説明

空間的広がりがある多次元クロマトグラフにおける検出

【課題】三次元成分検出を容易に実行可能とする、単純化され、よりコンパクトな三次元クロマトグラフ方法を提供する。
【解決手段】三次元分離体の内部の成分を検出するか、または当該成分が三次元分離体から表出する時までに境界面で成分を検出する三次元クロマトグラフ検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動相に含まれる成分を分離するように当該移動相が分離体を通過するクロマトグラフ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ方法は、米国特許第4469601号(特許文献1)から知られている。当該クロマトグラフ方法は、最初に、溶液成分の二次元分離を提供する。そのような分離の進行は二次元プレート上で実行される。この二次元の分離進行の後、プレートが乾燥される。その後、プレートは立方形の分離体に対して配置される。移動相は、プレートを介して当該立方形の分離体に垂直に導入され、それまでプレートに結合されていた成分が三次元の方向に分離される。
【0003】
この方法は、欧州特許第0 060 709号からも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4469601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のクロマトグラフ方法は複雑であり、時間のかかる処理を必要とし、そのうえ三次元での成分検出が困難である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に三次元での成分検出を容易に実行可能とする、単純化され、よりコンパクトな三次元クロマトグラフ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1で定義されたクロマトグラフ方法により達成される。
【0008】
本発明は、簡略化された三次元クロマトグラフ方法が、空間の3方向において個々の成分を連続的に分離するために、(好ましくは一体の)三次元分離体が使用される場合に、実行することが特に容易であるという考えに基礎を置いている。先行技術に反して、二次元プレートと三次元分離体を連続して一緒に配置する必要はない。
【0009】
また、本発明の方法は、すべての成分または個々の成分を分離体ブロックから流出する時に正確かつ選択的に検出することができる。二つの特に好適な検出方法は、クロマトグラフの三次元の結果を正確に再現することを可能にする。たとえば、成分の空間的分布がその中に区切られた形の分離体の正確な三次元画像が再現される。分離体から三次元の方向に連続して流出する成分を間隔をあけて検出することによっても、クロマトグラフの結果の三次元画像を作成することができる。ここで、特定の成分が分離体から流出する時点は第3次元を表す。
【0010】
本発明のクロマトグラフ方法では、少なくとも一つの移動相が、好ましくは互いに垂直である3方向(X、Y、Z)に延びる分離体を通過する。分離体は、X、Y、Zの各方向に、移動相に搬入される成分をクロマトグラフ分離するために予め決定可能な保持能力を有する。
【0011】
本発明によれば、分離体は、同時にまたは連続的に、第1の方向Xにおいて少なくとも1つの移動相によって貫通されると共に、第2の方向Yにおいて少なくとも1つの移動相によって貫通され、これにより分離体に供給される試料の二次元クロマトグラフ分離が行われる。従って、実質的に達成される分布はXY平面に沿って延び、当該XY平面は好ましくは分離体の一側面を形成する。
【0012】
本発明に従って第3の方向Zにおいて分離体がその後に少なくともさらに1つの移動相によって貫通される場合、XY方向ですでに分離された成分がZ方向の異なる位置への空間的分離を追加的に受けるか、それら成分が溶離剤中にある異なる時点での境界面で分離体から流出するように時間に関する分離を追加的に受ける。
【0013】
本発明に係る方法は、検出のために、境界面の領域に成分が表出する時、当該成分が継続的に、すなわち予め決めておくべき基準に従って固定化可能な時点において検出される。
【0014】
この方法により、好ましくは非常にコンパクトな分離体を利用して、空間×と空間×の時間的分離に関して詳細に三次元クロマトグラフの結果を評価することが可能になる。
【0015】
本発明は、分離体から表出する成分が適当な基板上に固定されている状態を提供する。したがって、成分が基板上に固定され当該基板が適切な方法により後に分析されることで前記成分が調べられて有利に検出される。基板としては、分離体から表出する検体を結合または固定することが可能な任意の材料を使用することができる。分離体は好ましくは実質的に平坦な境界面を有し、当該境界面を通って移動相または成分が分離体から離れるので、均等に平らな支持構造は当該境界面全体を越えて表出する媒体を吸収すると同時に固定化するのに適している。固定化は、特に、基板上に境界面を刻み込むこと(インプリント)によって行うことができる。境界面で表出する成分は、タイムスタンプという意味で基板に適用されて当該基板に固定される。
【0016】
この目的のために、分離体は比較的安定した基板に向かって移動することができる。また、基板は、例えばスタンプに押圧される紙のような分離体の境界面に対して配置することができる。このように、時間tに関する特定の時点であって当該時点で成分が分離体の境界面を通って表出する時点での当該成分の正確な二次元画像を取り込むことができる。事前定義可能な間隔で繰り返される”スタンピング”の形によって、時間(ここでは第3次元を表す)に関して成分が分離体からどのように離れるかを表す三次元画像が提供される。このスタンピングの工程により、時間に関するクロマトグラフの個々の結果を恒久的に固定化することが可能になる。基板上に固定された画像は、個々のプリント上で個々の成分の分布を記録することができるようにするため、公知の分析方法により評価することができる。分析の公知の方法では、特に、可視光、紫外光、または赤外光が使用される。基板上に保存された画像を評価することも、ラマン分光法や質量分光イメージング技術によって容易に実行可能である。
【0017】
分離体は、好適には上記方法のためにモノリシックに構成される。分離体の個々の次元に必要かもしれない異なる保持機構は、成分に関する意図的な異なった選択のために次元ごとに定義することができる。この種のモノリシック構造で、分離体を比較的小さなスペースで特に簡単かつコンパクトに製造することができる。
【0018】
上記検出方法(印刷技術)は、クロマトグラフによって達成される成分の分布の三次元イメージを作成するために特に効果的に使用することができる。従って、異なる時点t1,t2,t3で作られたいくつかのプリントまたは画像により、クロマトグラフの結果の詳細な三次元再構成が可能になる。特に、分離体の境界面の領域における個々の成分の一時的な外観は、(潜在的にコンピュータの助けを借りて)三次元で表示することができる。
【0019】
他の有利な実施形態は従属請求項で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る方法で使用する分離体の模式図である。
【図2】分離体から出てきた成分を固定化する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る検出方法を、図に示す2つの実施形態の助けを借りてより詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る空間的な広がりのある分離体1は、互いに垂直な3方向のX、Y、Zに延びている。分離体1はモノリシックになるように設計されているにもかかわらず、それがY、Z、X方向のそれぞれに固有の保持機構を提供している。
【0023】
三次元クロマトグラフを実行するため、図1で不比例的に拡大示するように、移動相が限定された上縁領域2を介して最初に分離体1に導入される。好ましくは、移動相は、本発明方法の最初の工程の間に、他の方向YとZに移動することなく、分離体1の上縁に沿って、第1の方向Xでのみ分離体1を貫通する。
【0024】
この最初の工程では、ブロックのX軸に沿った成分の分離が当該X軸方向で予測される保持機構によって生じる。好ましくは、当該最初の軸に沿って成分が個々に分布する(”空間的分離”)。
【0025】
この最初の工程の後、移動相は、分離体1の上縁2を、最初の工程の分布に対して垂直を成しかつ狭いストリップ3を通る全長Xにわたり、Y方向に貫通して導入される。移動相は、好ましくは他のXまたはZ方向に変動することなくY方向に流れ、第1工程の後に特定のX位置に配置された成分の第2次元における追加的分離に影響を及ぼす。その結果、成分は、図1の分離体1の上面であるかもしれないXY領域を横切る他の”空間的な分離”でさらに分離され
る。
【0026】
第3分離工程は、前の工程を受けたXY面に垂直な分離体の浸透を含んでいる。移動相は、三次元クロマトグラフの第2工程の後に、分離体をZ方向に強制的に通り抜け、特定のXY位置に配置された成分の別の分離を引き起こす。
【0027】
この分離は再び”空間で”発生することが可能で、当該分離により分離体のX、Y、Zの3つのすべての方向に沿った成分が最終的に明確に分配される。もう一つの(”時間の”)分離の形式は、成分が最後の工程で完全に分離体を介して駆動されている時に発生するが、Z方向に選択された保持機構によって分離体から異なる時点で表出する。
【0028】
この”時間の”分離により、異なる時点で成分が境界面10を貫通して分離体から離れる。ブロックを離れる個々の成分を監視する1つの適当な方法が図2に示される。この図2では、時間的な分離が行われている分離体1が示されている。従って、移動相は分離体1をZ方向に貫通し、成分は異なる時点で分離体1の下部境界面10を貫通して分離体1から表出する。
【0029】
基板4は下に配置されて境界面10に対向している。基板4は細長い形状であり、方向11において好ましくは一定速度で駆動されている。
【0030】
好ましくは、定期的に、分離体1は、基板4に接触するためにZ軸方向に上下に駆動される(あるいは基板4を分離体1に向かって移動させてもよい)。
【0031】
その間、時点(t1,t2,t3...)に至った瞬間に分離体1から出てきた成分が基板4上に印刷されている。
【0032】
各印刷の後、別の印刷が要求されるまで、分離体1は再度持ち上げられる。
【0033】
この手順により、選択された時点で分離体1から出てきた成分の画像を表す一連のプリント5が出来上がる。
【0034】
この方法により、成分を適切かつ容易に固定化することができ、これにより、第三次元が時間軸であるこの種の三次元クロマトグラフ分離(空間×空間×時間)のため、成分の分布の三次元画像を構成することができる。
【0035】
上記の方法により、三次元クロマトグラフの成分分布を、迅速かつ効率的に検出することができる。
【0036】
三次元空間クロマトグラフは、システム生物学のような分野から出てくる本当に複雑な分離問題に取り組むために使用することができる。高いピークキャパシティの分離は、平行開発のために適当な期間で得られる。空間三次元クロマトグラフの性能は、3列の戦略に基づいたLC×LC×LCの性能を大幅に超えている。三次元空間クロマトグラフの利点は、検出が達成可能な場合にのみ実現することができる。
【0037】
空間×空間×時間の領域で作業する場合、検出は適切な基板上で印刷技術により実現することができる。後者は、基板の最適化/適合化を可能にする。さらに、プリントは後の分析のために保存可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 分離体
2 上縁
3 半透過壁
4 基板
5 プリント
10 境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの移動相が分離体(1)を通過するクロマトグラフ方法であって、前記分離体(1)は互いに直交する3方向(X,Y,Z)に延びると共に、前記移動相内に搬送された検体用に各方向において予め決めておくことができる保持機構を有し、
a)前記分離体(1)は、同時にまたは連続して、第1の方向(X)で少なくとも1つの移動相によって貫通されると共に第2の方向(Y)で少なくとも1つの移動相によって貫通され、そして
b)移動相に導入された検体がXY面内で分離および分布し、
c)前記分離体(1)はその後方向(Z)で少なくとも1つの移動相によって貫通され、同時に、XY平面で分離された個々の検体はZ方向で異なる位置(Z,Z9)へ追加的に空間的に分離され、および/または、それら成分は追加的な時間的分離において溶離剤中で境界面(10)において異なる時点で分離体(1)から表出し、
d)前記成分が境界面(10)の領域に表出した時に継続的にまたは固定可能な時点で検出されるクロマトグラフ方法において、
e)前記分離体(1)から表出する成分が適当な基板(4)上に固定化されることを特徴とするクロマトグラフ方法。
【請求項2】
前記基板(4)上の前記境界面(10)に予め決定可能な時点(t1,t2,t3...)で固定化が成されることを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラフ方法。
【請求項3】
プリント(5)が、可視光、紫外光または赤外光の助けを借りて、ラマン分光法の助けを借りて、または質量分析の助けを借りて評価されることを特徴とする請求項1または2に記載のクロマトグラフ方法。
【請求項4】
前記分離体(1)がモノリシックになるように設計されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のクロマトグラフ方法。
【請求項5】
異なる時点(t1,t2,t3...)で作られたいくつかの前記プリント(5)または画像(5)が好ましくはコンピュータの助けを借りて三次元画像に構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のクロマトグラフ方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−504045(P2013−504045A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527245(P2012−527245)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005469
【国際公開番号】WO2011/026650
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512043670)ディオネクス ベネルクス ビー ブイ (3)