説明

空気除菌デバイス及び空気除菌デバイスを用いた集塵装置

【課題】浮遊細菌や微細粉塵を効率よく捕集、除菌することができる空気除菌デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】放電電極2と対向電極3とを間隔を設けながら交互に積層して両電極間に電圧を印加し、少なくとも放電電極2が半導電性を有しており、かつ放電電極2の一部が、放電部4として棘状のエッジを備えたという構成にしたことにより、帯電性能を低下させる火花放電を抑制しながら放電部4でコロナ放電を起こすことができるため、浮遊細菌や微細粉塵を高効率で捕集可能な空気除菌デバイス1を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊細菌の捕集、除去に有効な空気除菌デバイス、および空気除菌デバイスを用いた集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気除菌デバイスとしては、電極間に電圧を印加することによりコロナ放電を起こしてイオンを発生させ、このイオンを気流に乗って運ばれてきた浮遊細菌に照射して除去するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その空気除菌デバイスについて図4を参照しながら説明する。
【0004】
図4に示すように、空気除菌デバイス101は放電電極102、対向電極103、および電源装置104からなり、放電電極102はコロナ放電を起こすことが可能な所定の形状(例えば、針形状や線形状)を有している。
【0005】
放電電極102と対向電極103との間に電圧を印加し、放電電極102でコロナ放電を起こすことにより空気を電離させ、イオンを発生させる。このイオンを放電電極102と対向電極103との間に形成される電場によって加速してイオン流を発生させ、気流に乗って運ばれてきた浮遊細菌が電極間を通過する際にイオン流を照射することによって除去している。また、浮遊細菌の一部はクーロン力を受けて対向電極103に捕集されて除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−60994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の空気除菌デバイスにおいては、気流に乗って運ばれてきた浮遊細菌が放電電極と対向電極の間を通過する際に、コロナ放電によって発生したイオンを照射して除去するという構成であるため、流入する気流の速度が大きい場合にはイオンの照射が不十分となり、除菌能力が低下するという課題を有していた。
【0008】
また、浮遊細菌が空気中の微細粉塵に付着して浮遊している場合には、上記構成では微細粉塵を十分に捕集することができず、結果として除菌能力が低下するという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、浮遊細菌や微細粉塵を帯電させて捕集することにより、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく捕集、除菌することができる空気除菌デバイスを提供することを目的とする。また、この空気除菌デバイスを用いることによって、除菌機能を搭載した集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、放電電極と対向電極とを間隔を設けながら交互に積層して両電極間に電圧を印加し、少なくとも前記放電電極が半導電性を有しており、かつ前記放電電極の一部が、放電部として棘状のエッジを備えたことを特徴とする空気除菌デバイスであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【0011】
また本発明は、空気中の塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部によって帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備えた集塵装置において、前記集塵部に、本発明に記載の空気除菌デバイスを搭載したことを特徴とする空気除菌デバイスを用いた集塵装置とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放電電極と対向電極とを間隔を設けながら交互に積層して両電極間に電圧を印加し、少なくとも前記放電電極が半導電性を有しており、かつ前記放電電極の一部が、放電部として棘状のエッジを備えた構成としたことにより、放電部でコロナ放電を起こして浮遊細菌や微細粉塵を帯電させ、放電電極と対向電極との間に形成される電場によりそれらを捕集、除去することが可能となる。
【0013】
さらに放電電極が半導電性を有していることにより、帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌や微細粉塵の捕集性能の低下を招く火花放電を抑制しながら放電部でコロナ放電を起こすことができるため、高い捕集性能を得ることが可能となる。
【0014】
また本発明によれば、空気中の塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部によって帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備えた集塵装置において、前記集塵部に、本発明に記載の空気除菌デバイスを搭載したことを特徴とする空気除菌デバイスを用いた集塵装置としたことにより、空気中の粉塵を捕集するだけでなく、浮遊細菌を捕集、除去することが可能な集塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の空気除菌デバイスを示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態2の空気除菌デバイスを用いた集塵装置を示す構成図
【図3】同空気除菌デバイスを用いた集塵装置に備えた帯電部を示す斜視図
【図4】従来の空気除菌デバイスを示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、放電電極と対向電極とを間隔を設けながら交互に積層して両電極間に電圧を印加し、少なくとも前記放電電極が半導電性を有しており、かつ前記放電電極の一部が、放電部として棘状のエッジを備えたことを特徴とする空気除菌デバイスである。
【0017】
放電電極と対向電極との間に電圧が印加されると、これらの間に電場が形成されるとともに、放電部として設けられた棘状のエッジでは電界強度が高まってコロナ放電が起こる。
【0018】
これにより、放電部で浮遊細菌や微細粉塵を帯電させ、放電電極と対向電極との間に形成される電場によりそれらを捕集、除去することが可能となる。
【0019】
例えば放電電極にプラスまたはマイナスの3〜10kVの高電圧を、対向電極に0kVを印加し、放電電極と対向電極との間隔を1〜5mmとすることによって、放電電極と対向電極との間に電場を形成するとともに、放電部でコロナ放電を起こすことができる。浮遊細菌や微細粉塵は、放電部において放電電極に印加した電圧と同じ極性に帯電し、放電電極と対向電極との間に形成される電場からクーロン力を受けて対向電極上に捕集、除去される。
【0020】
さらに放電電極が半導電性を有していることにより、電荷の移動を制限する作用が得られるため、電荷が急激に空気中に飛び出すことにより発生する火花放電を抑制することができる。火花放電は放電部の不特定かつ狭い部分で、電極に与えられた電荷が空気というギャップを飛び越えて、対向する電極に急激に移動することで起こるため、空気を電離してイオンを作り出す作用が小さく、また領域が狭いことから浮遊細菌などを帯電させる作用が小さい。
【0021】
したがって火花放電が発生すると帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌などの捕集性能を低下させるが、放電電極が半導電性を有していることにより火花放電を抑制することができ、高い捕集性能を得ることが可能となる。
【0022】
本発明の請求項2に記載の発明は、棘状のエッジを空気の流れ方向に対向させ、かつ上流に備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気除菌デバイスである。
【0023】
これにより、流入してきた空気を遮るような形でコロナ放電を起こすことができ、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく帯電させることが可能となり、捕集効率を高めることができる。
【0024】
さらに棘状のエッジを空気の流れの上流に備えることにより、上流で帯電させた浮遊細菌や微細粉塵を、下流の放電電極と対向電極との間に形成される電場により、効率よく捕集、除去することが可能となる。
【0025】
本発明の請求項3に記載の発明は、棘状のエッジの先端部同士の間隔が、基点となる辺からの高さ以上の大きさであることを特徴とする請求項1または2に記載の空気除菌デバイスである。
【0026】
浮遊細菌や微細粉塵を帯電させるためのコロナ放電は、主として棘状のエッジの先端部で起こる。このとき、隣り合う先端部同士の間隔が近接していると、先端部同士が同じ電圧であるためお互いが放電を阻害しあって放電を起こしにくくなる。先端部同士の間隔を、基点となる辺からの高さ以上の大きさとすることで、お互いの放電を阻害することなく放電を起こすことが可能となり、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく帯電させることが可能となる。
【0027】
本発明の請求項4に記載の発明は、半導電性を有する放電電極の表面抵抗率が、10の7〜12乗Ω/□オーダーであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の空気除菌デバイスである。
【0028】
各電極は空気を介して互いに接触しない構造なので、基本的に電極間で電荷の移動は起こらない。したがって各電極が、電圧が印加されたときに電極表面に速やかに電荷を与えられる表面抵抗率、すなわち10の12乗Ω/□オーダー以下の表面抵抗率であれば、速やかに電極間に電場を発生させることができる。
【0029】
また、例えば電極表面に微細粉塵が付着、堆積して電極間距離が局所的に小さくなった場合、火花放電が発生するおそれがある。これは電極に与えられた電荷が空気というギャップを飛び越えて、対向する電極に急激に移動することによって引き起こされる。
【0030】
ここで、放電電極の表面抵抗率が10の7乗Ω/□オーダー以上であれば、電極表面の電荷の移動を制限することができ、火花放電を抑制することができる。これにより帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌や微細粉塵の捕集性能の低下を防ぐことができる。
【0031】
したがって、放電電極の表面抵抗率を、10の7〜12乗Ω/□オーダーとすることで、電場を発生させて浮遊細菌や微細粉塵を捕集すると同時に火花放電を防止することができ、高い捕集性能を得ることが可能となる。
【0032】
本発明の請求項5に記載の発明は、半導電性を有する電極が、半導電性材料を含有する樹脂板であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の空気除菌デバイスである。
【0033】
半導電性材料を練り込んだ樹脂で電極板を形成することで、高度な加工技術を要することなく、樹脂の押出成形等の製造方法により、適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)を有する電極を得ることが可能となる。
【0034】
本発明の請求項6に記載の発明は、樹脂板に含有させる半導電性材料が、前記樹脂板の材料となっているポリマーと同じ種類のポリマーのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイスである。
【0035】
例えばポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィンを樹脂板の材料(以下、ベース樹脂と記載)として用いる場合、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックとが交互に繰り返されるように配列したブロックコポリマーを半導電性材料として用いれば、ベース樹脂との相溶性が良く、相溶化剤を使わずにベース樹脂中に分散させることができ、全体が均一な半導電性を有する樹脂板を得ることが可能となる。
【0036】
他のベース樹脂に対して相溶性を確保する場合、例えばベース樹脂にポリアミドを用いるときは、上記ポリオレフィンのブロックをポリアミドのブロックに置き換えればよい。
【0037】
ここで半導電性を与えるのは、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等の親水基を持つ親水性ポリマーのブロックである。この親水基に結合した水分が乖離してOH−とH+とになり、電荷を持つこれらのイオンが親水性ポリマーのブロックを伝わることで、適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)となり得る。
【0038】
ベース樹脂、例えばポリオレフィンは半導電性を有していないが、ブロックコポリマー同士がベース樹脂中で接触しているため、あるブロックコポリマー中の親水性ポリマーブロックを伝わる電荷が、接触する別のブロックコポリマー中の親水性ポリマーブロックに伝わることで、樹脂全体が半導電性を有する。
【0039】
また、親水性ポリマーとしてポリエチレングリコールやポリアセタールといったポリエーテルを用いると、低湿度環境においても半導電性が得られる。ポリエーテルは主鎖に炭素と酸素のエーテル結合(ポリエチレングリコールであれば(−C−C−O−)n、ポリアセタールであれば(−C−O−)n)を規則的かつ連続的に有する。エーテル結合は炭素と酸素の電気陰性度の差により電気的な偏りがあり、酸素は正の電荷を、炭素は負の電荷を引き寄せる。このため極性分子である水を引き寄せるが、あくまで電気的引力によるものであるから、電界によって炭素鎖上を簡単に移動する。
【0040】
すなわちポリエーテルはエーテル結合が連続する主鎖が電荷の伝わる導電路となるため、電荷を容易に伝えることができる。したがって低湿度環境でも半導電性を得ることができる。また、金属イオン等その他の電荷も主鎖を伝わって移動させることが可能であり、湿度に依存せずに適切な表面抵抗率の半導電性を得ることができる。
【0041】
本発明の請求項7に記載の発明は、ブロックコポリマーがアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むことを特徴とする請求項6に記載の空気除菌デバイスである。
【0042】
上記の通りポリエーテルは金属イオンを容易に伝えることが可能である。リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属は、金属の中では質量が小さく、かつイオン化し易い。
【0043】
そのため樹脂中を移動させる電荷として有用であり、ベース樹脂中のブロックコポリマーの含有率を小さくしても容易に適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)となり得る。
【0044】
本発明の請求項8に記載の発明は、樹脂板に含有させる半導電性材料が、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体であることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイスである。
【0045】
酸化スズは、内部に酸素の格子欠陥を有する結晶構造をとることによって導電性を有する。また酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体は、酸化スズに対して酸化アンチモンがドーパントとして機能するため、酸化スズよりも高い導電性を有するようになる。これらの導電性は、酸化スズや、酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の内部構造に由来するため、湿度など周囲の環境の変化を受けにくいという特徴を有している。
【0046】
したがって、これらを半導電性材料として用いることによって、導電性が湿度などの環境の変化を受けにくいという特徴を有する半導電性の樹脂板を得ることが可能となる。
【0047】
本発明の請求項9に記載の発明は、樹脂板に含有させる半導電性材料が、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体をそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイスである。
【0048】
半導電性材料として粒子状の物質を樹脂板に含有させて半導電性を付与する場合、半導電性材料どうしが接触している表面を電荷が伝わることによって導電性が得られる。すなわち、使用する半導電性材料は必ずしもその内部に導電性を有している必要はなく、その表面が導電性を有していればよい。
【0049】
例えば安価な酸化チタンを担持体粒子として、その表面に酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を担持したものを半導電性材料として用いることにより、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の使用量を減少させることができるため、半導電性材料のコストを低減することが可能となる。
【0050】
担持体粒子を、担持させる粒子よりも大きい粒子径とすることにより、担持させる粒子を担持体粒子の表面を覆うように均一に担持させやすくなり、担持体粒子の表面の性質を、担持させる粒子と同等の性質とすることができる。例えば酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の粒子径が10〜50nmの場合、担持体粒子である酸化チタンの粒子径は100〜500nm程度が目安となる。
【0051】
なお、担持体粒子は必ずしも酸化チタンである必要はなく、表面に酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を担持可能であれば、どのような材料でも構わない。
【0052】
本発明の請求項10に記載の発明は、樹脂板に難燃剤を含有させたことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の空気除菌デバイスである。
【0053】
微細粉塵を捕集することにより、例えばカーボン粒子など導電性の高い粉塵が樹脂板に大量かつ高密度に付着した場合、樹脂板の表面抵抗率が低下して火花放電が発生する可能性がある。その際に流れる電流によって、カーボン粒子が加熱されて樹脂板を損傷する可能性があるが、樹脂板に難燃剤を含有させることによって、電極の発火燃焼を防ぐことが可能となる。
【0054】
難燃剤には大きく分類してハロゲン系、リン化合物系、無機系がある。ハロゲン系であればペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどが、リン化合物系であればトリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル等が、また無機系であれば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物等を使用することができる。
【0055】
本発明の請求項11に記載の発明は、放電電極に設けられた放電部を除いた他の部分の表面に、絶縁性の膜を備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の空気除菌デバイスである。
【0056】
半導電性を有する放電電極において、浮遊細菌や微細粉塵を帯電させるために必要なコロナ放電は放電部で起こし、それ以外の部分では放電を起こさないことを前提としているが、印加電圧が高い場合や、放電電極と対向電極との積層間隔が小さい場合においては、電場強度が高まって放電が起こる可能性がある。
【0057】
このような場合、放電部からの放電量が小さくなり、帯電性能が低下する可能性があるが、放電部を除いた他の部分の表面に絶縁性の膜を備えることによって、放電部以外からの放電を防止することができ、帯電性能を確保することが可能となる。
【0058】
本発明の請求項12に記載の発明は、放電電極に設けられた放電部のみが導電性を有する材料からなることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の空気除菌デバイスである。
【0059】
放電部のみを導電性を有する材料で構成することにより、放電電極に供給された電荷が放電部に集中するため、放電部からの放電が起こりやすくなる。したがって、流入してきた浮遊細菌や微細粉塵を帯電させる能力が向上し、その結果、捕集性能を向上させることができる。このとき、放電部で火花放電が起こることを防止するため、対向電極は半導電性を有していることが好ましく、その表面抵抗率は10の7〜12乗Ω/□オーダーであることが好ましい。
【0060】
本発明の請求項13に記載の発明は、放電部が金属からなることを特徴とする請求項12に記載の空気除菌デバイスである。
【0061】
放電部を金属で構成することにより、前述したように放電部からの放電が起こりやすくなるとともに、放電部の耐久性を確保することができる。したがって、より長期間に渡って使用することが可能となり、部材の交換等の回数を減らすことができる。
【0062】
本発明の請求項14に記載の発明は、空気中の塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部によって帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備えた集塵装置において、前記集塵部に請求項1から13のいずれかに記載の空気除菌デバイスを搭載したことを特徴とする空気除菌デバイスを用いた集塵装置である。
【0063】
これにより、空気中の粉塵を捕集するだけでなく、浮遊細菌を捕集、除去することが可能な集塵装置を提供することができる。また本集塵装置では、空気中の粉塵や浮遊細菌を帯電させる部位として、帯電部と集塵部に備えられた放電部との2箇所が設けられていることにより、帯電性能が向上し、粉塵や浮遊細菌を高効率で捕集、除去することが可能となる。
【0064】
本発明の請求項15に記載の発明は、帯電部と集塵部との電源を共用化させたことを特徴とする請求項14に記載の空気除菌デバイスを用いた集塵装置である。
【0065】
これにより、電源の数を減らすことができるため、装置をより小型化することができるとともに、コストを削減することができる。
【0066】
本発明の請求項16に記載の発明は、空気の流れ方向からみて、集塵部下流にオゾン等のガスを吸着するフィルターを備えたことを特徴とする請求項14または15に記載の空気除菌デバイスを用いた集塵装置である。
【0067】
コロナ放電によって発生したオゾンが集塵装置の下流に大量に放出された場合、その強い酸化作用のため集塵装置下流に設置されたものを劣化させたり、オゾン特有の臭いにより環境を悪化させたりする可能性がある。集塵部の下流にオゾン等のガスを吸着するフィルターを備えることにより、オゾンが集塵装置の下流に放出されることを防ぐことができ、環境の悪化などを防止することができる。フィルターの吸着材料としては、活性炭などを使用することができる。
【0068】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態は一例を示すものであり、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。
【0069】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1における空気除菌デバイスを示す模式的な斜視図である。まず、実施の形態1における空気除菌デバイスの構成を説明する。
【0070】
空気除菌デバイス1は、放電電極2と対向電極3とを間隔を設けながら交互に積層してなる。放電電極2は半導電性を有しており、その表面抵抗率は10の7〜12乗Ω/□オーダーである。また放電電極2は放電部4として棘状のエッジを備えている。この棘状のエッジは、空気の流れ方向に対向しており、かつ上流に位置している。
【0071】
放電電極2および放電部4の材質は、半導電性材料を含有する樹脂板、例えばポリエチレンに半導電性材料としてポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーを含有させた樹脂板を用いているが、これに限定されるものではなく、半導電性を有する材質であればよい。対向電極3の材質は、放電電極2と同じものを用いているが、これに限定されるものではなく、その表面に導電性または半導電性を有する材質であればよい。
【0072】
次に、実施の形態1における空気除菌デバイスの作用を説明する。
【0073】
電圧印加手段(図示せず)によって放電電極2と対向電極3との間にkVオーダーの高電圧が印加されると、これらの間に電場が形成されるとともに、放電部4として設けられた棘状のエッジでは電界強度が高まってコロナ放電が起こる。
【0074】
例えば放電電極2にプラスまたはマイナスの3〜10kVの高電圧を、対向電極3に0kVを印加し、放電電極2と対向電極3との間隔を1〜5mmとすることによって、放電電極2と対向電極3との間に電場を形成するとともに、放電部4でコロナ放電を起こすことができる。
【0075】
送風手段(図示せず)によって空気除菌デバイス1に空気が流入すると、放電部4を通過する際に空気中に含まれる浮遊細菌や微細粉塵が、放電電極2に印加した電圧と同じ極性に帯電される。帯電された浮遊細菌や微細粉塵は、空気の流れに乗って移動し、放電電極2と対向電極3との間に形成される電場によりクーロン力を受けて対向電極3上に捕集、除去される。
【0076】
さらに放電電極2が半導電性を有していることにより、電荷の移動を制限する作用が得られるため、電荷が急激に空気中に飛び出すことにより発生する火花放電が抑制される。
【0077】
最後に、実施の形態1における空気除菌デバイスの効果を説明する。
【0078】
上記構成とすることにより、放電部4で浮遊細菌や微細粉塵を帯電させ、放電電極2と対向電極3との間に形成される電場によりそれらを捕集、除去することが可能となる。
【0079】
さらに放電電極2が半導電性を有していることにより火花放電の発生を抑制できる。火花放電は放電部4の不特定かつ狭い部分で、電極に与えられた電荷が空気というギャップを飛び越えて、対向電極3に急激に移動することで起こるため、空気を電離してイオンを作り出す作用が小さく、また領域が狭いことから浮遊細菌などを帯電させる作用が小さい。
【0080】
したがって火花放電が発生すると帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌などの捕集性能を低下させるが、放電電極2が半導電性を有していることにより火花放電を抑制することができ、高い捕集性能を得ることが可能となる。
【0081】
また実施の形態1では、放電部4として設けられた棘状のエッジを空気の流れ方向に対向させ、かつ上流に備えた。これにより、流入してきた空気を遮るような形でコロナ放電を起こすことができ、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく帯電させることが可能となり、捕集効率を高めることができる。
【0082】
さらに棘状のエッジを空気の流れの上流に備えることにより、上流で帯電させた浮遊細菌や微細粉塵を、下流の放電電極2と対向電極3との間に形成される電場により、効率よく捕集、除去することが可能となる。
【0083】
また実施の形態1では、放電部4として設けられた棘状のエッジの先端部同士の間隔が、基点となる辺からの高さ以上の大きさとした。浮遊細菌や微細粉塵を帯電させるためのコロナ放電は、主として棘状のエッジの先端部で起こる。このとき、隣り合う先端部同士の間隔が近接していると、先端部同士が同じ電圧であるためお互いが放電を阻害しあって放電を起こしにくくなる。
【0084】
先端部同士の間隔を、基点となる辺からの高さ以上の大きさとすることで、お互いの放電を阻害することなく放電を起こすことが可能となり、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく帯電させることが可能となる。
【0085】
また実施の形態1では、半導電性を有する放電電極2の表面抵抗率を10の7〜12乗Ω/□オーダーとした。各電極は空気を介して互いに接触しない構造なので、基本的に電極間で電荷の移動は起こらない。したがって各電極が、電圧が印加されたときに電極表面に速やかに電荷を与えられる表面抵抗率、すなわち10の12乗Ω/□オーダー以下の表面抵抗率であれば、速やかに電極間に電場を発生させることができる。
【0086】
また、例えば電極表面に微細粉塵が付着、堆積して電極間距離が局所的に小さくなった場合、火花放電が発生するおそれがある。これは電極に与えられた電荷が空気というギャップを飛び越えて、対向電極3に急激に移動することによって引き起こされる。
【0087】
ここで、放電電極2の表面抵抗率が10の7乗Ω/□オーダー以上であれば、電極表面の電荷の移動を制限することができ、火花放電を抑制することができる。これにより帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌や微細粉塵の捕集性能の低下を防ぐことができる。
【0088】
したがって、放電電極2の表面抵抗率を、10の7〜12乗Ω/□オーダーとすることで、電場を発生させて浮遊細菌や微細粉塵を捕集すると同時に火花放電を防止することができ、高い捕集性能を得ることが可能となる。
【0089】
また実施の形態1では、放電電極2および対向電極3を、半導電性材料を含有する樹脂板とした。半導電性材料を練り込んだ樹脂で電極板を形成することで、高度な加工技術を要することなく、樹脂の押出成形等の製造方法により、適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)を有する電極を得ることが可能となる。
【0090】
また実施の形態1では、放電電極2および対向電極3を構成する樹脂板に含有させる半導電性材料を、前記樹脂板の材料となっているポリマー(以下ベース樹脂と記載)と同じ種類のポリマーのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーとした。例として、ポリエチレンに半導電性材料としてポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーを含有させた樹脂板が挙げられる。
【0091】
これにより、ベース樹脂との相溶性が良く、相溶化剤を使わずにベース樹脂中に分散させることができ、全体が均一な半導電性を有する樹脂板を得ることが可能となる。他のベース樹脂に対して相溶性を確保する場合、例えばベース樹脂にポリアミドを用いるときは、上記ポリオレフィンのブロックをポリアミドのブロックに置き換えればよい。
【0092】
ここで半導電性を与えるのは、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等の親水基を持つ親水性ポリマーのブロックである。この親水基に結合した水分が乖離してOH−とH+とになり、電荷を持つこれらのイオンが親水性ポリマーのブロックを伝わることで、適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)となり得る。
【0093】
ベース樹脂、例えばポリオレフィンは半導電性を有していないが、ブロックコポリマー同士がベース樹脂中で接触しているため、あるブロックコポリマー中の親水性ポリマーブロックを伝わる電荷が、接触する別のブロックコポリマー中の親水性ポリマーブロックに伝わることで、樹脂全体が半導電性を有する。
【0094】
また、親水性ポリマーとしてポリエチレングリコールやポリアセタールといったポリエーテルを用いると、低湿度環境においても半導電性が得られる。ポリエーテルは主鎖に炭素と酸素のエーテル結合(ポリエチレングリコールであれば(−C−C−O−)n、ポリアセタールであれば(−C−O−)n)を規則的かつ連続的に有する。エーテル結合は炭素と酸素の電気陰性度の差により電気的な偏りがあり、酸素は正の電荷を、炭素は負の電荷を引き寄せる。このため極性分子である水を引き寄せるが、あくまで電気的引力によるものであるから、電界によって炭素鎖上を簡単に移動する。
【0095】
すなわちポリエーテルはエーテル結合が連続する主鎖が電荷の伝わる導電路となるため、電荷を容易に伝えることができる。したがって低湿度環境でも半導電性を得ることができる。また、金属イオン等その他の電荷も主鎖を伝わって移動させることが可能であり、湿度に依存せずに適切な表面抵抗率の半導電性を得ることができる。
【0096】
また、上記のブロックコポリマーが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含んだものでもよい。上記の通りポリエーテルは金属イオンを容易に伝えることが可能である。リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属は、金属の中では質量が小さく、かつイオン化し易い。
【0097】
そのため樹脂中を移動させる電荷として有用であり、ベース樹脂中のブロックコポリマーの含有率を小さくしても容易に適切な表面抵抗率(例えば10の7〜12乗Ω/□オーダー)となり得る。
【0098】
なお実施の形態1では、放電電極2および対向電極3を構成する樹脂板に含有させる半導電性材料を、前記樹脂板の材料となっているポリマー(以下ベース樹脂と記載)と同じ種類のポリマーのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーとしたが、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体としてもよい。
【0099】
酸化スズは、内部に酸素の格子欠陥を有する結晶構造をとることによって導電性を有する。また酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体は、酸化スズに対して酸化アンチモンがドーパントとして機能するため、酸化スズよりも高い導電性を有するようになる。これらの導電性は、酸化スズや、酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の内部構造に由来するため、湿度など周囲の環境の変化を受けにくいという特徴を有している。
【0100】
したがって、これらを半導電性材料として用いることによって、導電性が湿度などの環境の変化を受けにくいという特徴を有する半導電性の樹脂板を得ることが可能となる。
【0101】
なお実施の形態1では、放電電極2および対向電極3を構成する樹脂板に含有させる半導電性材料を、前記樹脂板の材料となっているポリマー(以下ベース樹脂と記載)と同じ種類のポリマーのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーとしたが、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体をそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものとしてもよい。
【0102】
半導電性材料として粒子状の物質を樹脂板に含有させて半導電性を付与する場合、半導電性材料どうしが接触している表面を電荷が伝わることによって導電性が得られる。すなわち、使用する半導電性材料は必ずしもその内部に導電性を有している必要はなく、その表面が導電性を有していればよい。
【0103】
例えば安価な酸化チタンを担持体粒子として、その表面に酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を担持したものを半導電性材料として用いることにより、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の使用量を減少させることができるため、半導電性材料のコストを低減することが可能となる。
【0104】
担持体粒子を、担持させる粒子よりも大きい粒子径とすることにより、担持させる粒子を担持体粒子の表面を覆うように均一に担持させやすくなり、担持体粒子の表面の性質を、担持させる粒子と同等の性質とすることができる。例えば酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体の粒子径が10〜50nmの場合、担持体粒子である酸化チタンの粒子径は100〜500nm程度が目安となる。
【0105】
なお、担持体粒子は必ずしも酸化チタンである必要はなく、表面に酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体を担持可能であれば、どのような材料でも構わない。
【0106】
また、放電電極2および対向電極3を構成する樹脂板に難燃剤を含有させてもよい。微細粉塵を捕集することにより、例えばカーボン粒子など導電性の高い粉塵が樹脂板に大量かつ高密度に付着した場合、樹脂板の表面抵抗率が低下して火花放電が発生する可能性がある。その際に流れる電流によって、カーボン粒子が加熱されて樹脂板を損傷する可能性があるが、樹脂板に難燃剤を含有させることによって、電極の発火燃焼を防ぐことが可能となる。
【0107】
難燃剤には大きく分類してハロゲン系、リン化合物系、無機系がある。ハロゲン系であればペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどが、リン化合物系であればトリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル等が、また無機系であれば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物等を使用することができる。
【0108】
また、放電電極2に設けられた放電部4を除いた他の部分の表面に、絶縁性の膜を備えてもよい。半導電性を有する放電電極2において、浮遊細菌や微細粉塵を帯電させるために必要なコロナ放電は放電部4で起こし、それ以外の部分では放電を起こさないことを前提としているが、印加電圧が高い場合や、放電電極2と対向電極3との積層間隔が小さい場合においては、電場強度が高まって放電が起こる可能性がある。
【0109】
このような場合、放電部4からの放電量が小さくなり、帯電性能が低下する可能性があるが、放電部4を除いた他の部分の表面に絶縁性の膜を備えることによって、放電部4以外からの放電を防止することができ、帯電性能を確保することが可能となる。
【0110】
また、放電電極2に設けられた放電部4のみを導電性を有する材料で構成してもよい。これにより、放電電極2に供給された電荷が放電部4に集中するため、放電部4からの放電が起こりやすくなる。
【0111】
したがって、流入してきた浮遊細菌や微細粉塵を帯電させる能力が向上し、その結果、捕集性能を向上させることができる。このとき、放電部4で火花放電が起こることを防止するため、対向電極3は半導電性を有していることが好ましく、その表面抵抗率は10の7〜12乗Ω/□オーダーであることが好ましい。
【0112】
また、放電部4を金属で構成してもよい。これにより、前述したように放電部4からの放電が起こりやすくなるとともに、放電部4の耐久性を確保することができる。したがって、より長期間に渡って使用することが可能となり、部材の交換等の回数を減らすことができる。
【0113】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。実施の形態1と同一の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0114】
図2は本発明の実施の形態2における空気除菌デバイスを用いた集塵装置を示す構成図であり、図3は空気除菌デバイスを用いた集塵装置に備えた帯電部を示す模式的な斜視図である。
【0115】
まず、実施の形態2における空気除菌デバイスを用いた集塵装置の構成を説明する。
【0116】
空気除菌デバイスを用いた集塵装置5は、空気中の塵埃を帯電させる帯電部6と、この帯電部によって帯電された塵埃を集塵する集塵部7と、帯電部6および集塵部7に電圧を印加するための電源装置8とを備えた電気式の集塵装置である。
【0117】
帯電部6は、針状放電電極9と、帯電部対向電極10からなる。針状放電電極9の材質はステンレス等の金属を用いている。帯電部対向電極10の材質はステンレス等の金属を用いているが、これに限定されるものではなく、その表面に導電性または半導電性を有する材質であればよい。
【0118】
集塵部7は、本発明の実施の形態1に記載した空気除菌デバイス1からなる。電源装置8は、kVオーダーの直流高電圧を印加することができるものであればよい。
【0119】
次に、実施の形態2における空気除菌デバイスを用いた集塵装置の作用を説明する。
【0120】
電源装置8によって帯電部6にkVオーダーの高電圧が印加されると、帯電部6に備えられた針状放電電極9と帯電部対向電極10との間に電圧の差が生じ、針状放電電極9の先端付近では電界強度が高まってコロナ放電が起こる。例えば針状放電電極9にプラスまたはマイナスの3〜10kVの高電圧を、帯電部対向電極10に0kVを印加、例えば、接地することによって、針状放電電極9の先端付近でコロナ放電を起こすことができる。
【0121】
また同様にして集塵部7にkVオーダーの高電圧が印加されると、放電電極2と対向電極3との間に電場が形成されるとともに、放電部4として設けられた棘状のエッジでは電界強度が高まってコロナ放電が起こる。例えば放電電極2にプラスまたはマイナスの3〜10kVの高電圧を、対向電極3に0kVを印加し、例えば、対向電極3を接地し、放電電極2と対向電極3との間隔を1〜5mmとすることによって、放電電極2と対向電極3との間に電場を形成するとともに、放電部4でコロナ放電を起こすことができる。
【0122】
送風手段(図示せず)によって空気除菌デバイスを用いた集塵装置5に空気が流入すると、帯電部6や集塵部7に設けられた放電部4を通過する際に、空気中に含まれる浮遊細菌や粉塵が帯電される。帯電された浮遊細菌や粉塵は、空気の流れに乗って移動し、集塵部7において放電電極2と対向電極3との間に形成される電場によりクーロン力を受けて対向電極3上に捕集、除去される。
【0123】
最後に、実施の形態2における空気除菌デバイスを用いた集塵装置の効果を説明する。
【0124】
上記のような構成とすることにより、空気中の粉塵を捕集するだけでなく、浮遊細菌を捕集、除去することが可能な、空気除菌デバイスを用いた集塵装置5を提供することができる。
【0125】
また空気除菌デバイスを用いた集塵装置5では、空気中の粉塵や浮遊細菌を帯電させる部位として、帯電部6と集塵部7に備えられた放電部4との2箇所が設けられていることにより、帯電性能が向上し、粉塵や浮遊細菌を高効率で捕集、除去することが可能となる。
【0126】
なお実施の形態2では、帯電部対向電極10の材質として導電性を有するステンレス等の金属を用いているが、半導電性を有する材質、例えば絶縁性基板の表面に半導電性を有する面を備えたものを用いてもよい。
【0127】
これにより、電荷の移動を制限する作用が得られるため、電荷が急激に空気中に飛び出すことにより発生する火花放電を抑制することができる。これにより帯電性能の低下、すなわち浮遊細菌や粉塵の捕集性能の低下を防ぐことができる。
【0128】
なお実施の形態2では、帯電部6を針状放電電極9と、帯電部対向電極10とで構成したが、この構成に限定されるものではなく、コロナ放電を起こして浮遊細菌や粉塵を帯電させることが可能であれば、どのような構成でも構わない。例えば、針状放電電極9のかわりに、線状の放電電極を用いても同様の効果を得ることができる。
【0129】
また、帯電部6と集塵部7との電源を共用化させてもよい。これにより、電源の数を減らすことができるため、集塵装置をより小型化することができるとともに、コストを削減することができる。
【0130】
また、空気の流れ方向からみて、集塵部7の下流にオゾン等のガスを吸着するフィルターを備えてもよい。コロナ放電によって発生したオゾンが集塵装置の下流に大量に放出された場合、その強い酸化作用のため集塵装置下流に設置されたものを劣化させたり、オゾン特有の臭いにより環境を悪化させたりする可能性がある。
【0131】
集塵部の下流にオゾン等のガスを吸着するフィルターを備えることにより、オゾンが集塵装置の下流に放出されることを防ぐことができ、環境の悪化などを防止することができる。フィルターの吸着材料としては、活性炭などを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明にかかる空気除菌デバイス及びこれを用いた集塵装置は、浮遊細菌や微細粉塵を効率よく捕集、除菌することができる空気除菌デバイスを提供すること、及び除菌機能を搭載した集塵装置を提供することを可能とするものであるので、空気を浄化するために使用される家庭用空気清浄機や、外気を清浄にして屋内に取り込む給気型換気扇などに搭載する除菌デバイス、及び集塵デバイス等として有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 空気除菌デバイス
2 放電電極
3 対向電極
4 放電部
5 空気除菌デバイスを用いた集塵装置
6 帯電部
7 集塵部
8 電源装置
9 針状放電電極
10 帯電部対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と対向電極とを間隔を設けながら交互に積層して両電極間に電圧を印加し、少なくとも前記放電電極が半導電性を有しており、かつ前記放電電極の一部が、放電部として棘状のエッジを備えたことを特徴とする空気除菌デバイス。
【請求項2】
棘状のエッジを空気の流れ方向に対向させ、かつ上流に備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気除菌デバイス。
【請求項3】
棘状のエッジの先端部同士の間隔が、基点となる辺からの高さ以上の大きさであることを特徴とする請求項1または2に記載の空気除菌デバイス。
【請求項4】
半導電性を有する放電電極の表面抵抗率が、10の7〜12乗Ω/□オーダーであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の空気除菌デバイス。
【請求項5】
半導電性を有する電極が、半導電性材料を含有する樹脂板であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の空気除菌デバイス。
【請求項6】
樹脂板に含有させる半導電性材料が、前記樹脂板の材料となっているポリマーと同じ種類のポリマーのブロックと、親水性ポリマーのブロックとが交互に配列されたブロックコポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイス。
【請求項7】
ブロックコポリマーがアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むことを特徴とする請求項6に記載の空気除菌デバイス。
【請求項8】
樹脂板に含有させる半導電性材料が、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体であることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイス。
【請求項9】
樹脂板に含有させる半導電性材料が、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンとの固溶体をそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とする請求項5に記載の空気除菌デバイス。
【請求項10】
樹脂板に難燃剤を含有させたことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の空気除菌デバイス。
【請求項11】
放電電極に設けられた放電部を除いた他の部分の表面に、絶縁性の膜を備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の空気除菌デバイス。
【請求項12】
放電電極に設けられた放電部のみが導電性を有する材料からなることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の空気除菌デバイス。
【請求項13】
放電部が金属からなることを特徴とする請求項12に記載の空気除菌デバイス。
【請求項14】
空気中の塵埃を帯電させる帯電部と、この帯電部によって帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備えた集塵装置において、前記集塵部に請求項1から13のいずれかに記載の空気除菌デバイスを搭載したことを特徴とする空気除菌デバイスを用いた集塵装置。
【請求項15】
帯電部と集塵部との電源を共用化させたことを特徴とする請求項14に記載の空気除菌デバイスを用いた集塵装置。
【請求項16】
空気の流れ方向からみて、集塵部下流にオゾン等のガスを吸着するフィルターを備えたことを特徴とする請求項14または15に記載の空気除菌デバイスを用いた集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−16055(P2011−16055A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161341(P2009−161341)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】