説明

空調用通風性カーペットタイルおよびその製造方法

【課題】 カーペットからなる表層と、織布又は不織布からなる裏打ち層との接着強度が良好で、且つ軽量で、通気性に優れた空調用通風性カーペットタイルを提供すること、及び、該空調用通風性カーペットタイルの製造方法の提供。
【解決手段】 カーペットからなる表層、接着層、及び、織布又は不織布からなる裏打ち層からなるカーペットタイルにおいて、接着層が熱可塑性樹脂パウダー又は熱可塑性樹脂からなる不織布を加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層であることを特徴とする空調用通風性カーペットタイル、及び、該空調用通風性カーペットタイルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床吹き出し空調方式に有用な通風性カーペットタイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、事務所用ビル、店舗、工場等の室内の空調においては、室内に設けた空調機により冷風あるいは暖風を循環したり、天井部に設けた吸気口から冷風あるいは暖風を室内に供給する集中冷暖房方式が採用されていた。
しかし、このような空調システムにおいては、室内全体が必ずしも均一に冷暖房されず、場所によっては冷えすぎたり、暑すぎたりし、居住性の点で問題があり、また、空調効果の点で満足のいくものではなかった。
本出願人らは、先に室内全体を均一に空調することが可能となり、快適で、また、空調効率及び実施の態様によっては空間効率も良好で、メンテナンスも容易な空調システムを提案した(特許文献1参照)。ここにおいては、床仕上げ材として、多孔性の基布にパイルを植設したカーペットタイルや連続多孔質シートを用いればよい。と示されている。
【0003】
特許文献2には、多数の吹出口を有する二重床と、該二重床の下部に形成された給気通路と、多数の排気孔を有する天井部材と、天井部材の上部に形成された排気通路と、給気通路に接続される空調装置において、前記二重床に敷設されるカーペットは、通気性表地およびメッシュ部材に、通気性芯材および通気性下地の少なくとも一つを積層して構成した空調装置について記載されている。そして、カーペットの例としては、繊維から成る通気性表地と、グラスファイバー等からなるメッシュ部材と、樹脂繊維からなるコイル状のマット或いは連続気泡部材などからなる通気性心材と、不織布状の通気性下地から構成され、各部材を積層し、熱溶着、接着、縫製等によって一体化している。と示されている。
しかし、このような各通気性部材を熱溶着、接着等により一体化した場合には、カーペットの通気性を損なう場合がしばしば生じる欠点がある。
【0004】
特許文献3には、特許文献2と同様の空調装置について記載され、カーペット部材は通気性を有するポリエステル不織布にナイロン原糸をタフトしたタフトカーペットを使用した。一方、ポリエステル繊維の不織布状マットに少量のゴム系、ラテックス系接着剤を含浸させ、カーペット部材の裏面にガラス繊維不織布と共に密着させ、ニードリングにより一体化させた後、接着剤を乾燥させることが記載されている。しかし、この場合にも、ゴム系、ラテックス系接着剤を含浸させた後、乾燥させたとき、カーペットの通気性を損なう場合がしばしば生じる欠点がある。
【0005】
特許文献4には、カーペット表層部と、カーペット表層部の裏面に位置するバッキング部と、カーペット表層部とバッキング部との間に熱可塑性樹脂接着剤が存在するカーペットであり、該バッキング部が繊維集合体からなり、該熱可塑性樹脂接着剤が、一方向に間隔を開けて筋状に配列し、該熱可塑性樹脂接着剤を介してカーペット表層部とバッキング部とが接合している通気性カーペットについて記載されている。しかし、このカーペットは、該熱可塑性樹脂接着剤が、一方向に間隔を開けて筋状に配列していることから、カーペットの縦方向と横方向においてその性質を異にし、長期間使用した場合や重量のかかるキャスター等の移動に対し、カーペットのずれやめくれ、そりの問題が生じ易い。
【0006】
【特許文献1】特公平6−94939号公報
【特許文献2】特開平7−217939号公報
【特許文献3】特開平8−42912号公報
【特許文献4】特開2003−225153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カーペットからなる表層と、織布又は不織布からなる裏打ち層との接着強度が良好で、且つ軽量で、通気性に優れた空調用通風性カーペットタイルを提供すること、及び、該空調用通風性カーペットタイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、カーペットからなる表層、接着層、及び、織布又は不織布からなる裏打ち層からなるカーペットタイルにおいて、接着層が熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層であることを特徴とする空調用通風性カーペットタイルに関する。
本発明の第2は、カーペットからなる表層、接着層、及び、織布又は不織布からなる裏打ち層からなるカーペットタイルにおいて、接着層が熱可塑性樹脂からなる不織布を加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層であることを特徴とする空調用通風性カーペットタイルに関する。
本発明の第3は、請求項2における接着層としての熱可塑性樹脂からなる不織布が異なる融点を有する熱可塑性樹脂からなる繊維により構成されていることを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイルに関する。
本発明の第4は、 カーペットの接合面及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に、予め熱可塑性樹脂パウダーを散布し、加熱溶融させて該接合面に付着せしめ、次いでカーペットの接合面と裏打ち層の接合面を合わせて積層し、加熱圧着して一体化させた後、所望の形状に切断することを特徴とする請求項1記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第5は、上方に設けられたフィードロールにより表層としてのカーペットを供給し、下方に設けられたフィードロールにより裏打ち層としての織布又は不織布を供給し、加熱炉に導入する前にカーペットの接合面、及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面上に熱可塑性樹脂パウダーを供給した後、加熱炉入り口においてカーペットと裏打ち層とを一体化せしめ、加熱炉中で熱可塑性樹脂パウダーを溶融せしめた後加圧ローラ間を通して接合することを特徴とする請求項1記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第6は、加熱炉内において、カーペット、熱可塑性樹脂パウダー、及び織布又は不織布からなる積層体の上方又は下方に設けた熱風吹き出し口より熱風を吹き出し、積層体の熱風吹き出し口と対向する位置に吸引口を設け、熱風を吸引することにより熱可塑性樹脂パウダーからなる接着層を溶融せしめる構成としたことを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第7は、上方に設けられたフィードロールにより表層としてのカーペットを供給し、中間に設けられたフィードロールにより熱可塑性樹脂からなる不織布から構成された接着層を構成するシートを供給し、下方に設けられたフィードロールにより織布又は不織布からなる裏打ち層を構成するシートを供給し、加熱炉入り口においてカーペットと各シートとを一体化せしめ、加熱炉中で接着層を構成するシートを溶融せしめた後加圧ローラ間を通し各層を接合せしめた後、所定の形状に切断することを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第8は、表層としてのカーペットの接合面及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に、予め、接着層としての熱可塑性樹脂不織布を積層した後加熱溶融させて該接合面に付着せしめ、次いでカーペットの接合面と裏打ち層の接合面を合わせて積層し加熱圧着して一体化させた後、所望の形状に切断することを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第9は、高融点熱可塑性樹脂からなる繊維と、低融点熱可塑性樹脂からなる繊維とから構成された接着層としての不織布を、カーペットからなる表層及び/又は織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に供給し、予め、熱風により接着層としての不織布のうちの低融点熱可塑性樹脂を溶融圧着することにより表層及び/又は裏打ち層の接合面に接着層を積層せしめ、次いで加熱炉入り口において接着層を有する表層及び裏打ち層を一体化せしめ、加熱炉中で接着層中の高融点熱可塑性樹脂からなる繊維を溶融せしめた後加圧ローラ間を通し各層を接合せしめた後、所定の形状に切断することを特徴とする請求項8記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第10は、請求項7〜9のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法において、加熱炉中で、接着層を構成する熱可塑性樹脂からなる繊維を溶融せしめる工程において、積層体の上方又は下方に設けた熱風吹き出し口より熱風を吹き出し、積層体の熱風吹き出し口と対向する位置に吸引口を設け、熱風を吸引することにより熱可塑性樹脂からなる接着層を溶融せしめる構成としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第11は、裏打ち層が、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルに関する。
本発明の第12は、カーペットからなる表層、不織布またはパウダーからなる熱可塑性樹脂製接着層、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなる裏打ち層が、該熱可塑性樹脂製接着層を加熱溶融することにより一体化されたカーペットタイルにおいて、該裏打ち層を加熱することにより低融点の熱可塑性樹脂製繊維を収縮させることによってドーミング処理が施されたことを特徴とする請求項11記載の空調用通風性カーペットタイルに関する。
本発明の第13は、裏打ち層が、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
本発明の第14は、カーペットからなる表層、不織布またはパウダーからなる熱可塑性樹脂製接着層、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなる裏打ち層を、該熱可塑性樹脂製接着層を加熱溶融することにより一体化させた後、所望の形状に切断してカーペットタイルとした後又は切断する前に、該裏打ち層を加熱することにより低融点の熱可塑性樹脂製繊維を収縮させることによってドーミング処理を施すことを特徴とする請求項13記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法に関する。
【0009】
本発明の空調用通風性カーペットタイルの構成を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の空調用通風性カーペットタイルの横断面図である。
1は、カーペットタイルの表層であるカーペットを示し、このカーペットは、パイル糸2、基布3および必要に応じてプレコート部4からなる。接着層5は、熱可塑性樹脂パウダーまたは熱可塑性樹脂からなる不織布を加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層である。裏打ち層6は、織布又は不織布からなる。
【0010】
本発明における空調用通風性カーペットタイルの表層であるカーペットに使用される繊維としては、ウール、麻、綿等の天然繊維や、ナイロン繊維のようなポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系繊維のような合成繊維、レーヨン等を挙げることができる。
空調用通気性カーペットは基布にこのような繊維をタフティング等により植設したタフトカーペットや短繊維ウエブをニードルパンチにより起毛させたニードルパンチカーペットが、通気性の観点からも好ましい。
タフトカーペットを用いる場合、パイル面と反対面にパイル糸の抜けを防止することを目的として、プレコート部としてゴムエマルジョン等のコーティング材を用いる場合があるが、その場合にはカーペットの通気性を損なうことのないように実施する必要がある。
この空調用通気性カーペットは特に限定されるものではないが、通常4mm〜12mmの厚さのものが使用される。
【0011】
織布又は不織布からなる裏打ち層としては、ウール、麻、綿等の天然繊維や、ナイロン繊維のようなポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系繊維のような合成繊維、レーヨン等又はガラス繊維、或いはこれら繊維の混合物から成る織布又は不織布を使用する。裏打ち層も又通気性を有することが必要である。
裏打ち層を構成する不織布は、高融点(210〜290℃、好ましくは240〜270℃)の繊維と低融点(100〜180℃、好ましくは110〜160℃)の繊維とで形成することが好ましい。その理由は、最終的にカーペットタイルとして使用する際、カーペットが反ってしまうことを防止するため、カーペットタイルを加熱してドーミング加工を施すのに都合が良いからである。高融点繊維と低融点繊維の比率は9:1〜6:4、好ましくは8:2〜7:3である。また、融点の差は10℃以上、好ましくは20℃以上である。
織布又は不織布からなる裏打ち層の厚さは特に限定されるものではないが、通常1mm〜6mmの厚さのものが使用される。又、目付量は、通常200g/m〜1500g/mの重量のものが使用される。
高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなる裏打ち層を使用した場合、カーペット層と接着層と裏打ち層を加熱して一体化させた後で、引き続き、あるいは一度冷却して所望の大きさに粗切りするか又は規定寸法のカーペットタイルとして切断したものをさらにその裏打ち層のみを加熱処理して軽度のドーミング処理を施す。尚、本発明に言うドーミング処理とはカーペットタイルを皿を伏せたような形状とすることをいう。このような処理を施したものは使用に際して上反りが生じることを防止でき、寸法安定性も向上するので空調用カーペットタイルとして適している。
裏打ち層の加熱にはガスバーナー、赤外線ヒーターやハロゲンランプなどの加熱装置が裏打ち層の裏面だけ加熱出来るので適している。加熱温度は約100〜200℃(好ましくは130〜160℃)、加熱時間は10〜120秒(好ましくは20〜60秒)である。
【0012】
熱可塑性樹脂パウダー又は熱可塑性樹脂からなる不織布により構成される接着層における熱可塑性樹脂は、上記表層及び/又は裏打ち層を構成する繊維が熱可塑性合成樹脂である場合、その融点より低い融点を有するものであることが好ましい。
接着層を溶融させる手段としては、通常、加熱炉中において積層体の上方または下方から熱風を吹き付ける手段を用いている。熱風が積層体に最初に接触するときの温度が例えば180℃であるとすると、積層体の反対側に通過して出てくる熱風温度は110℃程度位まで低下している。したがって、表層から熱風を通す場合は下層の熱可塑性樹脂の融点が接着層の熱可塑性樹脂の融点より少々低くても何の問題も生じない。また下方から熱風を通す場合は上層の熱可塑性樹脂の融点が接着層の熱可塑性樹脂の融点より少々低くても何の問題も生じない。
接着層に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂も使用することができるが、特に、ポリオレフィン系樹脂やエチレン−酢酸ビニル共重合体のような酢酸ビニル系樹脂が好ましい。
表層及び裏打ち層を構成する繊維が熱可塑性合成樹脂である場合、同様の熱可塑性合成樹脂を接着層を構成するパウダーや不織布として使用することもできるが、その場合には、表層及び裏打ち層を構成する繊維が熱可塑性合成樹脂の重合度より低い重合度を有する熱可塑性合成樹脂からなるパウダーや不織布を使用することにより、表層及び裏打ち層を構成する熱可塑性合成樹脂の融点より低い融点を有するものとすることができる。
【0013】
接着層として熱可塑性樹脂からなるパウダーを用いる場合、パウダーの粒子径は100〜1000μmが好ましく、又、散布量は、50〜150g/mとすることが好ましい。
接着層として熱可塑性樹脂からなる不織布を用いる場合、その目付量は、30g/m〜150g/m、好ましくは50g/m〜100g/mである。
接着層として、熱可塑性樹脂からなる不織布を用いる場合、均一な熱可塑性樹脂からなる不織布を使用することもできるが、高融点の熱可塑性樹脂からなる繊維と低融点の熱可塑性樹脂からなる繊維を混合して得られた不織布が特に好ましい。この場合、高融点と低融点の差は10℃以上、好ましくは20℃以上である。そして、高融点の熱可塑性樹脂でも表層及び/又は裏打ち層を構成する熱可塑性合成樹脂の融点より低い融点を有するものが好ましい。
高融点の熱可塑性樹脂製繊維と低融点の熱可塑性樹脂製繊維の混合比率は5:5〜9:1、好ましくは6:4〜8:2である。
あるいは、高融点の熱可塑性樹脂製繊維を芯繊維としその周囲に低融点の熱可塑性樹脂製繊維を鞘繊維として被覆したいわゆる芯鞘構造の繊維からなる不織布を用いることも出来る。この場合高融点の熱可塑性樹脂製繊維と低融点の熱可塑性樹脂製繊維の使用比率はおおむね前記混合繊維の場合と同じである。
高融点の熱可塑性樹脂製繊維の融点は80℃〜160℃好ましくは90℃〜130℃、低融点の熱可塑性樹脂製繊維の融点は70℃〜150℃好ましくは80℃〜120℃である。ただしこれらの数値は本発明を限定するものではない。
【0014】
この不織布を用いる場合、高融点熱可塑性樹脂からなる繊維と、低融点熱可塑性樹脂からなる繊維との混合繊維から構成された接着層としての不織布をカーペットからなる表層及び/又は織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に供給し、熱風により接着層としての不織布のうちの低融点熱可塑性重合体を溶融圧着することにより表層及び/又は裏打ち層の接合面に接着層を積層せしめ、次いで加熱炉入り口において接着層を有する表層及び裏打ち層を一体化せしめ、加熱炉中で接着層中の高融点熱可塑性樹脂からなる繊維を溶融せしめた後加圧ローラ間を通し各層を接合せしめる際に、より均一な接着剤の層を形成できるので好ましい。すなわち、カーペットあるいは裏打ち層の接合面に織布または不織布からなる接着層を溶融圧着するときに、融点が均一な不織布を使用すると溶融繊維同士が互いにくっついてしまい、繊維の欠落部分ができる。この結果カーペットと裏打ち層を接着一体化したときに接着層が偏在することとなり、局部的に接着強度が弱い部分が生じてしまう。この状況を示すのが図3および4である。
図3は、融点が均一な繊維から成る不織布の加熱前の状態を示す静電複写図であり、図4は、カーペットの接合面に加熱圧着した後の状態を示す静電複写図である(ともに白い部分が不織布である)。加熱溶融後は繊維同士が融着して繊維の欠落部が生じている状態が理解できる。
これを高融点の繊維と低融点の繊維を併用すればまず低融点の繊維が溶融する温度でカーペットの接合面に接合でき、その温度では高融点の繊維は溶融しないので不織布の形状が維持でき、接着剤が局部的に偏在する恐れが無くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、軽量で、カーペットからなる表層と、織布又は不織布からなる裏打ち層との接着強度が良好で、通気性に優れた空調用通風性カーペットタイルを提供することができ、又、該空調用通風性カーペットタイルの製造方法を提供することができた。
【実施例】
【0016】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0017】
実施例1
表層として、ポリエステル不織布から成る基布にナイロン繊維から成るパイルをタフトして成るカーペット(厚さ4.0mm)を用い、裏打ち層として、高融点(260℃)のポリエステル繊維及び低融点(110℃)のポリエステル繊維を混合し、SBR系ラテックスを含浸した不織布(厚さ3.0mm、目付750g/m)を用い、表層の接合面(基布側)及び裏打ち層の接合面各々に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る熱可塑性樹脂パウダー(粒径0.5mm)を100g/mとなるように均一に散布した後、加熱炉に通して加熱しパウダーを溶融固着せしめた。ついでこの両者を各々の接合面を対向させて積層し、加熱炉内にてこの積層体の上方から熱風(150〜200℃)を供給し積層体の下方に熱風を吸引しながら該パウダーを加熱溶融させた後、加圧ロールにて加圧一体化させ、冷却後に500mm角に打ち抜いて空調用通風性カーペットタイルとした。
【0018】
比較例1
表層(カーペット)と裏打ち層(不織布)の接着の方法として、ニードルパンチ装置を用い裏打ち層の繊維を表層の基布に打ち込んで仮止めし、次にゴム系、ラテックス系接着剤を含浸させ、その後乾燥機で固化し、冷却後500mm角に打ち抜いて空調用通風性カーペットタイルとした。
この比較例1と実施例1で得られた空調用通風性カーペットタイルについて、JIS B 9927「クリーンルーム用エアフィルター試験方法」の規定に準じて圧力損失を測定した。
かくして得られた空調用通風性カーペットタイルの風速と圧力損失の関係を図2に示す。
実施例1の方が圧力損失が小さく通気性に優れていることがわかった。
【0019】
実施例2
表層として、ポリエステル不織布から成る基布にナイロン繊維から成るパイルをタフトして成るカーペット(厚さ4.0mm)を用い、裏打ち層として、高融点(260℃)のポリエステル繊維及び低融点(110℃)のポリエステル繊維を混合し、SBR系ラテックスを含浸した不織布(厚さ3.0mm、目付750g/m)を用い、表層の接合面(基布側)及び裏打ち層の接合面各々に、接着層として融点100℃のポリエステルから成る不織布(目付90g/m)を積層した後、加熱炉に通して溶融固着せしめた。この両者を各々の接合面を対向させて積層し、加熱炉内にてこの積層体の上方から熱風(150〜200℃)を供給し積層体の下方に熱風を吸引しながら該接着層としての不織布を加熱溶融させた後、加圧ロールにて加圧一体化させ、冷却後に500mm角に打ち抜いて空調用通風性カーペットタイルとした。
【0020】
実施例3
表層及び裏打ち層(実施例2と同じ物)のそれぞれの表層の接合面(基布側)及び裏打ち層の接合面に、接着層として高融点(130℃)のポリエステル樹脂製繊維を芯にし、低融点(100℃)のポリエステル樹脂を鞘とした繊維(芯鞘繊維)で構成された不織布(目付90g/m)を積層した後、加熱炉に通して溶融固着せしめた。この両者を各々の接合面を対向させて積層し、加熱炉内にてこの積層体の上方から熱風(150〜200℃)を供給し積層体の下方に熱風を吸引しながら該接着層としての不織布を加熱溶融させた後、加圧ロールにて加圧一体化させ、冷却後に500mm角に打ち抜いて空調用通風性カーペットタイルとした。
【0021】
実施例4
表層として、ポリエステル不織布から成る基布にナイロン繊維から成るパイルをタフトして成るカーペット(厚さ4.0mm)を用い、裏打ち層として、高融点(260℃)のポリエステル繊維及び低融点(110℃)のポリエステル繊維を混合し、SBR系ラテックスを含浸した不織布(厚さ3.0mm、目付750g/m)を用い、表層の接合面(基布側)及び裏打ち層の接合面各々に、接着層として融点100℃のポリエステルから成る不織布(目付90g/m)を積層した後、加熱炉に通して溶融固着せしめた。この両者を各々の接合面を対向させて積層し、加熱炉内にてこの積層体の上方から熱風(150〜200℃)を供給し積層体の下方に熱風を吸引しながら該接着層としての不織布を加熱溶融させた後、加圧ロールにて加圧一体化させ、冷却後に一度1600×1100mm角に粗切りし、これを裏打ち層側からハロゲンランプで約150℃に加熱して裏打ち層の低融点のポリエステル繊維を収縮させた後常温まで冷却し、最後に500mm角に打ち抜いて空調用通風性カーペットタイルとした。このものは軽いドーミングが付与されており、JIS L 4406に規定されている熱および水の影響による反り試験の結果、反りは見られなかった。
比較のため同様の方法で製造し、裏打ち層の加熱処理を施さないものの反り試験をした結果、反りは2〜5mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の空調用通風性カーペットタイルの横断面図である。
【図2】図2は、空調用通風性カーペットタイルの風速と圧力損失の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、融点が均一な繊維から成る不織布の加熱前の状態を示す静電複写図である。
【図4】図4は、図3の不織布をカーペットの接合面に加熱圧着した後の状態を示す静電複写図である。
【符号の説明】
【0023】
1 表層であるカーペット
2 パイル糸
3 基布
4 プレコート部
5 接着層
6 裏打ち層
7 実施例1により得られたカーペットタイルの通気性を示すグラフ
8 比較例1により得られたカーペットタイルの通気性を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットからなる表層、接着層、及び、織布又は不織布からなる裏打ち層からなるカーペットタイルにおいて、接着層が熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層であることを特徴とする空調用通風性カーペットタイル。
【請求項2】
カーペットからなる表層、接着層、及び、織布又は不織布からなる裏打ち層からなるカーペットタイルにおいて、接着層が熱可塑性樹脂からなる不織布を加熱溶融することにより形成された通気性樹脂層であることを特徴とする空調用通風性カーペットタイル。
【請求項3】
請求項2における接着層としての熱可塑性樹脂からなる不織布が異なる融点を有する熱可塑性樹脂からなる繊維により構成されていることを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイル。
【請求項4】
カーペットの接合面及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に、予め熱可塑性樹脂パウダーを散布し、加熱溶融させて該接合面に付着せしめ、次いでカーペットの接合面と裏打ち層の接合面を合わせて積層し、加熱圧着して一体化させた後、所望の形状に切断することを特徴とする請求項1記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項5】
上方に設けられたフィードロールにより表層としてのカーペットを供給し、下方に設けられたフィードロールにより裏打ち層としての織布又は不織布を供給し、加熱炉に導入する前にカーペットの接合面、及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面上に熱可塑性樹脂パウダーを供給した後、加熱炉入り口においてカーペットと裏打ち層とを一体化せしめ、加熱炉中で熱可塑性樹脂パウダーを溶融せしめた後加圧ローラ間を通して接合することを特徴とする請求項1記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項6】
加熱炉内において、カーペット、熱可塑性樹脂パウダー、及び織布又は不織布からなる積層体の上方又は下方に設けた熱風吹き出し口より熱風を吹き出し、積層体の熱風吹き出し口と対向する位置に吸引口を設け、熱風を吸引することにより熱可塑性樹脂パウダーからなる接着層を溶融せしめる構成としたことを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項7】
上方に設けられたフィードロールにより表層としてのカーペットを供給し、中間に設けられたフィードロールにより熱可塑性樹脂からなる不織布から構成された接着層を構成するシートを供給し、下方に設けられたフィードロールにより織布又は不織布からなる裏打ち層を構成するシートを供給し、加熱炉入り口においてカーペットと各シートとを一体化せしめ、加熱炉中で接着層を構成するシートを溶融せしめた後加圧ローラ間を通し各層を接合せしめた後、所定の形状に切断することを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項8】
表層としてのカーペットの接合面及び/又は、織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に、予め、接着層としての熱可塑性樹脂不織布を積層した後加熱溶融させて該接合面に付着せしめ、次いでカーペットの接合面と裏打ち層の接合面を合わせて積層し加熱圧着して一体化させた後、所望の形状に切断することを特徴とする請求項2記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項9】
高融点熱可塑性樹脂からなる繊維と、低融点熱可塑性樹脂からなる繊維とから構成された接着層としての不織布を、カーペットからなる表層及び/又は織布又は不織布からなる裏打ち層の接合面に供給し、予め、熱風により接着層としての不織布のうちの低融点熱可塑性樹脂を溶融圧着することにより表層及び/又は裏打ち層の接合面に接着層を積層せしめ、次いで加熱炉入り口において接着層を有する表層及び裏打ち層を一体化せしめ、加熱炉中で接着層中の高融点熱可塑性樹脂からなる繊維を溶融せしめた後加圧ローラ間を通し各層を接合せしめた後、所定の形状に切断することを特徴とする請求項8記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法において、加熱炉中で、接着層を構成する熱可塑性樹脂からなる繊維を溶融せしめる工程において、積層体の上方又は下方に設けた熱風吹き出し口より熱風を吹き出し、積層体の熱風吹き出し口と対向する位置に吸引口を設け、熱風を吸引することにより熱可塑性樹脂からなる接着層を溶融せしめる構成としたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項11】
裏打ち層が、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイル。
【請求項12】
カーペットからなる表層、不織布またはパウダーからなる熱可塑性樹脂製接着層、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなる裏打ち層が、該熱可塑性樹脂製接着層を加熱溶融することにより一体化されたカーペットタイルにおいて、該裏打ち層を加熱することにより低融点の熱可塑性樹脂製繊維を収縮させることによってドーミング処理が施されたことを特徴とする請求項11記載の空調用通風性カーペットタイル。
【請求項13】
裏打ち層が、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。
【請求項14】
カーペットからなる表層、不織布またはパウダーからなる熱可塑性樹脂製接着層、高融点の熱可塑性樹脂製繊維及び低融点の熱可塑性樹脂製繊維を混合した不織布からなる裏打ち層を、該熱可塑性樹脂製接着層を加熱溶融することにより一体化させた後、所望の形状に切断してカーペットタイルとした後又は切断する前に、該裏打ち層を加熱することにより低融点の熱可塑性樹脂製繊維を収縮させることによってドーミング処理を施すことを特徴とする請求項13記載の空調用通風性カーペットタイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−14994(P2006−14994A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196855(P2004−196855)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【出願人】(504240326)トーア紡マテリアル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】