説明

空調システム

【課題】室内での熱中症を予防する空調システムを提供する。
【解決手段】空調システム(10)は、時間帯予測部(81)、電力量推定部(85)、及び切換制御部(87)を備えている。時間帯予測部(81)では、蓄電池(40)の充電前に、室内の熱中症指数が所定値よりも高くなる時間帯が予測される。電力量推定部(85)では、蓄電池(40)の充電前に、その予測された時間帯を通して室内の熱中症指数を上記所定値以下にするのに必要な空調機(20)の必要電力量が推定される。切換制御部(87)では、蓄電池(40)の蓄電量がその推定された必要電力量以上になるように、蓄電池(40)の充電制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機と蓄電池を備えた空調システムに関し、特に、停電時の熱中症対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調機と蓄電池を備えた空調システムが知られている。例えば、特許文献1に開示の空調システムは、空調機が商用電源と蓄電池に接続されている。この空調システムでは、万が一停電(または計画停電)によって商用電源からの電力供給が遮断されても、蓄電池に蓄電された電力を空調機へ供給して、空調機を運転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−072262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、夏季の猛暑日等において熱中症の発生件数が増大傾向にある。この熱中症は、室外よりも室内での発生率が高く、特に高齢者(例えば65歳以上)は、室内での熱中症の発生率が極めて高い傾向にある。そのため、熱中症にかかり易い時間帯(例えば昼間)に室内を空調して、室内での熱中症を予防することが望まれている。
【0005】
しかし、従来の空調システムでは、停電が起きた際に、蓄電量が十分に確保されていない場合があり、蓄電量不足によって、熱中症にかかり易い時間帯の最後まで室内を空調することができない事態が発生していた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、万が一停電(または計画停電)によって商用電源からの電力供給が停止されても、熱中症にかかり易い時間帯の最後まで空調を行って、室内での熱中症を確実に予防する空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、室内を空調する空調機(20)と、該空調機(20)へ電力を供給する蓄電池(40)とを備えた空調システムを対象としている。そして、この空調システムは、蓄電池(40)の充電前に、室内の熱中症指数が所定値よりも高くなる時間帯を予測する時間帯予測部(81)と、蓄電池(40)の充電前に、上記時間帯を通して室内の熱中症指数を上記所定値以下にするのに必要な上記空調機(20)の必要電力量を推定する電力量推定部(85)と、上記蓄電池(40)の蓄電量が上記必要電力量以上になるように、上記蓄電池(40)を充電させる蓄電量制御部(87)とを備えている。
【0008】
上記第1の発明では、蓄電池(40)の充電前に、室内の熱中症指数が所定値よりも高くなる時間帯が予測され、その時間帯を通して室内の熱中症指数を所定値以下にするための空調機(20)の必要電力量が推定される。この熱中症指数は、熱中症のかかり易さを示す指標である。よって、この空調システム(10)では、室内で熱中症にかかり易い時間帯が予測され、その時間帯中、室内を空調して熱中症を予防するための必要電力量が推定されることとなる。そして、この空調システム(10)では、蓄電池(40)の蓄電量がその推定された必要電力量以上になるように、蓄電池(40)が充電される。そのため、蓄電池(40)が充電されると、蓄電池(40)には、熱中症予防を考慮した空調を上記時間帯を通じて行うだけの蓄電量が確保される。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記時間帯予測部(81)では、外気温度及び外気湿度の予測値に基づいて室内の熱中症指数が導出されることを特徴とする。
【0010】
上記第2の発明では、外気温度及び外気湿度の予測値に基づいて室内の熱中症指数が予測される。そのため、外気の温湿度の変化に対応した精度の高い熱中症指数が得られる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記蓄電池(40)から電力が供給可能な上記空調機(20)と異なる電気機器(35,36,90)を備え、上記電力量推定部(85)は、上記時間帯に、該時間帯中の上記必要電力量から該時間帯の開始からの経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定し、上記蓄電量制御部(87)は、蓄電池(40)の蓄電量が上記残り時間の必要電力量よりも多い場合に、上記残り時間の必要電力量を上記空調機(20)用として確保すると共に、蓄電池(40)の蓄電量から上記残り時間の必要電力量を除いた余剰電力量を上記電気機器(35,36,90)用として確保することを特徴とする。
【0012】
上記第3の発明では、予測された熱中症にかかり易い(室内の熱中症指数が所定値より高い)時間帯の途中で、充電前に推定された上記必要電力量から経過時間分を減算して、残り時間の必要電力量が推定される。そして、蓄電量がその残り時間の必要電力量よりも多い場合は、その蓄電量が空調機(20)用と電気機器(35,36,90)用に分けられ、熱中症予防を考慮した空調を上記時間帯の最後まで行うための蓄電量が空調機(20)用として確保される。
【0013】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記時間帯において、室内の熱中症指数が室外の熱中症指数よりも高い場合に、室内外を換気する換気扇(36)を備えていることを特徴とする。
【0014】
上記第4の発明では、熱中症にかかり易い(室内の熱中症指数が所定値より高い)時間帯に、室内の熱中症指数が室外の熱中症指数よりも高くなると、換気扇(36)によって換気が行われる。そのため、室内を熱中症にかかりにくい環境(室内の熱中症指数を所定値以下)にするのに、換気扇(36)が寄与することとなり、空調機(20)の負担が軽減される。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記電力量推定部(85)は、上記時間帯に、該時間帯中の上記必要電力量から該時間帯の開始からの経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定し、上記蓄電量制御部(87)は、停電時において、蓄電池(40)の蓄電量が上記残り時間の必要電力量よりも少ない場合に、上記蓄電池(40)から上記空調機(20)へ電力の供給を停止させると共に、上記蓄電池(40)から上記換気扇(36)へ電力を供給させることを特徴とする。
【0016】
上記第5の発明では、予測された熱中症にかかり易い(室内の熱中症指数が所定値より高い)時間帯の途中で、充電前に推定された上記必要電力量から経過時間分を減算して、残り時間の必要電力量が推定される。そして、停電時に、蓄電池(40)の蓄電量がその残り時間の必要電力量よりも少なくなって、蓄電量不足になった場合に、蓄電池(40)から空調機(20)への電力の供給が停止され、代わりに、蓄電池(40)から換気扇(36)へ電力が供給される。換気扇(36)は、空調機(20)に比べて消費電力が小さい。そのため、
換気扇(36)を運転させた方が、空調機(20)を継続して運転させるよりも運転時間が長くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電池(40)の充電開始前に、室内で熱中症にかかり易い時間帯を予測し、その時間帯を通して室内を空調して熱中症を予防するための必要電力量を推定するようにした。そして、蓄電池(40)の蓄電量がその必要電力量以上になるように、蓄電池(40)を充電するようにした。これにより、必要な蓄電量を確保することができ、万が一停電が起きても、熱中症にかかり易い時間帯の最後まで熱中症を考慮した空調を行うことができる。そのため、室内での熱中症を確実に予防することができる。
【0018】
上記第2の発明によれば、外気温度及び外気湿度の予測値に基づいて、室内の熱中症指数を求めるようにした。そのため、外気の温湿度の変化に対応した精度の高い熱中症指数を得ることができ、それに伴って、蓄電池(40)に確保すべき必要電力量を精度良く求めることができる。その結果、室内での熱中症を一層確実に予防することができる。
【0019】
上記第3の発明によれば、予測された上記時間帯の途中で、その時間帯中の上記必要電力量から経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定するようにした。そして、蓄電池(40)の蓄電量がその残り時間の必要電力量よりも多い場合に、残り時間の必要電力量と同量の蓄電量を空調機(20)用として確保するようにした。そのため、万が一停電が起きても、その時間帯の最後まで熱中症予防を考慮した空調を行うことができる。また、この場合、蓄電池(40)の蓄電量から空調機(20)用の蓄電量を除いた残りの蓄電量(余剰電力量)も、電気機器A(35)用として確保するようにした。そのため、その電気機器(35,36,90)にも蓄電池(40)から電力を供給することができる。
【0020】
上記第4の発明によれば、熱中症にかかり易い時間帯になり、且つ、室内の熱中症指数が室外の熱中症指数よりも高い場合、換気扇(36)で室内外を換気するようにした。これにより、室内の熱中症指数を低下させるための空調機(20)の負担が軽減され、空調機(20)の消費電力を低減させることができる。
【0021】
上記第5の発明によれば、予測された上記時間帯の途中で、その時間帯中の上記必要電力量から経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定するようにした。そして、停電時に、蓄電量がその残り時間の必要電力量よりも少なくなった(蓄電量不足の)場合に、空調機(20)の稼動を停止し、代わりに、消費電力の比較的小さい換気扇(36)を稼動するようにした。そのため、空調機(20)を引き続き運転させる場合よりも、換気扇(36)の運転時間を長くでき、上記時間帯の終了前に、空調機(20)が突然停止して室内環境が急激に悪化する事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施形態1に係る空調システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る空調機の必要電力量の推定方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施形態1に係る室内温度及び室内湿度と室内のWBGT値との関係を示すテーブルである。
【図4】図4は、実施形態1に係る必要電力量の具体的な算出方法を説明するための説明図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る空調機の運転動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施形態1に係る空調機の目標温度となる室内温度の導出方法を説明するための説明図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る残り時間の必要電力量の推定方法を説明するためのグラフである。
【図8】図8は、実施形態2に係る空調システムの全体構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施形態2に係る給湯器の全体構成を示す構成図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る給湯器及び補助冷房室内機の全体構成を示す構成図である。
【図11】図11は、実施形態4に係る空調システムの全体構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、実施形態5に係る空調システムの全体構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、その他の実施形態に係る必要電力量の具体的な算出方法を説明するための説明図である。
【図14】図14は、その他の実施形態に係るWBGT値及び空調機の必要電力量の具体的な導出方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る空調システム(10)は、蓄電池(40)に蓄電された電力を空調機(20)へ供給して、空調機(20)を運転させるものである。
【0025】
〈空調システム(10)の全体構成〉
図1に示すように、空調システム(10)は、空調機(20)、電気機器A(35)、蓄電池(40)、電力切換回路(50)、分電盤(71)、逆潮流防止装置(72)、及びコントローラ(80)を備えている。この空調システム(10)では、空調機(20)と電気機器A(35)が、電力切換回路(50)を介して、蓄電池(40)と系統電力(5)にそれぞれ接続されている。
【0026】
空調機(20)は、系統電力(5)と蓄電池(40)の両方から電力が供給可能に構成されている。この空調機(20)は、室外に設置される室外ユニット(21)と、室内に設置される室内ユニット(22)とを有している。この室外ユニット(21)と室内ユニット(22)は、連絡配管(23)を介して互いに接続され、これにより、冷凍サイクルを行う冷媒回路が構成されている。室外ユニット(21)には、圧縮機、室外熱交換器、四方切換弁等が収容されている。そして、この圧縮機のモータを駆動させるインバータ回路(図示省略)に、電力切換回路(50)が接続されている。一方、室内ユニット(22)は、壁掛け式のルームエアコンを構成している。この室内ユニット(22)には、室内温度を検出するための温度センサ(24)と、室内湿度を検出するための湿度センサ(25)が取り付けられている。これら2つのセンサ(24,25)は、その検出値を後述する入力部(82)へ出力する。
【0027】
蓄電池(40)は、系統電力(5)から供給された電力を蓄電すると共に、その蓄電された電力を空調機(20)及び電気機器A(35)へ供給するものである。この蓄電池(40)は、交流/直流変換回路(41)と直流/交流変換回路(42)に接続されている。交流/直流変換回路(41)は、蓄電池(40)へ入力される交流電力を直流電力に変換する。一方、直流/交流変換回路(42)は、蓄電池(40)から出力される直流電力を交流電力に変換する。尚、本実施形態の蓄電池(40)は、リチウムイオン蓄電池であるが、ナトリウムイオン電池やニッケル水素電池等、他の種類の蓄電池(40)であっても構わない。
【0028】
電気機器A(35)は、系統電力(5)と蓄電池(40)の両方から電力が供給可能であり、本発明の電気機器を構成している。
【0029】
電力切換回路(50)は、電源側入力部(51)、蓄電側入力部(52)、蓄電側出力部(53)、空調機側出力部(54)、電気機器側出力部(55)、及び中間部(56)を有している。電源側入力部(51)、空調機側出力部(54)、及び電気機器側出力部(55)は、それぞれ系統電力(5)、空調機(20)、電気機器A(35)に接続されている。蓄電側入力部(52)は、交流/直流変換回路(41)を介して蓄電池(40)に接続され、蓄電側出力部(53)は、直流/交流変換回路(42)を介して蓄電池(40)に接続されている。中間部(56)は、電源側入力部(51)、蓄電側出力部(53)、空調機側出力部(54)、及び電気機器側出力部(55)を繋ぐ中間位置に設けられている。
【0030】
電力切換回路(50)には、第1スイッチ(61)、第2スイッチ(62)、第3スイッチ(63)、第4スイッチ(64)、及び第5スイッチ(65)が接続されている。第1スイッチ(61)は、電源側入力部(51)と蓄電側入力部(52)との間に接続されている。第2スイッチ(62)は、電源側入力部(51)と中間部(56)との間に接続されている。第3スイッチ(63)は、該中間部(56)と蓄電側出力部(53)との間に接続されている。第4スイッチ(64)は、該中間部(56)と空調機側出力部(54)との間に接続されている。第5スイッチ(65)は、該中間部(56)と電気機器側出力部(55)との間に接続されている。各スイッチ(61〜65)は、後述の切換制御部(87)からの制御信号に応じて、ON状態(図1の破線で示す導通状態)と、OFF状態(図1の実線で示す非導通状態)とに切り換わるように構成されている。
【0031】
分電盤(71)及び逆潮流防止装置(72)は、系統電力(5)と電力切換回路(50)の電源側入力部(51)との間に接続されている。分電盤(71)は、系統電力(5)からの電力を分配する。逆潮流防止装置(72)は、電力切換回路(50)側から系統電力(5)側への逆潮流を防止する。
【0032】
コントローラ(80)は、時間帯予測部(81)、電力量推定部(85)、及び切換制御部(87)を備えている。
【0033】
時間帯予測部(81)は、蓄電池(40)の充電開始前に、熱中症にかかり易い時間帯を事前に予測するものである。この時間帯予測部(81)は、入力部(82)、WBGT導出部(83)、及び時間帯導出部(84)を有している。
【0034】
入力部(82)は、ネットワーク(120)を介して、外気温度及び外気湿度の予測値を受信する。この外気温度及び外気湿度の予測値は、例えば、気象庁が提供する気象情報として受信される。さらに、入力部(82)は、温度センサ(24)と湿度センサ(25)のそれぞれの検出値を受信する。
【0035】
WBGT導出部(83)は、外気温度及び外気湿度の予測値や、温度センサ(24)及び湿度センサ(25)の検出値に基づいて、室内のWBGT値を導出する。ここで、「WGBT値」は、湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature)であり、その値が高くなる程、熱中症にかかり易くなる熱中症指数の1つである。尚、室内のWBGT値の具体的な導出方法については、後述する。
【0036】
時間帯導出部(84)は、室内のWBGT値と所定値を時間毎に比較し、その時間が熱中症にかかり易い時間であるか否かを判定する。この所定値は、例えば、熱中症の発生率が急激に高くなる変化点におけるWBGT値である。室内のWBGT値が所定値よりも高い場合は、熱中症にかかり易い時間であると判定される。そして、各時間の判定結果をまとめることで、熱中症にかかり易い時間帯が求められる。
【0037】
電力量推定部(85)は、空調機(20)の必要電力量を推定するものである。この電力量推定部(85)では、蓄電池(40)の充電開始前と放電時とで、異なる必要電力量が推定される。
【0038】
蓄電池(40)の充電開始前では、熱中症にかかり易い時間帯の予測後に推定が行われる。そして、予測された時間帯を通して室内を空調して熱中症予防する(室内の熱中症指数を所定値以下にする)ための空調機(20)の必要電力量が推定される。
【0039】
一方、蓄電池(40)の放電時では、実際にその時間帯を経過中に推定が行われる。そして、蓄電池(40)の充電開始前に推定された必要電力量から経過時間分を除いた残り時間の必要電力量が推定される。尚、この必要電力量の具体的な推定方法については、後述する。
【0040】
また、電力量推定部(85)は、補正部(86)を有している。この補正部(86)では、蓄電池(40)の充放電時の電力ロスを考慮し、上記必要電力量が補正される。
【0041】
切換制御部(87)は、蓄電池(40)の充電時や空調機(20)及び電気機器(35)の運転時(蓄電池(40)の放電時を含む)に、制御信号を電力切換回路(50)へ出力して、電力切換回路(50)の各スイッチ(61〜65)を切り換え制御するものである。
【0042】
切換制御部(87)は、蓄電池(40)の充電動作時に、第1スイッチ(61)をON状態にして充電を開始させる。充電開始後、切換制御部(87)は、蓄電量が電力量推定部(85)で予測された必要電力量以上になるまで充電を継続させた後、第1スイッチ(61)をOFF状態にして充電を停止させる。つまり、切換制御部(87)は、蓄電池(40)の蓄電量が必要電力量以上になるように蓄電池(40)を充電させる本発明の蓄電量制御部(87)を構成している。
【0043】
空調機(20)の運転動作時に、切換制御部(87)は、第2スイッチ(62)と第4スイッチ(64)をON状態にして、系統電力(5)から空調機(20)へ電力を供給させる。また、切換制御部(87)は、第3スイッチ(63)と第4スイッチ(64)をON状態にして、蓄電池(40)から空調機(20)へ電力を供給させる。
【0044】
電気機器A(35)の運転動作時に、切換制御部(87)は、第2スイッチ(62)と第5スイッチ(65)をON状態にして、系統電力(5)から電気機器A(35)へ電力を供給させる。また、切換制御部(87)は、第3スイッチ(63)と第5スイッチ(65)をON状態にして、蓄電池(40)から電気機器A(35)へ電力を供給させる。
【0045】
〈蓄電池の充電動作〉
蓄電池(40)の充電動作は、夜間の電力料金が安いことから、通常、夜間(午後23時以降)に行われる。蓄電池(40)の充電開始前に、まず、空調機(20)の必要電力量が推定される。
【0046】
〈空調機の必要電力量の推定方法〉
空調機(20)の必要電力量の推定は、図2に示すフローで行われる。
【0047】
まず、ステップST1では、翌日の時間毎の外気温度及び外気湿度の予測値が読み込まれる。具体的には、外気温度及び外気湿度の時間毎(例えば1時間毎)の予測値が、ネットワーク(120)を介して入力部(82)へ受信される。
【0048】
次に、ステップST2では、WBGT導出部(83)において、翌日の時間毎の室内のWBGT値が導出される。具体的には、まず、外気温度から室内温度が導出され、外気湿度から室内湿度が導出される。室内温度及び室内湿度の導出は、外気温度と室内温度の関係を記憶したテーブルと、外気湿度と室内湿度の関係を記憶したテーブルを用いて行われる。そして次に、室内温度と室内湿度から、室内のWBGT値が導出される。この室内のWBGT値の導出は、図3に示すように、室内温度及び室内湿度と室内のWBGT値との関係を記憶したテーブルを用いて行われる。
【0049】
次に、ステップST3では、時間帯導出部(84)において、翌日の熱中症にかかり易い時間帯が予測される。まず、翌日の室内のWBGT値と所定値(例えば24℃)を時間毎(1時間毎)に比較し、室内のWBGT値が所定値(24℃)よりも高い場合は、熱中症にかかり易い時間であると判定される。そして次に、各時間の判定結果がまとめられ、翌日の熱中症にかかり易い時間帯(例えば10時〜15時)が求められる。この時間帯は、電力量推定部(85)へ出力される。
【0050】
次に、ステップST4では、電力量推定部(85)において、上記時間帯(10時〜15時)を通して室内のWBGT値を所定値(24℃)以下にするための空調機(20)の必要電力量が推定される。この必要電力量の推定は、図4に示すように、過去7日分の消費電力データを用いて行われる。このデータは、室内のWBGT値を所定値(24℃)以下の条件で空調機(20)を運転させた時の1時間毎の消費電力である。そのため、この消費電力の何れかを選択して、1時間分の必要電力量とみなすことができる。本実施形態では、過去7日分の全消費電力の中から最大値を1つ抽出し、その最大値を各時間の必要電力量とみなしている。よって、上記時間帯(6時間)の空調機(20)の必要電力量は、この最大値を6倍した値となる。
【0051】
次に、ステップST5では、電力量推定部(85)の補正部(86)において、蓄電池(40)の充放電時の電力ロスを考慮して、上記必要電力量が補正される。
【0052】
このようにして求められた空調機(20)の必要電力量は、切換制御部(87)へ入力される。その後、切換制御部(87)から電力切換回路(50)へ制御信号が出力されて、第1スイッチ(61)がON状態になり、充電が開始される。充電開始後は、蓄電量が空調機(20)の必要電力量以上になるまで充電が継続される。そして、蓄電量が必要電力量以上になると、第1スイッチ(61)がOFF状態になって充電が終了する。
【0053】
〈空調機の運転動作〉
夜間に蓄電池(40)の充電動作が行われた空調システム(10)では、翌日に、図5に示すフローで、空調機(20)の運転動作が行われる。
【0054】
まず、ステップST11では、現在の時刻が蓄電池(40)の充電開始前に予測された時間帯(10時〜15時)の開始時刻(10時)を過ぎているか否かが判定される。開始時刻を過ぎている場合は、ステップST12へ進む。一方、開始時刻を過ぎていない場合は、ステップST11へ戻る。
【0055】
次に、ステップST12では、現在の室内のWBGT値が所定値(24℃)より高いか否かが判定される。現在の室内のWBGT値は、まず、温度センサ(24)と湿度センサ(25)によって室内温度と室内湿度をそれぞれ検出し、その検出値を図3に示すテーブルに当てはめることによって導出される。その室内のWBGT値が所定値(24℃)よりも高い場合は、ステップST13へ進む。一方、その室内のWBGT値が所定値(24℃)以下の場合は、ステップST12へ戻る。
【0056】
次に、ステップST13では、空調機(20)が起動しているか否かが判定される。空調機(20)が起動していない場合は、ステップST14へ進んで空調機(20)を起動させた後、ステップST15へ進む。一方、空調機(20)が既に起動している場合は、ステップST15へ進む。
【0057】
次に、ステップST15では、停電しているか否かが判定される。停電(計画停電を含む)時の場合はステップST16へ進む。一方、非停電時の場合はステップST21へ進む。
【0058】
ステップST16では、停電時に、第3スイッチ(63)と第4スイッチ(64)がON状態になって、蓄電池(40)から空調機(20)へ電力が供給される。また、停電時には、第5スイッチ(65)がOFF状態になって、電気機器A(35)は停止状態となる。そのため、夜間に充電された蓄電池(40)の蓄電量は、全て空調機(20)用として確保される。
【0059】
次に、ステップST17からステップST20では、室内のWBGT値に基づいて空調機(20)の目標温度が設定される。
【0060】
〈室内のWBGT値に基づいた空調機の目標温度の設定〉
まず、ステップST17(ステップST22)では、WBGT導出部(83)において、現在の室内のWBGT値が導出される。現在の室内のWBGT値は、まず、温度センサ(24)と湿度センサ(25)によって室内温度と室内湿度をそれぞれ検出し、その検出値を図3に示すテーブルに当てはめることによって導出される。

【0061】
次に、ステップST18(ステップST23)では、室内が熱中症にかかり易い状態であるか否かが判定される。具体的には、ステップST17(ステップST22)で導出された室内のWBGT値と所定値(24℃)を比較し、室内のWBGT値が所定値よりも高い場合は、「熱中症にかかり易い状態」と判定され、ステップST19(ステップST24)へ進む。一方、室内のWBGT値が所定値以下の場合は、「熱中症にかかりにくい状態」と判定される。この場合は、空調機(20)の目標温度が設定変更されずに、ステップST15へ戻る。
【0062】
次に、ステップST19(ステップST24)では、室内を熱中症予防するための室内温度が導出される。具体的には、WBGT値導出時のテーブルが用いられ(図6参照)、現在の室内湿度(70%)を一定に保った状態で、WBGT値の所定値(24℃)を得るための室内温度(25℃)が導出される。
【0063】
次に、ステップST20(ステップST25)では、ステップST19(ステップST24)で導出された室内温度(25℃)が空調機(20)の目標温度として設定され、空調能力が調節される。そして、ステップST15へ戻る。
【0064】
ステップST21では、非停電時に、第2スイッチ(62)、第3スイッチ(63)、第4スイッチ(64)、及び第5スイッチ(65)がON状態となって、系統電力(5)及び蓄電池(40)の両方から、空調機(20)と電気機器A(35)へそれぞれ電力が供給される。
【0065】
次に、ステップST22からステップST25では、ステップST17からステップST20と同様に、室内のWBGT値に基づいて、空調機(20)の目標温度が設定される。
【0066】
次に、ステップST26では、電力量推定部(85)において、空調機(20)の残り時間の必要電力量が推定される。この残り時間の必要電力量とは、上記時間帯(10時〜15時)が終了するまで空調機(20)を運転させるのに必要な電力量のことであり、図7に示すように、上記時間帯(10時〜15時)における空調機(20)の必要電力量(ステップST4で推定)から経過時間(10時〜現在)分を減算して求められる。
【0067】
次に、ステップST27では、蓄電池(40)の蓄電量とステップST26で推定された残り時間の必要電力量とが比較される。蓄電量が残り時間の必要電力量よりも多い場合は、ステップST28へ進む。一方、蓄電量が残り時間の必要電力量以下の場合は、ステップST29へ進む。
【0068】
次に、ステップST28では、蓄電池(40)の蓄電量の内、ステップST26で推定された残り時間の必要電力量と同量の蓄電量が、空調機(20)用として確保され、蓄電量からその残り時間の必要電力量を除いた余剰蓄電量が電気機器A(35)へ供給される。この時、第5スイッチ(65)はON状態を維持し、その後、余剰蓄電量が全て電気機器A(35)へ供給されるとOFF状態となる。そして、ステップST15へ戻る。
【0069】
次に、ステップST29では、蓄電池(40)から電気機器A(35)への電力供給が停止される。この時、第5スイッチ(65)はOFF状態となる。蓄電池(40)からの電力供給が停止されると、ステップST15へ戻る。
【0070】
空調システム(10)では、空調機(20)の運転動作中、ステップST15からステップST29が、所定の時間間隔で繰り返し実行される。そして次第に、室内のWBGT値は所定値(24℃)に近づき、室内は快適な状態に維持される。
【0071】
空調システム(10)では、停電時には、電気機器A(35)が停止状態になる。そのため、蓄電池(40)には、全蓄電量、つまり、空調機(20)の必要電力量以上の蓄電量が空調機(20)用として確保される。
【0072】
一方、空調システム(10)では、非停電時には、系統電力(5)及び蓄電池(40)の両方から、空調機(20)と電気機器A(35)へそれぞれ電力が供給される。しかし、この場合、万が一の停電に備えて、蓄電池(40)には、空調機(20)の残り時間の必要電力量と同量の蓄電量が空調機(20)用として確保される。
【0073】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、蓄電池(40)の充電開始前に、翌日の熱中症にかかり易い(室内の熱中症指数が所定値より高い)時間帯を予測し、その時間帯を通して熱中症予防を考慮した空調を行う(室内の熱中症指数を所定値以下にする)ための必要電力量を推定するようにした。そして、蓄電池(40)の蓄電量がその必要電力量以上になるように、蓄電池(40)を充電するようにした。そのため、万が一停電が起きても、熱中症にかかり易い時間帯の最後まで、空調機(20)を運転させることができる。その結果、室内での熱中症を予防することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、外気温度及び外気湿度の予測値に基づいて、室内の熱中症指数を求めるようにした。そのため、外気の温湿度の変化に対応した精度の高い熱中症指数を得ることができ、それに伴って、蓄電池(40)に確保すべき必要電力量を精度良く求めることができる。その結果、室内での熱中症を一層確実に予防することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、上記時間帯の途中で、その時間帯中の必要電力量(充電前に推定)から経過時間分を減算して、残り時間の必要電力量を推定するようにした。そして、蓄電池(40)の蓄電量がその残り時間の必要電力量よりも多い場合に、残り時間の必要電力量と同量の蓄電量を空調機(20)用として確保するようにした。そのため、万が一停電が起きても、その時間帯の最後まで熱中症予防を考慮した空調を行うことができる。また、この場合、蓄電池(40)の蓄電量から空調機(20)用の蓄電量を除いた残りの蓄電量(余剰電力量)も、電気機器A(35)用として確保するようにした。そのため、低料金の夜間電力を昼間に電気機器A(35)に使用することができ、電気機器A(35)の電力コストを低減することができる。
【0076】
《発明の実施形態2》
実施形態2の空調システム(10)は、図8に示すように、上記実施形態1に加えて、給湯器(90)を備えている。
【0077】
この給湯器(90)は、図9に示すように、ヒートポンプ式の給湯器であり、冷媒回路(92)を有する熱源ユニット(91)と、貯湯タンク(97)を備えている。冷媒回路(92)には、圧縮機(93)、水熱交換器(94)、膨張弁(95)、空気熱交換器(96)が順に接続されている。給湯器(90)の運転(沸き上げ運転)時には、圧縮機(93)が運転されて冷凍サイクルが行われ、空気熱交換器(96)が蒸発器として機能すると共に、水熱交換器(94)が凝縮器として機能する。そして、貯湯タンク(97)側の水は、この水熱交換器(94)で放熱する冷媒によって加熱される。これにより、貯湯タンク(97)内では、所定温度の温水が適宜生成される。貯湯タンク(97)内に溜められた温水は、浴槽等の利用対象へ適宜供給される。
【0078】
また、給湯器(90)は、系統電力(5)と蓄電池(40)の両方から電力が供給可能であり、本発明の電気機器を構成している。図8に示すように、給湯器(90)は、電力切換回路(50)に接続されている。電力切換回路(50)は、給湯器側出力部(57)と第6スイッチ(66)とを有しており、給湯器側出力部(57)は給湯器(90)に接続され、第6スイッチ(66)は該給湯器側出力部(57)と中間部(56)との間に接続されている。そして、給湯器(90)の運転時に、系統電力(5)から給湯器(90)へ電力が供給される場合は、第2スイッチ(62)と第6スイッチ(66)がON状態になり、蓄電池(40)から給湯器(90)へ電力が供給される場合は、第3スイッチ(63)と第6スイッチ(66)がON状態になる。
【0079】
実施形態2の空調システム(10)では、夜間に蓄電池(40)を充電しておき、翌日の昼間にその蓄電力を給湯器(90)へ供給することで、昼間に料金の安い夜間電力を使用でき、給湯器(90)の電力コストを低減できる。しかし、この場合も、万が一の停電に備えて、蓄電池(40)には、空調機(20)の残り時間の必要電力量と同量の蓄電量が空調機(20)用として確保される。そのため、停電が起きても、予測された時間帯の最後まで熱中症予防を考慮した空調を行うことができる。
【0080】
《発明の実施形態3》
実施形態3の空調システム(10)は、図10に示すように、上記実施形態2に加えて、
補助冷房室内機(100)を備えている。
【0081】
この補助冷房室内機(100)は、空調機(20)の室内ユニット(22)と同じ室内に設置され、補助冷房熱交換器(101)を備えている。この補助冷房熱交換器(101)は、給湯器(90)の冷媒回路(92)において、空気熱交換器(96)に並列に接続されており、給湯器(90)の運転(沸き上げ運転)時には、空気熱交換器(96)と共に蒸発器として機能する。そのため、補助冷房熱交換器(101)では、低温の冷媒が室内空気と熱交換して室内空気が冷却され、その結果、室内温度が低下する。
【0082】
このように、補助冷房室内機(100)は、給湯器(90)を稼動することによって、室内を冷房することができる。そのため、空調機(20)の負担を軽減することができ、空調機(20)の消費電力を低減することができる。
【0083】
《発明の実施形態4》
実施形態4の空調システム(10)は、図11に示すように、上記実施形態1に加えて、太陽光発電パネル(110)とパワーコンディショナ(111)を備えている。
【0084】
太陽光発電パネル(110)は、太陽光の照射によって直流電力を発生させるものである。パワーコンディショナ(111)は、その太陽光発電パネル(110)に接続され、太陽光発電パネル(110)で発生した直流電力を交流電力に変換するものである。
【0085】
このパワーコンディショナ(111)は、切り換え回路を有している。この切り換え回路は、停電の有無に応じてパワーコンディショナ(111)の接続状態を切り換えるものである。この切り換え回路によって、パワーコンディショナ(111)は、非停電時に分電盤(71)に接続され、停電時に電力切換回路(50)の電源側入力部(51)に接続される。
【0086】
非停電時には、太陽光発電パネル(110)の発電力は、系統電力(5)へ送電可能となる。さらに、この発電力は、パワーコンディショナ(111)から分電盤(71)と電力切換回路(50)を経由して、空調機(20)及び電気機器A(35)へ供給可能となると共に、蓄電池(40)へ蓄電可能となる。
【0087】
一方、停電時には、太陽光発電パネル(110)の発電力は、パワーコンディショナ(111)から電力切換回路(50)を経由して、空調機(20)及び電気機器A(35)へ供給可能となる共に、蓄電池(40)へ蓄電可能となる。
【0088】
この空調システム(10)では、停電時に、第2スイッチ(62)と第4スイッチ(64)がON状態になることで、太陽光発電パネル(110)から空調機(20)へ電力が供給される。その時、太陽光発電パネル(110)で発生した電力が、空調機(20)の消費電力よりも大きい場合は、さらに第1スイッチ(61)がON状態となって、太陽光発電パネル(110)で発生した電力の一部が蓄電池(40)に蓄電される。逆に、太陽光発電パネル(110)の発電力が、空調機(20)の消費電力よりも小さい場合は、第3スイッチ(63)がON状態となって、蓄電池(40)から空調機(20)へ電力が供給される。しかし、この場合も、太陽光発電パネル(110)の発電力の供給が突然停止する事態に備えて、蓄電池(40)には、空調機(20)の残り時間の必要電力量と同量の蓄電量が空調機(20)用として確保される。そのため、万が一そのような事態が起きても、予測された時間帯の最後まで熱中症予防を考慮した空調を行うことができる。
【0089】
《発明の実施形態5》
実施形態5の空調システム(10)は、図12に示すように、上記実施形態2の給湯器(90)の代わりに換気扇(36)を備えている。換気扇(36)は、系統電力(5)と蓄電池(40)の両方から電力が供給可能であり、本発明の電気機器を構成している。この換気扇(36)は、空調機(20)の室内ユニット(22)と同じ室内に取り付けられている。
【0090】
この空調システム(10)では、室内のWBGT値が室外のWBGT値よりも高い時に、換気扇(36)を運転することで、室内のWBGT値を低下させることができる。換気扇(36)、特に、熱中症にかかり易い(室内のWBGT値が所定値より高い)時間帯にその効果を発揮することができ、熱中症の予防に貢献する。
【0091】
また、空調システム(10)では、停電時に、空調機(20)の実際の消費電力量が推定された必要電力量よりも大きくなって、上記時間帯の途中で、残りの蓄電量が残り時間の必要電力量よりも少なくなる(蓄電量不足になる)場合がある。このような場合、本実施形態では、空調機(20)の稼動が停止され、代わりに、消費電力の比較的小さい換気扇(36)が稼動する。そのため、空調機(20)を引き続き運転させるよりも、換気扇(36)の運転時間を長くすることができ、上記時間帯の終了前に、空調機(20)が突然停止して室内環境が急激に悪化する事態を回避することができる。
【0092】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、WBGT値を用いて熱中症のかかり易さを判定しているが、WBGT値以外の熱中症指数である熱指数を用いても構わない。熱指数は、本来は、熱射病や熱疲労の発生のしやすさを表したものであるが、この熱指数を用いても熱中症のかかり易さをある程度把握することができる。
【0093】
また、上記実施形態では、室内温度及び室内湿度と室内のWBGT値との関係を記憶したテーブルを用いて、室内のWBGT値を導出している。しかし、WBGT値の導出方法は、この限りではなく、湿球温度と黒球温度を計測し、以下の(1)式から導出してもよい。また、室内温度と室内湿度とから、所定の経験式(近似式)を用いてWBGT値を推定するようにしてもよい。
【0094】
室内のWBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度・・・(1)
また、上記実施形態では、図4に示すように、全消費電力の中から最大値を1つ抽出し、その最大値を各時間の必要電力量とみなして、予測された時間帯の必要電力量を求めている。しかし、図13に示すように、消費電力の最大値を時間毎に抽出し、各時間の最大値を各時間の必要電力量とみなして、予測された時間帯の必要電力量を求めてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、蓄電池(40)の充電前に、翌日の外気温度と外気湿度を用いて、室内のWBGT値を導出している。しかし、室内のWBGT値の導出方法はこれに限らず、例えば図14に示すように、翌日の気象情報(外気温度、外気湿度以外に日射量、風速等)と住宅情報(サイズ、立地条件、気密性、断熱性等)を用いた動的シミュレーションによって、室内のWBGT値を導出しても良い。さらに、この動的シミュレーションの入力パラメータに空調機(20)の情報(機種、設置場所等)を加えることによって、空調機(20)の必要電力量を求めるようにしても良い。こうすることで、室内のWBGT値と空調機(20)の必要電力量を、一層高精度に導出することができ、その結果、室内での熱中症を一層確実に予防することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、図6に示すように、室内湿度(70%)を一定に保った状態で、室内のWBGT値(31℃)に対応する室内温度(32℃)を、所定のWBGT値(24℃)に対応する室内温度(25℃)に近づけるように、空調機(20)の空調能力が制御される。しかしながら、室内のWBGT値(31℃)を所定のWBGT値(24℃)に直接的に近づけるように、空調機(20)の空調能力を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明は、室内の空気を調和する空調システムについて有用である。
【符号の説明】
【0098】
10 空調システム
20 空調機
35 電気機器A(電気機器)
36 換気扇(電気機器)
40 蓄電池
81 時間帯予測部
85 電力量推定部
87 切換制御部(蓄電量制御部)
90 給湯器(電気機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を空調する空調機(20)と、該空調機(20)へ電力を供給する蓄電池(40)とを備えた空調システムであって、
蓄電池(40)の充電前に、室内の熱中症指数が所定値よりも高くなる時間帯を予測する時間帯予測部(81)と、
蓄電池(40)の充電前に、上記時間帯を通して室内の熱中症指数を上記所定値以下にするのに必要な上記空調機(20)の必要電力量を推定する電力量推定部(85)と、
上記蓄電池(40)の蓄電量が上記必要電力量以上になるように、上記蓄電池(40)を充電させる蓄電量制御部(87)とを備えている
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記時間帯予測部(81)では、外気温度及び外気湿度の予測値に基づいて室内の熱中症指数が導出される
ことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記蓄電池(40)から電力が供給可能な上記空調機(20)と異なる電気機器(35,36,90)を備え、
上記電力量推定部(85)は、上記時間帯に、該時間帯中の上記必要電力量から該時間帯の開始からの経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定し、
上記蓄電量制御部(87)は、蓄電池(40)の蓄電量が上記残り時間の必要電力量よりも多い場合に、上記残り時間の必要電力量を上記空調機(20)用として確保すると共に、蓄電池(40)の蓄電量から上記残り時間の必要電力量を除いた余剰電力量を上記電気機器(35,36,90)用として確保する
ことを特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項1または2において、
上記時間帯において、室内の熱中症指数が室外の熱中症指数よりも高い場合に、室内外を換気する換気扇(36)を備えている
ことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項4において、
上記電力量推定部(85)は、上記時間帯に、該時間帯中の上記必要電力量から該時間帯の開始からの経過時間分を除いた残り時間の必要電力量を推定し、
上記蓄電量制御部(87)は、停電時において、蓄電池(40)の蓄電量が上記残り時間の必要電力量よりも少ない場合に、上記蓄電池(40)から上記空調機(20)へ電力の供給を停止させると共に、上記蓄電池(40)から上記換気扇(36)へ電力を供給させる
ことを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−72633(P2013−72633A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214430(P2011−214430)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】