マップである。
【図12】本発明の他の実施形態における空気調和装置の冷却機の運転出力の増減を示す基本マップである。
【図13】本発明の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図14】本発明の他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図15】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図16】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図17】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す線分である。
【図18】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の恒温恒湿装置1の機械的構成は、従来技術の恒温恒湿装置100と同一であり、図1の様に、恒温恒湿装置1は、試験室3と、冷却機5、加熱ヒータ(加熱手段)6、加湿装置(加湿手段)7及び送風機8を備えている。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、冷却機5の冷却出力が可変である。即ち、冷却機5の圧縮機20は、インバータ制御されたモータ(図示せず)によって駆動されており、モータの回転数を変化させることによって冷凍回路を流れる冷媒量を変化させることができる。また、膨張弁22の開度を変化させることによっても冷却機5の冷却出力を変化させることができる。
また、恒温恒湿装置1は、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力を変化させることができる。
本実施形態の恒温恒湿装置1では、空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0036】
本実施形態の恒温恒湿装置1では、制御装置30を有しており、温度センサー12の検知信号に基づいて、冷却機5、加熱ヒータ6が動作する。また、湿度センサー13の検知信号に基づいて、加湿装置7の加湿ヒータ25と、冷却機5が動作する。
即ち、図2の様に、制御装置30は、目標環境入力手段31に接続され、目標環境入力手段31によって試験室3の目標環境が入力され、この環境を維持する様に、加熱ヒータ6と、加湿ヒータ25及び冷却機5が制御される。
試験室3の目標環境は、例えば摂氏50度、相対湿度20パーセントという様に、目標温度と目標湿度によって構成されている。
【0037】
そして、本実施形態の恒温恒湿装置1では、原則として目標温度と目標湿度が個別に調整される。
例えば、試験室3の温度(温度センサー12の検知温度)が、目標温度よりも低ければ、加熱ヒータ6が駆動される。また、試験室3の温度が目標温度よりも高ければ、冷却機5が動作する。実際には、加熱ヒータ6と冷却機5とが同時に運転され、両者の出力割合を変化させることによって、試験室3の温度を目標温度に近づけて行く。
【0038】
また、試験室3の相対湿度(湿度センサー13の検知湿度)が、目標湿度よりも低ければ、加湿ヒータ25を駆動して加湿する。また、試験室3の湿度が目標湿度よりも高ければ、冷却機5を動作させて除湿する。実際には、加湿ヒータ25と冷却機5とが同時に運転され、両者の出力割合を変化させることによって、試験室3の湿度を目標温度に近づけて行く。
【0039】
そして、試験室3内の環境が目標環境に達すると、冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7の内の2者または3者を平衡させて目標環境を維持する。
この場合においても、目標温度と目標湿度が個別に調整される。
【0040】
冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7の内の2者または3者が平衡状態にある場合は、冷却機5の出力が図3、図4に示す基本マップに従って増減される。
即ち、本実施形態で採用する制御装置30は、加熱ヒータ6の出力を検知する加熱ヒータ出力検知手段を有し、加熱ヒータ6の出力が常時監視されている。
なお、加熱ヒータ出力検知手段は、例えばソフトウェアによって構成されている。
また、本実施形態で採用する制御装置30は、加湿ヒータ25の出力を検知する加湿ヒータ出力検知手段を有し、加湿ヒータ25の出力が常時監視されている。
加湿ヒータ出力検知手段についても、例えばソフトウェアによって構成されている。
また、制御装置30内のマップ記憶手段には、図3、図4のマップに相当するデータが格納されている。
【0041】
そして、加熱ヒータ出力検知手段によって検知された加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ出力検知手段によって検知された加湿ヒータ25の出力が、図4に示すUP領域にある場合には、冷却機5の出力が増強される。UP領域では、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係は、冷却出力増加条件を満たすものとなっている。
また加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図4に示すDOWN領域にある場合には、冷却機5の出力が減縮される。DOWN領域では、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係は、冷却出力減少条件を満たすものとなっている。
加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図4に示すKEEP領域にある場合には、冷却機5の出力が維持される。KEEP領域では、冷却出力維持条件を満たす、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係となっている。
【0042】
図3と図4のマップは同じものであるから、図4のマップについて説明すると、マップは、UP−KEEP閾線と、KEEP−DOWN閾線とを有している。
ここで、UP−KEEP閾線は、冷却機5の出力を増強させる信号を出力するUP領域(冷却出力増加条件具備範囲)と、冷却機5の出力を維持させるKEEP領域(冷却出力維持条件具備範囲)の境界を策定するものであり、本実施形態では、Y軸たる加熱ヒータ出力の3〜15%程度の間と、X軸たる加湿ヒータ出力の3〜15%程度の間との間を直線で結んだものである。即ちUP−KEEP閾線は、斜線である。本実施形態では、座標(0,10)と、座標(10,0)を結ぶ直線である。
【0043】
一方、KEEP−DOWN閾線は、冷却機5の出力を維持させるKEEP領域と、冷却機5の出力を低下させる信号を出力するDOWN領域(冷却出力減少領域具備範囲)の境界を策定するものであり、本実施形態では、折れ線によって構成されている。
即ち、基本マップのY軸たる加熱ヒータ出力の80〜100パーセント程度の間を起点として、X軸に平行に延び、加湿ヒータ出力の5〜20パーセント程度の位置からY軸に平行に下がるA領域線と、Y軸たる加熱ヒータ出力の5〜30パーセント程度の位置を起点として、X軸に平行に延び、加湿ヒータ出力の80〜100パーセント程度の位置からY軸に平行に下がるB領域線が結合したものである。本実施形態では、座標(0,90)と、(15,90)と、座標(15,20)と、座標(80,20)と、座標(80,0)を結ぶ折れ線である。
大まかな説明をすると、基本マップのA領域線は、「X:15パーセント」でY軸に平行のラインである。また、基本マップのB領域線は、「Y:20パーセント」でX軸に平行のラインである。
【0044】
また、大まかに説明すると、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が高い領域がDOWN領域(冷却出力減少領域具備範囲)であり、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が低い領域がUP領域(冷却出力増加条件具備範囲)であり、その中間がKEEP領域(冷却出力維持条件具備範囲)である。
【0045】
次に、本実施形態の恒温恒湿装置1の加熱ヒータ6と、加湿ヒータ25と及び冷却機5の動作について説明する。
例えば、試験室3の環境が初期状態から変化して目標環境に達し、安定した状態のとき、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図3の基本マップの点Aの位置であったと仮定する。具体的には、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、座標(90,80)で表される点Aであったと仮定する。
【0046】
点Aは、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25が共に高出力であり、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25及び冷却機5が、消費エネルギーが高い状態で平衡となっていることを示している。また、点Aは、DOWN領域にある。
この時の時刻が図5のaの時であるとすると、冷却機5は次第に冷却出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力が次第に低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力が次第に低下する。
即ち本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が独立的に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度・湿度の変化を補正する方向に加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が変化し、結果的に、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が図5の様に低下する。
【0047】
その結果、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力の関係が、図3のようにマップ上のA点(90,80)から、マップ上のB点(50,40)に移動し、さらにマップ上のB領域線上のC点を経てD点(20,15)に移動する。図5で説明すると、時刻bで、マップ上のB点(50,40)を通過し、時刻cでC点を越えてKEEP−DOWN閾線を通過し、時刻dでマップ上のD点(20,15)に至る。
【0048】
ここで時刻cでKEEP−DOWN閾線を通過したので、時刻cから時刻dの間は、基本マップのKEEP領域に入る。そのため時刻cから時刻dの間は、冷却機5は、現状の出力を維持する。即ち図5の様に、時刻cから時刻dの間は、冷却機5の出力を示す直線は平坦になる。
前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力が一定に落ちつくと、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力も、冷却機5の出力と均衡がとれた出力に落ちつく(外乱が無い場合)。即ち図5、図6の様に時刻cから時刻dの間は加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力が安定する。より具体的には、冷却機5の出力の安定時期から少し遅れて加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力が安定する。即ち外乱が無ければ、図6の様に、時刻cを過ぎてしばらく経過すると、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力を示す直線は平坦になる。
この状態は、加熱ヒータ6、加湿ヒータ25及び冷却機5が共に小出力で駆動しており、消費エネルギーが低い状態で平衡となっている。
【0049】
そしてさらに本実施形態の恒温恒湿装置1では、試験室3内の温度及び湿度の安定度を検知し、温度及び湿度が安定している場合には、前記したマップを変更する。図9は、最終目標マップであり、試験室3内の温度及び湿度が安定し、加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定している場合には、図3の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変更されていく。即ち、基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
最終目標マップを大まかに説明すると、最終目標マップのA領域線は、「X:10パーセント」でY軸に平行のラインである。また、基本マップのB領域線は、「Y:8パーセント」でX軸に平行のラインである。
【0050】
加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が安定しているか否かの判断は、一定時間内の出力ばらつきによって決定される。加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力の安定度は、直近の一定時間の間、加熱ヒータ6の出力の変化幅が、一定の範囲HPdに収まり、且つ同時間の間、加湿ヒータ25の出力の変化幅が一定の範囲WPdに収まっているか否かで判定する。具体的には、本実施形態では、HPd及びWPdの範囲を0.5パーセントから3パーセントに設定している。より好ましくは、1パーセントから2パーセントで設定することが好ましい。
【0051】
また試験室3内の温度及び湿度の安定度は、直近の一定時間の間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっているか否かで判定する。具体的には、本実施形態では、Tw及びWwの範囲を0.5パーセントから3パーセントに設定している。より好ましくは、1パーセントから2パーセントで設定することが好ましい。
そして、温度及び湿度が一定の時間の間、一定の範囲に収まり、且つ加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定しているならば、前記した図3の基本マップが徐々に図9の最終目標マップに近づき、その過程で、図7の第1移行期マップに変更される。即ち、当初の基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
即ち、KEEP−DOWN閾線のA領域線がY軸側に寄り、B領域線がX軸側に寄って冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更される。
【0052】
図5で説明すると、時刻tから時刻dの期間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっている。また、図5、図6の様に加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力も変化幅がHPd及びWPdの範囲に収まっていて安定している。なお、時刻tは、時刻cと時刻dとの間の期間に属する。そして、この条件が満足されている場合は、前記した図3の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変化し、その中途において、図7の第1移行期マップの状態となる。即ち、DOWN領域が広がる。
【0053】
その結果、前記したD点(20,15)が、DOWN領域となり、冷却機5は、時刻dからさらに出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力がさらに低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力がさらに低下する。
【0054】
その結果、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力の関係が、マップ上のD点(20,15)から、マップ上のE点(11,9.5)に移る。
そして本実施形態では、上記したマップは、さらに図9の最終目標マップに向かって変化していく。
即ち、試験室3内の温度及び湿度の変化幅が、一定の時間、一定の範囲Tw,Wwに収まり、且つ加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定している状態が維持されているならば、前記した図7の第1移行期マップが図8の第2移行期マップに変更される。即ち、図7の第1移行期マップのKEEP−DOWN閾線が再度変更され、DOWN領域がさらに広がる。
即ち、KEEP−DOWN閾線のA領域線がY軸側に寄り、B領域線がX軸側に寄って冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更される。
【0055】
図5、図6で説明すると、時刻eから時刻fの期間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっている。また、加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力も安定している。そして、この条件が満足されている場合は、前記した図7の第1移行期マップが図8の第2移行期マップに徐々に変更され、DOWN領域が広がる。
その結果、前記したE点(11,9.5)が、DOWN領域となり、冷却機5はさらに出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力がさらに低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力がさらに低下する。
【0056】
その後、さらに継続して試験室3内の温度及び湿度が安定していれば、上記したマップは継続して変化し続ける。そしてマップを変更した結果、DOWN領域が十分に広がり、KEEP−DOWN閾線が一定の限度線まで変更されると、それ以上にはマップは変更されない。即ち、図9の様に、KEEP−DOWN閾線が、ある程度UP−KEEP閾線に近づくと、それ以上にはKEEP−DOWN閾線はUP−KEEP閾線に近接しない。即ち図9は、KEEP領域と、DOWN領域の閾の最終目標を示している。
【0057】
また、図3に示す基本マップから変更された状態のときに、試験室3内の温度及び湿度が不安定になると、前記した移行期マップや最終目標マップが図3の基本マップに戻る。
図5を参照しつつ説明すると、時刻gを境として試験室3内の温度及び湿度が不安定になっている。即ち、試験室3内の温度及び湿度が、いずれも一定の範囲Tw,Wwを外れている。本実施形態では、試験室3内の温度及び湿度が不安定になると、前記した移行期マップが図3の基本マップに戻る。
なお、図5では、図9の最終目標マップの段階に至った後に試験室3内の温度及び湿度が不安定になった状態を想定しているが、図7の第1移行期マップの状態や、図8の第2移行期マップの状態の際に試験室3内の温度及び湿度が不安定になった場合についても、図3の基本マップに戻る。
また、図5では、試験室3内の温度及び湿度の双方が、一定の範囲Tw,Wwを外れた場合を想定しているが、実際には、温度及び湿度のいずれか一方が、一定の範囲Tw,Wwを外れると、図3の基本マップに戻るようになっている。
また、加熱ヒータ出力又は加湿ヒータ出力が、あらかじめ設定した下限値(以下、下限閾値ともいう)を下回った場合も基本マップに戻るようになっている。言い換えると、加熱ヒータ出力又は加湿ヒータ出力が、図11に示される下限閾値の軌跡たる下限閾値線を下回った場合も基本マップに戻るようになっている。
具体的には、下限閾値線は、加熱ヒータ出力の1〜5パーセント程度の位置からY軸に平行に延びる領域線と、加湿ヒータ出力の1〜5パーセント程度の位置からX軸に平行に延びる領域線が結合したものとなっている。即ち、下限閾値線の一部は、UP−KEEP閾線に進入している。
【0058】
マップの変化は、図3に示す基本マップを出発点として徐々に変化を始めてもよいが、最初の変化だけは、段階的に変化させることが望ましい。
以下、この理由を説明する。
経験則上、ヒータの出力がKEEP領域に入った後も、制御の遅れ等の影響で、ヒータの出力は低下を続ける。また、試験室3の温度及び湿度の安定を確認するには、ある程度の時間を要する。そのため、マップの変化が始まる際には、ヒータ6,25の出力がKEEP領域の内部に入りこんでいる。先の例で説明すると、基本マップにおけるB領域線は、「Y:20パーセント」でX軸に平行のラインであるが、実際にマップの変化が実施される起点たるD点は、座標(20,15)であり、B領域線たる、「Y:20パーセント」ラインを割り込んでいる。
【0059】
そこで、マップを変更する要件を満たした場合は、短時間の間にマップを変化させ、この変化後のマップを出発マップとして図9の最終目標マップに変化させる。
即ち、マップを変更する要件を満たした場合は、直ちに、図3に示す基本マップを図10の変更開始時マップに変更する。
変更開始時マップは、変更開始時近傍における加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力を基準とし、この基準値に一定の値を加算することによって決定することが望ましい。即ち、ヒータ出力がKEEP領域に入った後、ヒータ出力が安定した状態におけるヒータ出力の一定時間の平均値を基準値とする。
また、加算した後のA領域線又はB領域線が、図3の基本マップの領域線よりも拡散方向(DOWN領域側)に移動してしまう場合には、元の領域線に留め置く。
【0060】
図5、図6を参照して説明すると、時刻dにおける加熱ヒータ6の出力は、15パーセントであり、加湿ヒータ25の出力は20パーセントである。なおこの出力は、時刻dの直近の一定時間の平均値である。
本実施形態では、時刻dにおける加熱ヒータ6の出力(15パーセント)と、加湿ヒータ25の出力(20パーセント)を基準とし、これに一定の加算値を加算し、この値に基づいて変更開始時マップを定める。一定値は、任意であるが、例えば1パーセントから3パーセント程度である。
加算値を例えば2パーセントとする。この条件に従うと、基準マップのB領域線は、「Y:20パーセント」のラインであったものが、「Y:17パーセント」のラインまで後退する。
一方、加湿ヒータ25の出力は20パーセントであるから、加算値たる2パーセントを加えると、元の基本マップの加湿ヒータ20の閾値たる、15パーセントを越えてしまう。即ち、B領域線は、「X:15パーセント」のラインであったものが、「X:22パーセント」のラインまで前進してしまい、B領域線が、拡散方向に移動してしまうから、B領域線は変更せず、元の領域線に留め置く。
従って、変更開始時マップにおけるB領域線は、「X:15パーセント」のラインとなる。
【0061】
図10に示す変更開始時マップに基づくと、現在(時刻d)における加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力は、共にKEEP領域にあり、この点においては図3に示す基本マップによる場合と変わらない。そのため、冷却機5が急に起動するといった各機器の急変が起こらない。
変更開始時マップは、変更開始時のヒータ出力が、KEEP領域に入ることが条件であるから、変更開始時のヒータ出力そのものは、(20,15)であってもよいが、ヒータ出力は刻々変化するから、その変化ばらつきを考慮するべきである。そのため、変更開始時マップは、変更開始時のヒータ出力に一定の数値を加算したものであることが望ましい。
【0062】
また、ヒータ出力がDOWN領域にある場合は、冷却機の出力を低下させて行くが、この低下速度は、一定であっても異なるものであってもよい。
推奨される構成は、ヒータ出力が大きい場合には、冷却機の出力低下速度を速くし、ヒータ出力が小さい場合には、冷却機の出力低下速度を遅くする。
例えば、図3の様に、一定の冷却速度切り換え閾値を設定し、この冷却速度切り換え閾値よりもヒータ出力が大きい場合には、冷却機の出力低下速度を速くし、これよりもヒータ出力が小さい場合には、冷却機の出力低下速度を遅くさせる。即ち、冷却速度切り換え閾値を境として冷却機の出力低下速度を二段階に切り換える。もちろんより多段に切り換えてもよい。
【0063】
本実施形態においては、時刻dの段階では、ヒータ出力がD点であり、冷却速度切り換え閾値よりも上であるから、冷却機の出力低下速度が速い。これに対して時刻eの段階では、ヒータ出力がE点であり、冷却速度切り換え閾値よりも下であるから冷却機の出力低下速度が遅い。
【0064】
以上説明した実施形態では、UP領域、KEEP領域及びDOWN領域は、図4の様に直線的に区切られているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、曲線によって各領域が区切られていてもよい。
【0065】
また、上記した実施形態では、外乱等により温度及び湿度が乱れた場合には、図3の基本マップに戻る。即ち、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が初期値に戻る。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではなく、段階的に或いは連続的に初期値に近づけてもよい。
【0066】
上記した実施形態では、図3、4の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変更されてゆく構成を示したが、段階的にマップを変更してもよい。例えば、図7、図8等のマップを予め記憶しておき、条件に応じてマップを切り換えてもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、冷却機5を一基だけ搭載した例を示したが、複数の冷却機5を搭載し、運転数台数を切り換えることによって、冷却出力を変化させてもよい。図13は、2基の冷却機5を搭載した例を示している。冷却機を複数搭載する場合、当該複数の冷却機を併行して動かして調整するものでもよく、稼働する冷却機の台数を必要に応じて切り替えて行う形で調整するものであってもよい。
【0068】
上記した実施形態では、加湿装置7に加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものを用いたが、図14に示す恒温恒湿装置35のように加湿ボイラ33を用いて加湿してもよい。なお、加湿ボイラ33は、加湿ヒータ25を内蔵している。
【0069】
上記した実施形態では、加熱ヒータ出力検知手段及び加湿ヒータ出力検知手段の一例としてソフトウェアを挙げたが、本発明はこれに限定されるものはなく、電流クランプ等によってヒータに供給される電流を検知してもよい。
【0070】
以上説明した実施形態では、加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力が双方ともに安定しているか否かによって、図3の基本マップを徐々に図9の最終目標マップに近づけたが、加熱用のヒータ6の安定度だけを基準として図3の基本マップを変更してもよい。
また同様に、加湿ヒータ25の安定度だけを基準として図3の基本マップを変更してもよい。
また以上説明した実施形態では、試験室3の温度と湿度の双方が安定することを条件の一つとしてマップを変更したが、いずれか一方の安定度だけを条件としてもよい。さらには、試験室3の温度及び湿度の安定度を無視し、加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力が双方ともに安定しているか否かだけによってマップを変更してもよい。
【0071】
また加湿手段として超音波振動式のもの等を採用する場合には、超音波振動装置の出力の安定度を基準としてマップを変更することとなる。
さらに加熱手段として図15の様な熱媒体を循環させる構造を採用してもよい。図15に示す恒温恒湿装置36では、循環ポンプ37の出力や流量制御弁41の開度等を加熱手段の出力とし、この安定度を基準として図3の基本マップを変更する。
図15に示す恒温恒湿装置36は、試験室3の外部に熱媒タンク38を有し、当該熱媒タンク38の中には、一定の高温に調整された熱媒体が満たされている。また試験室3の内部には、熱交換器40が配されており、熱交換器40と熱媒タンク38の間は、循環ポンプ37及び流量制御弁41が介在されている。図15に示す恒温恒湿装置36では、熱媒タンク38と、熱交換器40と、循環ポンプ37及び流量制御弁41によって加熱手段47が構成されている。
本実施形態の恒温恒湿装置36では、流量制御弁41の開度を調整することによって加熱出力が調節される。
【0072】
また冷却機は、蒸発器を空気流路10に設置するものに限定されるものではなく、図16に示すようなブラインを循環させる構造を採用することもできる。図16に示す恒温恒湿装置45は、試験室3の外部にブラインタンク46を有し、当該ブラインタンク46の中には、一定の低温に調整された熱媒体が満たされている。また試験室3の内部には、蒸発器に代わって熱交換器53が配されており、熱交換器53とブラインタンク46の間は、循環ポンプ50及び流量制御弁51が介在されている。
本実施形態の恒温恒湿装置45では、流量制御弁51の開度を調整することによって冷凍機の出力が調節される。またこれに代わって、循環ポンプ50の回転数を増減したり、ブラインの温度自体を制御して冷却機の出力を調節してもよい。
【0073】
また本発明は、加湿手段を持たない恒温恒湿装置(空気調和装置)にも応用することができる。加湿手段を持たない空気調和装置では、冷却機5の出力は、マップに代わって図17に示すような線分で表される領域によって変わる。本実施形態では、試験室3の温度が安定し、加熱手段の出力が安定すれば、KEEP領域を狭める。
加湿手段を持たない空気調和装置では、(a)を基準線分とし、加熱ヒータの出力が安定すれば、KEEP領域が狭まる。即ち線分が(a)から(b)(c)(d)と変化する。
【0074】
また主として冷却用に使用する冷却機と、除湿用に使用する冷却機を備えた恒温恒湿装置58にも本発明を応用することができる。また除湿用の冷却機60を図18の様なブラインを循環させるタイプのものとすることもできる。
図18の様な構造を採用する場合には、除湿量の制御は、ブラインの流量を制御してもよく、ブラインの温度自体を昇降させることによってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 恒温恒湿装置
3 試験室
5 冷却機
6 加熱ヒータ(加熱手段)
7 加湿装置(加湿手段)
8 送風機
10 空気流路
12 温度センサー
13 湿度センサー
15 空気調和装置
30 制御装置
36 恒温恒湿装置
45 恒温恒湿装置
47 加熱手段
58 恒温恒湿装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置や恒温恒湿装置に搭載される空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の耐久試験等を行う装置として恒温恒湿装置100が知られている。恒温恒湿装置100は、例えば図1の様な構成を有するものである。
恒温恒湿装置100は、試験室3、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却機5の蒸発器11と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。恒温恒湿装置100では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0003】
冷却機5は、相変化する熱媒体を使用した冷凍サイクルを構成するものであり、蒸発器11の他に、圧縮機20と、凝縮器21と、膨張弁22を有している。そしてこれらが配管で環状に接続されている。
冷却機5は、公知のそれと同様に、蒸発器11内で、冷媒を膨張させ、蒸発器11の表面温度を低下させて環境から熱を奪う。
【0004】
加熱ヒータ6は、公知の電気ヒータである。
【0005】
加湿装置7は、加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものであり、水皿26内の水を加湿ヒータ25で加熱して蒸発させる。
【0006】
湿度センサー13は、湿度を検知可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、乾湿球湿度計等が採用できる。
【0007】
恒温恒湿装置100は、内蔵される空気調和装置15によって、試験室3内に所望の温度・湿度環境を作るものである。
即ち、送風機8を駆動して試験室3内の空気を空気流路10に導入し、必要に応じて、加熱、冷却、加湿して試験室3内を所望の温度・湿度環境にする。
例えば、外気と同じ環境を開始環境とし、高温・高湿環境を作る場合には、加熱ヒータ6と加湿装置7を駆動して試験室3内を加熱及び加湿する。
逆に低温・低湿環境を作る場合には、冷却機5を駆動して、試験室3内の温度と湿度とを低下させ、さらに加湿装置7を駆動して試験室3内の湿度を調節する。
【0008】
また、低温・高湿環境を作る場合には、冷却機5を駆動して、試験室3内の温度と湿度とを低下させ、さらに加湿装置7を駆動して試験室3内の湿度を上昇させる。
【0009】
いずれの場合においても、試験室3が所望の環境に至った後は、冷却機5と、加熱ヒータ6及び加湿装置7を適宜動作させて、前記した所望の環境を維持する。
ここで、冷却機5単独、加熱ヒータ6単独、加湿装置7単独によって所望の環境を維持することは一般に困難であり、上記した三者の内の2者または3者を平衡させて所望の環境を維持する。
【0010】
この理由は、次の通りである。即ち冷却機5は、主として試験室3内の温度を低下させる作用と、湿度を低下させる作用がある。しかしながら、冷却機5によって温度だけを低下させることは困難である。同様に、冷却機5によって湿度だけを低下させることも困難である。即ち試験室3の温度を低下させるべく、冷却機5を駆動すると、蒸発器11の表面温度が低下し、試験室3の温度が目的通りに低下するが、蒸発器11の表面で結露するので、試験室3の絶対湿度が低下してしまい、当然に相対湿度も変わってしまう。
【0011】
また、試験室3の湿度を低下させるには、蒸発器11の表面で結露させる必要があるが、そのためには、蒸発器11の表面温度を環境温度よりも低くしなければならず、試験室3の温度も下がってしまう。
【0012】
加湿装置7についても同様であり、湿度を上昇させるべく、加湿装置7を駆動すると、加湿ヒータ25が発生する熱によって、試験室3内の温度も上昇してしまう。
そのため、例えば、試験室3の相対湿度が放置すると低下傾向となる場合であり、湿度低下を抑制して所望の環境に維持する場合には、加湿ヒータ25を駆動し、試験室3内を加湿し、加湿ヒータ25による試験室3の温度上昇を冷却機5で抑制する必要がある。
【0013】
同様に、試験室3の相対湿度が放置すると上昇傾向となる場合であって、湿度上昇を抑制して所望の環境に維持する場合には、冷却機5を駆動して試験室3内を除湿し、冷却機5による温度降下を加熱ヒータ6の発熱によって抑制する必要がある。
【0014】
また、冷却機5の出力はヒータ等に比べて制御精度が低いので、温度や湿度を微調整する際には、加熱ヒータ6や加湿装置7が補助的に使用される。
この様に、試験室3内の環境を維持する場合には、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7の3者の内の2者または3者を動作させて平衡させる必要がある。
冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7を平衡させるための具体的方策が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−327123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
試験室3内の環境を維持するためには、前記した様に、冷却機5と、加熱ヒータ6と、加湿装置7の平衡を保つ必要があるが、なるべく消費エネルギーが低い状態で平衡にさせることが望ましい。
前記した様な試験室3の相対湿度が放置すると低下傾向であり、これを所望の環境に維持する場合を例に説明すると、加湿ヒータ25を大出力で駆動し、試験室3内を加湿すると加湿ヒータ25による温度上昇が大きくなるが、冷却機5を大出力で駆動すれば、温度上昇を抑制することができ、試験室3を所望の環境に維持することができる。この場合は、高い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが高い状態で平衡状態を維持させていると言える。
【0017】
また同様の条件下において、加湿ヒータ25を小出力で駆動し、試験室3内を加湿すると、加湿ヒータ25による温度上昇が小さく、冷却機5を小出力で駆動すれば、温度上昇を抑制することができ、試験室3を所望の環境に維持することができる。この場合は、低い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持させていると言える。
【0018】
実際の環境試験に則して考えると、試験室3の環境が一旦、所望の環境に至った後、試験室3の環境が変化する要因は、断熱材2を介した外気との熱移動、換気や空気漏れに伴う温度・湿度の変化、被試験物の吸湿・吸温・発熱、送風機8の発熱等である。そのため、恒温恒湿装置100が正常に機能しておれば、試験室3の環境が大きく変わることは少ない。そのため、低い消費エネルギーで平衡状態にさせ、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持させても、試験環境に悪影響を与えることは少ない。また省エネルギーの観点からは、消費エネルギーが低い状態で平衡にさせることが望ましい。
特に、環境試験は、長時間に渡って行われる場合が多いので、低い消費エネルギーで平衡状態にし、消費エネルギーが低い状態で平衡状態を維持することで、消費電力を抑制させたいという要求が強い。
【0019】
本発明は、上記した市場の要求に応えるものであり、冷却手段と、加熱手段と、加湿手段を消費エネルギーが低い状態で平衡にさせて、試験室等の環境を維持することができる空気調和装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、少なくとも冷却手段を有し、さらに加熱手段と加湿手段の少なくともいずれかを有し、冷却手段の冷却出力と、加熱手段及び/又は加湿手段の出力とを平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置において、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持するものであり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする空気調和装置である。
【0021】
ここで加熱手段は、主として環境の温度を上昇させる機能を有するものであり、代表的なものとしてジュール熱を発生させる電気ヒータが挙げられる。また他に、ヒートポンプを利用したヒータも考えられる。さらに燃料を燃焼させることによって発熱を得る装置も加熱手段に含まれる。加熱手段は、環境の温度を加熱ヒータ等によって直接的に昇温するものに限られず、間接的に昇温させるものも含まれる。例えば、ヒータによって熱媒体を昇温し、この熱媒体を循環させて環境の温度を上昇させる構成のものも加熱手段に含まれる。
加湿手段は、例えば水中に電気ヒータを挿入したものや、電気ヒータに水を滴下するものが使用される。また燃焼による熱を利用して水を気化させるものも考えられる。さらには超音波振動を利用して加湿するものも加湿手段に含まれる。
冷却手段は、相変化する冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成するものが普通に使用されるが、ペルチェ素子を使用する様な冷却機であってもよい。また冷却手段は、図1の様な蒸発器11を空気流路10に置くものに限らず、ブラインを循環させるものであってもよい。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1をより具体化したものであり、加熱手段と、加湿手段をヒータに限定したものである。
即ち請求項2に記載の発明は、加熱手段として加熱用ヒータを備え、加湿手段として加湿用ヒータを備え、冷却手段の冷却出力と、加熱用ヒータの出力と、加湿用ヒータの出力を平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置であり、出力検知手段は加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知するものであり、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置である。
【0023】
以下、請求項1,2の作用について説明する。
例えば加熱用ヒータ(請求項1では加熱手段 以下同じ)の出力及び加湿用ヒータ(請求項1では加湿手段 以下同じ)の出力が共に高い状態であるならば、消費エネルギーが高い状態で平衡状態を保っていると考えられ、省エネルギーの観点から望ましくない。
また、例えば、加熱用ヒータの出力と加湿用ヒータの出力が共に極めて小さいならば、冷却手段を含む三者が共に極めて低い出力で平衡していると考えられる。この状態は、エネルギー消費という点では望ましいが、外乱に対する反応速度が遅いという欠点を抱える。
【0024】
そこで、請求項1,2に記載の空気調和装置では、加熱用ヒータの出力あるいは加湿用ヒータの出力の少なくとも一方に基づいて冷却手段の冷却出力を変更する。即ち、本発明の空気調和装置では、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持する。
この様に本発明では、冷却出力増加条件と、冷却出力減少条件と、冷却出力維持条件が定められており、出力検知手段の検知信号に応じていずれかの条件に該当させる。
例えば、前記した様な加熱用ヒータの出力及び加湿用ヒータの出力が共に高い状態は、冷却出力減少条件に該当し、冷却手段の冷却出力を減少させる。その結果、ヒータの出力もこれに追従し、消費エネルギーが低い状態で平衡にする様に移行させることができる。
逆に加熱用ヒータの出力と加湿用ヒータの出力が共に極めて小さい場合は、冷却出力増加条件に該当し、冷却手段の冷却出力を増加させる。その結果、ヒータの出力もこれに追従し、省エネ的観点と、外乱に対する反応速度とのバランスが取れた状態で、ヒータと冷却手段が平衡する。
そして本発明では、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更する。そのためヒータの出力が安定すれば、冷却手段の出力がさらに減少傾向となり、冷却手段の消費電力を減少させることができる。
【0025】
加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したか否かは、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を監視することによって判断することが望ましい。そして、ヒータの出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることを条件として、ヒータの出力が安定したと判断する。
即ち、請求項4に記載の発明は、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を監視し、前記出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることが、出力が安定した条件であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0026】
また環境の温度及び/又は湿度が安定していることを条件の一つとして冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することが望ましい(請求項3)。
【0027】
請求項5に記載の発明は、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係には初期値があり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が、冷却出力が減少側に変更され易い方向に徐々に自動変更され、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0028】
本発明では、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を徐々に変更するので、ヒータ等と冷却手段の平衡を乱さずに冷却出力を減少させて行くことができる。
また、本発明では、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻る。例えば、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力の安定が崩れた場合には、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を初期値に戻す。そのため外乱に対して迅速に対応することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され易い方向に一旦急激に自動変更され、その後に徐々に自動変更されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0030】
本発明によると、冷却手段の出力をより迅速に低下させることができ、より早く省エネ運転状態に移行させることができる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、冷却手段の冷却出力の変化速度が可変であり、出力検知手段が検知した出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空気調和装置である。
【0032】
冷却手段の冷却出力の変化速度は、段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
本発明では、ヒータ等の出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いので、消費エネルギーが高い状態を早期に解消することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の空気調和装置は、冷却手段と、加熱手段と、加湿手段等を消費エネルギーがより低い状態で平衡にさせて、試験室等の環境を維持することができる。そのため、本発明の空気調和装置は、省エネルギーである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明及び従来技術の恒温恒湿装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態の恒温恒湿装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す基本マップである。
【図4】図3の各領域を示した基本マップである。
【図5】本発明の空気調和装置の加熱ヒータ、加湿ヒータ、冷却機、試験室温度、試験室湿度の時間変化を示すグラフである。
【図6】図5のグラフの時間経過側における加熱ヒータ、加湿ヒータ、冷却機の運転状況を運転率側のスケールを拡大して示すグラフである。
【図7】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す第1移行期マップである。
【図8】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す第2移行期マップである。
【図9】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す最終目標マップである。
【図10】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す変更開始時マップである。
【図11】本発明の空気調和装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す基本マップである。
【図12】本発明の他の実施形態における空気調和装置の冷却機の運転出力の増減を示す基本マップである。
【図13】本発明の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図14】本発明の他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図15】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図16】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【図17】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の冷却機の運転出力の増減方法を示す線分である。
【図18】本発明のさらに他の変形例の恒温恒湿装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の恒温恒湿装置1の機械的構成は、従来技術の恒温恒湿装置100と同一であり、図1の様に、恒温恒湿装置1は、試験室3と、冷却機5、加熱ヒータ(加熱手段)6、加湿装置(加湿手段)7及び送風機8を備えている。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、冷却機5の冷却出力が可変である。即ち、冷却機5の圧縮機20は、インバータ制御されたモータ(図示せず)によって駆動されており、モータの回転数を変化させることによって冷凍回路を流れる冷媒量を変化させることができる。また、膨張弁22の開度を変化させることによっても冷却機5の冷却出力を変化させることができる。
また、恒温恒湿装置1は、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力を変化させることができる。
本実施形態の恒温恒湿装置1では、空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0036】
本実施形態の恒温恒湿装置1では、制御装置30を有しており、温度センサー12の検知信号に基づいて、冷却機5、加熱ヒータ6が動作する。また、湿度センサー13の検知信号に基づいて、加湿装置7の加湿ヒータ25と、冷却機5が動作する。
即ち、図2の様に、制御装置30は、目標環境入力手段31に接続され、目標環境入力手段31によって試験室3の目標環境が入力され、この環境を維持する様に、加熱ヒータ6と、加湿ヒータ25及び冷却機5が制御される。
試験室3の目標環境は、例えば摂氏50度、相対湿度20パーセントという様に、目標温度と目標湿度によって構成されている。
【0037】
そして、本実施形態の恒温恒湿装置1では、原則として目標温度と目標湿度が個別に調整される。
例えば、試験室3の温度(温度センサー12の検知温度)が、目標温度よりも低ければ、加熱ヒータ6が駆動される。また、試験室3の温度が目標温度よりも高ければ、冷却機5が動作する。実際には、加熱ヒータ6と冷却機5とが同時に運転され、両者の出力割合を変化させることによって、試験室3の温度を目標温度に近づけて行く。
【0038】
また、試験室3の相対湿度(湿度センサー13の検知湿度)が、目標湿度よりも低ければ、加湿ヒータ25を駆動して加湿する。また、試験室3の湿度が目標湿度よりも高ければ、冷却機5を動作させて除湿する。実際には、加湿ヒータ25と冷却機5とが同時に運転され、両者の出力割合を変化させることによって、試験室3の湿度を目標温度に近づけて行く。
【0039】
そして、試験室3内の環境が目標環境に達すると、冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7の内の2者または3者を平衡させて目標環境を維持する。
この場合においても、目標温度と目標湿度が個別に調整される。
【0040】
冷却機5、加熱ヒータ6及び加湿装置7の内の2者または3者が平衡状態にある場合は、冷却機5の出力が図3、図4に示す基本マップに従って増減される。
即ち、本実施形態で採用する制御装置30は、加熱ヒータ6の出力を検知する加熱ヒータ出力検知手段を有し、加熱ヒータ6の出力が常時監視されている。
なお、加熱ヒータ出力検知手段は、例えばソフトウェアによって構成されている。
また、本実施形態で採用する制御装置30は、加湿ヒータ25の出力を検知する加湿ヒータ出力検知手段を有し、加湿ヒータ25の出力が常時監視されている。
加湿ヒータ出力検知手段についても、例えばソフトウェアによって構成されている。
また、制御装置30内のマップ記憶手段には、図3、図4のマップに相当するデータが格納されている。
【0041】
そして、加熱ヒータ出力検知手段によって検知された加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ出力検知手段によって検知された加湿ヒータ25の出力が、図4に示すUP領域にある場合には、冷却機5の出力が増強される。UP領域では、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係は、冷却出力増加条件を満たすものとなっている。
また加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図4に示すDOWN領域にある場合には、冷却機5の出力が減縮される。DOWN領域では、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係は、冷却出力減少条件を満たすものとなっている。
加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図4に示すKEEP領域にある場合には、冷却機5の出力が維持される。KEEP領域では、冷却出力維持条件を満たす、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力関係となっている。
【0042】
図3と図4のマップは同じものであるから、図4のマップについて説明すると、マップは、UP−KEEP閾線と、KEEP−DOWN閾線とを有している。
ここで、UP−KEEP閾線は、冷却機5の出力を増強させる信号を出力するUP領域(冷却出力増加条件具備範囲)と、冷却機5の出力を維持させるKEEP領域(冷却出力維持条件具備範囲)の境界を策定するものであり、本実施形態では、Y軸たる加熱ヒータ出力の3〜15%程度の間と、X軸たる加湿ヒータ出力の3〜15%程度の間との間を直線で結んだものである。即ちUP−KEEP閾線は、斜線である。本実施形態では、座標(0,10)と、座標(10,0)を結ぶ直線である。
【0043】
一方、KEEP−DOWN閾線は、冷却機5の出力を維持させるKEEP領域と、冷却機5の出力を低下させる信号を出力するDOWN領域(冷却出力減少領域具備範囲)の境界を策定するものであり、本実施形態では、折れ線によって構成されている。
即ち、基本マップのY軸たる加熱ヒータ出力の80〜100パーセント程度の間を起点として、X軸に平行に延び、加湿ヒータ出力の5〜20パーセント程度の位置からY軸に平行に下がるA領域線と、Y軸たる加熱ヒータ出力の5〜30パーセント程度の位置を起点として、X軸に平行に延び、加湿ヒータ出力の80〜100パーセント程度の位置からY軸に平行に下がるB領域線が結合したものである。本実施形態では、座標(0,90)と、(15,90)と、座標(15,20)と、座標(80,20)と、座標(80,0)を結ぶ折れ線である。
大まかな説明をすると、基本マップのA領域線は、「X:15パーセント」でY軸に平行のラインである。また、基本マップのB領域線は、「Y:20パーセント」でX軸に平行のラインである。
【0044】
また、大まかに説明すると、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が高い領域がDOWN領域(冷却出力減少領域具備範囲)であり、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が低い領域がUP領域(冷却出力増加条件具備範囲)であり、その中間がKEEP領域(冷却出力維持条件具備範囲)である。
【0045】
次に、本実施形態の恒温恒湿装置1の加熱ヒータ6と、加湿ヒータ25と及び冷却機5の動作について説明する。
例えば、試験室3の環境が初期状態から変化して目標環境に達し、安定した状態のとき、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、図3の基本マップの点Aの位置であったと仮定する。具体的には、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力が、座標(90,80)で表される点Aであったと仮定する。
【0046】
点Aは、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25が共に高出力であり、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25及び冷却機5が、消費エネルギーが高い状態で平衡となっていることを示している。また、点Aは、DOWN領域にある。
この時の時刻が図5のaの時であるとすると、冷却機5は次第に冷却出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力が次第に低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力が次第に低下する。
即ち本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が独立的に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度・湿度の変化を補正する方向に加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が変化し、結果的に、加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が図5の様に低下する。
【0047】
その結果、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力の関係が、図3のようにマップ上のA点(90,80)から、マップ上のB点(50,40)に移動し、さらにマップ上のB領域線上のC点を経てD点(20,15)に移動する。図5で説明すると、時刻bで、マップ上のB点(50,40)を通過し、時刻cでC点を越えてKEEP−DOWN閾線を通過し、時刻dでマップ上のD点(20,15)に至る。
【0048】
ここで時刻cでKEEP−DOWN閾線を通過したので、時刻cから時刻dの間は、基本マップのKEEP領域に入る。そのため時刻cから時刻dの間は、冷却機5は、現状の出力を維持する。即ち図5の様に、時刻cから時刻dの間は、冷却機5の出力を示す直線は平坦になる。
前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力が一定に落ちつくと、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力も、冷却機5の出力と均衡がとれた出力に落ちつく(外乱が無い場合)。即ち図5、図6の様に時刻cから時刻dの間は加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力が安定する。より具体的には、冷却機5の出力の安定時期から少し遅れて加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力が安定する。即ち外乱が無ければ、図6の様に、時刻cを過ぎてしばらく経過すると、加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力を示す直線は平坦になる。
この状態は、加熱ヒータ6、加湿ヒータ25及び冷却機5が共に小出力で駆動しており、消費エネルギーが低い状態で平衡となっている。
【0049】
そしてさらに本実施形態の恒温恒湿装置1では、試験室3内の温度及び湿度の安定度を検知し、温度及び湿度が安定している場合には、前記したマップを変更する。図9は、最終目標マップであり、試験室3内の温度及び湿度が安定し、加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定している場合には、図3の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変更されていく。即ち、基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
最終目標マップを大まかに説明すると、最終目標マップのA領域線は、「X:10パーセント」でY軸に平行のラインである。また、基本マップのB領域線は、「Y:8パーセント」でX軸に平行のラインである。
【0050】
加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力が安定しているか否かの判断は、一定時間内の出力ばらつきによって決定される。加熱ヒータ6と加湿ヒータ25の出力の安定度は、直近の一定時間の間、加熱ヒータ6の出力の変化幅が、一定の範囲HPdに収まり、且つ同時間の間、加湿ヒータ25の出力の変化幅が一定の範囲WPdに収まっているか否かで判定する。具体的には、本実施形態では、HPd及びWPdの範囲を0.5パーセントから3パーセントに設定している。より好ましくは、1パーセントから2パーセントで設定することが好ましい。
【0051】
また試験室3内の温度及び湿度の安定度は、直近の一定時間の間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっているか否かで判定する。具体的には、本実施形態では、Tw及びWwの範囲を0.5パーセントから3パーセントに設定している。より好ましくは、1パーセントから2パーセントで設定することが好ましい。
そして、温度及び湿度が一定の時間の間、一定の範囲に収まり、且つ加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定しているならば、前記した図3の基本マップが徐々に図9の最終目標マップに近づき、その過程で、図7の第1移行期マップに変更される。即ち、当初の基本マップのKEEP−DOWN閾線が変更され、DOWN領域が広がる。
即ち、KEEP−DOWN閾線のA領域線がY軸側に寄り、B領域線がX軸側に寄って冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更される。
【0052】
図5で説明すると、時刻tから時刻dの期間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっている。また、図5、図6の様に加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力も変化幅がHPd及びWPdの範囲に収まっていて安定している。なお、時刻tは、時刻cと時刻dとの間の期間に属する。そして、この条件が満足されている場合は、前記した図3の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変化し、その中途において、図7の第1移行期マップの状態となる。即ち、DOWN領域が広がる。
【0053】
その結果、前記したD点(20,15)が、DOWN領域となり、冷却機5は、時刻dからさらに出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力がさらに低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力がさらに低下する。
【0054】
その結果、加熱ヒータ6の出力と、加湿ヒータ25の出力の関係が、マップ上のD点(20,15)から、マップ上のE点(11,9.5)に移る。
そして本実施形態では、上記したマップは、さらに図9の最終目標マップに向かって変化していく。
即ち、試験室3内の温度及び湿度の変化幅が、一定の時間、一定の範囲Tw,Wwに収まり、且つ加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力が安定している状態が維持されているならば、前記した図7の第1移行期マップが図8の第2移行期マップに変更される。即ち、図7の第1移行期マップのKEEP−DOWN閾線が再度変更され、DOWN領域がさらに広がる。
即ち、KEEP−DOWN閾線のA領域線がY軸側に寄り、B領域線がX軸側に寄って冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更される。
【0055】
図5、図6で説明すると、時刻eから時刻fの期間、試験室3内の温度の変化幅が、一定の範囲Twに収まり、且つ同時間の間、試験室3内の湿度の変化幅が、一定の範囲Wwに収まっている。また、加熱ヒータ6や加湿ヒータ25の出力も安定している。そして、この条件が満足されている場合は、前記した図7の第1移行期マップが図8の第2移行期マップに徐々に変更され、DOWN領域が広がる。
その結果、前記したE点(11,9.5)が、DOWN領域となり、冷却機5はさらに出力を落としていく。そして前記した様に、本実施形態の恒温恒湿装置1では、目標温度と目標湿度が個別に調整されるから、冷却機5の出力低下に伴う冷却能力の減少に基づく温度上昇を補うべく、加熱ヒータ6の出力がさらに低下する。
同様に、冷却機5の出力低下に伴う除湿能力の減少に基づく湿度上昇を補うべく、加湿ヒータ6の出力がさらに低下する。
【0056】
その後、さらに継続して試験室3内の温度及び湿度が安定していれば、上記したマップは継続して変化し続ける。そしてマップを変更した結果、DOWN領域が十分に広がり、KEEP−DOWN閾線が一定の限度線まで変更されると、それ以上にはマップは変更されない。即ち、図9の様に、KEEP−DOWN閾線が、ある程度UP−KEEP閾線に近づくと、それ以上にはKEEP−DOWN閾線はUP−KEEP閾線に近接しない。即ち図9は、KEEP領域と、DOWN領域の閾の最終目標を示している。
【0057】
また、図3に示す基本マップから変更された状態のときに、試験室3内の温度及び湿度が不安定になると、前記した移行期マップや最終目標マップが図3の基本マップに戻る。
図5を参照しつつ説明すると、時刻gを境として試験室3内の温度及び湿度が不安定になっている。即ち、試験室3内の温度及び湿度が、いずれも一定の範囲Tw,Wwを外れている。本実施形態では、試験室3内の温度及び湿度が不安定になると、前記した移行期マップが図3の基本マップに戻る。
なお、図5では、図9の最終目標マップの段階に至った後に試験室3内の温度及び湿度が不安定になった状態を想定しているが、図7の第1移行期マップの状態や、図8の第2移行期マップの状態の際に試験室3内の温度及び湿度が不安定になった場合についても、図3の基本マップに戻る。
また、図5では、試験室3内の温度及び湿度の双方が、一定の範囲Tw,Wwを外れた場合を想定しているが、実際には、温度及び湿度のいずれか一方が、一定の範囲Tw,Wwを外れると、図3の基本マップに戻るようになっている。
また、加熱ヒータ出力又は加湿ヒータ出力が、あらかじめ設定した下限値(以下、下限閾値ともいう)を下回った場合も基本マップに戻るようになっている。言い換えると、加熱ヒータ出力又は加湿ヒータ出力が、図11に示される下限閾値の軌跡たる下限閾値線を下回った場合も基本マップに戻るようになっている。
具体的には、下限閾値線は、加熱ヒータ出力の1〜5パーセント程度の位置からY軸に平行に延びる領域線と、加湿ヒータ出力の1〜5パーセント程度の位置からX軸に平行に延びる領域線が結合したものとなっている。即ち、下限閾値線の一部は、UP−KEEP閾線に進入している。
【0058】
マップの変化は、図3に示す基本マップを出発点として徐々に変化を始めてもよいが、最初の変化だけは、段階的に変化させることが望ましい。
以下、この理由を説明する。
経験則上、ヒータの出力がKEEP領域に入った後も、制御の遅れ等の影響で、ヒータの出力は低下を続ける。また、試験室3の温度及び湿度の安定を確認するには、ある程度の時間を要する。そのため、マップの変化が始まる際には、ヒータ6,25の出力がKEEP領域の内部に入りこんでいる。先の例で説明すると、基本マップにおけるB領域線は、「Y:20パーセント」でX軸に平行のラインであるが、実際にマップの変化が実施される起点たるD点は、座標(20,15)であり、B領域線たる、「Y:20パーセント」ラインを割り込んでいる。
【0059】
そこで、マップを変更する要件を満たした場合は、短時間の間にマップを変化させ、この変化後のマップを出発マップとして図9の最終目標マップに変化させる。
即ち、マップを変更する要件を満たした場合は、直ちに、図3に示す基本マップを図10の変更開始時マップに変更する。
変更開始時マップは、変更開始時近傍における加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力を基準とし、この基準値に一定の値を加算することによって決定することが望ましい。即ち、ヒータ出力がKEEP領域に入った後、ヒータ出力が安定した状態におけるヒータ出力の一定時間の平均値を基準値とする。
また、加算した後のA領域線又はB領域線が、図3の基本マップの領域線よりも拡散方向(DOWN領域側)に移動してしまう場合には、元の領域線に留め置く。
【0060】
図5、図6を参照して説明すると、時刻dにおける加熱ヒータ6の出力は、15パーセントであり、加湿ヒータ25の出力は20パーセントである。なおこの出力は、時刻dの直近の一定時間の平均値である。
本実施形態では、時刻dにおける加熱ヒータ6の出力(15パーセント)と、加湿ヒータ25の出力(20パーセント)を基準とし、これに一定の加算値を加算し、この値に基づいて変更開始時マップを定める。一定値は、任意であるが、例えば1パーセントから3パーセント程度である。
加算値を例えば2パーセントとする。この条件に従うと、基準マップのB領域線は、「Y:20パーセント」のラインであったものが、「Y:17パーセント」のラインまで後退する。
一方、加湿ヒータ25の出力は20パーセントであるから、加算値たる2パーセントを加えると、元の基本マップの加湿ヒータ20の閾値たる、15パーセントを越えてしまう。即ち、B領域線は、「X:15パーセント」のラインであったものが、「X:22パーセント」のラインまで前進してしまい、B領域線が、拡散方向に移動してしまうから、B領域線は変更せず、元の領域線に留め置く。
従って、変更開始時マップにおけるB領域線は、「X:15パーセント」のラインとなる。
【0061】
図10に示す変更開始時マップに基づくと、現在(時刻d)における加熱ヒータ6の出力及び加湿ヒータ25の出力は、共にKEEP領域にあり、この点においては図3に示す基本マップによる場合と変わらない。そのため、冷却機5が急に起動するといった各機器の急変が起こらない。
変更開始時マップは、変更開始時のヒータ出力が、KEEP領域に入ることが条件であるから、変更開始時のヒータ出力そのものは、(20,15)であってもよいが、ヒータ出力は刻々変化するから、その変化ばらつきを考慮するべきである。そのため、変更開始時マップは、変更開始時のヒータ出力に一定の数値を加算したものであることが望ましい。
【0062】
また、ヒータ出力がDOWN領域にある場合は、冷却機の出力を低下させて行くが、この低下速度は、一定であっても異なるものであってもよい。
推奨される構成は、ヒータ出力が大きい場合には、冷却機の出力低下速度を速くし、ヒータ出力が小さい場合には、冷却機の出力低下速度を遅くする。
例えば、図3の様に、一定の冷却速度切り換え閾値を設定し、この冷却速度切り換え閾値よりもヒータ出力が大きい場合には、冷却機の出力低下速度を速くし、これよりもヒータ出力が小さい場合には、冷却機の出力低下速度を遅くさせる。即ち、冷却速度切り換え閾値を境として冷却機の出力低下速度を二段階に切り換える。もちろんより多段に切り換えてもよい。
【0063】
本実施形態においては、時刻dの段階では、ヒータ出力がD点であり、冷却速度切り換え閾値よりも上であるから、冷却機の出力低下速度が速い。これに対して時刻eの段階では、ヒータ出力がE点であり、冷却速度切り換え閾値よりも下であるから冷却機の出力低下速度が遅い。
【0064】
以上説明した実施形態では、UP領域、KEEP領域及びDOWN領域は、図4の様に直線的に区切られているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、曲線によって各領域が区切られていてもよい。
【0065】
また、上記した実施形態では、外乱等により温度及び湿度が乱れた場合には、図3の基本マップに戻る。即ち、冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が初期値に戻る。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではなく、段階的に或いは連続的に初期値に近づけてもよい。
【0066】
上記した実施形態では、図3、4の基本マップが図9の最終目標マップに向かって徐々に変更されてゆく構成を示したが、段階的にマップを変更してもよい。例えば、図7、図8等のマップを予め記憶しておき、条件に応じてマップを切り換えてもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、冷却機5を一基だけ搭載した例を示したが、複数の冷却機5を搭載し、運転数台数を切り換えることによって、冷却出力を変化させてもよい。図13は、2基の冷却機5を搭載した例を示している。冷却機を複数搭載する場合、当該複数の冷却機を併行して動かして調整するものでもよく、稼働する冷却機の台数を必要に応じて切り替えて行う形で調整するものであってもよい。
【0068】
上記した実施形態では、加湿装置7に加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものを用いたが、図14に示す恒温恒湿装置35のように加湿ボイラ33を用いて加湿してもよい。なお、加湿ボイラ33は、加湿ヒータ25を内蔵している。
【0069】
上記した実施形態では、加熱ヒータ出力検知手段及び加湿ヒータ出力検知手段の一例としてソフトウェアを挙げたが、本発明はこれに限定されるものはなく、電流クランプ等によってヒータに供給される電流を検知してもよい。
【0070】
以上説明した実施形態では、加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力が双方ともに安定しているか否かによって、図3の基本マップを徐々に図9の最終目標マップに近づけたが、加熱用のヒータ6の安定度だけを基準として図3の基本マップを変更してもよい。
また同様に、加湿ヒータ25の安定度だけを基準として図3の基本マップを変更してもよい。
また以上説明した実施形態では、試験室3の温度と湿度の双方が安定することを条件の一つとしてマップを変更したが、いずれか一方の安定度だけを条件としてもよい。さらには、試験室3の温度及び湿度の安定度を無視し、加熱ヒータ6及び加湿ヒータ25の出力が双方ともに安定しているか否かだけによってマップを変更してもよい。
【0071】
また加湿手段として超音波振動式のもの等を採用する場合には、超音波振動装置の出力の安定度を基準としてマップを変更することとなる。
さらに加熱手段として図15の様な熱媒体を循環させる構造を採用してもよい。図15に示す恒温恒湿装置36では、循環ポンプ37の出力や流量制御弁41の開度等を加熱手段の出力とし、この安定度を基準として図3の基本マップを変更する。
図15に示す恒温恒湿装置36は、試験室3の外部に熱媒タンク38を有し、当該熱媒タンク38の中には、一定の高温に調整された熱媒体が満たされている。また試験室3の内部には、熱交換器40が配されており、熱交換器40と熱媒タンク38の間は、循環ポンプ37及び流量制御弁41が介在されている。図15に示す恒温恒湿装置36では、熱媒タンク38と、熱交換器40と、循環ポンプ37及び流量制御弁41によって加熱手段47が構成されている。
本実施形態の恒温恒湿装置36では、流量制御弁41の開度を調整することによって加熱出力が調節される。
【0072】
また冷却機は、蒸発器を空気流路10に設置するものに限定されるものではなく、図16に示すようなブラインを循環させる構造を採用することもできる。図16に示す恒温恒湿装置45は、試験室3の外部にブラインタンク46を有し、当該ブラインタンク46の中には、一定の低温に調整された熱媒体が満たされている。また試験室3の内部には、蒸発器に代わって熱交換器53が配されており、熱交換器53とブラインタンク46の間は、循環ポンプ50及び流量制御弁51が介在されている。
本実施形態の恒温恒湿装置45では、流量制御弁51の開度を調整することによって冷凍機の出力が調節される。またこれに代わって、循環ポンプ50の回転数を増減したり、ブラインの温度自体を制御して冷却機の出力を調節してもよい。
【0073】
また本発明は、加湿手段を持たない恒温恒湿装置(空気調和装置)にも応用することができる。加湿手段を持たない空気調和装置では、冷却機5の出力は、マップに代わって図17に示すような線分で表される領域によって変わる。本実施形態では、試験室3の温度が安定し、加熱手段の出力が安定すれば、KEEP領域を狭める。
加湿手段を持たない空気調和装置では、(a)を基準線分とし、加熱ヒータの出力が安定すれば、KEEP領域が狭まる。即ち線分が(a)から(b)(c)(d)と変化する。
【0074】
また主として冷却用に使用する冷却機と、除湿用に使用する冷却機を備えた恒温恒湿装置58にも本発明を応用することができる。また除湿用の冷却機60を図18の様なブラインを循環させるタイプのものとすることもできる。
図18の様な構造を採用する場合には、除湿量の制御は、ブラインの流量を制御してもよく、ブラインの温度自体を昇降させることによってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 恒温恒湿装置
3 試験室
5 冷却機
6 加熱ヒータ(加熱手段)
7 加湿装置(加湿手段)
8 送風機
10 空気流路
12 温度センサー
13 湿度センサー
15 空気調和装置
30 制御装置
36 恒温恒湿装置
45 恒温恒湿装置
47 加熱手段
58 恒温恒湿装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも冷却手段を有し、さらに加熱手段と加湿手段の少なくともいずれかを有し、冷却手段の冷却出力と、加熱手段及び/又は加湿手段の出力とを平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置において、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持するものであり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
加熱手段として加熱用ヒータを備え、加湿手段として加湿用ヒータを備え、冷却手段の冷却出力と、加熱用ヒータの出力と、加湿用ヒータの出力を平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置であり、出力検知手段は加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知するものであり、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
環境の温度及び/又は湿度が安定していることを条件の一つとして冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を監視し、前記出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることが、出力が安定した条件であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係には初期値があり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が、冷却出力が減少側に変更され易い方向に徐々に自動変更され、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項6】
冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され易い方向に一旦急激に自動変更され、その後に徐々に自動変更されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項7】
冷却手段の冷却出力の変化速度が可変であり、出力検知手段が検知した出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項1】
少なくとも冷却手段を有し、さらに加熱手段と加湿手段の少なくともいずれかを有し、冷却手段の冷却出力と、加熱手段及び/又は加湿手段の出力とを平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置において、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を検知する出力検知手段を備え、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力増加条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を増加し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力減少条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を減少し、出力検知手段の検知信号が特定の冷却出力維持条件を満たした場合に冷却手段の冷却出力を維持するものであり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
加熱手段として加熱用ヒータを備え、加湿手段として加湿用ヒータを備え、冷却手段の冷却出力と、加熱用ヒータの出力と、加湿用ヒータの出力を平衡させて所望の環境を保つ空気調和装置であり、出力検知手段は加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力を検知するものであり、加熱用ヒータの出力及び/又は加湿用ヒータの出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係を、冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
環境の温度及び/又は湿度が安定していることを条件の一つとして冷却出力が減少側に変更され易い方向に自動変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力を監視し、前記出力が一定時間の間、一定の振れ幅の間に収まっていることが、出力が安定した条件であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係には初期値があり、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力が安定したことを条件として前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係が、冷却出力が減少側に変更され易い方向に徐々に自動変更され、加熱手段の出力及び/又は加湿手段の出力の安定が崩れた場合には、前記冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され難い方向に戻ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項6】
冷却出力減少条件と冷却出力維持条件の関係は、冷却出力が減少側に変更され易い方向に一旦急激に自動変更され、その後に徐々に自動変更されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項7】
冷却手段の冷却出力の変化速度が可変であり、出力検知手段が検知した出力が高い場合には冷却手段の冷却出力の変化速度が速いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空気調和装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−24453(P2013−24453A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157978(P2011−157978)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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