説明

空調システム、その屋外空冷熱交換ユニット、制御装置

【課題】霧化水によって外気を冷却して熱交換器に供給する構成において、外気温度を出来るだけ下げつつ熱交換器が結露しないように霧化量を制御する。
【解決手段】温度計21、湿度計22によって外気の乾球温度、湿度を計測して外気の湿球温度を求める。霧化水供給後の外気の乾球温度を温度計23によって計測して、これが上記湿球温度より大きい場合には霧化量を増加する。そして、温度計23で計測した乾球温度が、上記湿球温度と同じになったら、霧化量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに係わり、特にその室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外気を利用する空調システム(以下、外気利用空調システム)が存在する。
この様な外気利用空調システムは、例えばサーバルーム/データセンタ等に対して設置されている。ここでは、一例として、空調対象空間が、多数のサーバ装置が設置されているサーバルームであるものとして説明するが、この例に限らない。
【0003】
上記サーバルームの例の場合、稼動中のサーバ装置(コンピュータ;そのCPU等)が主な発熱源となり、たとえ冬季のように外気温度が低い時期であっても、冷房が必要となる。逆にこれを利用して、主に夏季以外の時期(外気温度が比較的低い時期)において、外気を利用することで補助的な冷却作用により空調装置の省エネ化を図ることが行われている。
【0004】
すなわち、まず、サーバルームに対して、一般的な蒸気圧縮式などの冷凍サイクルによる空調システムが設置されている。よく知られているように、この様な冷凍サイクルによる空調システムでは、配管を介して各機器(圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器)に冷媒を循環させるものであり、冷媒を、圧縮機で圧縮し、凝縮器で冷却して圧力が高い液体をつくり、膨張弁で圧力を下げ、蒸発器で低温で気化させて気化熱で周囲の熱を奪い取るものである。サーバルームからのリターン空気(暖気)を、蒸発器を通過させることで冷却して冷気を生成する。生成した冷気は、サーバルームに供給して上記サーバ装置等を冷却することで暖気となり、この暖気を再び上記のように蒸発器に通過させて冷却することになる。
【0005】
また、通常、屋内には、上記蒸発器等の熱交換器や、リターン空気の吸気や冷気の排気の為のファン等を有するユニット(エアハンドリングユニット)が設けられる。
尚、上述した一般的な蒸気圧縮式などの冷凍サイクルによる空調システムのことを、簡略化して「冷凍サイクルによる空調システム」や「一般的な空調システム」等と記す場合もある。
【0006】
ここで、上記外気利用空調システムでは、上記一般的な空調システムに加えて、更に外気熱交換システムを設けている。この外気熱交換システムは、上述したエアハンドリングユニットの前段で、上記サーバルームからのリターン空気(暖気)を冷却してその温度を下げるものである。これより、エアハンドリングユニットに流入する暖気の温度が低くなるので、一般的な空調システムにおける冷却負荷が軽減でき、その消費電力を減少させることができる。尚、外気熱交換システムにおいて多少の電力消費が生じるが、これは一般的な空調システムの消費電力の減少量に比べれば、非常に小さなものとなる。よって、全体としての消費電力も、一般的な空調システムのみの場合と比べて、小さくなり、省エネ効果が得られる。
【0007】
上記外気熱交換システムの構成は、例えば屋外と屋内とにそれぞれ熱交換器を設け、この2つの熱交換器間に配管を接続して、配管内に冷却液(例えば水など)を循環させるものである。これは、例えばポンプ等の動力によって冷却液を循環させるものである。尚、ここでは、屋外に設置する熱交換器を「空冷熱交換器」と呼ぶものとし、屋内に設置する熱交換器はそのまま「熱交換器」と呼ぶものとする。
【0008】
「空冷熱交換器」には外気を通過させる。これはファン等を用いて外気の吸気・排気を行うものである。「空冷熱交換器」内には上記の通り冷却液(例えば水など)も通過し、外気と冷却液との間で熱交換が行われることになる。
【0009】
同様に、「熱交換器」には上記リターン空気(暖気)を通過させる。これはファン等を用いてリターン空気の吸気・排気を行うものである。「熱交換器」内には上記の通り冷却液(例えば水など)も通過し、リターン空気と冷却液との間で熱交換が行われることになる。
【0010】
ここで、「空冷熱交換器」、「熱交換器」の何れにおいても、当然のことながら、上記熱交換は、温度が高い方から温度が低い方へと熱が移動することになる。よって、例えば冬季であれば「空冷熱交換器」に流入する冷却液の温度より外気温度が低いので、冷却液は外気によって冷却されることになる。そして、「熱交換器」においては、この様に外気によって冷却された冷却液によって、リターン空気(暖気)が冷却されることになる。
【0011】
しかしながら、「空冷熱交換器」において外気温度が冷却液の温度より高い場合には、冷却液が冷却されず、逆に温度上昇する可能性もある。これは極端な例であるが、「空冷熱交換器」において得られる熱交換能力は、外気温度によって変動するものであり、基本的に、外気温度が高くなるほど(換言すれば外気と冷却液との温度差が小さくなるほど)、熱交換能力は小さくなる。
【0012】
上記のように外気を用いて空冷熱交換器(屋外熱交換器)で冷却液媒体を冷却するシステムの場合、外気温度が高くなるに従って冷却液の冷却効果が低減し、外気温度が室内より高い場合には冷却液の冷却効果が得られなくなる。何れにしても、空冷熱交換器(屋外熱交換器)に供給する外気の温度は、出来るだけ低い方が望ましい(但し、後述するように、氷結するような気温(氷点下)では、別の問題が生じる)。
【0013】
そこで、外気を屋外熱交換器を通過させる前に、霧化した水の気化熱を利用することによって外気を冷却することで、外気による冷却液の冷却性能を向上させることができ、以って冷却液によるリターン空気(暖気)の冷却性能を向上させることができ、以ってエアハンドリングユニットの冷却負荷を軽減させ冷凍サイクルによる空調システムの省エネ効果が得られるようになる(通常は、外気利用空調システム全体としての省エネ効果も得られる)。
【0014】
また、外気温度が室内温度(冷却液温度)より高い場合においても、上記外気に対する霧化水供給によって外気温度を低下させることによって、冷却液媒体の冷却が可能となり、外気熱交換システムによるリターン空気(暖気)の冷却性能を維持できる。よって、外気温度が室内温度(冷却液温度)より高い場合においても、外気熱交換システムによる上述した省エネ効果が得られることになる。
【0015】
霧状となった水は、その粒子が極めて小さいために素早く蒸発するので、霧化水を含む外気が屋外熱交換器を通過しても、屋外熱交換器が濡れるようなことは殆どない。
しかしながら、霧化量が多過ぎる為に外気が飽和状態になると、屋外熱交換器表面が濡れる。この様に水滴が熱交換器に付着すると、伝熱性能が低下する問題が生じ、それだけでなく熱交換器が腐食してしまう可能性があった。
【0016】
ここで、従来より、外気による屋外熱交換器の冷却効率を向上させるために、水を利用する技術が知られている。例えば、特許文献1,2,3等に開示されている従来技術が知られている。
【0017】
尚、上記霧化水による外気冷却方式は、上記外気熱交換システムの空冷熱交換器に限らず、例えば上記蒸気圧縮式冷凍サイクルによる一般的な空調システムにおける室外機(凝縮器等と呼ばれる、外気による空冷の熱交換器)等にも適用可能である。そして、この場合でも、上述した水滴が熱交換器に付着することによって生じる問題が起こり得る。
【0018】
特許文献1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮器と、圧縮された冷媒を大気と熱交換する熱交換器を有する室外機と、絞り器と熱交換器(蒸発器)を有する室内機と、循環配管を有する空気熱源式冷房装置において、上記室外機の熱交換器の伝熱管表面に水を噴霧する手段と、この熱交換器の伝熱管表面における水の蒸発量を推定し、推定した蒸発量に基づいて噴霧水量を制御する手段を設けたものである。
【0019】
また、特許文献2の発明では、圧縮機、第1熱交換器、膨張機構、第2熱交換器(蒸発器)、循環配管を有する空気調和装置に関して、上記第1熱交換器(圧縮機で圧縮された冷媒を熱交換により放熱して冷却する、室外熱交換器)の表面に、霧状水分を含む空気を供給して、霧状水分の蒸発潜熱により冷媒を冷却する。一部の霧状水分の蒸発による蒸発潜熱により空気(外気)の温度が低下されると共に、更に温度低下された空気が含む霧状水分が上記第1熱交換器の表面に供給されて、霧状水分の蒸発潜熱により第1熱交換器が冷却されて、冷却効果が更に向上するものである。
【0020】
また、特許文献3の発明では、室外熱交換器に、冷却水ポンプとスプレーノズルとからなる冷却水散水手段を設け、冷房時に室外熱交換器の外側フィン表面に散水するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2001−317821号公報
【特許文献2】特開2005−226955号公報
【特許文献3】特開平7−151415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ここで、上述した屋外熱交換器の表面が濡れて水膜ができると、膜厚の大きさによっては外気と熱交換器との熱伝達率が低下する。さらに屋外熱交換器の表面に付着する水の温度は、散布水の影響を受けやすく、水の温度によっては伝熱性能に影響する。また、熱交換器は一般的に熱伝導のよい銅やアルミ等の金属で作成されているので、その表面に水分が付着すると塵埃や水内の不純物などとの相互作用により局部電池を形成し、腐食しやすくなる。
【0023】
しかしながら、上記引用文献1,2,3の従来技術は、何れも、この様な問題を考慮していないし、当然、このような問題を解決できるものではない。特に引用文献1,3の場合、そもそも、屋外熱交換器の表面が濡れても構わない発想である。また、特許文献2の場合には、霧状水分を含む空気を供給しているので、少なくとも屋外熱交換器表面が濡れても構わないという発想ではないにしても、何らかの理由により結露が生じた場合または結露が生じそうな場合に、結露防止するように制御することは、何等考えられていない。
【0024】
また、霧状水分供給によって外気が実際には十分に冷却されているにも係らず(あるいは結露しそうな状態であるにも係らず)、センサ故障等の為に外気冷却が不十分である(あるいは未だ結露しない)と誤判定されてしまう可能性がある。この様な状況では、霧化量をどれだけ増やしても上記のように誤判定等されるために、霧化量が過剰になる可能性があった。あるいは、強風等によって霧化水分を含む空気が流されてしまい、熱交換器に十分に供給されない事態となることも起こり得る。この様な状況では霧化量をどれだけ増やしても上記外気冷却が不十分である等の誤判定が行われる可能性があり、霧化量が過剰になる可能性があった。このように、何らかの不測の事態により霧化量が過剰になる場合があった。
【0025】
また、外気温度が氷点下以下の状況では、霧化水が氷結する為、霧状水分の蒸発による外気の冷却効果が得られないだけでなく、屋外熱交換器表面に氷が付着し更に溶解し、熱交換器が濡れてしまう可能性があった。熱交換器が濡れた場合、上述した伝熱効果が低下するなどの問題が生じることになる。
【0026】
本発明の課題は、霧化水を供給された外気によって屋外熱交換器における熱交換を行う空調システムに関して、霧化水による外気の冷却効果を維持しつつ屋外熱交換器表面が結露しないように霧化量を制御することで、外気の冷却効果を維持しつつ伝熱性能維持と腐食防止を図ることができる空調システム、その屋外空冷熱交換ユニット、制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の空調システムは、屋外に設けられ外気の吸気と排気を行うファンと外気と冷媒または冷却液との熱交換を行わせる熱交換器とを有する空冷熱交換ユニットを有する空調システムであって、吸気された外気に対して霧化水を供給する霧化器と、該霧化器による霧化水量を制御する制御装置とを有し、該制御装置は、前記霧化器によって霧化水を供給する前の前記外気の湿球温度を求める湿球温度取得手段と、前記霧化器によって霧化水が供給された後の前記外気の乾球温度を測定する乾球温度測定手段と、前記乾球温度と前記湿球温度とに基づいて、前記霧化水が供給された前記外気によって結露が生じないようにしつつ前記乾球温度を前記湿球温度に近づけるように、前記霧化器による前記霧化水量を調整制御する霧化水量制御手段とを有する。
【0028】
霧化水量を増やしていけば、外気温度を低下させていくことができるが、何れは外気が飽和状態となり、熱交換器表面に結露が生じることになる。上記制御装置では、霧化水供給前の外気の湿球温度と供給後の外気の乾球温度とに基づいて、霧化水供給後の外気が、飽和状態にならないようにしつつ出来るだけ温度低下するように、霧化水量を調整制御することができる。
【0029】
これは、例えば、前記霧化水量制御手段は、前記乾球温度が前記湿球温度以下である場合には前記霧化器による前記霧化水量を減少させ、前記乾球温度が前記湿球温度より高い場合には前記霧化器による前記霧化水量を増加させる制御を行うものである。
【0030】
また、例えば、上述した不測の事態等によって霧化量が過剰になる等の問題に対応する為に、上限値/下限値を予め設定しておくようにしてもよい。
すなわち、例えば、前記霧化水量制御手段は、前記霧化水量を減少させる場合には、現在の霧化水量に対して予め設定される所定値を減算することで新たな霧化水量の計算値を求め、該計算値が予め設定される下限値未満の場合には該下限値を新たな霧化水量として適用し、該計算値が前記下限値以上の場合には該計算値を新たな霧化水量として適用する。
【0031】
あるいは、例えば、前記霧化水量制御手段は、前記霧化水量を増加させる場合には、現在の霧化水量に対して予め設定される所定値を加算することで新たな霧化水量の計算値を求め、該計算値が予め設定される上限値以下の場合には該計算値を新たな霧化水量として適用し、該計算値が前記上限値を越える場合には該上限値を新たな霧化水量として適用する。
【0032】
また、例えば、前記霧化器によって霧化水を供給する前の外気の乾球温度と、予め設定される、前記霧化水が氷結する温度に対応する所定の閾値とを比較して、該乾球温度が該所定の閾値未満となった場合には、前記霧化器による霧化を停止する。
【0033】
これによって、例えば霧化水が氷結するような状況では、霧化器を停止させることで、問題が生じないようにできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の空調システム、その屋外空冷熱交換ユニット、制御装置等によれば、霧化水を供給された外気によって屋外熱交換器における熱交換を行う空調システムに関して、霧化水による外気の冷却効果を維持しつつ屋外熱交換器表面が結露しないように霧化量を制御することで、外気の冷却効果を維持しつつ伝熱性能維持と腐食防止を図ることができる。更に不測の事態により霧化量が過剰になる事態を防止できる。また、霧化水による外気の冷却効果を維持できず熱交換器表面に霧化水の氷が付着する事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】外気利用空調システムの概略構成図である。
【図2】外気熱交換システムの詳細構成図である。
【図3】制御装置の処理フローチャート図である。
【図4】湿り空気線図に基づいて、図3の処理について説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本手法の適用対象である外気利用空調システムの概略構成図である。
図示の概略構成自体は、既存の構成と見做してよく、ここでは簡単に説明する。
【0037】
図1において、空調対象であるサーバルームには複数の(多数の)サーバ装置等が設置されている。上記の通り、稼動中のサーバ装置は、発熱体と見做してよく、冷房を行わないとサーバルーム内は高温となってしまい、サーバ装置の故障を招くことになる。
【0038】
図示の例では、エアハンドリングユニット1が冷気を生成すると共に、この冷気を床下空間に送出し、床下空間を介して冷気をサーバルームに供給する(図示のサーバ室給気)。サーバルームに供給された冷気は、サーバ装置を冷却することで温度上昇して暖気となり、上昇してサーバルームから流出する。
【0039】
ここで、図示の例では、建屋(建物)内に空調室が設けられ、空調室内にはエアハンドリングユニット1等とサーバルームが設けられているが、ここでは特に空調室内においてサーバルームの空間以外の空間を空調室と呼ぶものとする。よって、上記サーバルームから流出する暖気は、空調室内に流入するものと言える。
【0040】
そして、空調室内には図示の通りエアハンドリングユニット1と熱交換器12が設けられている。尚、一般的な空調システムのみの場合には、この空調室内に流入する暖気(図示のサーバ室還気;リターン空気)が、エアハンドリングユニット1内に流入してその内部で冷却されて冷気となって排出されることになる。
【0041】
また、図示の例では、上記蒸気圧縮式冷凍サイクル等による一般的な空調システムの構成については、その一部であるエアハンドリングユニット1と冷媒管2のみを示し、他の構成(圧縮機、凝縮器、膨張弁等)については省略している。エアハンドリングユニット1は、上記従来で説明した通り、蒸発器1aや、リターン空気の吸気や冷気の排気の為のファン1b等を有している。また、冷媒管2は、蒸発器1aや上記不図示の圧縮機、凝縮器、膨張弁等に接続しており、これら各種機器に冷媒を循環させる。
【0042】
尚、上記冷凍サイクルによる空調システムの構成は、上記の例に限らない。例えば、冷媒として冷水を用いるものとし、上記符号1aの構成は、蒸発器に限らず、冷水と空気との熱交換を行う熱交換器であってもよい。この例の場合、屋外熱交換器としてクーリングタワーが設けられるケースが少なくないが、屋外熱交換器として外気を利用した空冷熱交換器を用いるようにしてもよい。このような空冷熱交換器や上記凝縮器等も本手法の適用対象とする。すなわち、本説明では本手法(霧化水によって外気を冷却する構成と霧化量制御)の適用対象を後述する外気熱交換システムの空冷熱交換器11として説明するが、この例に限らず、上記冷凍サイクルによる空調システムの空冷熱交換器(凝縮器も含まれる)等も適用対象としてよい。
【0043】
ここで、外気利用空調システムの場合、既に説明した通り、上記一般的な空調システムに加えて更に外気熱交換システムが設けられている。外気熱交換システムは、図示の空冷熱交換器11、熱交換器12、ポンプ13、配管14等から成る。尚、外気熱交換システムの詳細については、後に図2を参照して説明するものとし、ここでは簡単な説明のみとする。
【0044】
空冷熱交換器11と熱交換器12とは配管14に接続しており、配管を介して冷却液(水など)が循環している。冷却液循環の動力源は、配管14上の任意の位置に設けられるポンプ13である。
【0045】
空冷熱交換器11は、屋外に設けられており、外気を通過させることで、外気と冷却液との熱交換を行わせる。空冷熱交換器11内には、外気を吸気・排気する為のファン11bが設けられている。
【0046】
一方、熱交換器12は、屋内(空調室内)に設けられており(よって、屋内熱交換器12と呼んでも良い)、リターン空気(暖気)を通過させることで、リターン空気と冷却液との熱交換を行わせる。熱交換器12は、上記暖気の流れに関してエアハンドリングユニット1の上流側(前段)に設けられている。これより、上記サーバルームから空調室内に流入した暖気(リターン空気)は、まず熱交換器12を通過した後に、エアハンドリングユニット1内に流入することになる。熱交換器12には、上記空冷熱交換器11において外気と熱交換して(基本的には)冷却された冷却液が流入し、この冷却液と上記リターン空気との熱交換が行われることになり、(基本的には)リターン空気は冷却液によって冷却されて温度低下することになる。どの程度温度低下するのかは、上述したように外気温度や風量によって左右されることになる。
【0047】
尚、熱交換器12におけるリターン空気との熱交換によって(基本的には)温度上昇した冷却液は、再び空冷熱交換器11において外気との熱交換によって(基本的には)冷却されることになる。
【0048】
そして、本例では、上記空冷熱交換器11に係わり、冷却液と外気とを熱交換させる前に、その前段(外気の流れの上流側)において外気に霧化水を供給することでその蒸発による気化熱によって外気を冷却する構成が備えられている。これについては後に図2を参照して説明する。
【0049】
また、尚、熱交換器12は、図示のように熱交換器本体12a、ファン12b等を有する。上記配管14は熱交換器本体12aに接続されており、上記冷却液とリターン空気が熱交換器本体12aを通過することで両者の間で熱交換が行われる。また、ファン12bによって、上記リターン空気を熱交換器12に流入させると共にエアハンドリングユニット1に向けて排出するという空気の流れを形成する。
【0050】
上記外気熱交換システムにおける消費電力は、上記熱交換器12のファン12aと、ポンプ13と、上記空冷熱交換器11の後述するファン11bの各消費電力の合計であると見做してよい。
【0051】
上記のように、上記リターン空気は、まず熱交換器12を通過することで上記冷却液との熱交換によって(基本的には)冷却されて温度低下する。よって、エアハンドリングユニット1には、温度低下されたリターン空気が、流入することになる。よって、エアハンドリングユニット1における所定温度(設定温度)の冷気生成の為の負担が軽減されることになり、省エネ化が図れる。
【0052】
しかしながら、外気熱交換システムによるリターン空気の冷却性能は、外気温度によって左右され、基本的には外気温度が高くなるほど冷却性能が低下する。そして、外気温度がある程度以上高くなると、外気熱交換システムが実質的に機能しなくなる。これに対して従来より、上記空冷熱交換器11のような屋外熱交換器に対して、外気に霧化水を供給することで外気を温度低下させることが行われている。図2には、この様な空冷熱交換器11の構成の一例を示すと共に、本手法による制御に係る構成を示している。そして、この制御の一例を、図3のフローチャート図に示している。
【0053】
まず、図2を参照して外気熱交換システムの詳細構成について説明する。
図2において、まず、上記空冷熱交換器11は、熱交換器本体11a、ファン11b等を有しており、更に霧化器27等を備えている。尚、空冷熱交換器11を空冷熱交換ユニットと呼び、熱交換器本体11aを熱交換器と呼ぶものとしてもよい。また、上記空冷熱交換器11は、更に、図示の制御装置30も有するものと見做すこともできる。これは、例えば、制御装置30が、外気熱交換システム全体ではなく、空冷熱交換器11のみを制御する構成である場合に、制御装置30も空冷熱交換器11の一部と見做すことができるものであるが、この例に限らない。
【0054】
まず、ファン11bによって、外気が空冷熱交換器11の筐体内を図示の太線矢印で示すように通過する空気の流れが形成される。すなわち、外気は、筐体内に吸気されて、まず霧化器27を通過し、続いて熱交換器本体11aを通過し、その後、排気される。尚、外気は、図示のように、筐体内に吸気する直前では“給気”、霧化器27を通過後では“冷風”、筐体から流出させる段階(熱交換器本体11aを通過後)では“排気”と呼ぶものとする。外気の温度は、基本的には、“給気>冷風”となる。尚、「給気」は例えば「吸気」または「吸気された外気」等に置き換えても良い。
【0055】
霧化器27に対しては、水管29を介して水が供給されており、霧化器27においてこの水が霧状になって周囲に散布される。その際、上記“給気”(吸気される外気)が通過することで、“給気”に対して霧化水が供給される。これは、既に従来技術で説明した通り、霧化した水の気化熱を利用することによって外気を冷却するものであり、上記“給気”の温度が低下して(湿度は上がる)“冷風”となって、この“冷風”が後段(外気の流れの下流側)の熱交換器本体11aに供給されることになる。
【0056】
尚、水管29上にはコントロール弁28が設けられおり、コントロール弁28の弁開度を調整することで霧化器27に対する水の供給量を調整でき、以って外気(給気)に対する霧化水の供給量を調整することができる。また、コントロール弁28の弁を閉じれば、霧化を停止することになる。この様な、コントロール弁28の制御は、後述する制御装置30が実行する。
【0057】
ここで、上記熱交換器本体11aは上記配管14に接続しており、これより熱交換器本体11a内には上記冷却液が通過する。また、熱交換器本体11aには上記“冷風”が供給されて当該“冷風”も通過する。これによって、熱交換器本体11aにおいて“冷風”と冷却液との間で熱交換が行われ、基本的には“冷風”によって冷却液が冷却される。これより、“冷風”は温度上昇して“排気”となって排出される。
【0058】
この様に、たとえ外気(給気)温度が高い状況(例えば夏季等)であっても(例えば外気温度が、熱交換器本体11aに流入する冷却液の温度よりも高い状況であっても)、霧化器27によって流入外気(給気)を実質的に冷却することができ、熱交換器本体11aにおいて当該冷却後の外気(上記“冷風”)によって冷却液を冷却することが可能となる。
【0059】
基本的には、霧化器27による霧化水供給量が多くなるほど外気(給気)の冷却効果が大きくなり上記“冷風”の温度が下がることになる。しかし、当然、霧化水供給量が多くなるほど冷風の湿度が高くなることになり、霧化水供給量を増やしていけば何れは飽和状態となる。既に述べたように、外気(冷風)が飽和状態になると、熱交換器本体11a表面等に結露が生じることになり、上述した問題が生じることになる。従って、霧化水による外気の冷却効果を維持しつつ(特に外気(冷風)温度を出来るだけ低くしつつ)飽和状態とならないように、霧化器27による霧化水の供給量(霧化量)をコントロールすることが望まれる。
【0060】
本例では、この様なコントロールを図示の制御装置30が行う。制御装置30は、図示の各種センサ(温度計、湿度計、電力計等)の計測データを入力して、これに基づいて後述する図3のフローチャートの処理によって霧化器27による霧化量をコントロールする。
【0061】
ここで、まず、上記各種センサについて、図2を参照して説明する。
図2に示すように、上記空冷熱交換器11に対して、温度計21、湿度計22、温度計23、温度計24、電力計25、電力計26が設けられている。尚、本手法の制御に関しては、温度計24、電力計25、及び電力計26は、必ずしも必要ないものである。但し、これらは特に説明しない他の制御で必要であるので、図示している。
【0062】
温度計21は、外気の吸気時の温度(上記“給気”の温度))を計測する温度計である。湿度計22は、外気の吸気時の湿度(上記“給気”の湿度))を計測する湿度計である。温度計23は、上記“冷風”の温度、すなわち霧化器27を通過後(霧化水を供給後)の外気の温度を計測する温度計である。温度計24は、上記“排気”の温度を計測する温度計である。
【0063】
また、上記電力計25は、ファン11bの消費電力を計測する電力計である。上記電力計26は、上記配管14上に設けられるポンプ13の消費電力を計測する電力計である。
そして、更に、ファン11bの回転数を制御する回転数制御装置40と、外気熱交換システム全体を制御する制御装置30とが設けられている。
【0064】
制御装置30は、演算器31、入力インタフェース32、出力インタフェース33等を有する。
演算器31は、CPU、メモリ等を有する演算処理ユニットである。メモリ(不揮発性メモリ)には、予め所定のアプリケーションプログラム等が記憶されており、CPUは、メモリからアプリケーションプログラムを読出し・実行することで、外気熱交換システム全体を制御する。ここでは、特に後述する図3に示すフローチャート図の処理を実行するものである。
【0065】
演算器31は、入力インタフェース32を介して、上記温度計21、温度計23、温度計24で計測した各段階における外気温度(上記“給気”温度、“冷風”温度、“排気”温度)や、上記湿度計22で計測した上記“給気”の湿度や、上記電力計25、26で計測したポンプ13、ファン11bの消費電力等を入力する。但し、本手法に関しては、“給気”の温度・湿度と“冷風”の温度を入力すればよい。尚、これらの温度は乾球温度を意味する。尚、湿度計22の代わりに、湿球温度を計測する湿球温度計を設けるようにしてもよい。
【0066】
また、演算器31は、出力インタフェース33を介して、上記コントロール弁28の制御(その弁の開閉や弁開度の調整制御)を行う。また、演算器31は、出力インタフェース33を介して、上記回転数制御装置25に対して制御信号を送信することで、回転数制御装置25にファン11bの回転数を制御させる。
【0067】
以下、図3のフローチャート図を参照して、上記制御装置30(その演算器31)によって実行される処理例について説明する。
図3において、演算器31は、まず、上記温度計21、湿度計22によって計測される外気(給気)の温度(乾球温度)、湿度を、入力インタフェース32を介して入力・取得する(ステップS1)。そして、取得した外気温度、湿度に基づいて、外気(給気)の湿球温度を求める(ステップS2)。この湿球温度の求め方は、既存のものであり、ここでは特に詳細には説明しないが、後に簡単に説明する。
【0068】
尚、湿球温度を計測する温度計(一般的には、乾球温度も測定できる、所謂“乾球湿球温度計”が用いられる)が存在するので、これを上記温度計21及び湿度計22の代わりに設ける場合には、ステップS1で外気の乾球温度・湿度を測定する代わりに外気の乾球温度・湿球温度を測定すれば済むので、ステップS2の処理は必要なくなる。
【0069】
次に、上記温度計23の計測値を取得する(ステップS3)。これは、上記の通り、“冷風”温度、すなわち霧化器27を通過後(霧化水を供給後)の外気の温度(乾球温度)(換言すれば、熱交換器本体12aに流入する手前の外気の温度(乾球温度))を、測定するものである。
【0070】
そして、まず、ステップS1で測定した外気(給気)の乾球温度が、予め設定されている所定値(霧化停止温度設定値と呼ぶ)未満であるか否かを判定する(ステップS4)。そして、外気温度(給気の乾球温度)が霧化停止温度設定値未満である場合には(ステップS4,YES)、霧化水供給を停止する(ステップS5)。すなわち、コントロール弁28の弁を閉じることで、霧化器27への水の供給を停止する。そして、例えばステップS1の処理に戻る。
【0071】
ここで、課題で説明したように、外気温度が氷点下以下の状況では、霧化水が氷結する為、様々な問題が生じる。これを防ぐ為に、例えば霧化停止温度設定値を0℃とすることで、外気温度が氷点下となった場合には、霧化水供給を停止する。これによって上述した問題、すなわち霧化水による外気の冷却効果を維持できないばかりか熱交換器表面に霧化水の氷が付着する事態を防止できる。すなわち、上述したように、外気温度が氷点下以下の状況では、霧化水が氷結する為、霧状水分の蒸発による外気の冷却効果が得られないだけでなく、熱交換器表面に氷が付着し更に溶解し、熱交換器が濡れてしまう可能性があった。熱交換器が濡れた場合、上述した伝熱効果が低下するなどの問題が生じることになる。本手法では、上記ステップS4,S5の処理によって、この様な問題が生じないようにできる。
【0072】
一方、外気温度(給気の乾球温度)が霧化停止温度設定値以上である場合には(ステップS4,NO)、続いて、冷風温度(上記“冷風”の乾球温度)が、上記ステップS2で求めた外気(給気)の湿球温度以下(冷風温度−外気湿球温度≦0)であるか否かを判定する(ステップS6)。この判定結果がYESの場合、すなわち「冷風温度−外気湿球温度≦0」である場合には、霧化水量を減少させるものとし、ステップS7〜S10の処理を実行する。一方、ステップS6の判定結果がNOの場合、すなわち「冷風温度−外気湿球温度>0」である場合には、霧化水量を増加させるものとし、ステップS11〜S14の処理を実行する。
【0073】
尚、ステップS6の処理は、例えば「冷風温度−外気湿球温度=0」(つまり飽和状態)であるか否かを判定する処理としてもよい。現実には「冷風温度−外気湿球温度<0」の状態になることは考えられないからである(但し、計算上は計測誤差等がある為に起こり得る)。
【0074】
ここで、上記ステップS6の判定結果に応じて霧化水量の増減を決定することについて、図4を参照して説明する。
図4は、湿り空気線図である。
【0075】
湿り空気線図自体は、よく知られたものであり、ここでは特に説明しないが、図示の通り、縦軸は絶対湿度、横軸は乾球温度となっている。
そして、ステップS1で測定した外気(給気)の温度(乾球温度)・湿度に応じて図示の外気温度・湿度測定点が決まるが、この測定点に基づいて飽和状態を求めると、例えば図示の飽和線上の丸の位置が求まる。この丸の位置に対応する乾球温度が、「外気の湿球温度」となる。
【0076】
従って、図示の例の外気(給気)に対して霧化水を供給して上記“冷風”を飽和状態とした場合、上記温度計23によって計測される上記“冷風”の乾球温度を計測すると、この計測値は図4に示す「外気の湿球温度」の値となるはずである。このとき「冷風温度−外気湿球温度=0」となるはずであり、上記ステップS6の判定はYESとなり、霧化水量を減少させることで、飽和状態を解消することになる。この様に一時的に飽和状態になったとしても直ちにそれを解消することで、熱交換器本体11a表面に結露が生じる可能性は、非常に低いものとなることが期待できる。
【0077】
一方で、上記温度計23によって計測される上記“冷風”の乾球温度は、図示の外気温度・湿度測定点に対応する乾球温度(つまり温度計21で計測した外気(給気)の乾球温度)と上記「外気の湿球温度」との間における任意の値となる。基本的には、霧化水の供給量が多くなるほど、“冷風”の乾球温度は低下していくことになる(勿論、湿度は上昇していく)。そして、既に述べた通り、“冷風”の乾球温度は出来るだけ低いことが望ましい。但し、勿論、結露が生じないことが条件となる。
【0078】
これより、上記図3の処理のように、“冷風”が飽和状態になっていると見做せるときには霧化水の供給量を減少させるが、“冷風”が未だ飽和状態になっていないならば霧化水の供給量を増加させることで、霧化水による外気の冷却効果を維持しつつ(特に外気(冷風)温度を出来るだけ低くしつつ)飽和状態とならないように、霧化器27による霧化水の供給量(霧化量)をコントロールすることができる。
【0079】
換言すれば、制御装置30は、霧化水が供給された外気(冷風)によって(熱交換器本体11a表面に)結露が生じないようにしつつ、冷風の乾球温度を給気の湿球温度に(出来るだけ)近づけるように(外気の温度を出来るだけ低下させるように)、霧化器27による霧化水の供給量を調整制御する。
【0080】
図3に示す処理を定周期で繰り返し実行すること等によって、“冷風”の乾球温度が、図示の「外気の湿球温度」よりも大きい状態では、霧化水量を徐々に増加させていくことで、“冷風”の乾球温度は図示の「外気の湿球温度」に徐々に近づいていくことになる。
【0081】
そして、“冷風”の乾球温度が、図示の「外気の湿球温度」と同じ値となった場合若しくは「外気の湿球温度」未満となった場合には(「冷風温度−外気湿球温度≦0」となった場合)、霧化水量を減少させることで、結露発生(熱交換器本体12aの表面に結露が発生する等)を防止する。
【0082】
但し、図3に示す処理では、上述した何らかの不測の事態による問題にも対応できるようにしている。すなわち、上述したように、外気が実際には十分に冷却されているにも係らず(あるいは結露しそうな状態であるにも係らず)、センサ故障等(特に温度計23の故障)の為に外気冷却が不十分である(あるいは未だ結露しない)と誤判定され、その結果、霧化量が過剰になる場合があった。あるいは、その逆に、霧化量が少なくなり過ぎる(極端な話‘0’になってしまう。つまり、霧化器が停止してしまう)可能性もあった。
【0083】
後述する霧化水が氷結してしまうような状況や結露が発生する状況は除くが、基本的には如何なる状況であっても霧化器は停止せずに、最低限の霧化水の供給は行うようにすることが望まれる。
【0084】
この様な問題に対応する為に、図3の処理では、霧化水量に関して予め任意の上限値、下限値(開発者等が適宜決定しておく)を設定しておき、霧化水量がこれら上限値/下限値を越えないように制御している。
【0085】
尚、ステップS4,S5,S8,S9,S12、S13の処理は、必ずしも必要ないものである。ステップS4,S5,S8,S9,S12、S13の処理が全て無くてもよいし、一部が無くてもよい。例えばステップS4,S5のみが無くてもよいし、あるいはステップS8,S9,S12、S13のみが無くても良い。
【0086】
以上、図3におけるステップS6以降の処理の意味について説明した。
再び図3の説明に戻る。
ここで、霧化水量の増減に関しては所定の増減量Jが予め決められており、霧化水量を増加する場合も減少する場合も、この所定量Jの分だけ増加または減少させる。
【0087】
そして、まず、ステップS6の判定がYESの場合、すなわち霧化水量を減少させる場合について説明する。この場合は、まず減少後の霧化水量を算出する。これは、上記所定量Jを用いて以下の式により算出する(ステップS7)。
【0088】
新たな霧化水量=現在の霧化水量−J
そして、上記新たな霧化水量の計算値が、上記予め設定されている下限値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。計算値が下限値未満であるならば(ステップS8,NO)、下限値を新たな霧化水量に設定して、これを用いてコントロール弁28の弁開度制御を行う(ステップS9)。一方、計算値が下限値以上であるならば(ステップS8,YES)、計算値を新たな霧化水量に設定して、これを用いてコントロール弁28の弁開度制御を行う(ステップS10)。
【0089】
次に、ステップS6の判定がNOの場合、すなわち霧化水量を増加させる場合について説明する。この場合は、まず増加後の霧化水量を算出する。これは、上記所定量Jを用いて以下の式により算出する(ステップS11)。
【0090】
新たな霧化水量=現在の霧化水量+J
そして、上記新たな霧化水量の計算値が、上記予め設定されている上限値以下であるか否かを判定する(ステップS12)。計算値が上限値以下ではないならば(ステップS12,NO)、上限値を新たな霧化水量に設定して、これを用いてコントロール弁28の弁開度制御を行う(ステップS13)。一方、計算値が上限値以下であるならば(ステップS12,YES)、計算値を新たな霧化水量に設定して、これを用いてコントロール弁28の弁開度制御を行う(ステップS14)。
【0091】
尚、上記実施例の説明では、上記冷凍サイクル等による一般的な空調システムと外気熱交換システムとから成る外気利用空調システムを一例にして、外気熱交換システムにおける屋外熱交換器(空冷熱交換器)を例にして説明したが、本発明の適用対象はこの例に限らない(既に説明済みである)。上記特許文献2等の従来技術にも記載の通り、外気に霧化水を供給するのは、上記一般的な空調システムの屋外熱交換器であっても構わない(勿論、空冷熱交換器であることが条件となる)。
【0092】
この様に、本発明の適用対象は、外気によって冷却水や冷媒等を冷却する屋外熱交換器を有する空調システムであればなんでもよい。この空調システムは、例えば、上記外気利用空調システムや冷凍サイクルによる空調システムや外気熱交換システム等であり、冷凍サイクルによる空調システム単独の構成や外気熱交換システム単独の構成であってもよい。尚、外気熱交換システムは、通常は冷凍サイクルによる空調システムに対して追加されて補助的な役割を果たすものであるが、外気熱交換システム単独の構成とすることも有り得る。また、例えば外気利用空調システムにおいて、冷凍サイクルによる空調システムと外気熱交換システムの両方に「外気によって冷却水や冷媒等を冷却する屋外熱交換器」が存在する場合には、両方に本手法を適用してもよいし、どちらか一方のみに本手法を適用してもよい。
【0093】
以上説明したように、本手法によれば、霧化水を含んだ外気によって屋外熱交換器における冷却を行う空調システムに関して、屋外熱交換器表面が結露しない範囲で水を霧化してその気化熱で外気を予め冷却することで、外気の冷却効果を維持しつつ(特に霧化水による冷却後の外気の温度(冷風の温度)を出来るだけ低くしつつ)伝熱性能維持と腐食防止を図ることができる。あるいは不測の事態による霧化量が過剰になる事態を防止できる。または、熱交換器表面に霧化水の氷が付着する事態を防止できる
尚、最後に、上記ステップS2の湿球温度計算について簡単に説明しておく。
【0094】
ここでは、まず、乾球温度と湿球温度が分かっている場合における湿度(相対湿度)の算出方法について説明する。すなわち、この場合、湿度Hは、t’=湿球温度、t=乾球温度として、以下の算出式により算出される。
【0095】
湿度H(Humidity %)=(e/E(t))×100
e=E’(t’)−0.0008×P×(t−t’)
但し、
E(t);気温t(乾球温度;例えば30℃)における飽和水蒸気圧。
【0096】
e;実際の大気中の水分量(実際の水蒸気圧)。
P;大気圧。
E’(t’);湿球温度t’における飽和水蒸気圧。
【0097】
尚、上記飽和水蒸気圧E(t)、E’(t’)は、よく知られている飽和水蒸気圧の算出式(例えばSonntagの式;ここでは特に示さない)によって算出できる。
ここで、単純な計算例を示す。仮に、大気圧P=1気圧、気温(乾球温度)t=30℃、湿球温度t’=25℃とする。
【0098】
この例では、上記「0.0008×P×(t−t’)」は0.004となる。また、上記飽和水蒸気圧の算出式によって、E’(t’)=0.031222、E(t)=0.04183が得られる。従って、H={(0.031222−0.0008)/0.04183}×100≒65(%)が得られる。
【0099】
ここで、ステップS2の計算に関しては、湿度Hと乾球温度tが分かっているので、上記の計算式を利用することで、湿球温度t’が算出できる。すなわち上記湿度Hの算出式を変形すると、以下の式が得られる(尚、P=1とする)。
【0100】
{(E(t)・H)/100}+0.008t=E’(t’)+0.008t’
そして、Hとtは分かっているので、E(t)も求めることができ、仮にH=65、t=30とするならばE(t)=0.04183であるので、上記の式の左辺の値が、以下のように求まる。
【0101】
{(E(t)・H)/100}+0.008t
={(0.04183×65)/100}+0.24≒0.267
従って、以下の式が得られることになる。
【0102】
E’(t’)+0.008t’=0.267
そして、t’の値を順次変えながら(例えば、t’=18,19,20、・・・32,33,34等)、上記式の左辺(E’(t’)+0.008t’)を計算して、計算結果を一時的に記憶し、最も右辺(=0.267)に近い計算結果の計算に用いたt’の値を、解として出力する。
【0103】
但し、この様に逐一計算する必要は無く、開発者等が予め乾球温度・絶対湿度と湿球温度との対応関係を示すテーブルを作成して、これを記憶しておくようにしてもよい。よく知られているように、当業者等は通常は、空気線図を参照して、乾球温度・絶対湿度とから湿球温度を判断している。よって、当業者が、任意の乾球温度と絶対湿度との組み合わせ毎に、空気線図を参照して対応する湿球温度を判断して、この湿球温度を上記テーブルに設定していく作業を予め行うことで、上記テーブルを予め作成して、例えば上記演算器31の不図示のメモリ等に当該テーブルを記憶しておく。
【0104】
そして、上記ステップS2の処理では、計算する代わりに、この様な記憶してある不図示の対応関係表(テーブル)を参照することで、測定した乾球温度・絶対湿度に対応する湿球温度を求めることができる。尚、この場合、湿球温度は正確な値ではなく近似値となると考えられるが、特に問題はない。
【符号の説明】
【0105】
1 エアハンドリングユニット
1a 蒸発器
1b ファン
2 冷媒管
11 空冷熱交換器
11a 熱交換器本体
11b ファン
12 熱交換器
12a 熱交換器本体
12b ファン
13 ポンプ
14 配管
21 温度計
22 湿度計
23 温度計
24 温度計
25 電力計
26 電力計
27 霧化器
28 コントロール弁
29 水管
30 制御装置
31 演算器
32 入力インタフェース
33 出力インタフェース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設けられ外気の吸気と排気を行うファンと外気と冷媒または冷却液との熱交換を行わせる熱交換器とを有する空冷熱交換ユニットを有する空調システムであって、
吸気された外気に対して霧化水を供給する霧化器と、
該霧化器による霧化水量を制御する制御装置とを有し、
該制御装置は、
前記霧化器によって霧化水を供給する前の前記外気の湿球温度を求める湿球温度取得手段と、
前記霧化器によって霧化水が供給された後の前記外気の乾球温度を測定する乾球温度測定手段と、
前記乾球温度と前記湿球温度とに基づいて、前記霧化水が供給された前記外気によって結露が生じないようにしつつ前記乾球温度を前記湿球温度に近づけるように、前記霧化器による前記霧化水量を調整制御する霧化水量制御手段と、
を有することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記霧化水量制御手段は、前記乾球温度が前記湿球温度以下である場合には前記霧化器による前記霧化水量を減少させ、前記乾球温度が前記湿球温度より高い場合には前記霧化器による前記霧化水量を増加させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の空調システム。
【請求項3】
前記霧化水量制御手段は、前記霧化水量を減少させる場合には、現在の霧化水量に対して予め設定される所定値を減算することで新たな霧化水量の計算値を求め、該計算値が予め設定される下限値未満の場合には該下限値を新たな霧化水量として適用し、該計算値が前記下限値以上の場合には該計算値を新たな霧化水量として適用することを特徴とする請求項2記載の空調システム。
【請求項4】
前記霧化水量制御手段は、前記霧化水量を増加させる場合には、現在の霧化水量に対して予め設定される所定値を加算することで新たな霧化水量の計算値を求め、該計算値が予め設定される上限値以下の場合には該計算値を新たな霧化水量として適用し、該計算値が前記上限値を越える場合には該上限値を新たな霧化水量として適用することを特徴とする請求項2または3記載の空調システム。
【請求項5】
前記霧化器によって霧化水を供給する前の外気の乾球温度と、予め設定される、前記霧化水が氷結する温度に対応する所定の閾値とを比較して、該乾球温度が該所定の閾値未満となった場合には、前記霧化器による霧化を停止することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空調システム。
【請求項6】
屋外に設けられ外気の吸気と排気を行うファンと外気と冷媒または冷却液との熱交換を行わせる熱交換器とを有する空冷熱交換ユニットであって、
吸気された外気に対して霧化水を供給する霧化器と、
該霧化器による霧化水量を制御する制御装置とを有し、
該制御装置は、
前記霧化器によって霧化水を供給する前の前記外気の湿球温度を求める湿球温度取得手段と、
前記霧化器によって霧化水が供給された後の前記外気の乾球温度を測定する乾球温度測定手段と、
前記乾球温度と前記湿球温度とに基づいて、前記霧化水が供給された前記外気によって結露が生じないようにしつつ前記乾球温度を前記湿球温度に近づけるように、前記霧化器による前記霧化水量を調整制御する霧化水量制御手段と、
を有することを特徴とする空調システムの屋外空冷熱交換ユニット。
【請求項7】
屋外に設けられ外気の吸気と排気を行うファンと、吸気された外気に対して霧化水を供給する霧化器と、該霧化器によって霧化水が供給された後の外気と冷媒または冷却液との熱交換を行わせる熱交換器とを有する空冷熱交換ユニットを有する空調システムの制御装置であって、
前記霧化器によって霧化水を供給する前の前記外気の湿球温度を求める湿球温度取得手段と、
前記霧化器によって霧化水が供給された後の前記外気の乾球温度を測定する乾球温度測定手段と、
前記乾球温度と前記湿球温度とに基づいて、前記霧化水が供給された前記外気によって結露が生じないようにしつつ前記乾球温度を前記湿球温度に近づけるように、前記霧化器による前記霧化水量を調整制御する霧化水量制御手段と、
を有することを特徴とする空調システムの制御装置。


【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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