説明

空気除菌装置

【課題】利用者の煩わしさを感じさせることがなく、かつ、電気分解が可能な塩素濃度を確保可能な空気除菌装置を提供する。
【解決手段】空気除菌装置1は、電解ユニット46によって生成された電解水を気液接触部材53に供給し、この気液接触部材53を湿潤させて水受け皿42に環流すると共に、気液接触部材53には送風ファン31により空気を送り、気液接触部材53で電解水と空気とを接触させて空気を除菌する空気除菌装置1において、水受け皿42に食塩水を供給する食塩水供給手段90と、水受け皿42に貯留される水を排水し、水受け皿42に新たな水を供給する水交換運転モードと、水交換運転モードの選択時に食塩水供給手段90を動作し、水受け皿42に食塩水を供給する制御手段101とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物(以下、単に「ウィルス等」という)の除去が可能な空気除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成させ、この電解水を用いて空気中に浮遊するウィルス等の除去を図った空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この空気除菌装置は、不織布等からなる加湿エレメントに電解水を供給して、加湿エレメント上で空気中のウィルス等を電解水に接触し、ウィルス等を不活化することにより、空気を除菌しようとするものである。
【特許文献1】特開2002−181358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した電気分解は、水道水中に含まれる塩素イオンを利用して行う。しかしながら、空気除菌装置の使用地域によっては水道水中の塩素濃度が低く、電気分解が困難な場合がある。従来では、より大きな電流を電解ユニットに流して電気分解を行う方法があるが、電極に生じる負荷が大きく、メンテナンスで電極を交換する頻度が多くなるという問題があった。また、供給する水道水に塩を供給して電気分解する方法もあるが、利用者が運転の度に塩を供給するのも煩わしい。
【0004】
そこで、本発明の目的は、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、かつ、電気分解が可能な塩素濃度を確保可能な空気除菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の空気除菌装置は、電解ユニットによって生成された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材を湿潤させて水受け皿に環流すると共に、前記気液接触部材には送風ファンにより空気を送り、当該気液接触部材で前記電解水と前記空気とを接触させて当該空気を除菌する空気除菌装置において、前記水受け皿に食塩水を供給する食塩水供給手段と、前記水受け皿に貯留される水を排水し、前記水受け皿に新たな水を供給する水交換運転モードと、前記水交換運転モードの選択時に前記食塩水供給手段を動作し、前記水受け皿に食塩水を供給する制御手段とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、排水後に水受け皿に供給された新たな水に食塩水が自動的に供給される。
【0006】
また本発明は、上記の空気除菌装置において、前記制御手段が、前記水受け皿を還流する水の導電率を検出する導電率検出手段を備え、当該水の導電率に応じて前記水受け皿に食塩水を供給することを特徴とする。
この構成によれば、水受け皿を還流する水の導電率に応じて、水受け皿に食塩水が自動的に供給される。
【0007】
また本発明は、上記の空気除菌装置において、前記水受け皿に供給する新たな水が塩素濃度の低い水道水であり、前記水交換運転時には、前記水受け皿を還流する水の導電率が所定値以下になるまで、前記水受け皿に貯留される水の排水と、新たな水の供給とを繰り返し、前記水の導電率が所定値以下に至った場合に、前記食塩水供給手段を動作し、前記水受け皿に食塩水を供給することを特徴とする。
この構成によれば、塩素濃度の低い水道水によって水受け皿に貯留される水が交換された後に、水受け皿42に食塩水が自動的に供給される。
【0008】
また本発明は、上記の空気除菌装置において、空気を除菌する空気除菌運転モードを有し、前記制御手段は、所定時間毎に、前記空気除菌運転モードを停止し、前記水交換運転モードを選択した後、前記空気除菌運転モードを再開することを特徴とする。
この構成によれば、循環使用された電解水が所定時間毎に新たな水に交換され、電解水の濃縮や雑菌の繁殖が防止される。さらに、水受け皿に貯留される水が交換される毎に、水受け皿に食塩水が自動的に供給される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、水交換運転モードの選択時に食塩水供給手段を動作し、水受け皿に食塩水を供給する構成としたことより、排水後に水受け皿に供給された新たな水に食塩水が自動的に供給されることになり、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る空気除菌装置1の斜視図であり、図2は、この空気除菌装置1の背面側斜視図である。この空気除菌装置1は、水を電気分解して所定の活性酸素種を含む電解水を生成し、空気除菌装置1内に吸い込んだ室内の空気をこの電解水を用いて除菌して、除菌後の清浄な空気を室内に送風する装置である。
空気除菌装置1は、図1に示すように、縦長に形成された箱形の筐体11を有し、例えば床置き設置される。筐体11には、この筐体11の両側面の下部に吸込グリル12が形成されるとともに、この筐体11の前面の下端部に吸込口15が形成されている。
また、筐体11の上面には吹出口13が形成され、この吹出口13には空気を吹き出す方向を変化させるためのオートルーバー20が設けられている。このオートルーバー20は、運転停止時に上記吹出口13を閉塞するように構成されている。
【0011】
筐体11の上面には、吹出口13の前面側に操作蓋16が配置されており、この操作蓋16を開くと、空気除菌装置1の各種操作を行う操作パネル106(図8参照)が露出する。また、筐体11の上面の一側方(正面視において右側方)には、後述する食塩水タンク90を出し入れするための開閉蓋29が開閉自在に設けられている。さらに、筐体11の両側面の上部にはそれぞれ把持部17が形成されている。これら把持部17は筐体11を手持ちする際に手を掛けるための凹部であり、運搬時に空気除菌装置1を一人で持ち上げて移動できるようになっている。
また、筐体11の前面には、上下方向に並べられた上側カバー部材18及び下側カバー部材19がそれぞれ着脱自在に配置されており、これら上側カバー部材18及び下側カバー部材19を取り外すと空気除菌装置1の内部構成が露出する。下側カバー部材19は、この下側カバー部材19の下端部に、筐体11の背面側に向けて湾曲した円弧部19Aを備え、この円弧部19Aに上記吸込口15が形成されている。
また、図2に示すように、筐体11の背面上部には空気除菌装置1に給水するための接続口14が形成され、この接続口14に外部の給水源(例えば上水道)に連なる給水配管27が接続される。空気除菌装置1は、例えば、水道水中の塩素濃度の低い地域に配置されており、この給水配管27からは塩素濃度の低い水道水が供給されるようになっている。また、筐体11の背面下部には、空気除菌装置1内の水を外部に排出するための排水配管28が設けられている。
【0012】
次に、図3及び図4を参照して空気除菌装置1の内部構成を説明する。
図3は、空気除菌装置1の内部の主要構成を示す斜視図であり、図4は側断面視図である。筐体11には、図3及び図4に示すように、この筐体11の内部を上下に仕切る支持板21が設けられ、上側の室22と下側の室23とに区分けされている。
下側の室23は、仕切板24によって左右に区分けされ、一方の室23Aに送風ファン31(図4)及びこの送風ファン31を駆動するファンモータ107(図8参照)が収容されるとともに、他方の室23Bに上記排水配管28を有する排水部57が収容されている。一方の室23Aの前面側には、下側カバー部材19(図1)と対向する位置にプレフィルタ34が配置されている。このプレフィルタ34は、一方の室23Aの開口部に相当する大きさに形成され、この開口部に嵌めこまれて配置されている。下側カバー部材19を外すと、プレフィルタ34が露出し、このプレフィルタ34を簡単に着脱することができる。
プレフィルタ34は、吸込グリル12及び吸込口15を通じて吸い込まれた空気中の塵埃など粒径の大きなものを捕集する粗塵フィルタ25と、この粗塵フィルタ25を通過する、例えば粒径10(μm)以上の物(例えば花粉)を捕集する中性能フィルタ26とを備えて構成される。このプレフィルタ34によって、吸込グリル12及び吸込口15から吸い込まれた空気中に浮遊する花粉や塵埃などが除去される。
【0013】
上側の室22では、一方の室23Aの上方における支持板21の上に電装ボックス39が配置され、この電装ボックス39の上方に気液接触部材53が配置されている。また、これら電装ボックス39と気液接触部材53との間に、この気液接触部材53から流下した電解水を受ける水受け皿42が配置されている。電装ボックス39には、空気除菌装置1を制御する制御部100(図8参照)を構成する各種デバイスが実装された制御基板や、ファンモータ107に電源電圧を供給する電源回路等の各種電装部品が収容されている。
【0014】
また、上側の室22には、図4に示すように、気液接触部材53によって区分けされた背面側空間1Aと前面側空間1Bとが形成されている。背面側空間1Aは、支持板21に形成された開口21Aを介して送風ファン31の送風口31Aに連通している。また、背面側空間1Aの上方には、筐体11の背面側から前面側に向かって下方に傾斜する導風板32A、32Bが高さ方向の位置を違えて2枚設けられており、この2枚の導風板32A、32Bはフレーム部材32Cにより支持されている。このため、送風ファン31の送風口31Aから吹き出された空気は、この2枚の導風板32A、32Bに当たり、図4中矢印で示すような経路を通って気液接触部材53の背面に吹き付けられる。
気液接触部材53は、この気液接触部材53に吹き付けられた空気に電解水を接触させるための部材である。この気液接触部材53において筐体11内に吸い込まれた空気が所定の活性酸素種を含む電解水に接触することで、空気中に含まれるウィルス等が不活化されることなどにより、空気の除菌が行われる。
【0015】
気液接触部材53の前面側には、ハウジング33が配置され、このハウジング33と気液接触部材53とで前面側空間1Bが形成される。このハウジング33は、前面側空間1B内の空気を吹出口13に導くとともに、気液接触部材53から吹き出された水(いわゆる飛び水)を受ける機能を有する。具体的には、ハウジング33は、このハウジング33の内側の底面33Aが気液接触部材53に向けて下り勾配に形成されており、この底面33Aの先端部が水受け皿42の上方に延在する。これにより、前面側空間1Bに吹き出された水は、上記底面33Aを通じて水受け皿42に戻される。
ハウジング33と吹出口13との間には、この吹出口13から筐体11内部への異物の進入を防止するため吹出口フィルタ36が配置されている。この吹出口フィルタ36は、気液接触部材53を通過した空気の通風抵抗を著しく増加させないよう、適度に目の粗いものであることが好ましい。
【0016】
気液接触部材53は、ハニカム構造を持ったフィルタ部材であり、気体に接触するエレメント部をフレームにより支持する構造を有する。エレメント部は、図示を省略するが、波板状の波板部材と平板状の平板部材とが積層されて構成され、これら波板部材と平板部材との間に略三角状の多数の開口が形成されている。従って、エレメント部に空気を通過させる際の気体接触面積が広く確保され、電解水の滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。
エレメント部には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)又はセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂を用いるものとする。また、エレメント部には親水性処理が施され、電解水に対する親和性が高められており、これによって、気液接触部材53の電解水の保水性(湿潤性)が保たれ、後述する活性酸素種(活性酸素物質)と室内空気との接触が長時間持続される。
【0017】
また、気液接触部材53の上部には、この気液接触部材53上に均一に電解水を分散させるための散水ボックス51が組み付けられている。この散水ボックス51は、電解水を一時的に貯留するトレー部材を備え、このトレー部材の側面に複数の散水孔(図示略)が開口し、この散水孔から気液接触部材53に対して電解水を滴下するようになっている。
また、気液接触部材53の上面には、散水ボックス51から滴下される電解水をエレメント部に効率よく分散させるため、分流シート(図示略)が配設されている。この分流シートは、液体の浸透性を有する繊維材料からなるシート(織物、不織布等)であり、気液接触部材53の厚み方向断面に沿って一または複数設けられる。
【0018】
水受け皿42は、図3に示すように、気液接触部材53の下方に位置する水受け部42Aと、上記他方の室23Bの上方に延在する貯留部42Bとを備え、一体に形成されている。この貯留部42Bには水受け部42Aから流入した水が貯留される。また、この貯留部42Bには、水受け部42Aよりも深底の深底部42B1と、この深底部42B1よりも浅底の浅底部42B2とが形成されている。
深底部42B1には水位を検出する第1フロートスイッチ43A及び第2フロートスイッチ43Bが配設されている。第1フロートスイッチ43Aは、貯留部42Bの水位が所定の下限水位を下回った場合に動作するスイッチであり、第2フロートスイッチ43Bは、貯留部42Bの水位が所定の上限水位を上回った場合に動作するスイッチである。
【0019】
また、深底部42B1には循環ポンプ44が設けられている。この循環ポンプ44は制御部100の制御に従って動作し、この循環ポンプ44の吐出口には、深底部42B1(貯留部42B)に貯留された水を汲み上げ、散水ボックス51を介して気液接触部材53に供給するための供給管71が接続されている。この供給管71には循環ポンプ44と散水ボックス51との間で分岐する分岐管72を介して電解槽(電解ユニット)46が接続されている。
この電解槽46は、後述するように複数の電極を内蔵し、これら電極間に、制御部100から供給される電圧を印加することにより、水を電解して電解水を生成する。電解槽46の上面には、この電解槽46で生成した電解水を排出する排出口46Aが形成され、この排出口46Aには電解水を貯留部42Bに返送する返送管73が接続されている。
【0020】
また、貯留部42Bの入口部分、すなわち、この貯留部42Bと水受け部42Aとの連接部には、当該貯留部42Bに流れ込む水に混入する固形物を捕集するためのフィルタ部材74が配置されている。このフィルタ部材74の上方には、返送管73の出口73Aが設けられており、電解槽46から水とともに排出された固形物(例えば、電極表面に形成されたスケール成分)を捕集可能となっている。このフィルタ部材74は、上方から視認可能な状態で貯留部42Bの入口部分に配置されているため、フィルタ部材74の交換時期を目視で簡単に判断することができる。さらに、フィルタ部材74を交換する場合には、このフィルタ部材74を手指で取り外して交換すればよいため、工具等を使用することなく、メンテナンスを簡単に行うことができる。
【0021】
本実施形態では、循環ポンプ44で汲み上げた水の一部が、散水ボックス51を介して気液接触部材53に供給され、残りの水が電解槽46に供給される。この電解槽46で生成された電解水はフィルタ部材74を介して貯留部42Bに供給され、この貯留部42Bの深底部42B1に貯留された電解水は循環ポンプ44により再び気液接触部材53および電解槽46に分散供給される。このように、電解槽46においては電解水を用いて繰り返し電気分解を行わせることにより、活性酸素種の濃度の高い電解水を生成することができるようになっている。また、気液接触部材53から排出される電解水を循環利用することにより、水資源を有効活用することができる。
【0022】
また、深底部42B1の上方には、図3に示すように、上記給水配管27からの水道水を水受け皿42に供給する給水部60が設けられている。この給水部60は、筐体11の背面に形成された接続口14を介して給水配管27に接続されている。給水部60は、貯留部42Bの水位に応じて開閉される給水弁61と、一端が接続口14に接続され、他端が給水弁61の上流側端部61Aに接続された第1給水管62と、給水弁61の下流側端部61Bに接続された第2給水管63と、この第2給水管63の先端において下向きに開口する給水口64とを備えている。
【0023】
給水弁61は、上記第1フロートスイッチ43A、第2フロートスイッチ43Bによって検出された水位に応じて、制御部100の制御により開閉される電磁弁である。この給水弁61は、上流側端部61Aが下方、下流側端部61Bが上方に位置するように配置されている。すなわち、給水部60に供給される水が給水弁61内を下から上に流れるように配置されている。これによれば、給水弁61が閉弁されている場合に、この給水弁61の上流側端部61Aと第1給水管62との接続部から水漏れが生じたとしても、漏れた水は給水弁61にかかることがなく、これに伴う漏電等のトラブルの発生を防止できる。
また、第2給水管63の給水口64は、水受け皿42に貯留された水の水面から、この水面に触れることない十分な距離(本実施形態では、水受け皿42の上端面から35mm)を離して配置されている。これによれば、給水部60及び給水配管27の内部が負圧となった場合であっても、水受け皿42に貯留された水が、給水口64を通じて給水部60及び給水配管27内に逆流することが防止される。
さらに、この給水口64は、上記したフィルタ部材74の上方に配置されている。これによれば、給水口64を通じて供給された水は、フィルタ部材74上に滴下されるため、この滴下音を低減することができ、給水時の静音化を図ることができる。
【0024】
また、本実施形態では水受け皿42に貯留された水を適宜排出可能に構成されている。具体的には、貯留部42Bの下方には、水受け皿42に貯留された水を上記排水部57に排出するための排水弁ユニット81が配置されている。この排水弁ユニット81は、貯留部42Bの深底部42B1の底部に連結された第1排水管82と、この第1排水管82に接続された排水弁83と、この排水弁83に接続された第2排水管84とを備え、この第2排水管84は上記排水部57に接続されている。排水弁83は、制御部100の制御により開閉される。排水弁83が開かれると、深底部42B1に溜まった水が排水部57を介して外部に排出される。
また、貯留部42Bの浅底部42B2の底部には、オーバーフロー管85が接続され、このオーバーフロー管85は、排水弁83と排水部57との間で上記第2排水管84に接続されている。このため、深底部42B1内の水位が上昇し、この水が浅底部42B2に達したとしても、この水はオーバーフロー管85、第2排水管84及び排水部57を通じて外部に排出される。
また、第2排水管84には、この第2排水管84よりも細径のエア抜き管86が接続されている。このエア抜き管86は、排水時に排水弁ユニット81内の空気を外部に排出するためのものであり、このエア抜き管86の先端が水受け皿42よりも十分高い位置となるように配置されている。
【0025】
排水部57は、第2排水管84に接続されたトラップ配管58と、このトラップ配管58に接続された排水配管28とを備える。トラップ配管58は、このトラップ配管58内に水が溜まるようになっている。このため、トラップ配管58内に溜まった水によって、排水配管28と排水弁ユニット81とが隔離されることにより、排水の臭いが空気除菌装置1内に漂うことが防止される。
【0026】
本実施の形態の空気除菌装置1は、図3に示すように、食塩水を水受け皿42に供給する着脱自在な食塩水タンク(食塩水供給手段)90を備えている。
上側の室22は、水受け皿42及び板状部材55によってさらに上下に仕切られ、水受け皿42の上方であって湿度の比較的高い高湿空間22Aと、水受け皿42の下方であって湿度の比較的低い低湿空間22Bとを有している。低湿空間22Bには、上述した電装ボックス39が配置されている。高湿空間22Aには、高湿空間22Aを左右に仕切る隔壁30Aが設けられ、高湿空間22Aは、気液接触部材53を収容する除菌空間22A1と、循環ポンプ44を収容する水回り空間22A2とに仕切られている。水回り空間22A2は、これらの水受け皿42及び隔壁30Aと、水回り空間22A2の側面を覆う水回りカバー30B〜30Dとによって隔離されおり、空気が送風される除菌空間22A1と比較して湿度が高くなっている。
食塩水を貯留する食塩水タンク90は、高湿な水回り空間22A2に配置される。これにより、食塩水タンク90内の水分の蒸発を遅らせ、タンク内の食塩水を所定の塩分濃度で収容しておくことができる。
【0027】
図5は、食塩水タンク90を示す斜視図である。図6は、食塩水タンク90の周辺部を示す空気除菌装置1の縦断面図である。
食塩水タンク90は、食塩水による劣化が少ない素材、例えば、ポリプロピレン樹脂等を用いて形成されている。この食塩水タンク90は、空気除菌装置1のメンテナンス期間(例えば、1年)に対して、十分長い期間供給可能な量の食塩水を貯留できる大きさに形成される。本実施の形態の食塩水タンク90は、その容積を1リットルとすることで、食塩水タンク90のメンテナンス期間を2年としている。
【0028】
食塩水タンク90に貯留される食塩水の塩分濃度(重量パーセント)は、菌の繁殖が抑制される20%以上であって、食塩が析出しはじめる26%(飽和濃度)以下が望ましい。本実施の形態の食塩水タンク90には、純度99%以上の塩化ナトリウムを有する食塩を用いて、塩分濃度が20%に調整された食塩水が貯留される。
【0029】
食塩水タンク90の上面には、図5に示すように、食塩水を食塩水タンク90に給水するための給水口90Aが設けられている。この給水口90Aには、食塩水タンク90内の内圧を調整する弁装置90Bが取り付けられる。この弁装置90Bは、食塩水タンク90内の圧力を一定の状態に保持することができ、食塩水を所定の塩分濃度で収容しておくことができる。
また、食塩水タンク90の上面には、吸込口90Cが設けられ、この吸込口90Cから食塩水タンク90内に吸い込みノズル90Dが延びている。吸込口90Cには、ワンタッチ継ぎ手90Eが取り付けられている。
【0030】
食塩水タンク90は、水受け皿42(図6参照)の上方に配置される保持台91上に載置される。この保持台91は、空気除菌装置1の前面に配置される水回りカバー30Bに固定されている。したがって、食塩水タンク90は、空気除菌装置1の前面側に配置されるので、食塩水タンク90を開閉蓋29(図1参照)から出し入れしやすくなる。
保持台91は、水回りカバー30Bに水平に固定される矩形状の底面91Aと、底面91Aから立ち上がり、水回りカバー30Bに垂直に固定される側面91B、91Cと、水回りカバー30Bに対して平行に底面91Aから立ち上がる側面91Dとを備えている。食塩水タンク90は、底面91A上に配置されると、側面91B〜91Dに囲われることとなるので、運搬時に空気除菌装置1が多少揺れても、保持台91から脱落しないようになっている。
食塩水タンク90は、保持台91に対してボルト締めなどによって固定されることなく、単に底面91Aに置かれて、ワンタッチ継ぎ手90Eに、ポリウレタン製のチューブ92が接続される。食塩水タンク90を取り出す場合には、このチューブ92をワンタッチ継ぎ手90Eから手指で容易に取り外すことができるため、工具等を使用することなく、メンテナンスを簡単に行うことができる。
【0031】
チューブ92は、チューブ93に連結され、このチューブ93は、保持台91の底面91Aに取り付けられた供給ノズル94に接続されている。このように、食塩水タンク90を載置する保持台91に供給ノズル94を支持させたことにより、供給ノズル94を支持する部材を別途に設ける必要がなくなり、コストアップを抑えることができる。
供給ノズル94は、逆流を防止する逆止弁94Aを備えている。また、この供給ノズル94は、図6に示すように、水受け皿42に貯留された水の水面から、この水面に触れることのない十分な距離(本実施形態では、水受け皿42の底面からの距離Hが62mm)を離して配置されている。これによれば、チューブ92、93及び食塩水タンク90の内部が負圧となった場合であっても、水受け皿42に貯留された電解水が、供給ノズル94を通じてチューブ92、93及び食塩水タンク90内に逆流することが確実に防止される。このため、逆止弁94Aの内部に、電解水に対して劣化しにくい高価な材料を使用する必要がなくなり、逆止弁94Aのコストアップを抑えることができる。
【0032】
この供給ノズル94は、高湿な水回り空間22A2内であって、水受け皿42に貯留された電解水の上方に配置されているので、常に湿度の高い状態に置かれることになり、供給ノズル94に食塩が析出することが防止されるようになっている。
さらに、供給ノズル94は、水受け皿42の浅底部42B2よりも深底の深底部42B1(貯留部42B)の上方に配置されている。このため、水受け皿42の貯留部42Bの水位が所定の下限水位になっても、食塩水が貯留部42Bの電解水に直接供給されることになり、水受け皿42上で食塩が析出することが防止される。
【0033】
食塩水タンク90に貯留された食塩水は、制御部100の制御に従って動作するポンプ95によって汲み上げられる。このポンプ95の吸込口95Aには、食塩水タンク90に連結するチューブ92が接続される。一方、ポンプ95の吐出口95Bには、供給ノズル94に連結するチューブ93が接続される。これらのチューブ92、93は、水回り空間22A2から水回りカバー30Bを貫通して、水回り空間22A2に隣接する低湿空間22Bへ延びており、この低湿空間22Bに、ポンプ95が配置されている。このように、ポンプ95は、比較的湿度の低い低湿空間22Bに配置されるので、ポンプ95には、防湿処理等が施されていないポンプを用いることができる。
【0034】
図7は、電解水の供給の様子を説明する図であり、図7(A)は、空気除菌機構の構成を示す模式図であり、図7(B)は電解槽46の構成を詳細に示す図である。
この図7を参照して、気液接触部材53に対する電解水の供給について説明する。
空気除菌装置1の運転操作がなされると、貯留部42Bの水位が検出され、この水位が所定水位に達していない場合には、給水弁61が開放して水受け皿42に水道水が供給され、この水受け皿42の貯留部42Bの水位が所定水位に達する。
貯留部42B内の水は循環ポンプ44によって汲み上げられて、その一部が電解槽46に供給される。この電解槽46は、図7(B)に示すように、一方が正、他方が負となる対の電極47、48を備え、これら電極47、48間に電圧を印加することにより、電解槽46に流入した水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。
【0035】
電極47、48は、例えばベースがチタン(Ti)で皮膜層がイリジウム(Ir)、白金(Pt)から構成された電極板である。
電極47をアノード電極とし、電極48をカソード電極として、外部電源から電極47及び電極48の間に電圧を印加して通電すると、カソード電極としての電極48では、水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)とが下記式(1)に示すように反応する。
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-) ・・・(1)
【0036】
一方、アノード電極(陽極)としての電極47では、下記式(2)に示すように水が電気分解される。
2H2O→4H++O2+4e- ・・・(2)
とともに、電極47においては、水に含まれる塩素イオン(塩化物イオン:Cl-)が下記式(3)に示すように反応し、塩素(Cl2)が発生する。
2Cl-→Cl2+2e- ・・・(3)
さらに、この塩素は下記式(4)に示すように水と反応し、次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)が発生する。
Cl2+H2O→HClO+HCl ・・・(4)
【0037】
電極47で発生した次亜塩素酸は広義の活性酸素種に含まれるもので、強力な酸化作用や漂白作用を有する。次亜塩素酸が溶解した水溶液、すなわち空気除菌装置1により生成される電解水は、ウィルス等の不活化、殺菌、有機化合物の分解等、種々の空気清浄効果を発揮する。
【0038】
そして、電極47、48により殺菌力の大きい次亜塩素酸を生成させた場合、この次亜塩素酸を含む電解水が散水ボックス51から気液接触部材53に滴下されると、送風ファン31により吹き出された空気が気液接触部材53において次亜塩素酸と接触する。これにより、空気中に浮遊するウィルス等が不活化されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質が次亜塩素酸と反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。従って、空気の除菌及び脱臭がなされ、清浄化された空気が気液接触部材53から排出される。
【0039】
活性酸素種によるウィルス等の不活化の作用機序として、インフルエンザウィルスの例を挙げる。上述した活性酸素種は、インフルエンザの感染に必須とされるインフルエンザウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する作用を有する。この表面蛋白が破壊された場合、インフルエンザウィルスと、インフルエンザウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、感染が阻止される。このため、空気中に浮遊するインフルエンザウィルスは、気液接触部材53において活性酸素種を含む電解水に接触することにより、いわば感染力を失うこととなり、感染が阻止される。
【0040】
従って、この空気除菌装置1が、例えば幼稚園や小・中・高等学校、介護保険施設、病院等のいわゆる大空間に設置された場合であっても、電解水により清浄化(除菌、脱臭等)された空気を大空間内で広く行き渡らせることが可能になり、大空間での空気除菌及び脱臭を効率よく行うことができる。
【0041】
また、電解水中の活性酸素種の濃度は、除菌するウィルス等を不活化させる濃度となるように調整される。活性酸素種の濃度の調整は、電極47及び電極48の間に印加する電圧を調整して、電極47及び電極48の間に流す電流値、及びその通電時間を調整することにより行われる。空気除菌装置1は、これらの電圧、電流、通電時間等の電解条件が予め設定されている。
【0042】
そして、散水ボックス51から気液接触部材53に滴下された電解水は、気液接触部材53を伝って下方に移動し、水受け皿42の水受け部42Aに落ちる。この水受け部42Aに落ちた電解水はフィルタ部材74を介して貯留部42Bに流入する。そして、再び循環ポンプ44によって汲み上げられ、電解槽46を経て気液接触部材53に供給される。このように、本実施の形態における構成では水が水受け皿42を還流する循環式となっており、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率よく空気の除菌を行える。また、蒸発等により貯留部42Bの水位が減少した場合には、給水弁61が開放されて給水口64より水道水が適量供給される。
【0043】
また、制御部100の制御によってポンプ95が駆動されると、食塩水タンク90に貯留された食塩水は、吸い込みノズル90Dから吸い出されて、チューブ92、93を通り、供給ノズル94から水受け皿42に自動で供給されることになる。これにより、水受け皿42に塩素濃度の低い水道水が供給されても、電解槽46に供給される水に塩化物イオンが含まれることになる。
【0044】
次いで本実施の形態の制御系について詳述する。
図8は、空気除菌装置1の制御系の構成を示す機能ブロック図である。この図に示すように、上述した循環ポンプ44、排水弁83、ポンプ95、ファンモータ107の他、オートルーバー20を開閉させるルーバー駆動モータ108、及び、上記各部に電源を供給する電源部109のそれぞれが制御部100に接続されており、制御部100の制御に従って動作する。この制御部100には、操作パネル106に配設された各種スイッチやインジケータランプ等が接続されるとともに、水受け皿42の第1フロートスイッチ(FS)43A及び第2フロートスイッチ(FS)43B、電極47、48、電解槽46内の水位を検出する電解槽フロートスイッチ(FS)110、及び、電極47、48間の導電率を検出する導電率計(導電率検出手段)49が接続されている。
なお、導電率計49は、電極47、48間の導電率、すなわち、電解槽46内の電解水の導電率を検出するように電解槽46に配置されているが、これに限定されるものではなく、水受け皿42を還流する水の導電率を計測可能に配置されればよい。
【0045】
制御部100は、空気除菌装置1全体の制御を行うマイコン101、マイコン101により実行される制御プログラムや制御パラメータ等のデータを記憶する記憶部102、マイコン101の制御に基づいて計時動作を行うタイマカウンタ103、操作パネル106における操作を検出して操作内容をマイコン101に出力する入力部104、及び、マイコン101の処理結果を操作パネル106のインジケータランプ(図示略)の点灯を制御する等して出力する出力部105を備える。
【0046】
マイコン101は、予め記憶部102に記憶された制御プログラムを読み込んで実行するとともに、記憶部102に記憶された制御パラメータを読み込み、空気除菌装置1の各部を動作させる。本実施の形態のマイコン101は、空気を除菌する空気除菌運転を行う空気除菌運転モード、水受け皿42に貯留される水を交換して食塩水を供給する水交換運転モード、及び、電解水を排水するメンテナンス運転モードから動作モードを選択する。
動作モードは、通常、空気除菌運転モードに選択されている。この空気除菌運転モードの選択中、マイコン101は、操作パネル106において動作開始を指示する操作が行われ、この操作を示す情報が入力部104から入力されると、循環ポンプ44を動作させて水の循環を開始させるとともに、電極47、48に電圧を印加して電解水を生成させる。さらに、マイコン101はルーバー駆動モータ108を動作させてオートルーバー20を開状態にさせ、その後、ファンモータ107の動作を開始させて、送風ファン31による送風を開始させる。以上の一連の動作により、空気除菌装置1の空気除菌運転が開始される。この空気除菌運転の開始に伴って、マイコン101は、出力部105によって運転中であることを示す表示を行わせる。
【0047】
また、マイコン101は、空気除菌運転の開始に伴い、タイマカウンタ103によって運転時間のカウントを開始させる。タイマカウンタ103は、運転時間のカウントを累積的に行うことが可能であり、空気除菌装置1が空気除菌運転を停止した後も、空気除菌運転が再開された時には引き続きカウントを行う。そして、タイマカウンタ103は、所定のカウント値(累積運転時間)に達する毎に、マイコン101にカウント値を通知すると共に、カウンタ値をリセットする。
【0048】
空気除菌運転の実行中、マイコン101は、電解槽フロートスイッチ110によって電解槽46内の水位が低水位となったことが検出された場合、及び、水受け皿42の第1フロートスイッチ43Aによって水受け皿42の水位が低水位となったことが検出された場合には、電極47、48への電圧の印加を停止するとともに循環ポンプ44及びファンモータ107の運転を停止させ、出力部105によって警告を表示させる。
【0049】
また、マイコン101は、操作パネル106において動作停止を指示する操作が行われ、この操作を示す情報が入力部104から入力されると、マイコン101は電極47、48に対する電圧印加を停止し、循環ポンプ44を停止させる。さらにマイコン101はファンモータ107を停止させて、送風ファン31による送風を止め、その後にルーバー駆動モータ108を動作させてオートルーバー20を閉状態にさせる。以上の一連の動作により、空気除菌装置1の空気除菌運転が停止される。この空気除菌運転の停止時に、マイコン101は、出力部105による運転中の表示を停止させるとともに、タイマカウンタ103による運転時間のカウントを停止させる。
【0050】
また、マイコン101は、空気除菌運転の累積運転時間が所定時間(例えば、40時間)に達した場合、すなわちタイマカウンタ103のカウント値が予め設定された値に達した場合に、空気除菌運転モードから水交換運転モードへ変更する。この水交換運転モードの選択中に、マイコン101は、循環使用した電解水を交換するための水交換運転を実行する。
水交換運転では、マイコン101は、排水弁83を開放し、水受け皿42内の水を外部へ排出させる。上記のように、水受け皿42の第1フロートスイッチ43Aは貯留部42Bの水位が所定の下限水位を下回るとオンに切り替わる。このため、第1フロートスイッチ43Aがオンになった時には、水受け皿42の水位が所定レベルより下がっており、水受け皿42に貯留していた水の大半が排出されたことになり、当該水受け皿42、循環ポンプ44、電解槽46、散水ボックス51、及び、気液接触部材53を含む電解水の循環経路に存在する水、すなわち空気除菌運転時に使用された電解水の大半が排出された状態となる。マイコン101は、水受け皿42の第1フロートスイッチ43Aがオンに切り替わると、排水弁83を閉鎖させ、排水を完了する。
【0051】
次いで、マイコン101は、給水弁61を開放して、給水部60から水受け皿42への水の給水を開始する。上記のように、水受け皿42の第2フロートスイッチ43Bは貯留部42Bの水位が所定の上限水位を上回るとオンに切り替わる。マイコン101は、第2フロートスイッチ43Bがオンに切り替わると、水受け皿42に空気除菌運転に必要な十分な水が貯留された事になるため、給水弁61を閉鎖させ給水を完了する。以上の処理により、水受け皿42に貯留される水の交換を行う水交換運転が完了する。
さらに本実施の形態では、この水交換運転モード時に、電解槽46に供給する水の塩素濃度を増加させるために、水受け皿42に食塩水を供給する。以下、これらの水交換運転及び食塩水の供給を行う食塩水供給動作について説明する。
【0052】
図9は空気除菌装置1の食塩水供給動作を示すフローチャートである。この図9に示す食塩水供給動作を実行中、マイコン101は制御手段としての機能を実現し、タイマカウンタ103は計時手段としての機能を実現する。
空気除菌運転の累積運転時間が所定時間に達した場合、マイコン101は、空気除菌運転を停止させてタイマカウンタ103のカウント値をリセットするとともに、後述する水交換運転回数カウンタのカウンタ値N1、導電率検出回数カウンタのカウンタ値N2、及び、食塩水供給回数カウンタのカウンタ値N3を「0」に初期化する(ステップS1)。
【0053】
次いで、マイコン101は、水受け皿42を還流する水の導電率D1を導電率計49に検出させ(ステップS2)、導電率D1が予め設定された所定導電率Dm1以下か否かを判定する(ステップS3)。ここで、水受け皿42を還流する水の導電率を検出するのは、水中のイオン種の濃度を推定するためである。例えば、空気除菌運転の累積運転時間が40時間を越えると、循環使用された電解水の導電率は、通常6000〜8000μS/cmと高くなっている。電解槽46に供給する水の導電率が高すぎる場合には、塩化物イオン以外のイオン(例えば、硫酸イオン、カルシウムイオンなど)の比率が高くなっており、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を生成することができなくなる。したがって、本実施の形態の所定導電率Dm1は、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を効率よく生成するための上限値として、2000μS(ジーメンス)/cmに設定されている。
【0054】
導電率D1が所定導電率Dm1より大きい場合は(ステップS3:N)、マイコン101は、水交換運転回数カウンタのカウンタ値N1が5回以上か否かを判定する(ステップS4)。水交換運転回数カウンタのカウンタ値N1が5回より少ない場合は(ステップS4:N)、マイコン101は、循環使用された電解水を交換するために上述した水交換運転を実行し(ステップS5)、水交換運転回数カウンタのカウンタ値N1を「1」だけ増加させる(ステップS6)。
【0055】
水交換運転が終了すると、マイコン101は、循環ポンプ44の運転を開始させて、水受け皿42に給水された新たな水を電解水の循環経路に循環させるとともに、水交換運転が終了してからの時間T1が予め設定された所定時間Tm1以上か否か判定する(ステップS7)。この所定時間Tm1は、水受け皿42に供給された新たな水が電解槽46に流入するのに十分な時間に設定されればよく、本実施の形態の所定時間Tm1は、5分に設定されている。
水交換運転が終了してから所定時間Tm1が経過すると(ステップS7:Y)、マイコン101は、処理手順をステップS2に戻すことで、導電率D1を再度検出する。
水交換運転を繰り返し実行した結果、水交換運転回数カウンタのカウンタ値N1が5回以上になった場合は(ステップS4:Y)、マイコン101は、水交換運転が不良であると判断し、インジケータランプを点滅させて、空気除菌装置1の運転を停止する(ステップS8)。
【0056】
導電率D1が所定導電率Dm1以下の場合は(ステップS3:Y)、マイコン101は、水の交換が十分に行われたと判断し、その導電率D1を記憶部102に記憶させる(ステップS9)。一般に、水道水の導電率は数百マイクロジーメンス(例えば、100〜200μS/cm)であり、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を生成できる。一方、本実施の形態の空気除菌装置1では、電気分解が困難な塩素濃度の低い水道水が供給されるので、マイコン101は、電解槽46に供給する水の塩化物イオンを増加すべく、ポンプ95を駆動して、食塩水タンク90から適量の食塩水を水受け皿42に供給する(ステップS10)。このポンプ95は、食塩水の滴下量が1〜2mlとなるように、1〜2秒間運転される。上述したように、供給ノズル94には、逆止弁94Aが設けられているため、食塩水が切れよく滴下され、目的とする量の食塩水をより正確に水受け皿42供給することができるようになっている。
次いで、マイコン101は、食塩水を供給してからの時間T2が予め設定された所定時間Tm2以上か否か判定する(ステップS11)。この所定時間Tm2は、水受け皿42に供給された食塩水が電解槽46に流入するのに十分な時間に設定されればよく、本実施の形態の所定時間Tm2は、3分に設定されている。
【0057】
食塩水を供給してから所定時間Tm2を経過すると(ステップS11:Y)、マイコン101は、水受け皿42を還流する水の導電率D2を導電率計49に検出させ(ステップS12)、食塩水の供給後の導電率D2が記憶部102に記憶させた導電率D1に比べ、所定導電率Dm2以上か否か判定する(ステップS13)。このように、食塩水の供給前の導電率D1と食塩水の供給後の導電率D2との導電率差を、所定導電率Dm2を基準に判定することにより、食塩水を供給することによって増加した塩化物イオンの濃度を確実に推定することができる。
【0058】
このとき、電解槽46に供給する水の導電率が低すぎると、次亜塩素酸を生成する際の基準物質となる塩化物イオンが不足していることになり、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を生成することができない。このため、所定導電率Dm2は、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を、所定の累積運転時間に渡って生成できるように設定される。さらに、この所定導電率Dm2は、水道水に所定量(例えば0.5g)の塩を供給していた従来の電解条件と略同等となるように設定される。これにより、従来の電解条件を使用することができるので、電解条件の設定が容易になる。さらに、電気分解時に電極47及び電極48の間に流す電流が従来と略同等となるので、塩素濃度の低い水道水を使用しても、電極47、48への負荷が増加せず、電極47、48を交換する頻度を多くする必要がない。所定導電率Dm2は、このような設定条件を満たすように設定されればよく、本実施の形態の所定導電率Dm2は、500μS/cmに設定されている。
【0059】
導電率D2が導電率D1に比べて所定導電率Dm2より小さい場合(ステップS13:N)は、マイコン101は、導電率検出回数カウンタのカウンタ値N2を「1」だけ増加させ(ステップS14)、カウンタ値N2が3回以上か否かを判定する(ステップS15)。導電率検出回数カウンタのカウンタ値N2が3回より少ない場合は(ステップS15:N)、マイコン101は、処理手順をステップS11に戻すことで、導電率D2を再度検出する。これにより、何らかの原因によって食塩水が電解槽46に流入する時間が遅くなったとしても、導電率D2を確実に検出することができる。導電率D2を繰り返し検出した結果、導電率検出回数カウンタのカウンタ値N2が3回以上になった場合は(ステップS15:Y)、マイコン101は、食塩水供給回数カウンタのカウンタ値N3を「1」だけ増加させ(ステップS16)、カウンタ値N3が8回以上か否かを判定する(ステップS17)。
【0060】
食塩水供給回数カウンタのカウンタ値N3が8回より少ない場合は(ステップS17:N)、マイコン101は、処理手順をステップS10に戻すことで、食塩水を再度供給する。食塩水供給回数カウンタのカウンタ値N3が8回以上になった場合は(ステップS17:Y)、マイコン101は、食塩水タンク90内に食塩水が無いと判断し、インジケータランプを点滅させて、空気除菌装置1の運転を停止する(ステップS18)。
導電率D2が導電率D1に比べて所定導電率Dm2以上大きい場合は(ステップS13:Y)、空気除菌運転を実行するのに十分な食塩水が水受け皿42に供給されたと判断し、食塩水供給動作を終了して、空気除菌運転を再開する。
【0061】
電解槽46に供給される水は、塩化物イオンを含む食塩水が供給されることで、塩化物イオンが増加するので、電気分解されると、この塩化物イオンが上記式(3)及び(4)に示すように反応し、次亜塩素酸及び塩酸が生成される。このため、空気除菌装置1は、塩素濃度の低い水道水が水受け皿42に供給されても、活性酸素種を含む電解水を生成し、十分な空気清浄効果(ウィルス等の不活化、殺菌、脱臭)を発揮することができる。
また、空気除菌装置1は、水受け皿42に水が供給される毎に食塩水を供給するのではなく、水交換運転を行った場合、すなわち、水受け皿42の電解水を排水した後に水受け皿42に水を供給する場合のみに食塩水を供給する構成とした。この構成により、水受け皿42の水位が減少した等の理由によって、排水を行わずに水受け皿42に水を供給する場合には食塩水を供給しないため、制御を簡素化することができる。
【0062】
さらに、空気除菌装置1は、季節の変わり目等により空気除菌装置1が長期間使用されなくなる場合、空気除菌装置1の設置場所を移動する場合、空気除菌装置1のメンテナンスを行う場合等には、水受け皿42に貯留される水を排水する必要がある。そこで、上記操作パネル106には、水受け皿42に貯留される水の排水を指示する排水操作を受け付ける排水ボタン(不図示)が設けられている。
【0063】
マイコン101は、操作パネル106の排水ボタンが操作されると、メンテナンス運転モードを選択する。このメンテナンス運転モードの選択中、マイコン101は、電解水の循環経路を洗浄した上で、水受け皿42に貯留される水を排水するメンテナンス運転を実行する。このメンテナンス運転の開始に伴い、マイコン101は、空気除菌運転の累積運転時間に係らず、上述した水交換運転モードを選択して、食塩水供給動作を実行する。すなわち、マイコン101は、水交換運転を行った後に、水受け皿42に供給された新たな水に食塩水を供給する。食塩水供給動作が終了すると、マイコン101は、塩化物イオンが増加した新たな水を循環させて、活性酸素種を含む電解水を生成し、その電解水で電解水の循環経路を洗浄する洗浄動作を行う。次いで、マイコン101は、水受け皿42に貯留される水を排水して水受け皿42を空の状態にするとともに、気液接触部材53に雑菌が繁殖するのを防止すべく、一定時間の間、送風ファン31を駆動して気液接触部材53に風を送り、気液接触部材53を乾燥させる。
【0064】
以上の処理により、ユーザの排水操作によりメンテナンス運転が開始されると、空気除菌運転の累積運転時間が所定時間に達していない場合でも、水交換運転モードが選択され、水交換運転後に、水受け皿42に自動的に食塩水が供給されるようになっている。したがって、空気除菌装置1は、塩素濃度の低い水道水が水受け皿42に供給されても、水受け皿42に供給された新たな水に食塩水を供給することによって、活性酸素種を含む電解水を生成し、その電解水で循環経路を洗浄することができる。
【0065】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、水交換運転モードの選択時に食塩水タンク90のポンプ95を動作し、水受け皿42に食塩水を供給する構成とした。この構成により、排水後に水受け皿42に供給された新たな水に食塩水が自動的に供給されるため、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【0066】
また、上記実施の形態によれば、導電率計49によって検出される水受け皿42を還流する水の導電率に応じて、水受け皿42に食塩水を供給する構成とした。この構成により、水受け皿42を還流する水の導電率に応じて、水受け皿42に食塩水が自動的に供給されるため、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【0067】
また、上記実施の形態によれば、水交換運転時には、水受け皿42を還流する水の導電率が所定値以下になるまで、水受け皿42に貯留される水の排水と、塩素濃度の低い水道水の供給とを繰り返し、水受け皿42を還流する水の導電率が所定値以下に至った場合に、食塩水タンク90のポンプ95を動作し、水受け皿42に食塩水を供給する構成とした。この構成により、水受け皿42に貯留される水が交換された後に、水受け皿42に食塩水が自動的に供給されるため、水受け皿42に供給された水が塩素濃度の低い水道水であっても、ウィルス等を不活化するのに十分な濃度の次亜塩素酸を含む電解水を安定して生成することができる。
【0068】
さらに、上記実施の形態によれば、所定時間毎に、空気除菌運転モードを停止し、水交換運転モードを選択した後、空気除菌運転モードを再開する構成とした。この構成により、循環使用された電解水が所定時間毎に新たな水に交換され、電解水の濃縮や雑菌の繁殖が防止される。さらに、水受け皿42に貯留される水が交換される毎に、水受け皿42に食塩水が自動的に供給されるため、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【0069】
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、給水配管27を介して上水道を水受け皿42に導く構成としたが、空気除菌装置1に水を貯留する出し入れ自在な給水タンク41を設けて、この給水タンク41から水受け皿42に水が供給されるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、空気除菌装置1は、塩素濃度の低い水道水が供給される構成としたが、水道水以外のイオン種が希薄な水(純水、精製水、井戸水を含む)が供給される構成としてもよい。この場合でも、食塩水タンク90から食塩水を供給することにより、十分な空気清浄効果(ウィルス等の不活化、殺菌、脱臭)を発揮できる。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、食塩水タンク90に、安価かつ安全に取り扱うことができる食塩水を貯留したが、食塩水に限定されるものではなく、塩化物イオン等のハロゲン化物イオンを含む水を貯留するようにしてもよい。この場合、上記式(3)及び(4)と同様の反応によりハロゲンを含む活性酸素種が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施の形態に係る空気除菌装置の外観を示す斜視図である。
【図2】空気除菌装置の背面側斜視図である。
【図3】空気除菌装置の内部の主要構成を示す斜視図である。
【図4】空気除菌装置の内部の主要構成を示す側断面視図である。
【図5】食塩水タンクを示す斜視図である。
【図6】食塩水タンクの周辺部を示す空気除菌装置の縦断面図である。
【図7】電解水の供給の様子を説明する図であり、(A)は空気除菌機構の構成を示す模式図であり、(B)は電解槽の構成を詳細に示す図である。
【図8】空気除菌装置の制御系の構成を示す機能ブロック図である。
【図9】空気除菌装置の食塩水供給動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 空気除菌装置
31 送風ファン
42 水受け皿
44 循環ポンプ
46 電解槽(電解ユニット)
49 導電率計(導電率検出手段)
53 気液接触部材
90 食塩水タンク(食塩水供給手段)
101 マイコン(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解ユニットによって生成された電解水を気液接触部材に供給し、この気液接触部材を湿潤させて水受け皿に環流すると共に、前記気液接触部材には送風ファンにより空気を送り、当該気液接触部材で前記電解水と前記空気とを接触させて当該空気を除菌する空気除菌装置において、
前記水受け皿に食塩水を供給する食塩水供給手段と、
前記水受け皿に貯留される水を排水し、前記水受け皿に新たな水を供給する水交換運転モードと、
前記水交換運転モードの選択時に前記食塩水供給手段を動作し、前記水受け皿に食塩水を供給する制御手段とを備えた
ことを特徴とする空気除菌装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記水受け皿を還流する水の導電率を検出する導電率検出手段を備え、当該水の導電率に応じて前記水受け皿に食塩水を供給することを特徴とする請求項1に記載の空気除菌装置。
【請求項3】
前記水受け皿に供給する新たな水が塩素濃度の低い水道水であり、前記水交換運転時には、前記水受け皿を還流する水の導電率が所定値以下になるまで、前記水受け皿に貯留される水の排水と、新たな水の供給とを繰り返し、前記水の導電率が所定値以下に至った場合に、前記食塩水供給手段を動作し、前記水受け皿に食塩水を供給することを特徴とする請求項2に記載の空気除菌装置。
【請求項4】
空気を除菌する空気除菌運転モードを有し、
前記制御手段は、所定時間毎に、前記空気除菌運転モードを停止し、前記水交換運転モードを選択した後、前記空気除菌運転モードを再開することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の空気除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−35794(P2010−35794A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201671(P2008−201671)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】