説明

空間光変調素子および投射型表示装置

【課題】寄生容量増加による画質劣化や、TFT素子における逆電流の上昇という不具合の発生を抑制しつつ、遮光性能を向上させることの可能な空間光変調素子および投射型表示装置を提供する。
【解決手段】空間光変調素子は、走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層とを備えている。画素回路は、LDD領域を含むTFT素子を有している。フローティング遮光層は、少なくともLDD領域との対向領域に配置されるとともに、信号線よりもLDD領域に近接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、耐光性能の改善された空間光変調素子およびそれを備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスだけでなく、家庭でも、スクリーンに映像を投影するプロジェクタが広く利用されている。プロジェクタは、光源からの光をライトバルブで変調することにより画像光を生成し、スクリーンに投射して表示を行うものである。ライトバルブは、液晶パネルで構成されており、各画素が外部からの映像信号に応じてアクティブマトリクス駆動されることにより、光を変調するようになっている。
【0003】
近年、プロジェクタの高輝度化が進んでおり、ライトバルブとして用いられる液晶パネルの耐光性能の更なる向上が求められている。液晶パネルにおける耐光性能の向上において、画素回路に含まれるTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)素子に光源からの光が照射されるのを遮る遮光構造の性能の高さが非常に重要である。例えば、図10に模式的に示したように、回路基板210において、TFT素子のLDD領域220の直上に、信号線230や、蓄積容量240が配置されており、これら信号線230および蓄積容量240が遮光構造としての役割も有している。なお、図10に関連する内容が、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO01/082273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プロジェクタ投影時には、光源からの光は直進成分のみならず、斜め成分も含んでいる。そのため、遮光構造は、LDD領域220にできるだけ近接して配置されていることが好ましい。しかし、信号線230には、映像信号に対応した信号電圧が印加されるので、信号線230がLDD領域220に近づくと、その信号電圧の影響で、寄生容量増加による画質劣化や、TFT素子における逆電流の上昇という不具合が発生してしまう。そのため、遮光構造をLDD領域220に単純に近づけることができないという問題があった。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述の不具合の発生を抑制しつつ、遮光性能を向上させることの可能な空間光変調素子およびそれを備えた投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の空間光変調素子は、走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層とを備えている。画素回路は、LDD(Lightly Doped Drain)領域を含むTFT(Thin Film Transistor)素子を有している。フローティング遮光層は、少なくともLDD領域との対向領域に配置されるとともに、信号線よりもLDD領域に近接して配置されている。
【0008】
本技術の投射型表示装置は、上記の空間光変調素子と、上記の空間光変調素子を駆動する駆動回路とを備えている。
【0009】
本技術の空間光変調素子および投射型表示装置では、フローティング遮光層が、少なくともLDD領域との対向領域に配置されるとともに、信号線よりもLDD領域に近接して配置されている。これにより、直進成分だけでなく、斜め成分の光のLDD領域への入射が、フローティング遮光層によって妨げられる。さらに、フローティング遮光層は、電気的にフローティングとなっているので、信号線をLDD領域に近接させたときのような、寄生容量増加による画質劣化や、TFT素子における逆電流の上昇という不具合の発生はない。また、フローティング遮光層が、LDD領域と、信号線との間に配置されている場合には、信号電圧によって生成された電界のLDD領域への到達がフローティング遮光層によって妨げられる。
【発明の効果】
【0010】
本技術の空間光変調素子および投射型表示装置によれば、フローティング遮光層を、少なくともLDD領域との対向領域に配置するとともに、信号線よりもLDD領域に近接して配置するようにしたので、上述の不具合の発生を抑制しつつ、遮光性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本技術の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す図である。
【図2】空間光変調部の構成の一例を表す図である。
【図3】画素の回路構成の一例を表す図である。
【図4】画素およびその近傍の断面構成の一例を表す図である。
【図5】遮光層の有無によるフリッカ値の変化について説明するための特性図である。
【図6】遮光層の有無による逆電流の変化について説明するための特性図である。
【図7】遮光層の有無および遮光層の電位による黒欠陥レベルの変化について説明するための特性図である。
【図8】遮光層の有無および遮光層の電位によるフリッカ値の変化について説明するための特性図である。
【図9】遮光層の有無および遮光層の電位による逆電流の変化について説明するための特性図である。
【図10】従来の回路基板の断面構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態
2.変形例
3.実施例
【0013】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本技術の一実施の形態に係るプロジェクタ100の全体構成の一例を表したものである。プロジェクタ100は、「投射型表示装置」の一具体例に相当する。プロジェクタ100は、例えば、図示しない情報処理装置の画面に表示されている画像をスクリーン200上に投影するものである。
【0014】
プロジェクタ100は、例えば、3板式の透過型プロジェクタであり、例えば、発光部110、光路分岐部120、空間光変調部130、合成部140および投影部150を有している。
【0015】
発光部110は、空間光変調部130の被照射面を照射する光束を供給するものであり、例えば、白色光源のランプと、そのランプの背後に形成された反射鏡とを含んで構成されている。この発光部110は、必要に応じて、ランプの光111が通過する領域(光軸AX上)に、何らかの光学素子を有していてもよい。例えば、ランプの光軸AX上に、ランプからの光111のうち可視光以外の光を減光するフィルタと、空間光変調部130の被照射面上の照度分布を均一にするオプティカルインテグレータとをランプ側からこの順に設けることが可能である。
【0016】
光路分岐部120は、発光部110から出力された光111を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離して、各色光を空間光変調部130の被照射面に導くものである。光路分岐部120は、例えば、図1に示したように、1つのクロスミラー121と、2つのミラー122と、2つのミラー123とを含んで構成されている。クロスミラー121は、発光部110から出力された光111を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離する共に各色光の光路を分岐するものである。クロスミラー121は、例えば、光軸AX上に配置されており、互いに異なる波長選択性を持つ2枚のミラーを互いに交差させて連結して構成されている。ミラー122,123は、クロスミラー121により光路分岐された色光(図1では赤色光111R,青色光111B)を反射するものであり、光軸AXとは異なる場所に配置されている。ミラー122は、クロスミラー121に含まれる一のミラーによって光軸AXと交差する一の方向に反射された光(図1では赤色光111R)を空間光変調部130R(後述)の被照射面に導くように配置されている。ミラー123は、クロスミラー121に含まれる他のミラーによって光軸AXと交差する他の方向に反射された光(図1では青色光111B)を空間光変調部130B(後述)の被照射面に導くように配置されている。発光部110から出力された光111のうちクロスミラー121を透過して光軸AX上を通過する光(図1では緑色光111G)は、光軸AX上に配置された空間光変調部130G(後述)の被照射面に入射するようになっている。
【0017】
空間光変調部130は、図示しない情報処理装置から入力された映像信号Dinに応じて、複数の色光を色光ごとに変調して色光ごとに変調光を生成するものである。この空間光変調部130は、例えば、赤色光111Rを変調する空間光変調部130Rと、緑色光111Gを変調する空間光変調部130Gと、青色光111Bを変調する空間光変調部130Bとを含んでいる。
【0018】
空間光変調部130Rは、合成部140の一の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Rは、入射した赤色光111Rを映像信号Dinに基づいて変調して赤画像光112Rを生成し、この赤画像光112Rを空間光変調部130Rの背後にある合成部140の一の面に出力するようになっている。空間光変調部130Gは、合成部140の他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Gは、入射した緑色光111Gを映像信号Dinに基づいて変調して緑画像光112Gを生成し、この緑画像光112Gを空間光変調部130Rの背後にある合成部140の他の面に出力するようになっている。空間光変調部130Bは、合成部140のその他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Bは、入射した青色光111Bを映像信号Dinに基づいて変調して青画像光112Bを生成し、この青画像光112Bを空間光変調部130Rの背後にある合成部140のその他の面に出力するようになっている。
【0019】
合成部140は、複数の変調光を合成して画像光を生成するものである。この合成部140は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、4つのプリズムを接合して構成されたクロスプリズムである。これらのプリズムの接合面には、例えば、多層干渉膜等により、互いに異なる波長選択性を持つ2つの選択反射面が形成されている。一の選択反射面は、例えば、空間光変調部130Rから出力された赤画像光112Rを光軸AXと平行な方向に反射して投影部150の方向に導くようになっている。また、他の選択反射面は、例えば、空間光変調部130Bから出力された青画像光112Bを光軸AXと平行な方向に反射して投影部150の方向に導くようになっている。また、空間光変調部130Gから出力された緑画像光112Gは、2つの選択反射面を透過して、投影部150の方向に進むようになっている。結局、合成部140は、空間光変調部130R,130G,130Bによってそれぞれ生成された画像光を合成して画像光113を生成し、生成した画像光113を投影部150に出力するように機能する。
【0020】
投影部150は、合成部140から出力された画像光113をスクリーン200上に投影して画像を表示させるものである。この投影部150は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、投影レンズによって構成されている。
【0021】
図2は、図1の空間光変調部130R,130G,130Bの全体構成の一例を表したものである。空間光変調部130R,130G,130Bは、例えば、液晶パネル10と、液晶パネル10を駆動する駆動回路30とを備えたものである。駆動回路30は、表示制御部31と、データドライバ32と、ゲートドライバ33とを有している。なお、液晶パネル10が、「空間光変調素子」の一具体例に相当する。また、駆動回路30が、「駆動回路」の一具体例に相当する。
【0022】
液晶パネル10は、複数の画素11が表示領域全体に渡ってマトリクス状に形成されたものである。液晶パネル10は、各画素11をデータドライバ32およびゲートドライバ33によってアクティブ駆動することにより、外部から入力された映像信号Dinに基づく画像を表示するものである。
【0023】
液晶パネル10は、行方向に延在する複数の走査線WSLと、列方向に延在する複数の信号線DTLと、行方向に延在する複数の共通接続線COMとを有している。信号線DTLと走査線WSLとの交差部分に対応して、画素11が設けられている(図3)。各信号線DTLは、データドライバ32の出力端(図示せず)に接続されている。各走査線WSLは、ゲートドライバ33の出力端(図示せず)に接続されている。各共通接続線COMは、例えば、固定の電位を出力する回路の出力端(図示せず)に接続されている。
【0024】
表示制御部31は、例えば、供給される映像信号Dinを1画面ごと(1フレームの表示ごと)にフレームメモリに格納して保持するものである。表示制御部31は、また、例えば、液晶パネル10を駆動するデータドライバ32およびゲートドライバ33が連動して動作するように制御する機能を有している。具体的には、表示制御部31は、例えば、データドライバ32に走査タイミング制御信号を供給し、データドライバ32に、フレームメモリに保持されている画像信号に基づいた1水平ライン分の画像信号と表示タイミング制御信号を供給するようになっている。
【0025】
データドライバ32は、例えば、表示制御部31から供給される1水平ライン分の映像信号Dinを、各画素11に信号電圧として供給するものである。具体的には、データドライバ32は、例えば、映像信号Dinに対応する信号電圧を、ゲートドライバ33により選択された1水平ラインを構成する各画素11に、信号線DTLを介してそれぞれ供給するものである。
【0026】
ゲートドライバ33は、例えば、表示制御部31から供給される走査タイミング制御信号に応じて、駆動対象の画素11を選択する機能を有している。具体的には、ゲートドライバ33は、例えば、走査線WSLを介して、選択パルスを画素11のトランジスタ17のゲート(後述)に印加することにより、表示領域にマトリックス状に形成されている画素11のうちの1行を駆動対象として選択するようになっている。そして、これらの画素11では、データドライバ32から供給される信号電圧に応じて、1水平ラインの表示がなされる。このようにして、ゲートドライバ33は、例えば、時分割的に1水平ラインずつ順次走査を行い、表示領域全体にわたった表示を行うようになっている。
【0027】
次に、画素11の回路構成について説明する。図3は、画素11の回路構成例を表すものである。画素11は、液晶素子12と、液晶素子12を駆動する画素回路13とを有している。液晶素子12および画素回路13は、走査線WSLおよび信号線DTLの交差部分に対応して設けられている。液晶素子12は、液晶セル14と、液晶セル14を挟み込む画素電極15および共通電極16とにより構成されている。画素回路13は、液晶素子12に信号電圧を書き込むトランジスタ17と、液晶素子12に書き込んだ電圧を保持する蓄積容量18とにより構成されている。
【0028】
液晶セル14は、印加される電圧レベルにより液晶分子の配向が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にするものであり、例えば、ネマティック液晶からなる。画素電極15は、画素11ごとの電極として機能するものであり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料により構成されている。画素電極15は、トランジスタ17のドレインに接続されている。共通電極16は、各画素電極15と対向する領域全体に渡って形成されており、各画素11の共通電極として機能するものである。共通電極16は、共通接続線COMに接続されている。
【0029】
トランジスタ17は、電界効果型のTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)素子である。なお、トランジスタ17の内部構成については、後に詳述する。蓄積容量18は、画素電極15と共通電極16との間に保持された信号電圧がリークするのを防止するためのものであり、所定の間隙を介して互いに対向する一対の容量電極18A,18Bで構成されている。容量電極18Aは、トランジスタ17のドレインに接続されており、容量電極18Bは、共通接続線COMに接続されている。
【0030】
次に、液晶パネル10における画素11およびその周辺の断面構成について説明する。図4は、液晶パネル10における画素11およびその近傍の断面構成例を表すものである。液晶パネル10は、TFT基板40と、対向基板50と、これらの基板に挟まれた液晶層60とを含んで構成されている。液晶層60は、例えば、ネマティック液晶からなり、液晶層60のうち画素電極15と対向する部位が上述の液晶セル14に対応している。
【0031】
TFT基板40は、例えば、対向基板50とは反対側から順に、偏光板41、支持基板42、トランジスタ17、画素電極15および配向膜43を有している。TFT基板40は、さらに、走査線WSL、信号線DTL、共通接続線COM(図示せず)および遮光層44,45,46を有している。対向基板50は、例えば、画像光の射出面側から順に、偏光板51、支持基板52、共通電極16および配向膜53を有している。
【0032】
偏光板41,51は、例えばクロスニコル配置されたものであり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させるようになっている。配向膜43,53は、液晶層60に含まれる液晶分子を配向させるものである。遮光層45は、容量電極18Bの電位と同一の電位となっている層である。遮光層46は、容量電極18Aの電位と同一の電位となっている層である。なお、遮光層44については、後に詳述する。
【0033】
トランジスタ17は、TFT素子であり、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。トランジスタ17は、チャネル領域17Aと、チャネル領域17Aに電界を印加するゲート17Bと、チャネル領域17Aとゲート17Bとを互いに絶縁分離するゲート絶縁膜17Cとを有している。トランジスタ17は、また、チャネル領域17Aの両脇に設けられたLDD領域17Dと、LDD領域17Dのさらに外側に設けられたソース領域17Eおよびドレイン領域17Fとを有している。トランジスタ17において、ソース領域17Eが信号線DTLに接続され、ゲート17Bが走査線WSLに接続され、ドレイン領域17Fが画素電極15に接続されている。
【0034】
チャネル領域17A、LDD領域17D、ソース領域17Eおよびドレイン領域17Fは、ともに、例えば、同一層に形成されており、例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン、単結晶シリコンなどにより構成されている。ソース領域17Eおよびドレイン領域17Fには、例えばn型不純物などの不純物がドーピングされている。LDD領域17Dには、ソース領域17Eおよびドレイン領域17Fよりも不純物濃度が低くなるように、不純物がドーピングされている。
【0035】
信号線DTLは、トランジスタ17を含む層と、画素電極15を含む層との間に配置されている。信号線DTLは、少なくともLDD領域17Dの直上(対向領域)に配置されており、LDD領域17Dおよびチャネル領域17Aの直上(対向領域)に配置されている。信号線DTLは、例えば、LDD領域17Dとの対向領域を横切るように延在して形成されている。走査線WSLは、例えば、支持基板42と、トランジスタ17を含む層との間に配置されている。走査線WSLは、例えば、少なくともLDD領域17Dの直下(対向領域)に配置されており、例えば、LDD領域17Dおよびチャネル領域17Aの直下(対向領域)に配置されている。走査線WSLは、例えば、LDD領域17Dとの対向領域を横切るように延在して形成されている。遮光層45,46は、例えば、トランジスタ17を含む層と、信号線DTLを含む層との間に配置されている。遮光層45,46は、例えば、少なくともLDD領域17Dの直上(対向領域)に配置されており、例えば、LDD領域17Dおよびチャネル領域17Aの直上(対向領域)に配置されている。
【0036】
信号線DTLおよび遮光層45,46が、ともに、少なくともLDD領域17Dの直上(対向領域)に配置されていることが好ましく、LDD領域17Dおよびチャネル領域17Aの直上(対向領域)に配置されていることがより好ましい。
【0037】
次に、遮光層44について説明する。遮光層44は、遮光性材料で構成されており、かつ、電気的にフローティングしている。遮光層44は、「フローティング遮光層」の一具体例に相当する。遮光層44は、例えば、画素回路13ごとに1つずつ設けられている。なお、遮光層は、複数の画素回路13ごとに1つずつ設けられていてもよく、例えば、画素行ごとに1つずつ設けられていてもよい。
【0038】
遮光層44は、対向基板50側からの入射光が少なくともLDD領域17Dに侵入するのを遮るようになっており、好ましくは、対向基板50側からの入射光がLDD領域17Dおよびチャネル領域17Aに侵入するのを遮るようになっている。遮光層44は、LDD領域17Dを含む層と、信号線DTLを含む層との間に配置されている。遮光層44は、少なくともLDD領域17Dの直上に配置されており、好ましくはLDD領域17Dおよびチャネル領域17Aの直上に配置されている。
【0039】
[動作]
次に、表示装置1の動作の一例について説明する。表示装置1では、外部から入力された映像信号Dinに基づいて、1水平ライン分の映像信号Dinがデータドライバ32に供給されるとともに、データドライバ32およびゲートドライバ33にタイミング制御信号が供給される。そして、映像信号Dinに対応する信号電圧が信号線DTLに印加されるとともに、フレーム反転駆動が行われ、さらに、選択パルスが走査線WSLを介して画素11のトランジスタ17のゲートに印加される。これにより、選択された各画素11から、信号電圧に応じた輝度の光が発せられ、1水平ラインの表示がなされるとともに、ゲートドライバ33による順次走査により表示領域全体に渡った表示が行われる。
【0040】
[効果]
次に、空間光変調部130R,130G,130Bにおける遮光層44の効果について説明する。空間光変調部130R,130G,130Bでは、遮光層44が、少なくともLDD領域17Dとの対向領域に配置されるとともに、信号線DTLよりもLDD領域17Dに近接して配置されている。これにより、直進成分だけでなく、斜め成分の光のLDD領域17Dへの入射が、遮光層44によって妨げられる。さらに、遮光層44は、電気的にフローティングとなっているので、信号線DTLをLDD領域17Dに近接させたときのような、寄生容量増加による画質劣化や、トランジスタ17における逆電流の上昇という不具合の発生はない。また、遮光層44が、LDD領域17Dと、信号線DTLとの間に配置されている場合には、信号電圧によって生成された電界のLDD領域17Dへの到達が遮光層44によって妨げられる。従って、上述の不具合の発生を抑制しつつ、空間光変調部130R,130G,130Bの遮光性能を向上させることができる。
【0041】
<2.変形例>
上記実施の形態において、遮光層44が高抵抗の配線と接続されていてもよい。このような場合であっても、遮光層44を実質的にフローティングとみなすことができるからである。
【0042】
<3.実施例>
図5は、実施例および比較例に係る液晶パネルに光を照射したときのフリッカの計測結果を表すものである。フリッカ値が小さいほど、耐光性が高いことを意味している。実施例に係る液晶パネルでは、LDD領域17Dおよびチャネル17Aの直上に、遮光層44,45,46および信号線DTLが図4に示したように配置されている。一方、比較例に係る液晶パネルでは、LDD領域17Dおよびチャネル17Aの直上に、遮光層45,46および信号線DTLが配置されているが、遮光層44は配置されていない。図5から、LDD領域17Dおよびチャネル17Aの直上に遮光層44を設けることにより、フリッカを約6dBも改善することができたことがわかる。
【0043】
図6(A)は、実施例および比較例に係る液晶表示パネルに光を照射したときのI−V特性の計測結果を表すものである。図6(B)は、図6(A)において電圧が−7.5Vとなっているときの電流値を抜き出したものである。図6(A),(B)における実施例および比較例は、上記と同様の構成となっている。図6(A),(B)から、LDD領域17Dおよびチャネル17Aの直上に遮光層44を設けることにより、逆電流を約60%も改善することができたことがわかる。
【0044】
図7は、実施例および比較例に係る液晶パネルに光を照射したときの黒欠陥レベルの計測結果を表すものである。黒欠陥レベルとは、白階調に対応する信号電圧を入力したときに画素充電不足で白階調に到達しない度合いを表したものである。黒欠陥レベルが高いほど、画素充電不足が著しいことを示している。遮光層44が設けられていないもの(比較例1)と、遮光層44と同一の位置に設けた遮光層に、共通接続線COMの電位と同一の電位(共通電位)が印加されているもの(比較例2)と、フローティングの遮光層44を設けたもの(実施例)を用意した。図7から、遮光層をフローティングすることにより、LDD領域17Dに遮光層を近接させたとしても、黒欠陥レベルを低く抑えることができたことがわかる。
【0045】
図8は、実施例および比較例に係る液晶パネルに光を照射したときのフリッカ値の計測結果を表すものである。図7のときと同様、比較例1、比較例2および実施例に係る液晶パネルを用意した。図8から、遮光層の電位に拘わらず、LDD領域17Dに遮光層を近接させることで、フリッカ値を低く抑えることができたことがわかる。
【0046】
図9(A)は、実施例および比較例に係る液晶パネルに光を照射したときのI−V特性の計測結果を表すものである。図9(B)は、図9(A)において電圧が−7.5Vとなっているときの電流値を抜き出したものである。図7のときと同様、比較例1、比較例2および実施例に係る液晶パネルを用意した。図9(A),(B)から、遮光層を共通電位にすることが逆電流の抑制に最も効果があったが、遮光層をフローティングにした場合であっても、遮光層が設けられていない場合よりも約60%も改善することができたことがわかる。
【0047】
以上のことから、遮光層をフローティングにすることにより、フリッカ値、逆電流値および黒欠陥レベルのいずれも、低く抑えることができたことがわかる。
【0048】
また、例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、
前記画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層と
を備え、
前記画素回路は、LDD(Lightly Doped Drain)領域を含むTFT(Thin Film Transistor)素子を有し、
前記フローティング遮光層は、少なくとも前記LDD領域との対向領域に配置されるとともに、前記信号線よりも前記LDD領域に近接して配置されている
空間光変調素子。
(2)
前記TFT素子は、チャネル領域を含み、
前記フローティング遮光層は、前記LDD領域だけでなく、前記チャネル領域との対向領域にも配置されている
(1)に記載の空間光変調素子。
(3)
前記信号線は、前記LDD領域との対向領域を横切るように延在して形成されている
(1)または(2)に記載の空間光変調素子。
(4)
前記走査線は、前記LDD領域との対向領域を横切るように延在して形成されている
(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の空間光変調素子。
(5)
照明光学系と、
入力された映像信号に基づいて前記照明光学系からの光を変調することにより、画像光を生成する空間光変調素子と、
前記空間光変調素子で生成された画像光を投射する投影光学系と
を備え、
前記空間光変調素子は、
走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、
前記画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層と
を有し、
前記画素回路は、LDD(Lightly Doped Drain)領域を含むTFT(Thin Film Transistor)素子を有し、
前記フローティング遮光層は、少なくとも前記LDD領域との対向領域に配置されるとともに、前記信号線よりも前記LDD領域に近接して配置されている
投射型表示装置。
【符号の説明】
【0049】
10…液晶パネル、11…画素、12…液晶素子、13…画素回路、14…液晶セル、15…画素電極、16…共通電極、17…トランジスタ、17A…チャネル、17B…ゲート、17C…ゲート絶縁膜、17D…LDD領域、17E…ソース領域、18…蓄積容量、18A,18B…容量電極、30…駆動回路、31…表示制御部、32…データドライバ、33…ゲートドライバ、40…TFT基板、41,51…偏光板、42,52…支持基板、43,53…配向膜、44,45,46…遮光層、50…対向基板、60…液晶層、100…プロジェクタ、110…発光部、111…光、111R…赤色光、111G…緑色光、111B…青色光、112R…赤画像光、112G…緑画像光、112B…青画像光、120…光路分岐部、121…クロスミラー、122,123…ミラー、130,130R,130G,130B…空間光変調部、140…合成部、150…投影部、200…スクリーン、AX…光軸、COM…共通接続線、Din…映像信号、DTL…信号線、WSL…走査線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、
前記画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層と
を備え、
前記画素回路は、LDD(Lightly Doped Drain)領域を含むTFT(Thin Film Transistor)素子を有し、
前記フローティング遮光層は、少なくとも前記LDD領域との対向領域に配置されるとともに、前記信号線よりも前記LDD領域に近接して配置されている
空間光変調素子。
【請求項2】
前記TFT素子は、チャネル領域を含み、
前記フローティング遮光層は、前記LDD領域だけでなく、前記チャネル領域との対向領域にも配置されている
請求項1に記載の空間光変調素子。
【請求項3】
前記信号線は、前記LDD領域との対向領域を横切るように延在して形成されている
請求項1に記載の空間光変調素子。
【請求項4】
前記走査線は、前記LDD領域との対向領域を横切るように延在して形成されている
請求項3に記載の空間光変調素子。
【請求項5】
空間光変調素子と、
前記空間光変調素子を駆動する駆動回路と
を備え、
前記空間光変調素子は、
走査線および信号線の交差部分に対応して設けられた複数の画素回路と、
前記画素回路に対応して設けられたフローティング遮光層と
を有し、
前記画素回路は、LDD(Lightly Doped Drain)領域を含むTFT(Thin Film Transistor)素子を有し、
前記フローティング遮光層は、少なくとも前記LDD領域との対向領域に配置されるとともに、前記信号線よりも前記LDD領域に近接して配置されている
投影型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−57823(P2013−57823A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196398(P2011−196398)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】