説明

空間からエネルギーを得るための、チップ又はプリント回路基板のようなワイヤレスアンテザードデバイス上のアンテナ

【解決手段】ワイヤレスアンテザードデバイスは、集積回路チップ又はプリント回路ボードであって、少なくとも1つの集積されたアンテナと、アンテナによって空間から取得されたエネルギーを受け取ってアンテナと共に動作する回路構成とを有している。エネルギーが回路構成によって処理された後、取得されたエネルギーから電力を受け取るシステムでは、アンテナと回路抵抗の間でインピーダンスの不整合がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体集積回路(IC)チップを具えるデバイスについて開示されており、その上には、アンテナとICチップの回路構成が配置されている。アンテナとICチップの回路構成は、アンテナの実効面積の改善をICチップにもたらすように集積される。チップ上のアンテナ配置のデザインは、チップ上のアンテナの位置に依存しない。結果として、本発明に係るチップ上のアンテナは、従来技術に開示されたデザインよりも簡素化されて、設計及び製造し易い。ローカル及びワイドエリアでのワイヤレスネットワークへの依存、特に、低パワー(レンジ)であって、ローカルセンシング又はオブジェクト識別を行うワイヤレスネットワークへの依存が増加しており、1つの半導体デバイス上にアンテナ構造を集積する必要がある。単純なサイズ不足を克服するようなオンチップアンテナ構造がないことは、重要な問題であった。
【0002】
アンテナの長さと材料は、通常、アンテナが受信し、又はアンテナから送信される信号の周波数及び強さを決定する。しかしながら、ローカルエリアワイヤレスネットワークが益々小さくなる場合に、(アンテナ構造の電線又は電話線を用いるような、独立した別個のアンテナ又はマルチユーズのアンテナであろうとなかろうと)壁及び天井にアンテナが装着されている部屋又は建物のサイズのネットワーク領域の考えが現実的になっており、非常に低パワーのアンテナ構造を用いて、ローカルネットワークからワイヤレスICデバイスに又はこのようなワイヤレスICデバイスを含むシステムに情報を転送することが現実的になっている。
【背景技術】
【0003】
チップ上の特定の位置にアンテナ及び回路構成を設けることは知られていた。米国特許第4,857,893号及び4,724,427号は、チップ上のトランスポンダ回路に含まれる平面アンテナの使用が開示されている。それらの開示では、アンテナコイルは、チップ基板の外周に沿って描かれている。アンテナコイルの中心には、カスタムロジック回路、プログラマブルメモリアレイ、及びメモリコントロールロジックがある。トランスポンダの平面アンテナは、チップ上の磁気フィルムインダクタを利用して、ターン数の低減を可能とし、その結果インダクタの製造を簡素化している。マルチターンのスパイラルコイルを有しており、外径が1cm×1cmであるアンテナが開示されている。高周波電流がコイル内を通る場合、磁気フィルムは磁化困難方向に動かされて、各導体の周りの2つの磁気フィルムは、ワンワーンコイルを囲む磁気コアとして働く。磁気フィルムは、自由空間インダクタンスに加えて、コイルのインダクタンスを増加させる。
【0004】
米国特許第4,857,893号及び4,724,427号で説明された試みの問題の1つは、インダクタンス及びQが十分に大きい、集積回路用途の小さくて空気コアのインタクタを製造する必要である。コイルのインダクタンスLを大きくするために、小さい空気コアのインタクタは、透磁率が大きくて電気的な絶縁特性を有するパーマロイ磁気フィルム又はその他の適切な材料を堆積することで作製される。このような試みは、アンテナコイルの間に磁気フィルム層を必要とすることから、チップ上のアンテナの複雑さとコストを増加させて、アンテナのサイズを小さくする可能性を制限する。
【0005】
米国特許第4,857,893号及び4,724,427号で説明された試みのもう1つの問題は、集積回路(IC)チップ上にアンテナを付帯して集積することである。先に説明した特許に記載されているように、チップの周辺にアンテナを配置する場合、アンテナの位置が、チップの外周近くの一般的なボンドパッドの配置と干渉する。また、チップの外周近くに配置されたアンテナの中心領域内の電磁場は、アンテナ内にある回路の動作に影響を与える。
【0006】
米国特許第6,373,447号は、集積回路上に形成された1又は複数のアンテナの使用について開示しており、それらアンテナは、チップ上の他の回路に接続されている。アンテナの構成には、ループ、マルチターンループ、方形スパイラル、ロングワイヤ及びダイポールがある。アンテナには、選択的に互いに接続可能な2以上のセグメントがあって、アンテナの長さを効果的に変更できる。また、2つのアンテナは、絶縁層によって分離された2つの異なる金属化層で形成できる。
【0007】
米国特許第6,373,447号は、米国特許第4,857,893号及び4,724,427号の問題を、集積回路(IC)チップの周縁領域以外にアンテナを形成することで解決を試みている。米国特許第6,373,447号は、集積回路(IC)チップを具えるデバイスを記載しており、そのチップの表面は、外周領域と中心領域に分けられている。中心領域には、第1部分と第2部分とがあって、ICチップの回路構成は、中心領域の第1部分内に配置され、アンテナは、中心領域の第2部分内に配置される。この特許は、チップ上の他の回路構成と接続された1又は2以上のアンテナが集積回路上に形成できることを述べている。アンテナの構成には、ループ、マルチターンループ、方形スパイラル、ロングワイヤ及びダイポールがある。アンテナには、選択的に互いに接続可能な2以上のセグメントがあって、アンテナの長さを効果的に変更できる。
【0008】
米国特許第6,373,447号は、チップの中心領域にアンテナを配置することで、チップの周縁付近の一般的なボンドパッドの配置とアンテナが干渉する問題を避けている。しかしながら、発明者が開示した全てのケースでは、中心領域のある部分にアンテナが配置され、IC回路構成は、中心領域の別の部分に置かれる。発明者は、特許の本文で、「その領域にボンドパッドがない限り、チップの1つ、2つ又は3つ(4つではない)の隅に」アンテナを配置できることを述べている。
【0009】
上述した従来技術の問題は、チップ上へアンテナの堆積が、チップ上の幾つかの特定の部分に限定されることである。米国特許第4,857,893号及び4,724,427号の場合、アンテナはチップの周縁にあり、米国特許第6,373,447号の場合、アンテナは、チップの中心領域内にある。
【0010】
従来技術に開示されたチップデザイン上のアンテナのさらなる問題は、アンテナ及びIC回路構成が、チップ上の離れた部分に別個の構成要素として配置されて、アンテナとICチップの回路構成との相互作用が小さくなる。米国特許第6,373,447号の場合、中心領域のある部分にアンテナが配置され、IC回路構成は、中心領域の別の部分に置かれる。このことは、ICチップ上のアンテナ配置のデザインをやはり制限する。さらに、それによって、デバイスは真に集積されない。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、集積された、好ましくは集積的に形成された少なくとも1つのアンテナを有する集積回路チップに、アンテナが空間から取得したエネルギーを受け取るためにアンテナと関係して動作する回路構成を与える。別の実施例では、プリント回路基板又はその他のワイヤレスアンテザード(untethered)デバイスが使用される。アンテナは、その物理的面積よりも大きい有効面積を有している。通常、取得されたエネルギーが回路構成で整流されたことによるDCパワーで、回路構成から電力を受け取るシステムも、チップ上に設けられる。
【0012】
アンテナ及び回路構成は、性能に悪影響を及ぼすことなくチップ上の任意の場所に配置できる。
【0013】
アンテナは、方形スパイラルアンテナのようなスパイラルアンテナであって、導体部分の厚さと幅は、性能を最大にするように調整される。インピーダンスが調整されて、アンテナの実効面積を与える。
【0014】
本発明の目的は、関連する回路構成をチップ又はプリント回路基板に与えて、アンテナによって空間から取得されたエネルギーを効果的に受け取ることと、回路構成によるエネルギーのDCパワーへの変換を容易にすることである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、回路構成から電気システムにDCパワーを送る半導体集積チップ又はプリント回路基板を提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、電力貯蔵要素又はワードワイヤを必要としないシステムを提供することである。
【0017】
本発明のこれら及びその他の目的は、添付の図面と共に以下の記載を参照することで完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書では、用語「空間内」は、配線又はプリント回路基板による電気的エネルギーの伝送とは異なり、エネルギー又は信号が空気又は同様の媒体を通って送られて、その伝送が囲い内で又は部分的に囲い内で行われるか否かに拘わらないことを意味している。
【0019】
本明細書では、用語「ワイヤレスアンテザードデバイス」は、RFエネルギーで遠隔から電力を供給されるデバイスを意味しており、ICチップ、プリント回路基板、分離又は集積された回路要素を有するその他の適当な回路基板を含んでいるが、これらに限定されない。
【0020】
チップ上のアンテナがさらに必要とされるが、そのアンテナは、IC回路において分離した要素ではない。この点に関して、(1)受信したRFエネルギーが近接するIC回路に与える影響と、(2)近接するIC回路が受信したRFエネルギーに与える影響という2つの問題がある。第1の問題は、機能する如何なるICにも重要であって、ペイロードIC電気回路からのエネルギー取得機能の分離について、米国特許第6,289,237号は、RFエネルギーではなくRF信号に関して、ペイロードの電気回路からRFの負の効果を隔離することを開示している。我々の実験は、ペイロードの電子回路がエネルギー取得アンテナ及び関連回路に近接した領域にあるにもかかわらず、ペイロードは十分に機能を発揮することを示した。
【0021】
第2の問題は、実はエネルギー取得アンテナの利益であって、このようなアンテナの実効面積を増加させる。先の段落の実験に関する機能デバイスは、図1及び図2に示されている。両方のケースにおいて、隣接する回路は、加えられたRFエネルギーの場で満足に動作することと同時に、アンテナの実効面積を増加することで、取得するエネルギーを増加させる。提示された状況を記述するような扱いやすい閉じた形式の数式を得ることは、配線された回路構成及び隣接する構成要素自体による効果及び相互作用が多いことから、非常に困難でしかない。
【0022】
図1は、機能デバイスを示しており、全ての分離した構成要素と伝導トレースは、電力を与えるバッテリ又は配線と共には置かれていない。エネルギーは、デバイスに向けて高周波(RF)エネルギーを発することで供給されて、RFは、整流されて直流(DC)に変換された後電気回路に給電される。そして、温度センサーが読まれて、その結果がレシーバに送信される。デバイスの動作には、5ミリワットの電力が必要とされる。このデバイスは、図示したように機能する。
【0023】
図2は、電力を測定するデバイスであって、エネルギー取得回路は、図1のデバイスと同様であるが、発光ダイオード(LED)の5つのセットが電圧を測定するために平行に配置されており、エネルギー取得回路に配線を接続する必要がない。また、LEDの明るさを観察することで、電力は相対的に推定される。図1のペイロード要素を相互接続する導体は図2に含まれているが、近接する電気的要素自体は除かれている。
【0024】
図3は、エネルギーを取得するオンチップアンテナと、データを送信するオンチップアンテナとを用いたシングルチップRFIDデザインを示す。図3aは、「平らな」図であって、コンピュータ支援設計(CAD)ツールによる見取り図である。図3bは、実際に製造されたチップ(ダイ)の写真である。
【0025】
回路構成が試験下でデバイスと干渉することによって、如何なるインサイチュー(in situ)エネルギー又はパワー測定も不確かになる。図4a及び図4bは、図2の電力測定デバイスを、エネルギー源とデバイス間の空間が導体板で遮られた場合に発光したLEDの数を示すグラフに沿って示している。導体板は、エネルギー源のパッチアンテナとデバイス間に引かれた線に垂直に挿入され、パッチアンテナとデバイスは平行にされる。デバイスの上端は、実験台の上端を超えて19.0cmにあった。11cm、14.7cm、16.0cm、17.25cm及び19.0cmの導体板がアンテナとデバイスの間に配置された。これら導体板の各々について、発光したLEDの数は、5(導体板なし)、4、4、3,2及び0となった。図5は、図4と同じような配置において、17.25から19.0cm、16.0から19.0cm、14.7から10.0cm、11.0から19.0cm、0.0から19.0cmにあるような大きさの導体板が挿入された。図5a及び図5bでは、発光したLEDは、5、5、5、5、4及び0個である。
【0026】
本発明の第1実施例では、デバイスは集積回路(IC)チップを具えており、チップには、アンテナとICチップの回路構成とが配置されている。1又は複数のアンテナとICチップの回路構成とが、アンテナの実効面積の改善をICチップに与えるように集積されている。
【0027】
その他の実施例では、プリント回路基板のようなワイヤレスのアンテザードデバイスが、所望のアンテナ及び回路構成に与えられてよい。
【0028】
アンテナの「実効面積」は、物理的面積ではなく、アンテナの機能的面積を意味する。同調したアンテナの実効面積は、その物理的面積よりも大きくなり得る。その現象は、1908年にラインホルドルーデンベルグによって明らかにされており[Rudenberg, Reinfold, "Der Empfang Elektrischer Wellen in der Drahtlosen Telegraphie" ("The Receipt of Electric Waves in the Wireless Telegraphy") Annalen der Physik IV, 25, 1908, p. 446-466.]、その現象の説明は、長年の間、その他の多くの書き手によって拡張されてきた。
【0029】
米国特許第5,296,866号は、「ほぼ平面波としてよい入射場とアンテナとが相互作用し、誘導によってアンテナを流れる電流が生じると、ルーデンベルグは教えている。次に、[アンテナの]電流は、アンテナの付近に場を生成し、場は、入射場の力線を曲げるように入射場と相互作用する。入射場の波面の比較的大きな部分からエネルギーが流れるように、力線は曲げられて、波面からアンテナに吸収されるエネルギーの効果は、アンテナの幾何学的面積よりもかなり大きくなる。」と述べている。
【0030】
実効面積の考えが知られている一方で、アンテナのデザイン及び構造にそれを導入することは、簡単又は明らかではない。米国特許第5,296,866号は、特別な回路構成を使用することで幾何学的面積よりも実効面積が大きいアクティブアンテナを作製することを教えている。この開示で詳細に説明されたアンテナは、非平面のコイルアンテナである。
【0031】
引用によって明示的に本明細書の一部となる、同時係属の米国特許出願第09/951,031号は、チップ上のアンテナを開示しており、その実効面積は、物理的面積よりも300〜400倍大きい。実効面積は、螺旋状の導体の分布インダクタンスとキャパシタンスとを用いて構成されたLCタンク回路を使用することで拡大される。これは、LCタンク回路を作製するために、電極間のキャパシタンスとインダクタンスをアンテナに用いることで達成される。これによって、分離した回路構成を加える必要なく、物理的面積よりも実効面積が大きいアンテナが与えられる。また、それにより、磁気フィルムを使用する必要がなくなる。結果として、集積回路チップ上へのアンテナの作製が容易にされて、例えば、このようなチップ上に非常に小さいアンテナがデザインできる。また、引用によって明示的に本明細書の一部となる米国特許第6,289,237号も参照のこと。
【0032】
この開示の発明は、アンテナと、集積回路(IC)チップ又はプリント回路基板(PCB)のようなワイヤレスアンテザードデバイスの回路構成とを集積することで、アンテナがチップ上に単独で配置された場合よりも大きな実効面積を得ている。「集積する(integrate)」又は「集積(integration)」は、ICチップ又はPCBの回路構成を用いて、アンテナ機能、特にエネルギーを取得する実効面積の一部として、アンテナがチップ上に配置されていることを意味する。アンテナと、そのその付近にあるICチップ又はPCBの回路構成とを集積することで、チップのデザインは簡単化される。分離したアンテナと、アンテナの付近にあるICチップ又はPCBの回路の構成要素とを、チップ上の離れた領域において配置することは、もはや必要ないからである。
【0033】
一般的に、固有インピーダンスが整合されて集積要素が回路構成に接続されるようにアンテナをデザインすることは、好ましい試みである。必要ならば、小さなワイヤレスアンテザードデバイスにおける使用を特に重視した回路構成で、性能の効率を最大にするように、回路構成とアンテナとをデザインできる。
【0034】
アンテナと、アンテナ付近にあるICチップ又はPCBの回路構成とを集積する1つの利点は、アンテナ要素の物理的大きさが、大きな実効面積を得るための唯一の原動力ではないことである。この発明の実施例を用いることで、アンテナの実効面積は、アンテナの物理的サイズと、ICチップ又はPCB上においてアンテナ付近にあるIC回路構成の物理的サイズとの組合せになる。基本的に、全ての実用用途のICチップ又はPCB上のアンテナは、ICチップ又はPCB全体にあり、ICチップ若しくはPCBの特定の部分に、物理的アンテナが配置されている訳ではない。ICチップ、PCB又はその他の実施例において、アンテナの実効面積は、ICチップ、PCB又はその他の基板の物理的面積よりも大きいことは理解できるであろう。実際に、ICチップ又はPCBの離れた領域(即ち、中心領域の周辺、又は中心領域と区別される領域)と物理的アンテナを隔てることは、ICチップ又はPCBにおいて、隔てられた物理的アンテナよりも実効面積を大きくすることに有害になり得る。
【0035】
チップ又はPCB上のアンテナのデザインは、多数の情報の集合を含んでいる。(1)動作周波数(中心周波数)、(2)半値点のバンド幅、(3)Q−ピーク性能と半値点の性能の比、(4)各プロセス層の厚さに沿った電気的及び磁気的特性−所謂、技術的ファイルが与えられる。
【0036】
適切なデザイン情報が与えられると、アーキテクチャ、例えば、ホイップ、ダイポール、方形スパイラル、円状スパイラルなどが選択される。次に、一連のパラメータが選択されて、例えば、導体の長さを波長(中心周波数)を4で割った値に等しくしたり、中心周波数でアンテナを共振させる。
【0037】
共振を用いる場合、アンテナのパラメータ及び構成は、技術ファイルに与えられている電気及び磁気特性を含んだ寄生及び電極間インダクタンス及びキャパシタンスを利用して、共振が得られるように調整される。
【0038】
共振は、通常、シミュレーションを含むコンピュータ支援デザインを通じて確認される。
【0039】
図4a及び図4bはテスト用の装置に関しており、(A)整流及び「倍」電圧(チャージポンプ)を行う回路構成を伴った2つのスパイラル型エネルギー取得アンテナと、(B)相互接続回路と、(C)電力電圧測定回路(パワーメータ)とを含んでいる。
【0040】
遠くにある独立した装置に関する電力及び/又は電圧の測定は、非干渉なワイヤをデバイスに接続できないことと、デバイスが小さくなるに従って、測定用の回路構成自体が測定に与える効果/寄与に関して内在する問題とで複雑になっている。同時係属の米国特許出願第09/951,031号の実効面積測定は、ワイヤを接続して電力測定を達成している。
【0041】
一連の実験が、915MHzのRFソースアンテナによる場に置かれた図4bのデバイスを用いて行われた。これらの実験では、平坦な導体面(板)が、テストの間、RFエネルギーを与えるソースアンテナとデバイスの間で、デバイスから約0.25インチの距離に配置された。5枚の導体板が用いられ、これらの板が5つの高さでデバイスをシールドする領域は図4a及び図4bに示されている。
【0042】
19.0cmの高さは、実験台を超えたデバイスの上端の高さである。5枚の導体板の5つの実験位置は、19.0cm、17.25cm、16.0cm、14.7cm及び11.0cmであった。デバイスの上にある図4のグラフの点は、デバイスのパワーメータセクション(C)で発光したLEDの数を示している。発光したLEDの数は、LEDに亘る電圧に比例しており、図4bの領域(B2)で見られる1KΩの抵抗に亘って降下した電圧の下限を示す。
【0043】
図4aのグラフから分かるように、アンテナ領域(A1)を完全にRFの場にさらすと、2つのLEDを発光させるのに十分なエネルギーが取得できるが、パワーメータ領域(C)を含めてさらにデバイス領域をさらすことで、さらにエネルギーが取得できる。
【0044】
(B2)及び(C)における近接する電子回路について、回路構成は、領域(B1)に示すDCバスを含んでおり、完全にDCで動作することに留意のこと。
【0045】
(A)及び(B)として示すデバイス領域から完全に取り出される場合、機能しているパワーメータ(C)では、LEDは発光しない。故に、エネルギー取得デバイスとして、パワーメータ自体は、1つのLEDを発光するのに十分なエネルギーも取得しないだろう。しかしながら、デバイスに接続される場合、その領域と回路構成は、測定された電力からすると74.9ミリワットで、LEDを発光させるのに十分な電圧で、エネルギー取得に貢献する。
【0046】
図4a及び図4bでは、導体板は、19.0cm、17.25cm、16.0cm、14.7cm及び11.0cmの順序で導入された。一連の導体板による同様な実験は、17.25cmから19.0cm、16.0から19.0cm、14.7cmから19.0cm、11.0から19.0cm、0から19.0cmの順序で行われた。
【0047】
図4及び図5の結果について数学的モデルは与えられていないが、近接する相互接続(B)及び回路構成(A2)は、取得アンテナの実効面積を増加することで、取得されるエネルギーの総量に貢献することは明らかである。
【0048】
エネルギーの取得におけるアンテナ/デバイスの組合せの効果に、1を超える要因が貢献することは明らかである。我々は、ルーデンベルグの結果による実効面積をルーデンベルグ実効面積と、構成要素及び相互接続による実効領域の残りの部分を近接実効面積と言及する。
【0049】
本発明は、プリント回路基板(PCB)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)ダイ上において、エネルギーを取得するための小さなアンテナをデザイン及び解析して、電源のようなバッテリ又は外部接続を用いないで、電力をオンボードの回路に与えることを可能とする。
【0050】
このようなデバイスの以前のデザインは、アンテナの形状として方形スパイラルコイルを用いる要望に至った。故に、この明細書は、パッチデザインが時折含まれるだろうが、ほとんど方形スパイラルアンテナに関係するだろう。
【0051】
形状が方形スパイラルとされても、デザインに関する多くのパラメータが残っており、それらを検討及び選択しなればならない。本明細書に関する一連の実験は、PCB実施形態を採用する際の選択肢を評価するために実行された。しかしながら、最終的な目的は、CMOSダイ上に方形スパイラルを実装することであって、CMOS実施形態で予想される性能の違いの問題が起こる。
【0052】
幾つかの参照が、アンテナ又は電気回路の何れかへの古典的な試みになされ得るが、解析の試みは、厳密に実験に基づいている。唯一の目的が、方形スパイラル形態に与えられ、パラメータの値は、10kオームの抵抗を用いる場合に、ペイロード回路の電力又はエネルギーの量を最大にする。
【0053】
ターゲットであるアンテナを含むプリント回路テスト基板が作製された。該基板では、アナログ−デジタルコンバータを用いてターゲットの負荷に亘る電圧が測定されて、赤外線送信機を用いて、フレームが、データ収集用パーソナルコンピュータに接続された受信機に伝送される。テスト/測定回路構成は、小さなバッテリから給電される。テスト/測定回路構成とバッテリの全ては、回路構成用の接地板の下に配置されて、エネルギーを与える高周波(RF)源から回路構成はシールドされる。これによって、電力/エネルギーへの寄与は、この回路構成に起因する。
【0054】
近接回路構成がエネルギーの取得に利益を与えるその他の研究が行われた。
【0055】
小さなアンテナを用いて取得されたエネルギーを測定する従来の試みは、テスト下のデバイス(DUT)に接続された測定装置によって複雑になっていた。故に、ここでの試みは、DUTにテスト回路構成を直に含めている。先に示したように、DUTを含む回路構成は結果に影響を与え得るので、図6aから図6dに示すように導体板の後ろにテスト回路構成をシールドしている。
【0056】
何十年にも亘って、テスト回路構成が実験結果に影響を与えないことを示すことは不可能ではないしても困難であった。この明細書で報告する結果は、DUTの形状の幾らかを通じて、例えば、アンテナA乃至Dについて、図6a乃至図6dに示すアンテナ面積を通して、影響が最小になっている。
【0057】
プリント回路基板、又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)ダイ若しくはチップのような制限されたスペースにアンテナをデザインするためには、アンテナに関する多数の物理的因子を考慮して最適な性能を得ることが必要である。これらの因子は以下の通りである。
【0058】
(1)アンテナを形成する実際の金属導体を含むアンテナに割り当てられる領域と、金属導体を形成又は加工するのに必要な空間。金属導体は、例えば、形(外形)、導体の幅、導体の厚さ、及び導体の長さという幾つかの特徴を有している。
【0059】
(2)この研究で考慮された外形の1つは方形スパイラルである。方形スパイラルのトポロジカルな特徴は、接続が、アンテナの面内で、アンテナの最後の外側のトレースから行えることである。このような接続は、マイクロストリップラインフィードと言及されるだろう。スパイラルの内側端は、ビア(via)を通じてPCB又はCMOSダイの別の層に接続される。このような接続は、プローブフィードと言及されるだろう。方形スパイラル及び方形パッチという一般的な2つの外形が、ここで報告される研究で考慮される。
【0060】
(3)アンテナの周囲には、高周波(RF)エネルギーの源とアンテナの間に、又はアンテナの後に配置された何らかの形態の導体、誘電体等がある。要素の1つの形態として、接地板を、PCB又はCMOSダイの一部として構成できる。
【0061】
(4)アンテナは(今の場合、エネルギー取得)回路に接続されるが、アンテナ及び回路(負荷)の両方にはインピーダンスがある。性能を最適化するために、長い間、2つのインピーダンスは、実部(抵抗)が等しい複素共役として整合、つまりインピーダンスマッチングされてきた。
【0062】
(5)アンテナのデザインには2つの面積が含まれる。第1は、アンテナを実現するのに必要な物理的面積である。第2は、実効面積であって、負荷で受け取られる電力をアンテナが置かれる場の電力密度にて割って得られる。つまり、取得電力=電力密度*実効面積となる。
【0063】
まとめると、スペースが制限される場合、例えばPCB又はCMOSダイの場合に、アンテナのデザインに含まれる因子は、(A)物理的面積、(B)外形、(C)アンテナ導体幅、(D)アンテナ導体厚さ、(E)アンテナ導体長さ、(F)フィードタイプ、(G)接地板の存在、(H)インピーダンスマッチングである。
【0064】
[(A)物理的面積 ] 図6a乃至図6dに示すように、面積が異なる4つの方形アンテナが作製された。図2に示す4つのアンテナの負荷で、電圧応答が測定される。アンテナは、50センチメートルの取得距離で比較された。図7には、負荷で得られた電圧がプロットされている。
【0065】
予想されるように、面積の増加に伴って取得エネルギーの量は増加することが、図8の結果から明らかである。この面積は、物理的面積を意味する。
【0066】
[(B)外形 ] この研究では、方形スパイラルと方形パッチという2つの外形が考慮されている。図9a乃至図9bは5つのアンテナを図示しており、その中の4つは方形スパイラルであり、1つは方形パッチである(アンテナD、ボードH1)。
【0067】
外形のテストケースに関する電圧の結果は、図10に示してある。図10から、方形パッチで最も良い結果が得られることが分かる。差は大きくないものの、存在している。しかしながら方形パッチには不利益があって、パッチが容量性インピーダンスであることから、インピーダンスマッチングのために、インピーダンスがインダクタを必要とする。加えて、アンテナのインピーダンスは、物理的面積で定められる。方形スパイラルアンテナの場合、物理的面積を固定したままで、アンテナのインピーダンスが変化できる。方形パッチの場合、マッチングにはインダクタを要するが、CMOSダイ上に作製することが困難であって、ダイ上のインダクタ又はPCB実施形態における別個のインダクタと正確にマッチングすることは容易でない。方形パッチが容量性であるので、インダクタは、複素共役であることが求められる。
【0068】
方形スパイラルでは、一連のインピーダンスを有するように、トレース幅、厚さ及び相対間隔を変更することができる。それらのインピーダンスの多くは、図11に示されている。この変化は、負荷とアンテナ間のマッチングインピーダンスを調整するのに非常に有効である。故に、デザインの立場からは、方形スパイラルは好ましい外形となる。
【0069】
図9eのアンテナEは方形スパイラルであるが、その長さは、1/4×アンテナA、B及びCの長さよりも長い。アンテナEの長さは、3/4×よりも大きい。つまり、アンテナ導体の長さは、最も効率的なPCB又はダイ(チップ)アンテナをデザインする際の因子となる。1/4×長さは、さらなる延長は顕著な如何なる利益も与えないので、デザインには好ましい一方で、これは最適な長さを保証しない。ここでの大きな貢献は、アンテナ導体の長さは、アンテナのデザインで考慮されなくてはならない因子であることである。
【0070】
[(C) アンテナ導体の幅 ] 図9a乃至図9cのアンテナA、B及びCでは、トレース幅が変化している。図10の結果に基づいた傾向線を、図12に示す。
【0071】
図12によれば、傾き、即ち電圧の減少率は、アンテナBについて最も小さい。さらに、アンテナBの傾向線のy切片は、最も大きい。これらの結果は、トレース幅が最も狭いアンテナBが、この一連の実験の中で最適であることを裏付けている。
【0072】
[(D) アンテナ導体の厚さ ] アンテナの厚さについて、独立した2つの実験が行われた。第1の実験では、タイプAのアンテナの1つに導電性の半田を付けて、その後、付けた半田の幾らかを削除した。これによって、元の厚さの状態と、トレースがより厚い状態と、トレースの厚さが中間の状態とが得られた。これらのステップは、図13aに示すような、アンテナ導体の厚さが異なる3つの状態をもたらした。
【0073】
独立した別の基板の集まりと工程において、全ての半田をアンテナから取り除き、銅を剥き出しにして、トレースの厚さが最も薄い状態を得た。その後、アンテナに銅がめっきされて、銅の厚さが異なる状態が得られた。図13bには、アンテナの導体の厚さの値が異なる3つの状態が示されている。リード及び銅の付加に関する測定結果は、両方とも図13a及び図13bに示してある。
【0074】
図14a及び図14bに示す結果から、アンテナ導体の厚さが最も薄い場合に、取得するエネルギーが最高になって、電圧レベルが最も高いことが明らかである。図14aに示す2つの薄いトレースの結果は非常に似ており、これら2つのアンテナだけで、結果を出すべきではない。最も厚いトレースからハンダを取り除くと、僅かな量のハンダが溶けて、アンテナの外形に軽微な影響を与えた。しかしながら、最も薄いトレースの厚さに対して、これらの2つの厚さは有意義であると認められる。
【0075】
[(E) アンテナ導体の長さ ] アンテナ導体の長さに関する結果は、図9a乃至図9e及び図10で見られる。それらは、図19に示すアンテナB及びアンテナEの結果とかなり同じように見えるが、50センチメートルの距離における結果が、長さを追加することで特に何も起こらなかったので、比較点として使用された。現に、アンテナA及びCを比較すると、長さは明らかに有用ではない。故に、最初の結論としては、アンテナの面積を小さくして取得するエネルギー量を大きくする第1の基準は、長さを波長の1/4に又はその近くに留めることである。
【0076】
図15aはアンテナBの傾向線であり、図15bはアンテナEの傾向線である。BとEを比較すると、Eの降下率はより大きく、Eのy切片がより低い。
【0077】
2つのアンテナB及びEの対比において、さらなる有意義なポイントは恐らく存在しない。アンテナデザインの従来の観点からは、それら2つのアンテナは、これらの結果に示すよりも、性能に有意義な差違があると言えるかも知れない。
【0078】
小さいアンテナの最も重要な特徴は、アンテナの実効面積を変化させる場を分布させる共振タンクが存在することが、本明細書で説明される。つまり、このように、長さが顕著に異なるこれら2つのアンテナが同じような結果をもたらしているので、タンク回路が小さいアンテナの最も重要な特徴であることが示されている。
【0079】
[(F) フィードタイプ ] 図16a及び図16bは、アンテナからの2種類のフィード、つまり、(a)マイクロストリップラインフィードと、(b)プローブフィードとを図示している。
【0080】
2種類のラインフィードの電圧結果は図17に示してあり、アンテナに接続される種類は、マイクロストリップラインフィードが好ましいことが明らかである。
【0081】
[(G) 接地板の存在 ] パッチのような様々なアンテナ形状の多くの用途において、アンテナから離れた接地板が設けられるのが望ましく、その距離は、接地板とアンテナの間にある媒体の誘電率に基づいて計算できる。しかしながら、PCB又はCMOSダイで実施する場合、アンテナと接地板のポテンシャル位置との間の距離、及び、介在する媒体の誘電率は、両方とも、アンテナのデザインとは無関係にプロセスで定められる。故に、一般的に、接地板は、その結果、定められた誘電体について適切な位置に配置されず、又は、誘電体は、接地板の位置に対して不適切になる。
【0082】
このPCBの実験は、接地板の存在と、アンテナの付近における何らかの形の接地板による正味の効果とをテストする。図18a及び図18bには、2種類の接地板実験が示されている。第1のものには、アンテナの直後に従来型の接地板があり、第2のものには、PCBの反対側において、アンテナの近傍に接地板がある。図18aの場合に対応する電圧測定は、図19に示してある。図18bに示す3つの場合の結果は、区別できなかった。
【0083】
図18a及び図18bからは、PCB実施形態において接地板は好ましいものではないことが分かる。気になることとして、接地板が利益に繋がるようなアンテナ/周波数の組合せを発見できる可能性がある。しかしながら、このような結果は、規制及び電力/エネルギーに配慮した周波数の制限から、現実的ではないだろう
【0084】
先に述べたように、図18bに示す大きさが異なる3つの接地板の結果は区別できなかった。しかしながら、3つのケースで現れる最適な電圧は、3つのアンテナの物理的インピーダンスマッチングが異なる結果である。つまり、図18bの近接する接地板は、アンテナの性能に影響しないが、アンテナとフィードラインのインピーダンスに影響する。
【0085】
ここでの結論は、PCB又はCMOSタイプのアンテナに接地板を含めることは、一般的に好ましくないことである。さらに、近接する領域における物理的な接地効果体は、あるインピーダンス又はインピーダンスマッチングを得るのに利用できることである。
【0086】
[(H) インピーダンスマッチング ] 先に述べたように、アンテナのインピーダンスは、負荷のインピーダンスと複素共役として整合するのが一般的に好ましい。しかしながら、エネルギー取得のみを目的としてアンテナを使用する場合には、マッチング又は計画的なミスマッチングの別の形態には利益がないであろうと信じる理由がある。図20に示すエネルギー取得アンテナのモデルを考える。ルーデンベルグが述べたように、アンテナは、抵抗がゼロではない非理想的なタンクを構成する。この抵抗は、入射エネルギーの幾らかを再放出し、放出された場は、アンテナの実効面積を増加させる。
【0087】
この研究の結果から、再放出されたエネルギーによる追加量は、実効面積をさらに大きくする場を分布させる利益をもたらすと推測される。増加するこの実効面積には、制限がないと考えられている。
【0088】
ルーデンベルグの再放出エネルギーは、図20のタンク回路に示す抵抗Rの関数である。我々は、さらに、図20のインピーダンスZの計画的なミスマッチによって、実効面積が増加すると推測する。
【0089】
図20のタンクの抵抗Rで増加する実効面積は、ルーデンベルグの実効面積と称される。Zのミスマッチと、その結果、負荷で反射されるエネルギーとによって生じる実効面積の増加は、近接実効面積と称される。
【0090】
これら2つの実効面積の寄与による正味の効果は、図20の理想的アンテナの記号の直下にある2つの電圧源としてモデル化されている。
【0091】
実効面積に寄与するこれら2つの特徴は、図21において強調して示されている。
【0092】
インピーダンスZのミスマッチによってエネルギーが負荷から反射される推測の根拠は、インピーダンスマッチングのシミュレーション結果を、実験結果と関連付けるために繰り返された試みから得られる。それら実験結果は、実際にインピーダンスを選択して、取得するエネルギー/電圧を実験的に増加させて得られたものである。シミュレーションと実験によるインピーダンスマッチングの結果は、図22及び図23に示されている。
【0093】
図22は、変換された電圧が、インピーダンスの異なる様々な値と共に用いられて、計画されたサーチ行為を通じて最も効果的な整合が得られたことを示している。図22のN/S/E/Wの十字は、電気的要素を使って物理的にマッチングすることで得られるであろう最も良い4つの整合の中心値を示している。
【0094】
図23は、強度で区別した、整合したインピーダンスの変換値である。図23の十字は、シミュレーションについて、最も良い4つの整合の中心値を示している。一般的に明らかなことであるが、モデル化するのが非常に困難な僅かな差違によって、シミュレーションが現実の回路を示していないことは重要である。しかしながら、モデル及び対応するテスト結果に基づいてシミュレーションの較正をする多くの試みがなされてきた。しかしながら、これらの何れも成功しなかった。
【0095】
故に、この場合、複素共役インピーダンスに基づいてシミュレーションされた図23のマッチングと、物理的テストで実際に最も良い整合との差違は、図21のインピーダンスzのミスマッチングに寄与する。この不整合の効果には限界があるであろう。
【0096】
先に指摘したように、図22及び図23に示しており、理想的アンテナの記号の下にある2つの電圧源は、非理想的タンクのRと、インピーダンスZの不整合によって負荷で反射されるエネルギーの結果として、エネルギーの再放出を起こす。
【0097】
[ 結論 ] この研究で最も重要な点の1つは、アンテナ以外にさらなる多数の研究を必要とする幾つかの結果の実現可能性を実験的に評価できることである。例えば、チップ上システム(SOC)の実施形態を考える。この実施形態は、ここで説明されたエネルギー取得回路で給電されるようにデザインされる他の回路構成を必要とする。かなりの仕事量が、ペイロード回路の開発に必要とされ、達成できる電力レベルについて大体の考えがあることが望まれる。
【0098】
図8は、10Kオームの負荷に亘る取得電圧の傾向線である。つまり、一辺が1.58mmであるアンテナにおいて、アンテナAの厚さの場合に取得が期待できる電力は、Power={[0.5918*(1.582)J0〜〜85]2}/104=80j.t wattsとなる。
【0099】
しかしながら、より狭くて薄いトレースでは、電圧は少なくとも2倍になると予想できる。よって、次のようになる。Power={[2*0.591 8*(1.582)04485]2}/104=178j.i watts。
【0100】
その結果は、導体がより狭くて薄いトレースでは、最も高い電圧が得られることを示している。これは、エネルギー取得の当初のシナリオからは想像されない。関連する周波数では、電流が外側表面上を流れる傾向があって、内部を流れる渦電流は損失に寄与するだろう。
【0101】
トレースの幅のみを低減することを考える。PCBのトレースは、700から1300ミクロンの大きさである。アンテナA、B及びCについて図7にて示すような線形減少の傾きのデータプロットは(y=−Mx+b、Mは、傾向線の線形減少又は傾き)、図24aに示されている。
【0102】
この議論のポイントは、アンテナのトレースのパターン幅が減少する場合における取得エネルギーの減少率が単に分かることである。図10の傾向線は、例えば、傾き及びy切片を有しており、それらは、yに関する上記の式におけるM及びbである。ここでの議論は、傾向線の傾きMのみを考慮する。y切片は、主としてアンテナ面積の関数であるように見えるが、現在の議論の範囲外である。
【0103】
図24bに示す予測によれば、アンテナのトレースの幅が25ミクロンに減少すると、エネルギーの減少率は、アンテナBの−0.0421と比較して、−0.0328となる。
【0104】
つまり、単に図24bに示す予想によれば、PCB実施形態からCMOSダイになることにおける減少率の改善は、約22%である。それ故に、一般的に、CMOSダイの性能の劣化は、ソースとデバイス間の距離が増加するにつれて、PCB実施形態よりもより良くなる(単位距離当たりより少なくなる)と予測できる。
【0105】
この距離の効果の例を、図25にて見ることができる。切片の点が50センチメートルの取得電圧を同じにすることを仮定している。
【0106】
PCBのアンテナからCMOSダイのアンテナになる予想にて興味ある模様は、図13bによる厚さの結果を考慮することで得られる。厚さが減少する結果は、図26aの下側に見られる。これらデータ点に合わせられた傾向線に基づいて、約1ミクロンの外挿が図26bに示されている。PCB及びCMOSダイの両方が約50センチメートルで同じ値を有していると仮定できるとすると、図14bに示すようなブレイクポイントは、13,600センチメートル、つまり466フィートまで延長できると推測できるだろう。
【0107】
明らかに、70センチメートルから446フィートへの単純な延長を主張することは困難である。ここでのポイントは、アンテナのデザインにおいて、考慮されるなければならない幾つかのパラメータがあり、理由に関する理論がかなり遅れているかも知れないが、実験開発に方向性を与えて最終的に実用的な結果もたらされることである。
【0108】
446フィートが得られる示唆は、外挿以外にない。この結果は銅に関しており、最近のものには、アルミニウムが使われている。
【0109】
これらの結果の重大な1つの結果は、PCB実施形態からCMOSダイへの移行が、好ましくない移行であると考えられる必要はないことである。
【0110】
PCBからCMOSへの移行における主な割引は、CMOSと比較した単位(同じ)面積当たりのPCBの相対的なコストが理由で、面積を減らすというさらなる要求があることである。
【0111】
先の結果の全ては、ソースアンテナに対して同じ向きにされたアンテナで得られた。向きの問題を評価するために、図27に示すような6つの向きが試験された。
【0112】
図28には、6つの設定に関して、距離の関数として電圧の曲線が示されている。明らかに、最も好ましい位置は、位置1及び2である。位置1は、先の結果の全てに用いられる位置である。2つの向き、5及び6は、完全を期して含められている。しかしながら、これら2つは全く好ましくない。それらを含める1つの理由は、三角形のCMOSアンテナで初期テストをすると、これら2つは非常に好ましかったことである。現時点において、水平アンテナについてPCB及びCMOSの結果がなぜ異なるように見えるかを明らかにする試みはなかった。
【0113】
図28の曲線の傾向線は、図29に与えられている。傾向線からは、位置1のy切片が最も良い。しかしながら、位置2の減少率は、それら2つの位置について良い。2.5ボルトで動作する典型的なPICコントローラについて最も長い距離を考えると、位置2は、90.8センチメートルを与え、位置1は、89.1センチメートルを与える。これら2つの結果は、傾向線によると非常に近い。
【0114】
傾向線の負の傾きとy切片を図30に示す。横座標に沿って示された角度は、マイクロストリップライン型フィードのフィードラインに関しており、角度は、フィードラインから負荷の回路構成の向きである。図27では、P4は0度であり、P2は90度であり、P4は180度であり、P1は270度である。
【0115】
本明細書で報告された結果から、以下のように結論がまとめられる。
1.インピーダンスマッチングは本質的ではあるが、小さなアンテナの一定の面積についいて最適な性能を保証する訳ではない。
2.1/4波長のアンテナは、一定の面積について最適なアンテナのように見える。
3.1及び2を仮定すると、面積は最も重要な因子のように見える。
4.スパイラルアンテナ形状は、インピーダンスを整合させるのが容易であるので好ましい。
5.最も狭いトレース(幅)が最適であるように見える。
6.最も薄いトレース(高さ)が最適であるように見える。
7.導体長さを増加することは、エネルギー取得に何の利益ももたらさないように見える。
8.マイクロ−ストリップラインフィードは、プローブフィードよりも優れている。
9.アンテナの下に接地板があるべきではない。
10.インピーダンスマッチングを考慮すると、方形スパイラルは、方形パッチよりも好ましい。
11.タンクの抵抗と、インピーダンスの不整合で反射された負荷の電力は、双方共に、小さなアンテナの実効面積を増加させるように見える。
【0116】
説明を容易にするために、ICチップ又はプリント回路基板を用いた本発明の好ましい実施例を使用することに関心が向けられてきたが、本発明は、ワイヤレスアンテザードデバイス内のその他の基板にて利益を与えるように使用されてもよい。
【0117】
説明を目的として、本明細書にて、本発明の特定の実施例が開示されてきたが、当該技術分野における通常の知識を有する者には、添付の特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、細部について様々な変更がなされてよいことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、電力供給用のバッテリ又はワイヤがなくとも動作可能なデバイスである回路を示す。
【図2】図2は、図1に示すタイプの回路を示しており、該回路は、ディスプレイを具えており、取得したエネルギーを測定する。
【図3】図3aは、データを取得するオンチップアンテナと、データを転送するオンチップアンテナとを有するチップである。図3bは、図3aに示されたチップの写真である。
【図4】図4aは、(i)実験結果のプロットを示し、図4bは、(ii)回路とその電力測定デバイスを、導体接地面を使用した結果の変化のプロットと共に示す。
【図5】図5a及び図5bは、回路と、接地面の影響の電力とが示されているプロットと測定を夫々示す。
【図6a】図6aは、プリント回路基板上の平方アンテナの形状を示す。
【図6b】図6bは、プリント回路基板上の平方アンテナの形状を示す。
【図6c】図6cは、プリント回路基板上の平方アンテナの形状を示す。
【図6d】図6dは、プリント回路基板上の平方アンテナの形状を示す。
【図7】図7は、図6a乃至dに示す4つのアンテナに関する距離対電圧のプロットである。
【図8】図8は、取得距離が50cmである場合において、負荷で取得された電圧のプロットである。
【図9a】図9aは、スパイラルアンテナを示す。
【図9b】図9bは、スパイラルアンテナを示す。
【図9c】図9cは、スパイラルアンテナを示す。
【図9d】図9dは、方形パッチアンテナを示す。
【図9e】図9eは、スパイラルアンテナを示す。
【図10】図10は、図9a乃至eのアンテナに関する距離対電圧のプロットである。
【図11】図11は、各種パラメータのインピーダンスの表示である。
【図12a】図12aは、あるトレース幅のアンテナと、距離対電圧のプロットとを示す。
【図12b】図12bは、あるトレース幅のアンテナと、距離対電圧のプロットとを示す。
【図12c】図12cは、あるトレース幅のアンテナと、距離対電圧のプロットとを示す。
【図13】図13a及び図13bは、異なる2種の材料と、異なる3つの厚さとに関したアンテナのデータである。
【図14a】図14aは、図13aのアンテナに関する距離対電圧のプロットである。
【図14b】図14bは、図13bのアンテナに関する距離対電圧のプロットである。
【図15a】図15aは、ある長さに関する距離対電圧のプロットである。
【図15b】図15bは、ある長さに関する距離対電圧のプロットである。
【図16】図16a及び図16bは、アンテナについて2つの異なるフィード配置を示す。
【図17】図17は、図16a及び図16bの2本のフィード線について、距離対電圧のプロットを示す。
【図18a】図18aは、接地面が異なる幾つかのアンテナを示す。
【図18b】図18bは、接地面が異なる幾つかのアンテナを示す。
【図19】図19は、図18a及び図18bのアンテナの幾つかについて、距離対電圧のプロットを示す。
【図20】図20は、インピーダンスマッチング要素を示す回路の図である。
【図21】図21は、インピーダンスに関係するマークを伴った図20の回路である。
【図22】図22は、実験によるインピーダンスマッチングのプロットである。
【図23】図23は、シミュレーションによるインピーダンスマッチングのプロットである。
【図24】図24aは、PCBのデータ点のプロットであり、図24bは、同じ物に関する約25mmまでの予測である。
【図25】図25は、PCBトレースとCMOSトレースに関して、距離対電圧のプロットを示す。
【図26】図26aは、厚さについて、銅に関するオリジナルデータのプロットであり、図26bは、その外挿である。
【図27】図27は、アンテナの6つの向きを示す。
【図28】図28は、図27の向きについて、距離対電圧のプロットを示す。
【図29】図29は、図27に関連して、距離対電圧の6つのプロットに関する傾向線を示す。
【図30】図30は、傾向線の負の傾きと、y切片とを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアンテナと、前記アンテナによって空間から取得されたエネルギーを受け取って前記アンテナと共に動作する回路構成とを有しており、前記アンテナの実効面積は、その物理的面積よりも大きいワイヤレスアンテザードデバイス。
【請求項2】
集積回路チップ及びプリント回路基板からなる群より選択される、請求項1のワイヤレスアンテザードデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアンテナは集積されたアンテナである、請求項2のワイヤレスアンテザードデバイス。
【請求項4】
前記ワイヤレスアンテザードデバイスは集積回路チップである、請求項1のワイヤレスアンテザードデバイス。
【請求項5】
前記アンテナは、前記チップ上に集積されて形成されている、請求項4の集積回路チップ。
【請求項6】
前記アンテナは、RFエネルギーを受け取って、それを前記回路構成に供給するように構成されている、請求項5の集積回路チップ。
【請求項7】
前記回路構成は、前記RFエネルギーを、電子機器を給電する直流に変換するように構成されている、請求項6の集積回路チップ。
【請求項8】
データを送信する第2の集積アンテナを含む、請求項6の集積回路チップ。
【請求項9】
前記アンテナはスパイラルアンテナである、請求項6の集積回路。
【請求項10】
前記スパイラルアンテナは方形スパイラルアンテナである、請求項6の集積回路。
【請求項11】
前記回路構成は、アンテナの実効面積をその物理的面積よりも大きくするタンク回路を有している、請求項4の集積回路。
【請求項12】
アンテナの長さは、RFエネルギーの約1/4波長である、請求項9の集積回路。
【請求項13】
前記アンテナには、マイクロストリップフィードラインが接続されている、請求項4の集積回路。
【請求項14】
前記回路構成から送られるDC電力で給電されるように構成されたシステムを前記チップ上に含む、請求項4の集積回路。
【請求項15】
前記回路構成は、ゼロでない抵抗を有しており、前記エネルギーの幾らかが再放出されて、放出されたエネルギーと干渉し、前記アンテナの実効面積を増加させる、請求項4の集積回路。
【請求項16】
前記システムには、前記アンテナとのインピーダンスの不整合がある、請求項14の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図17】
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【図18a】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2006−526979(P2006−526979A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515097(P2006−515097)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017367
【国際公開番号】WO2005/001894
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【Fターム(参考)】