穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステム
【課題】所望の穿孔深さを持った穿孔を正確に形成するとともに、略円柱状の骨片、又は、埋植されているインプラントを周囲骨とともに切り抜くことのできる穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムを提供する。
【解決手段】シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、前記シャフト体は、駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、前記円筒体は、前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定する。
【解決手段】シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、前記シャフト体は、駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、前記円筒体は、前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野や医科分野において、生体骨に穿孔を形成するときに使用する穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野や医科分野において、人工歯根、人工関節、人工骨、骨折治療具等のインプラントを生体骨に埋設するための穿孔形成が行われている。インプラントを生体骨に正確に埋設するために、正確な孔径及び深さを持った穿孔を生体骨に形成する必要がある。例えば、上顎臼歯部の歯槽骨に穿孔を形成する場合には、上顎洞(サイナス)と呼ばれる空洞(副鼻腔)の下壁の粘膜(シュナイダー膜)を穿孔しないようにしなければならないし、また、下歯槽骨の場合には、下歯槽神経や舌下動脈や下歯槽動脈等に傷を付けることがないように、穿孔を正確な位置と深さで形成することが要求される。
【0003】
生体骨に穿孔を形成するために様々なタイプの穿孔ドリルが開発されている。生体骨に穿孔を形成するとともに骨片を採取するために円筒状ドリルが用いられる。円筒状ドリルは、トレフィンドリルとも呼ばれており、その先端に形成された鋸状切削刃により、生体骨に略円柱状の穿孔を形成し、切削された骨片をドリルの内部構造に採取するために用いられる。
【0004】
一般的な手術用電動器具(電動ドリルシステム)のハンドピースに対して、その駆動ヘッドに連結されるシャンク部を一端に有するとともに切削刃を他端に有するワンピース型の円筒状ドリルが知られている。また、例えば、特許文献1及び2においては、ハンドピースの駆動ヘッドによって回転駆動される支持部材、及び、端部に切削刃を有する切削部材の2つの部材から構成したツーピース型の円筒状ドリルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160278号公報
【特許文献2】特開2008−295901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、支持部材に対して切削部材を着脱可能に別体で構成した切削具を開示している。特許文献1の切削具においては、切削深さを規制するための何らかの規制手段が切削部材に設けられていない。したがって、特許文献1の切削具では、正確な深さを持った穿孔を形成することができない。また、特許文献1の切削具においては、切削部材の先端に設けられた3つの切削刃部が最も突出した中心尖端部から外周尖端部に向けて延在するように構成されている。そして、中心尖端部を回転中心とした切削動作を行い、切削刃部によって骨を破砕し、3つの切削刃部の隙間から破砕した骨片を本体の内部構造に採取している。したがって、特許文献1の切削具には、採取された骨片が細かく破砕されているので、略円柱状に切り抜かれた骨片を採取できないという問題がある。また、骨内に埋植されたインプラントを、何らかの理由で、周囲の骨とともに抜去する手術を行う場合にも、本切削具は使用できない。
【0007】
特許文献2は、取付部と円筒状本体とが一体的に構成した骨切削具、及び、支持部材とガイド部材とを別体で構成した切除骨採取具を開示している。円筒状本体の鋸歯状切断部により骨を円筒状に切り込んでいる。円筒状に切り込まれた骨部分においては、その周囲部分が円筒状の切断部により切り離されているが、その底面部分が周囲骨とくっついているので、切り込まれた骨部分が生体骨内に残留している。その後、支持部材の先端において棒状に延設されたネジ固定部を切り込まれた骨部分にねじ込ませて、ネジ固定部とともに切り込まれた骨部分を生体骨から引き離すことにより、略円柱状の骨片を採取することを開示している。なお、ガイド部材の開口部を切断部の位置合わせガイドとして用いているので、ネジ固定部の先端は、ガイド部材の開口部より内方に位置している。したがって、特許文献2は、細かく粉砕されずに略円柱状の骨片を採取することを開示するものの、骨切削具の本体の外周面上に形成された目盛りに基づいて切断深さを決めている。特許文献2の切除骨採取具には、手術する部位によっては骨切削具に形成された目盛りが見にくいこともあるので、正確な深さを持った穿孔を形成することができないという問題がある。また、骨内に埋植されたインプラントを周囲の骨とともに抜去する場合にも、必要且つ十分な深さまで、正確に穿孔することができないことが課題となっている。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、所望の穿孔深さを持った穿孔を正確に形成するとともに、略円柱状の骨片、又は、埋植されているインプラントを周囲骨とともに切り抜くことのできる穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムが提供される。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1に係る穿孔ドリルは、
シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、
前記シャフト体は、
駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、
円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、
前記円筒体は、
前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、前記第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、
前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、
前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、
前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る穿孔ドリルは、
前記第2貫通孔は、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片を採取するための骨採取空間を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る穿孔ドリルは、
前記第2連結部と前記第3連結部との間での連結構造は、バヨネット構造であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る穿孔ドリルは、
前記第1軸と前記第2軸との間の境界には、フランジを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る穿孔ドリルは、
前記第2貫通孔の孔径は、生体骨内に埋入されたインプラントの外径よりも大きいように寸法構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項6に係る穿孔ドリルシステムは、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載された、シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルを複数種類備える穿孔ドリルシステムであって、
前記複数種類のシャフト体のそれぞれにおいて、前記第1軸に設けられた連結構造が共通し、
前記複数種類の円筒体のそれぞれにおいて、前記第2軸に設けられた連結構造及び軸支構造が共通しており、
前記円筒状本体の内径寸法及び前記第2軸の軸方向長さが異なるように寸法構成されており、
前記円筒状本体の異なった内径寸法と前記第2軸の異なった軸方向長さとを組み合わせることにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係る穿孔ドリルシステムは、
前記シャフト体の第1軸と共通した連結構造を有する第1共通軸と、
前記シャフト体の第2軸と共通した連結構造及び軸支構造を有する第2共通軸と、
前記第2共通軸から軸先端方向に延在して、前記円筒状本体の内径よりも小さな外径を有する小ドリル部と、を有するガイド溝形成用部品をさらに備えて、
前記ガイド溝形成用部品が、前記穿孔ドリルの円筒体に対して着脱自在に構成されており、
前記小ドリル部の先端が、前記穿孔ドリルの鋸歯状刃よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に係る穿孔ドリルシステムは、
前記穿孔ドリルの円筒体の軸方向長さよりも長い押出軸を有する押出部品をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明では、円筒体の鋸歯状刃により生体骨を切削するときに、円筒体の第2貫通孔の中に挿入された第2軸の先端部が、生体骨の表面に当接してそれ以上先に削り進むことが規制される。そして、切削された骨片は、略円柱状をしている。また、穿孔ドリルが、シャフト体及び円筒体という2つの部材から構成されており、第2軸における異なる軸方向長さを持った別のシャフト体を装着することにより、シャフト体の第2軸の軸方向長さを調節することができる。したがって、所望の穿孔深さを持った穿孔を正確に形成し、且つ、略円柱状骨片を切り抜くことのできるという効果を奏する。
【0019】
請求項2に係る本発明は、円筒体において第1貫通孔及び第2貫通孔が連続して貫通しているので、略円柱状骨片の採取が容易であるという効果を奏する。
【0020】
第2連結部と第3連結部との間での連結構造としては、雌ネジ及び雄ネジを用いた螺合構造等も適用可能であるが、請求項3に係る本発明は、第2連結部と第3連結部との間での着脱が非常に容易であり、優れた操作性を与えるという効果を奏する。
【0021】
請求項4に係る本発明は、フランジによって軸方向の動きを規制することができるので、シャフト体及び円筒体の配置を正確に決めることができるという効果を奏する。
【0022】
請求項5に係る本発明は、生体骨内に埋入されたフィクスチャーの抜去を骨片の採取とともに行うことができるという効果を奏する。
【0023】
請求項6に係る本発明は、複数種類の穿孔ドリルの組合せにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項7に係る本発明は、ガイド溝形成用部品を用いて円環状のガイド溝を生体骨上に初期切削を施して、円環状のガイド溝に穿孔ドリルの円筒体の鋸歯状刃を嵌合させた状態で本切削を施すことにより、切削開始時の軸芯ブレの発生が抑制されるので、より正確な位置及び寸法で略円柱状骨片を切り抜くことができるという効果を奏する。
【0025】
請求項8に係る本発明は、押出部品を第1貫通孔の側から押し込むだけで第2貫通孔内に取り込まれている略円柱状骨片が押し出されるので、略円柱状骨片の回収が容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る、複数種類の穿孔ドリルを備える穿孔ドリルシステムの斜視図である。
【図2】本発明に係る穿孔ドリルシステムを構成する他の部品を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る穿孔ドリルにおける組合せを説明する図である。
【図4】本発明に係る穿孔ドリルの円筒体を説明する図である。(A)は縦方向断面図であり、(B)は斜視図である。
【図5】本発明に係る穿孔ドリルにおける連結構造を説明する図である。
【図6】本発明に係る穿孔ドリルにおけるシャフト体と円筒体との間での連結構造を説明する図である。
【図7】本発明に係る穿孔ドリルシステムにおけるガイド溝形成用部品と穿孔ドリルの円筒体との間での連結構造を説明する図である。
【図8】本発明に係る穿孔ドリルシステムにおけるアダプタ部品と軸部との間での連結構造を説明する図である。(A)はガイド溝形成用部品に対する連結構造であり、(B)は穿孔ドリルのシャフト体に対する連結構造である。
【図9】押出部品と穿孔ドリルの円筒体との間での軸方向長さの関係を説明する図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1を歯科分野に適用した一実施形態を、図1乃至10を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1は、歯科分野での骨への穿孔94に限定されるものではなく、医科分野での骨や軟骨への穿孔にも適用可能である。
【0028】
図1及び2に示すように、本発明に係る穿孔ドリルシステム1は、複数種類のシャフト体10と、複数種類の円筒体30と、ガイド溝形成用部品50と、アダプタ部品60と、押出部品70と、を備えている。図3に示すように、本発明に係る穿孔ドリル3は、複数種類のシャフト体10と複数種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることにより、複数種類の穿孔ドリル3を構成することができる。円筒状本体31の先端に鋸歯状刃33を有するドリルは、トレフィン(trephine)ドリルと呼ばれている。
【0029】
ガイド溝形成用部品50は、後述するように、予備的なガイド溝を形成するために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。また、アダプタ部品60も、シャフト体10やガイド溝形成用部品50の取扱性を向上させるために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。また、押出部品70も、円筒体30の中に収容された略円柱状骨片96の回収を容易ならしめるために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。
【0030】
まず、図1、3、6及び8を参照しながら、シャフト体10を説明する。
【0031】
略円柱状のシャフト体10は、チタン合金やステンレススチール等の剛性を持った金属材料からなり、図6に示すように、軸方向に延在する第1軸11と、軸方向に延在する第2軸13と、第1軸11と第2軸13との境界に設けられたフランジ12と、を備えている。第1軸11と第2軸13が同芯である。第2軸13よりも大きな外径のフランジ12は、シャフト体10の軸方向の動きを規制するストッパーとして設けられている。
【0032】
第1軸11の基端側の端部には、第1連結部15が設けられている。第1連結部15は、図3に示すように、部分的に切り欠かれた切欠16を有している。第1連結部15がハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して係合して、穿孔ドリル3がハンドピース80の駆動ヘッド81に対して着脱自在であるように構成されている。
【0033】
第2軸13には、軸直交方向に突出する一対のピン14が立設されている。一対のピン14が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。第2連結部としての一対のピン14は、第3連結部としての一対の連結溝34にそれぞれ係合して、シャフト体10と円筒体30との間での連結構造を形成する。第2軸13の先端部には、穿孔94の切削深さを規制するための深さ規制面19が設けられている。すなわち、深さ規制面19が切除すべき骨片96の表面等に当接することにより、穿孔94の切削深さを規制する。
【0034】
略リング状の弾性体17が、フランジ12とピン14との間で第2軸13に挿着されている。弾性体17は、例えば、伸縮自在のゴム製リングである。弾性体17は、シャフト体10を円筒体30に連結させたときに軸方向の付勢力を提供して、連結構造に緩みが出ることを防止するために配設されている。
【0035】
図1及び3に示されているように、複数のシャフト体10毎に、第2軸13の軸方向長さが異なるように寸法構成されている。後述するように、穿孔94の切削深さは、深さ規制面19と鋸歯状刃33の先端部との間の軸方向間隔によって規定される。図3に示すように、フランジ近傍の第1軸11の側面には、穿孔94の切削深さを表す数字が刻字されている。
【0036】
次に、図1、3、4、5、及び6を参照しながら、円筒体30を説明する。
【0037】
略円筒状の円筒体30は、純チタンやチタン合金等の剛性を持った金属材料からなり、図4に示すように、軸方向に延在する円筒状本体31と、円筒状本体31の基端側の端部に設けられた連結溝34と、円筒状本体31の先端側の開口端部に設けられた鋸歯状刃33と、を備えている。円筒状本体31の厚みは、例えば、0.25mm程度である。
【0038】
円筒状本体31の基端側の厚肉の軸支部32に形成された第1貫通孔37と、円筒状本体31の先端側の薄肉部分に形成された第2貫通孔38とが、円筒状本体31の内部に形成されている。第2貫通孔38には、第2軸13の深さ規制面19(先端部)と鋸歯状刃33の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片96を採取するための略円柱状の骨採取空間が形成されている。円筒状本体31の内部において、第1貫通孔37と第2貫通孔38とが連通している。シャフト体10の第2軸13が、第1貫通孔37に挿入される。また、後述するガイド溝形成用部品50の第2共通軸53が、第1貫通孔37に挿入される。
【0039】
連結溝34は、基端側が開口して軸方向に延在する縦溝35と、軸直交方向に延在する横溝36と、からなる略L字状に折れ曲がった溝である。一対の連結溝34が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。
【0040】
図5に示すように、ピン14を連結溝34の縦溝35に沿って先端側に向けて押し入れると、ピン14が連結溝34の横溝36に突き当たる。その後、ピン14を連結溝34の横溝36に沿って時計回りに回転させることにより、一対のピン14が一対の連結溝34に嵌合して、シャフト体10と円筒体20との間で連結構造を実現することができる。また、フランジ12と軸支部32の基端側の端面との間に介在している弾性体17の付勢力により、ピン14が連結溝34の横溝36に対して弾性的に当接している。したがって、一対のピン14及び連結溝34の間でいわゆるバヨネット構造を形成し、当該バヨネット構造により、シャフト体10と円筒体20との間で強固に連結した構造が実現される。当該バヨネット構造は、シャフト体10と円筒体20との間での着脱が非常に容易であり、優れた操作性を与える。なお、当該バヨネット構造の他に、雌ネジ及び雄ネジを用いた螺合構造等も、シャフト体10と円筒体20との間での連結構造として利用可能である。
【0041】
図1に示されているように、複数の円筒体30毎に、第2貫通孔38の外径寸法及び内径寸法が異なるように寸法構成されている。穿孔94の孔径は、円筒体30の外径寸法によって規定される。切り取られる骨片96のサイズは、円筒体30の第2貫通孔38の内径寸法によって規定される。1セットに含まれる複数種類の円筒体30のサイズを表1に例示する。
【0042】
【表1】
【0043】
複数種類の円筒体30において、内径寸法及び外径寸法は異なるものの、円筒状本体31の軸方向長さ、第2貫通孔38の軸方向長さ、及び、バヨネット連結構造は共通している。骨採取空間の軸方向長さ、すなわち穿孔94の切削深さは、第2軸13の深さ規制面19と鋸歯状刃33の先端部との間の軸方向間隔によって規定される。したがって、第2軸13の軸方向長さが長くなると、骨採取空間の軸方向長さが短くなり、採取される骨片96の軸方向長さが短くなる。言いかえれば、第2軸13の軸方向長さに応じて、第2貫通孔38における骨採取空間の軸方向長さが変動する。
【0044】
図1等に示すように、術者が深さ規制面19のおおよその位置を視認できるように、ゼブラ模様の穿孔深さ用目印が円筒状本体31の側面に設けられている。また、複数種類の円筒体30を識別することができるように、軸支部32の外表面を複数の色に着色して色分けしてよい。
【0045】
したがって、第2軸13の軸方向長さが異なった複数種類のシャフト体10と、第2貫通孔38の内径寸法が異なった複数種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることにより、複数種類の穿孔ドリル3を構成することができる。なお、シャフト体10と円筒体30とを組み合わせた穿孔ドリル3においては、シャフト体10の軸芯と円筒体30の軸芯とが同芯である。図1に例示した穿孔ドリルシステム1では、5種類のシャフト体10と6種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることによって、穿孔94の孔径や穿孔深さが異なった合計で30通りの穿孔ドリル3を作成することができる。
【0046】
次に、図7及び8を参照しながら、ガイド溝形成用部品50を説明する。
【0047】
図7に示すように、略円柱状のガイド溝形成用部品50(マーキングシャフト)は、軸方向に延在する第1共通軸51と、軸方向に延在する第2共通軸53と、第1共通軸51と第2共通軸53との境界に設けられたフランジ52と、を備えている。
【0048】
第1共通軸51の基端側の端部には、第1共通連結部55が設けられている。第1共通連結部55は、図8に示すように、部分的に切り欠かれた切欠56を有している。第1共通連結部55がハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して係合して、ガイド溝形成用部品50がハンドピース80の駆動ヘッド81に対して着脱自在であるように構成されている。
【0049】
第2共通軸53には、軸直交方向に突出するピン54が立設されている。一対のピン54が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。第2連結部としての一対のピン54は、第3連結部としての一対の連結溝34にそれぞれ係合して、ガイド溝形成用部品50と円筒体30との間での連結構造を形成する。第2共通軸53の先端部には、小ドリル部59が設けられている。小ドリル部59は、軸方向に延在する切削刃を備えている。ガイド溝形成用部品50と円筒体30とを組み合わせたガイド溝形成ドリル5においては、図7に示すように、小ドリル部59の尖った先端が、円筒体30の鋸歯状刃33の端部よりも外方に(例えば2mm程度)突出している。この小ドリル部59の突出し且つ尖った先端は、鋸歯状刃33より先に骨表面に突き刺されることにより、予備的な円環状のガイド溝を形成する際の回転中心を安定化し、回転の芯ブレを抑制するという効果をもたらす。
【0050】
略リング状の弾性体57が、フランジ52とピン54との間で第2共通軸53に挿着されている。弾性体57は、シャフト体10において用いる弾性体17と同様に、ガイド溝形成用部品50を円筒体30に連結させたときに軸方向の付勢力を提供して、連結構造に緩みが出ることを防止するために配設されている。
【0051】
したがって、ガイド溝形成用部品50の構成は、小ドリル部59を除いて、シャフト体10の構成と共通している。なお、ガイド溝形成用部品50と円筒体30とを組み合わせたガイド溝形成ドリル5においては、ガイド溝形成用部品50の軸芯と円筒体30の軸芯とが同芯である。
【0052】
また、図2、5及び8に示すように、穿孔ドリルシステム1は、アダプタ部品60を備えている。アダプタ部品60は、先端側が開口している挿入孔62を本体61の内部に備えている。
【0053】
図8に示すように、挿入孔62は、シャフト体10の第1軸11及びガイド溝形成用部品50の第1共通軸51を挿着できるように寸法構成されている。本体61の基端側には、嵌合部63が設けられている。嵌合部63は、挿入孔62の内壁面よりも軸芯に向けて突出した突出部64を備えている。嵌合部63の突出部64は、第1連結部15の切欠16と、第1共通連結部55の切欠56と、に対してそれぞれ係合するように構成されている。アダプタ部品60の挿入孔62に対してシャフト体10の第1軸11又はガイド溝形成用部品50の第1共通軸51を挿着すると、アダプタ部品60の回転力をシャフト体10又はガイド溝形成用部品50にそれぞれ伝達することができる。
【0054】
したがって、図5に示すように、アダプタ部品60をシャフト体10に装着しておけば、図5の(C)から(D)に移行するときに、すなわちシャフト体10と円筒体30とを連結するときに、発生する弾性体17の弾性力に抗しながら、円筒体30に対するシャフト体10の装着操作をスムーズに行うことができる。
【0055】
また、図2及び9に示すように、穿孔ドリルシステム1は、押出部品70を備えている。押出部品70は、軸方向に延在する押出軸71と、押出軸71よりも大きい外径を有する把持部72と、を備えている。
【0056】
図9に示すように、押出軸71の当接面79は、円筒体30の鋸歯状刃33の端部よりも外方に(例えば2mm程度)突出している。押出軸71は、円筒体30の第1貫通孔37に挿入される。押出軸71を第1貫通孔37に挿入するようにして押出部品70と円筒体30とを組み合わせると、円筒体30の鋸歯状刃33の端部から、押出軸71の当接面79が僅かに突出する。したがって、切除した骨片96が第2貫通孔38内の形成された骨採取空間に取り込まれている円筒体30に対して押出部品70の押出軸71で突くことにより、取り込まれた骨片96が押出軸71の当接面79で押し出されて、略円柱状の骨片96を回収することができる。
【0057】
次に、図10乃至15を参照しながら、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関する第1の使用形態を説明する。
【0058】
まず、アダプタ部品60を用いながら、穿孔すべき孔径に対応する円筒体30と、ガイド溝形成用部品5と、を連結することにより、ガイド溝形成ドリル5を作成する。ハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対してガイド溝形成ドリル5の第1共通連結部55を連結することにより、ガイド溝形成ドリル5がハンドピース80に装着される。
【0059】
図10に示すように、穿孔すべき歯槽骨90の表面を覆っている歯肉92を切開して、歯槽骨90を露出させる。露出した歯槽骨90の表面骨(緻密で硬い皮質骨)に対して、小ドリル部59の尖った先端を突き刺す。小ドリル部59の尖った先端で突き刺したポイントが、予備的な円環状のガイド溝を形成する際の回転中心となる。ガイド溝形成ドリル5を回転駆動させると、小ドリル部59と円筒体30とが同軸で回転して、予備的な切削動作が行われる。小ドリル部59の回転により小さな円錐状の穿孔が骨表面に形成されるとともに、円筒体30の回転により予備的な円環状のガイド溝が骨表面に形成される。円環状のガイド溝の外径は、穿孔すべき孔径と同じサイズを有している。
【0060】
予備的な円環状のガイド溝の形成が完了すると、ガイド溝形成ドリル5を歯槽骨90から引き離し、ハンドピース80からガイド溝形成ドリル5を取り外す。アダプタ部品60を用いながら、取り外したガイド溝形成ドリル5の円筒体30からガイド溝形成用部品5を取り外す。代わりに、アダプタ部品60を用いながら、同径の円筒体30と、穿孔すべき穿孔深さに対応するシャフト体10と、を連結することにより、所望の孔径及び穿孔深さを持った穿孔ドリル3を作成する。
【0061】
円筒体30の鋸歯状刃33を予備的な円環状のガイド溝に嵌入して、穿孔ドリル3の位置決めを行う。鋸歯状刃33が円環状のガイド溝に嵌入した状態で、軸芯を中心に穿孔ドリル3を回転駆動させると、円環状のガイド溝に沿って、すなわち、小ドリル部59の尖った先端で突き刺したポイントを中心に、円筒体30の鋸歯状刃33が回転して、本切削動作が行われる。円環状のガイド溝に沿って本切削を行うので、切削開始時の軸芯ブレの発生が抑制される。
【0062】
円筒体30が回転するに連れて、より深いところまで歯槽骨90が切削されるが、所定の深さまで削り進むと、図11に示すように、第2軸13の深さ規制面19が歯槽骨90の表面骨(緻密で硬い皮質骨)に当接する。第2軸13の深さ規制面19がストッパーとして機能するので、円筒体30がいくら回転しても、それ以上先に削り進むことは無い。すなわち、第2貫通孔38の中に形成された略円柱状の骨採取空間に、略円柱状の骨片96が取り込まれている。したがって、第2軸13の深さ規制面19が歯槽骨90の表面の皮質骨に当接することにより、本切削動作が完了する。
【0063】
本切削動作が完了した後に、図12のように、穿孔ドリル3を歯槽骨90から引き離すと、骨片96が歯槽骨90から分離されて円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んでいる。当該現象は以下のメカニズムによって起こっているものと推察される。本切削の過程で、歯槽骨90が円筒状に切削されて、骨片96の側面部分は周囲の骨から分離されている。骨片96の底面部分には切削動作が及ばないものの、骨片96の側面部分を切削する過程で、円筒体30の内面と骨片96の側面部分との間で摩擦力が発生して、円筒体30の回転トルクが骨片96に作用する。そして、骨片96の底面部分がくびれることにより、骨片96の底面部分が周囲の骨から分離される。その結果、骨片96が円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んでいるものと推察される。
【0064】
アダプタ部品60を用いながら、図13に示すように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30からシャフト体10を取り外す。そして、図14に示すように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30に対して、押出部品70を装着する。
【0065】
図15に示すように、押出部品70の押出軸71を円筒体30の第1貫通孔37に挿入すると、第2貫通孔38内の骨片96が押出軸71の当接面に当接し、第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んだ骨片96が押出軸71で押し出されて、略円柱状の骨片96が回収される。
【0066】
採取された骨片96は、他の骨欠損部位や他の凹部にそのままの略円柱状形態で埋め込んで利用したり、採取された骨片96を破砕したあと、採取された骨片96単体であるいは人工骨材料との混合体の形態で充填骨材料として利用したりすることができる。
【0067】
次に、図16乃至21を参照しながら、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関する第2の使用形態を説明する。第2の使用形態は、歯槽骨90内に埋入されたフィクスチャー97を含む骨片96を切除するための穿孔形成に関する。
【0068】
まず、アダプタ部品60を用いながら、穿孔すべき孔径に対応する円筒体30と、穿孔すべき穿孔深さに対応するシャフト体10と、を連結することにより、所望の孔径及び穿孔深さを持った穿孔ドリル3を作成する。なお、円筒体30の第2貫通孔38の孔径は、歯槽骨90内に埋入されたフィクスチャー97の外径よりもわずかに大きいように寸法構成されている。例えば、円筒体30の第2貫通孔38の内径は、埋入されたフィクスチャー97の外径よりも1mm程度大きい。また、第2貫通孔38の中に形成された骨採取空間の軸方向長さは、カバーキャップ98のヘッド部高さにフィクスチャー97の埋入高さを足し合わせた軸方向長さよりもわずかに大きいように寸法構成されている。ハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して穿孔ドリル3の第1連結部15を連結することにより、穿孔ドリル3がハンドピース80に装着される。
【0069】
図16に示すように、穿孔すべき歯槽骨90の表面を覆っている歯肉92を切開して、歯槽骨90を露出させる。露出した歯槽骨90には、既にフィクスチャー97が埋入されている。フィクスチャー97に装着されているカバーキャップの代わりに、既に埋入されているフィクスチャー97と同じ外径であって、最も高さのある(例えば約2mmの高さ)ヘッド部を有するカバーキャップ98をフィクスチャー97に装着する。フィクスチャー97に対して軸方向に突出しているカバーキャップ98のヘッド部は、穿孔ドリル3を位置決めするためのガイド部材として用いられる。
【0070】
図16に示すように、円筒体30の鋸歯状刃33をカバーキャップ98のヘッド部に嵌入して、穿孔ドリル3の位置決めを行う。円筒状本体31の鋸歯状刃33がカバーキャップ98のヘッド部に嵌入した状態で、軸芯を中心に穿孔ドリル3を回転駆動させると、カバーキャップ98のヘッド部にガイドされながら、円筒体30の鋸歯状刃33が回転して、切削動作が行われる。カバーキャップ98のヘッド部に沿って切削を行うので、切削開始時の位置ズレの発生が抑制される。
【0071】
円筒体30が回転するに連れて、より深いところまで歯槽骨90が切削されるが、所定の深さまで削り進むと、図17のように、第2軸13の深さ規制面19がカバーキャップ98のヘッド部に当接する。第2軸13の深さ規制面19がストッパーとして機能するので、円筒体30がいくら回転しても、それ以上先に削り進むことは無い。したがって、第2軸13の深さ規制面19がカバーキャップ98のヘッド部に当接することにより、切削動作が完了する。
【0072】
切削動作が完了した後に、図18のように、穿孔ドリル3を歯槽骨90から引き離すと、フィクスチャー97を含む骨片96が歯槽骨90から分離されて円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち骨採取空間に)嵌り込んでいる。当該現象も、上述した第1実施形態で説明したメカニズムと同様のメカニズムで起こるものと推察される。
【0073】
アダプタ部品60を用いながら、図13と同じように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30からシャフト体10を取り外す。そして、図14と同じように、フィクスチャー97を含む骨片96の嵌り込んだ円筒体30に対して、押出部品70を装着する。
【0074】
図19に示すように、押出部品70の押出軸71を円筒体30の第1貫通孔37に挿入すると、円筒体30の第2貫通孔38内のフィクスチャー97を含む骨片96が押出軸71の当接面に当接し、第2貫通孔38内に嵌り込んだフィクスチャー97を含む骨片96が押出軸71で押し出されて、フィクスチャー97を含む略円柱状の骨片96が抜去される。
【0075】
本発明の穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関して歯科の分野における実施形態を説明したが、本発明の穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1は、例えば、頭蓋、顎、顔面の復元外科、美容外科、形成外科、整形外科、口腔外科、耳鼻咽喉科等の分野において、骨や軟骨組織の欠損・損傷した部位を修復、復元、再生するために使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:穿孔ドリルシステム
3:穿孔ドリル
5:ガイド溝形成ドリル
10:シャフト体
11:第1軸
12:フランジ
13:第2軸
14:ピン(第2連結部)
15:第1連結部
16:切欠
17:弾性体
19:深さ規制面(先端部)
30:円筒体
31:円筒状本体
32:軸支部
33:鋸歯状刃
34:連結溝(第3連結部)
35:縦溝
36:横溝
37:第1貫通孔
38:第2貫通孔(骨採取空間)
40:穿孔深さ用目印
50:ガイド溝形成用部品(マーキングシャフト)
51:第1共通軸
52:フランジ
53:第2共通軸
54:ピン
55:第1共通連結部
56:切欠
57:弾性体
59:小ドリル部
60:アダプタ部品
61:本体
62:挿入孔
63:嵌合部
64:突出部
70:押出部品
71:押出軸
72:把持部
79:当接面
80:ハンドピース
81:駆動ヘッド
82:連結部
90:歯槽骨
92:歯肉
94:穿孔
96:骨片
97:フィクスチャー(インプラント)
98:カバーキャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野や医科分野において、生体骨に穿孔を形成するときに使用する穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野や医科分野において、人工歯根、人工関節、人工骨、骨折治療具等のインプラントを生体骨に埋設するための穿孔形成が行われている。インプラントを生体骨に正確に埋設するために、正確な孔径及び深さを持った穿孔を生体骨に形成する必要がある。例えば、上顎臼歯部の歯槽骨に穿孔を形成する場合には、上顎洞(サイナス)と呼ばれる空洞(副鼻腔)の下壁の粘膜(シュナイダー膜)を穿孔しないようにしなければならないし、また、下歯槽骨の場合には、下歯槽神経や舌下動脈や下歯槽動脈等に傷を付けることがないように、穿孔を正確な位置と深さで形成することが要求される。
【0003】
生体骨に穿孔を形成するために様々なタイプの穿孔ドリルが開発されている。生体骨に穿孔を形成するとともに骨片を採取するために円筒状ドリルが用いられる。円筒状ドリルは、トレフィンドリルとも呼ばれており、その先端に形成された鋸状切削刃により、生体骨に略円柱状の穿孔を形成し、切削された骨片をドリルの内部構造に採取するために用いられる。
【0004】
一般的な手術用電動器具(電動ドリルシステム)のハンドピースに対して、その駆動ヘッドに連結されるシャンク部を一端に有するとともに切削刃を他端に有するワンピース型の円筒状ドリルが知られている。また、例えば、特許文献1及び2においては、ハンドピースの駆動ヘッドによって回転駆動される支持部材、及び、端部に切削刃を有する切削部材の2つの部材から構成したツーピース型の円筒状ドリルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160278号公報
【特許文献2】特開2008−295901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、支持部材に対して切削部材を着脱可能に別体で構成した切削具を開示している。特許文献1の切削具においては、切削深さを規制するための何らかの規制手段が切削部材に設けられていない。したがって、特許文献1の切削具では、正確な深さを持った穿孔を形成することができない。また、特許文献1の切削具においては、切削部材の先端に設けられた3つの切削刃部が最も突出した中心尖端部から外周尖端部に向けて延在するように構成されている。そして、中心尖端部を回転中心とした切削動作を行い、切削刃部によって骨を破砕し、3つの切削刃部の隙間から破砕した骨片を本体の内部構造に採取している。したがって、特許文献1の切削具には、採取された骨片が細かく破砕されているので、略円柱状に切り抜かれた骨片を採取できないという問題がある。また、骨内に埋植されたインプラントを、何らかの理由で、周囲の骨とともに抜去する手術を行う場合にも、本切削具は使用できない。
【0007】
特許文献2は、取付部と円筒状本体とが一体的に構成した骨切削具、及び、支持部材とガイド部材とを別体で構成した切除骨採取具を開示している。円筒状本体の鋸歯状切断部により骨を円筒状に切り込んでいる。円筒状に切り込まれた骨部分においては、その周囲部分が円筒状の切断部により切り離されているが、その底面部分が周囲骨とくっついているので、切り込まれた骨部分が生体骨内に残留している。その後、支持部材の先端において棒状に延設されたネジ固定部を切り込まれた骨部分にねじ込ませて、ネジ固定部とともに切り込まれた骨部分を生体骨から引き離すことにより、略円柱状の骨片を採取することを開示している。なお、ガイド部材の開口部を切断部の位置合わせガイドとして用いているので、ネジ固定部の先端は、ガイド部材の開口部より内方に位置している。したがって、特許文献2は、細かく粉砕されずに略円柱状の骨片を採取することを開示するものの、骨切削具の本体の外周面上に形成された目盛りに基づいて切断深さを決めている。特許文献2の切除骨採取具には、手術する部位によっては骨切削具に形成された目盛りが見にくいこともあるので、正確な深さを持った穿孔を形成することができないという問題がある。また、骨内に埋植されたインプラントを周囲の骨とともに抜去する場合にも、必要且つ十分な深さまで、正確に穿孔することができないことが課題となっている。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、所望の穿孔深さを持った穿孔を正確に形成するとともに、略円柱状の骨片、又は、埋植されているインプラントを周囲骨とともに切り抜くことのできる穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の穿孔ドリル及び穿孔ドリルシステムが提供される。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1に係る穿孔ドリルは、
シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、
前記シャフト体は、
駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、
円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、
前記円筒体は、
前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、前記第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、
前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、
前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、
前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る穿孔ドリルは、
前記第2貫通孔は、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片を採取するための骨採取空間を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る穿孔ドリルは、
前記第2連結部と前記第3連結部との間での連結構造は、バヨネット構造であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る穿孔ドリルは、
前記第1軸と前記第2軸との間の境界には、フランジを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る穿孔ドリルは、
前記第2貫通孔の孔径は、生体骨内に埋入されたインプラントの外径よりも大きいように寸法構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項6に係る穿孔ドリルシステムは、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載された、シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルを複数種類備える穿孔ドリルシステムであって、
前記複数種類のシャフト体のそれぞれにおいて、前記第1軸に設けられた連結構造が共通し、
前記複数種類の円筒体のそれぞれにおいて、前記第2軸に設けられた連結構造及び軸支構造が共通しており、
前記円筒状本体の内径寸法及び前記第2軸の軸方向長さが異なるように寸法構成されており、
前記円筒状本体の異なった内径寸法と前記第2軸の異なった軸方向長さとを組み合わせることにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係る穿孔ドリルシステムは、
前記シャフト体の第1軸と共通した連結構造を有する第1共通軸と、
前記シャフト体の第2軸と共通した連結構造及び軸支構造を有する第2共通軸と、
前記第2共通軸から軸先端方向に延在して、前記円筒状本体の内径よりも小さな外径を有する小ドリル部と、を有するガイド溝形成用部品をさらに備えて、
前記ガイド溝形成用部品が、前記穿孔ドリルの円筒体に対して着脱自在に構成されており、
前記小ドリル部の先端が、前記穿孔ドリルの鋸歯状刃よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に係る穿孔ドリルシステムは、
前記穿孔ドリルの円筒体の軸方向長さよりも長い押出軸を有する押出部品をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明では、円筒体の鋸歯状刃により生体骨を切削するときに、円筒体の第2貫通孔の中に挿入された第2軸の先端部が、生体骨の表面に当接してそれ以上先に削り進むことが規制される。そして、切削された骨片は、略円柱状をしている。また、穿孔ドリルが、シャフト体及び円筒体という2つの部材から構成されており、第2軸における異なる軸方向長さを持った別のシャフト体を装着することにより、シャフト体の第2軸の軸方向長さを調節することができる。したがって、所望の穿孔深さを持った穿孔を正確に形成し、且つ、略円柱状骨片を切り抜くことのできるという効果を奏する。
【0019】
請求項2に係る本発明は、円筒体において第1貫通孔及び第2貫通孔が連続して貫通しているので、略円柱状骨片の採取が容易であるという効果を奏する。
【0020】
第2連結部と第3連結部との間での連結構造としては、雌ネジ及び雄ネジを用いた螺合構造等も適用可能であるが、請求項3に係る本発明は、第2連結部と第3連結部との間での着脱が非常に容易であり、優れた操作性を与えるという効果を奏する。
【0021】
請求項4に係る本発明は、フランジによって軸方向の動きを規制することができるので、シャフト体及び円筒体の配置を正確に決めることができるという効果を奏する。
【0022】
請求項5に係る本発明は、生体骨内に埋入されたフィクスチャーの抜去を骨片の採取とともに行うことができるという効果を奏する。
【0023】
請求項6に係る本発明は、複数種類の穿孔ドリルの組合せにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項7に係る本発明は、ガイド溝形成用部品を用いて円環状のガイド溝を生体骨上に初期切削を施して、円環状のガイド溝に穿孔ドリルの円筒体の鋸歯状刃を嵌合させた状態で本切削を施すことにより、切削開始時の軸芯ブレの発生が抑制されるので、より正確な位置及び寸法で略円柱状骨片を切り抜くことができるという効果を奏する。
【0025】
請求項8に係る本発明は、押出部品を第1貫通孔の側から押し込むだけで第2貫通孔内に取り込まれている略円柱状骨片が押し出されるので、略円柱状骨片の回収が容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る、複数種類の穿孔ドリルを備える穿孔ドリルシステムの斜視図である。
【図2】本発明に係る穿孔ドリルシステムを構成する他の部品を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る穿孔ドリルにおける組合せを説明する図である。
【図4】本発明に係る穿孔ドリルの円筒体を説明する図である。(A)は縦方向断面図であり、(B)は斜視図である。
【図5】本発明に係る穿孔ドリルにおける連結構造を説明する図である。
【図6】本発明に係る穿孔ドリルにおけるシャフト体と円筒体との間での連結構造を説明する図である。
【図7】本発明に係る穿孔ドリルシステムにおけるガイド溝形成用部品と穿孔ドリルの円筒体との間での連結構造を説明する図である。
【図8】本発明に係る穿孔ドリルシステムにおけるアダプタ部品と軸部との間での連結構造を説明する図である。(A)はガイド溝形成用部品に対する連結構造であり、(B)は穿孔ドリルのシャフト体に対する連結構造である。
【図9】押出部品と穿孔ドリルの円筒体との間での軸方向長さの関係を説明する図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る穿孔ドリルシステムの使用態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1を歯科分野に適用した一実施形態を、図1乃至10を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1は、歯科分野での骨への穿孔94に限定されるものではなく、医科分野での骨や軟骨への穿孔にも適用可能である。
【0028】
図1及び2に示すように、本発明に係る穿孔ドリルシステム1は、複数種類のシャフト体10と、複数種類の円筒体30と、ガイド溝形成用部品50と、アダプタ部品60と、押出部品70と、を備えている。図3に示すように、本発明に係る穿孔ドリル3は、複数種類のシャフト体10と複数種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることにより、複数種類の穿孔ドリル3を構成することができる。円筒状本体31の先端に鋸歯状刃33を有するドリルは、トレフィン(trephine)ドリルと呼ばれている。
【0029】
ガイド溝形成用部品50は、後述するように、予備的なガイド溝を形成するために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。また、アダプタ部品60も、シャフト体10やガイド溝形成用部品50の取扱性を向上させるために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。また、押出部品70も、円筒体30の中に収容された略円柱状骨片96の回収を容易ならしめるために、穿孔ドリルシステム1の中に選択的に含めることができる。
【0030】
まず、図1、3、6及び8を参照しながら、シャフト体10を説明する。
【0031】
略円柱状のシャフト体10は、チタン合金やステンレススチール等の剛性を持った金属材料からなり、図6に示すように、軸方向に延在する第1軸11と、軸方向に延在する第2軸13と、第1軸11と第2軸13との境界に設けられたフランジ12と、を備えている。第1軸11と第2軸13が同芯である。第2軸13よりも大きな外径のフランジ12は、シャフト体10の軸方向の動きを規制するストッパーとして設けられている。
【0032】
第1軸11の基端側の端部には、第1連結部15が設けられている。第1連結部15は、図3に示すように、部分的に切り欠かれた切欠16を有している。第1連結部15がハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して係合して、穿孔ドリル3がハンドピース80の駆動ヘッド81に対して着脱自在であるように構成されている。
【0033】
第2軸13には、軸直交方向に突出する一対のピン14が立設されている。一対のピン14が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。第2連結部としての一対のピン14は、第3連結部としての一対の連結溝34にそれぞれ係合して、シャフト体10と円筒体30との間での連結構造を形成する。第2軸13の先端部には、穿孔94の切削深さを規制するための深さ規制面19が設けられている。すなわち、深さ規制面19が切除すべき骨片96の表面等に当接することにより、穿孔94の切削深さを規制する。
【0034】
略リング状の弾性体17が、フランジ12とピン14との間で第2軸13に挿着されている。弾性体17は、例えば、伸縮自在のゴム製リングである。弾性体17は、シャフト体10を円筒体30に連結させたときに軸方向の付勢力を提供して、連結構造に緩みが出ることを防止するために配設されている。
【0035】
図1及び3に示されているように、複数のシャフト体10毎に、第2軸13の軸方向長さが異なるように寸法構成されている。後述するように、穿孔94の切削深さは、深さ規制面19と鋸歯状刃33の先端部との間の軸方向間隔によって規定される。図3に示すように、フランジ近傍の第1軸11の側面には、穿孔94の切削深さを表す数字が刻字されている。
【0036】
次に、図1、3、4、5、及び6を参照しながら、円筒体30を説明する。
【0037】
略円筒状の円筒体30は、純チタンやチタン合金等の剛性を持った金属材料からなり、図4に示すように、軸方向に延在する円筒状本体31と、円筒状本体31の基端側の端部に設けられた連結溝34と、円筒状本体31の先端側の開口端部に設けられた鋸歯状刃33と、を備えている。円筒状本体31の厚みは、例えば、0.25mm程度である。
【0038】
円筒状本体31の基端側の厚肉の軸支部32に形成された第1貫通孔37と、円筒状本体31の先端側の薄肉部分に形成された第2貫通孔38とが、円筒状本体31の内部に形成されている。第2貫通孔38には、第2軸13の深さ規制面19(先端部)と鋸歯状刃33の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片96を採取するための略円柱状の骨採取空間が形成されている。円筒状本体31の内部において、第1貫通孔37と第2貫通孔38とが連通している。シャフト体10の第2軸13が、第1貫通孔37に挿入される。また、後述するガイド溝形成用部品50の第2共通軸53が、第1貫通孔37に挿入される。
【0039】
連結溝34は、基端側が開口して軸方向に延在する縦溝35と、軸直交方向に延在する横溝36と、からなる略L字状に折れ曲がった溝である。一対の連結溝34が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。
【0040】
図5に示すように、ピン14を連結溝34の縦溝35に沿って先端側に向けて押し入れると、ピン14が連結溝34の横溝36に突き当たる。その後、ピン14を連結溝34の横溝36に沿って時計回りに回転させることにより、一対のピン14が一対の連結溝34に嵌合して、シャフト体10と円筒体20との間で連結構造を実現することができる。また、フランジ12と軸支部32の基端側の端面との間に介在している弾性体17の付勢力により、ピン14が連結溝34の横溝36に対して弾性的に当接している。したがって、一対のピン14及び連結溝34の間でいわゆるバヨネット構造を形成し、当該バヨネット構造により、シャフト体10と円筒体20との間で強固に連結した構造が実現される。当該バヨネット構造は、シャフト体10と円筒体20との間での着脱が非常に容易であり、優れた操作性を与える。なお、当該バヨネット構造の他に、雌ネジ及び雄ネジを用いた螺合構造等も、シャフト体10と円筒体20との間での連結構造として利用可能である。
【0041】
図1に示されているように、複数の円筒体30毎に、第2貫通孔38の外径寸法及び内径寸法が異なるように寸法構成されている。穿孔94の孔径は、円筒体30の外径寸法によって規定される。切り取られる骨片96のサイズは、円筒体30の第2貫通孔38の内径寸法によって規定される。1セットに含まれる複数種類の円筒体30のサイズを表1に例示する。
【0042】
【表1】
【0043】
複数種類の円筒体30において、内径寸法及び外径寸法は異なるものの、円筒状本体31の軸方向長さ、第2貫通孔38の軸方向長さ、及び、バヨネット連結構造は共通している。骨採取空間の軸方向長さ、すなわち穿孔94の切削深さは、第2軸13の深さ規制面19と鋸歯状刃33の先端部との間の軸方向間隔によって規定される。したがって、第2軸13の軸方向長さが長くなると、骨採取空間の軸方向長さが短くなり、採取される骨片96の軸方向長さが短くなる。言いかえれば、第2軸13の軸方向長さに応じて、第2貫通孔38における骨採取空間の軸方向長さが変動する。
【0044】
図1等に示すように、術者が深さ規制面19のおおよその位置を視認できるように、ゼブラ模様の穿孔深さ用目印が円筒状本体31の側面に設けられている。また、複数種類の円筒体30を識別することができるように、軸支部32の外表面を複数の色に着色して色分けしてよい。
【0045】
したがって、第2軸13の軸方向長さが異なった複数種類のシャフト体10と、第2貫通孔38の内径寸法が異なった複数種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることにより、複数種類の穿孔ドリル3を構成することができる。なお、シャフト体10と円筒体30とを組み合わせた穿孔ドリル3においては、シャフト体10の軸芯と円筒体30の軸芯とが同芯である。図1に例示した穿孔ドリルシステム1では、5種類のシャフト体10と6種類の円筒体30とを適宜に組み合わせることによって、穿孔94の孔径や穿孔深さが異なった合計で30通りの穿孔ドリル3を作成することができる。
【0046】
次に、図7及び8を参照しながら、ガイド溝形成用部品50を説明する。
【0047】
図7に示すように、略円柱状のガイド溝形成用部品50(マーキングシャフト)は、軸方向に延在する第1共通軸51と、軸方向に延在する第2共通軸53と、第1共通軸51と第2共通軸53との境界に設けられたフランジ52と、を備えている。
【0048】
第1共通軸51の基端側の端部には、第1共通連結部55が設けられている。第1共通連結部55は、図8に示すように、部分的に切り欠かれた切欠56を有している。第1共通連結部55がハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して係合して、ガイド溝形成用部品50がハンドピース80の駆動ヘッド81に対して着脱自在であるように構成されている。
【0049】
第2共通軸53には、軸直交方向に突出するピン54が立設されている。一対のピン54が、軸芯を中心にして180度の角度で点対称に設けられている。第2連結部としての一対のピン54は、第3連結部としての一対の連結溝34にそれぞれ係合して、ガイド溝形成用部品50と円筒体30との間での連結構造を形成する。第2共通軸53の先端部には、小ドリル部59が設けられている。小ドリル部59は、軸方向に延在する切削刃を備えている。ガイド溝形成用部品50と円筒体30とを組み合わせたガイド溝形成ドリル5においては、図7に示すように、小ドリル部59の尖った先端が、円筒体30の鋸歯状刃33の端部よりも外方に(例えば2mm程度)突出している。この小ドリル部59の突出し且つ尖った先端は、鋸歯状刃33より先に骨表面に突き刺されることにより、予備的な円環状のガイド溝を形成する際の回転中心を安定化し、回転の芯ブレを抑制するという効果をもたらす。
【0050】
略リング状の弾性体57が、フランジ52とピン54との間で第2共通軸53に挿着されている。弾性体57は、シャフト体10において用いる弾性体17と同様に、ガイド溝形成用部品50を円筒体30に連結させたときに軸方向の付勢力を提供して、連結構造に緩みが出ることを防止するために配設されている。
【0051】
したがって、ガイド溝形成用部品50の構成は、小ドリル部59を除いて、シャフト体10の構成と共通している。なお、ガイド溝形成用部品50と円筒体30とを組み合わせたガイド溝形成ドリル5においては、ガイド溝形成用部品50の軸芯と円筒体30の軸芯とが同芯である。
【0052】
また、図2、5及び8に示すように、穿孔ドリルシステム1は、アダプタ部品60を備えている。アダプタ部品60は、先端側が開口している挿入孔62を本体61の内部に備えている。
【0053】
図8に示すように、挿入孔62は、シャフト体10の第1軸11及びガイド溝形成用部品50の第1共通軸51を挿着できるように寸法構成されている。本体61の基端側には、嵌合部63が設けられている。嵌合部63は、挿入孔62の内壁面よりも軸芯に向けて突出した突出部64を備えている。嵌合部63の突出部64は、第1連結部15の切欠16と、第1共通連結部55の切欠56と、に対してそれぞれ係合するように構成されている。アダプタ部品60の挿入孔62に対してシャフト体10の第1軸11又はガイド溝形成用部品50の第1共通軸51を挿着すると、アダプタ部品60の回転力をシャフト体10又はガイド溝形成用部品50にそれぞれ伝達することができる。
【0054】
したがって、図5に示すように、アダプタ部品60をシャフト体10に装着しておけば、図5の(C)から(D)に移行するときに、すなわちシャフト体10と円筒体30とを連結するときに、発生する弾性体17の弾性力に抗しながら、円筒体30に対するシャフト体10の装着操作をスムーズに行うことができる。
【0055】
また、図2及び9に示すように、穿孔ドリルシステム1は、押出部品70を備えている。押出部品70は、軸方向に延在する押出軸71と、押出軸71よりも大きい外径を有する把持部72と、を備えている。
【0056】
図9に示すように、押出軸71の当接面79は、円筒体30の鋸歯状刃33の端部よりも外方に(例えば2mm程度)突出している。押出軸71は、円筒体30の第1貫通孔37に挿入される。押出軸71を第1貫通孔37に挿入するようにして押出部品70と円筒体30とを組み合わせると、円筒体30の鋸歯状刃33の端部から、押出軸71の当接面79が僅かに突出する。したがって、切除した骨片96が第2貫通孔38内の形成された骨採取空間に取り込まれている円筒体30に対して押出部品70の押出軸71で突くことにより、取り込まれた骨片96が押出軸71の当接面79で押し出されて、略円柱状の骨片96を回収することができる。
【0057】
次に、図10乃至15を参照しながら、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関する第1の使用形態を説明する。
【0058】
まず、アダプタ部品60を用いながら、穿孔すべき孔径に対応する円筒体30と、ガイド溝形成用部品5と、を連結することにより、ガイド溝形成ドリル5を作成する。ハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対してガイド溝形成ドリル5の第1共通連結部55を連結することにより、ガイド溝形成ドリル5がハンドピース80に装着される。
【0059】
図10に示すように、穿孔すべき歯槽骨90の表面を覆っている歯肉92を切開して、歯槽骨90を露出させる。露出した歯槽骨90の表面骨(緻密で硬い皮質骨)に対して、小ドリル部59の尖った先端を突き刺す。小ドリル部59の尖った先端で突き刺したポイントが、予備的な円環状のガイド溝を形成する際の回転中心となる。ガイド溝形成ドリル5を回転駆動させると、小ドリル部59と円筒体30とが同軸で回転して、予備的な切削動作が行われる。小ドリル部59の回転により小さな円錐状の穿孔が骨表面に形成されるとともに、円筒体30の回転により予備的な円環状のガイド溝が骨表面に形成される。円環状のガイド溝の外径は、穿孔すべき孔径と同じサイズを有している。
【0060】
予備的な円環状のガイド溝の形成が完了すると、ガイド溝形成ドリル5を歯槽骨90から引き離し、ハンドピース80からガイド溝形成ドリル5を取り外す。アダプタ部品60を用いながら、取り外したガイド溝形成ドリル5の円筒体30からガイド溝形成用部品5を取り外す。代わりに、アダプタ部品60を用いながら、同径の円筒体30と、穿孔すべき穿孔深さに対応するシャフト体10と、を連結することにより、所望の孔径及び穿孔深さを持った穿孔ドリル3を作成する。
【0061】
円筒体30の鋸歯状刃33を予備的な円環状のガイド溝に嵌入して、穿孔ドリル3の位置決めを行う。鋸歯状刃33が円環状のガイド溝に嵌入した状態で、軸芯を中心に穿孔ドリル3を回転駆動させると、円環状のガイド溝に沿って、すなわち、小ドリル部59の尖った先端で突き刺したポイントを中心に、円筒体30の鋸歯状刃33が回転して、本切削動作が行われる。円環状のガイド溝に沿って本切削を行うので、切削開始時の軸芯ブレの発生が抑制される。
【0062】
円筒体30が回転するに連れて、より深いところまで歯槽骨90が切削されるが、所定の深さまで削り進むと、図11に示すように、第2軸13の深さ規制面19が歯槽骨90の表面骨(緻密で硬い皮質骨)に当接する。第2軸13の深さ規制面19がストッパーとして機能するので、円筒体30がいくら回転しても、それ以上先に削り進むことは無い。すなわち、第2貫通孔38の中に形成された略円柱状の骨採取空間に、略円柱状の骨片96が取り込まれている。したがって、第2軸13の深さ規制面19が歯槽骨90の表面の皮質骨に当接することにより、本切削動作が完了する。
【0063】
本切削動作が完了した後に、図12のように、穿孔ドリル3を歯槽骨90から引き離すと、骨片96が歯槽骨90から分離されて円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んでいる。当該現象は以下のメカニズムによって起こっているものと推察される。本切削の過程で、歯槽骨90が円筒状に切削されて、骨片96の側面部分は周囲の骨から分離されている。骨片96の底面部分には切削動作が及ばないものの、骨片96の側面部分を切削する過程で、円筒体30の内面と骨片96の側面部分との間で摩擦力が発生して、円筒体30の回転トルクが骨片96に作用する。そして、骨片96の底面部分がくびれることにより、骨片96の底面部分が周囲の骨から分離される。その結果、骨片96が円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んでいるものと推察される。
【0064】
アダプタ部品60を用いながら、図13に示すように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30からシャフト体10を取り外す。そして、図14に示すように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30に対して、押出部品70を装着する。
【0065】
図15に示すように、押出部品70の押出軸71を円筒体30の第1貫通孔37に挿入すると、第2貫通孔38内の骨片96が押出軸71の当接面に当接し、第2貫通孔38の中に(すなわち、骨採取空間に)嵌り込んだ骨片96が押出軸71で押し出されて、略円柱状の骨片96が回収される。
【0066】
採取された骨片96は、他の骨欠損部位や他の凹部にそのままの略円柱状形態で埋め込んで利用したり、採取された骨片96を破砕したあと、採取された骨片96単体であるいは人工骨材料との混合体の形態で充填骨材料として利用したりすることができる。
【0067】
次に、図16乃至21を参照しながら、本発明に係る穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関する第2の使用形態を説明する。第2の使用形態は、歯槽骨90内に埋入されたフィクスチャー97を含む骨片96を切除するための穿孔形成に関する。
【0068】
まず、アダプタ部品60を用いながら、穿孔すべき孔径に対応する円筒体30と、穿孔すべき穿孔深さに対応するシャフト体10と、を連結することにより、所望の孔径及び穿孔深さを持った穿孔ドリル3を作成する。なお、円筒体30の第2貫通孔38の孔径は、歯槽骨90内に埋入されたフィクスチャー97の外径よりもわずかに大きいように寸法構成されている。例えば、円筒体30の第2貫通孔38の内径は、埋入されたフィクスチャー97の外径よりも1mm程度大きい。また、第2貫通孔38の中に形成された骨採取空間の軸方向長さは、カバーキャップ98のヘッド部高さにフィクスチャー97の埋入高さを足し合わせた軸方向長さよりもわずかに大きいように寸法構成されている。ハンドピース80の駆動ヘッド81の連結部82に対して穿孔ドリル3の第1連結部15を連結することにより、穿孔ドリル3がハンドピース80に装着される。
【0069】
図16に示すように、穿孔すべき歯槽骨90の表面を覆っている歯肉92を切開して、歯槽骨90を露出させる。露出した歯槽骨90には、既にフィクスチャー97が埋入されている。フィクスチャー97に装着されているカバーキャップの代わりに、既に埋入されているフィクスチャー97と同じ外径であって、最も高さのある(例えば約2mmの高さ)ヘッド部を有するカバーキャップ98をフィクスチャー97に装着する。フィクスチャー97に対して軸方向に突出しているカバーキャップ98のヘッド部は、穿孔ドリル3を位置決めするためのガイド部材として用いられる。
【0070】
図16に示すように、円筒体30の鋸歯状刃33をカバーキャップ98のヘッド部に嵌入して、穿孔ドリル3の位置決めを行う。円筒状本体31の鋸歯状刃33がカバーキャップ98のヘッド部に嵌入した状態で、軸芯を中心に穿孔ドリル3を回転駆動させると、カバーキャップ98のヘッド部にガイドされながら、円筒体30の鋸歯状刃33が回転して、切削動作が行われる。カバーキャップ98のヘッド部に沿って切削を行うので、切削開始時の位置ズレの発生が抑制される。
【0071】
円筒体30が回転するに連れて、より深いところまで歯槽骨90が切削されるが、所定の深さまで削り進むと、図17のように、第2軸13の深さ規制面19がカバーキャップ98のヘッド部に当接する。第2軸13の深さ規制面19がストッパーとして機能するので、円筒体30がいくら回転しても、それ以上先に削り進むことは無い。したがって、第2軸13の深さ規制面19がカバーキャップ98のヘッド部に当接することにより、切削動作が完了する。
【0072】
切削動作が完了した後に、図18のように、穿孔ドリル3を歯槽骨90から引き離すと、フィクスチャー97を含む骨片96が歯槽骨90から分離されて円筒体30の第2貫通孔38の中に(すなわち骨採取空間に)嵌り込んでいる。当該現象も、上述した第1実施形態で説明したメカニズムと同様のメカニズムで起こるものと推察される。
【0073】
アダプタ部品60を用いながら、図13と同じように、骨片96の嵌り込んだ円筒体30からシャフト体10を取り外す。そして、図14と同じように、フィクスチャー97を含む骨片96の嵌り込んだ円筒体30に対して、押出部品70を装着する。
【0074】
図19に示すように、押出部品70の押出軸71を円筒体30の第1貫通孔37に挿入すると、円筒体30の第2貫通孔38内のフィクスチャー97を含む骨片96が押出軸71の当接面に当接し、第2貫通孔38内に嵌り込んだフィクスチャー97を含む骨片96が押出軸71で押し出されて、フィクスチャー97を含む略円柱状の骨片96が抜去される。
【0075】
本発明の穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1に関して歯科の分野における実施形態を説明したが、本発明の穿孔ドリル3及び穿孔ドリルシステム1は、例えば、頭蓋、顎、顔面の復元外科、美容外科、形成外科、整形外科、口腔外科、耳鼻咽喉科等の分野において、骨や軟骨組織の欠損・損傷した部位を修復、復元、再生するために使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:穿孔ドリルシステム
3:穿孔ドリル
5:ガイド溝形成ドリル
10:シャフト体
11:第1軸
12:フランジ
13:第2軸
14:ピン(第2連結部)
15:第1連結部
16:切欠
17:弾性体
19:深さ規制面(先端部)
30:円筒体
31:円筒状本体
32:軸支部
33:鋸歯状刃
34:連結溝(第3連結部)
35:縦溝
36:横溝
37:第1貫通孔
38:第2貫通孔(骨採取空間)
40:穿孔深さ用目印
50:ガイド溝形成用部品(マーキングシャフト)
51:第1共通軸
52:フランジ
53:第2共通軸
54:ピン
55:第1共通連結部
56:切欠
57:弾性体
59:小ドリル部
60:アダプタ部品
61:本体
62:挿入孔
63:嵌合部
64:突出部
70:押出部品
71:押出軸
72:把持部
79:当接面
80:ハンドピース
81:駆動ヘッド
82:連結部
90:歯槽骨
92:歯肉
94:穿孔
96:骨片
97:フィクスチャー(インプラント)
98:カバーキャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、
前記シャフト体は、
駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、
円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、
前記円筒体は、
前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、前記第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、
前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、
前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、
前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定することを特徴とする穿孔ドリル。
【請求項2】
前記第2貫通孔は、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片を採取するための骨採取空間を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の穿孔ドリル。
【請求項3】
前記第2連結部と前記第3連結部との間での連結構造は、バヨネット構造であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の穿孔ドリル。
【請求項4】
前記第1軸と前記第2軸との間の境界には、フランジを備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の穿孔ドリル。
【請求項5】
前記第2貫通孔の孔径は、生体骨内に埋入されたインプラントの外径よりも大きいように寸法構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の穿孔ドリル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載された、シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルを複数種類備える穿孔ドリルシステムであって、
前記複数種類のシャフト体のそれぞれにおいて、前記第1軸に設けられた連結構造が共通し、
前記複数種類の円筒体のそれぞれにおいて、前記第2軸に設けられた連結構造及び軸支構造が共通しており、
前記円筒状本体の内径寸法及び前記第2軸の軸方向長さが異なるように寸法構成されており、
前記円筒状本体の異なった内径寸法と前記第2軸の異なった軸方向長さとを組み合わせることにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することを特徴とする穿孔ドリルシステム。
【請求項7】
前記シャフト体の第1軸と共通した連結構造を有する第1共通軸と、
前記シャフト体の第2軸と共通した連結構造及び軸支構造を有する第2共通軸と、
前記第2共通軸から軸先端方向に延在して、前記円筒状本体の内径よりも小さな外径を有する小ドリル部と、を有するガイド溝形成用部品をさらに備えて、
前記ガイド溝形成用部品が、前記穿孔ドリルの円筒体に対して着脱自在に構成されており、
前記小ドリル部の先端が、前記穿孔ドリルの鋸歯状刃よりも外方に突出していることを特徴とする、請求項6に記載の穿孔ドリルシステム。
【請求項8】
前記穿孔ドリルの円筒体の軸方向長さよりも長い押出軸を有する押出部品をさらに備えることを特徴とする、請求項6又は7に記載の穿孔ドリルシステム。
【請求項1】
シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルであって、
前記シャフト体は、
駆動ヘッドに連結するための第1連結部を有する第1軸と、
円筒体に連結するための第2連結部を有する第2軸と、を備え、
前記円筒体は、
前記第2軸を軸支する第1貫通孔と、前記第1貫通孔に対して軸方向に連通する第2貫通孔と、を有する円筒状本体と、
前記第2連結部に対して着脱自在に連結するための第3連結部と、
前記円筒状本体の先端開口部に形成された鋸歯状刃と、を備え、
前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間の間隔が、前記鋸歯状刃によって形成される穿孔の深さを規定することを特徴とする穿孔ドリル。
【請求項2】
前記第2貫通孔は、前記第2軸の先端部と前記鋸歯状刃の先端部との間に画定されて、略円柱状の骨片を採取するための骨採取空間を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の穿孔ドリル。
【請求項3】
前記第2連結部と前記第3連結部との間での連結構造は、バヨネット構造であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の穿孔ドリル。
【請求項4】
前記第1軸と前記第2軸との間の境界には、フランジを備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の穿孔ドリル。
【請求項5】
前記第2貫通孔の孔径は、生体骨内に埋入されたインプラントの外径よりも大きいように寸法構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の穿孔ドリル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載された、シャフト体と円筒体とが着脱自在に構成される穿孔ドリルを複数種類備える穿孔ドリルシステムであって、
前記複数種類のシャフト体のそれぞれにおいて、前記第1軸に設けられた連結構造が共通し、
前記複数種類の円筒体のそれぞれにおいて、前記第2軸に設けられた連結構造及び軸支構造が共通しており、
前記円筒状本体の内径寸法及び前記第2軸の軸方向長さが異なるように寸法構成されており、
前記円筒状本体の異なった内径寸法と前記第2軸の異なった軸方向長さとを組み合わせることにより、所望の孔径及び深さを持った穿孔を形成することを特徴とする穿孔ドリルシステム。
【請求項7】
前記シャフト体の第1軸と共通した連結構造を有する第1共通軸と、
前記シャフト体の第2軸と共通した連結構造及び軸支構造を有する第2共通軸と、
前記第2共通軸から軸先端方向に延在して、前記円筒状本体の内径よりも小さな外径を有する小ドリル部と、を有するガイド溝形成用部品をさらに備えて、
前記ガイド溝形成用部品が、前記穿孔ドリルの円筒体に対して着脱自在に構成されており、
前記小ドリル部の先端が、前記穿孔ドリルの鋸歯状刃よりも外方に突出していることを特徴とする、請求項6に記載の穿孔ドリルシステム。
【請求項8】
前記穿孔ドリルの円筒体の軸方向長さよりも長い押出軸を有する押出部品をさらに備えることを特徴とする、請求項6又は7に記載の穿孔ドリルシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−10758(P2012−10758A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147785(P2010−147785)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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