説明

空芯コイルの自動巻線実装方法およびその装置

【目的】 空芯コイルを、からみつきや変形等を起こさせずに安定して回路基板に自動実装することができる方法および装置を提供する。
【構成】 この装置は、素線1から空芯コイル8を製作する巻線装置10と、この空芯コイル8を実装すべき回路基板20を搬送位置決めする基板搬送装置30と、コイルチャック41によって巻線装置10の巻線スピンドル部7にある空芯コイル8を把持して同空芯コイル8をそこから基板搬送装置30上の回路基板20の所定位置へ搬送して実装するコイル実装装置40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばチューナ等の電子回路のインダクターを構成する空芯コイルの自動巻線実装方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来は、空芯コイルメーカーで製作された空芯コイルを、基板アッセンブリーメーカーが購入し、それを主として手作業で回路基板に実装(挿入もしくは装着)して使用していた。そのため、この空芯コイルの実装作業の省力化が基板組立工程の省力化のネックの一つとなっていた。
【0003】また、複数の空芯コイルを振動フィーダによって整列送りしてテーピング化し、それを用いて自動実装を行う取り組みも一部で行われているが、空芯コイル同士のからみつきや変形等の障害があり、満足すべき結果は得られていない。
【0004】そこでこの発明は、空芯コイルを、からみつきや変形等を起こさせずに安定して回路基板に自動実装することができる方法および装置を提供することを主たる目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、この発明の第1の自動巻線実装方法は、素線を巻線スピンドル部で巻き取って空芯コイルを製作する巻線工程と、この巻線工程によって製作された空芯コイルを実装すべき回路基板を所定の位置まで搬送して位置決めする基板搬送工程と、コイルチャックによって前記巻線スピンドル部にある空芯コイルを把持して同空芯コイルを、前記基板搬送工程によって搬送された回路基板上の所定位置へ搬送して実装するコイル実装工程とを備えることを特徴とする。
【0006】また、この発明の自動巻線実装装置は、素線を供給する素線供給部、素線を送る素線送り部、素線の一部分の被覆を剥離する被覆剥離部、素線を巻き取って空芯コイルを製作する巻線スピンドル部、素線を巻線スピンドル部の近くで切断する素線カッター部および巻線スピンドル部にある空芯コイルのリード部を整形するリード整形部を有する巻線装置と、前記空芯コイルを実装すべき回路基板を所定の位置まで搬送して位置決めする基板搬送装置と、コイルチャックを有していてそれによって前記巻線装置の巻線スピンドル部にある空芯コイルを把持して同空芯コイルをそこから前記基板搬送装置上の回路基板の所定位置へ搬送して実装するコイル実装装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
【作用】上記自動巻線実装方法によれば、巻線工程によって空芯コイルを製作し、その工程で作られた空芯コイルを、コイルチャックによって把持して巻線スピンドル部から直接回路基板に供給して実装することができる。従って、従来のような空芯コイル同士のからみつきや変形等が起こらなくなり、空芯コイルの安定した自動実装が可能になる。
【0008】また、上記自動巻線実装装置によれば、巻線装置によって空芯コイルを製作し、そこで作られた空芯コイルを、コイル実装装置のコイルチャックによって把持して巻線装置から直接回路基板に供給して実装することができる。従って、従来のような空芯コイル同士のからみつきや変形等が起こらなくなり、空芯コイルの安定した自動実装が可能になる。
【0009】
【実施例】図1は、この発明の一実施例に係る自動巻線実装装置の構成を示す概略図である。
【0010】この実施例の装置は、素線1から空芯コイル8を製作する巻線装置10と、この空芯コイル8を実装すべき回路基板20を搬送位置決めする基板搬送装置30と、両装置10、30間を移動するコイルチャック41を有するコイル実装装置40との組み合わせから成る。
【0011】巻線装置10は、素線リール2aを有していてそこから素線1を供給する素線供給部2と、この素線1を矢印Aのように送る素線送り部4と、矢印B、Cのように回転移動する何枚かの剥離刃3aを有していて素線1の一部分の被覆を剥離する(図中の斜線を付した部分bが剥離された部分を示す)被覆剥離部3と、巻線スピンドル7aおよびそれに装着されていてそれとの間に素線1の一部分をクランプする素線クランプ7bを有し、この巻線スピンドル7aに素線1を巻き取って空芯コイル8を製作する巻線スピンドル部7と、一組の素線カッター5aを有していて素線1を巻線スピンドル部7の近くで切断する素線カッター部5と、一組の整形爪6aを有していて巻線スピンドル部7上の空芯コイル8のリード部8bを、この実施例ではそれが図2に示すように本体部8aのほぼ中心部から出るように整形するリード整形部6とを有している。この実施例における被覆剥離部3は、剥離刃3aで素線1の被覆を機械的に剥離するものであり、素線1を溶融半田中に浸漬して被覆を除去する方式のものに比べると、巻線装置10が半田槽の熱の影響を受けたり、被覆材の焼けごみ等で巻線装置10の周囲が汚染されたりすることがない等の利点がある。
【0012】基板搬送装置30は、前記空芯コイル8を実装すべき回路基板20を所定の位置まで搬送する基板コンベア31と、回路基板20に設けられた位置決め穴21に嵌入する位置決めピン33を有していて回路基板20の位置決めを行う位置決め機構32とを有している。
【0013】コイル実装装置40は、この実施例のものは、そのコイルチャック41をXY方向に直線運動およびθ方向に回転運動させることができる3自由度を有するロボットであり、このコイルチャック41によって、巻線装置10の巻線スピンドル部7にある空芯コイル8の本体部8aを把持してその空芯コイル8をそこから基板搬送装置30上の回路基板20上の所定位置へ搬送してそのリード部8bを回路基板20の穴22に挿入して実装することができる。コイルチャック41は、ゴム、バネ材等の弾性部材で形成された一組の爪部41a、41bを備えており、この一組の爪部41a、41bによって空芯コイル8の本体部8aを弾性的に把持する。
【0014】この自動巻線実装装置による自動巻線実装方法の例を説明すると、素線リール2aより送り出される素線1は、被覆剥離部3で所定の長さだけ絶縁被覆の剥離が行われる。素線送り部4で送られた素線1は、巻線スピンドル7aに装着された素線クランプ7bで保持され、空芯コイル8の一方のリード部8bとなる部分が、リード整形部6によって前述したように(即ち図2に示すように)整形される。
【0015】そして、巻線スピンドル7aの矢印Dのような回転と矢印Eのようなトラバース(後退)による巻線動作によって、所定のターン数とピッチを得る。この場合、図2に示すようなスペース巻コイルを得ることもできる。その後、素線カッター部5で素線1の所定位置(この位置は、被覆剥離長さの中心とするのが好ましく、そのようにすれば、残りをそのまま次の空芯コイルのリード部とできて都合が良い)を切断した後、リード整形部6で空芯コイル8の他方のリード部8bとなる部分の前記と同様の整形を行い、これによって空芯コイル8の製作は完了する。
【0016】製作完了した空芯コイル8は、この例ではコイル実装装置40のコイルチャック41の一組の爪部41a、41bでその本体部8aを弾性的に把持される。本体部8aを把持するのは、リード部8bを把持する場合に比べて同空芯コイル8を狭い所にも実装しやすいこと、本体部8aを接着剤により回路基板20に容易に仮固定できること等の利点があるからである。リード部8bを把持する場合は、本体部8aを接着剤により回路基板20に仮固定しようとすると、コイルチャックにも接着剤が付着する可能性があるため、本体部8aを接着剤で仮固定するのが難しくなるが、接着剤による仮固定を行わない場合や、行う場合でも接着剤の付与量をコントロールしたり、コイルチャックの爪部の形状を工夫すること等で、リード部を把持して搬送することは可能である。また、本体部8aを弾性的に把持するのは、同じコイルチャック41で外径の異なる空芯コイルを把持できること、適当な弾性力に調節しておくことにより本体部8aを変形させることがないこと等の利点があるからである。そしてこの空芯コイル8は、素線クランプ7bの解除および巻線スピンドル7aの後退によって巻線スピンドル7aから外され、コイルチャック41によって、基板搬送装置30上の所定位置にある回路基板20上の所定位置へ搬送される。そして、同コイルチャック41が空芯コイル8の挿入姿勢に対応するように回転しかつ下降して、空芯コイル8のリード部8bが回路基板20の穴22に挿入され、空芯コイル8の実装が完了する。
【0017】そして上記のような動作が、必要に応じて繰り返される。
【0018】なお、この自動巻線実装装置の上記のような動作は、例えばシーケンサによって制御されている。
【0019】以上のようにこの自動巻線実装装置によれば、巻線装置10によって空芯コイル8を製作し、製作時の定まった姿勢を活用して、その空芯コイル8を、コイル実装装置40によって、巻線装置10から直接回路基板20に供給して実装することができるので、従来のような空芯コイル同士のからみつきや変形等が起こらなくなり、空芯コイル8の安定した自動実装が可能になる。
【0020】特に、スペース巻コイルの場合は、従来は、相互にからみつきやすいためそれを手作業で扱うと分離するのが困難であり、しかも変形しやすいため安定した特性を維持しにくいという問題があったが、この自動巻線実装装置によれば、スペース巻コイルの場合でも、それを回路基板20に容易に実装することができ、しかも変形等を起こさないので安定した特性を得ることができる。
【0021】また、スペース巻コイルの使用が可能になると、スペース巻コイルは±方向のインダクタンス調整が可能なため、コイルの予備調整を省くことができ、それによって調整作業時間を短縮することができるようになる。
【0022】また、この自動巻線実装装置は、素線1からの空芯コイル8の製作からその回路基板20への実装までを一貫して行うことができるので、部品コストを従来の空芯コイルに比べて大幅に下げることができる。また、部品在庫が不要になるので、保管管理コストを削減することができる。更に、空芯コイルの必要時にそれを即供給することができるので、リードタイムを短くすることができ、それによって電子回路組立の生産性を向上させることもできる。
【0023】なお、一つの自動巻線実装装置に(より具体的には共通の基板搬送装置30およびコイル実装装置40に対して)、上記のような巻線装置10を2台以上設けても良く、そのようにすれば、空芯コイル8を巻いているときでも実装の待ち時間が発生せずに済む等の効果が得られる。また、巻線スピンドル7aの自動交換装置、素線1の自動交換装置等を設けておいても良く、こうした場合は、一つの自動巻線実装装置で素線径、コイル内径、リードピッチ、コイル巻数等の異なる複数種類のコイルの製作がより容易となる。
【0024】
【発明の効果】以上のように請求項1および2の自動巻線実装方法によれば、巻線工程によって空芯コイルを製作し、その工程で作られた空芯コイルを、コイルチャックによって、巻線スピンドル部から直接回路基板に供給して実装するので、従来のような空芯コイル同士のからみつきや変形等が起こらなくなり、空芯コイルの安定した自動実装が可能になる。また、スペース巻コイルを安定した品質で得ることができるので、その使用が可能になり、それによってコイルの調整作業時間の短縮が可能になる。また、空芯コイルの製作から実装までを一貫して行うことができるので、部品コストの削減、保管管理コストの削減およびリードタイムの短縮を図ることができる。
【0025】また、請求項3の自動巻線実装装置によれば、巻線装置によって空芯コイルを製作し、その空芯コイルを、コイル実装装置によって、巻線装置から直接回路基板に供給して実装することができるので、従来のような空芯コイル同士のからみつきや変形等が起こらなくなり、空芯コイルの安定した自動実装が可能になる。また、スペース巻コイルを安定した品質で得ることができるので、その使用が可能になり、それによってコイルの調整作業時間の短縮が可能になる。また、空芯コイルの製作から実装までを一貫して行うことができるので、部品コストの削減、保管管理コストの削減およびリードタイムの短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例に係る自動巻線実装装置の構成を示す概略図である。
【図2】 空芯コイルの一例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
1 素線
2 素線供給部
3 被覆剥離部
4 素線送り部
5 素線カッター部
6 リード整形部
7 巻線スピンドル部
8 空芯コイル
10 巻線装置
20 回路基板
30 基板搬送装置
40 コイル実装装置
41 コイルチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 素線を巻線スピンドル部で巻き取って空芯コイルを製作する巻線工程と、この巻線工程によって製作された空芯コイルを実装すべき回路基板を所定の位置まで搬送して位置決めする基板搬送工程と、コイルチャックによって前記巻線スピンドル部にある空芯コイルを把持して同空芯コイルを、前記基板搬送工程によって搬送された回路基板上の所定位置へ搬送して実装するコイル実装工程とを備えることを特徴とする空芯コイルの自動巻線実装方法。
【請求項2】 素線供給部から送り出される素線を巻線スピンドル部で巻き取って空芯コイルを製作する工程、前記素線供給部から巻線スピンドル部へ送る途中で素線の一部分の被覆を剥離する工程、前記巻線スピンドル部での巻き取り後に素線を当該巻線スピンドル部の近くで切断する工程および前記巻線スピンドル部にある空芯コイルのリード部を成形する工程を有する巻線工程と、この巻線工程によって製作された空芯コイルを実装すべき回路基板を所定の位置まで搬送して位置決めする基板搬送工程と、コイルチャックによって前記巻線スピンドル部にある空芯コイルを把持して同空芯コイルを、前記基板搬送工程によって搬送された回路基板上の所定位置へ搬送して実装するコイル実装工程とを備えることを特徴とする空芯コイルの自動巻線実装方法。
【請求項3】 素線を供給する素線供給部、素線を送る素線送り部、素線の一部分の被覆を剥離する被覆剥離部、素線を巻き取って空芯コイルを製作する巻線スピンドル部、素線を巻線スピンドル部の近くで切断する素線カッター部および巻線スピンドル部にある空芯コイルのリード部を整形するリード整形部を有する巻線装置と、前記空芯コイルを実装すべき回路基板を所定の位置まで搬送して位置決めする基板搬送装置と、コイルチャックを有していてそれによって前記巻線装置の巻線スピンドル部にある空芯コイルを把持して同空芯コイルをそこから前記基板搬送装置上の回路基板の所定位置へ搬送して実装するコイル実装装置とを備えることを特徴とする空芯コイルの自動巻線実装装置。

【図1】
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【図2】
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