説明

空調制御装置および方法

【課題】総和風量が不足した場合に、総和風量を総和風量下限値以上の値に増加させると同時に、室内温度の制御性を改善する。
【解決手段】空調制御装置15は、給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように、空調機が供給する給気の温度を制御する給気温度制御部150と、各変風量ユニットに供給される風量の総和である総和風量値を計測または演算する総和風量導出部152と、総和風量値に応じて、空調機が供給する給気の風量を制御する給気風量制御部151と、総和風量値と総和風量下限値とを比較して、風量不足か否かを判定する風量不足判定部154と、風量不足と判定された場合に、変風量ユニットが風量を増やす方向に給気温度設定値を変更する給気温度設定部155とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに係り、特に空調機と複数の変風量ユニットとを備えた空調システムにおける空調制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のVAV(Variable Air Volume)ユニットが設置された被制御空間の空調制御は、各VAVユニットが吹き出す風量を負荷に応じて演算することにより、行われる。また、あらかじめ空調機の給気定格(例えば4000CMH)および最小外気量(例えば1000CMH)が定められ、また各VAVユニットの最大風量(例えば1000CMH)および最小風量(例えば200CMH)が定められている。被制御エリアの環境を維持するための換気の必要性により、被制御空間に送られる風量の総和には、最低限の必要量という制約がある。その総和風量の下限値を確保するために、各被制御エリアのVAVユニットの最小風量が0よりも大きめの数値に固定されている。
【0003】
図5は従来の空調システムにおける最小風量設定の例を示す図である。図5に示す空調システムは、空調機1と、空調機1への冷水の量を制御する冷水弁2と、空調機1への温水の量を制御する温水弁3と、空調機1からの給気を被制御空間9へ供給する給気ダクト7と、被制御空間9へ供給する給気の量を被制御エリアZ1〜Z4毎に制御するVAVユニット8−1〜8−4と、VAVユニット8−1〜8−4を制御する制御装置であるVAVコントロールユニット11−1〜11−4と、被制御空間9の室内温度を被制御エリアZ1〜Z4毎に計測する温度センサ12−1〜12−4と、空調機1に取り入れる外気の量を調整する外気ダンパ13と、給気の温度を計測する温度センサ14とを備えている。空調機1は、冷却コイル4と、加熱コイル5と、給気ファン6とを有する。図5における10−1〜10−4は給気の吹出口である。
【0004】
図5の例では、被制御エリアZ1のVAVユニット8−1の風量が900CMH、被制御エリアZ2のVAVユニット8−2の風量が700CMH、被制御エリアZ3,Z4のVAVユニット8−3,8−4の風量が200CMHとなっている。すなわち、被制御エリアZ3,Z4については空調負荷が少ないために、VAVユニット8−3,8−4の風量が最小風量に設定されている。このように、VAVユニット8−3,8−4の風量が最小風量に設定されている場合、風量を更に下げることができなくなるので、制御可能な温度範囲に制約が生じ、冷房運転の場合に室温が低くなり過ぎたり、暖房運転の場合に室温が高くなり過ぎたりする可能性があった。
【0005】
そこで、総和風量を総和風量下限値以上の値に維持しつつ、各被制御エリアの風量が最小風量設定値によって制約されることによる制御の限界を改善する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1、特許文献2に開示された技術は、各被制御エリアの要求風量(操作量)の総和が総和風量下限値を下回っている場合は、各被制御エリアの総和風量が総和風量下限値以上の値になるようにした上で、各VAVユニットの風量を決定するようにしたものである。
【0006】
図6は特許文献1、特許文献2に開示された技術に基づく最小風量設定の例を示す図である。図6の例では、被制御エリアZ1のVAVユニット8−1の風量が900CMH、被制御エリアZ2のVAVユニット8−2の風量が700CMH、被制御エリアZ3のVAVユニット8−3の風量が50CMH、被制御エリアZ4のVAVユニット8−4の風量が100CMHとなっている。したがって、総和風量は900CMH+700CMH+50CMH+100CMH=1750CMHである。
【0007】
このように、図6の例では、総和風量が総和風量下限値1000CMH以上の値になるようにしつつ、被制御エリアZ3,Z4のVAVユニット8−3,8−4の最小風量設定値を被制御エリアZ3,Z4の負荷に応じて下げているので、最小風量設定値の制約を緩和することができ、冷房運転の場合に室温が低くなり過ぎたり、暖房運転の場合に室温が高くなり過ぎたりするという問題を解消することができる。また、図6の例では、総和風量を削減することで、図5の例に比べて消費エネルギーを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−79378号公報
【特許文献2】特開2010−79381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、VAVユニットの停止や空調負荷の低下により、総和風量が総和風量下限値を下回ると、最小風量設定値を上げて対応するために、以下のような問題点が生じる可能性があった。図7、図8は従来の問題点を説明する図である。図7の例では、被制御エリアZ1のVAVユニット8−1の風量が750CMH、被制御エリアZ2のVAVユニット8−2の風量が100CMH、被制御エリアZ3,Z4のVAVユニット8−3,8−4の風量が0CMHとなっている。このうち、被制御エリアZ3のVAVユニット8−3については空調負荷が無いという理由で風量が0CMHになっているものとし、被制御エリアZ4のVAVユニット8−4については制御が停止しているという理由で風量が0CMHになっているものとする。総和風量は750CMH+100CMH+0CMH+0CMH=850CMHであり、総和風量下限値1000CMHを下回っている。
【0010】
従来の技術では、図7に示した状態になると、全体の総和風量を維持するために、図8に示すように最小風量設定値を上げて対応する。図8の例では、被制御エリアZ2,Z3のVAVユニット8−2,8−3の最小風量設定値を125CMHとしている。これにより、総和風量は750CMH+125CMH+125CMH+0CMH=1000CMHとなる。このように、従来の技術によれば、総和風量を総和風量下限値以上の値に維持することができる。
【0011】
しかしながら、被制御エリアZ2については負荷が小さいにも拘わらず、風量を100CMHから125CMHに上げることになり、被制御エリアZ3については負荷が無いにも拘わらず、風量を0CMHから125CMHに上げることになるので、必要以上の風量を供給することになり、冷房運転の場合に室温が低くなり過ぎたり、暖房運転の場合に室温が高くなり過ぎたりする可能性があった。
なお、同様の問題は外気が不足した場合にも発生する。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、風量が不足した場合に、総和風量を総和風量下限値以上の値に増加させると同時に、室内温度の制御性を改善することができる空調制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、空調機と、この空調機から複数の被制御エリアに供給される給気の風量を被制御エリアの負荷状況に応じて制御する複数の変風量ユニットとを備えた空調システムにおける空調制御装置において、給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように、前記空調機が供給する給気の温度を制御する給気温度制御手段と、被制御エリアの環境を維持するために必要な風量に対して風量不足か否かを判定する風量不足判定手段と、この風量不足判定手段が風量不足と判定した場合に、前記変風量ユニットが風量を増やす方向に前記給気温度設定値を変更する給気温度設定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御装置の1構成例は、さらに、各変風量ユニットに供給される風量の総和である総和風量値を計測または演算する総和風量導出手段と、前記総和風量値に応じて、前記空調機が供給する給気の風量を制御する給気風量制御手段とを備え、前記風量不足判定手段は、前記総和風量値とあらかじめ定められた総和風量下限値とを比較して、風量不足か否かを判定することを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御装置の1構成例は、さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御手段を備え、前記風量不足判定手段は、外気不足か否かを判定することにより、風量不足か否かを判定することを特徴とするものである。
また、本発明の空調制御装置の1構成例は、さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御手段を備え、前記風量不足判定手段は、前記総和風量値と前記総和風量下限値とを比較して総和風量不足か否かを判定すると共に、外気不足か否かを判定し、総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立する場合に、風量不足と判定することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、空調機と、この空調機から複数の被制御エリアに供給される給気の風量を被制御エリアの負荷状況に応じて制御する複数の変風量ユニットとを備えた空調システムにおける空調制御方法において、給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように、前記空調機が供給する給気の温度を制御する給気温度制御ステップと、被制御エリアの環境を維持するために必要な風量に対して風量不足か否かを判定する風量不足判定ステップと、風量不足と判定した場合に、前記変風量ユニットが風量を増やす方向に前記給気温度設定値を変更する給気温度設定ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、風量不足か否かを判定し、風量不足と判定した場合に、変風量ユニットが風量を増やす方向に給気温度設定値を変更することにより、動作中の各変風量ユニットがそれぞれ対応する被制御エリアの負荷状況に応じて風量を増加させる。本発明では、風量が増加しても、室内温度計測値は変化しないので、冷房運転の場合に室温が低くなり過ぎたり、暖房運転の場合に室温が高くなり過ぎたりすることはない。したがって、本発明では、総和風量が不足した場合に、総和風量を総和風量下限値以上の値に増加させることができ、かつ室内温度の制御性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る空調システムの空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る空調システムの空調制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る空調システムの効果を説明する図である。
【図5】従来の空調システムにおける最小風量設定の例を示す図である。
【図6】従来の空調システムにおける最小風量設定の別の例を示す図である。
【図7】従来の空調システムの問題点を説明する図である。
【図8】従来の空調システムの問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の原理]
本発明では、各VAVユニットの総和風量が被制御空間に最低限必要な総和風量下限値を下回る場合、または空調機に導入する外気が不足している場合、給気温度設定値を変更し、各VAVユニットの風量を上げるようにしている。これにより、本発明では、風量増加の必要性がない被制御エリアに対して必要以上の風量を供給してしまうという問題を回避することができる。
【0018】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態の空調システムは、空調機1と、冷水弁2と、温水弁3と、給気ダクト7と、VAVユニット8−1〜8−4と、VAVコントロールユニット11−1〜11−4と、温度センサ12−1〜12−4と、外気ダンパ13と、温度センサ14と、空調制御装置15とを備えている。
【0019】
空調機1は、冷却コイル4と、加熱コイル5と、給気ファン6とを有する。VAVユニット8−1〜8−4とVAVコントロールユニット11−1〜11−4とは、被制御空間9の被制御エリアZ1〜Z4毎に設けられる。VAVユニット8−1〜8−4内には図示しないダンパが設けられており、VAVユニット8−1〜8−4を通過する給気の量を調整できるようになっている。図1における10−1〜10−4は給気の吹出口である。
【0020】
空調機1における給気ファン6の回転数と、冷水弁2および温水弁3の開度は空調制御装置15により制御される。空調制御装置15は、給気温度設定値と温度センサ14によって計測された給気温度計測値との偏差に基づいて、例えばPID演算により操作量を演算し、この操作量を冷水弁2または温水弁3に出力して弁開度を制御する。冷却動作の場合、操作量に応じて冷水弁2の開度が決定されることにより、空調機1の冷却コイル4に供給される冷水の量が制御される。一方、加熱動作の場合、操作量に応じて温水弁3の開度が決定されることにより、空調機1の加熱コイル5に供給される温水の量が制御される。すなわち、空調制御装置15は、空調機1が冷却動作している場合、温水弁3の開度を0%にし、給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように冷水弁2の開度を制御する。また、空調制御装置15は、空調機1が加熱動作している場合、冷水弁2の開度を0%にし、給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように温水弁3の開度を制御する。
【0021】
冷却コイル4によって冷却された空気または加熱コイル5によって加熱された空気は、給気ファン6によって送り出される。給気ファン6によって送り出された空気(給気)は、給気ダクト7を介して各被制御エリアZ1〜Z4のVAVユニット8−1〜8−4へ供給され、VAVユニット8−1〜8−4を通過して各被制御エリアZ1〜Z4へ供給されるようになっている。
【0022】
VAVコントロールユニット11−1〜11−4は、各被制御エリアZ1〜Z4の温度センサ12−1〜12−4によって計測された室内温度計測値と室内温度設定値との偏差に基づいて、例えばPID演算により各被制御エリアZ1〜Z4の要求風量を演算して要求風量値を空調制御装置15へ送る一方、その要求風量を確保するように、VAVユニット8−1〜8−4内のダンパ(不図示)の開度を制御する。ただし、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4には、空調制御装置15から最小風量設定値が設定される。VAVコントロールユニット11−1〜11−4は、演算した要求風量値が最小風量設定値を下回る場合、最小風量設定値を要求風量値とする。本実施の形態では、最小風量設定値は0CMHに設定されている。
【0023】
空調制御装置15は、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4から送られてくる計測風量値からシステム全体の総和風量値を演算し、この総和風量値に応じた給気ファン回転数を求め、この求めた給気ファン回転数となるように空調機1を制御する。
以上の動作は、従来の空調システムと同様である。
【0024】
次に、本実施の形態の特徴について説明する。図2は空調制御装置15の構成を示すブロック図である。空調制御装置15は、給気温度制御部150と、給気風量制御部151と、総和風量導出部152と、総和風量下限値記憶部153と、風量不足判定部154と、給気温度設定部155と、CO2制御部156と、外気不足判定部157とを有する。
【0025】
給気温度制御部150は、空調機1の冷水弁2および温水弁3の開度を制御することにより、空調機1が供給する給気の温度を制御する。給気風量制御部151は、空調機1の給気ファン回転数を制御することにより、空調機1が供給する給気の風量を制御する。総和風量導出部152は、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4から送られてくる計測風量値の総和である総和風量値を演算する。
【0026】
なお、本実施の形態では、各VAVユニット8−1〜8−4が計測した計測風量値を各VAVコントロールユニット11−1〜11−4を介して受け取って総和風量値を演算しているが、総和風量値そのものを計測するようにしてもよい。この計測は、給気ダクト7の根本(温度センサ14が設けられている位置)に風量センサを設置することで実現することができる。また、総和風量導出部152は、空調機1のファン回転数を調整するインバータ出力値から総和風量値を演算することも可能である。この場合、総和風量値は、空調機定格風量値とインバータ出力値(%)との積によって求めることができる。また、総和風量導出部152は、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4から送られてくる要求風量値の総和を総和風量値として演算するようにしてもよい。
総和風量下限値記憶部153は、室圧や換気量などから決まる、被制御空間9に最低限必要な総和風量を表す総和風量下限値をあらかじめ記憶している。
【0027】
風量不足判定部154は、総和風量導出部152が計測または演算した総和風量値と総和風量下限値記憶部153に記憶されている総和風量下限値とを比較して、風量不足か否かを判定する。給気温度設定部155は、風量不足と判定された場合、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増やす方向に給気温度設定値を変更する。
【0028】
CO2制御部156は、所定のCO2濃度設定値と図示しないCO2センサによって計測された被制御空間9のCO2濃度計測値との偏差に基づいて、例えばPID演算により操作量を演算し、この操作量を外気ダンパ13に出力してダンパ開度を制御する。こうして、被制御空間9のCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように外気導入量を制御する。外気不足判定部157は、外気不足か否かを判定する。
【0029】
次に、本実施の形態の空調制御装置15の動作を図3を用いて説明する。給気温度制御部150は、上記のように空調機1の冷水弁2および温水弁3の開度を制御する(図3ステップS1)。
CO2制御部156は、上記のように外気導入量を制御する(ステップS2)。
【0030】
総和風量導出部152は、総和風量値を計測または演算する(ステップS3)。
給気風量制御部151は、上記のように総和風量値に応じて空調機1の給気ファン回転数を制御することにより、空調機1が供給する給気の風量を制御する(ステップS4)。
【0031】
風量不足判定部154は、総和風量導出部152が計測または演算した総和風量値と総和風量下限値記憶部153に記憶されている総和風量下限値とを比較して、総和風量不足か否かを判定する(ステップS5)。風量不足判定部154は、総和風量値が総和風量下限値を下回る場合、総和風量不足と判定する。
【0032】
一方、外気不足判定部157は、外気不足か否かを判定する(ステップS6)。外気不足か否かは以下のようにして判定される。まず、外気不足判定部157は、CO2制御出力が最大かどうか、すなわちCO2制御部156が演算した操作量が最大値100%かどうかを判定する。また、外気不足判定部157は、給気風量制御部151が演算した給気風量制御出力が一定値(例えば70%)以下かどうかを判定する。外気不足判定部157は、CO2制御出力が最大、かつ給気風量制御出力が一定値以下の場合、外気不足と判定する。総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立した場合、風量不足と判定されたことになる。
【0033】
給気温度設定部155は、総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立した場合、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増やす方向に給気温度設定値を所定幅(たとえば2℃)だけ変更する(ステップS7)。空調機1が室内温度よりも低い温度の冷風を吹いている場合、VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増やす方向とは、給気温度設定値を上げる方向のことを指す。また、空調機1が室内温度よりも高い温度の温風を吹いている場合、VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増やす方向とは、給気温度設定値を下げる方向のことを指す。冷風か温風かは、例えば被制御エリアZ1〜Z4毎の室内温度計測値を、対応するVAVユニット8−1〜8−4の風量で重み付けした加重平均値と給気温度とを比較して判断したり、被制御空間9から空調機1に戻される還気の温度を室内温度として、この室内温度と給気温度とを比較して判断したりすることができる。
空調制御装置15は、以上のようなステップS1〜S7の処理を空調制御が停止するまで(図3ステップS8においてYES)、一定時間毎に行う。
【0034】
ステップS7において、給気温度設定部155が給気温度設定値を変更すると、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4は風量を増やす方向に動作する。例えば空調機1が冷風を吹いている場合に給気温度設定値が上がると、給気温度制御部150による冷水弁制御によって給気温度が上がり、結果として室内温度計測値が上がるので、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4はVAVユニット8−1〜8−4の風量を増加させて、室内温度計測値が室内温度設定値と一致するように制御する。また、空調機1が温風を吹いている場合に給気温度設定値が下がると、給気温度制御部150による温水弁制御によって給気温度が下がり、結果として室内温度計測値が下がるので、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4はVAVユニット8−1〜8−4の風量を増加させて、室内温度計測値が室内温度設定値と一致するように制御する。
【0035】
各VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増加させたことにより、総和風量導出部152が計測または演算する総和風量値が増加する(ステップS3)。
給気風量制御部151は、総和風量値の増加に応じて給気風量を増加させることになる(ステップS4)。こうして、総和風量値が総和風量下限値以上になるまで、給気温度設定値が繰り返し変更されることになる。
【0036】
図4は本実施の形態の効果を説明する図である。なお、図4の例は空調機1が冷却動作をしている場合を示している。図7に示したように総和風量値が総和風量下限値1000CMHを下回る場合、あるいは外気不足の場合、給気温度設定部155は給気温度設定値を上昇させる。この結果、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4は、VAVユニット8−1〜8−4の風量を増加させる。図7、図4の例では、被制御エリアZ3のVAVユニット8−3については空調負荷が無いという理由で風量が0CMHになっており、被制御エリアZ4のVAVユニット8−4については制御が停止しているという理由で風量が0CMHになっている。そこで、風を吹き出す必要のあるVAVユニット8−1,8−2についてVAVコントロールユニット11−1,11−2が風量を増加させる。
【0037】
この結果、VAVユニット8−1については風量が750CMHから825CMHに変更され、VAVユニット8−2については風量が100CMHから175CMHに変更される。このときの総和風量は825CMH+175CMH+0CMH+0CMH=1000CMHであり、総和風量下限値1000CMHと一致する値まで総和風量が増加したことになる。被制御エリアZ1,Z2については風量が増加しているが、室内温度計測値は変化しないので、冷房運転の場合に室温が低くなり過ぎたり、暖房運転の場合に室温が高くなり過ぎたりすることはない。
【0038】
以上、説明したように、本実施の形態では、総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立する場合に、VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を増やす方向に給気温度設定値を変更することにより、VAVコントロールユニット11−1〜11−4がそれぞれ対応する被制御エリアの負荷状況に応じて風量を増加させる。したがって、本発明では、総和風量が不足した場合または外気が不足した場合に、総和風量を総和風量下限値以上の値に増加させることができ、かつ室内温度の制御性を改善することができ、冷やし過ぎや暖め過ぎなどの室内環境の悪化をできるだけ少なくすることができる。
【0039】
なお、風量が不足しておらず、かつ外気も不足していない場合には、給気温度設定部155は、通常のVAV給気温度最適設定制御(ロードリセット制御)などにより、給気温度設定値を最適値に決定する。
【0040】
また、本実施の形態において、給気温度設定部155は、総和風量値が所定の総和風量上限値を上回った場合、各VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を減らす方向に給気温度設定値を所定幅(たとえば2℃)だけ変更するようにしてもよい。空調機1が室内温度よりも低い温度の冷風を吹いている場合、VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を減らす方向とは、給気温度設定値を下げる方向のことを指す。また、空調機1が室内温度よりも高い温度の温風を吹いている場合、VAVコントロールユニット11−1〜11−4が風量を減らす方向とは、給気温度設定値を上げる方向のことを指す。
また、本実施の形態では、給気温度設定値を変更する際に所定幅だけ変更するようにしているが、PID制御のようなロジックで給気温度設定値の変更幅を演算するようにしてもよい。
【0041】
CO2制御部156と外気不足判定部157とは必須の構成要件ではない。CO2制御が未導入の空調システムの場合、図3のステップS2,S6の処理が実施されないことになるので、給気温度設定部155は、総和風量不足の場合に、給気温度設定値を変更すればよい(ステップS7)。
また、図3のステップS5の総和風量不足判定処理を実施せずに、ステップS6の外気不足判定処理のみを実施して、外気不足の場合に風量不足と判定して、給気温度設定値を変更するようにしてもよい。
【0042】
本実施の形態のVAVコントロールユニット11−1〜11−4と空調制御装置15の各々は、CPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、空調機と複数の変風量ユニットとを備えた空調システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…空調機、2…冷水弁、3…温水弁、4…冷却コイル、5…加熱コイル、6…給気ファン、7…給気ダクト、8−1〜8−4…VAVユニット、9…被制御空間、10−1〜10−4……吹出口、11−1〜11−4…VAVコントロールユニット、12−1〜12−4,14…温度センサ、13…外気ダンパ、15…空調制御装置、150…給気温度制御部、151…給気風量制御部、152…総和風量導出部、153…総和風量下限値記憶部、154…風量不足判定部、155…給気温度設定部、156…CO2制御部、157…外気不足判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機と、この空調機から複数の被制御エリアに供給される給気の風量を被制御エリアの負荷状況に応じて制御する複数の変風量ユニットとを備えた空調システムにおける空調制御装置において、
給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように、前記空調機が供給する給気の温度を制御する給気温度制御手段と、
被制御エリアの環境を維持するために必要な風量に対して風量不足か否かを判定する風量不足判定手段と、
この風量不足判定手段が風量不足と判定した場合に、前記変風量ユニットが風量を増やす方向に前記給気温度設定値を変更する給気温度設定手段とを備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調制御装置において、
さらに、各変風量ユニットに供給される風量の総和である総和風量値を計測または演算する総和風量導出手段と、
前記総和風量値に応じて、前記空調機が供給する給気の風量を制御する給気風量制御手段とを備え、
前記風量不足判定手段は、前記総和風量値とあらかじめ定められた総和風量下限値とを比較して、風量不足か否かを判定することを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の空調制御装置において、
さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御手段を備え、
前記風量不足判定手段は、外気不足か否かを判定することにより、風量不足か否かを判定することを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の空調制御装置において、
さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御手段を備え、
前記風量不足判定手段は、前記総和風量値と前記総和風量下限値とを比較して総和風量不足か否かを判定すると共に、外気不足か否かを判定し、総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立する場合に、風量不足と判定することを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
空調機と、この空調機から複数の被制御エリアに供給される給気の風量を被制御エリアの負荷状況に応じて制御する複数の変風量ユニットとを備えた空調システムにおける空調制御方法において、
給気温度計測値が給気温度設定値と一致するように、前記空調機が供給する給気の温度を制御する給気温度制御ステップと、
被制御エリアの環境を維持するために必要な風量に対して風量不足か否かを判定する風量不足判定ステップと、
風量不足と判定した場合に、前記変風量ユニットが風量を増やす方向に前記給気温度設定値を変更する給気温度設定ステップとを備えることを特徴とする空調制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の空調制御方法において、
さらに、各変風量ユニットに供給される風量の総和である総和風量値を計測または演算する総和風量導出ステップと、
前記総和風量値に応じて、前記空調機が供給する給気の風量を制御する給気風量制御ステップとを備え、
前記風量不足判定ステップは、前記総和風量値とあらかじめ定められた総和風量下限値とを比較して、風量不足か否かを判定することを特徴とする空調制御方法。
【請求項7】
請求項5記載の空調制御方法において、
さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御ステップを備え、
前記風量不足判定ステップは、外気不足か否かを判定することにより、風量不足か否かを判定することを特徴とする空調制御方法。
【請求項8】
請求項6記載の空調制御方法において、
さらに、前記複数の被制御エリアのCO2濃度があらかじめ設定されたCO2濃度設定値と一致するように、前記空調機への外気導入量を制御するCO2制御ステップを備え、
前記風量不足判定ステップは、前記総和風量値と前記総和風量下限値とを比較して総和風量不足か否かを判定すると共に、外気不足か否かを判定し、総和風量不足と外気不足のうち少なくとも一方が成立する場合に、風量不足と判定することを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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