空調機の運転制御方法
【課題】圧縮サイクルと冷媒ポンプサイクルとを切り替え可能な空調機における、冷媒ポンプのキャビテーション回避のための運転制御技術を提供する。
【解決手段】運転サイクルの切り替えは、所定の切替条件に従い判定されるが、その閾値を運転時の冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて更新可能とする。すなわち、室外機吸込み温度(To)に基づき判定する場合、ΔTcが十分に大きいときは、ポンプサイクル運転許容温度を高く設定変更することにより、冷媒ポンプ運転比率が高くなり、省エネ性向上に資する。一方、ΔTcが小さいときは、当該閾値でポンプサイクル運転を継続すればキャビテーションのおそれがある。これを回避するため、ポンプサイクル運転許容温度を低く設定変更して、圧縮サイクル運転比率を高くする。
【解決手段】運転サイクルの切り替えは、所定の切替条件に従い判定されるが、その閾値を運転時の冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて更新可能とする。すなわち、室外機吸込み温度(To)に基づき判定する場合、ΔTcが十分に大きいときは、ポンプサイクル運転許容温度を高く設定変更することにより、冷媒ポンプ運転比率が高くなり、省エネ性向上に資する。一方、ΔTcが小さいときは、当該閾値でポンプサイクル運転を継続すればキャビテーションのおそれがある。これを回避するため、ポンプサイクル運転許容温度を低く設定変更して、圧縮サイクル運転比率を高くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮サイクルと冷媒ポンプサイクルとを切り替え可能な空調機に係り、特に冷媒ポンプのキャビテーション回避のための運転制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機を使用して冷媒を循環させる圧縮サイクルと、冷媒ポンプを使用して冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルを、適宜、切り替えて運転可能な冷媒循環回路(以下、併用冷凍サイクルという)を備えた空調機が公知である。このような空調機においては、夏期等の外気温が高いときは圧縮サイクルにより運転し、冬期等の外気温が低いときは冷媒ポンプサイクル(以下、ポンプサイクルという)により運転することができ、圧縮サイクルのみの運転と比較して消費電力を少なくでき、省エネ性に優れた空調機が実現できる。
本願出願人は、かかる併用冷凍サイクルにおける圧縮サイクル⇔ポンプサイクルの切り替え条件に関して、外気温と室温との温度差、圧縮サイクルにおける冷房能力、圧縮機周波数等に基づき判定することを内容とする運転制御技術を開示している(特許文献1)。
さらに、本願出願人は、ポンプサイクル運転時のキャビテーション発生による能力不安定化、振動・エロージョンによる冷媒ポンプの損傷等を防止するため、冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度を求め、この値に基づいて室内側送風機、室外側送風機、膨張弁開度のいずれかを制御する技術を開示している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−61918号公報
【特許文献2】特開2004−169941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプサイクル運転時における冷媒過冷却度は、外気温度や運転条件のみならず、室外機(凝縮器)と冷媒ポンプの高低差や離隔距離等の空調機設置条件や、室外機と冷媒ポンプ間の冷媒温度上昇、冷房負荷等にも影響される。
このような理由により、この種の空調機の設置に際しては、室外機(凝縮器)と冷媒ポンプの高低差や離隔の設置条件を制限するとともに、サイクル切り替え条件を安全側に設定している。このため、室外機と冷媒ポンプとの離隔を厳しく制限し、設計の自由度を狭めているという現状がある。さらに、実際には室外機と冷媒ポンプの距離が短く、ポンプサイクル運転が可能な場合であっても、設定切替条件に従い圧縮サイクル運転となり、結果的に省エネルギー性に反するケースも生じる。
本出願は、上記各課題に対応した切り替え制御技術を備えた空調機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、併用冷凍サイクルを備えた空調機において、上記各課題を解決するためのものであって、以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係る併用冷凍サイクル空調機は、
(1)圧縮機と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に冷媒を循環させる圧縮サイクルと、冷媒ポンプと、前記室内機と、前記室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に前記冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルと、を備え、所定のサイクル切替条件に従って、2つのサイクルを切り替えて運転可能な空調機(以下、併用冷凍サイクル空調機という)であって、冷媒ポンプサイクル運転時における冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて、前記サイクル切替条件を更新可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0006】
本発明において、「圧縮サイクル」とは、圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張弁及びこれらを結ぶ冷媒配管により構成され、以下の冷媒循環によりヒートポンプサイクルを形成するものである。すなわち、圧縮機で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管内流れ凝縮器に導かれ、ここで外気と熱交換して冷却凝縮される。凝縮した液冷媒は、膨張弁を通過する際に断熱膨張し、低圧の液ガス並存状態となって蒸発器に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って自らは蒸発し、低圧冷媒ガスとなって冷媒配管を介して圧縮機に戻る。
【0007】
また、「冷媒ポンプサイクル」とは、冷媒ポンプ、蒸発器、凝縮器及びこれらを結ぶ冷媒配管により構成され、以下の冷媒循環によりヒートポンプサイクルを形成するものである。すなわち、冷媒は凝縮器において外気と熱交換して冷却され、液状態で冷媒ポンプに導かれ、ここで昇圧されて蒸発器に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとなって凝縮器に戻る。
「併用冷凍サイクル」とは、これら2つのサイクルを同一冷媒配管及びバイパス配管により構成し、三方弁又は切り替え弁により冷媒循環経路を変更可能とすることにより実現するものである。
【0008】
2つのサイクルの切り替えは、例えば(2)乃至(4)の切替条件に従い判定されるが、本発明では、その閾値を運転時の冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて更新可能とするものである。すなわち、室外機吸込み温度(To)に基づき判定する場合、ΔTcが十分に大きいときは、ポンプサイクル運転許容温度を高く設定変更することにより、冷媒ポンプ運転比率が高くなり、省エネ性向上に資する。一方、ΔTcが小さいときは、当該閾値でポンプサイクル運転を継続すればキャビテーションのおそれがある。これを回避するため、ポンプサイクル運転許容温度を低く設定変更して、圧縮サイクル運転比率を高くする。
【0009】
(2)前記サイクル切替条件が、室外機吸込み温度(To)の閾値(Tx)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差(ΔT=Tr−To)の閾値(ΔTx)のいずれかに基づくものであることを特徴とする。
室外機吸込み温度≒外気温度と考えられるため、冷媒過冷却度に大きな影響を与えるこの温度に基づいて閾値設定することが妥当である。
さらに冷房負荷も冷媒過冷却度に影響するため、冷房負荷と密接な関係を有する室内機吸込み温度(Tr)をも考慮することが望ましい。
【0010】
(3)前記サイクル切替条件が、空調機負荷率に対応して定まる室外機吸込み温度の閾値(Tx’)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差の閾値(ΔTx’)に基づく、ものであることを特徴とする。
【0011】
本発明は、冷媒ポンプサイクル→圧縮サイクル、圧縮サイクル→冷媒ポンプサイクルへの切り替えについて、それぞれ空調機負荷率を考慮した閾値設定を行うものである。
図6を参照して、圧縮サイクル→冷媒ポンプサイクルへの切り替えを例にとると、圧縮機周波数(∝空調機負荷率)に対して室外機吸込み温度の閾値関数Tx’=G(fc)を設定し、これを境界として運転時における(周波数、吸込み温度)に従って、圧縮サイクル領域とポンプサイクル領域に分ける。例えば条件P1(fc(1)、To(1))のときは圧縮サイクル運転継続、条件P2(fc(2)、To(2))のときはポンプサイクル運転に切り替えるものである。冷媒ポンプサイクル→圧縮サイクルへの切り替えについても、同様の閾値関数Tx’=H(fp)を設定することにより対応可能となる。
「空調機負荷率」の算定に際しては、上記の圧縮機周波数に基づくもののほか、圧縮機周波数と吸入側および吐出側の圧力と温度の関係(いわゆるコンプレッサーカーブ法)に基づく方法や、室内吸込空気温度と吹出空気温度、および室内総風量の関係に基づく方法等が例示される。
なお、ポンプサイクル運転時における冷媒過冷却度に基づく閾値の更新については、(1)以下の発明と同様に行う。
【0012】
(4)冷媒ポンプサイクル運転時に前記冷媒ポンプにキャビテーションが生じたときは、適用すべき前記閾値(Tx若しくはΔTxのいずれか、又はTx’若しくはΔTx’のいずれか)を変更可能に構成したことを特徴とする。
(5)冷媒ポンプサイクル運転時であって、サーモオフ状態からサーモオンへの移行時において、冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に対応して、室外側送風機起動時の回転数上昇率(dR/dt)を制御する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0013】
図10、11を参照して、冷媒ポンプにおけるキャビテーション発生メカニズム及び本発明による回避方法について説明する。
サーモオフ状態において、冷媒温度が徐々に上昇して冷媒ポンプ吸込口における過冷却度が小さくなった状態で、室外機側送風機を定格回転数で立ち上げるなど大きな能力操作量を与えると、冷媒ポンプ吸込口では圧力応答の方が温度応答より速いために過冷却度が一時的に小さくなり、キャビテーションが発生し易くなる。図10の下段(b)は、時刻τ0において瞬時に定格回転数Rfで駆動させる例を示している。このときのポンプ吸込口における冷媒温度Tc及び飽和温度Ts(飽和凝縮圧に相当する冷媒温度)の応答を示す。
時刻τ1まではTc>Tsとなり、過冷却度ΔTcは負の値となる。この場合、冷媒は気液二相状態となるため、ポンプ内でキャビテーションが発生しやすい領域となる。
一方、図11を参照して、本発明によれば、冷媒過冷却度(ΔTc)に対応した送風機の回転数上昇率(dR/dt)に制御するため(同図下段(b))、飽和温度Tsは徐々に下がり、冷媒温度Tcは飽和温度Tsより常に下側、すなわち過冷却の状態が維持されることになり、キャビテーションのおそれが解消される。
【0014】
(6)上記各発明において、切替条件を空調機設置条件に対応して変更可能とする手段を備えて成ることを特徴とする。
(7)前記空調機設置条件が、前記凝縮器から前記冷媒ポンプまでの配管延長、又は前記凝縮器と前記冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、前記冷媒ポンプから前記蒸発器までの配管延長のいずれかであることを特徴とする。
上記(6)、(7)の発明によれば、例えば室外機と冷媒ポンプの距離が短いケースでは、ポンプサイクル運転時間の比率を高くすることができるため、省エネルギー性を高めることができる
【発明の効果】
【0015】
上記各発明によれば、サイクル切替条件が固定値ではなく、ポンプサイクル運転時の過冷却度に対応して更新されるため、冷媒ポンプキャビテーションを回避しつつ、空調機の設置自由度を拡大することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施形態に係る空調機1の構成を示す図である。
【図2】空調機1の圧縮サイクル運転時(a)及びポンプサイクル運転時(b)における冷媒循環の態様を示す図である。
【図3】第一の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である。
【図4】切替条件閾値Txが冷媒配管延長Lにより可変に設定するテーブルを示す図である。
【図5】第二の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である。
【図6】切替条件閾値Txが圧縮機周波数fcの関数として設定したテーブルを示す図である。
【図7】第三の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である
【図8】冷媒過冷却度(ΔTc)と起動時回転数上昇率(dR/dt)の関係を示す図である。
【図9】第四の実施形態のサイクル切り替え制御フローを示す図である。
【図10】室外側送風機を定格回転数で起動したときの、冷媒過冷却度の時間的推移を示す図である。
【図11】冷媒過冷却度に対応して回転数上昇率を設定したときの、同上推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る空調システムの各実施形態について、図1乃至11を参照してさらに詳細に説明する。重複説明を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
本実施形態は、圧縮サイクル運転→ポンプサイクル運転への切り替えと、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転への切り替えとを同一切替条件で行う場合の、切替条件更新形態に関する。
図1を参照して、本実施形態に係る空調機1において、圧縮サイクル回路は、圧縮機7、蒸発器5、凝縮器6、膨張弁8及び冷媒配管10により構成されている。また、ポンプサイクル回路は、冷媒ポンプ9、減圧弁として機能する膨張弁8、冷媒配管10及び一部分岐するバイパス配管11a、11b、分岐用三方弁12a、12bにより構成されている。冷媒配管(含バイパス配管)内部には冷媒が充填されており、冷凍サイクルに従って冷媒が気体又は液体状態で循環するように構成されている。蒸発器5には、室内還気を吸い込んで蒸発器5と熱交換させるための室内側送風機15が、凝縮器6には外気を吸い込んで凝縮器6と熱交換させるための室外側送風機16が、それぞれ付設されている。
【0018】
次に図2を参照して、空調機1の圧縮サイクル運転時及びポンプサイクル運転時における冷媒循環の態様について説明する。
圧縮サイクル運転時において、冷媒は同図(a)の太線経路により循環する。圧縮機7で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管10内を流れて凝縮器6に導かれ、ここで外気と熱交換して冷却凝縮される。凝縮した液冷媒は、膨張弁8を通過する際に断熱膨張し、低圧の液ガス並存状態となって蒸発器5に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って自らは蒸発し、低圧冷媒ガスとなって冷媒配管10を介して圧縮機7に戻る。
【0019】
また、ポンプサイクル運転時には、冷媒は同図(b)の太線経路を辿り冷媒配管10及びバイパス配管11a、11b内を循環する。すなわち、凝縮器6において冷媒は、外気との熱交換により冷却され、液状態でバイパス配管11aを経由して冷媒ポンプ9に導かれる。ここで昇圧され、減圧弁として機能する膨張弁8を経由して蒸発器5に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとなって冷媒配管10、バイパス配管11bを経由して凝縮器6に戻る。
なお、上記サイクルの切り替えは、制御部14の指令による三方弁12a、12bの流路切り替え操作により行われる。
【0020】
蒸発器5、圧縮機7、膨張弁8、室内側送風機15は、一体として室内機3内部に格納されている。同様に、両系統の凝縮器6、室外側送風機16は一体として室外機4内部に格納されている。室内機3の室内還気吸込部近傍には温度センサS2が、室外機4の外気吸込部近傍には温度センサS1が、それぞれ配設されている。さらに、冷媒配管10の冷媒ポンプ9吸込部近傍には、冷媒温度Tc、冷媒圧力Pc計測用の温度センサS3、圧力センサS4が、それぞれ配設されている。これら各センサの計測値は制御部14に取り込まれ、後述するように両系統のサイクル切り替えを制御するように構成されている。
【0021】
空調機1のサイクル切替制御は、制御部14の指令に基づいて行われる。制御部14は、センサS1−S4から送られる吸込空気温度、冷媒圧力情報に基づいて、後述の各運転制御実行を指令するように構成されている。さらに、制御部14には、冷媒蒸気圧テーブルと、切り替え条件設定値テーブルと、を含むテーブルを含むデータデータベース(以下、DB)4aが付設されており、蒸発圧力・温度、凝縮圧力・温度、過熱度等の演算に基づき、後述の切り替え条件更新を可能としている。制御部14とセンサS1−S4、室内側送風機15、室外側送風機16、三方弁12a、12b等の主要構成要素間は、信号線14bを介して接続されており、以下の制御に必要な情報の授受、運転指令を可能に構成されている。
【0022】
空調機1は以上のように構成されており、次に図3をも参照して、本実施形態における行われるサイクル切替制御フローについて説明する。なお、以下の制御は制御部14からの指令により所定の時間間隔で行われる。
初期状態において、サイクル切替条件は室外機吸い込み温度(To)が閾値温度Tx以上か否かに設定されている(S101)。ここでは、現在、ポンプサイクル運転状態にある場合を想定する(S102)。まず、温度センサS1により、所定の時間間隔で室外機吸い込み温度(To)が計測される(S102)。また、温度センサS3、圧力センサS4により、凝縮器6出口における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pc計測用が計測される(S104)。
次いで、DB4aの蒸気圧表テーブルにより冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S105)。
【0023】
さらに、ΔTcが上限閾値(δ2)と下限閾値(δ1)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S106)。両閾値内の場合には(S106においてY)、過冷却度適正と判定され、次に、室外側吸い込み温度(To)がサイクル切替条件であるTx以上か否かの判定が行われる(S109)。To≧Txの場合には(S109においてY)、外気温上昇と判定され、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S111)。以降、説明を省略するが、圧縮サイクル運転継続中に吸い込み温度が低下したときは、再びポンプサイクルに切り替えられる。
S106においてΔTc>δ2の場合には過熱度過剰と判定され、サイクル切替条件設定値の緩和が行われる。すなわち、DB4aに格納されている設定値がTo≧TxからTo≧Tx+α(α:例えば0.5℃)に更新される(S107)。その後、更新した設定値に基づいてポンプサイクル運転が継続される(S110)。
【0024】
また、S106において ΔTc<δ1の場合には過熱度不足と判定され、サイクル切替条件閾値が低温側に変更される。すなわち、DB4aに格納されている設定閾値がTo≧TxからTo≧Tx−αに変更される(S108)。さらに、キャビテーション発生回避のため、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S111)。なお、その後のポンプサイクル運転への切替は、更新後の閾値、To≧Tx−αに基づき判定される。
【0025】
本実施形態では、切替条件閾値として空調機設置条件に関わらず、同一温度値(Tx)とする例を示したが、例えば室外機から冷媒ポンプまでの冷媒配管延長(L)に従い、設定閾値を変更可能とする態様とすることもできる。
図4はそのような一態様を示すものであり、閾値Txを配管延長Lの関数Tx=F(L)として設定し、標準延長L0(例えば10m)のときに標準初期値Tx(L0)を与える。DB4aに同図を内容とするテーブルを格納し、現場の設置条件に対応して初期値を選択可能とする。例えば、配管延長L’(L’>L0)の場合には初期値Tx’(Tx’<Tx)、L“(L“<L0)の場合には初期値Tx”
(Tx”>Tx)に設定可能とするものである。
さらに、本実施形態では室外機(凝縮器)から冷媒ポンプまでの冷媒配管延長により設定閾値を変更可能とする例を示したが、凝縮器と冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、冷媒ポンプから室内機(蒸発器)までの配管延長に基づく態様とすることもできる。
なお、このように機器設置条件に対応して閾値を可変とする態様は、以下の各実施形態についても同様に適用できる。
また、本実施形態では、切替判定を室外機吸い込み温度(To)が閾値温度Tx以上か否かに基づく例を示したが、室外機吸い込み温度(To)と室内機吸い込み温度(Tr)との温度差、ΔT=Tr−Toが所定の閾値以上か否かを判定基準とする態様とすることもできる。
【0026】
(第二の実施形態)
次に、図5,6を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、圧縮サイクル運転→ポンプサイクル運転への切り替えと、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転への切り替えとで、切替条件が異なる制御形態に関する。
本実施形態の構成が上述の実施形態と異なる点は、サイクル切替条件として、外気温度のみに基づくのではなく、外気温度及び空調負荷に基づくことである。
具体的には、図6に示すように、閾値Txを空調機負荷率に対応する圧縮機周波数fcの関数Tx=G(fc)として設定されており、これを内容とするデータテーブルがDB4aに格納されている。なお、図示を省略するが、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転の場合についても、閾値Txを空調負荷率に対応するポンプ周波数fpの関数Tx=H(fp)として設定されており、これを内容とするデータテーブルがDB4aに格納されている。
その他の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0027】
次に、図5を参照して、本実施形態におけるサイクル切替制御フローについて説明する。初期状態において、ポンプサイクル→圧縮サイクルの切り替え(切替条件(1))については、ポンプ周波数に伴い変化する閾値Tx=H(fp)に設定されている。また、圧縮サイクル→ポンプサイクルの切り替え(切替条件(2))については、図6に示す圧縮機周波数に伴い変化する閾値Tx=G(fc)に設定されている(S201)。
S202からS205までのフローは、S203においてポンプ周波数の計測が追加されている点を除き、第一の実施形態のS101からS105までのフローと同一である。次いで、ΔTcが上限閾値(δ2)と下限閾値(δ1)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S206)。S206においてY、すなわち両閾値内の場合には過冷却度適正と判定され、外気条件がサイクル切替条件(1)に変化したか否かの判定が行われる(S207)。To≧H(fp)の場合には(S207においてY)、外気温が上昇したと判定され、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S208)。S207においてN、すなわちTo<H(fp)の場合にはポンプサイクル運転が継続される(S209)。
【0028】
S206において、ΔTc>δ2の場合には過熱度過剰と判定され、サイクル切替条件設定値緩和のための変更が行われる。すなわち、DB4aに格納されている切替条件(1)設定値がTo≧H(fp)からTo≧H(fp)+αに、切替条件(2)設定値がTo≦G(fc)からTo≦G(fc)+αに、それぞれ変更される(S210)。そして変更後の切替条件設定値により、ポンプサイクル運転が継続される(S211)。
また、S206においてΔTc<δ1の場合には過熱度不足と判定され、サイクル設定値が低温側に変更される。すなわち、DB4aに格納されている切替条件(1)設定値がTo≧H(fp)からTo≧H(fp)−αに変更され、切替条件(2)設定値がTo≦G(fc)からTo≦G(fc)−αに、それぞれ変更される(S212)。さらに、さらに、キャビテーション発生回避のため、変更後の切替条件設定値により圧縮サイクル運転に切り替えられる(S208)。
【0029】
さらに、圧縮サイクル運転移行後(S208)、所定の時間間隔で室外機吸い込み温度(To)及び運転時の圧縮機周波数fcが計測される(S213)。
さらに、切替条件(2)に該当するか否かの判定が行われる(S214)。該当する場合には(S210においてY)、外気温上昇と判定され、ポンプサイクル運転に切り替えられる(S215)。該当しない場合には(S214においてN)、圧縮サイクル運転が継続される(S216)。
【0030】
(第三の実施形態)
さらに図7,8を参照して参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ポンプサイクル運転時においてサーモオフ状態からサーモオンに移行する際の、室外側送風機の回転数制御形態に関する。
本実施形態の構成が上述の実施形態と異なる点は、DB4aに以下を内容とするデータテーブルが格納されていることである。すなわち、図8に示すように、室外側送風機の起動時回転数上昇率(dR/dt)が、冷媒過冷却度(ΔTc)の大きさにより変化する関数、dR/dt=J(ΔTc)として設定されている。その他の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0031】
次に、図7を参照して、本実施形態における室外側送風機の起動時回転数制御フローについて説明する。ポンプサイクル運転サーモオフ状態において(S301)、所定の時間ごとにサーモオン判定が行われる(S302)。具体的には、室内側送風機吸い込み温度(Tr)が閾値Tm以上か否かが判定される。Tr≧Tmの場合には、室外側送風機16が最低回転数により起動される(S303)。なお、Tr<Tmの場合には、サーモオフ状態が維持される。
次に、温度センサS3、圧力センサS4により、冷媒ポンプ9吸込部における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pcが計測され(S304)、さらに冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S305)。
DB4aに格納されたデータテーブルに基づき、冷媒過冷却度に対応する回転数上昇率が設定され、当該回転数により室外側送風機16が運転される(S306)。
【0032】
なお、本実施形態では、室外側送風機の回転数上昇率を制御することにより、キャビテーションを回避する制御の例を示したが、これに替えて、又はこれと併せて、冷媒ポンプ回転数上昇率を制御する形態とすることもできる。
【0033】
また本実施形態では、ポンプサイクル運転時のサーモオフ状態からサーモオンに移行する際の例を示したが、圧縮サイクルからポンプサイクルに切り替える際についても、同様の制御を行うことができる。
【0034】
(第四の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ポンプサイクル運転時のサーモオフ状態において、サーモオン条件に適合した場合に、冷媒過冷却度に基づき運転サイクル変更を判定する制御形態に関する。本実施形態の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0035】
図9を参照して、本実施形態における室外側送風機のサイクル選択制御フローについて説明する。ポンプサイクル運転サーモオフ状態において(S401)、所定の時間ごとにサーモオン判定、具体的には、室内側送風機吸い込み温度(Tr)が閾値Tm以上か否かの判定が行われる(S402)。Tr<Tmの場合には、S402の判定が繰り返される。
Tr≧Tmの場合(S402においてY)には、第一ステップとして室外側送風機16が起動される(S403)。なお、Tr<Tmの場合には、サーモオフ状態が維持される。
次に、温度センサS3、圧力センサS4により、冷媒ポンプ9吸込部における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pcが計測され(S404)、さらに冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S405)。
室外側送風機起動から一定時間経過するまでは(S406においてN)、ΔTcが閾値(δth)以上確保されているか否かの判定が継続的に行われる(S407)。閾値以上の場合には(S407においてY)、冷媒ポンプが起動され(S408)、ポンプサイクル運転が維持される。
一方、S407においてN、すなわちΔTc<δthの場合には過熱度不足と判定され、冷媒過冷却度によるS407の判定が繰り返される。さらに、一定時間経過してもΔTcが閾値以上にならない場合には(S406においてY)、圧縮サイクル運転に変更される(S409)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、熱源、冷媒、空調方式、建築構造等の種類を問わず、併用冷凍サイクルを備えた空調機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・空調機
3・・・・室内機
4・・・・室外機
5・・・・蒸発器
6・・・・凝縮器
7・・・・圧縮機
8・・・・膨張弁(減圧弁)
9・・・・冷媒ポンプ
10・・・冷媒配管
11a、11b・・・バイパス配管
12a、12b・・・分岐用三方弁
15・・・室内側送風機
16・・・室外側送風機
19・・・制御部
S1、S2、S3・・・温度センサ
S4・・・圧力センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮サイクルと冷媒ポンプサイクルとを切り替え可能な空調機に係り、特に冷媒ポンプのキャビテーション回避のための運転制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機を使用して冷媒を循環させる圧縮サイクルと、冷媒ポンプを使用して冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルを、適宜、切り替えて運転可能な冷媒循環回路(以下、併用冷凍サイクルという)を備えた空調機が公知である。このような空調機においては、夏期等の外気温が高いときは圧縮サイクルにより運転し、冬期等の外気温が低いときは冷媒ポンプサイクル(以下、ポンプサイクルという)により運転することができ、圧縮サイクルのみの運転と比較して消費電力を少なくでき、省エネ性に優れた空調機が実現できる。
本願出願人は、かかる併用冷凍サイクルにおける圧縮サイクル⇔ポンプサイクルの切り替え条件に関して、外気温と室温との温度差、圧縮サイクルにおける冷房能力、圧縮機周波数等に基づき判定することを内容とする運転制御技術を開示している(特許文献1)。
さらに、本願出願人は、ポンプサイクル運転時のキャビテーション発生による能力不安定化、振動・エロージョンによる冷媒ポンプの損傷等を防止するため、冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度を求め、この値に基づいて室内側送風機、室外側送風機、膨張弁開度のいずれかを制御する技術を開示している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−61918号公報
【特許文献2】特開2004−169941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプサイクル運転時における冷媒過冷却度は、外気温度や運転条件のみならず、室外機(凝縮器)と冷媒ポンプの高低差や離隔距離等の空調機設置条件や、室外機と冷媒ポンプ間の冷媒温度上昇、冷房負荷等にも影響される。
このような理由により、この種の空調機の設置に際しては、室外機(凝縮器)と冷媒ポンプの高低差や離隔の設置条件を制限するとともに、サイクル切り替え条件を安全側に設定している。このため、室外機と冷媒ポンプとの離隔を厳しく制限し、設計の自由度を狭めているという現状がある。さらに、実際には室外機と冷媒ポンプの距離が短く、ポンプサイクル運転が可能な場合であっても、設定切替条件に従い圧縮サイクル運転となり、結果的に省エネルギー性に反するケースも生じる。
本出願は、上記各課題に対応した切り替え制御技術を備えた空調機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、併用冷凍サイクルを備えた空調機において、上記各課題を解決するためのものであって、以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係る併用冷凍サイクル空調機は、
(1)圧縮機と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に冷媒を循環させる圧縮サイクルと、冷媒ポンプと、前記室内機と、前記室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に前記冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルと、を備え、所定のサイクル切替条件に従って、2つのサイクルを切り替えて運転可能な空調機(以下、併用冷凍サイクル空調機という)であって、冷媒ポンプサイクル運転時における冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて、前記サイクル切替条件を更新可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0006】
本発明において、「圧縮サイクル」とは、圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張弁及びこれらを結ぶ冷媒配管により構成され、以下の冷媒循環によりヒートポンプサイクルを形成するものである。すなわち、圧縮機で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管内流れ凝縮器に導かれ、ここで外気と熱交換して冷却凝縮される。凝縮した液冷媒は、膨張弁を通過する際に断熱膨張し、低圧の液ガス並存状態となって蒸発器に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って自らは蒸発し、低圧冷媒ガスとなって冷媒配管を介して圧縮機に戻る。
【0007】
また、「冷媒ポンプサイクル」とは、冷媒ポンプ、蒸発器、凝縮器及びこれらを結ぶ冷媒配管により構成され、以下の冷媒循環によりヒートポンプサイクルを形成するものである。すなわち、冷媒は凝縮器において外気と熱交換して冷却され、液状態で冷媒ポンプに導かれ、ここで昇圧されて蒸発器に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとなって凝縮器に戻る。
「併用冷凍サイクル」とは、これら2つのサイクルを同一冷媒配管及びバイパス配管により構成し、三方弁又は切り替え弁により冷媒循環経路を変更可能とすることにより実現するものである。
【0008】
2つのサイクルの切り替えは、例えば(2)乃至(4)の切替条件に従い判定されるが、本発明では、その閾値を運転時の冷媒ポンプ吸込口における冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて更新可能とするものである。すなわち、室外機吸込み温度(To)に基づき判定する場合、ΔTcが十分に大きいときは、ポンプサイクル運転許容温度を高く設定変更することにより、冷媒ポンプ運転比率が高くなり、省エネ性向上に資する。一方、ΔTcが小さいときは、当該閾値でポンプサイクル運転を継続すればキャビテーションのおそれがある。これを回避するため、ポンプサイクル運転許容温度を低く設定変更して、圧縮サイクル運転比率を高くする。
【0009】
(2)前記サイクル切替条件が、室外機吸込み温度(To)の閾値(Tx)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差(ΔT=Tr−To)の閾値(ΔTx)のいずれかに基づくものであることを特徴とする。
室外機吸込み温度≒外気温度と考えられるため、冷媒過冷却度に大きな影響を与えるこの温度に基づいて閾値設定することが妥当である。
さらに冷房負荷も冷媒過冷却度に影響するため、冷房負荷と密接な関係を有する室内機吸込み温度(Tr)をも考慮することが望ましい。
【0010】
(3)前記サイクル切替条件が、空調機負荷率に対応して定まる室外機吸込み温度の閾値(Tx’)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差の閾値(ΔTx’)に基づく、ものであることを特徴とする。
【0011】
本発明は、冷媒ポンプサイクル→圧縮サイクル、圧縮サイクル→冷媒ポンプサイクルへの切り替えについて、それぞれ空調機負荷率を考慮した閾値設定を行うものである。
図6を参照して、圧縮サイクル→冷媒ポンプサイクルへの切り替えを例にとると、圧縮機周波数(∝空調機負荷率)に対して室外機吸込み温度の閾値関数Tx’=G(fc)を設定し、これを境界として運転時における(周波数、吸込み温度)に従って、圧縮サイクル領域とポンプサイクル領域に分ける。例えば条件P1(fc(1)、To(1))のときは圧縮サイクル運転継続、条件P2(fc(2)、To(2))のときはポンプサイクル運転に切り替えるものである。冷媒ポンプサイクル→圧縮サイクルへの切り替えについても、同様の閾値関数Tx’=H(fp)を設定することにより対応可能となる。
「空調機負荷率」の算定に際しては、上記の圧縮機周波数に基づくもののほか、圧縮機周波数と吸入側および吐出側の圧力と温度の関係(いわゆるコンプレッサーカーブ法)に基づく方法や、室内吸込空気温度と吹出空気温度、および室内総風量の関係に基づく方法等が例示される。
なお、ポンプサイクル運転時における冷媒過冷却度に基づく閾値の更新については、(1)以下の発明と同様に行う。
【0012】
(4)冷媒ポンプサイクル運転時に前記冷媒ポンプにキャビテーションが生じたときは、適用すべき前記閾値(Tx若しくはΔTxのいずれか、又はTx’若しくはΔTx’のいずれか)を変更可能に構成したことを特徴とする。
(5)冷媒ポンプサイクル運転時であって、サーモオフ状態からサーモオンへの移行時において、冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に対応して、室外側送風機起動時の回転数上昇率(dR/dt)を制御する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0013】
図10、11を参照して、冷媒ポンプにおけるキャビテーション発生メカニズム及び本発明による回避方法について説明する。
サーモオフ状態において、冷媒温度が徐々に上昇して冷媒ポンプ吸込口における過冷却度が小さくなった状態で、室外機側送風機を定格回転数で立ち上げるなど大きな能力操作量を与えると、冷媒ポンプ吸込口では圧力応答の方が温度応答より速いために過冷却度が一時的に小さくなり、キャビテーションが発生し易くなる。図10の下段(b)は、時刻τ0において瞬時に定格回転数Rfで駆動させる例を示している。このときのポンプ吸込口における冷媒温度Tc及び飽和温度Ts(飽和凝縮圧に相当する冷媒温度)の応答を示す。
時刻τ1まではTc>Tsとなり、過冷却度ΔTcは負の値となる。この場合、冷媒は気液二相状態となるため、ポンプ内でキャビテーションが発生しやすい領域となる。
一方、図11を参照して、本発明によれば、冷媒過冷却度(ΔTc)に対応した送風機の回転数上昇率(dR/dt)に制御するため(同図下段(b))、飽和温度Tsは徐々に下がり、冷媒温度Tcは飽和温度Tsより常に下側、すなわち過冷却の状態が維持されることになり、キャビテーションのおそれが解消される。
【0014】
(6)上記各発明において、切替条件を空調機設置条件に対応して変更可能とする手段を備えて成ることを特徴とする。
(7)前記空調機設置条件が、前記凝縮器から前記冷媒ポンプまでの配管延長、又は前記凝縮器と前記冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、前記冷媒ポンプから前記蒸発器までの配管延長のいずれかであることを特徴とする。
上記(6)、(7)の発明によれば、例えば室外機と冷媒ポンプの距離が短いケースでは、ポンプサイクル運転時間の比率を高くすることができるため、省エネルギー性を高めることができる
【発明の効果】
【0015】
上記各発明によれば、サイクル切替条件が固定値ではなく、ポンプサイクル運転時の過冷却度に対応して更新されるため、冷媒ポンプキャビテーションを回避しつつ、空調機の設置自由度を拡大することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施形態に係る空調機1の構成を示す図である。
【図2】空調機1の圧縮サイクル運転時(a)及びポンプサイクル運転時(b)における冷媒循環の態様を示す図である。
【図3】第一の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である。
【図4】切替条件閾値Txが冷媒配管延長Lにより可変に設定するテーブルを示す図である。
【図5】第二の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である。
【図6】切替条件閾値Txが圧縮機周波数fcの関数として設定したテーブルを示す図である。
【図7】第三の実施形態のサイクル切替条件更新フローを示す図である
【図8】冷媒過冷却度(ΔTc)と起動時回転数上昇率(dR/dt)の関係を示す図である。
【図9】第四の実施形態のサイクル切り替え制御フローを示す図である。
【図10】室外側送風機を定格回転数で起動したときの、冷媒過冷却度の時間的推移を示す図である。
【図11】冷媒過冷却度に対応して回転数上昇率を設定したときの、同上推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る空調システムの各実施形態について、図1乃至11を参照してさらに詳細に説明する。重複説明を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
本実施形態は、圧縮サイクル運転→ポンプサイクル運転への切り替えと、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転への切り替えとを同一切替条件で行う場合の、切替条件更新形態に関する。
図1を参照して、本実施形態に係る空調機1において、圧縮サイクル回路は、圧縮機7、蒸発器5、凝縮器6、膨張弁8及び冷媒配管10により構成されている。また、ポンプサイクル回路は、冷媒ポンプ9、減圧弁として機能する膨張弁8、冷媒配管10及び一部分岐するバイパス配管11a、11b、分岐用三方弁12a、12bにより構成されている。冷媒配管(含バイパス配管)内部には冷媒が充填されており、冷凍サイクルに従って冷媒が気体又は液体状態で循環するように構成されている。蒸発器5には、室内還気を吸い込んで蒸発器5と熱交換させるための室内側送風機15が、凝縮器6には外気を吸い込んで凝縮器6と熱交換させるための室外側送風機16が、それぞれ付設されている。
【0018】
次に図2を参照して、空調機1の圧縮サイクル運転時及びポンプサイクル運転時における冷媒循環の態様について説明する。
圧縮サイクル運転時において、冷媒は同図(a)の太線経路により循環する。圧縮機7で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管10内を流れて凝縮器6に導かれ、ここで外気と熱交換して冷却凝縮される。凝縮した液冷媒は、膨張弁8を通過する際に断熱膨張し、低圧の液ガス並存状態となって蒸発器5に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って自らは蒸発し、低圧冷媒ガスとなって冷媒配管10を介して圧縮機7に戻る。
【0019】
また、ポンプサイクル運転時には、冷媒は同図(b)の太線経路を辿り冷媒配管10及びバイパス配管11a、11b内を循環する。すなわち、凝縮器6において冷媒は、外気との熱交換により冷却され、液状態でバイパス配管11aを経由して冷媒ポンプ9に導かれる。ここで昇圧され、減圧弁として機能する膨張弁8を経由して蒸発器5に導かれる。ここで冷房対象である室内空気から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとなって冷媒配管10、バイパス配管11bを経由して凝縮器6に戻る。
なお、上記サイクルの切り替えは、制御部14の指令による三方弁12a、12bの流路切り替え操作により行われる。
【0020】
蒸発器5、圧縮機7、膨張弁8、室内側送風機15は、一体として室内機3内部に格納されている。同様に、両系統の凝縮器6、室外側送風機16は一体として室外機4内部に格納されている。室内機3の室内還気吸込部近傍には温度センサS2が、室外機4の外気吸込部近傍には温度センサS1が、それぞれ配設されている。さらに、冷媒配管10の冷媒ポンプ9吸込部近傍には、冷媒温度Tc、冷媒圧力Pc計測用の温度センサS3、圧力センサS4が、それぞれ配設されている。これら各センサの計測値は制御部14に取り込まれ、後述するように両系統のサイクル切り替えを制御するように構成されている。
【0021】
空調機1のサイクル切替制御は、制御部14の指令に基づいて行われる。制御部14は、センサS1−S4から送られる吸込空気温度、冷媒圧力情報に基づいて、後述の各運転制御実行を指令するように構成されている。さらに、制御部14には、冷媒蒸気圧テーブルと、切り替え条件設定値テーブルと、を含むテーブルを含むデータデータベース(以下、DB)4aが付設されており、蒸発圧力・温度、凝縮圧力・温度、過熱度等の演算に基づき、後述の切り替え条件更新を可能としている。制御部14とセンサS1−S4、室内側送風機15、室外側送風機16、三方弁12a、12b等の主要構成要素間は、信号線14bを介して接続されており、以下の制御に必要な情報の授受、運転指令を可能に構成されている。
【0022】
空調機1は以上のように構成されており、次に図3をも参照して、本実施形態における行われるサイクル切替制御フローについて説明する。なお、以下の制御は制御部14からの指令により所定の時間間隔で行われる。
初期状態において、サイクル切替条件は室外機吸い込み温度(To)が閾値温度Tx以上か否かに設定されている(S101)。ここでは、現在、ポンプサイクル運転状態にある場合を想定する(S102)。まず、温度センサS1により、所定の時間間隔で室外機吸い込み温度(To)が計測される(S102)。また、温度センサS3、圧力センサS4により、凝縮器6出口における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pc計測用が計測される(S104)。
次いで、DB4aの蒸気圧表テーブルにより冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S105)。
【0023】
さらに、ΔTcが上限閾値(δ2)と下限閾値(δ1)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S106)。両閾値内の場合には(S106においてY)、過冷却度適正と判定され、次に、室外側吸い込み温度(To)がサイクル切替条件であるTx以上か否かの判定が行われる(S109)。To≧Txの場合には(S109においてY)、外気温上昇と判定され、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S111)。以降、説明を省略するが、圧縮サイクル運転継続中に吸い込み温度が低下したときは、再びポンプサイクルに切り替えられる。
S106においてΔTc>δ2の場合には過熱度過剰と判定され、サイクル切替条件設定値の緩和が行われる。すなわち、DB4aに格納されている設定値がTo≧TxからTo≧Tx+α(α:例えば0.5℃)に更新される(S107)。その後、更新した設定値に基づいてポンプサイクル運転が継続される(S110)。
【0024】
また、S106において ΔTc<δ1の場合には過熱度不足と判定され、サイクル切替条件閾値が低温側に変更される。すなわち、DB4aに格納されている設定閾値がTo≧TxからTo≧Tx−αに変更される(S108)。さらに、キャビテーション発生回避のため、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S111)。なお、その後のポンプサイクル運転への切替は、更新後の閾値、To≧Tx−αに基づき判定される。
【0025】
本実施形態では、切替条件閾値として空調機設置条件に関わらず、同一温度値(Tx)とする例を示したが、例えば室外機から冷媒ポンプまでの冷媒配管延長(L)に従い、設定閾値を変更可能とする態様とすることもできる。
図4はそのような一態様を示すものであり、閾値Txを配管延長Lの関数Tx=F(L)として設定し、標準延長L0(例えば10m)のときに標準初期値Tx(L0)を与える。DB4aに同図を内容とするテーブルを格納し、現場の設置条件に対応して初期値を選択可能とする。例えば、配管延長L’(L’>L0)の場合には初期値Tx’(Tx’<Tx)、L“(L“<L0)の場合には初期値Tx”
(Tx”>Tx)に設定可能とするものである。
さらに、本実施形態では室外機(凝縮器)から冷媒ポンプまでの冷媒配管延長により設定閾値を変更可能とする例を示したが、凝縮器と冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、冷媒ポンプから室内機(蒸発器)までの配管延長に基づく態様とすることもできる。
なお、このように機器設置条件に対応して閾値を可変とする態様は、以下の各実施形態についても同様に適用できる。
また、本実施形態では、切替判定を室外機吸い込み温度(To)が閾値温度Tx以上か否かに基づく例を示したが、室外機吸い込み温度(To)と室内機吸い込み温度(Tr)との温度差、ΔT=Tr−Toが所定の閾値以上か否かを判定基準とする態様とすることもできる。
【0026】
(第二の実施形態)
次に、図5,6を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、圧縮サイクル運転→ポンプサイクル運転への切り替えと、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転への切り替えとで、切替条件が異なる制御形態に関する。
本実施形態の構成が上述の実施形態と異なる点は、サイクル切替条件として、外気温度のみに基づくのではなく、外気温度及び空調負荷に基づくことである。
具体的には、図6に示すように、閾値Txを空調機負荷率に対応する圧縮機周波数fcの関数Tx=G(fc)として設定されており、これを内容とするデータテーブルがDB4aに格納されている。なお、図示を省略するが、ポンプサイクル運転→圧縮サイクル運転の場合についても、閾値Txを空調負荷率に対応するポンプ周波数fpの関数Tx=H(fp)として設定されており、これを内容とするデータテーブルがDB4aに格納されている。
その他の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0027】
次に、図5を参照して、本実施形態におけるサイクル切替制御フローについて説明する。初期状態において、ポンプサイクル→圧縮サイクルの切り替え(切替条件(1))については、ポンプ周波数に伴い変化する閾値Tx=H(fp)に設定されている。また、圧縮サイクル→ポンプサイクルの切り替え(切替条件(2))については、図6に示す圧縮機周波数に伴い変化する閾値Tx=G(fc)に設定されている(S201)。
S202からS205までのフローは、S203においてポンプ周波数の計測が追加されている点を除き、第一の実施形態のS101からS105までのフローと同一である。次いで、ΔTcが上限閾値(δ2)と下限閾値(δ1)の範囲内に治まっているか否かの判定が行われる(S206)。S206においてY、すなわち両閾値内の場合には過冷却度適正と判定され、外気条件がサイクル切替条件(1)に変化したか否かの判定が行われる(S207)。To≧H(fp)の場合には(S207においてY)、外気温が上昇したと判定され、圧縮サイクル運転に切り替えられる(S208)。S207においてN、すなわちTo<H(fp)の場合にはポンプサイクル運転が継続される(S209)。
【0028】
S206において、ΔTc>δ2の場合には過熱度過剰と判定され、サイクル切替条件設定値緩和のための変更が行われる。すなわち、DB4aに格納されている切替条件(1)設定値がTo≧H(fp)からTo≧H(fp)+αに、切替条件(2)設定値がTo≦G(fc)からTo≦G(fc)+αに、それぞれ変更される(S210)。そして変更後の切替条件設定値により、ポンプサイクル運転が継続される(S211)。
また、S206においてΔTc<δ1の場合には過熱度不足と判定され、サイクル設定値が低温側に変更される。すなわち、DB4aに格納されている切替条件(1)設定値がTo≧H(fp)からTo≧H(fp)−αに変更され、切替条件(2)設定値がTo≦G(fc)からTo≦G(fc)−αに、それぞれ変更される(S212)。さらに、さらに、キャビテーション発生回避のため、変更後の切替条件設定値により圧縮サイクル運転に切り替えられる(S208)。
【0029】
さらに、圧縮サイクル運転移行後(S208)、所定の時間間隔で室外機吸い込み温度(To)及び運転時の圧縮機周波数fcが計測される(S213)。
さらに、切替条件(2)に該当するか否かの判定が行われる(S214)。該当する場合には(S210においてY)、外気温上昇と判定され、ポンプサイクル運転に切り替えられる(S215)。該当しない場合には(S214においてN)、圧縮サイクル運転が継続される(S216)。
【0030】
(第三の実施形態)
さらに図7,8を参照して参照して、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ポンプサイクル運転時においてサーモオフ状態からサーモオンに移行する際の、室外側送風機の回転数制御形態に関する。
本実施形態の構成が上述の実施形態と異なる点は、DB4aに以下を内容とするデータテーブルが格納されていることである。すなわち、図8に示すように、室外側送風機の起動時回転数上昇率(dR/dt)が、冷媒過冷却度(ΔTc)の大きさにより変化する関数、dR/dt=J(ΔTc)として設定されている。その他の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0031】
次に、図7を参照して、本実施形態における室外側送風機の起動時回転数制御フローについて説明する。ポンプサイクル運転サーモオフ状態において(S301)、所定の時間ごとにサーモオン判定が行われる(S302)。具体的には、室内側送風機吸い込み温度(Tr)が閾値Tm以上か否かが判定される。Tr≧Tmの場合には、室外側送風機16が最低回転数により起動される(S303)。なお、Tr<Tmの場合には、サーモオフ状態が維持される。
次に、温度センサS3、圧力センサS4により、冷媒ポンプ9吸込部における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pcが計測され(S304)、さらに冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S305)。
DB4aに格納されたデータテーブルに基づき、冷媒過冷却度に対応する回転数上昇率が設定され、当該回転数により室外側送風機16が運転される(S306)。
【0032】
なお、本実施形態では、室外側送風機の回転数上昇率を制御することにより、キャビテーションを回避する制御の例を示したが、これに替えて、又はこれと併せて、冷媒ポンプ回転数上昇率を制御する形態とすることもできる。
【0033】
また本実施形態では、ポンプサイクル運転時のサーモオフ状態からサーモオンに移行する際の例を示したが、圧縮サイクルからポンプサイクルに切り替える際についても、同様の制御を行うことができる。
【0034】
(第四の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ポンプサイクル運転時のサーモオフ状態において、サーモオン条件に適合した場合に、冷媒過冷却度に基づき運転サイクル変更を判定する制御形態に関する。本実施形態の構成については空調システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0035】
図9を参照して、本実施形態における室外側送風機のサイクル選択制御フローについて説明する。ポンプサイクル運転サーモオフ状態において(S401)、所定の時間ごとにサーモオン判定、具体的には、室内側送風機吸い込み温度(Tr)が閾値Tm以上か否かの判定が行われる(S402)。Tr<Tmの場合には、S402の判定が繰り返される。
Tr≧Tmの場合(S402においてY)には、第一ステップとして室外側送風機16が起動される(S403)。なお、Tr<Tmの場合には、サーモオフ状態が維持される。
次に、温度センサS3、圧力センサS4により、冷媒ポンプ9吸込部における冷媒温度Tc、冷媒圧力Pcが計測され(S404)、さらに冷媒過冷却度(ΔTc)が演算される(S405)。
室外側送風機起動から一定時間経過するまでは(S406においてN)、ΔTcが閾値(δth)以上確保されているか否かの判定が継続的に行われる(S407)。閾値以上の場合には(S407においてY)、冷媒ポンプが起動され(S408)、ポンプサイクル運転が維持される。
一方、S407においてN、すなわちΔTc<δthの場合には過熱度不足と判定され、冷媒過冷却度によるS407の判定が繰り返される。さらに、一定時間経過してもΔTcが閾値以上にならない場合には(S406においてY)、圧縮サイクル運転に変更される(S409)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、熱源、冷媒、空調方式、建築構造等の種類を問わず、併用冷凍サイクルを備えた空調機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・空調機
3・・・・室内機
4・・・・室外機
5・・・・蒸発器
6・・・・凝縮器
7・・・・圧縮機
8・・・・膨張弁(減圧弁)
9・・・・冷媒ポンプ
10・・・冷媒配管
11a、11b・・・バイパス配管
12a、12b・・・分岐用三方弁
15・・・室内側送風機
16・・・室外側送風機
19・・・制御部
S1、S2、S3・・・温度センサ
S4・・・圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に冷媒を循環させる圧縮サイクルと、
冷媒ポンプと、前記室内機と、前記室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に前記冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルと、を備え、
所定のサイクル切替条件に従って、2つのサイクルを切り替えて運転可能な空調機(以下、併用冷凍サイクル空調機という)であって、
冷媒ポンプサイクル運転時における冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて、前記サイクル切替条件を更新可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする併用冷凍サイクル空調機。
【請求項2】
前記サイクル切替条件が、室外機吸込み温度(To)の閾値(Tx)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差(ΔT=Tr−To)の閾値(ΔTx)のいずれかに基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項3】
前記サイクル切替条件が、
空調機負荷率に対応して定まる室外機吸込み温度の閾値(Tx’)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差の閾値(ΔTx’)のいずれかに基づく、ものであることを特徴とする請求項1に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項4】
冷媒ポンプサイクル運転時に前記冷媒ポンプにキャビテーションが生じたときは、
適用すべき前記閾値(Tx若しくはΔTxのいずれか、又はTx’若しくはΔTx’のいずれか)を変更可能に構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項5】
冷媒ポンプサイクル運転時であって、サーモオフ状態からサーモオンへの移行時において、
冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に対応して、室外側送風機起動時の回転数上昇率(dR/dt)を制御する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の切替条件を、空調機設置条件に対応して変更可能とする手段を備えて成ることを特徴とする併用サイクル空調機。
【請求項7】
前記空調機設置条件が、前記凝縮器から前記冷媒ポンプまでの配管延長、前記凝縮器と前記冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、前記冷媒ポンプから前記蒸発器までの配管延長のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の併用サイクル空調機。
【請求項1】
圧縮機と、蒸発器及び室内側送風機を備えた室内機と、室外側凝縮器及び室外側送風機を備えた室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に冷媒を循環させる圧縮サイクルと、
冷媒ポンプと、前記室内機と、前記室外機と、を含む回路により構成され、これら要素間に前記冷媒を循環させる冷媒ポンプサイクルと、を備え、
所定のサイクル切替条件に従って、2つのサイクルを切り替えて運転可能な空調機(以下、併用冷凍サイクル空調機という)であって、
冷媒ポンプサイクル運転時における冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に基づいて、前記サイクル切替条件を更新可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする併用冷凍サイクル空調機。
【請求項2】
前記サイクル切替条件が、室外機吸込み温度(To)の閾値(Tx)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差(ΔT=Tr−To)の閾値(ΔTx)のいずれかに基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項3】
前記サイクル切替条件が、
空調機負荷率に対応して定まる室外機吸込み温度の閾値(Tx’)、又は、室内機吸込み温度(Tr)と室外機吸込み温度(To)との温度差の閾値(ΔTx’)のいずれかに基づく、ものであることを特徴とする請求項1に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項4】
冷媒ポンプサイクル運転時に前記冷媒ポンプにキャビテーションが生じたときは、
適用すべき前記閾値(Tx若しくはΔTxのいずれか、又はTx’若しくはΔTx’のいずれか)を変更可能に構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項5】
冷媒ポンプサイクル運転時であって、サーモオフ状態からサーモオンへの移行時において、
冷媒ポンプ吸込口の冷媒過冷却度(ΔTc)に対応して、室外側送風機起動時の回転数上昇率(dR/dt)を制御する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の併用冷凍サイクル空調機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の切替条件を、空調機設置条件に対応して変更可能とする手段を備えて成ることを特徴とする併用サイクル空調機。
【請求項7】
前記空調機設置条件が、前記凝縮器から前記冷媒ポンプまでの配管延長、前記凝縮器と前記冷媒ポンプの有効ヘッド、又は、前記冷媒ポンプから前記蒸発器までの配管延長のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の併用サイクル空調機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−67945(P2012−67945A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211616(P2010−211616)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
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