説明

空調制御システム

【課題】寝室内での就寝者の快適性を確保しつつ、リズム運転の温度制御性を確保する。
【解決手段】空調制御システム(1)は、寝室(5)内の就寝者の生理量から就寝者のウルトラディアンリズムに対応した周期成分に対応して空調機(10)の設定温度を増減させるリズム運転を実行するリズム運転制御部(83)と、リズム運転制御部(83)のリズム運転開始前の所定時間において空調機(10)を制御すると共に、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する調整運転制御部(82)と、調整運転制御部(82)の調整運転の運転開始の設定温度を設定する入床温度設定部(72)と、調整運転制御部(82)の調整運転開始前の所定時間において、寝室(5)の温度が入床温度設定部(72)で設定した設定温度になるように空調機(10)を制御する予備運転制御部(81)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御システムに関し、特に、寝室の快適性と温度制御性の向上対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、就寝者の心拍数から抽出したウルトラディアンリズム周期に応じて空調機の設定温度を増減制御する空調制御システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この空調制御システムでは、就寝者の生理量から抽出したウルトラディアンリズムに対応した周期成分に応じて空調機の設定温度を増減させるリズム運転を行う。例えば、就寝者の生理量(例えば、心拍数)が減少して体温が低下する際には、空調機の設定温度が低減される。これにより、寝室の温度が低下し、就寝者の体温低下が促進される。一方、就寝者の生理量が増大して体温低下がおこらなければ、空調機の設定温度が生理量減少時に比べて増大されるため、体温低下が抑制される。つまり、空調機の設定温度が就寝者の睡眠リズムに合わせて制御されることにより、就寝者の体温調節が促進されるため、就寝者は、それほど身体に負担をかけることなく、深い睡眠を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−85076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の空調制御システムでは、リズム運転開始前の寝室内の温度を考慮していない。このため、例えば、寝室内の温度が他の居室の温度よりも著しく低い場合、寝室内の温度がリズム運転の開始時刻においてリズム運転の設定温度になり難いため、リズム運転の温度制御性が悪くなってしまうと共に、就寝者の他の居室から寝室への移動時に温度変化が大きく快適性が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、寝室内での就寝者の快適性を確保しつつ、リズム運転の温度制御性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空調機(10)の運転を制御して寝室(5)内の空調を制御する空調制御システムであって、寝室(5)内の就寝者の生理量から就寝者のウルトラディアンリズムに対応した周期成分を抽出するリズム判定部(53)と、就寝者の入眠後に、上記リズム判定部(53)が抽出した周期成分に対応して空調機(10)の設定温度を増減させるリズム運転を実行するリズム運転制御部(83)と、該リズム運転制御部(83)のリズム運転開始前の所定時間において空調機(10)を制御すると共に、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する調整運転制御部(82)と、該調整運転制御部(82)の入眠前運転の運転開始の設定温度を設定する入床温度設定部(72)と、上記調整運転制御部(82)の入眠前運転開始前の所定時間において、寝室(5)の温度が上記入床温度設定部(72)で設定した設定温度になるように空調機(10)を制御する予備運転制御部(81)とを備えている。
【0008】
上記第1の発明では、入床温度設定部(72)は、調整運転制御部(82)の入眠前運転の運転開始の設定温度を設定する。予備運転制御部(81)は、入眠前運転の運転開始前の所定時間において、寝室(5)の温度が入床温度設定部(72)の設定温度になるように空調機(10)を制御する。
【0009】
調整運転制御部(82)は、リズム運転の開始前の所定時間において空調機(10)を制御する。そして、調整運転制御部(82)は、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する。
【0010】
リズム運転制御部(83)は、就寝者の生理量から抽出したウルトラディアンリズムに対応した周期成分に応じて空調機(10)の設定温度を増減させるリズム運転が実行される。例えば、就寝者の生理量(例えば、心拍数)が減少して体温が低下する際には、空調機(10)の設定温度を低減させる。これにより、寝室(5)の温度が低下し、就寝者の体温低下が促進される。一方、就寝者の生理量が増大して体温低下がおこらない場合は、空調機(10)の設定温度を生理量減少時に比べて増大させるため、体温低下が抑制される。つまり、空調機(10)の設定温度が就寝者の睡眠リズムに合わせて制御されることにより、就寝者の体温調節が促進される。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、利用者が入眠前運転の運転開始の設定温度を入力する設定入力部(34)を備え、上記入床温度設定部(72)は、上記利用者の入力した温度に基づいて設定温度を設定するよう構成されている。
【0012】
上記第2の発明では、利用者は、設定入力部(34)において入眠前運転の運転開始の設定温度を入力する。そして、入床温度設定部(72)は、利用者の入力した温度に基づいて設定温度を設定する。
【0013】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記リズム判定部(53)により抽出された周期成分データを記憶する記憶部(54)を備え、上記入床温度設定部(72)は、上記記憶部(54)に記憶された周期成分データに基づいて設定温度を設定するよう構成されている。
【0014】
上記第3の発明では、記憶部(54)は、リズム判定部(53)により抽出された周期成分データを記憶する。入床温度設定部(72)は、記憶部(54)に記憶された周期成分データに基づいて設定温度を設定する。そして、調整運転制御部(82)は、リズム運転の開始前の所定時間において空調機(10)を制御する。そして、調整運転制御部(82)は、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記入床温度設定部(72)は、入眠前運転の運転開始の設定温度をリズム運転の設定温度に設定するよう構成されている。
【0016】
上記第4の発明では、入床温度設定部(72)では、入眠前運転の運転開始の設定温度をリズム運転の設定温度に設定する。そして、調整運転制御部(82)は、リズム運転の開始前の所定時間において空調機(10)を制御する。そして、調整運転制御部(82)は、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を入眠前運転させたため、リズム運転の開始時の寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度にすることができる。これにより、就寝者の入眠後のリズム運転の温度制御性を向上させることができる。
【0018】
また、入眠前運転開始前に寝室(5)の温度が入床温度設定部(72)の設定温度になるように空調機(10)を予備運転させたため、寝室(5)と他の部屋の温度差を縮めることができる。これにより、例えば、冬場などに就寝者が暖房された他の部屋から寝室(5)に移動した場合のように、他の部屋と寝室(5)の温度差が大きい場合に就寝者が感じる不快感を低減することができる。
【0019】
上記第2の発明によれば、利用者が入眠前運転の運転開始の設定温度を入力できるようにしたため、利用者の満足度を高めることができる。一方で、入床温度設定部(72)では、利用者の入力温度に基づいて設定温度を設定したため、寝室(5)の温度を確実にリズム運転の設定温度にすることができる。
【0020】
上記第3の発明によれば、入床温度設定部(72)の設定温度を周期成分データに基づいて設定するようにしたため、就寝者の普段の生活リズムに合わせた制御を行うことができる。
【0021】
上記第4の発明によれば、入床温度設定部(72)の設定温度をリズム運転の設定温度にしたため、入眠前の寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度に確実に近づけることができる。これにより、就寝者の入眠後のリズム運転の温度制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る空調制御システムを示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態1に係る空調制御システムの動作を示すフローチャート図である。
【図4】実施形態1に係る時間と寝室の温度との関係を示すグラフである。
【図5】実施形態1に係る空調制御システムの制御例2を示すグラフである。
【図6】実施形態1に係る空調制御システムの制御例3を示すグラフである。
【図7】実施形態1に係る空調制御システムの制御例4を示すグラフである。
【図8】実施形態1に係る空調制御システムの制御例5を示すグラフである。
【図9】実施形態2に係る空調制御システムの動作の前半部分を示すフローチャート図である。
【図10】実施形態2に係る空調制御システムの動作の後半部分を示すフローチャート図である。
【図11】その他の形態に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
《発明の実施形態1》
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る空調制御システム(1)は、寝室(5)内に設置された空調機(10)の運転を制御するものである。空調機(10)は、寝室(5)内の空気を調和する空調手段を構成している。
【0025】
上記空調機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示省略)を備えており、熱交換器(図示省略)内の冷媒により冷却又は加熱した空気を寝室(5)内へ供給する。つまり、空調機(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うように構成されている。また、上記空調機(10)は、寝室(5)内の温度を検出する室内温度センサ(図示省略)と、室外の温度を検出する室外温度センサ(図示省略)と、ユーザー等が希望する寝室(5)内の温度を設定温度として入力する温度設定部(図示省略)とを有している。空調機(10)の運転時には、室内温度が設定された温度に近づくように空調能力(圧縮機の回転周波数)が制御される。
【0026】
図1に示すように、空調制御システム(1)は、感圧ユニット(20)と本体ユニット(30)とを備えている。
【0027】
上記感圧ユニット(20)は、就寝者から生起する体動を本体ユニット(30)へ伝達するためのものである。感圧ユニット(20)は、感圧部(21)と圧力伝達部(22)とを備えている。感圧部(21)は、一端が閉塞して他端が開口する細長の中空状のチューブにより構成されている。感圧部(21)は、寝室(5)のベッド等の寝具(6)内に敷設されている。圧力伝達部(22)は、両端が開口する細長の中空状のチューブにより構成されている。圧力伝達部(22)は、感圧部(21)よりも小径に構成されている。圧力伝達部(22)は、先端が感圧部(21)の開口部(23)に接続され、基端が本体ユニット(30)に接続されている。
【0028】
上記本体ユニット(30)は、ケーシング(31)に収容された受圧部(33)及び回路ユニット(40)(図2参照)と、ケーシング(31)の表面に形成された設定入力部(34)とを有している。
【0029】
上記ケーシング(31)は、扁平な箱状に形成されており、例えば寝室(5)内の床面に設置されている。ケーシング(31)の表面には、空調機(10)の運転の設定又は変更の操作を行う設定入力部(34)が形成されている。
【0030】
設定入力部(34)は、就寝者を含んだ空調制御システム(1)の利用者によって操作されるスイッチによって構成されている。具体的には、図2に示すように、設定入力部(34)は、所定時間入力部(35)と予定入床時刻入力部(36)と、予定入床設定温度入力部(37)と、予定入眠時刻入力部(38)と予定入眠設定温度入力部(39)とを有し、後述する回路ユニット(40)の空調制御部(80)、調整運転設定部(71)および予備運転設定部(60)に接続されている。
【0031】
所定時間入力部(35)は、予備運転を開始する前の時刻t0が入力可能に構成されている。この時刻t0は、予定入床時刻t2を基準とし、そこから入床前の予備運転が開始されるより前となる時間t0が入力可能に構成されている。予定入床時刻入力部(36)は、就寝者の予定入床時刻t2が入力可能に構成され、予定入床設定温度入力部(37)は、就寝者の予定入床時の寝室(5)の設定温度(予定入床時入力温度T1)を入力可能に構成されている。予定入眠時刻入力部(38)は、就寝者の予定入眠時刻t4が入力可能に構成され、予定入眠設定温度入力部(39)は、就寝者の入眠時の寝室(5)の設定温度であるリズム運転の設定温度Testを入力可能に構成されている。
【0032】
また、図1に示すように、ケーシング(31)の前側面には、外部と内部とを連通する貫通穴が形成され、該貫通穴の背面側(内部側)に上記受圧部(33)が収容されている。受圧部(33)は、マイクロフォンや圧力センサ等によって構成され、上記圧力伝達部(22)の基端が接続されている。寝具(6)上の就寝者から体動が生起すると、この体動が感圧部(21)に作用する。これにより、感圧部(21)の内圧は、圧力伝達部(22)を介して受圧部(33)に作用する。受圧部(33)は、この内圧を電気的な信号に変換し、本体ユニット(30)内の回路ユニット(40)へ出力する。受圧部(33)は、上記感圧ユニット(20)と共に就寝者の体動を検出するための体動検出手段を構成している。
【0033】
図2に示すように、上記回路ユニット(40)は、信号処理部(41)と生理量検出部(42)と判定部(50)と予備運転設定部(60)と調整運転設定部(71)と入床温度設定部(72)と空調制御部(80)とを備えている。
【0034】
上記信号処理部(41)は、就寝者の体動が作用する受圧部(33)から出力された検出信号を、所定の周波数帯域の体動信号に変調して生理量検出部(42)に出力するように構成されている。
【0035】
上記生理量検出部(42)は、信号処理部(41)から出力された体動信号から心拍数と心拍強度と体動とを導出するように構成されている。具体的には、生理量検出部(42)は、上記体動信号から心拍の周波数帯域の信号を心拍波形として抽出し、該心拍波形の振幅を心拍強度として導出する。また、生理量検出部(42)は、上記体動信号から1分間の標準偏差を算出しし、これを体動として導出する。さらに、生理量検出部(42)は、上記体動信号から心拍数抽出フィルタによって心拍の周波数帯域の信号を心拍の実測値として抽出し、該実測値から1分間毎の心拍数の平均値(心拍数平均値)を導出する。そして、生理量検出部(42)は、上記心拍数平均値から、寝返り等の粗体動によるノイズの信号を除去したものを心拍数として導出する。
【0036】
上記判定部(50)は、入床判定部(51)と睡眠判定部(52)とリズム判定部(53)とを備え、上記生理量検出部(42)で導出された心拍強度に基づいて入床判定を行い、導出された体動に基づいて睡眠判定を行い、上記導出された心拍数に基づいて睡眠リズム判定をそれぞれ行うように構成されている。
【0037】
上記入床判定部(51)は、就寝者が寝具(6)に入床しているか、寝具(6)から離床しているかを判定するものである。この入床判定部(51)による判定は、生理量検出部(42)で導出された心拍強度と判定閾値(入床判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的には、入床判定部(51)では、心拍強度が入床判定閾値を下回る場合には「離床」と判定される一方、心拍強度が所定時間以上継続して入床判定閾値を上回る場合には「入床」と判定される。
【0038】
上記睡眠判定部(52)は、入床判定部(51)により「入床」と判定された後、就寝者が入眠したか否かを判定するものである。この睡眠判定部(52)による判定は、上記生理量検出部(42)で導出された体動と判定閾値(睡眠判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的には、睡眠判定部(52)では、初めて体動が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を下回る場合には「入眠」と判定される。また、睡眠判定部(52)では、「入眠」と判定された後において、体動が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を上回る場合には「覚醒」と判定される。
【0039】
上記リズム判定部(53)は、上記生理量検出部(42)で導出された心拍数から、周期的に検出される信号をゼロ位相フィルタによってウルトラディアンリズムに対応した周期成分(以下、ウルトラディアンリズム周期という。)を抽出し、これを就寝者の睡眠リズムと判定するように構成されている。
【0040】
なお、ウルトラディアンリズムとは、睡眠中のレム期とノンレム期のサイクルに代表される人体の生体リズムである。人体では、心拍数等の生理量がウルトラディアンリズムに同期して変化する。ウルトラディアンリズムは、一般的に約90分周期であるが、個人差があり、60分から120分の周期で現れる場合もある。
【0041】
上記予備運転設定部(60)は、目標温度設定部(61)と、負荷検出部(62)と、開始時刻設定部(63)と周波数設定部(64)とを備えている。
【0042】
上記目標温度設定部(61)は、予備運転における目標温度を設定する。本実施形態では、予備運転における目標温度は、後述する入床温度設定部(72)において設定された温度Trに設定される。
【0043】
上記負荷検出部(62)は、空調機(10)から入力される室内温度及び室外温度の情報と、上記目標温度設定部(61)で設定された予備運転における目標温度Trから空調負荷を検出する。
【0044】
上記開始時刻設定部(63)は、上記負荷検出部(62)において検出された空調負荷に応じて予備運転の開始時刻を算出して設定し、空調負荷が変動すると、予備運転の開始時刻を再度算出して更新するように構成されている。
【0045】
具体的には、開始時刻設定部(63)は、上記空調負荷に応じて、予定入床時刻t2に寝室(5)内の温度が予備運転の目標温度Trとなるような予備運転時間を算出し、予定入床時刻t2から予備運転時間だけ遡った時刻t1を予備運転の開始時刻に設定する。尚、予備運転の開始時刻t1から予定入床時刻t2までの時間は、本発明に係る入眠前運転の開始時間前の所定時間を構成している。
【0046】
つまり、寝室(5)内の空調負荷が低い場合には、予備運転の運転時間が比較的短い時間に設定される。つまり、予備運転の開始時刻t1が遅くなる。一方、寝室(5)内の空調負荷が高い場合には、予備運転の運転時間が比較的長い時間に設定される。つまり、予備運転の開始時刻t1が早くなる。
【0047】
上記周波数設定部(64)は、予備運転中における空調機(10)の圧縮機の回転周波数(空調能力)を設定する。具体的には、周波数設定部(64)は、上記負荷検出部(62)によって検出された空調負荷が大きいと、圧縮機の回転周波数を高い値に設定し、空調負荷が小さいと、圧縮機の回転周波数を低い値に設定する。
【0048】
上記調整運転設定部(71)は、予定入床時刻t2から予定入眠時刻t4までの間で調整運転の開始時刻t3を設定するものである。調整運転の開始時刻t3は、入床時における寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testに調節可能な時間を考慮して設定される。具体的に調整運転設定部(71)は、入床温度設定部(72)で設定された予定入床時設定温度Trとリズム運転の設定温度Testとの温度差と、予定入床時刻t2と予定入眠時刻t4との間の時間と、空調機(10)の空調能力などに基づいて調整運転の開始時刻t3を算出している。尚、調整運転の開始時刻t3から予定入眠時刻t4までの時間は、本発明に係るリズム運転開始前の所定時間を構成している。
【0049】
上記入床温度設定部(72)は、予定入床時刻t2における寝室(5)の設定温度(予定入床時設定温度Tr)を設定するものである。具体的には、入床温度設定部(72)は、利用者が入力した予定入床時刻t2における寝室(5)の設定温度(予定入床時入力温度T1)が、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であるか否かを判断する。
【0050】
ここで、入床温度設定部(72)は、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)を算出している。入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)は、空調機(10)が予定入眠時刻t4までに寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testに調整可能な範囲であって、本発明に係る所定の初期温度範囲を構成している。
【0051】
この入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)は、予定入床時刻t2から予定入眠時刻t4までの間の時間、空調機(10)の冷房能力又はリズム運転の設定温度Testなどに基づいて設定されるものである。尚、Thighが上限温度を示し、Tlowが下限温度を示している。
【0052】
つまり、予定入床時入力温度T1がThighより大きければ(T1>Thigh)、入床温度設定部(72)は、設定可能温度範囲外としてThighを予定入床時設定温度Trに設定する。また、予定入床時入力温度T1がTlowよりも小さければ(Tlow>T1)、設定温度範囲外としてTlowを予定入床時設定温度Trに設定する。そして、予定入床時入力温度T1がThigh以下で、且つTlow以上であれば(Thigh≧T1≧Tlow)、設定可能温度範囲内としてT1を予定入床時設定温度Trに設定する。
【0053】
上記空調制御部(80)は、空調機(10)と有線又は無線を介して信号の入出力が可能に構成されている。そして、空調制御部(80)は、予備運転制御部(81)と、調整運転制御部(82)と、リズム運転制御部(83)とを有し、空調機(10)の通常運転の運転停止と、リズム運転とを実行するように構成されている。
【0054】
上記予備運転制御部(81)は、予定入床時刻t2における寝室(5)の温度を入床時設定温度Trに近づけるように空調機(10)を制御するものである。予備運転制御部(81)は、予備運転設定部(60)において設定された予備運転の開始時刻t1に予備運転を開始し、寝室(5)の温度を目標温度Trに調節する。
【0055】
上記調整運転制御部(82)は、予定入眠時刻t4における寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testに近づけるように空調機(10)を制御するものである。調整運転制御部(82)は、調整運転設定部(71)で設定された調整運転の開始時刻t3に調整運転を開始し、寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testに調節する。尚、調整運転は、本発明に係る入眠前運転を構成している。
【0056】
上記リズム運転制御部(83)は、利用者が入力した予定入眠時刻t4から所定時間(本実施形態では、90分)が経過した後に、リズム判定部(53)のウルトラディアンリズム周期に応じてリズム運転設定温度Test(=ベース温度Tbase+Δt)を増減制御するものである。このリズム運転制御部(83)は、演算部(84)と温度変更部(85)を備えている。ベース温度Tbaseについては後述する。
【0057】
上記演算部(84)は、リズム判定部(53)により抽出されたウルトラディアンリズム周期の微分値を導出するものである。つまり、演算部(84)は、ウルトラディアンリズム周期の正方向変化の勾配および負方向変化の勾配を導出するものである。
【0058】
上記温度変更部(85)は、演算部(84)により導出されたウルトラディアンリズム周期の微分値が極大となるときに、空調機(10)の設定温度Testを増加させるように構成されている。即ち、温度変更部(85)は、ウルトラディアンリズム周期の正方向変化の勾配が最大となるときに、空調機(10)の設定温度Testを所定量だけ増加させる。具体的には、例えばΔt=1℃とし、設定温度Testを1℃だけ増加させる。つまり、設定温度Testがベース温度Tbaseよりも1℃だけ高くなる。
【0059】
また、上記温度変更部(85)は、演算部(84)により導出されたウルトラディアンリズム周期の微分値が極小となるときに、空調機(10)の設定温度Testを減少させるように構成されている。即ち、温度変更部(85)は、ウルトラディアンリズム周期の負方向変化の勾配が最小となるときに、空調機(10)の設定温度Testを所定量だけ減少させる。具体的には、例えばΔt=0℃とし、設定温度Testをベース温度Tbaseそのものにする。つまり、上記の微分値が極大となるときの設定温度Testよりも1℃だけ低くなる。
【0060】
−空調機及び空調制御システムの動作−
空調機(10)では、コントローラ等によって「冷房運転」と「暖房運転」とが選択可能に構成されている。また、空調機(10)では、通常の冷房運転や暖房運転では、ユーザーがコントローラ等によって設定入力した目標温度を設定温度として空調機(10)の空調能力(圧縮機の回転周波数)が制御される。また、空調制御システム(1)では、予備運転が行われる。
【0061】
−運転制御−
次に、空調機(10)の運転制御について図3および図4に基づいて説明する。空調機(10)の運転制御では、就寝者を含む利用者があらかじめ本体ユニット(30)の設定入力部(34)によって所定時間t0、予定入床時刻t2、予定入床時入力温度T1と、予定入眠時刻t4と、リズム運転の設定温度Testを入力することによって図3のフローチャートに基づく運転制御が行われる。
【0062】
まず、ステップST1では、現在の時刻が所定時間t0の前であるか否かが判断される。現在の時刻が所定時間t0の前であれば、ステップST2に移行する。
【0063】
ステップST2では、入床温度設定部(72)が、予定入床時刻t2から予定入眠時刻t4までの時間幅、空調機(10)の冷房能力、又はリズム運転の設定温度Testなどに基づいて入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)を算出する。入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)が算出されると、ステップST3に移行する。
【0064】
ステップST3では、利用者によって予定入床時入力温度T1が入力されていれば、ステップST4に移行する一方、予定入床時入力温度T1が入力されていなければ、ステップST6に移行する。
【0065】
ステップST4では、入床温度設定部(72)によって、利用者による予定入床時入力温度T1が、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であるか否かが判断される。そして、予定入床時入力温度T1が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であれば、予定入床時設定温度TrをT1と設定し、ステップST7に移行する。
【0066】
一方で、予定入床時入力温度T1が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)外であれば、ステップST5に移行する。
【0067】
ステップST5では、予定入床時設定温度TrをThigh又はTlowと設定する。具体的には、T1>Thighの場合、予定入床時設定温度TrをThighと設定し、T1<Tlowの場合、予定入床時設定温度TrをTlowと設定し、ステップST7に移行する。
【0068】
ステップST6では、利用者によって入力されたリズム運転設定温度Testを予定入床時設定温度Trに設定し、ステップST7に移行する。
【0069】
ステップST7では、予備運転設定部(60)によって予備運転の開始時刻t1が算出され、調整運転設定部(71)によって調整運転の開始時刻t3が算出される。次に、ステップST8に移行する。
【0070】
ステップST8では、現在の時刻が予備運転設定部(60)によって設定された予備運転の開始時刻t1になっているか否かが判断される。現在時刻が予備運転の開始時刻t1になっている場合、ステップST9に移行する。
【0071】
ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度を予定入床時刻t2までに目標温度Trに調節する。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。
【0072】
ステップST10では、現在の時刻が調整運転設定部(71)で設定された調整運転の開始時刻t3になっているか否かが判断される。現在時刻が調整運転の開始時刻t3になっている場合、ステップST11に移行する。
【0073】
ステップST11では、調整運転制御部(82)によって空調機(10)の調整運転が開始され、寝室(5)の温度を予定入眠時刻t4までに目標温度Testに調節する。空調機(10)の調整運転が開始されると、ステップST12に移行する。
【0074】
ステップST12では、現在の時刻が設定入力部(34)で入力された予定入眠時刻t4になっているか否かが判断される。現在時刻が予定入眠時刻t4になっている場合、ステップ13に移行する。
【0075】
ステップST13では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST14に移行する。
【0076】
ステップST14では、現在の時刻が利用者が設定した起床時刻になっているか否かが判断される。現在時刻が起床時刻になっている場合、ステップ15に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0077】
−リズム運転−
次に、空調機(10)のリズム運転について図面に基づいて詳細に説明する。尚、空調機(10)では、利用者によってベース温度Tbaseが入力可能となっている。リズム運転では、リズム判定部(53)が平均算出部(図示なし)の心拍数の1分間の平均値を用いゼロ位相フィルタ(本実施形態では、逆フーリエフィルタ)によりフィルタ処理をして、ウルトラディアンリズムに対応した心拍の周期成分(ウルトラディアンリズム周期)を抽出する。このウルトラディアンリズム周期は、個人差があり、約60分から120分の周期で現れるため、60分から120分の周期で抽出している。
【0078】
続いて、空調制御部(80)において、予定入眠時刻t4から所定時間(90分)が経過したか否かが判定される。そして所定時間が経過していると、演算部(84)がリズム判定部(53)のウルトラディアンリズム周期の微分値を1分毎に導出していく。つまり、演算部(84)は、制御対象区間のウルトラディアンリズム周期を対象として1分毎に微分値を導出していく。次に、温度変更部(85)が演算部(84)の導出した1分毎の微分値が極大であるか極小であるかを検出する。
【0079】
そして、温度変更部(85)は、ウルトラディアンリズム周期の微分値の極大を検出するとΔtを1℃に設定する。これにより、空調機(10)の設定温度Testがベース温度Tbaseよりも1℃高い値に設定される。この設定温度Testは空調機(10)へ信号出力される。そうすると、冷房運転の場合は冷房能力が低下し、暖房運転の場合は暖房能力が増大し、寝室(5)の温度が上昇する。
【0080】
一方、温度変更部(85)は、ウルトラディアンリズム周期の微分値の極小を検出するとΔtを0℃に設定する。これにより、空調機(10)の設定温度Testがベース温度Tbaseと同じ値になる。この設定温度Testは、空調機(10)へ信号出力される。そうすると、冷房運転の場合は冷房能力が増大し、暖房運転の場合は暖房能力が低下し、寝室(5)の温度が低下する。
【0081】
温度変更部(85)がウルトラディアンリズム周期の微分値の極大を検出した場合と、極小を検出した場合の何れの場合であっても、続いてリズム運転制御部(83)が、空調機(10)へ設定温度Testの信号が出力されてから15分経過したか否かを判定する。15分が経過すると、上述した制御が同様に行われる。このように、15分間待機することにより、空調機(10)の設定温度Testが過剰に変更されるのを避けることができる。
【0082】
−制御例1−
次に、具体的な制御例1について説明する。制御例1では、就寝者が入室する前に寝室(5)を暖めておく場合について図3および図4に基づいて説明する。
【0083】
本制御例1において、ステップST1では、現在の時刻が所定時間t0の前であるため、ステップST2に移行する。
【0084】
ステップST2では、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)が算出されると、ステップST3に移行する。ステップST3では、利用者によって予定入床時入力温度T1が入力されているため、ステップST4に移行する。
【0085】
ステップST4では、予定入床時入力温度T1が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であるため、予定入床時設定温度TrをT1と設定し、ステップST7に移行する。
【0086】
ステップST7では、予備運転設定部(60)によって予備運転の開始時刻t1が算出され、調整運転設定部(71)によって調整運転の開始時刻t3が算出される。次に、ステップST8に移行する。ステップST8では、現在の時刻が予備運転の開始時刻t1になると、ステップST9に移行する。
【0087】
ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度が少しずつ上昇して予定入床時刻t2前に目標温度Trに近づく。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。ステップST10では、現在時刻が予定入床時刻t2と同時刻である調整運転の開始時刻t3(すなわち、t2=t3)になると、ステップST11に移行する。
【0088】
ステップST11では、調整運転制御部(82)によって空調機(10)の調整運転が開始され、寝室(5)の温度が低下して目標温度Testに近づく。空調機(10)の調整運転が開始されると、ステップST12に移行する。ステップST12では、現在の時刻が予定入眠時刻t4になると、ステップ13に移行する。ステップST13では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST14に移行する。ステップST14では、現在の時刻が起床時刻になると、ステップ15に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0089】
−制御例2−
次に、具体的な制御例2について説明する。制御例2では、就寝者が入室する前に寝室(5)を暖めておく場合について図3および図5に基づいて説明する。本制御例2では、図5に示すように、予定入床時刻t2と調整運転の開始時刻t3とが異なってる。
【0090】
具体的には、ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度が少しずつ上昇して予定入床時刻t2までに目標温度Trに近づく。そして、空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。ステップST10では、現在時刻が予定入床時刻t2から調整運転の開始時刻t3になるまで寝室(5)の温度を目標温度Trに保つ。そして、調整運転の開始時刻t3になると、ステップST11に移行する。
【0091】
−制御例3−
次に、具体的な制御例3について説明する。本制御例3では、就寝者の入室前に寝室(5)を冷却しておく場合について図3および図6に基づいて説明する。
【0092】
本制御例3において、ステップST1では、現在の時刻が所定時間t0の前であるため、ステップST2に移行する。ステップST2では、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)が算出されると、ステップST3に移行する。ステップST3では、利用者によって予定入床時入力温度T2が入力されているため、ステップST4に移行する。
【0093】
ステップST4では、予定入床時入力温度T2が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であるため、予定入床時設定温度TrをT2と設定し、ステップST7に移行する。
【0094】
ステップST7では、予備運転設定部(60)によって予備運転の開始時刻t1が算出され、調整運転設定部(71)によって調整運転の開始時刻t3が算出される。次に、ステップST8に移行する。ステップST8では、現在の時刻が予備運転の開始時刻t1になると、ステップST9に移行する。
【0095】
ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度が少しずつ低下して目標温度Trに近づく。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。ステップST10では、現在の時刻が予定入床時刻t2と同時刻である調整運転の開始時刻t3(すなわち、t2=t3)になると、ステップST11に移行する。
【0096】
ステップST11では、調整運転制御部(82)によって空調機(10)の調整運転が開始され、寝室(5)の温度が上昇して目標温度Testに近づく。空調機(10)の調整運転が開始されると、ステップST12に移行する。ステップST12では、現在の時刻が予定入眠時刻t4になると、ステップ13に移行する。ステップST13では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST14に移行する。ステップST14では、現在の時刻が起床時刻になると、ステップ15に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0097】
−制御例4−
次に、具体的な制御例4について説明する。本制御例4では、就寝者が入室する前に寝室(5)を冷却しておく場合について図3および図7に基づいて説明する。図7に示すように、本制御例4では、予定入床時刻t2と調整運転の開始時刻t3とが異なっている。
【0098】
具体的には、ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度が少しずつ低下して予定入床時刻t2までに目標温度Trに近づく。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。ステップST10では、現在時刻が予定入床時刻t2から調整運転の開始時刻t3になるまで寝室(5)の温度を目標温度Trに保つ。そして、調整運転の開始時刻t3になると、ステップST11に移行する。
【0099】
−制御例5−
次に、具体的な制御例5について説明する。本制御例5では、利用者が入力した予定入床時入力温度T1、およびリズム運転設定温度Testが同じ温度となる場合について図3および図8に基づいて説明する。尚、本制御例3では、制御例1および2と異なる点についてのみ説明する。
【0100】
本制御例5において、まず、ステップST1では、現在の時刻が所定時間t0の前であるため、ステップST2に移行する。ステップST2では、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)が算出されると、ステップST3に移行する。ステップST3では、利用者によって予定入床時入力温度T1が入力されていないため、ステップST6に移行する。ステップST6では、利用者の入力したリズム運転設定温度Testを予定入床時設定温度Trに設定し、ステップST7に移行する。ステップST7では、予備運転設定部(60)によって予備運転の開始時刻t1が算出され、調整運転設定部(71)によって調整運転の開始時刻t3が算出される。次に、ステップST8に移行する。ステップST8では、現在の時刻が予備運転の開始時刻t1になると、ステップST9に移行する。
【0101】
ステップST9では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度が少しずつ上昇して目標温度Trに近づく。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST10に移行する。ステップST10では、現在時刻が予定入床時刻t2と同時刻である調整運転の開始時刻t3(すなわち、t2=t3)になると、ステップST11に移行する。
【0102】
ステップST11では、調整運転制御部(82)によって空調機(10)の調整運転が開始され、寝室(5)の温度が目標温度Testに保たれる。空調機(10)の調整運転が開始されると、ステップST12に移行する。ステップST12では、現在の時刻が予定入眠時刻t4になると、ステップ13に移行する。ステップST13では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST14に移行する。ステップST14では、現在の時刻が起床時刻になると、ステップ15に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0103】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testになるように空調機(10)を調整運転させたため、リズム運転の開始時の寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testにすることができる。これにより、就寝者の入眠後のリズム運転の温度制御性を向上させることができる。
【0104】
また、調整運転開始前に寝室(5)の温度が入床温度設定部(72)の予定入床時設定温度Trになるように空調機(10)を予備運転させたため、寝室(5)と他の部屋の温度差を縮めることができる。これにより、例えば、冬場などに就寝者が暖房された他の部屋から寝室(5)に移動した場合のように、他の部屋と寝室(5)の温度差が大きい場合に就寝者が感じる不快感を低減することができる。
【0105】
また、利用者が調整運転の運転開始の温度を入力できるようにしたため、利用者の満足度を高めることができる。一方で、入床温度設定部(72)では、利用者の入力温度に基づいて予定入床時設定温度Trを設定したため、寝室(5)の温度を確実にリズム運転の設定温度にすることができる。
【0106】
また、入床温度設定部(72)の予定入床時設定温度Trをリズム運転の設定温度Testにしたため、入眠前の寝室(5)の温度をリズム運転の設定温度Testに確実に近づけることができる。これにより、就寝者の入眠後のリズム運転の制御性を向上させることができる。
【0107】
〈発明の実施形態2〉
次に、上記実施形態2について図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態2に係る空調制御システムは、上記実施形態1に係る空調制御システム(1)と入床判定および入眠判定がなされる点が異なっている。尚、本実施形態2では、上記実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0108】
−運転制御−
空調機(10)の運転制御について図9および図10に基づいて説明する。空調機(10)の運転制御では、就寝者を含む利用者があらかじめ本体ユニット(30)の設定入力部(34)によって所定時間t0、予定入床時刻t2、予定入床時設定温度Trと、予定入眠時刻t4と、リズム運転設定温度Testを入力することによって図9および図10のフローチャートに基づく運転制御が行われる。
【0109】
まず、ステップST1では、現在の時刻が所定時間t0の前であるか否かが判断される。現在の時刻が所定時間t0の前であれば、ステップST2に移行する。
【0110】
ステップST2では、入床温度設定部(72)が、予定入床時刻t2から予定入眠時刻t4までの時間幅、空調機(10)の冷房能力又はリズム運転の設定温度Testなどに基づいて入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)を算出する。入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)が算出されると、ステップST3に移行する。
【0111】
ステップST3では、利用者によって予定入床時入力温度T1が入力されていれば、ステップST4に移行する一方、予定入床時入力温度T1が入力されていなければ、ステップST6に移行する。
【0112】
ステップST4では、入床温度設定部(72)によって、利用者による予定入床時入力温度T1が、入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であるか否かが判断される。そして、予定入床時入力温度T1が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)内であれば、予定入床時設定温度TrをT1と設定し、ステップST7に移行する。
【0113】
一方で、予定入床時入力温度T1が入床時設定可能温度範囲(Thigh≧Tr≧Tlow)外であれば、ステップST5に移行する。
【0114】
ステップST5では、予定入床時設定温度TrをThigh又はTlowと設定する。具体的には、T1>Thighの場合、予定入床時設定温度TrをThighと設定し、T1<Tlowの場合、予定入床時設定温度TrをTlowと設定し、ステップST7に移行する。
【0115】
ステップST6では、利用者によって入力されたリズム運転設定温度Testを予定入床時設定温度Trに設定し、ステップST7に移行する。
【0116】
ステップST7では、予備運転設定部(60)によって予備運転の開始時刻t1が算出され、調整運転設定部(71)によって調整運転の開始時刻t3が算出される。次に、ステップST16に移行する。
【0117】
ステップST16では、現在の時刻が予備運転設定部(60)によって設定された予備運転の開始時刻t1になっているか否かが判断される。また、入床判定部(51)によって就寝者の入床/離床判定が行われる。現在時刻が予備運転の開始時刻t1になっている場合、ステップST18に移行する。一方、現在時刻が予備運転の開始時刻t1になっていない場合、ステップST17に移行する。ステップST17では、入床判定部(51)によって「入床」と判定されると、ステップST18に移行する。
【0118】
ステップST18では、予備運転制御部(81)によって空調機(10)の予備運転が開始され、寝室(5)の温度を予定入床時刻t2までに目標温度Trに調節する。空調機(10)の予備運転が開始されると、ステップST19に移行する。
【0119】
ステップST19では、現在の時刻が調整運転設定部(71)で設定された調整運転の開始時刻t3になっているか否かが判断される。また、予備運転開始後から睡眠判定部(52)によって就寝者の入眠判定が行われる。現在時刻が調整運転の開始時刻t3になっている場合、ステップST24に移行する。一方、現在時刻が調整運転の開始時刻t3になっていない場合、ステップST20に移行する。ステップST20では、睡眠判定部(52)によって「入眠」と判定されると、ステップST21へ移行する。
【0120】
ステップST21では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST22に移行する。
【0121】
ステップST22では、現在の時刻が利用者が設定した起床時刻になっているか否かが判断される。現在時刻が起床時刻になっている場合、ステップST23に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0122】
一方、現在時刻が調整運転の開始時刻t3になっている場合、ステップST24では、調整運転制御部(82)によって空調機(10)の調整運転が開始され、寝室(5)の温度を予定入眠時刻t4までに目標温度Testに調節する。空調機(10)の調整運転が開始されると、ステップST25に移行する。
【0123】
ステップST25では、現在の時刻が設定入力部(34)で入力された予定入眠時刻t4になっているか否かが判断される。現在時刻が予定入眠時刻t4になっている場合、ステップST26に移行する。現在時刻が予定入眠時刻t4になっていない場合、ステップST31に移行する。
【0124】
ステップST26では、睡眠判定部(52)によって「入眠」と判定されると、ステップST28へ移行する。一方、睡眠判定部(52)によって「入眠」と判定されなければ、寝室(5)の温度は目標温度Testに保たれる。そして、再び睡眠判定部(52)によって「入眠」と判定されると、ステップST28へ移行する。
【0125】
ステップST28では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST29に移行する。
【0126】
ステップST29では、現在の時刻が利用者が設定した起床時刻になっているか否かが判断される。現在時刻が起床時刻になっている場合、ステップST30に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0127】
一方、ステップST31では、睡眠判定部(52)によって「入眠」と判定されると、ステップST32へ移行する。ステップST32では、リズム運転制御部(83)によって空調機(10)のリズム運転が開始され、ステップST33に移行する。
【0128】
ステップST33では、現在の時刻が利用者が設定した起床時刻になっているか否かが判断される。現在時刻が起床時刻になっている場合、ステップST34に移行し、リズム運転制御部(83)は、空調機(10)を停止してリズム運転を終了する。
【0129】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1および2について、以下のような構成としてもよい。
【0130】
上記実施形態1および2では、予定入床時刻t2を用いたが、本発明はこれに限られず、就寝者の入室時刻前後から就寝者の入眠時刻までの間においてt2を設定するようにすればよい。
【0131】
上記実施形態1および2では、利用者が設定入力部(34)において、時刻t0、予定入床時刻t2、予定入床時入力温度T1、予定入眠時刻t4、およびリズム運転の設定温度Testが就寝者を含む利用者自身が入力可能に構成したが、本発明はこのような構成に限られない。
【0132】
具体的には、図11に示すように、設定入力部(34)の代わりに、判定部(50)が心拍数のデータを記憶する記憶部(54)と導出部(55)を備えるようにしてもよい。
【0133】
導出部(55)では、記憶部(54)に記憶された過去の心拍データから就寝者の予定入床時刻t2、予定入床時入力温度T1、予定入眠時刻t4、およびリズム運転の設定温度Testを推測して導出する。そして、これらの導出された値に基づいて予備運転、調整運転、およびリズム運転が行われる。これによれば、入床温度設定部(72)の予定入床時設定温度Trを周期成分データに基づいて設定するようにしたため、就寝者の普段の生活リズムに合わせた制御を行うことができる。尚、記憶部(54)および導出部(55)と設定入力部(34)とを両方備えるようにしてもよい。
【0134】
また、上記各実施形態では、体動信号から心拍数を算出し、該心拍数からウルトラディアンリズムに対応した周期成分を抽出して睡眠リズムとしていたが、睡眠リズムの検出方法はこれに限られない。例えば、体動信号から1分間の標準偏差を算出して体動とし、該体動からウルトラディアンリズムに対応した周期成分を抽出して睡眠リズムとしてもよい。また、体動信号から呼吸の周波数帯域を抽出して1分間の平均呼吸数を算出して呼吸数とし、該呼吸数からウルトラディアンリズムに対応した周期成分を抽出して睡眠リズムとしてもよい。さらに、就寝者の心拍数、体動及び呼吸数のいずれか2つ又は全てから睡眠リズムを検出することとしてもよい。
【0135】
また、上記各実施形態では、体動信号から1分間の標準偏差を算出して体動とし、該体動により就寝者の入眠を判定していたが、入眠判定に用いる就寝者の生理量の情報はこれに限られない。例えば、体動信号から算出した心拍数又は呼吸数を用いて入眠判定を行うこととしてもよい。つまり、心拍数又は呼吸数が所定時間以上継続して判定閾値を下回る場合に就寝者が入眠したと判定することとしてもよい。また、就寝者の心拍数、体動及び呼吸数のいずれか2つ又は全てを用いて入眠判定を行うこととしてもよい。
【0136】
なお、体動信号から単位時間当たりの心拍数、体動又は呼吸数を算出する手法は、いかなる手法であってもよい。
【0137】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上説明したように、本発明は、寝室内の空調能力を制御する空調制御システムについて有用である。
【符号の説明】
【0139】
5 寝室
10 空調手段
34 設定入力部
40 本体ユニット
53 リズム判定部
54 記憶部
71 調整運転設定部
72 入床温度設定部
81 予備運転制御部
82 調整運転制御部
83 リズム運転制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機(10)の運転を制御して寝室(5)内の空調を制御する空調制御システムであって、
寝室(5)内の就寝者の生理量から就寝者のウルトラディアンリズムに対応した周期成分を抽出するリズム判定部(53)と、
就寝者の入眠後に、上記リズム判定部(53)が抽出した周期成分に対応して空調機(10)の設定温度を増減させるリズム運転を実行するリズム運転制御部(83)と、
該リズム運転制御部(83)のリズム運転開始前の所定時間において空調機(10)を制御すると共に、寝室(5)の温度が所定の初期温度範囲内にある状態から寝室(5)の温度がリズム運転の設定温度になるように空調機(10)を制御する調整運転制御部(82)と、
該調整運転制御部(82)の入眠前運転の運転開始の設定温度を設定する入床温度設定部(72)と、
上記調整運転制御部(82)の入眠前運転開始前の所定時間において、寝室(5)の温度が上記入床温度設定部(72)で設定した設定温度になるように空調機(10)を制御する予備運転制御部(81)とを備えている
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
利用者が入眠前運転の運転開始の設定温度を入力する設定入力部(34)を備え、
上記入床温度設定部(72)は、上記利用者の入力した温度に基づいて設定温度を設定するよう構成されている
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記リズム判定部(53)により抽出された周期成分データを記憶する記憶部(54)を備え、
上記入床温度設定部(72)は、上記記憶部(54)に記憶された周期成分データに基づいて設定温度を設定するよう構成されている
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記入床温度設定部(72)は、入眠前運転の運転開始の設定温度をリズム運転の設定温度に設定するよう構成されている
ことを特徴とする空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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