説明

空調システム用に好適な改善された接続部を備える管

空調システム用管1が、硬質パイプ2と、高分子材料の少なくとも一つの層を具備するフレキシブルパイプ3と、硬質パイプ2をフレキシブルパイプ3に固定する接続手段4と、シール14とを具備し、接続手段4は、硬質パイプ2に固定されるベル要素13を具備しており、ベル要素13は、フレキシブルパイプ3の第1端部6を硬質パイプ2の第2端部5の上に閉じるように塑性変形可能であり、シール14は、第1端部6と第2端部5との半径方向の間に配置された管状本体20と、第1端部6とベル要素13との軸方向の間に配置されたフランジ21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の流体回路の管の接続部に関するものであり、例えば、空調システムの金属パイプ及び高分子材料のパイプを接続するための接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子材料のパイプは、ベルによって金属パイプに接続されることがあり、前記ベルは、高分子材料のパイプの端部を金属パイプの端部の周囲に押圧するべく塑性変形される。
【0003】
例えば冷媒ガスのようなガスの漏れを防止する封止性を高めるために、例えばO−リングのような少なくとも一つのドーナツ形のガスケットを、高分子材料のパイプの端部と金属パイプの端部との間で、金属パイプの端部に適切に形成された座の中に挿入することが知られている。特に、高分子材料のパイプは、高硬度を有するバリア材料の内層を具備しており、前記内層は、ガスの封止が適切であるように、この内層と金属パイプの端部との間に介装されるガスケットの使用を必要とするようなものである。
【0004】
金属管の端部が生産コストを低減するために塑性変形によって加工された場合には、ドーナツ形ガスケットの座は、最適な封止性が保証されないように形成される。特に、座は90°の側面または最少のすくい角の側面を有さず、これは、ドーナツ形ガスケットが最適な状態で働かないこと、又は高分子材料のパイプが金属パイプの端部に取り付けられたときにガスケットがその座から外へ出ることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上で明記された欠点のない、高分子材料の少なくとも一つの層を具備する部分に接続された金属部分を具備する管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1に記載の管によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、その非限定的実施形態を示す添付の図面を参照してここで説明される。
【図1】本発明による管の部分の縦断面図であり、フレキシブルパイプが、わかりやすくするために除去された縦断面である。
【図2】図1の部分による管の縦断面図であり、硬質ダクトとフレキシブルパイプの両方が示された管の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1において、参照符号1は自動車の空調回路用の管を全体として示しており、前記管は、金属ダクト2と、柔軟な高分子材料のダクト3(図2)と、前記ダクト2を前記ダクト3に封止接続、特にガス封止接続するための接続手段4とを具備している。
【0009】
金属ダクト2は、好適には塑性変形工程によって輪郭形成された端部5であって、高分子材料のダクト3の端部6のための支持部、及び接続手段4のための固定部材の両方を形成する端部5を具備する。
【0010】
端部5は、軸方向に沿って進行する以下の順序で、当接部7,環状ボス8,波形部9,及びフレア部10を具備する。少なくとも、環状ボス8、波形部9、及びフレア部10は、塑性変形のみによる加工を可能にするように、金属ダクト2の最大直径よりも小さな最大直径を有する。
【0011】
端部5は、当接部7と環状ボス8との間の環状溝11,及び環状ボス8と波形部9との間の凹部12をさらに形成している。環状溝11は、接続手段4のベル13を端部5に固定し、凹部12は接続手段4のシール14を収容する。
【0012】
ベル13は、穴を形成すると共に環状溝11内に収容される頭部15と、端部5及び端部6を少なくとも部分的に取り囲むように頭部15から軸方向に突出している側壁16とを具備する。ベル13は金属材料から作られていて、端部6を端部5に押し付ける半径方向荷重を加えることによって変形させられる。
【0013】
特に、側壁16は、軸方向にそれぞれ離間された第1凹部17、第2凹部18および第3凹部19であって、ベル13をフレキシブルダクト3に固定する側壁16の塑性変形工程の圧痕であることを表す第1凹部17、第2凹部18および第3凹部19を軸方向に頭部15から順番に有する。好適には、凹部17が、凹部18及び/又は凹部19の最小の直径に対して大きい、フレキシブルダクト3との接触表面上で測定された最小の直径を有するように、塑性変形工程が調節される。さらに好適には、凹部18の最小の直径は、凹部17及び凹部19のそれぞれの最小の直径に対して中間にあることである。
【0014】
シール14は、少なくとも部分的に凹部17に囲まれており、また管状本体20と管状本体20から半径方向に突出するフランジ21とを具備する。管状本体20は凹部12に収容されていて、少なくとも環状ボス22を一体的に形成している。環状ボス22は、高分子材料のパイプの端部6に接触するように、側壁16に好適に向き合っており、また環状ボス22は、環状ボス22を圧縮してガス封止箇所を形成するために、凹部17の領域内に働く半径方向固定圧力が端部6の壁をとおして管状本体20に伝達されるような軸方向レベルで凹部17に対して配置されている。
【0015】
同じ理由で、フランジ21は、環状ボス8の最大半径方向寸法より大きい最大半径方向寸法を有し、また環状ボス8は、フランジ21と管状本体20との間に形成された対応する押広げ部24に向かい合う面取り部23を形成する。さらに、環状ボス8の最大半径方向寸法は、頭部15と凹部17との間の領域内の側壁16の最小半径方向レベルよりも低い。さらに、環状チャンバ26が、軸方向では頭部15とフランジ21とによって及び半径方向では環状ボス8と側壁16とによって形成されるように、フランジ21の最大直径レベルは、頭部15と凹部17との間の範囲の領域内の側壁16の最小半径方向レベルより大きい。
【0016】
管状本体20の横の環状ボス8の軸方向反対側で、波形部9は、複数の環状リブ27を有するとともに、少なくとも部分的に凹部18によって囲まれるように軸方向に配置されている。
【0017】
フレア部10は、フレアリング部28と、波形部9とフレアリング部28との間に介在する円筒部29とを形成する。円筒部は、少なくとも部分的にベル13の凹部19に囲まれている。
【0018】
好適には、円筒部29、波形部9、及び管状本体20は、円筒部29から減少するそれぞれの最大直径、中間直径、及び最小直径を有する。さらに、組立前の未変形の構造形では、ボス22は、円筒部29の最大直径よりも大きい最大直径を有する。
【0019】
図2は、金属ダクト2を高分子ダクト3に固定する接続手段4により組み立てられた管1を示す。注目されるように、波形部9は、自動車業界の要求事項を満たすように、ダクト2とダクト3との間に軸方向の固着部を形成している。さらに、環状リブ27は、管1の外側に向かうガスの流れを遅くするようなラビリンスシールを形成する。
【0020】
側壁13が半径方向に変形されるとき、半径方向の圧力が、波形部に、及び前の段落で述べたように円筒部29及び管状本体20に集中する。円筒部29に対する圧力が別のガス封止箇所を形成する。管状本体20に対する圧力は、ガス封止箇所を形成して、端部6と管状本体20との間及び管状本体20と座12との間の両方からのガスの漏れを防止するように、環状ボス22を圧縮する。
【0021】
さらに、側壁16が圧縮されるときに、端部6の高分子材料が、軸方向に流れる傾向がある。これは、少なくとも部分的にフランジ21を前記チャンバ26内に押し出す荷重を生み出す。これにより変形されたフランジ21は、別のガス封止箇所を形成するように、主に面取り部23と、側壁16から半径方向のボスに向かって突出して環状チャンバ26を形成する当接部30とに対して押付けられる。特に、端部6の軸方向の変形に起因する押し出し中に、面取り部23は、シール14の変形が破壊荷重を越えるものではないように、シール14へ荷重を分配することに寄与する。これにより、押し出し後であっても、シール14は、ガス漏出の通路を形成しない連続体である。有利には、端部6の軸方向の変形は、フランジ21に対する端部6の変形を促進するような半径方向寸法を有する凹部17、18,19によって促進される。
【0022】
組立中に、管1の金属構成要素すなわち端部5とベル13、及び高分子材料の構成要素すなわち端部6とシール14は、任意選択的に、それぞれ同時に事前組立される。
【0023】
その後、シール14を保持する端部6が端部5に装着されて、最後に、凹部17、18,19を生み出すために半径方向荷重が側壁16に加えられる。好適には、半径方向荷重が、頭部15を環状溝11内に変形させて少なくとも半径方向の遊びを閉鎖するようにも加えられる。
【0024】
組立体が適切な機械的抵抗力を有するために、シール14は、ショアA硬さ80より高い硬さ、好適にはショアA硬さ約85の硬さを有し、またHNBR材料から好適に作られている。
【0025】
ここに開示されて示された管1の利点は次のとおりである。
【0026】
封止箇所は、冷媒ガスの封止性の要求事項を満足するようなものであり、また軸方向の引抜きに対する機械的抵抗力が保証される。
【0027】
特に、管1は、高分子材料のダクトが、ゴム層と、プリーツを備える補強層と、前記ゴム層より高い硬さを有するバリア層であって円筒部29及び波形部9及び管状本体20に接触して配置されるバリア層とを具備する多層であるとき、最良の封止性能及び機械的抵抗力の性能を有する。有利には、冷媒ガス封止システム及び特にシール14は、内側のバリア層が、比較的高い硬さに起因して、冷媒ガスに対する有効な封止を提供するほどには充分に端部5の周囲で変形されないことにより生じることがある特に漏出部を閉じるために着想されている。
【0028】
管1の組立は安全である、というのもシール14は可視的であり、従ってその起こり得る欠落は、端部6を端部5に組み付ける前に作業者によって検出される。さらに、ボス22が側壁16だけに向かい合っているとき、管状本体20は端部5に完全に付着しており、その結果フレキシブルダクト3の装着時にシール14がその座から外れることが防止される。この効果は、環状ボス8に対するフランジ21の接触によっても達成される。
【0029】
上で詳しく記した要求事項を確実にする端部5の幾何的形状は、単純であって、例えばロール成形のような費用効果のある塑性変形技法によって獲得されるようなものである。
【0030】
ここで開示されて示された管1が、添付された特許請求の範囲に記載された保護の範囲から逸脱することなく変更又は変形されてよいことは最終的に明らかである。
【0031】
座12の方に向いている、ボス22に同様の半径方向のボスを設けてよい。
【0032】
ベル13の頭部15は、環状ボス8に関して円筒部29の反対側で金属ダクト2に押圧されるカラーを形成することによって、形成され得る。この後者の場合、端部5が環状溝11を形成することは必要とされない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質パイプ(2)と、高分子材料の少なくとも一つの層を具備するフレキシブルパイプ(3)と、前記硬質パイプ(2)を前記フレキシブルパイプ(3)に固定する接続手段(4)とを具備する空調システム用管(1)であって、
前記接続手段(4)は、前記硬質パイプ(2)に固定されるベル要素(13)を具備しており、前記ベル要素(13)は、前記フレキシブルパイプ(3)の第1端部(5)を前記硬質パイプ(2)の第2端部(5)の上に閉じるように塑性変形可能であり、
前記第1端部(6)と前記第2端部(5)との半径方向の間に配置された管状本体(20)と、前記第1端部(6)と前記ベル要素(13)との軸方向の間に配置されたフランジ(21)とを具備するシール(14)を具備することを特徴とする、空調システム用管(1)。
【請求項2】
前記管状本体(20)が、少なくとも第1の環状ボス(22)を備えることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項3】
前記ベル要素(13)は、少なくとも一つの凹部(17)を形成する塑性変形可能な側壁(16)を具備しており、前記少なくとも一つの凹部(17)は、前記第1及び第2部分(6,5)を固定するために塑性変形によって得られ、且つ前記第1の環状ボス(22)の圧縮を生み出すような軸方向位置を有することを特徴とする、請求項2に記載の管。
【請求項4】
前記フランジ(21)に対する前記第1端部(6)の軸方向の変形を促進するために、前記側壁(16)が、前記少なくとも一つの凹部(17)の半径方向最小寸法より小さい半径方向最小寸法を有する少なくとも第2の凹部(18;19)を形成することを特徴とする、請求項3に記載の管。
【請求項5】
前記フランジ(21)は、前記第2端部(5)が有する第2環状ボス(8)によって形成された面取り部(23)に向き合う押広げ部(24)を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の管。
【請求項6】
前記接続手段(4)が、前記フランジ(22)の部分を少なくとも部分的に収容するキャビティ(26)を形成すること、及び前記チャンバ(26)が前記ベル要素(13)と前記面取り部(23)との軸方向の間に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の管。
【請求項7】
前記側壁(16)から前記第2端部(5)の方へ突出して前記キャビティ(26)に半径方向の境界を定める当接部(30)に対して前記フランジ(22)が圧力を加えることを特徴とする、請求項6に記載の管。
【請求項8】
前記シール(14)が、ショアA硬さ80を超えるショアA硬さを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の管。
【請求項9】
前記第2端部(5)が塑性変形加工によって得られたものであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の管。
【請求項10】
内燃機関を具備する車両用の空調システムであって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の管を具備する空調システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513767(P2013−513767A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542634(P2012−542634)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003192
【国際公開番号】WO2011/070437
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512151241)ダイテック−ダイナミック フルイド テクノロジーズ ソチエタ ペル アツィオニ (1)
【Fターム(参考)】