説明

空調装置用熱交換器

【課題】フィンとチューブとの配列を最適化することで空気流路を十分に確保し、且つ空気抵抗を減少させることで熱伝逹量を最大化させることができるフィン−チューブ熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器は、所定間隔を置いて配置された複数のフィン10と、複数の段と複数の列をなしながらフィン10を貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブ20と、を具備し、空気の流れに対して垂直な熱交換器の全体断面積に対するフィンとチューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.6ないし0.9であり、互いに隣接した一対のフィンの間で1列のチューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下になるようにした構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置用熱交換器に係り、特に、冷暖房兼用空調装置の室外熱交換器として利用されるフィン−チューブ方式の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空調装置は、冷凍サイクルまたはヒートポンプサイクルにより室内の温度を外気の温度に関わらず好適な温度に保つものであって、その内部を冷媒が流れながら周辺空気と熱交換をする熱交換器を具備する。
近年、冷凍サイクル及びヒートポンプサイクルを単一の空調装置で実現し、選択的に室内の冷暖房を遂行することができる冷暖房兼用の空調装置の普及が増加しつつある。
通常、空調装置は、室内熱交換器、圧縮機、室外熱交換器、膨張バルブとから構成される。冷房運転の場合、室内熱交換器は蒸発機として作用し、室外熱交換器は凝縮機として作用して、低温・低圧の液体状態の冷媒が室内熱交換器を通過しながら室内の熱を吸収し蒸発することで冷房が行なわれる。これと逆に、暖房運転の場合、室内熱交換器が凝縮機として作用し、室外熱交換器は蒸発機として作用して、圧縮機から吐出される高温・高圧のガス状態の冷媒が室内熱交換器を通過しながら室内に熱を放出することで暖房が行なわれる。
空調装置用熱交換器としては、フィン−チューブ(fin−tube)方式の熱交換器が広く使用されている(例として、特許文献1参照)。フィン−チューブ熱交換器は、所定間隔を置いて並列する複数のフィンと、複数のフィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れる複数のチューブとからなる。
この種のフィン−チューブ熱交換器では、空気がフィンとチューブとの間を通過することで、チューブ内を流れる冷媒と空気との間で熱交換が行われる。したがって、熱交換器における熱伝逹量は、フィンとチューブの配列によって影響されるようになる。
一般に、熱伝逹量は、空気と熱交換器の熱交換面積に比例し、空気が熱交換器を通過する時の空気抵抗に反比例し、空気の流速に比例する。したがって、熱伝逹量を大きくするためには、熱交換面積を大きくするか、空気の抵抗を最小化することが必要である。しかしながら、熱交換面積を大きくすることは熱交換器の全体大きさの増大を招くことがあるため、熱交換器の大きさを増大させることなく空気抵抗を最小化できるようにフィンとチューブを配列することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−170506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はフィンとチューブの配列を最適化して空気流路を充分に確保して空気抵抗を減少させることで熱伝逹量を最大化させることができるフィン−チューブ熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明の一実施形態による熱交換器は、所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら上記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備し、空気の流れに対して垂直な上記熱交換器の全体断面積に対する上記フィンと上記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.6ないし0.9になるように構成される。
また、本発明の一実施形態による熱交換器は、互いに隣接した一対のフィンの間で1列のチューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下になるように構成される。
また、本発明の一実施形態による熱交換器は、空気が吹いてくる方向を基準に、前列の隣り合う一対のチューブの中心とそれに隣接する後列の一つのチューブの中心とが互いに三角形をなすように配置され、上記三角形において後列のチューブ中心を頂点とする内角の角度が60°ないし90°の範囲で選択されるように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、空気流路を十分に確保することができ、空気抵抗を減少させることにより熱伝逹量を理論設計値に近いように向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による熱交換器の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による熱交換器の一部正面図である。
【図3】本発明の一実施形態による熱交換器の一部正面図であって、空気流路断面比を説明するための図である。
【図4】空気流路断面比による熱伝逹量の変化を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による熱交換器の一部正面図であって、空気流路断面均等比を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態による熱交換器の側面図であって、3列16段熱交換器を簡略に示した図である。
【図7】空気流路断面均等比による熱伝逹量の変化を示したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態による熱交換器の一部側面図である。
【図9】前列と後列でのチューブの配置角度による熱伝逹量の変化を示したグラフである。
【図10】前列と後列でのチューブの配置角度による空気抵抗率の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照して本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1及び図2に示したように、本発明の一実施形態による熱交換器は、所定間隔を置いて配置された複数のフィン10と、フィン10を貫通して複数の段と複数の列に設置されるチューブ20とを具備する。
複数のチューブ20は、両端において相互に連結管30によって連結され、その内部を冷媒が流れるようになる。
本明細書において、「列(row)」とは、図1において横軸方向へのチューブ20の配列を、「段(column)」とは、図1において縦軸方向へのチューブ20の配列のことをいう。
また、本明細書においてフィン10間の間隔を「ピッチ(pitch)」と定義することにする。
このような熱交換器において、空気がフィン10とチューブ20との間を通過しながらチューブ20内部を流れる冷媒と熱交換をするようになる。
本実施形態では、空気と冷媒との間での熱伝逹量を最大化することができる、フィン10とチューブ20の最適の配置構造を得るために様々な設計因子を設定し、これに対する実験を遂行した。
[設計因子1]空気流路断面比
先ず、第一の設計因子として、空気の流れに対して垂直な熱交換器の断面積に対するフィン10とチューブ20との間に形成された空気流路断面積の割合が挙げられる。
本明細書では、この割合を「空気流路断面比」と定義する。
図3に示したように、単位1列における熱交換器の断面積Atotalは、次式1のようにチューブ20の長さLと、フィン10の高さHの積で示すことができる。
【0009】
【数1】

【0010】
そして、空気流路の面積Aair(図3における実線部分)は、熱交換器の断面積Atotalからフィン10とチューブ20の断面積を差し引いた値である。すなわち、空気流路の断面積Aairは、次式2のように求められる。
【0011】
【数2】

【0012】
上記式2において、Dはチューブ20の直径を、Ntはチューブの個数を、Tはフィン10の厚さを、Nfはフィン10の個数をそれぞれ意味する。また、上記式2における(D×L×Nt+T×H×Nf)項目は、フィン10とチューブ20の断面積を個別に合算したものを示し、(T×D×Nt×Nf)項目は、フィン10とチューブ20とが重なり合う部分の断面積を示す。
ここで、空気流路断面比は、熱交換器の断面積Atotalに対する空気流路の断面積Aairの比であるので、次式3のように示すことができる。
【0013】
【数3】

【0014】
理論設計値に近い熱伝逹量が得られる空気流路断面比を求めるために、次のような熱交換器モデルと実験条件下で実験を遂行した。
<実験1>
1)実験対象の熱交換器
−3列16段熱交換器(熱伝逹量理論設計値:3.2kW)(図6参照)、及び
4列12段熱交換器(熱伝逹量理論設計値:3.5kW)
−チューブ20の直径D:7mm
−フィン10の厚さT:0.12mm
−フィン10のピッチ:14mm
2)実験条件
−乾球温度:30.96℃
−湿球温度:24.28℃
−密度:1.11kg/m3
−送風ファン回転数:705rpm
−平均空気流速:2.1m/s
−実験回数:3回実施後のデータ平均
上記のような条件下で実験を行なった結果が、次の表1と図4のグラフにてまとめられている。
【0015】
【表1】

【0016】
表1から分かるように、3列16段熱交換器の場合、空気流路断面比が0.6以上の時に理論設計値(3.2kW)の85%以上の熱伝逹量が得られ、同様に4列12段熱交換器の場合も、空気流路断面比が0.6以上の時に理論設計値(3.5kW)の85%以上の熱伝逹量が得られることが分かる。しかし、空気流路断面比は1.0を超過することができず、空気流路断面比が1.0に近くなるほど熱交換器全体の大きさが大きくならなければならないため、1.0に近い値も適切ではない。
したがって、空気流路断面比は0.6〜0.9の範囲に設定されることが好ましい。
[設計因子2]空気流路断面均等比
第二の設計因子として、単位1ピッチのフィン10の間において単位1列のチューブ20によって区画される空気流路断面積の均等比が挙げられる。本明細書では、これを「空気流路断面均等比」と定義する。
図5及び図6に示したように、フィン10の単位1ピッチ当たりチューブ20の間にn個の空気流路断面積A1、A2、A3、…、Anが存在する時、第nの空気流路断面積Anの空気流路断面均等比は、全体断面積A1、A2、A3、…、Anの平均値Aaveに対する当該空気流路断面積Anの割合として、次式4のように示すことができる。
【0017】
【数4】

【0018】
実験から、空気流路断面均等比が0.5以下である空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積の個数の20%以下である場合に、熱伝逹量の理論設計値の85%を満足することが分かった。
図5の場合を例に挙げると、3個の空気流路断面積A1、A2、A3の空気流路断面均等比がそれぞれ0.5、2.0、0.5である場合、均等比が0.5以下の空気流路断面積は2個(A1、A3)であるので、全体空気流路断面積の個数の約66%である。
空気流路断面均等比が0.5であるということは、当該断面積が平均断面積Aaveの1/2にしかならないことであって、これは、空気抵抗が増加する要因が大きいということを意味する。
したがって、0.5の空気流路断面均等比を悪条件と想定し、0.5以下になる空気流路断面積の個数を各5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%に変化させながら実験した結果、20%以下になると熱交換器の性能低下が回避できることが分かった。
具体的に、次のような熱交換器モデルと条件下で実験を遂行した。
<実験2>
1)実験対象の熱交換器
−3列16段熱交換器(熱伝逹量理論設計値:3.2kW)、及び
4列12段熱交換器(熱伝逹量理論設計値:3.5kW)
−チューブ20の直径D:7mm
−フィン10の厚さT:0.12mm
−フィン10のピッチ:14mm
2)実験条件
−乾球温度:30.96℃
−湿球温度:24.28℃
−密度:1.11kg/m3
−送風ファン回転数:705rpm
−平均空気流速:2.1m/s
−実験回数:3回実施後のデータ平均
3)実験方法
−空気流路断面均等比が0.5以下である断面積個数が総個数の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%であるそれぞれの場合における熱伝逹量の測定。
上記のような条件下で実験を行なった結果が、次の表2と図7のグラフにてまとめられている。
【0019】
【表2】

【0020】
表2から分かるように、空気流路断面均等比が0.5以下である断面積個数が総個数の20%以下である時、3列16段熱交換器(図6)と4列12段熱交換器の両方において熱伝逹量の理論設計値(3列16段熱交換器:3.2kW、4列12段熱交換器:3.5kW)の85%以上の熱伝逹量が得られることが分かる。
[設計因子3]前列と後列におけるチューブの配置
第三の設計因子として、複数のチューブ20列において空気が吹いてくる方向を基準にした前列と後列のチューブの配置が挙げられる。具体的に、図8に示したように、空気が吹いてくる方向(矢印方向)を基準にして、前列の隣り合う2個のチューブの中心21、22とそれに隣接する後列の1個のチューブの中心23とを連結したときに三角形をなすようにすると空気抵抗を低減することができる。
特に、実験から、このような三角形における後列のチューブの中心23を頂点とする内角αの角度が60°〜90°の条件で空気流れが熱伝逹量に最も良い影響を及ぼすことが分かった。
具体的に、次のような熱交換器モデルと条件下で実験を遂行した。
<実験3>
1)実験対象の熱交換器
−4列12段熱交換器(熱伝逹量理論設計値:3.5kW)
−チューブ20の直径D:7mm
−フィン10の厚さT:0.12mm
−フィン10のピッチ:14mm
2)実験条件
−乾球温度:30.96℃
−湿球温度:24.28℃
−密度:1.11kg/m3
−送風ファン回転数:705rpm
−平均空気流速:2.1m/s
−実験回数:3回実施後のデータ平均
3)実験方法
−空気流速を0.3m/sから2.4m/sまで変更しながら後列のチューブの中心23を頂点とした内角αの影響を把握する。
−1次試験:前列の2個のチューブの中心21、22間の距離(段ピッチ)は22mmに、前列のチューブの中心21、22間の距離(列ピッチ)は14mmに固定した状態で内角αを変化させながら熱伝逹量を測定。
−2次試験:段ピッチを固定し列ピッチを変更しながら内角αを変化させて熱伝逹量を測定。
−3次試験:列ピッチを固定し段ピッチを変更しながら内角αを変化させて熱伝逹量を測定。
上記のような条件下で実験を行なった結果が、次の表3と図9のグラフにてまとめられている。
【0021】
【表3】

【0022】
表3から分かるように、後列のチューブの中心23を頂点とする内角αの角度を50°から110°まで変化させた結果、80°である時に全体として最も大きな熱伝逹量が得られるが、室外ファンモーターの最高風量である2.1m/sの空気流速で比較した時、内角αの角度が60〜90°の範囲で熱伝逹量理論設計値(3.5kW)の90%に近い熱伝逹量が得られることが分かる。また、最も熱伝逹量が高かった80°での値を基準とした時、60〜90°で90%以上の値が得られた。したがって、内角αの角度は60〜90°の範囲で設定されれば良い。
一方、図10のグラフは、内角αの変化による空気抵抗と熱伝逹量の変化を比較したグラフである。図10のグラフにおいて、水平軸は内角αの角度を、左側垂直軸は後列のチューブが存在しない場合と比較した空気抵抗率%を、右側の垂直軸は熱伝逹量をそれぞれ示す。
図10のグラフから分かるように、内角αの角度が増加するにつれて空気抵抗が増加した。これは、前列の2個のチューブの間に後列の1個のチューブが位置することで空気抵抗が大きくなることを意味する。しかし、熱伝逹量は空気抵抗の増加と関係なく80°近傍で最も大きいが、これは、前列のチューブの後面において空気流れが発生し、これが却って熱交換に有利に作用したためである。
なお、以上で挙げた設計因子1ないし3の条件のうち、2つ以上の条件を同時に満足する場合に最も良好な効果を発揮することができる。
以上では本発明の特定の好適な実施形態について図示し説明した。しかし、本発明が上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者ならば誰でも種々の変形実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
10 フィン
20 チューブ
30 連結管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら前記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備する空調装置用熱交換器において、
空気の流れに対して垂直な前記熱交換器の全体断面積に対する前記フィンと前記チューブとの間に形成される全体空気流路断面積の割合が0.6ないし0.9であり、
互いに隣接した一対の前記フィンの間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下であることを特徴とする空調装置用熱交換器。
【請求項2】
空気が吹いてくる方向を基準に、前列の隣り合う一対のチューブの中心とそれに隣接する後列の一つのチューブの中心とが互いに三角形をなすように配置され、
前記三角形において後列のチューブの中心を頂点とする内角の角度が60°ないし90°であることを特徴とする請求項1に記載の空調装置用熱交換器。
【請求項3】
所定間隔を置いて配置された複数のフィンと、複数の段と複数の列をなしながら前記フィンを貫通して設置されその内部を冷媒が流れるチューブと、を具備し、
互いに隣接した一対の前記フィンの間で1列の前記チューブによって区画される複数の空気流路断面積の平均値に対する各空気流路断面積の割合が0.5以下の空気流路断面積の個数が全体空気流路断面積個数の20%以下であり、
空気が吹いてくる方向を基準に、前列の隣り合う一対のチューブの中心とそれに隣接する後列の一つのチューブの中心とが互いに三角形をなすように配置され、前記三角形において後列のチューブの中心を頂点とする内角の角度が60°ないし90°であることを特徴とする空調装置用熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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