説明

空間的に変化する磁化によるマルチパクティングの減少

本発明は、内部に真空を形成するのに適する筐体(10)と、RFまたはマイクロ波電磁場が前記真空内に形成されるときにマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段とを備える装置を開示する。該装置において、マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段は、前記筐体の内面の少なくとも一部の近傍に局所的に変化する磁場(16)を受動的に形成するための手段(12)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に真空を形成するのに適する筐体と、RFまたはマイクロ波電磁場が前記真空内に形成されるときにマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段とを備える装置に関する。また、本発明は、そのような装置を形成する方法、および、真空筐体内でマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチパクトリングとも呼ばれるマルチパクティングは、RF場またはマイクロ波(MW)場が印加される真空中での共鳴電子増倍の現象である。マルチパクティングは、RFまたはMW場中の電子が同期して振動して筐体の電極または他の表面に衝突する際に電子の二次放出をもたらすときに起こる。二次電子収率(SEY)、すなわち、電子が衝突する際に表面によって放出される電子の平均数が1よりも大きい場合、電子の数が常に増大して電子雪崩を形成し、それにより、著しい電力損失および筐体壁の加熱がもたらされる。したがって、マルチパクティングに起因して、入射電力を引き上げることによりキャビティ磁場を増大させることが難しくなる。超電導構造では、マルチパクティングに起因する温度の大きな上昇が熱的破壊をもたらす可能性がある。また、マルチパクティング電子の大きな衝撃が電力供給ラインのセラミック窓を破壊する場合さえある。これらの問題に起因して、真空RFまたはMWデバイスにおいてマルチパクティングを抑制することが強く望まれる。
【0003】
原理的に、マルチパクティングは、真空の筐体内またはキャビティ内でかなりのマイクロ波またはRF電力が使用される任意のデバイスまたは装置で起こり得る。具体的には、マルチパクティングは、マイクロ波フィルタおよび導波管などの衛星のマイクロ波デバイスにおける深刻な問題であることが知られている。衛星または他の宇宙用途に関して、マルチパクティングに起因する電力損失および電力制限は、明白な理由により電力供給が宇宙空間内で厳しく制限されるため、極めて不都合である。しかしながら、マルチパクティングは、医療放射線治療デバイスで使用される線形粒子加速器または物理学もしくは材料科学で使用される加速器などの粒子加速器の動作に悪影響も及ぼす。
【0004】
従来において、望ましくないマルチパクティング効果を抑制するための異なる手法が知られている。マルチパクティングは本質的に電子共鳴効果であるため、1つの手法では、使用されるべき高周波電場の共鳴を回避するように磁場筐体またはキャビティを形成しようとする。例えば、2つの対向する電極間の電子ランタイムが磁場の周期の半分の奇数倍となる場合、電子は、電極間で正味加速度を取得し、それにより電子雪崩を形成できる。そのため、マルチパクティングを抑制するための1つの手法は、そのような共鳴をもたらすキャビティ形状と駆動場との組み合わせを回避することである。しかしながら、これは、様々な想定し得るデバイス構造および印加可能な電磁場を大きく制限し、したがって、デバイスの構造にとって望ましくない制限である。
【0005】
マルチパクティングを抑制するための第2の手法はかなり微視的な手法である。すなわち、前述したように、マルチパクティング効果は、二次電子収率(SEY)が1よりも大きいときに起こる。したがって、SEYを減少させることができる場合には、マルチパクティングを効果的に抑制できまたは大きく減少させることができる。窒化チタンなどの特別な表面コーティングを使用することによりSEYを減少させる試みがなされてきた。しかしながら、そのようなコーティング技術は、それらがRFまたはマイクロ波損失を増大させる傾向があるという問題を有する。また、ある場合には、コーティングが経時的に安定せず、特にコーティングが一時的に空気に晒されるときに安定しない。
【0006】
SEYを下げるための更なる微視的手法は、筐体の内面の人工的な微視的粗面化に基づく。表面粗さは、表面から解放される二次電子が実際に逃げることができる可能性を減らすため、一種の局所的電子トラップとして作用する。粗い表面構造に起因して、解放された二次電子が再び表面の突出部によって直ちに捕捉される場合があり、そのため、表面粗さは電子雪崩の形成に寄与しない。人工的な表面粗面化は、実際に、SEYを減少させることができることが分かってきたが、残念ながら、マイクロ波損失およびRF損失をかなり増大させ、そのため、特に衛星または宇宙開発技術における用途に関して一般に不都合である。
【0007】
したがって、マルチパクティングを少なくとも部分的に抑制するための手段を有する装置、そのような装置を形成するための方法、および、マルチパクティングを抑制するための方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、請求項1に係る装置、請求項15に係るそのような装置を形成する方法、および、請求項18に規定されるマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制する方法によって、従来技術の前述した欠点を克服する。より好ましい実施形態が従属請求項において明示される。
【0009】
本発明によれば、マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段は、筐体の内面の少なくとも一部の近傍に局所的に変化する磁場を受動的に形成するための手段を備える。磁場の変化の長さスケールが適切に小さく選択される場合には、あるいは、言い換えると、磁場変化の空間周波数が十分に高い場合には、局所的に変化する磁場により、筐体の表面から解放される二次電子が屈曲線に沿って押し進められてそれを出た直後に表面に再び入る。簡単に言えば、そのような二次電子の少なくとも一部は、局所的に変化する磁場によって“捕捉され”、そのため、SEYに寄与しない。したがって、局所的に変化する磁場に起因して、SEYを劇的に減少させることができ、それにより、マルチパクティングを確実に抑制できる。
【0010】
なお、局所的に変化する磁場を“磁気粗さ”と見なすことができると同時に、筐体の内面が構造的に滑らかであってもよく、それにより、構造的に粗い表面を使用する際に直面する電力損失の問題が回避される。したがって、本発明は、RF場またはMW場の大きな電力損失によって賄う必要なくマルチパクティングを抑制できる。
【0011】
1つの好ましい実施形態おいて、マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段は、局所的に変化する磁場を形成するように静的に磁化される強磁性体の層を備える。これは、局所的に変化する磁場を“受動的に”形成する1つの例である。なぜなら、例えばクレジットカード等の磁気ストライプ上に書き込むことで知られている通常の書き込みヘッドを使用して強磁性体を局所的に1回磁化しさえすればよく、磁化がその後に維持されるからである。
【0012】
原理的に、任意の強磁性体を使用できるが、動作中に静磁化が維持されるように任意の強磁性体が十分な残留磁気および十分に高いキュリー温度を有する場合に限る。
【0013】
強磁性体の有利な例がニッケルである。例えば、衛星で現在使用されているマイクロ波キャビティまたはフィルタにおいて、キャビティは、しばしば、ニッケル層とキャビティの内面を形成する銀層などの更なる導電層とによって覆われるアルミニウム壁により形成される。そのような用途において、ニッケル層は、それがキャリア(例えばアルミニウムハウジング)と導電コーティング(例えば銀層)との間に良好な接着をもたらすという効果を有する。すなわち、多くの用途では、いずれにせよ、完全に異なる目的のためでも、適切な中間ニッケル層が存在する。好ましい実施形態では、局所的に変化する磁化によりこの中間ニッケル層を静的に磁化することができ、それにより、既存の装置の最小限の変更だけでマルチパクティングを抑制できる。
【0014】
SEYの効果的な抑制をもたらすため、磁場が、少なくとも1つの面内寸法において、すなわち、筐体の表面と平行な寸法において、300μm未満、好ましくは70μm未満、最も好ましくは40μm未満の長さスケールで局所的に変化することが好ましい。静的に磁化される強磁性体の層によって局所的に変化する磁場が形成される場合、このことは、この層が少なくとも1つの隣り合う領域とは異なる磁化を有する領域から少なくとも部分的に成ることを意味し、この場合、少なくとも1つの面内寸法における前記領域の平均サイズは、300μm未満、好ましくは70μm未満、最も好ましくは40μm未満である。磁気パターンは、磁気テープまたは磁気ストライプにおいて従来から形成される磁化パターンに類似する10〜30μmの程度で空間内においてかなり急速に変化し得る。
【0015】
強磁性体層は、アルミニウム層上に形成されるとともに、導電層、例えば銀によって覆われることが好ましい。好ましい実施形態では、強磁性体層および/またはその上端に形成される導電層の厚さが5μm〜30μm、より好ましくは7μm〜15μmである。強磁性体層は強磁性体の幾つかの層から成ってもよい。
【0016】
好ましい実施形態では、装置が衛星の構成要素、例えば導波管またはマイクロ波フィルタである。しかし、装置は、通常の導電キャビティ、または、通常の導電または超導電キャビティにおける通常の導電RFカプラであってもよい。
【0017】
別の実施形態において、装置は、巨視的磁場を印加するための手段を備えるとともに、巨視的磁場を局所的に変調するように前記筐体の内面の近傍に配置された強磁性体の不均一な分布を備える。例えば、巨視的磁場は、例えば加速器構造で使用される偏向磁石によって形成される半均一磁場であってもよい。用語“半均一”は、この巨視的磁場が少なくとも磁性体の不均一分布の長さスケールで均一であることを示す。この場合、微視的磁場は、その不均一な分布にしたがって強磁性体により局所的に変調され、この場合も同様に局所的にまたは空間的に変化する磁場を得ることができる。この場合、強磁性体は、低い残留磁気を有する軟磁性材料であることが好ましく、それにより、巨視的磁場がOFFに切り換えられれば、磁化が消失する。
【0018】
強磁性体の微細構造は、ミリメートル未満の長さスケールであることが同様に好ましく、100μm未満または更には40μm未満であってもよい。強磁性体の分布が微視的にのみ変化する場合、巨視的磁場は、影響を受けずまたは容易に補償され得る均一な構成要素によってのみ影響される。言い換えると、筐体表面の近傍の局所的に変化する磁場の影響は顕著ではなくまたは少なくとも表面から少し離れて補償でき、そのため、装置の機能がそれにより影響されない。量的には、強磁性体の不均一な分布は、磁場強度の変調の振幅が筐体の中心部で15%未満、好ましくは1%未満まで低下するように選択されるのが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態において、強磁性体の不均一な分布は、メッシュ、格子(sewer)、または、セル状の構造などの強磁性体のパターン化された層によって形成できる。そのような構造は、容易に製造できるだけでなく、均一な巨視的分布を与えつつ、急速に変化する巨視的な強磁性体分布の形成を可能にし、それにより、強磁性体の正味の効果は、筐体表面の近傍から十分に離れる場合には均一な更なる磁場の効果であり、その後に容易に補償され得る。したがって、筐体内の電磁場は全ての実用的目的のために乱されない。
【0020】
先と同様に、構造を形成するセルは、少なくとも1つの面内寸法において1mm未満、好ましくは100μm未満、最も好ましくは40μm未満程度になり得る。
【0021】
微視的磁場を変調するための強磁性体の不均一な分布を伴うそのような実施形態は、放射線治療装置など医療技術または物理学用途または材料科学用途で使用されるような粒子加速器で用いるのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するのに適する層構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の原理の理解を促すため、ここで、図面に示される好ましい実施形態について言及するとともに、該実施形態を説明するために特定の言葉が使用される。それでもなお、これによって本発明の範囲の限定が意図されないことは言うまでもなく、図示の装置および/または方法におけるそのような変更および更なる改良、並びに、図示の発明の原理のそのような更なる用途は、本発明が関連する技術の当業者が現在または将来において普通に想起できるものと考えられる。
【0024】
図1には、本発明の1つの実施形態で使用され得る層構造の概略断面図が示されている。図1に見られるように、層は、内部に真空を形成するのに適する筐体の支持材料またはケースであってもよい下端層10を備える。例えば、層10は、マイクロ波ガイド、加速キャビティ、または、マイクロ波フィルタ構造の一部であってもよい。下端層10上には、強磁性体、本実施例ではニッケルから成る中間層12が形成される。強磁性体中間層12上には、例えば銅または銀から成る導電層14が形成される。
【0025】
導電層14および強磁性体層12はいずれも10μm程度の厚さを有する。図1に示される層構造は、それ自体、例えば、層の良好な接着をもたらすためにアルミニウムキャリア層と銀導電層との間に中間ニッケル層が配置されたマイクロ波フィルタデバイスから知られる。
【0026】
しかしながら、本発明によれば、強磁性体層12が例えば磁化領域12a〜12hを形成するように局所的に磁化される。この場合、隣り合う領域は、図1に磁力線16によって示されるように異なる磁化を有する。
【0027】
磁化領域12a〜12hは10μm〜30μm幅であってもよく、それにより、空間的に急速に変化する磁気パターンがもたらされる。そのような磁気パターンは、クレジットカード等において使用される磁気テープまたは磁気ストライプ上に書き込むために使用される通常の磁気書き込み技術を使用して容易に得ることができる。
【0028】
導電層14が筐体の内面を形成する真空筐体の壁で図1に示される構造が使用されると、RF場またはマイクロ波場を印加する際のマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制できる。すなわち、電子が導電層14に衝突して二次電子を解放する場合には、磁場16に起因して、この電子が、容易に逃げることができずに、湾曲経路上に押し進められて、導電層14内に再び入る可能性が高い。このように、二次電子収率(SEY)が効果的に下げられる。実際に、局所的に変化する磁場16に起因して、電子雪崩が形成されないような程度、すなわち、マルチパクティングが完全に抑制されるような程度まで実際にSEYを低下させることができる。
【0029】
導電層14の厚さは、好ましくは作動周波数で5またはそれ以上の表皮深さに対応するように選択される。このことは、強磁性体層12が導電層14によってRFまたはMW場からシールドされることを意味する。また、導電層14の上面は好ましくは滑らかであり、それにより、人工的に粗面化された表面を使用するときに直面する電力損失が回避される。このように、本発明は、大きな電力損失を伴うことなくマルチパクティングを回避することができ、それにより、例えば衛星または他の宇宙用途における場合など、電力供給が制限される場合にこの発明が特に魅力的となる。
【0030】
空間的にまたは局所的に変化する磁場16は、受動的手段によって、すなわち、急速に変化する磁化パターンを伴う強磁性体層12の静磁化によって形成される。しかしながら、局所的に磁化する強磁性体層、例えば図1の層12の代わりに、別の実施形態では、巨視的磁場または外部磁場に晒される強磁性体の局所的に変化する分布を与えることも可能である。すなわち、例えば加速器構造の偏向磁石によって巨視的磁場が印加される場合、強磁性体は、磁場を局所的に高め、それにより、局所的に変化する磁場ももたらす。好ましい実施形態(図示せず)において、強磁性体の分布は、微視的長さスケールでは不均一であるが、巨視的長さスケールでは均一であり、そのため、空間的に急速に変化する磁場を導電層の表面に近接させることができ、それにより、表面から離れるにつれて益々均一になる。このように、筐体の中心部における強磁性体の分布によって引き起こされる正味磁場は、消えゆく磁場または少なくとも均一な磁場であり、例えば外部電磁コイル中の電流を調整することによって容易に補償することができる。
【0031】
強磁性体の適切な分布は、例えば、格子状またはメッシュ状の強磁性体層を使用することによって得ることができる。この場合、強磁性体の分布は微視的スケールで(すなわち、メッシュとホールとの間で)急速に変化するが、強磁性体の全体の巨視的分布は依然として均一である。
【0032】
強磁性体の不均一な微視的分布を使用するこの別の実施形態は、局所的に変化する磁場を“受動的に”形成する方法でもある。この第2の実施形態は、粒子経路を偏向するために偏向磁石を使用する粒子加速器構造で用いるのに特に適する。
【0033】
先の説明から分かるように、両方の実施形態では、更なる構造的労力を最小限に抑えて、SEY、したがってマルチパクティングを効率的に抑制することができる。特に、図1に示された第1の実施形態は、極めて簡単で費用効率が高いとともに、既存の解決策のRF電力損失増大または長期安定性の問題のような欠点を示すことなく衛星のペイロードのための厳しい要件の全てと適合する。
【0034】
明細書の先の説明では、2つの好ましい典型的な実施形態が詳しく示されて特定されるが、これらは、単なる典型例として見なされるべきであり、本発明を限定するものと見なされるべきではない。なお、この点で、好ましい典型的な実施形態が示されて特定されているにすぎず、現在または将来において本発明の保護のこの範囲内に入る全ての変形および改良が保護されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に真空を形成するのに適する筐体と、RFまたはマイクロ波電磁場が前記真空内に形成されるときにマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための手段とを備える装置であって、マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための前記手段は、前記筐体の内面の少なくとも一部の近傍に局所的に変化する磁場を受動的に形成するための手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
マルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制するための前記手段は、局所的に変化する磁場(16)を形成するように静的に磁化される強磁性体の層(12)を備える請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記層は、少なくとも一部が、少なくとも1つの隣り合う領域とは異なる磁化を有する領域(12a〜12h)から成り、少なくとも1つの面内寸法における前記領域(12a〜12h)の平均サイズは、300μm未満、好ましくは70μm未満、最も好ましくは40μm未満である請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記強磁性体層(12)の主要な構成要素がニッケルである請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
前記強磁性体層(12)は、前記筐体の内面の少なくとも一部を形成する導電層(14)によって覆われる請求項2乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記導電層(14)の少なくとも主要な構成要素が銀である請求項5記載の装置。
【請求項7】
強磁性体層(12)および/またはその上端に形成される導電層(14)の厚さが5μm〜30μm、好ましくは7μm〜15μmである請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記強磁性体層(12)がアルミニウム層(10)上に形成される請求項2乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が衛星の構成要素、特に導波管またはマイクロ波フィルタである請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
装置は、巨視的磁場を印加するための手段を備えるとともに、微視的磁場を局所的に変調するように前記筐体の内面の近傍に配置された強磁性体の不均一な分布を備える請求項1記載の装置。
【請求項11】
不均一な分布は、磁場強度の変調振幅の大きさが筐体の中心部で15%未満、好ましくは1%未満まで低下するようになっている請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記不均一な分布が強磁性体のパターン化された層によって形成される請求項10または11記載の装置。
【請求項13】
前記パターン化された層は、少なくとも1つの面内寸法におけるセルのサイズが1mm未満、好ましくは100μm未満、最も好ましくは40μm未満であるメッシュ、格子、または、セル状の構造を有する請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記装置が粒子加速器である請求項10乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
マルチパクティング効果が少なくとも部分的に抑制される装置を形成する方法であって、
真空まで真空引きされ得る筐体を設けるステップと、
前記筐体の内面の少なくとも一部の近傍に局所的に変化する磁場を受動的に形成するための手段を設けるステップと、
を備え、
局所的に変化する磁場を受動的に形成するための手段を設ける前記ステップは、前記筐体の内面の近傍に強磁性体層(12)を設けて、局所的に変化するパターンにしたがって強磁性体層を磁化するステップを備える、方法。
【請求項16】
少なくとも1つの面内寸法における局所的に変化するパターンは、300μm未満、好ましくは70μm未満、最も好ましくは40μm未満の長さスケールで変化する請求項15記載の方法。
【請求項17】
強磁性体層(12)を磁化するステップが磁気書き込みヘッドを使用して行われる請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
RFまたはマイクロ波電磁場が内部に形成される真空筐体内でマルチパクティング効果を少なくとも部分的に抑制する方法であって、局所的に変化する磁場が前記筐体の内面の少なくとも一部の近傍に与えられることを特徴とする方法。
【請求項19】
局所的に変化する磁場は、そのような局所的に変化する磁場を形成するように静的に磁化される強磁性体の層を設けることにより与えられるに請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記強磁性体層は、少なくとも1つの面内寸法において300μm未満、好ましくは70μm未満、最も好ましくは40μm未満の長さスケールで変化する局所的に変化するパターンにしたがって磁化される請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記局所的に変化する磁場は、巨視的磁場を局所的に変調するように前記筐体の内面の近傍に配置された強磁性体の不均一な分布によって与えられる請求項18記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−506605(P2012−506605A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532499(P2011−532499)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008934
【国際公開番号】WO2010/045955
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(501008912)
【氏名又は名称原語表記】European Organization for Nuclear Research
【住所又は居所原語表記】Geneva 23,Switzerland
【Fターム(参考)】