空間光変調器、光学装置、及び露光装置
【課題】エレクトロウェッティングを用いて、高い解像度が得られるとともに、必要に応じて各画素を通過する光の位相を制御可能な空間光変調器を提供する。
【解決手段】配列面DPに入射する光を変調する空間光変調器28は、配列面DPを横切るZ方向に沿った隔壁部33aを有するセル部34と、セル部34に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる液体Lqa,Lqbと、セル部34の窓部に設けられる透明電極36と、セル部34の底面に設けられる底面電極37と、を備え、透明電極36及び底面電極37に印加する電圧によって、セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御する。
【解決手段】配列面DPに入射する光を変調する空間光変調器28は、配列面DPを横切るZ方向に沿った隔壁部33aを有するセル部34と、セル部34に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる液体Lqa,Lqbと、セル部34の窓部に設けられる透明電極36と、セル部34の底面に設けられる底面電極37と、を備え、透明電極36及び底面電極37に印加する電圧によって、セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光を変調する空間光変調器、この空間光変調器の製造方法、その空間光変調器を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子又は液晶表示素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で、所定のパターンを投影光学系を介してウエハ又はガラスプレート等の基板に形成するために一括露光型又は走査露光型の露光装置等が使用されている。これらの露光装置としては、複数種類のデバイス毎に、さらに基板の複数のレイヤ毎にそれぞれマスクを用意することによる製造コストの増大を抑制し、各デバイスを効率的に製造するために、マスクの代わりに、それぞれヒンジ機構によって傾斜角又は高さが可変の多数の微小ミラーのアレイを有する空間光変調器(spatial light modulators)を用いて、投影光学系の物体面に反射型の可変の明暗パターン又は位相パターンを生成するいわゆるマスクレス方式の露光装置が知られている。このようにヒンジ機構を用いて微小ミラーの傾斜角を調整する方式では、微小ミラーの駆動機構が複雑であり、さらに透過型の変調器の実現が困難である。
【0003】
そこで、マスクレス露光用に使用可能な空間光変調器として、いわゆるエレクトロウェッティング(Electrowetting)を利用して、各画素(各光学要素)の光路上に透明な液体又は不透明な液体を移動することによって、各画素を明状態又は暗状態に設定可能な変調器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。エレクトロウェッティングとは、液体が接する面の電位の変化に伴うその液体の接触角若しくは表面エネルギー及び/又はその液体に対する静電力の変化に応じて、その液体が移動する現象である(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−515802号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Frieder Mugele and Jean-Christophe Baret, “Electrowetting: from basics to applications,” Journal of Physics: Condensed Matter, 17(2005)R705-R774(英国)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエレクトロウェッティングを利用した空間光変調器は、各画素が電極のみで区分されているため、例えば一列の複数の画素を交互に明状態及び暗状態に正確に設定するのが困難であり、解像度を高めるのが困難であった。さらに、従来のエレクトロウェッティングを利用した空間光変調器は、各画素を通過する光の位相を制御することが困難であった。
【0007】
本発明の態様は、このような事情に鑑み、エレクトロウェッティングを用いて、高い解像度が得られるとともに、必要に応じて各画素を通過する光の位相を制御可能な空間光変調器及びこの空間光変調器を使用する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、配列面に入射する光を変調する第1の空間光変調器が提供される。この第1の空間光変調器は、その配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、そのセル部に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、そのセル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、そのセル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、そのセル部のその第1及び第2電極に印加される電圧によって、そのセル部内におけるその第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、そのセル部を通過する光の光路長を制御するものである。
【0009】
また、第2の態様によれば、配列面に入射する光を変調する第2の空間光変調器が提供される。この第2の空間光変調器は、その配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、そのセル部に収容される互いに透過率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、そのセル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、そのセル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、そのセル部のその第1及び第2電極に印加される電圧によって、そのセル部内におけるその第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、そのセル部を通過する光の透過率を制御するものである。
【0010】
また、第3の態様によれば、本発明の空間光変調器と、その空間光変調器のセル部に照明光を照射する第1光学系と、そのセル部からの光を対象物に導く第2光学系と、を備える光学装置が提供される。
また、第4の態様によれば、露光光で基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、本発明による複数のセル部を有する空間光変調器と、その空間光変調器の複数のセル部のアレイにその露光光を照射する照明光学系と、その複数のセル部からの光をその基板上に導いてその基板上にパターンを投影する投影光学系と、その基板に露光されるパターンを制御するために、その空間光変調器の複数のセル部を通過する光の位相を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0011】
また、第5の態様によれば、露光光でマスクを介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、本発明による複数のセル部を有する空間光変調器を有し、その露光光でその空間光変調器を介してそのマスクを照明する照明光学系と、そのマスクを照明するその露光光の入射角の分布を制御するために、その空間光変調器の複数のセル部を通過する光の位相を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0012】
また、第6の態様によれば、本発明の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2の態様の空間光変調器によれば、セル部に設けられる第1電極及び第2電極に印加される電圧によって、誘電率の相違に基づいて、その第2電極と第1及び第2の液体との間の静電力のバランスが変化し、エレクトロウェッティングの作用によって、当該セル部内における第1及び第2の液体の厚さの比を制御することができる。従って、その第1及び第2の液体の屈折率が異なるときには、2つの液体の厚さ及び屈折率の相違に基づいて、そのセル部を含む画素(光学要素)を通過する光の光路長、ひいては位相を制御することができる。一方、その第1及び第2の液体の入射する光に対する透過率が異なるときには、2つの液体の厚さ及び透過率の相違に基づいて、そのセル部を含む画素(光学要素)を通過する光の透過率を制御することができる。
【0014】
さらに、各画素は隔壁部で仕切られているため、画素間の静電力の影響及び画素間の液体の流れが抑制されて、高い解像度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は第1の実施形態に係る空間光変調器の概略構成を示す図、(B)はその空間光変調器の本体部の一部を示す拡大斜視図である。
【図2】図1(B)の空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図及び制御系を示すブロック図である。
【図3】(A)は図1(A)の空間光変調器の2つの画素を示す拡大断面図、(B)は製造中の空間光変調器の本体部を示す拡大断面図である。
【図4】第1変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図及び制御系を示すブロック図である。
【図5】(A)は第1変形例に係る第1の状態の画素を示す拡大断面図、(B)は中間的な状態の画素を示す拡大断面図、(C)は第2の状態の画素を示す拡大断面図である。
【図6】第2変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図7】第3変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図8】(A)は第3変形例に係る第1の状態の画素を示す拡大断面図、(B)は中間的な状態の画素を示す拡大断面図、(C)は第2の状態の画素を示す拡大断面図である。
【図9】(A)は第4変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図、(B)は図9(A)中の底面電極の凸部を示す斜視図である。
【図10】第5変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図11】第6変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図12】第2の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図13】第2の実施形態の変形例の概略構成を示す図である。
【図14】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態につき図1(A)〜図3(B)を参照して説明する。図1(A)は、本実施形態に係る空間光変調器(spatial light modulator: SLM )28の概略構成を示し、図1(B)は空間光変調器28の本体部30の一部を拡大して示す。本実施形態の空間光変調器28は、2次元のアレイ状に配列された光学要素としての複数の画素32を有する本体部30と、その複数の画素32に入射して反射される照明光ILの位相を個別に制御する変調制御部48と、を有し、エレクトロウェッティング(Electrowetting:電気毛管現象)を用いて各画素32に入射する光を変調する。照明光ILは、例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、波長248nmのKrFエキシマレーザ光、又は固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波等である。照明光ILは、一例として数kHz又は1〜2MHz程度の周波数でパルス発光される光である。以下では、複数の画素32の直交する第1及び第2の配列方向に沿ってX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸に直交する方向にZ軸を取って説明する。
【0017】
図1(A)において、空間光変調器28の本体部30は、上面が開いた矩形の箱状の絶縁体からなるベース部材31と、X方向及びY方向に2次元の格子状に配列されるように複数の正方形の開口が形成された絶縁体よりなる隔壁部材33と、ベース部材31内に隔壁部材33を支持する複数の連結部33Sと、ベース部材31の上面を覆うとともに照明光ILが通過する(入射及び射出する)平板状のカバーガラス35(図1(B)参照)と、を有する。なお、隔壁部材33は、ベース部材31の底面側から支持してもよい。カバーガラス35は、例えば石英又は蛍石(CaF2)のような照明光ILを透過する材料から形成されている。
【0018】
本実施形態では、カバーガラス35のXY面に平行な底面(以下、配列面DPと呼ぶ。)に沿って複数の画素32が配列され、カバーガラス35の底面(配列面DP)の全面に、照明光ILを透過する程度の厚さの透明電極36(図2参照)が形成されている。透明電極36は接地されている。透明電極としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムすず酸化物)、酸化すず(Sn02)、酸化インジウム(In2O3)、ガリウム添加酸化すず(GZO)、アルミニウム添加酸化すず(AZO)、又は他の材料が使用可能である。
【0019】
隔壁部材33は、X方向、Y方向に密着して等しいピッチ(周期)px,py(px=py)で配列された正方形の筒状の隔壁部33aの集合である。隔壁部33aは、配列面DPに垂直なZ方向に沿った内面、すなわちXZ面に平行な2つの面及びYZ面に平行な2つの面で囲まれた断面形状が正方形の内面を有する。隔壁部33aからセル部34が構成されている。画素32の配列のピッチpxは、例えば10〜1μm程度であり、一例として、画素32のX方向の配列数は数1000〜数万、Y方向の配列数はX方向の配列数の1/10程度である。図1(A)では、各画素32は、拡大して表されている。なお、画素32のX方向、Y方向の配列数は任意であり、隔壁部33aの断面形状(画素32の形状)は長方形でもよく、画素32のX方向、Y方向の配列のピッチpx,pyは互いに異なってもよい。
【0020】
ベース部材31は、例えばフルオロポリマー(フッ素重合体)よりなる絶縁体、シリコン基板の表面に酸化ケイ素(SiO2)若しくは窒化ケイ素(例えばSi3N4)等の絶縁層を形成した材料、又はセラミックス等から形成可能である。隔壁部材33は、例えば酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、又はセラミックス等から形成可能である。
本実施形態では、各画素32は入射する照明光ILを反射するXY面に平行な反射面37aを有する。そして、後述のようにエレクトロウェッティングを用いることによって、各画素32は、位置A1の画素32のように、垂直に(Z方向に)入射する照明光IL1の位相を第1の所定の位相δだけ変化させて反射する第1の状態と、位置A2の画素32のように、入射する照明光IL2の位相をその位相δと180°(π(rad))だけ異なる位相だけ変化させて反射する第2の状態と、を含む複数の状態に設定可能である。その第1の状態の画素32を画素32(0)とも呼び、その第2の状態の画素32を画素32(π)とも呼ぶ。
【0021】
次に、図2は、図1(A)の空間光変調器28の本体部30中の一つの画素32のみを代表的に示す拡大斜視図である。図2には、空間光変調器28の変調制御部48のブロック図も示されている。また、図3(A)は、図1(A)の本体部30中の位置A1,A2にある2つの画素32のみを代表的に示す拡大断面図である。図3(A)において、各画素32は、セル部34と、セル部34の上方(−Z方向)の窓部34aの全面を覆うようにカバーガラス35の底面(配列面DP)に形成された透明電極36と、セル部34の底面部34bに形成されたY方向に細長い導電体の薄膜からなる底面電極37と、底面電極37を覆うように形成された絶縁体の薄膜(以下、絶縁膜という。)50Aと、セル部34内に混合しない状態で収容されて互いに屈折率及び誘電率(比誘電率)が異なる第1液体Lqa及び第2液体Lqbと、を有する。
【0022】
本実施形態では、一例として、第1液体Lqaの屈折率naは第2液体Lqbの屈折率nbよりも大きく、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbよりも例えば10倍〜40倍程度大きい。液体Lqa,Lqbは照明光ILを透過する液体である。また、隔壁部材33を収容するベース部材31の底面には、一例として製造時に液体を排出するための開閉される開口を有する排出部51が設けられている。
【0023】
底面電極37を形成する導電体としては金属又はポリシリコン等が使用できる。絶縁膜50Aは照明光を透過する程度の厚さであり、絶縁膜50Aは液体Lqa,Lqbと底面電極37との直接的な接触を防止している。また、底面電極37の表面が照明光を反射する反射面37aである。底面電極37がポリシリコンである場合、反射面37aには照明光を反射する誘電体多層膜を形成してもよい。絶縁膜50Aの材料としては、例えばフッ素添加の酸化ケイ素(SiOF)、炭素添加の酸化ケイ素(SiOC)、又はセラミックス等が使用可能である。
【0024】
図2において、セル部34の内面のX方向及びY方向の幅を等しくa1として、セル部34の深さ(透明電極36の底面から絶縁膜50Aの表面までのZ方向の間隔)をahとする。このとき、底面電極37(反射面37a)のY方向の長さはほぼa1、X方向の幅a4は、ほぼa1/2である。
一例として、セル部34の深さahはほぼ1000nmである。また、セル部34内の幅a1をほぼ1μm(1000nm)とすると、絶縁膜50Aの厚さa3はほぼ100nm、底面電極37のX方向の幅a4はほぼ500nm、セル部34内の底面で底面電極37をX方向に挟む2つの長方形の領域のX方向の幅a5はほぼ250nmである。また、セル部34内で底面電極37(絶縁膜50A)の表面に第2液体Lqbが分布し、液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、第1液体LqaのZ方向の深さ(厚さ)をa2、第2液体LqbのZ方向の深さ(厚さ)をdとすると、以下のように、深さa2と深さdとの和はセル部34の深さahになる。
【0025】
ah=a2+d …(1)
また、深さdは照明光ILの波長に応じて設定され(詳細後述)、深さa2は式(1)及び深さdに基づいて設定される。一例として、深さa2は745nm程度に設定される。
本実施形態の複数の画素32用の底面電極37及びこれらの電極用の配線(不図示)等が形成された隔壁部材33は、例えばMEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いて製造可能である。なお、ベース部材31及び隔壁部材33を含む本体部30を一体的にMEMS技術(及び半導体素子の製造技術)を用いて製造することも可能である。
【0026】
本実施形態では、図3(A)において、複数の画素32の透明電極36は共通に接地(接地レベルを0Vとする)されている。一例として、+Z方向が鉛直方向であり、第2液体Lqbの比重は第1液体Lqaの比重よりも軽いとする。また、位置A1の照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32においては、底面電極37には電圧0が印加されており、透明電極36と底面電極37との電位は同じであるとする。このとき、セル部34内の底面電極37側には第2液体Lqbが深さdで分布しており、位置A1の画素32に入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37の表面(反射面37a)で反射されて、窓部34a側に戻される。
【0027】
これに対して、位置A2の照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32においては、底面電極37には接地レベルよりも高い所定の正の電圧V1が印加されており、透明電極36と底面電極37との電位差はV1である。第1液体Lqaが純水(比誘電率がほぼ80)で、セル部34の内面の幅がほぼ1μmである場合、電圧V1は例えば180Vである。このとき、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbに対してほぼ10倍以上であるため、第1液体Lqaと底面電極37との間に作用する静電力の引力(静電引力)は、第2液体Lqbと底面電極37との間に作用する静電引力よりも大きくなる。そのため、エレクトロウェッティングの作用に基づいて、位置A2の画素32のセル部34内で透明電極36と底面電極37の表面37aの、表面37aとほぼ同じX方向の幅を持つ有効領域37bとの間の領域は第1液体Lqaで満たされる。そして、位置A2の画素32に入射する照明光IL2はほぼ第1液体Lqaのみを通過して底面電極37の表面(反射面37a)で反射されて、窓部34a側に戻される。
【0028】
本実施形態では、第1の状態の画素32(0)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32(π)の反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。このためには、第1の状態の画素32(0)において、深さdの第2液体Lqb(屈折率nb)の部分をZ方向に往復する照明光IL1の位相の変化量が、第2の状態の画素32(π)において、深さdの第1液体Lqa(屈折率na)の部分をZ方向に往復する照明光IL2の位相の変化量に対して180°(π)(光路長で1/2波長)異なっていればよい。照明光IL1,IL2の波長をλとすると、上記のように第1の状態及び第2の状態の画素32を設定するための条件は次のようになる。
2d(na−nb)=λ/2 …(2)、 d=λ/{4(na−nb)} …(3)
式(2)又は式(3)の条件を満たすことができる第1液体Lqa及び第2液体Lqbの例を次の表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
比誘電率は例えば100Hz以上の交流信号に対する値である。フロリナート(登録商標)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフロロポリエーテル(PFPE)はフッ素系オイルであり、いずれも屈折率が純水よりも小さく、比誘電率が純水の1/10〜1/40程度である。また、これらのフッ素系オイル(フッ素系不活性液体)は水とは混じり合わない(水と非混合性である)。従って、本実施形態において、純水を第1液体Lqaとして使用し、フロリナート、HFE、又はPFPEを第2液体Lqbとして使用可能である。表1には、各フッ素系オイルの純水との屈折率差Δn、及び式(2)を満たすための深さd(厚さ)の値(nm)が示されている。表1から、式(2)を満たすための深さdは255〜345nmであるため、各画素32の大きさ(配列のピッチ)を1μm程度にすることも可能である。なお、フロリナートは比誘電率が最も小さく、かつ屈折率が最も小さく、必要な深さd(=255nm)が最も小さいため、第2液体Lqbとしてはフロリナートが最も好ましい。
【0031】
また、表1には、高屈折率液体であるデカリン(decalin)の屈折率及び比誘電率も掲載している。デカリンは屈折率が純水より大きく、かつ比誘電率が純水より小さいとともに、水とは非混合性である。従って、例えば第1液体Lqaとして純水を使用し、第2液体Lqbとしてデカリンを使用することも可能である。また、第1液体Lqaとしてデカリンを使用し、第2液体Lqbとしてフロリナートを使用することも可能である。さらに、第1液体Lqa及び第2液体Lqbとしては、要は屈折率及び比誘電率が互いに異なり、かつ互いに非混合性の任意の液体を使用可能である。なお、液体Lqa,Lqbは照明光ILに対して純水程度の透過率を持つことが好ましい。
【0032】
次に、図2において、変調制御部48は、図1(A)の複数の画素32の状態(第1の状態又は第2の状態)の分布を制御するコンピュータの一部である制御部52と、複数の画素32の状態(底面電極37に印加される電圧)の分布に対応するデータが格納されたメモリーであるSRAM54と、SRAM54の出力を増幅する画素32と同じ個数の増幅器55A,55B,55C,…と、全部の画素32の透明電極36を一括して接地する接地ラインと、を有する。増幅器55A,55B等の出力はそれぞれ信号ライン及びセル部34に設けた配線(不図示)を介して対応する画素32の底面電極37に供給されている。本実施形態では、各底面電極37には、電圧0(ここでは接地レベル)(第1の状態)又は上記の電圧V1(第2の状態)が印加される。なお、SRAM54の代わりに、シフトレジスターを使用することも可能である。
【0033】
本実施形態において、SRAM54には予め全部の画素32の状態に対応するデジタルデータの時系列的に変化するパターンが記憶されており、制御部52は、所定の駆動周波数(例えば1〜2MHz等)でSRAM54の該当する一連の番地のデータを増幅器55A等に出力させる。これに応じて、例えば図1(A)に示すように、二次元のアレイ状に配列された複数の画素32が、第1の状態の画素32(0)又は斜線が施された第2の状態の画素32(π)のいずれかに設定される。従って、所定の時間間隔で複数の画素32の第1の状態又は第2の状態の配列を、一つの画素32を単位として任意の配列に設定可能である。
【0034】
次に、本実施形態の空間光変調器28の本体部30の製造方法の一例につき図3(A)、(B)を参照して説明する。まず、MEMS技術等を用いて、図3(A)の本体部30のうち、液体Lqa,Lqbを除いた複数のセル部34及び底面電極37等が形成された隔壁部材33を製造し、一面に透明電極36が形成されたカバーガラス35、及び排出部51が設けられたベース部材31を製造する。
【0035】
次に、図3(B)に示すように、カバーガラス35の透明電極36の上面に順次、深さa2の第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを供給する。透明電極36の上面の周辺部には、液体が外部に漏れ出ないように枠状部材(不図示)が載置され、液体Lqa,Lqb中に差し込んだロッド状の電極(不図示)を接地し、透明電極36に所定の正の電位を与えることで、液体Lqa,Lqbは透明電極36の上面に安定に保持される。液体Lqa,Lqbの厚さは、一例として、その枠状部材内に供給する各液体の体積とその枠状部材内の面積とから決定される。
【0036】
そして、例えば真空環境下で、隔壁部材33のセル部34の窓部34aをカバーガラス35上の第2液体Lqbに向けて、隔壁部材33をカバーガラス35上の透明電極36に接触させて、透明電極36の電位を0にする。さらに、例えば接着により隔壁部材33とカバーガラス35とを固定する。その後、例えば大気圧環境下で、隔壁部材33を覆うようにベース部材31の開放端をカバーガラス35に接触させ、接着等で隔壁部材33の支持部材33Sとベース部材31とを固定し、ベース部材31とカバーガラス35とを固定し、排出部51を介してベース部材31の内部の液体を排出することで、本体部30が完成する。
【0037】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の配列面DPに入射する照明光ILを変調する空間光変調器28は、配列面DPを横切るZ方向に沿った隔壁部33aを有するセル部34と、セル部34に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体Lqa,Lqbと、セル部34の照明光ILが入射する窓部34aの全面に設けられる透明電極36(第1電極)と、セル部34の底面34bの一部に設けられる照明光ILに対する反射部を兼用する底面電極37(第2電極)と、セル部34の透明電極36及び底面電極37に印加する電圧を制御する変調制御部48と、を備えている。そして、変調制御部48は、電極36,37に印加する電圧(電極36,37間の電位差)によって、セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御して、セル部34の底面電極37(反射部)で反射される照明光ILの光路長、ひいては反射光の位相を制御する。
【0038】
本実施形態の空間光変調器28によれば、セル部34に設けられる電極36,37に印加される電圧(電極36,37間の電位差)によって、誘電率が高い液体Lqaが電極37に引き寄せられる方向に力が働くことによって、当該セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御することができる。また、液体Lqa,Lqbの屈折率が異なるため、2つの液体Lqa,Lqbの厚さ及び屈折率の相違に基づいて、セル部34を含む画素32(光学要素)で反射される照明光ILの光路長、ひいては位相を制御することができる。
【0039】
さらに、各画素32は隔壁部33aで仕切られているため、画素32間の静電力の影響及び画素32間の液体の流れが抑制されて、高い解像度が得られる。
なお、透明電極36は、セル部34の窓部34aの一部に設けてもよく、底面電極37はセル部34の底面34bの全面に設けてもよい。
(2)本実施形態では、第2の状態の画素32では底面電極37に正の電圧V1を印加している。しかしながら、第2の状態の画素32では底面電極37に負の電圧を印加してもよい。
【0040】
(3)また、底面電極37が反射部を兼用しているため、画素32の構成が簡素である。
なお、底面電極37を設ける代わりに、セル部34の側面に電極を設け、底面電極37の代わりに反射部材を配置してもよい。このとき、その側面の電極と透明電極36との電位差によってセル部34内の反射部材の上方の液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御することで、反射光の位相を制御できる。
【0041】
(4)また、本実施形態では、各画素32を第1又は第2の状態に設定しているが、各画素32を、反射される照明光ILの位相をその第1の状態に対して180°以外の値(例えば45°、90°、135°等)で異なる他の状態に設定してもよい。さらに、各画素32で反射される照明光ILの位相をその第1の状態の位相と任意の位相だけ異なるように設定してもよい。
【0042】
(5)また、本実施形態の空間光変調器28は反射型であるが、例えば図2において、底面電極37を設ける代わりに、セル部34の側面に電極を設け、絶縁膜50Aを透過性のガラス基板とすることで、各画素32を透過型の画素とすることも可能である。この場合には、照明光ILは、各セル部34内を一度透過するのみであるため、各画素32を上記の第1の状態又は第2の状態に設定するための第2液体Lqbの深さdは、以下の式で示すように、上記の式(2)又は式(3)で定まる値の2倍になる。
【0043】
d(na−nb)=λ/2 …(4)、 d=λ/{2(na−nb)} …(5)
(6)また、本実施形態の空間光変調器28は位相変調型であるが、図2において、セル部34内に、第1液体Lqaとともに、透過率及び誘電率が第1液体Lqaと異なる別の液体Lqc(第2液体)を収容することで、空間光変調器28を振幅変調型(又は強度変調型)とすることもできる。その液体Lqcとしては、例えば上記のフッ素系オイルに照明光ILを吸収する染料を加えた、照明光ILに対する透過率がほぼ0の液体を使用できる。この構成では、2つの液体Lqa,Lqcの厚さ及び透過率の相違に基づいて、セル部34を含む画素32(光学要素)で反射される照明光ILの透過率を制御することができる。具体的に、上記の第1の状態では、画素32からの反射光の光量がほぼ0になり、第2の状態では、画素32からの反射光の光量が大きくなる。また、このような振幅又は強度変調型の空間光変調器において、底面電極37の代わりにセル部34の側面に電極を設け、絶縁膜50Aをガラス基板とすることで、各画素を透過型とすることもできる。
(7)また、空間光変調器28の画素32は2次元のアレイであるため、例えば露光装置に適用した場合に大面積のパターンを露光又は照明できる。なお、空間光変調器28において、画素32はX方向又はY方向に一列に(一次元)に配列されていてもよい。
【0044】
なお、上記の実施形態では以下のような変形が可能である。
まず、上記の実施形態では、画素32のセル部34の底面又は側面に電極(底面電極37等)を設けているが、図4の第1変形例の空間光変調器28Aで示すように、本体部30Aの各画素32Aにおいて、セル部34の底面部34bに底面電極37(第2電極)を設けるとともに、セル部34内の窓部34a(透明電極36)に近い部分の側面に、X方向(底面電極37の長手方向に直交する方向)に対向するように1対の導電体の薄膜よりなる側壁電極39A,39B(第3電極)を設けてもよい。その導電体は例えば金属又はポリシリコン等であり、側壁電極39A,39Bは横方向(Y方向)に細長い矩形の薄膜である。側壁電極39A,39Bはセル部34に設けた配線によって導通している。なお、図4において、図2に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
図4において、側壁電極39A,39Bの表面には、底面電極37の表面を覆う絶縁膜50Aと同様の絶縁膜50Bが設けられている。そして、セル部34内には第1液体Lqa及び第2液体Lqbが収容されている。液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、液体Lqa,Lqbの深さはそれぞれa2及びdである。本実施形態では、側壁電極39A,39BのY方向の幅はa1(セル部34内面の幅)であり、側壁電極39A,39BのZ方向の幅a6は、第1液体Lqaの深さa2よりも大きく設定されている。また、セル部34内面のX方向の幅a1’は、電極39A,39B及び絶縁膜50Aの厚さ分だけ幅a1よりも小さく設定されている。
【0046】
一例として、セル部34内のY方向の幅a1がほぼ1000nmであるとき、電極39A,39B及び絶縁膜50Aの厚さはそれぞれほぼ50nmで、セル部34のX方向の幅a1’はほぼ800nmである。また、一例として、第1液体Lqaの深さa2が745nm、第2液体Lqbの深さdが255nmであるとき、側壁電極39A,39BのZ方向の幅a6はほぼ800nm、側壁電極39A,39Bの下端と絶縁膜50Aの表面とのZ方向の間隔a7はほぼ200nmである。さらに、底面電極37のX方向の幅a4はほぼ500nm、セル部34内の底面で底面電極37をX方向に挟む2つの領域のX方向の幅a5’はほぼ150nmである。
【0047】
また、空間光変調器28Aの変調制御部48Aは、各画素32Aに対応して、出力部が側壁電極39A,39Bに接続され入力部が増幅器55A等に接続された電圧変換部56を有する。電圧変換部56は、増幅器55A等の出力が0(接地レベル)であるときに電圧V2を出力し、増幅器55A等の出力がV1であるときに0を出力する。この他の構成は上記の実施形態と同様であり、透明電極36は接地(接地レベルを0とする)されている。
【0048】
この第1変形例において、図5(B)に示すように、仮想的に底面電極37及び側壁電極39A,39Bの電圧を0としたときに、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc2は90°よりも大きくなり、底面電極37(反射面)の上方では他の領域に比べて第1液体Lqaの厚さが厚くなっている。このとき、図5(A)に示すように、照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32A(画素32A(0))においては、底面電極37には電圧0が印加され、側壁電極39A,39Bには正の電圧V2が印加される。この状態で、第1液体Lqaは、側壁電極39A,39Bからの静電引力によって、セル部34内で側壁電極39A,39Bに近い領域に保持される。また、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc1はほぼ90°である。
【0049】
言い替えると、第1の状態の画素32Aにおいて、側壁電極39A,39Bには絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc1がほぼ90°となるような電圧V2が印加される。電圧V2は第2の状態で底面電極37に印加される正の電圧V1よりも小さい電圧でよい。電圧V2は例えば25Vである。このとき、セル部34内の液体Lqa,Lqbの境界面はXY面にほぼ平行で、かつセル部34内の底面電極37側には第2液体Lqbが深さdで分布している。そして、画素32Aに入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37の表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。
【0050】
これに対して、図5(C)に示すように、照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32A(画素32A(π))においては、底面電極37には接地レベルよりも高い正の電圧V1が印加され、側壁電極39A,39Bの電圧は0にされる。このとき、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbに対してほぼ10倍以上であり、第1液体Lqaには底面電極37の方向に引き寄せられる方向に力が働く。さらに、側壁電極39A,39Bの電圧が0にされることで、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc3は90°よりも大きくなる。これによって、第1液体Lqaと第2液体Lqbの境界面は凹面になり、底面電極37と第1液体Lqaの間の距離が短くなる。底面電極37と第1液体Lqaの間の距離が短いほど電場が強くなるため、第1液体Lqaが底面電極37の方向に引き寄せられる力は大きくなる。第1液体Lqaが底面電極37の方向に引き寄せられていき、最終的に画素32Aのセル部34内で透明電極36と底面電極37の表面との間の領域はほぼ第1液体Lqaで満たされる。この状態で、画素32Aに入射する照明光IL2はほぼ第1液体Lqaのみを通過して底面電極37の表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。
【0051】
この変形例でも、第2液体Lqbの深さdは式(2)を満たすため、第1の状態の画素32A(0)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32A(π)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。そして、底面電極37及び側壁電極39A,39Bに印加する電圧の組を第1の状態の(0,V2)と第2の状態の(V1,0)との間で高速に切り替えることによって、画素32Aを第1の状態と第2の状態との間で高速に切り替えることができる。
【0052】
この変形例において、側壁電極39A,39Bの電圧が0であるときには、図5(B)に示すように、第1液体Lqaの接触角θc2は90°よりも大きくなっている。このため、画素32Aを第2の状態にするために底面電極37に印加する電圧V1は、上記の実施形態(図2)の底面電極37に印加される電圧よりも小さくできる。例えば、第1液体Lqaが純水で、セル部34の内面の幅a1がほぼ1μmである場合、図5(C)の底面電極37に印加する電圧V1はほぼ90V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/2)に低減できる。従って、変調制御部48Aの回路の高集積化が容易であり、発熱量も低減できる。
【0053】
次に、図4の変形例ではセル部34A内の側面に1対の側壁電極39A,39Bを設けている。さらに、図6の第2変形例の空間光変調器28Bの本体部30Bの画素32Bで示すように、セル部34内の側面に、X方向の1対の側壁電極39A,39Bに加えて、Y方向に対向するように配置された導電体の薄膜よりなる1対の側壁電極39C,39Dを設け、側壁電極39C,39Dを覆うように絶縁膜50Bを設けてもよい。この変形例において、側壁電極39C,39Dの形状は側壁電極39A,39Bと同じであり、セル部34内のY方向の幅はX方向の幅(図4の幅a1’)と同じである。また、側壁電極39A〜39Dはセル部34に設けられた配線によって導通しており、側壁電極39C,39Dには側壁電極39A,39Bと同じ電圧が印加される。その他の構成は図4の変形例と同じである。
【0054】
図6の変形例において、底面電極37及び側壁電極39A〜39Dに印加する電圧の組を第1の状態の(0,V2)と第2の状態の(V1,0)との間で高速に切り替えることによって、画素32Bを互いに反射光の位相が180°異なる第1の状態と第2の状態との間で高速に切り替えることができる。
さらに、この変形例の画素32Bによれば、側壁電極39A〜39Dがセル部34内を囲んでいるため、第2の状態で底面電極37に印加する電圧V1をより小さくできる。具体的に、第1液体Lqaが純水で、セル部34内の幅がほぼ800nmである場合、第2の状態で底面電極37に印加する電圧V1はほぼ60V(図4の変形例における90Vのほぼ2/3)に低減できる。従って、変調制御部の回路の高集積化がより容易であり、発熱量も低減できる。
【0055】
次に、上記の実施形態及びその変形例では、画素32のセル部34の底面電極37等は平坦である。これに対して、図7の第3変形例の空間光変調器で示すように、本体部の各画素32Cにおいて、セル部34の底面部に設けた導電体よりなる底面電極37Aの表面に、XZ面に平行な面内の断面形状が三角形のY方向に細長い屋根型の突き出し電極部38を設けてもよい。この場合、底面電極37Aの表面は照明光ILを反射する反射面である。また、底面電極37Aの表面に設けられる絶縁膜50C(図2の絶縁膜50Aと同じ材料からなる)の突き出し電極部38を覆う部分にも屋根型の凸部50Caが形成される。なお、図7及び図8(A)〜(C)において、図2及び図3(A)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
図7において、セル部34内には第1液体Lqa及び第2液体Lqbが収容されている。この他の構成は図2の実施形態と同様である。画素32C内の液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、絶縁膜50Cの凸部50Caの高さa10は第2液体Lqbの深さよりも低く設定されている。一例として、セル部34内の幅がほぼ1000nmであるとき、突き出し電極部38の底面のX方向の幅a8はほぼ200nm、底面電極37Aの突き出し電極部38をX方向に挟む2つの部分のX方向の幅a9はほぼ150nm、凸部50Caの高さa10(突き出し電極部38の高さ)はほぼ200nmである。
【0057】
この第3変形例において、図8(B)に示すように、照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32C(画素32C(0))においては、底面電極37には電圧0が印加され、セル部34内で底面電極37A側に第2液体Lqbが分布し、液体Lqa,Lqbの境界面はXY面に平行である。そして、画素32Cに入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び式(2)を満たす深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37Aの表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。この際に、底面電極37Aの表面のうち、突き出し電極部38の表面38aで反射される照明光IL1はセル部34の内部で吸収又は散乱されてカバーガラス35側には殆ど戻されない。このため、図7の幅a8,a9を用いて、照明光IL1の使用効率は図2の実施形態と比べて次のようにほぼ60%になる。
【0058】
2・a9/(a8+2・a9)=0.6=60(%) …(6)
また、図8(C)に示すように、照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32C(画素32C(π))においては、底面電極37Aには接地レベルよりも高い正の電圧V1が印加される。このため、画素32Cのセル部34内で透明電極36と底面電極37Aの表面との間の領域はほぼ第1液体Lqaで満たされる。この状態で、画素32Cに入射する照明光IL2のうちで、突き出し電極部38の表面38aを除く底面電極37Aの表面(反射面)で反射された照明光は、ほぼ第1液体Lqaのみを通過してカバーガラス35側に戻される。そして、第1の状態の画素32C(0)の底面電極37Aの反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32C(π)の底面電極37Aの反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。
【0059】
この変形例において、底面電極37Aに電圧V1を印加すると、突き出し電極部38近傍で電場が強いため、液体Lqaに働く力は突き出し電極部38近傍で大きくなる。そのため電圧V1を印加すると、まずは図8(B)に示すように、液体Lqa,Lqbの境界面は突き出し電極部38の表面38a(凸部50Ca)と交差するようになる。言い替えると、突き出し電極部38が設けられているときには、電圧V1が小さくとも底面電極37Aから第1液体Lqaに対する静電引力(電場)が大きくなり、小さい電圧V1で画素32Cを第2の状態に設定できる。例えば、第1液体Lqaが純水で、セル部34の内面の幅がほぼ1μmである場合、図8(C)の底面電極37Aに印加する電圧V1はほぼ60V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/3)に低減できる。従って、変調制御部の回路の高集積化が容易であり、発熱量も低減できる。
【0060】
このように、図7の変形例では、底面電極37Aの表面に屋根型の突き出し電極部38を設けているが、図9(A)の第4変形例の画素32Dで示すように、セル部34の底面部の底面電極37Bの表面37Baの中央にX方向及びY方向に平行な4つの辺で囲まれた正方形の底面を持つ四角錐型(ピラミッド型)の突き出し電極部38Aを設けてもよい。このとき、底面電極37Bの表面に設けられた絶縁膜50Dの突き出し電極部38Aを覆う部分にも凸部50Daが形成される。図9(B)に示すように、突き出し電極部38A(凸部50Da)の底面のX方向、Y方向の幅a8は図7の突き出し電極部38のX方向の幅a8と同じであり、突き出し電極部38A(凸部50Da)の高さa10は突き出し電極部38の高さa10と同じである。この変形例においても、図7の変形例と同様に、画素32Dを第2の状態に設定するために図9の底面電極37Bに印加する電圧V1を低減できる。
【0061】
なお、底面電極37Bの表面に四角錐型の突き出し電極部38Aの代わりに、例えば円錐型の突き出し電極部のように、セル部34の窓部(透明電極36)側に向かうほど断面形状が小さくなる凸状の電極部を設けてもよい。これによって、画素32Dを第2の状態に設定するために底面電極37Bに印加する電圧V1を小さくできる。
次に、図10に示す第5変形例の画素32Eは、図6の4つの側壁電極39A〜39Dを持つ画素32Bにおいて、底面電極として図7の屋根型の突き出し電極部38を持つ底面電極37Aを備えたものである。この場合、底面電極37Aを覆う絶縁膜としても凸部50Caを持つ絶縁膜50Cが形成されている。この変形例によれば、画素32Eを第2の状態に設定するために底面電極37Aに印加する電圧V1をほぼ30V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/6)に低減できる。
【0062】
また、図11に示す第6変形例の画素32Fは、図6の4つの側壁電極39A〜39Dを持つ画素32Bにおいて、底面電極として図9の角錐型の突き出し電極部38Aを持つ底面電極37Bを備えたものである。この場合、底面電極37Bを覆う絶縁膜としても凸部50Daを持つ絶縁膜50Dが形成されている。この変形例によれば、画素32Fを第2の状態に設定するために底面電極37Bに印加する電圧V1をほぼ30V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/6)に低減できる。
【0063】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態につき図12を参照して説明する。図12において、図1(A)〜図2に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。図12は、本実施形態に係るマスクレス方式の露光装置EXの概略構成を示す。図12において、露光装置EXは、パルス発光を行う露光用の光源2と、光源2からの露光用の照明光(露光光)ILで被照射面を照明する照明光学系ILSと、ほぼその被照射面又はその近傍の面上に二次元のアレイ状に配列された複数の画素32を有する本体部30及び変調制御部48を有するマスクパターン生成用の空間光変調器28と、を備えている。さらに、露光装置EXは、空間光変調器28の複数の画素32によって生成された可変の位相分布を持つ照明光ILを受光して、その位相分布に対応して形成される空間像(デバイスパターン)をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系40と、各種制御系等とを備えている。
【0064】
以下、図12において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面に平行である)内において図12の紙面に平行な方向にY軸を、図12の紙面に垂直な方向にX軸を設定して説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向の角度とも呼ぶ。座標系(X,Y,Z)と空間光変調器28の本体部30との関係は図2と同じである。本実施形態では、露光時にウエハWはY方向(走査方向)に走査される。
【0065】
光源2としてはArFエキシマレーザ光源(波長193nm)が使用されている。光源2としては、KrFエキシマレーザ光源、又はYAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源等も使用できる。固体パルスレーザ光源は、例えば波長193nm(これ以外の種々の波長が可能)でパルス幅1ns程度のレーザ光を1〜2MHz程度の周波数でパルス発光可能である。
【0066】
本実施形態においては、光源2には電源部42が連結されている。主制御系40が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガパルスTPを電源部42に供給する。その発光トリガパルスTPに同期して電源部42は、指示されたタイミング及び光量で光源2にパルス発光を行わせる。
光源2から射出された断面形状が矩形でほぼ平行光束のパルスレーザ光よりなる照明光ILは、1対のレンズよりなるビームエキスパンダ4、照明光ILの偏光状態を制御する偏光制御光学系6及びミラー8Aを介して、照明系用の空間光変調器9のベース部材11を有する本体部10の複数の微小な画素12(図2にセル部34に対応する部材を有する光学要素)のアレイに入射する。偏光制御光学系6は、例えば照明光ILの偏光方向を回転する1/2波長板、照明光ILを円偏光に変換するための1/4波長板、及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するための楔型の複屈折性プリズム等を交換可能に設置可能な光学系である。
【0067】
空間光変調器9は、空間光変調器28とほぼ同じ構成であり、空間光変調器9の本体部10は本体部30に対応し、変調制御部49は変調制御部48に対応している。空間光変調器9の画素12(セル部)は、XY平面に対してθx方向に傾斜した平面(配列面)上に二次元のアレイ状に配列され、それぞれ入力する照明光ILの位相を制御して反射する。このように反射される照明光ILの位相分布を制御することによって、例えば種々の特性の回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE) を切り替えて使用する場合のように、照明光学系ILSの瞳面における照明光ILの光量分布を、通常照明用の円形、輪帯照明用の輪帯状、複数極照明用の2極又は4極状の形状等の任意の分布に制御できる。
【0068】
例えば1ロットのウエハの露光開始前に、主制御系40の制御のもとで照明系制御部41が空間光変調器9の変調制御部49に、各照明条件に対応して複数の画素12のアレイによって設定される照明光ILの位相分布の情報を供給する。これに応じて変調制御部49が空間光変調器9の各画素12を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に制御する。なお、各画素12は、反射光の位相を第1又は第2の状態以外の位相で変化させる状態に設定してもよい。
【0069】
空間光変調器9で反射された照明光ILは、レンズ14a,14bよりなるリレー光学系14及びミラー8Bを介してY軸(光軸AXI)に沿ってマイクロレンズアレイ16の入射面に導かれる。マイクロレンズアレイ16に入射した照明光ILは、マイクロレンズアレイ16を構成する多数の微小なレンズエレメントによって二次元的に分割(波面分割)され、各レンズエレメントの後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面(以下、照明瞳面IPPという)には二次光源(面光源)が形成される。なお、マイクロレンズアレイ16の代わりにフライアイレンズ等も使用可能である。
【0070】
照明瞳面IPPに形成された二次光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ18A、視野絞り20、第2リレーレンズ18B、及びコンデンサ光学系22を介してハーフミラー24に入射し、ハーフミラー24で+Z方向に反射された照明光ILが、XY平面に平行な被照射面(設計上の転写用のパターンが配置される面)に入射する。その被照射面又はその近傍の面に、空間光変調器28の2次元のアレイ状に配列された多数の画素32(図2のセル部34を有する光学要素)の反射面37a(図2参照)が配置される。ビームエキスパンダ4からコンデンサ光学系22までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。なお、ハーフミラー24を偏光ビームスプリッターとして、これに入力する照明光ILの偏光状態をS偏光として、偏光ビームスプリッターと空間光変調器28との間に1/4波長板を配置してもよい。これによって、空間光変調器28で反射される照明光ILはほぼ全部が偏光ビームスプリッターを透過して投影光学系PLに向かうため、照明光ILの利用効率を高めることができる。
【0071】
一例として、照明光学系ILSからの照明光ILは、空間光変調器28の多数の画素32のアレイ上のX方向に細長い長方形状の照明領域26Aをほぼ均一な照度分布で照明する。照明光学系ILS、ハーフミラー24、及び空間光変調器28の本体部30は、不図示のフレームに支持されている。一例として、所定パルス数の照明光ILの発光毎に、主制御系40の制御下の露光パターン制御部43が空間光変調器28の変調制御部48に、画素32のアレイによって設定される照明光ILの位相分布の情報を供給する。これに応じて変調制御部48が空間光変調器28の各画素32を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に制御する。ウエハWの表面にはその位相分布に応じた空間像が形成される。
【0072】
空間光変調器28の照明領域26A内の多数のミラー要素30のアレイで反射された照明光ILは、ハーフミラー24を介して投影光学系PLに入射する。不図示のコラムに支持された光軸AXを持つ投影光学系PLは、両側テレセントリックの縮小投影光学系である。投影光学系PLは、空間光変調器28によって設定される照明光ILの位相分布に応じた空間像の縮小像を、ウエハWの1つのショット領域内の露光領域26B(照明領域26Aと光学的に共役な領域)に形成する。投影光学系PLの投影倍率βは例えば1/10〜1/100程度であり、その解像度(ハーフピッチ又は線幅)は、例えば空間光変調器28の画素32の像の幅程度である。例えば、画素32の幅が数μm程度、投影光学系PLの投影倍率βが1/100程度であれば、投影光学系PLの解像度は数10nm程度である。
【0073】
ウエハW(基板)は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等の円形の平板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光材料)を数10nm〜200nm程度の厚さで塗布したものを含む。また、露光装置EXが液浸型である場合には、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。液浸型の場合には解像度をさらに高めることができる。
【0074】
図12において、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のガイド面上でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動する。ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角等はレーザ干渉計45によって形成され、この計測情報がステージ制御系44に供給されている。ステージ制御系44は、主制御系40からの制御情報及びレーザ干渉計45からの計測情報に基づいて、リニアモータ等の駆動系46を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、ウエハWのアライメントを行うために、ウエハWのアライメントマークの位置を検出するアライメント系(不図示)等も備えられている。
【0075】
ウエハWの露光時には、ウエハWのアライメントを行った後、空間光変調器9を用いて照明光学系ILSの照明条件を設定する。そして、ウエハWの表面でY方向に一列に配列されたショット領域に露光を行うために、ウエハWを走査開始位置に位置決めする。その後、ウエハWの+Y方向への一定速度での走査を開始する。
次に、主制御系40は、ウエハWの露光領域26Bのショット領域に対する相対位置に応じて、露光パターン制御部43を介して変調制御部48に露光領域26Bに形成される空間像に対応する空間光変調器28の反射面における照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。これによって、露光領域26Bには、Y方向の位置に応じて目標とする空間像が逐次露光される。この動作をショット領域が露光領域26Bを横切るまで繰り返すことで、ショット領域に全体の空間像(回路パターン)が露光される。
【0076】
その後、ウエハWのそのショット領域に隣接するショット領域に露光するために、ウエハWを同じ方向に走査したまま、主制御系40は露光パターン制御部43を介して変調制御部48に照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。このようにして、第1のショット領域から次のショット領域にかけて連続的に露光を行うことができる。そして、ウエハWのX方向に隣接するショット領域を含む列の露光に移行する場合には、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向(走査方向に直交する非走査方向)にステップ移動する。そして、露光領域26Bに対するウエハWの走査方向を逆の−Y方向に設定し、主制御系40から露光パターン制御部43を介して変調制御部48に逆の順序で照明光ILの位相分布の情報を供給し、電源部42に発光トリガパルスTPを供給することで、隣接する列の一連のショット領域に対して連続的に露光を行うことができる。この露光に際して、複数のショット領域に互いに異なる空間像を露光することも可能である。なお、各ショット領域を複数回の走査で露光してもよい。その後、ウエハWのフォトレジストの現像を行うことで、ウエハWの各ショット領域にレジストパターンが形成される。
【0077】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態のウエハWを照明光ILで露光する露光装置EXは、第1の観点では、空間光変調器28と、空間光変調器28の複数のセル部34(画素32)のアレイに照明光ILを照射する照明光学系ILSと、複数のセル部34からの照明光をウエハWに導いてウエハWにパターンを投影する投影光学系PLと、ウエハWに露光されるパターンを制御するために、空間光変調器28の複数のセル部34を通過する照明光の位相を制御する露光パターン制御部43と、を備えている。
【0078】
この第1の観点の露光装置EXによれば、空間光変調器28を備えているため、マスクレス方式でウエハWに任意のパターンを露光できる。このようにマスクレス方式で露光を行う場合には、照明光学系ILS中の空間光変調器9の代わりに、例えば米国特許第6,900,915号明細書、米国特許第7,095,546号明細書、又は米国特許公開第2005/0095749号明細書等に開示されているように、それぞれ直交する2軸の回りの傾斜角が可変の多数の微小ミラーを有する空間光変調器を用いることもできる。さらに、空間光変調器9の代わりに、複数の回折光学素子(DOE)を切り替えて使用してもよい。
【0079】
(2)また、空間光変調器28のセル部34(画素32)X方向を長手方向とする長方形の領域に設けられ、ウエハWを投影光学系PLの像面でX方向と直交するY方向に対応する走査方向に移動するウエハステージWST(基板ステージ)を備え、露光パターン制御部43は、ウエハステージWSTによるウエハWの移動に応じて、複数の画素32によって形成されるパターン(位相分布)をY方向に移動する。これによって、マスクレス方式でウエハWの全面を効率的に露光できる。
【0080】
なお、空間光変調器28の代わりに、第1の実施形態の変形例の空間光変調器28A,28B等を使用することができる。
(3)また、本実施形態のマスクパターンを介してウエハWを照明光ILで露光する露光装置EXは、第2の観点では、空間光変調器9を有し、照明光ILで空間光変調器9を介してそのマスクパターンを照明する照明光学系ILSと、そのマスクパターンを照明する照明光ILの入射角の分布(照明瞳面IPPにおける光量分布)を制御するために、記空間光変調器9の複数のセル部(画素12)を通過する照明光ILの位相を制御する照明系制御部41と、を備えている。
【0081】
この第2の観点の露光装置EXによれば、照明光学系ILSで空間光変調器9を用いているため、空間光変調器9によって照明光ILの位相分布を制御するのみで、そのマスクパターンを照明する照明光ILの入射角の分布(照明瞳面IPPにおける光量分布)を任意の分布に制御できる。なお、この第2の観点の露光装置EXにおいては、マスクパターン(位相パターン)を設定する空間光変調器28の代わりに、少なくともY方向に往復移動可能なレチクルステージと、レチクルステージに載置されて転写用のパターンが形成されたレチクルとを使用してもよい。
【0082】
なお、空間光変調器9の代わりに、第1の実施形態の変形例の空間光変調器28A,28B等を使用することができる。
次に、本実施形態では、次のような変形が可能である。まず、本実施形態では、ウエハWを連続的に移動してウエハWを走査露光している。その他に、ウエハWの各ショット領域をY方向に複数の部分領域に分割し、投影光学系PLの露光領域26Bにある部分領域が達したときに、照明光ILを所定パルス数だけ発光させて、空間光変調器28の画素32のアレイからの反射光で部分領域を露光してもよい。この後、ウエハWをY方向にステップ移動させて、次の部分領域が露光領域26Bに達してから、同様に部分領域に露光が行われる。この方式は実質的にステップ・アンド・リピート方式であるが、隣接する部分領域には互いに異なるパターンが露光される。
【0083】
また、上記の実施形態では、物体側及び像面側にテレセントリックの投影光学系PLを用いている。それ以外に、図13の変形例の露光装置EXAで示すように、物体側に非テレセントリックの投影光学系PLAを用いることも可能である。図13において、露光装置EXAの照明光学系ILSAは、図12の光源2から第1リレーレンズ18Aまでの光学部材を含む本体部ILSBと、本体部ILSBからの照明光ILが順次照射される視野絞り20、ミラー8C、第2リレーレンズ18B、コンデンサ光学系22、及びミラー8Dを備えている。照明光学系ILSAは、投影光学系PLAの物体面に配置された空間光変調器28の画素32(セル部34)のアレイを、θx方向に入射角βで照明光ILを照射する。投影光学系PLAは、画素32のアレイから斜めに反射される照明光ILによりウエハWの表面に所定の空間像を形成する。入射角βは例えば数deg(°)から数10degである。この入射角βに応じて、第1の状態の画素32で反射される照明光と第2の状態の画素32で反射される照明光との位相差が180°になるように、式(2)又は式(3)のセル部34内の第2液体Lqbの深さdの値を調整してもよい。この他の構成及び動作は、上記の実施形態と同様である。
【0084】
また、図12の波面分割型のインテグレータであるマイクロレンズアレイ16に代えて、内面反射型のオプティカル・インテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。この場合、図12において、リレー光学系14よりも空間光変調器9側に集光光学系を追加して空間光変調器9の反射面の共役面を形成し、この共役面近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置してもよい。
【0085】
また、このロッド型インテグレータの射出端面又は射出端面近傍に配置される照明視野絞りの像を空間光変調器9の反射面上に形成するためのリレー光学系を配置する。この構成の場合、二次光源はリレー光学系14及び集光光学系の瞳面に形成される(二次光源の虚像はロッド型インテグレータの入射端近傍に形成される)。
また、電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図14に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスクのパターンデータを実施形態の露光装置EX,EXAの主制御系に記憶するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した露光装置EX,EXA(又は露光方法)により空間光変調器28(又はマスクパターン)で生成される位相分布の空間像を基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0086】
このデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いてウエハWを露光する工程と、露光されたウエハWを処理する工程(ステップ224)とを含んでいる。従って、電子デバイスを効率的に高精度に製造できる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。
【0087】
また、上記の実施形態及びその変形例の空間光変調器28,28A,28B等は、露光装置以外の表示装置又はプロジェクタ等の光学装置にも使用できる。この光学装置は、その空間光変調器28(又は28A,28B等)と、空間光変調器28の複数のセル部34(画素32)に照明光を照射する照明系(第1光学系)と、それらのセル部34(画素32)で変調された光を像面(対象物の表面)に導く結像光学系(第2光学系)と、を備えている。この光学装置によれば、例えば高い解像度が得られる。
【0088】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0089】
EX,EXA…露光装置、ILS,ILSA…照明光学系、PL,PLA…投影光学系、W…ウエハ、Lqa…第1液体、Lqb…第2液体、28…空間光変調器、30…本体部、32…画素、34…セル部、36…透明電極、37…底面電極、38…突き出し電極部、39A〜39D…側壁電極、48…変調制御部、54…SRAM
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光を変調する空間光変調器、この空間光変調器の製造方法、その空間光変調器を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子又は液晶表示素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で、所定のパターンを投影光学系を介してウエハ又はガラスプレート等の基板に形成するために一括露光型又は走査露光型の露光装置等が使用されている。これらの露光装置としては、複数種類のデバイス毎に、さらに基板の複数のレイヤ毎にそれぞれマスクを用意することによる製造コストの増大を抑制し、各デバイスを効率的に製造するために、マスクの代わりに、それぞれヒンジ機構によって傾斜角又は高さが可変の多数の微小ミラーのアレイを有する空間光変調器(spatial light modulators)を用いて、投影光学系の物体面に反射型の可変の明暗パターン又は位相パターンを生成するいわゆるマスクレス方式の露光装置が知られている。このようにヒンジ機構を用いて微小ミラーの傾斜角を調整する方式では、微小ミラーの駆動機構が複雑であり、さらに透過型の変調器の実現が困難である。
【0003】
そこで、マスクレス露光用に使用可能な空間光変調器として、いわゆるエレクトロウェッティング(Electrowetting)を利用して、各画素(各光学要素)の光路上に透明な液体又は不透明な液体を移動することによって、各画素を明状態又は暗状態に設定可能な変調器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。エレクトロウェッティングとは、液体が接する面の電位の変化に伴うその液体の接触角若しくは表面エネルギー及び/又はその液体に対する静電力の変化に応じて、その液体が移動する現象である(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−515802号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Frieder Mugele and Jean-Christophe Baret, “Electrowetting: from basics to applications,” Journal of Physics: Condensed Matter, 17(2005)R705-R774(英国)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエレクトロウェッティングを利用した空間光変調器は、各画素が電極のみで区分されているため、例えば一列の複数の画素を交互に明状態及び暗状態に正確に設定するのが困難であり、解像度を高めるのが困難であった。さらに、従来のエレクトロウェッティングを利用した空間光変調器は、各画素を通過する光の位相を制御することが困難であった。
【0007】
本発明の態様は、このような事情に鑑み、エレクトロウェッティングを用いて、高い解像度が得られるとともに、必要に応じて各画素を通過する光の位相を制御可能な空間光変調器及びこの空間光変調器を使用する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、配列面に入射する光を変調する第1の空間光変調器が提供される。この第1の空間光変調器は、その配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、そのセル部に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、そのセル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、そのセル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、そのセル部のその第1及び第2電極に印加される電圧によって、そのセル部内におけるその第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、そのセル部を通過する光の光路長を制御するものである。
【0009】
また、第2の態様によれば、配列面に入射する光を変調する第2の空間光変調器が提供される。この第2の空間光変調器は、その配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、そのセル部に収容される互いに透過率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、そのセル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、そのセル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、そのセル部のその第1及び第2電極に印加される電圧によって、そのセル部内におけるその第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、そのセル部を通過する光の透過率を制御するものである。
【0010】
また、第3の態様によれば、本発明の空間光変調器と、その空間光変調器のセル部に照明光を照射する第1光学系と、そのセル部からの光を対象物に導く第2光学系と、を備える光学装置が提供される。
また、第4の態様によれば、露光光で基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、本発明による複数のセル部を有する空間光変調器と、その空間光変調器の複数のセル部のアレイにその露光光を照射する照明光学系と、その複数のセル部からの光をその基板上に導いてその基板上にパターンを投影する投影光学系と、その基板に露光されるパターンを制御するために、その空間光変調器の複数のセル部を通過する光の位相を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0011】
また、第5の態様によれば、露光光でマスクを介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、本発明による複数のセル部を有する空間光変調器を有し、その露光光でその空間光変調器を介してそのマスクを照明する照明光学系と、そのマスクを照明するその露光光の入射角の分布を制御するために、その空間光変調器の複数のセル部を通過する光の位相を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0012】
また、第6の態様によれば、本発明の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2の態様の空間光変調器によれば、セル部に設けられる第1電極及び第2電極に印加される電圧によって、誘電率の相違に基づいて、その第2電極と第1及び第2の液体との間の静電力のバランスが変化し、エレクトロウェッティングの作用によって、当該セル部内における第1及び第2の液体の厚さの比を制御することができる。従って、その第1及び第2の液体の屈折率が異なるときには、2つの液体の厚さ及び屈折率の相違に基づいて、そのセル部を含む画素(光学要素)を通過する光の光路長、ひいては位相を制御することができる。一方、その第1及び第2の液体の入射する光に対する透過率が異なるときには、2つの液体の厚さ及び透過率の相違に基づいて、そのセル部を含む画素(光学要素)を通過する光の透過率を制御することができる。
【0014】
さらに、各画素は隔壁部で仕切られているため、画素間の静電力の影響及び画素間の液体の流れが抑制されて、高い解像度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は第1の実施形態に係る空間光変調器の概略構成を示す図、(B)はその空間光変調器の本体部の一部を示す拡大斜視図である。
【図2】図1(B)の空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図及び制御系を示すブロック図である。
【図3】(A)は図1(A)の空間光変調器の2つの画素を示す拡大断面図、(B)は製造中の空間光変調器の本体部を示す拡大断面図である。
【図4】第1変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図及び制御系を示すブロック図である。
【図5】(A)は第1変形例に係る第1の状態の画素を示す拡大断面図、(B)は中間的な状態の画素を示す拡大断面図、(C)は第2の状態の画素を示す拡大断面図である。
【図6】第2変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図7】第3変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図8】(A)は第3変形例に係る第1の状態の画素を示す拡大断面図、(B)は中間的な状態の画素を示す拡大断面図、(C)は第2の状態の画素を示す拡大断面図である。
【図9】(A)は第4変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図、(B)は図9(A)中の底面電極の凸部を示す斜視図である。
【図10】第5変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図11】第6変形例に係る空間光変調器の一つの画素を示す拡大斜視図である。
【図12】第2の実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図13】第2の実施形態の変形例の概略構成を示す図である。
【図14】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態につき図1(A)〜図3(B)を参照して説明する。図1(A)は、本実施形態に係る空間光変調器(spatial light modulator: SLM )28の概略構成を示し、図1(B)は空間光変調器28の本体部30の一部を拡大して示す。本実施形態の空間光変調器28は、2次元のアレイ状に配列された光学要素としての複数の画素32を有する本体部30と、その複数の画素32に入射して反射される照明光ILの位相を個別に制御する変調制御部48と、を有し、エレクトロウェッティング(Electrowetting:電気毛管現象)を用いて各画素32に入射する光を変調する。照明光ILは、例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、波長248nmのKrFエキシマレーザ光、又は固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波等である。照明光ILは、一例として数kHz又は1〜2MHz程度の周波数でパルス発光される光である。以下では、複数の画素32の直交する第1及び第2の配列方向に沿ってX軸及びY軸を取り、X軸及びY軸に直交する方向にZ軸を取って説明する。
【0017】
図1(A)において、空間光変調器28の本体部30は、上面が開いた矩形の箱状の絶縁体からなるベース部材31と、X方向及びY方向に2次元の格子状に配列されるように複数の正方形の開口が形成された絶縁体よりなる隔壁部材33と、ベース部材31内に隔壁部材33を支持する複数の連結部33Sと、ベース部材31の上面を覆うとともに照明光ILが通過する(入射及び射出する)平板状のカバーガラス35(図1(B)参照)と、を有する。なお、隔壁部材33は、ベース部材31の底面側から支持してもよい。カバーガラス35は、例えば石英又は蛍石(CaF2)のような照明光ILを透過する材料から形成されている。
【0018】
本実施形態では、カバーガラス35のXY面に平行な底面(以下、配列面DPと呼ぶ。)に沿って複数の画素32が配列され、カバーガラス35の底面(配列面DP)の全面に、照明光ILを透過する程度の厚さの透明電極36(図2参照)が形成されている。透明電極36は接地されている。透明電極としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムすず酸化物)、酸化すず(Sn02)、酸化インジウム(In2O3)、ガリウム添加酸化すず(GZO)、アルミニウム添加酸化すず(AZO)、又は他の材料が使用可能である。
【0019】
隔壁部材33は、X方向、Y方向に密着して等しいピッチ(周期)px,py(px=py)で配列された正方形の筒状の隔壁部33aの集合である。隔壁部33aは、配列面DPに垂直なZ方向に沿った内面、すなわちXZ面に平行な2つの面及びYZ面に平行な2つの面で囲まれた断面形状が正方形の内面を有する。隔壁部33aからセル部34が構成されている。画素32の配列のピッチpxは、例えば10〜1μm程度であり、一例として、画素32のX方向の配列数は数1000〜数万、Y方向の配列数はX方向の配列数の1/10程度である。図1(A)では、各画素32は、拡大して表されている。なお、画素32のX方向、Y方向の配列数は任意であり、隔壁部33aの断面形状(画素32の形状)は長方形でもよく、画素32のX方向、Y方向の配列のピッチpx,pyは互いに異なってもよい。
【0020】
ベース部材31は、例えばフルオロポリマー(フッ素重合体)よりなる絶縁体、シリコン基板の表面に酸化ケイ素(SiO2)若しくは窒化ケイ素(例えばSi3N4)等の絶縁層を形成した材料、又はセラミックス等から形成可能である。隔壁部材33は、例えば酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素、又はセラミックス等から形成可能である。
本実施形態では、各画素32は入射する照明光ILを反射するXY面に平行な反射面37aを有する。そして、後述のようにエレクトロウェッティングを用いることによって、各画素32は、位置A1の画素32のように、垂直に(Z方向に)入射する照明光IL1の位相を第1の所定の位相δだけ変化させて反射する第1の状態と、位置A2の画素32のように、入射する照明光IL2の位相をその位相δと180°(π(rad))だけ異なる位相だけ変化させて反射する第2の状態と、を含む複数の状態に設定可能である。その第1の状態の画素32を画素32(0)とも呼び、その第2の状態の画素32を画素32(π)とも呼ぶ。
【0021】
次に、図2は、図1(A)の空間光変調器28の本体部30中の一つの画素32のみを代表的に示す拡大斜視図である。図2には、空間光変調器28の変調制御部48のブロック図も示されている。また、図3(A)は、図1(A)の本体部30中の位置A1,A2にある2つの画素32のみを代表的に示す拡大断面図である。図3(A)において、各画素32は、セル部34と、セル部34の上方(−Z方向)の窓部34aの全面を覆うようにカバーガラス35の底面(配列面DP)に形成された透明電極36と、セル部34の底面部34bに形成されたY方向に細長い導電体の薄膜からなる底面電極37と、底面電極37を覆うように形成された絶縁体の薄膜(以下、絶縁膜という。)50Aと、セル部34内に混合しない状態で収容されて互いに屈折率及び誘電率(比誘電率)が異なる第1液体Lqa及び第2液体Lqbと、を有する。
【0022】
本実施形態では、一例として、第1液体Lqaの屈折率naは第2液体Lqbの屈折率nbよりも大きく、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbよりも例えば10倍〜40倍程度大きい。液体Lqa,Lqbは照明光ILを透過する液体である。また、隔壁部材33を収容するベース部材31の底面には、一例として製造時に液体を排出するための開閉される開口を有する排出部51が設けられている。
【0023】
底面電極37を形成する導電体としては金属又はポリシリコン等が使用できる。絶縁膜50Aは照明光を透過する程度の厚さであり、絶縁膜50Aは液体Lqa,Lqbと底面電極37との直接的な接触を防止している。また、底面電極37の表面が照明光を反射する反射面37aである。底面電極37がポリシリコンである場合、反射面37aには照明光を反射する誘電体多層膜を形成してもよい。絶縁膜50Aの材料としては、例えばフッ素添加の酸化ケイ素(SiOF)、炭素添加の酸化ケイ素(SiOC)、又はセラミックス等が使用可能である。
【0024】
図2において、セル部34の内面のX方向及びY方向の幅を等しくa1として、セル部34の深さ(透明電極36の底面から絶縁膜50Aの表面までのZ方向の間隔)をahとする。このとき、底面電極37(反射面37a)のY方向の長さはほぼa1、X方向の幅a4は、ほぼa1/2である。
一例として、セル部34の深さahはほぼ1000nmである。また、セル部34内の幅a1をほぼ1μm(1000nm)とすると、絶縁膜50Aの厚さa3はほぼ100nm、底面電極37のX方向の幅a4はほぼ500nm、セル部34内の底面で底面電極37をX方向に挟む2つの長方形の領域のX方向の幅a5はほぼ250nmである。また、セル部34内で底面電極37(絶縁膜50A)の表面に第2液体Lqbが分布し、液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、第1液体LqaのZ方向の深さ(厚さ)をa2、第2液体LqbのZ方向の深さ(厚さ)をdとすると、以下のように、深さa2と深さdとの和はセル部34の深さahになる。
【0025】
ah=a2+d …(1)
また、深さdは照明光ILの波長に応じて設定され(詳細後述)、深さa2は式(1)及び深さdに基づいて設定される。一例として、深さa2は745nm程度に設定される。
本実施形態の複数の画素32用の底面電極37及びこれらの電極用の配線(不図示)等が形成された隔壁部材33は、例えばMEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いて製造可能である。なお、ベース部材31及び隔壁部材33を含む本体部30を一体的にMEMS技術(及び半導体素子の製造技術)を用いて製造することも可能である。
【0026】
本実施形態では、図3(A)において、複数の画素32の透明電極36は共通に接地(接地レベルを0Vとする)されている。一例として、+Z方向が鉛直方向であり、第2液体Lqbの比重は第1液体Lqaの比重よりも軽いとする。また、位置A1の照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32においては、底面電極37には電圧0が印加されており、透明電極36と底面電極37との電位は同じであるとする。このとき、セル部34内の底面電極37側には第2液体Lqbが深さdで分布しており、位置A1の画素32に入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37の表面(反射面37a)で反射されて、窓部34a側に戻される。
【0027】
これに対して、位置A2の照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32においては、底面電極37には接地レベルよりも高い所定の正の電圧V1が印加されており、透明電極36と底面電極37との電位差はV1である。第1液体Lqaが純水(比誘電率がほぼ80)で、セル部34の内面の幅がほぼ1μmである場合、電圧V1は例えば180Vである。このとき、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbに対してほぼ10倍以上であるため、第1液体Lqaと底面電極37との間に作用する静電力の引力(静電引力)は、第2液体Lqbと底面電極37との間に作用する静電引力よりも大きくなる。そのため、エレクトロウェッティングの作用に基づいて、位置A2の画素32のセル部34内で透明電極36と底面電極37の表面37aの、表面37aとほぼ同じX方向の幅を持つ有効領域37bとの間の領域は第1液体Lqaで満たされる。そして、位置A2の画素32に入射する照明光IL2はほぼ第1液体Lqaのみを通過して底面電極37の表面(反射面37a)で反射されて、窓部34a側に戻される。
【0028】
本実施形態では、第1の状態の画素32(0)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32(π)の反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。このためには、第1の状態の画素32(0)において、深さdの第2液体Lqb(屈折率nb)の部分をZ方向に往復する照明光IL1の位相の変化量が、第2の状態の画素32(π)において、深さdの第1液体Lqa(屈折率na)の部分をZ方向に往復する照明光IL2の位相の変化量に対して180°(π)(光路長で1/2波長)異なっていればよい。照明光IL1,IL2の波長をλとすると、上記のように第1の状態及び第2の状態の画素32を設定するための条件は次のようになる。
2d(na−nb)=λ/2 …(2)、 d=λ/{4(na−nb)} …(3)
式(2)又は式(3)の条件を満たすことができる第1液体Lqa及び第2液体Lqbの例を次の表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
比誘電率は例えば100Hz以上の交流信号に対する値である。フロリナート(登録商標)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフロロポリエーテル(PFPE)はフッ素系オイルであり、いずれも屈折率が純水よりも小さく、比誘電率が純水の1/10〜1/40程度である。また、これらのフッ素系オイル(フッ素系不活性液体)は水とは混じり合わない(水と非混合性である)。従って、本実施形態において、純水を第1液体Lqaとして使用し、フロリナート、HFE、又はPFPEを第2液体Lqbとして使用可能である。表1には、各フッ素系オイルの純水との屈折率差Δn、及び式(2)を満たすための深さd(厚さ)の値(nm)が示されている。表1から、式(2)を満たすための深さdは255〜345nmであるため、各画素32の大きさ(配列のピッチ)を1μm程度にすることも可能である。なお、フロリナートは比誘電率が最も小さく、かつ屈折率が最も小さく、必要な深さd(=255nm)が最も小さいため、第2液体Lqbとしてはフロリナートが最も好ましい。
【0031】
また、表1には、高屈折率液体であるデカリン(decalin)の屈折率及び比誘電率も掲載している。デカリンは屈折率が純水より大きく、かつ比誘電率が純水より小さいとともに、水とは非混合性である。従って、例えば第1液体Lqaとして純水を使用し、第2液体Lqbとしてデカリンを使用することも可能である。また、第1液体Lqaとしてデカリンを使用し、第2液体Lqbとしてフロリナートを使用することも可能である。さらに、第1液体Lqa及び第2液体Lqbとしては、要は屈折率及び比誘電率が互いに異なり、かつ互いに非混合性の任意の液体を使用可能である。なお、液体Lqa,Lqbは照明光ILに対して純水程度の透過率を持つことが好ましい。
【0032】
次に、図2において、変調制御部48は、図1(A)の複数の画素32の状態(第1の状態又は第2の状態)の分布を制御するコンピュータの一部である制御部52と、複数の画素32の状態(底面電極37に印加される電圧)の分布に対応するデータが格納されたメモリーであるSRAM54と、SRAM54の出力を増幅する画素32と同じ個数の増幅器55A,55B,55C,…と、全部の画素32の透明電極36を一括して接地する接地ラインと、を有する。増幅器55A,55B等の出力はそれぞれ信号ライン及びセル部34に設けた配線(不図示)を介して対応する画素32の底面電極37に供給されている。本実施形態では、各底面電極37には、電圧0(ここでは接地レベル)(第1の状態)又は上記の電圧V1(第2の状態)が印加される。なお、SRAM54の代わりに、シフトレジスターを使用することも可能である。
【0033】
本実施形態において、SRAM54には予め全部の画素32の状態に対応するデジタルデータの時系列的に変化するパターンが記憶されており、制御部52は、所定の駆動周波数(例えば1〜2MHz等)でSRAM54の該当する一連の番地のデータを増幅器55A等に出力させる。これに応じて、例えば図1(A)に示すように、二次元のアレイ状に配列された複数の画素32が、第1の状態の画素32(0)又は斜線が施された第2の状態の画素32(π)のいずれかに設定される。従って、所定の時間間隔で複数の画素32の第1の状態又は第2の状態の配列を、一つの画素32を単位として任意の配列に設定可能である。
【0034】
次に、本実施形態の空間光変調器28の本体部30の製造方法の一例につき図3(A)、(B)を参照して説明する。まず、MEMS技術等を用いて、図3(A)の本体部30のうち、液体Lqa,Lqbを除いた複数のセル部34及び底面電極37等が形成された隔壁部材33を製造し、一面に透明電極36が形成されたカバーガラス35、及び排出部51が設けられたベース部材31を製造する。
【0035】
次に、図3(B)に示すように、カバーガラス35の透明電極36の上面に順次、深さa2の第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを供給する。透明電極36の上面の周辺部には、液体が外部に漏れ出ないように枠状部材(不図示)が載置され、液体Lqa,Lqb中に差し込んだロッド状の電極(不図示)を接地し、透明電極36に所定の正の電位を与えることで、液体Lqa,Lqbは透明電極36の上面に安定に保持される。液体Lqa,Lqbの厚さは、一例として、その枠状部材内に供給する各液体の体積とその枠状部材内の面積とから決定される。
【0036】
そして、例えば真空環境下で、隔壁部材33のセル部34の窓部34aをカバーガラス35上の第2液体Lqbに向けて、隔壁部材33をカバーガラス35上の透明電極36に接触させて、透明電極36の電位を0にする。さらに、例えば接着により隔壁部材33とカバーガラス35とを固定する。その後、例えば大気圧環境下で、隔壁部材33を覆うようにベース部材31の開放端をカバーガラス35に接触させ、接着等で隔壁部材33の支持部材33Sとベース部材31とを固定し、ベース部材31とカバーガラス35とを固定し、排出部51を介してベース部材31の内部の液体を排出することで、本体部30が完成する。
【0037】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の配列面DPに入射する照明光ILを変調する空間光変調器28は、配列面DPを横切るZ方向に沿った隔壁部33aを有するセル部34と、セル部34に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体Lqa,Lqbと、セル部34の照明光ILが入射する窓部34aの全面に設けられる透明電極36(第1電極)と、セル部34の底面34bの一部に設けられる照明光ILに対する反射部を兼用する底面電極37(第2電極)と、セル部34の透明電極36及び底面電極37に印加する電圧を制御する変調制御部48と、を備えている。そして、変調制御部48は、電極36,37に印加する電圧(電極36,37間の電位差)によって、セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御して、セル部34の底面電極37(反射部)で反射される照明光ILの光路長、ひいては反射光の位相を制御する。
【0038】
本実施形態の空間光変調器28によれば、セル部34に設けられる電極36,37に印加される電圧(電極36,37間の電位差)によって、誘電率が高い液体Lqaが電極37に引き寄せられる方向に力が働くことによって、当該セル部34内における液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御することができる。また、液体Lqa,Lqbの屈折率が異なるため、2つの液体Lqa,Lqbの厚さ及び屈折率の相違に基づいて、セル部34を含む画素32(光学要素)で反射される照明光ILの光路長、ひいては位相を制御することができる。
【0039】
さらに、各画素32は隔壁部33aで仕切られているため、画素32間の静電力の影響及び画素32間の液体の流れが抑制されて、高い解像度が得られる。
なお、透明電極36は、セル部34の窓部34aの一部に設けてもよく、底面電極37はセル部34の底面34bの全面に設けてもよい。
(2)本実施形態では、第2の状態の画素32では底面電極37に正の電圧V1を印加している。しかしながら、第2の状態の画素32では底面電極37に負の電圧を印加してもよい。
【0040】
(3)また、底面電極37が反射部を兼用しているため、画素32の構成が簡素である。
なお、底面電極37を設ける代わりに、セル部34の側面に電極を設け、底面電極37の代わりに反射部材を配置してもよい。このとき、その側面の電極と透明電極36との電位差によってセル部34内の反射部材の上方の液体Lqa,Lqbの厚さの比を制御することで、反射光の位相を制御できる。
【0041】
(4)また、本実施形態では、各画素32を第1又は第2の状態に設定しているが、各画素32を、反射される照明光ILの位相をその第1の状態に対して180°以外の値(例えば45°、90°、135°等)で異なる他の状態に設定してもよい。さらに、各画素32で反射される照明光ILの位相をその第1の状態の位相と任意の位相だけ異なるように設定してもよい。
【0042】
(5)また、本実施形態の空間光変調器28は反射型であるが、例えば図2において、底面電極37を設ける代わりに、セル部34の側面に電極を設け、絶縁膜50Aを透過性のガラス基板とすることで、各画素32を透過型の画素とすることも可能である。この場合には、照明光ILは、各セル部34内を一度透過するのみであるため、各画素32を上記の第1の状態又は第2の状態に設定するための第2液体Lqbの深さdは、以下の式で示すように、上記の式(2)又は式(3)で定まる値の2倍になる。
【0043】
d(na−nb)=λ/2 …(4)、 d=λ/{2(na−nb)} …(5)
(6)また、本実施形態の空間光変調器28は位相変調型であるが、図2において、セル部34内に、第1液体Lqaとともに、透過率及び誘電率が第1液体Lqaと異なる別の液体Lqc(第2液体)を収容することで、空間光変調器28を振幅変調型(又は強度変調型)とすることもできる。その液体Lqcとしては、例えば上記のフッ素系オイルに照明光ILを吸収する染料を加えた、照明光ILに対する透過率がほぼ0の液体を使用できる。この構成では、2つの液体Lqa,Lqcの厚さ及び透過率の相違に基づいて、セル部34を含む画素32(光学要素)で反射される照明光ILの透過率を制御することができる。具体的に、上記の第1の状態では、画素32からの反射光の光量がほぼ0になり、第2の状態では、画素32からの反射光の光量が大きくなる。また、このような振幅又は強度変調型の空間光変調器において、底面電極37の代わりにセル部34の側面に電極を設け、絶縁膜50Aをガラス基板とすることで、各画素を透過型とすることもできる。
(7)また、空間光変調器28の画素32は2次元のアレイであるため、例えば露光装置に適用した場合に大面積のパターンを露光又は照明できる。なお、空間光変調器28において、画素32はX方向又はY方向に一列に(一次元)に配列されていてもよい。
【0044】
なお、上記の実施形態では以下のような変形が可能である。
まず、上記の実施形態では、画素32のセル部34の底面又は側面に電極(底面電極37等)を設けているが、図4の第1変形例の空間光変調器28Aで示すように、本体部30Aの各画素32Aにおいて、セル部34の底面部34bに底面電極37(第2電極)を設けるとともに、セル部34内の窓部34a(透明電極36)に近い部分の側面に、X方向(底面電極37の長手方向に直交する方向)に対向するように1対の導電体の薄膜よりなる側壁電極39A,39B(第3電極)を設けてもよい。その導電体は例えば金属又はポリシリコン等であり、側壁電極39A,39Bは横方向(Y方向)に細長い矩形の薄膜である。側壁電極39A,39Bはセル部34に設けた配線によって導通している。なお、図4において、図2に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
図4において、側壁電極39A,39Bの表面には、底面電極37の表面を覆う絶縁膜50Aと同様の絶縁膜50Bが設けられている。そして、セル部34内には第1液体Lqa及び第2液体Lqbが収容されている。液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、液体Lqa,Lqbの深さはそれぞれa2及びdである。本実施形態では、側壁電極39A,39BのY方向の幅はa1(セル部34内面の幅)であり、側壁電極39A,39BのZ方向の幅a6は、第1液体Lqaの深さa2よりも大きく設定されている。また、セル部34内面のX方向の幅a1’は、電極39A,39B及び絶縁膜50Aの厚さ分だけ幅a1よりも小さく設定されている。
【0046】
一例として、セル部34内のY方向の幅a1がほぼ1000nmであるとき、電極39A,39B及び絶縁膜50Aの厚さはそれぞれほぼ50nmで、セル部34のX方向の幅a1’はほぼ800nmである。また、一例として、第1液体Lqaの深さa2が745nm、第2液体Lqbの深さdが255nmであるとき、側壁電極39A,39BのZ方向の幅a6はほぼ800nm、側壁電極39A,39Bの下端と絶縁膜50Aの表面とのZ方向の間隔a7はほぼ200nmである。さらに、底面電極37のX方向の幅a4はほぼ500nm、セル部34内の底面で底面電極37をX方向に挟む2つの領域のX方向の幅a5’はほぼ150nmである。
【0047】
また、空間光変調器28Aの変調制御部48Aは、各画素32Aに対応して、出力部が側壁電極39A,39Bに接続され入力部が増幅器55A等に接続された電圧変換部56を有する。電圧変換部56は、増幅器55A等の出力が0(接地レベル)であるときに電圧V2を出力し、増幅器55A等の出力がV1であるときに0を出力する。この他の構成は上記の実施形態と同様であり、透明電極36は接地(接地レベルを0とする)されている。
【0048】
この第1変形例において、図5(B)に示すように、仮想的に底面電極37及び側壁電極39A,39Bの電圧を0としたときに、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc2は90°よりも大きくなり、底面電極37(反射面)の上方では他の領域に比べて第1液体Lqaの厚さが厚くなっている。このとき、図5(A)に示すように、照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32A(画素32A(0))においては、底面電極37には電圧0が印加され、側壁電極39A,39Bには正の電圧V2が印加される。この状態で、第1液体Lqaは、側壁電極39A,39Bからの静電引力によって、セル部34内で側壁電極39A,39Bに近い領域に保持される。また、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc1はほぼ90°である。
【0049】
言い替えると、第1の状態の画素32Aにおいて、側壁電極39A,39Bには絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc1がほぼ90°となるような電圧V2が印加される。電圧V2は第2の状態で底面電極37に印加される正の電圧V1よりも小さい電圧でよい。電圧V2は例えば25Vである。このとき、セル部34内の液体Lqa,Lqbの境界面はXY面にほぼ平行で、かつセル部34内の底面電極37側には第2液体Lqbが深さdで分布している。そして、画素32Aに入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37の表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。
【0050】
これに対して、図5(C)に示すように、照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32A(画素32A(π))においては、底面電極37には接地レベルよりも高い正の電圧V1が印加され、側壁電極39A,39Bの電圧は0にされる。このとき、第1液体Lqaの比誘電率εaは第2液体Lqbの比誘電率εbに対してほぼ10倍以上であり、第1液体Lqaには底面電極37の方向に引き寄せられる方向に力が働く。さらに、側壁電極39A,39Bの電圧が0にされることで、絶縁膜50Bに対する第1液体Lqaの接触角θc3は90°よりも大きくなる。これによって、第1液体Lqaと第2液体Lqbの境界面は凹面になり、底面電極37と第1液体Lqaの間の距離が短くなる。底面電極37と第1液体Lqaの間の距離が短いほど電場が強くなるため、第1液体Lqaが底面電極37の方向に引き寄せられる力は大きくなる。第1液体Lqaが底面電極37の方向に引き寄せられていき、最終的に画素32Aのセル部34内で透明電極36と底面電極37の表面との間の領域はほぼ第1液体Lqaで満たされる。この状態で、画素32Aに入射する照明光IL2はほぼ第1液体Lqaのみを通過して底面電極37の表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。
【0051】
この変形例でも、第2液体Lqbの深さdは式(2)を満たすため、第1の状態の画素32A(0)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32A(π)の底面電極37の反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。そして、底面電極37及び側壁電極39A,39Bに印加する電圧の組を第1の状態の(0,V2)と第2の状態の(V1,0)との間で高速に切り替えることによって、画素32Aを第1の状態と第2の状態との間で高速に切り替えることができる。
【0052】
この変形例において、側壁電極39A,39Bの電圧が0であるときには、図5(B)に示すように、第1液体Lqaの接触角θc2は90°よりも大きくなっている。このため、画素32Aを第2の状態にするために底面電極37に印加する電圧V1は、上記の実施形態(図2)の底面電極37に印加される電圧よりも小さくできる。例えば、第1液体Lqaが純水で、セル部34の内面の幅a1がほぼ1μmである場合、図5(C)の底面電極37に印加する電圧V1はほぼ90V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/2)に低減できる。従って、変調制御部48Aの回路の高集積化が容易であり、発熱量も低減できる。
【0053】
次に、図4の変形例ではセル部34A内の側面に1対の側壁電極39A,39Bを設けている。さらに、図6の第2変形例の空間光変調器28Bの本体部30Bの画素32Bで示すように、セル部34内の側面に、X方向の1対の側壁電極39A,39Bに加えて、Y方向に対向するように配置された導電体の薄膜よりなる1対の側壁電極39C,39Dを設け、側壁電極39C,39Dを覆うように絶縁膜50Bを設けてもよい。この変形例において、側壁電極39C,39Dの形状は側壁電極39A,39Bと同じであり、セル部34内のY方向の幅はX方向の幅(図4の幅a1’)と同じである。また、側壁電極39A〜39Dはセル部34に設けられた配線によって導通しており、側壁電極39C,39Dには側壁電極39A,39Bと同じ電圧が印加される。その他の構成は図4の変形例と同じである。
【0054】
図6の変形例において、底面電極37及び側壁電極39A〜39Dに印加する電圧の組を第1の状態の(0,V2)と第2の状態の(V1,0)との間で高速に切り替えることによって、画素32Bを互いに反射光の位相が180°異なる第1の状態と第2の状態との間で高速に切り替えることができる。
さらに、この変形例の画素32Bによれば、側壁電極39A〜39Dがセル部34内を囲んでいるため、第2の状態で底面電極37に印加する電圧V1をより小さくできる。具体的に、第1液体Lqaが純水で、セル部34内の幅がほぼ800nmである場合、第2の状態で底面電極37に印加する電圧V1はほぼ60V(図4の変形例における90Vのほぼ2/3)に低減できる。従って、変調制御部の回路の高集積化がより容易であり、発熱量も低減できる。
【0055】
次に、上記の実施形態及びその変形例では、画素32のセル部34の底面電極37等は平坦である。これに対して、図7の第3変形例の空間光変調器で示すように、本体部の各画素32Cにおいて、セル部34の底面部に設けた導電体よりなる底面電極37Aの表面に、XZ面に平行な面内の断面形状が三角形のY方向に細長い屋根型の突き出し電極部38を設けてもよい。この場合、底面電極37Aの表面は照明光ILを反射する反射面である。また、底面電極37Aの表面に設けられる絶縁膜50C(図2の絶縁膜50Aと同じ材料からなる)の突き出し電極部38を覆う部分にも屋根型の凸部50Caが形成される。なお、図7及び図8(A)〜(C)において、図2及び図3(A)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
図7において、セル部34内には第1液体Lqa及び第2液体Lqbが収容されている。この他の構成は図2の実施形態と同様である。画素32C内の液体Lqa,Lqbの境界面がXY面に平行な状態で、絶縁膜50Cの凸部50Caの高さa10は第2液体Lqbの深さよりも低く設定されている。一例として、セル部34内の幅がほぼ1000nmであるとき、突き出し電極部38の底面のX方向の幅a8はほぼ200nm、底面電極37Aの突き出し電極部38をX方向に挟む2つの部分のX方向の幅a9はほぼ150nm、凸部50Caの高さa10(突き出し電極部38の高さ)はほぼ200nmである。
【0057】
この第3変形例において、図8(B)に示すように、照明光IL1が照射されている第1の状態の画素32C(画素32C(0))においては、底面電極37には電圧0が印加され、セル部34内で底面電極37A側に第2液体Lqbが分布し、液体Lqa,Lqbの境界面はXY面に平行である。そして、画素32Cに入射する照明光IL1は第1液体Lqa及び式(2)を満たす深さdの第2液体Lqbを通過して底面電極37Aの表面(反射面)で反射されて、カバーガラス35側に戻される。この際に、底面電極37Aの表面のうち、突き出し電極部38の表面38aで反射される照明光IL1はセル部34の内部で吸収又は散乱されてカバーガラス35側には殆ど戻されない。このため、図7の幅a8,a9を用いて、照明光IL1の使用効率は図2の実施形態と比べて次のようにほぼ60%になる。
【0058】
2・a9/(a8+2・a9)=0.6=60(%) …(6)
また、図8(C)に示すように、照明光IL2が照射されている第2の状態の画素32C(画素32C(π))においては、底面電極37Aには接地レベルよりも高い正の電圧V1が印加される。このため、画素32Cのセル部34内で透明電極36と底面電極37Aの表面との間の領域はほぼ第1液体Lqaで満たされる。この状態で、画素32Cに入射する照明光IL2のうちで、突き出し電極部38の表面38aを除く底面電極37Aの表面(反射面)で反射された照明光は、ほぼ第1液体Lqaのみを通過してカバーガラス35側に戻される。そして、第1の状態の画素32C(0)の底面電極37Aの反射面で反射される照明光IL1の位相の変化量に対して、第2の状態の画素32C(π)の底面電極37Aの反射面で反射される照明光IL2の位相の変化量は180°(π)異なっている。
【0059】
この変形例において、底面電極37Aに電圧V1を印加すると、突き出し電極部38近傍で電場が強いため、液体Lqaに働く力は突き出し電極部38近傍で大きくなる。そのため電圧V1を印加すると、まずは図8(B)に示すように、液体Lqa,Lqbの境界面は突き出し電極部38の表面38a(凸部50Ca)と交差するようになる。言い替えると、突き出し電極部38が設けられているときには、電圧V1が小さくとも底面電極37Aから第1液体Lqaに対する静電引力(電場)が大きくなり、小さい電圧V1で画素32Cを第2の状態に設定できる。例えば、第1液体Lqaが純水で、セル部34の内面の幅がほぼ1μmである場合、図8(C)の底面電極37Aに印加する電圧V1はほぼ60V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/3)に低減できる。従って、変調制御部の回路の高集積化が容易であり、発熱量も低減できる。
【0060】
このように、図7の変形例では、底面電極37Aの表面に屋根型の突き出し電極部38を設けているが、図9(A)の第4変形例の画素32Dで示すように、セル部34の底面部の底面電極37Bの表面37Baの中央にX方向及びY方向に平行な4つの辺で囲まれた正方形の底面を持つ四角錐型(ピラミッド型)の突き出し電極部38Aを設けてもよい。このとき、底面電極37Bの表面に設けられた絶縁膜50Dの突き出し電極部38Aを覆う部分にも凸部50Daが形成される。図9(B)に示すように、突き出し電極部38A(凸部50Da)の底面のX方向、Y方向の幅a8は図7の突き出し電極部38のX方向の幅a8と同じであり、突き出し電極部38A(凸部50Da)の高さa10は突き出し電極部38の高さa10と同じである。この変形例においても、図7の変形例と同様に、画素32Dを第2の状態に設定するために図9の底面電極37Bに印加する電圧V1を低減できる。
【0061】
なお、底面電極37Bの表面に四角錐型の突き出し電極部38Aの代わりに、例えば円錐型の突き出し電極部のように、セル部34の窓部(透明電極36)側に向かうほど断面形状が小さくなる凸状の電極部を設けてもよい。これによって、画素32Dを第2の状態に設定するために底面電極37Bに印加する電圧V1を小さくできる。
次に、図10に示す第5変形例の画素32Eは、図6の4つの側壁電極39A〜39Dを持つ画素32Bにおいて、底面電極として図7の屋根型の突き出し電極部38を持つ底面電極37Aを備えたものである。この場合、底面電極37Aを覆う絶縁膜としても凸部50Caを持つ絶縁膜50Cが形成されている。この変形例によれば、画素32Eを第2の状態に設定するために底面電極37Aに印加する電圧V1をほぼ30V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/6)に低減できる。
【0062】
また、図11に示す第6変形例の画素32Fは、図6の4つの側壁電極39A〜39Dを持つ画素32Bにおいて、底面電極として図9の角錐型の突き出し電極部38Aを持つ底面電極37Bを備えたものである。この場合、底面電極37Bを覆う絶縁膜としても凸部50Daを持つ絶縁膜50Dが形成されている。この変形例によれば、画素32Fを第2の状態に設定するために底面電極37Bに印加する電圧V1をほぼ30V(図2の実施形態における180Vのほぼ1/6)に低減できる。
【0063】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態につき図12を参照して説明する。図12において、図1(A)〜図2に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。図12は、本実施形態に係るマスクレス方式の露光装置EXの概略構成を示す。図12において、露光装置EXは、パルス発光を行う露光用の光源2と、光源2からの露光用の照明光(露光光)ILで被照射面を照明する照明光学系ILSと、ほぼその被照射面又はその近傍の面上に二次元のアレイ状に配列された複数の画素32を有する本体部30及び変調制御部48を有するマスクパターン生成用の空間光変調器28と、を備えている。さらに、露光装置EXは、空間光変調器28の複数の画素32によって生成された可変の位相分布を持つ照明光ILを受光して、その位相分布に対応して形成される空間像(デバイスパターン)をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系40と、各種制御系等とを備えている。
【0064】
以下、図12において、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面に平行である)内において図12の紙面に平行な方向にY軸を、図12の紙面に垂直な方向にX軸を設定して説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向の角度とも呼ぶ。座標系(X,Y,Z)と空間光変調器28の本体部30との関係は図2と同じである。本実施形態では、露光時にウエハWはY方向(走査方向)に走査される。
【0065】
光源2としてはArFエキシマレーザ光源(波長193nm)が使用されている。光源2としては、KrFエキシマレーザ光源、又はYAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源等も使用できる。固体パルスレーザ光源は、例えば波長193nm(これ以外の種々の波長が可能)でパルス幅1ns程度のレーザ光を1〜2MHz程度の周波数でパルス発光可能である。
【0066】
本実施形態においては、光源2には電源部42が連結されている。主制御系40が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガパルスTPを電源部42に供給する。その発光トリガパルスTPに同期して電源部42は、指示されたタイミング及び光量で光源2にパルス発光を行わせる。
光源2から射出された断面形状が矩形でほぼ平行光束のパルスレーザ光よりなる照明光ILは、1対のレンズよりなるビームエキスパンダ4、照明光ILの偏光状態を制御する偏光制御光学系6及びミラー8Aを介して、照明系用の空間光変調器9のベース部材11を有する本体部10の複数の微小な画素12(図2にセル部34に対応する部材を有する光学要素)のアレイに入射する。偏光制御光学系6は、例えば照明光ILの偏光方向を回転する1/2波長板、照明光ILを円偏光に変換するための1/4波長板、及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するための楔型の複屈折性プリズム等を交換可能に設置可能な光学系である。
【0067】
空間光変調器9は、空間光変調器28とほぼ同じ構成であり、空間光変調器9の本体部10は本体部30に対応し、変調制御部49は変調制御部48に対応している。空間光変調器9の画素12(セル部)は、XY平面に対してθx方向に傾斜した平面(配列面)上に二次元のアレイ状に配列され、それぞれ入力する照明光ILの位相を制御して反射する。このように反射される照明光ILの位相分布を制御することによって、例えば種々の特性の回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE) を切り替えて使用する場合のように、照明光学系ILSの瞳面における照明光ILの光量分布を、通常照明用の円形、輪帯照明用の輪帯状、複数極照明用の2極又は4極状の形状等の任意の分布に制御できる。
【0068】
例えば1ロットのウエハの露光開始前に、主制御系40の制御のもとで照明系制御部41が空間光変調器9の変調制御部49に、各照明条件に対応して複数の画素12のアレイによって設定される照明光ILの位相分布の情報を供給する。これに応じて変調制御部49が空間光変調器9の各画素12を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に制御する。なお、各画素12は、反射光の位相を第1又は第2の状態以外の位相で変化させる状態に設定してもよい。
【0069】
空間光変調器9で反射された照明光ILは、レンズ14a,14bよりなるリレー光学系14及びミラー8Bを介してY軸(光軸AXI)に沿ってマイクロレンズアレイ16の入射面に導かれる。マイクロレンズアレイ16に入射した照明光ILは、マイクロレンズアレイ16を構成する多数の微小なレンズエレメントによって二次元的に分割(波面分割)され、各レンズエレメントの後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面(以下、照明瞳面IPPという)には二次光源(面光源)が形成される。なお、マイクロレンズアレイ16の代わりにフライアイレンズ等も使用可能である。
【0070】
照明瞳面IPPに形成された二次光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ18A、視野絞り20、第2リレーレンズ18B、及びコンデンサ光学系22を介してハーフミラー24に入射し、ハーフミラー24で+Z方向に反射された照明光ILが、XY平面に平行な被照射面(設計上の転写用のパターンが配置される面)に入射する。その被照射面又はその近傍の面に、空間光変調器28の2次元のアレイ状に配列された多数の画素32(図2のセル部34を有する光学要素)の反射面37a(図2参照)が配置される。ビームエキスパンダ4からコンデンサ光学系22までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。なお、ハーフミラー24を偏光ビームスプリッターとして、これに入力する照明光ILの偏光状態をS偏光として、偏光ビームスプリッターと空間光変調器28との間に1/4波長板を配置してもよい。これによって、空間光変調器28で反射される照明光ILはほぼ全部が偏光ビームスプリッターを透過して投影光学系PLに向かうため、照明光ILの利用効率を高めることができる。
【0071】
一例として、照明光学系ILSからの照明光ILは、空間光変調器28の多数の画素32のアレイ上のX方向に細長い長方形状の照明領域26Aをほぼ均一な照度分布で照明する。照明光学系ILS、ハーフミラー24、及び空間光変調器28の本体部30は、不図示のフレームに支持されている。一例として、所定パルス数の照明光ILの発光毎に、主制御系40の制御下の露光パターン制御部43が空間光変調器28の変調制御部48に、画素32のアレイによって設定される照明光ILの位相分布の情報を供給する。これに応じて変調制御部48が空間光変調器28の各画素32を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に制御する。ウエハWの表面にはその位相分布に応じた空間像が形成される。
【0072】
空間光変調器28の照明領域26A内の多数のミラー要素30のアレイで反射された照明光ILは、ハーフミラー24を介して投影光学系PLに入射する。不図示のコラムに支持された光軸AXを持つ投影光学系PLは、両側テレセントリックの縮小投影光学系である。投影光学系PLは、空間光変調器28によって設定される照明光ILの位相分布に応じた空間像の縮小像を、ウエハWの1つのショット領域内の露光領域26B(照明領域26Aと光学的に共役な領域)に形成する。投影光学系PLの投影倍率βは例えば1/10〜1/100程度であり、その解像度(ハーフピッチ又は線幅)は、例えば空間光変調器28の画素32の像の幅程度である。例えば、画素32の幅が数μm程度、投影光学系PLの投影倍率βが1/100程度であれば、投影光学系PLの解像度は数10nm程度である。
【0073】
ウエハW(基板)は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等の円形の平板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光材料)を数10nm〜200nm程度の厚さで塗布したものを含む。また、露光装置EXが液浸型である場合には、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。液浸型の場合には解像度をさらに高めることができる。
【0074】
図12において、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のガイド面上でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動する。ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角等はレーザ干渉計45によって形成され、この計測情報がステージ制御系44に供給されている。ステージ制御系44は、主制御系40からの制御情報及びレーザ干渉計45からの計測情報に基づいて、リニアモータ等の駆動系46を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、ウエハWのアライメントを行うために、ウエハWのアライメントマークの位置を検出するアライメント系(不図示)等も備えられている。
【0075】
ウエハWの露光時には、ウエハWのアライメントを行った後、空間光変調器9を用いて照明光学系ILSの照明条件を設定する。そして、ウエハWの表面でY方向に一列に配列されたショット領域に露光を行うために、ウエハWを走査開始位置に位置決めする。その後、ウエハWの+Y方向への一定速度での走査を開始する。
次に、主制御系40は、ウエハWの露光領域26Bのショット領域に対する相対位置に応じて、露光パターン制御部43を介して変調制御部48に露光領域26Bに形成される空間像に対応する空間光変調器28の反射面における照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。これによって、露光領域26Bには、Y方向の位置に応じて目標とする空間像が逐次露光される。この動作をショット領域が露光領域26Bを横切るまで繰り返すことで、ショット領域に全体の空間像(回路パターン)が露光される。
【0076】
その後、ウエハWのそのショット領域に隣接するショット領域に露光するために、ウエハWを同じ方向に走査したまま、主制御系40は露光パターン制御部43を介して変調制御部48に照明光ILの位相分布の情報を供給するとともに、電源部42に発光トリガパルスTPを供給する。このようにして、第1のショット領域から次のショット領域にかけて連続的に露光を行うことができる。そして、ウエハWのX方向に隣接するショット領域を含む列の露光に移行する場合には、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向(走査方向に直交する非走査方向)にステップ移動する。そして、露光領域26Bに対するウエハWの走査方向を逆の−Y方向に設定し、主制御系40から露光パターン制御部43を介して変調制御部48に逆の順序で照明光ILの位相分布の情報を供給し、電源部42に発光トリガパルスTPを供給することで、隣接する列の一連のショット領域に対して連続的に露光を行うことができる。この露光に際して、複数のショット領域に互いに異なる空間像を露光することも可能である。なお、各ショット領域を複数回の走査で露光してもよい。その後、ウエハWのフォトレジストの現像を行うことで、ウエハWの各ショット領域にレジストパターンが形成される。
【0077】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態のウエハWを照明光ILで露光する露光装置EXは、第1の観点では、空間光変調器28と、空間光変調器28の複数のセル部34(画素32)のアレイに照明光ILを照射する照明光学系ILSと、複数のセル部34からの照明光をウエハWに導いてウエハWにパターンを投影する投影光学系PLと、ウエハWに露光されるパターンを制御するために、空間光変調器28の複数のセル部34を通過する照明光の位相を制御する露光パターン制御部43と、を備えている。
【0078】
この第1の観点の露光装置EXによれば、空間光変調器28を備えているため、マスクレス方式でウエハWに任意のパターンを露光できる。このようにマスクレス方式で露光を行う場合には、照明光学系ILS中の空間光変調器9の代わりに、例えば米国特許第6,900,915号明細書、米国特許第7,095,546号明細書、又は米国特許公開第2005/0095749号明細書等に開示されているように、それぞれ直交する2軸の回りの傾斜角が可変の多数の微小ミラーを有する空間光変調器を用いることもできる。さらに、空間光変調器9の代わりに、複数の回折光学素子(DOE)を切り替えて使用してもよい。
【0079】
(2)また、空間光変調器28のセル部34(画素32)X方向を長手方向とする長方形の領域に設けられ、ウエハWを投影光学系PLの像面でX方向と直交するY方向に対応する走査方向に移動するウエハステージWST(基板ステージ)を備え、露光パターン制御部43は、ウエハステージWSTによるウエハWの移動に応じて、複数の画素32によって形成されるパターン(位相分布)をY方向に移動する。これによって、マスクレス方式でウエハWの全面を効率的に露光できる。
【0080】
なお、空間光変調器28の代わりに、第1の実施形態の変形例の空間光変調器28A,28B等を使用することができる。
(3)また、本実施形態のマスクパターンを介してウエハWを照明光ILで露光する露光装置EXは、第2の観点では、空間光変調器9を有し、照明光ILで空間光変調器9を介してそのマスクパターンを照明する照明光学系ILSと、そのマスクパターンを照明する照明光ILの入射角の分布(照明瞳面IPPにおける光量分布)を制御するために、記空間光変調器9の複数のセル部(画素12)を通過する照明光ILの位相を制御する照明系制御部41と、を備えている。
【0081】
この第2の観点の露光装置EXによれば、照明光学系ILSで空間光変調器9を用いているため、空間光変調器9によって照明光ILの位相分布を制御するのみで、そのマスクパターンを照明する照明光ILの入射角の分布(照明瞳面IPPにおける光量分布)を任意の分布に制御できる。なお、この第2の観点の露光装置EXにおいては、マスクパターン(位相パターン)を設定する空間光変調器28の代わりに、少なくともY方向に往復移動可能なレチクルステージと、レチクルステージに載置されて転写用のパターンが形成されたレチクルとを使用してもよい。
【0082】
なお、空間光変調器9の代わりに、第1の実施形態の変形例の空間光変調器28A,28B等を使用することができる。
次に、本実施形態では、次のような変形が可能である。まず、本実施形態では、ウエハWを連続的に移動してウエハWを走査露光している。その他に、ウエハWの各ショット領域をY方向に複数の部分領域に分割し、投影光学系PLの露光領域26Bにある部分領域が達したときに、照明光ILを所定パルス数だけ発光させて、空間光変調器28の画素32のアレイからの反射光で部分領域を露光してもよい。この後、ウエハWをY方向にステップ移動させて、次の部分領域が露光領域26Bに達してから、同様に部分領域に露光が行われる。この方式は実質的にステップ・アンド・リピート方式であるが、隣接する部分領域には互いに異なるパターンが露光される。
【0083】
また、上記の実施形態では、物体側及び像面側にテレセントリックの投影光学系PLを用いている。それ以外に、図13の変形例の露光装置EXAで示すように、物体側に非テレセントリックの投影光学系PLAを用いることも可能である。図13において、露光装置EXAの照明光学系ILSAは、図12の光源2から第1リレーレンズ18Aまでの光学部材を含む本体部ILSBと、本体部ILSBからの照明光ILが順次照射される視野絞り20、ミラー8C、第2リレーレンズ18B、コンデンサ光学系22、及びミラー8Dを備えている。照明光学系ILSAは、投影光学系PLAの物体面に配置された空間光変調器28の画素32(セル部34)のアレイを、θx方向に入射角βで照明光ILを照射する。投影光学系PLAは、画素32のアレイから斜めに反射される照明光ILによりウエハWの表面に所定の空間像を形成する。入射角βは例えば数deg(°)から数10degである。この入射角βに応じて、第1の状態の画素32で反射される照明光と第2の状態の画素32で反射される照明光との位相差が180°になるように、式(2)又は式(3)のセル部34内の第2液体Lqbの深さdの値を調整してもよい。この他の構成及び動作は、上記の実施形態と同様である。
【0084】
また、図12の波面分割型のインテグレータであるマイクロレンズアレイ16に代えて、内面反射型のオプティカル・インテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。この場合、図12において、リレー光学系14よりも空間光変調器9側に集光光学系を追加して空間光変調器9の反射面の共役面を形成し、この共役面近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置してもよい。
【0085】
また、このロッド型インテグレータの射出端面又は射出端面近傍に配置される照明視野絞りの像を空間光変調器9の反射面上に形成するためのリレー光学系を配置する。この構成の場合、二次光源はリレー光学系14及び集光光学系の瞳面に形成される(二次光源の虚像はロッド型インテグレータの入射端近傍に形成される)。
また、電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図14に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスクのパターンデータを実施形態の露光装置EX,EXAの主制御系に記憶するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した露光装置EX,EXA(又は露光方法)により空間光変調器28(又はマスクパターン)で生成される位相分布の空間像を基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0086】
このデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いてウエハWを露光する工程と、露光されたウエハWを処理する工程(ステップ224)とを含んでいる。従って、電子デバイスを効率的に高精度に製造できる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。
【0087】
また、上記の実施形態及びその変形例の空間光変調器28,28A,28B等は、露光装置以外の表示装置又はプロジェクタ等の光学装置にも使用できる。この光学装置は、その空間光変調器28(又は28A,28B等)と、空間光変調器28の複数のセル部34(画素32)に照明光を照射する照明系(第1光学系)と、それらのセル部34(画素32)で変調された光を像面(対象物の表面)に導く結像光学系(第2光学系)と、を備えている。この光学装置によれば、例えば高い解像度が得られる。
【0088】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0089】
EX,EXA…露光装置、ILS,ILSA…照明光学系、PL,PLA…投影光学系、W…ウエハ、Lqa…第1液体、Lqb…第2液体、28…空間光変調器、30…本体部、32…画素、34…セル部、36…透明電極、37…底面電極、38…突き出し電極部、39A〜39D…側壁電極、48…変調制御部、54…SRAM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列面に入射する光を変調する空間光変調器であって、
前記配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、
前記セル部に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、
前記セル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、
前記セル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、
前記セル部の前記第1及び第2電極に印加される電圧によって、前記セル部内における前記第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、前記セル部を通過する光の光路長を制御することを特徴とする空間光変調器。
【請求項2】
前記第1電極は、前記セル部の前記窓部の全面に設けられる透明電極であることを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
【請求項3】
前記第2電極は、前記セル部の底面の一部に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間光変調器。
【請求項4】
前記第2電極は、前記セル部に入射する光を反射する反射部を兼用することを特徴とする請求項3に記載の空間光変調器。
【請求項5】
前記第2電極は、前記セル部の側面の少なくとも一部に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間光変調器。
【請求項6】
前記セル部の側面の少なくとも一部に設けられる第3電極を備え、
前記第3電極に、前記セル部の側面に対する前記第1及び第2液体の接触角を制御する電圧を印加することを特徴とする請求項3又は4に記載の空間光変調器。
【請求項7】
前記セル部は4つの側面を持ち、
前記第3電極は、前記4つの側面に設けられる4つの電極を含むことを特徴とする請求項6に記載の空間光変調器。
【請求項8】
前記第2電極は、前記セル部の前記窓部に向かって次第に断面積が小さくなる凸部を有することを特徴とする請求項3、4、6又は7に記載の空間光変調器。
【請求項9】
前記第2電極の前記凸部は角錐型又は屋根型であることを特徴とする請求項8に記載の空間光変調器。
【請求項10】
前記第1及び第2電極には、前記セル部を通過る光の位相を第1の位相だけ変化させる第1組の電圧、又は前記セル部を通過する光の位相を前記第1の位相と180°異なる第2の位相だけ変化させる第2組の電圧を含む複数組の電圧のいずれかが与えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項11】
前記配列面に沿って2次元又は1次元のアレイ状に配列された複数の前記セル部と、
前記複数のセル部にそれぞれ対応して設けられた前記第1及び第2電極、並びに前記第1及び第2液体と、
前記複数のセル部について、互いに独立に対応する前記第1及び第2電極の電圧を制御して、前記セル部を通過する光の位相を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項12】
配列面に入射する光を変調する空間光変調器であって、
前記配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、
前記セル部に収容される互いに透過率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、
前記セル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、
前記セル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、
前記セル部の前記第1及び第2電極に印加される電圧によって、前記セル部内における前記第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、前記セル部を通過する光の透過率を制御することを特徴とする空間光変調器。
【請求項13】
前記隔壁部は枠状に形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記セル部に照明光を照射する第1光学系と、
前記セル部からの光を対象物に導く第2光学系と、を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項15】
露光光で基板を露光する露光装置において、
請求項11に記載の空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記複数のセル部のアレイに前記露光光を照射する照明光学系と、
前記複数のセル部からの光を前記基板上に導いて前記基板上にパターンを投影する投影光学系と、
前記基板に露光されるパターンを制御するために、前記空間光変調器の前記複数のセル部からの光の位相パターンを制御する露光制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項16】
露光光でマスクを介して基板を露光する露光装置において、
請求項11に記載の空間光変調器を有し、前記露光光で前記空間光変調器を介して前記マスクを照明する照明光学系と、
前記マスクを照明する前記露光光の入射角の分布を制御するために、前記空間光変調器の前記複数のセル部からの光の位相パターンを制御する照明制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記基板を処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
配列面に入射する光を変調する空間光変調器であって、
前記配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、
前記セル部に収容される互いに屈折率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、
前記セル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、
前記セル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、
前記セル部の前記第1及び第2電極に印加される電圧によって、前記セル部内における前記第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、前記セル部を通過する光の光路長を制御することを特徴とする空間光変調器。
【請求項2】
前記第1電極は、前記セル部の前記窓部の全面に設けられる透明電極であることを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
【請求項3】
前記第2電極は、前記セル部の底面の一部に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間光変調器。
【請求項4】
前記第2電極は、前記セル部に入射する光を反射する反射部を兼用することを特徴とする請求項3に記載の空間光変調器。
【請求項5】
前記第2電極は、前記セル部の側面の少なくとも一部に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の空間光変調器。
【請求項6】
前記セル部の側面の少なくとも一部に設けられる第3電極を備え、
前記第3電極に、前記セル部の側面に対する前記第1及び第2液体の接触角を制御する電圧を印加することを特徴とする請求項3又は4に記載の空間光変調器。
【請求項7】
前記セル部は4つの側面を持ち、
前記第3電極は、前記4つの側面に設けられる4つの電極を含むことを特徴とする請求項6に記載の空間光変調器。
【請求項8】
前記第2電極は、前記セル部の前記窓部に向かって次第に断面積が小さくなる凸部を有することを特徴とする請求項3、4、6又は7に記載の空間光変調器。
【請求項9】
前記第2電極の前記凸部は角錐型又は屋根型であることを特徴とする請求項8に記載の空間光変調器。
【請求項10】
前記第1及び第2電極には、前記セル部を通過る光の位相を第1の位相だけ変化させる第1組の電圧、又は前記セル部を通過する光の位相を前記第1の位相と180°異なる第2の位相だけ変化させる第2組の電圧を含む複数組の電圧のいずれかが与えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項11】
前記配列面に沿って2次元又は1次元のアレイ状に配列された複数の前記セル部と、
前記複数のセル部にそれぞれ対応して設けられた前記第1及び第2電極、並びに前記第1及び第2液体と、
前記複数のセル部について、互いに独立に対応する前記第1及び第2電極の電圧を制御して、前記セル部を通過する光の位相を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項12】
配列面に入射する光を変調する空間光変調器であって、
前記配列面を横切る第1方向に沿った隔壁部を有するセル部と、
前記セル部に収容される互いに透過率及び誘電率が異なる第1及び第2の液体と、
前記セル部の光が入射する窓部の少なくとも一部に設けられる第1電極と、
前記セル部の底面及び側面の少なくとも一部に設けられる第2電極と、を備え、
前記セル部の前記第1及び第2電極に印加される電圧によって、前記セル部内における前記第1及び第2の液体の厚さの比を制御して、前記セル部を通過する光の透過率を制御することを特徴とする空間光変調器。
【請求項13】
前記隔壁部は枠状に形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の空間光変調器。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記セル部に照明光を照射する第1光学系と、
前記セル部からの光を対象物に導く第2光学系と、を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項15】
露光光で基板を露光する露光装置において、
請求項11に記載の空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記複数のセル部のアレイに前記露光光を照射する照明光学系と、
前記複数のセル部からの光を前記基板上に導いて前記基板上にパターンを投影する投影光学系と、
前記基板に露光されるパターンを制御するために、前記空間光変調器の前記複数のセル部からの光の位相パターンを制御する露光制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項16】
露光光でマスクを介して基板を露光する露光装置において、
請求項11に記載の空間光変調器を有し、前記露光光で前記空間光変調器を介して前記マスクを照明する照明光学系と、
前記マスクを照明する前記露光光の入射角の分布を制御するために、前記空間光変調器の前記複数のセル部からの光の位相パターンを制御する照明制御装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記基板を処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−73977(P2013−73977A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209963(P2011−209963)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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