説明

穿孔装置

【課題】パンチ刃を通じて用紙の抜き屑が上方に押し出される構成であっても、前記抜き屑によってパンチ刃を支持する刃ホルダを容易に取り外すことのできる穿孔装置を提供すること。
【解決手段】用紙Pの支持面11を有するベース12と、このベース12の後端部に配置された一対の側部材14、15と、これら側部材14、15間に設けられた回転軸16を回転中心として回転可能な操作レバー18と、側部材14、15間で昇降可能に支持されたスライド部材20と、このスライド部材20に刃ホルダ23を介して着脱自在に装着されたパンチ刃24とを備えて穿孔装置10が構成されている。スライド部材20は、パンチ刃24の上端位置を規制するとともにパンチ刃24の内部に連なる通路80を備えており、刃ホルダ23は、パンチ刃24と通路80との軸線を相対的に角度変位させた状態でスライド部材20に着脱自在に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穿孔装置に係り、更に詳しくは、中空筒状のパンチ刃によって多数枚の用紙を穿孔することができるとともに、パンチ刃の内部及び後端付近に用紙の抜き屑が堆積していても、パンチ刃を支持する刃ホルダを容易に取り外すことのできる穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙の端縁に沿って複数の綴じ穴を穿孔することのできる穿孔装置が知られている。この穿孔装置は、中軸のパンチ刃を用いてベース側に用紙を打ち抜くタイプと、中空のパンチ刃を用いて当該パンチ刃内に抜き屑を通過させて排出するタイプとが存在する。特に、多数枚の用紙に穿孔を行うタイプの穿孔装置は、後者のパンチ刃が用いられている。
特許文献1には、前記中空筒状のパンチ刃を備えた穿孔装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3875148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された穿孔装置は、パンチ刃が刃トレイに支持され、当該刃トレイが刃ホルダに着脱自在となる構成が採用されている。そして、用紙を穿孔することによって生ずる抜き屑は、パンチ刃内を通り、刃ホルダ内の空間を通じて外部に排出される構成となっている。
しかしながら、多数枚の用紙をパンチ刃内に通過させて排出する構成は、当該パンチ刃内に抜き屑が圧縮された状態で詰まっており、順次穿孔を行うことによって上方に押し出されるものとなる。このとき、パンチ刃の上端から刃ホルダ内の空間内に押し出された抜き屑は、前述したように圧縮状態にあることから、パンチ刃の軸線に沿って直線的に延びて空間の上下間に突っ張り棒のように強固に詰まってしまう傾向をもたらす。
そのため、パンチ刃の保守、交換等を行うべく、刃トレイを刃ホルダから抜き出す際に、前記棒状の抜き屑の存在によって抜き出しを困難にしてしまう、という不都合を招来する。
【0004】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、パンチ刃を通じて抜き屑が上方に押し出される構成であっても、前記抜き屑によってパンチ刃を支持する刃ホルダを容易に取り外すことのできる穿孔装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、穿孔対象となる用紙の支持面を有するベースと、当該ベース上に配置された一対の側部材と、これら側部材間に設けられた回転軸を回転中心として回転可能な操作レバーと、当該操作レバーの回転により前記側部材間で昇降可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材に刃ホルダを介して着脱自在に装着されて前記ベース側に突出する中空筒状のパンチ刃とを含み、前記操作レバーを回転操作することで前記パンチ刃を介して用紙が穿孔可能に設けられた穿孔装置において、
前記スライド部材は、前記パンチ刃の上端位置を規制するとともに当該パンチ刃の内部に連なる通路を備え、
前記刃ホルダは前記通路に対して所定角度変位した姿勢で前記スライド部材に着脱自在に設けられる、という構成を採っている。
【0006】
本発明において、前記スライド部材は前記刃ホルダを前後に移動可能に案内する挿入ガイドを備え、前記刃ホルダは前記挿入ガイド内で角度変位可能に設けられる、という構成を採ることができる。
【0007】
また、前記刃ホルダがスライド部材に装着されたときの前記角度変位を規制するストッパを含んで構成されている。
【0008】
更に、前記刃ホルダは、パンチ刃の支持筒を備えた底部と、一対の側壁と、後壁と、前壁とにより前記支持筒を囲む形状に設けられる、という構成を採るとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記刃ホルダが前記通路に対して所定角度変位してスライド部材に着脱自在となるため、パンチ刃の内部に詰まった抜き屑とスライド部材側の通路内の抜き屑とが一連に繋がって棒状に存在しても、刃ホルダを角度変位させることによって棒状の抜き屑を折ることができる。従って、刃ホルダをスライド部材から取り外す際の抵抗を無くし、刃ホルダに支持されているパンチ刃の交換作業等を容易に行うことができる。
また、スライド部材に挿入ガイドを設け、この挿入ガイド内で角度変位可能に刃ホルダが設けられているため、刃ホルダの着脱操作を極めて簡単に行うことができる。
更に、前記ストッパを設けることにより、刃ホルダの取付位置が安定して保たれるようになる。
また、刃ホルダが、パンチ刃の支持筒を囲む形状であれば、用紙の抜き屑を折った際に散る屑片を受け取って飛び散らせないようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において、方向若しくは位置を示す用語は、特に明記しない限り、図2を基準として用いるものとし、同図中右側を「前」とする一方、左側を「後」とする、また、同図中紙面直交方向を「左右方向」とし、手前側を「左」、奥行き側を「右」とする。
更に、「非操作時」とは、図1に示されるように、操作レバーがベースから離れた開放限にある場合について用いられ、当該開放限にある操作レバーの位置を「初期位置」とする。また、「穿孔時」とは、パンチ刃の先端がベース側に突き当たって用紙を貫通したときを意味し、このときの操作レバーの位置を「倒伏位置」とする。なお、用紙をパンチ刃が貫通して当該用紙からパンチ刃が抜き出されたときは「穿孔完了時」であり、非操作時と実質同じ位置となる。
【0011】
図1には、本実施形態に係る穿孔装置の概略斜視図が示され、図2には、その概略側面図が示されている。また、図3には、前記穿孔装置の一部を断面した概略正面図が示されている。これらの図において、穿孔装置10は、穿孔対象となる用紙Pの支持面11を上面側に備えたベース12と、当該ベース12の後端側に固定された一対の側部材14、15と、これら側部材14、15間に設けられた回転軸16(図3参照)を回転中心として回転可能な操作レバー18と、当該操作レバー18の回転により前記側部材14、15間で昇降可能に支持されたスライド部材20と、当該スライド部材20と操作レバー18とを相互に連結するリンク部材21と、スライド部材20に刃ホルダ23を介して着脱自在に装着されて前記支持面11側に突出する中空筒状のパンチ刃24と、側部材14、15に回転可能に支持されたガード部材26と、スライド部材20に取り付けられて用紙Pを上方より押さえ付ける押さえ部材27とを備えて構成されている。
【0012】
前記ベース12は、左右方向の長さに対して前後方向が長い形状に設けられ、平面視で略長方形状に近似した形状に設けられ、当該ベース12の後端側おける左右両側に前記一対の側部材14、15が固定されている。ベース12において、側部材14、15の直近前方位置には、センタリング部材30が配置されているとともに、当該センタリング部材30の配置領域内に位置規制部材31(図5参照)が配置されている。
【0013】
前記センタリング部材30は、図4に示されるように、ベース12の左右両側から相反する方向に突出可能に設けられて略点対称形状となる一対の移動部材33と、これら移動部材33の突出方向先端側において上下に出没可能に設けられた一対の片部材34とを備えて構成されている。これら移動部材33は、前記支持面11の下面側に形成された隙間を左右方向に横断する前後二つのスライド片36、37と、これらスライド片36、37の先端側を相互に連結するとともに、不使用時の位置(図1参照)がベース12の側面と略面一となる連結体39とを備えて構成され、当該連結体39の上面側前後方向に、前記片部材34を出没させるスロット穴40が形成されている。連結体39の上端部分には移動部材33を左右方向に移動させるための操作片39Aが略水平方向外側に向けて設けられており、当該操作片39Aを指先で摘んで移動部材33を引き出しできるようになっている。なお、移動部材33は、ベース12内に設けられた図示しないピニオンに噛み合うラックが前記スライド片36の下面側に形成され、これにより、各移動部材33がベース12の左右方向に同期して移動可能とされている。
【0014】
前記片部材34は、前記連結体39の内面側において、その面がベース12の前後方向に沿う向きで回転可能に支持されており、相互に平行となるように対向配置されている。これら片部材34は、図4に示されるように、用紙Pの差し込み側端縁P1に連なる左右の側端縁P2の位置を規制し、これにより、差し込み側端縁P1の中心に対して対称位置に穿孔が行われるようになっている。なお、片部材34の側端には、指先を引っかけてスロット穴40から突出させるための指掛け部34Aが設けられている。
【0015】
前記位置規制部材31は、図5に示されるように、左側に位置する連結体39の内側に設けられている。この位置規制部材31は前記片部材34と同様の舌片状をなし、ベース12の側壁42より内側に設けられたスロット穴43から上下に出没可能に設けられている。位置規制部材31は、側壁42の内面側に回転可能に支持されており、その側端に設けられた突片31Aに指先を引っかけることにより、スロット穴43から突出するように回転させることができる。
【0016】
前記側部材14、15は、実質的に対称形状に設けられている。従って、ここでは、左側の側部材14について説明するものとし、右側の側部材15に関しては、同一符号を用いて説明を省略する。
側部材14は、図3及び図4に示されるように、前方下部に用紙Pの差し込み空間Sを形成するようにコ字状に切り欠いた形状を備えているとともに上部が略円弧状に湾曲した形状に設けられている。この側部材14は、ダイキャストによる一体成形品が用いられており、その内側面には、スライド部材20の左右方向両端側を昇降可能に受容するガイド溝45が上下方向に沿って形成されている。また、上部寄りの中央には、段付きの貫通孔46が形成され、当該貫通孔46に操作レバー18の回転中心軸となる回転軸16が相対する側部材15との間に掛け渡されている。この回転軸16は、側部材14の外面側から挿入される固定用ボルト50を介して取り付けられている。
なお、側部材14の上端中央部には摘み部材51が設けられており、当該摘み部材51を左右方向に回転操作することで、操作レバー18の操作を禁止したり、その禁止を解除できるようになっている。
【0017】
前記操作レバー18は、一端側が回転軸16に固定された左右一対の板状のアーム54と、当該アーム54の他端側すなわち自由端側に設けられて各アーム54を相互に連結する略U字状の把手部56と、これらアーム54、把手部56間に配置された複数の補強桟57とにより構成されている。操作レバー18は、図2に示されるように、非操作時若しくは穿孔完了時において、前記回転軸16の軸線に直交する垂直線L1に対して後方に角度θ1傾いた初期位置を開放限とする一方、穿孔時には、回転軸16に直交する水平線L2に対して下方に角度θ2傾いた位置を倒伏位置として回転可能となっている。操作レバー18の回転角度は、特に限定されるものではないが、本実施形態では120度程度とされており、前記θ1、θ2は、それぞれ24.5度、5.5度とされている。
【0018】
前記スライド部材20は、図2に示されるように、前記回転軸16の直近前方位置で、前記側部材14、15間に昇降可能に支持されている。このスライド部材20は、図6に示されるように、平面視で左右方向に長いブロック状をなす本体ブロック60と、この本体ブロック60の左右両側に一体に設けられた側端ブロック61とを含む。スライド部材20は、側端ブロック61が前記側部材14、15の相対面に形成されたガイド溝45に受容されて当該ガイド溝45に沿って昇降可能となっている。本体ブロック60の中央部において、上下二箇所には、上下方向を長軸側とする略楕円形状の凸部63が形成されており、これら凸部63を利用して押さえ部材27が支持されるようになっている。また、本体ブロック60の左右両側二箇所領域には、刃ホルダ23を着脱自在に装着するためのホルダ取付部65が形成され、本体ブロック60と側端ブロック61との上部間には、リンク部材21の取付空間S1が形成されている。
なお、本実施形態におけるスライド部材20は、特に限定されるものではないが、ダイキャストによる一体成形品が採用され、全体的な軽量化を達成するために、上面部66及び下面部67を複数の仕切部68で連結し、前記ホルダ取付部65等、必須の構造部分以外の部分に中空部や凹部が点在するように形成されている。
【0019】
前記側端ブロック61は、本体ブロック60の側端面に形成された穴69と同一軸線上に位置する孔70を備え、この孔70の上下各部には、軽量化用の凹部71が形成されている。
【0020】
前記ホルダ取付部65は、図3、図6及び図7に示されるように、本体ブロック60の下面部67に設けられて刃ホルダ23を前後に移動可能に案内する一対の挿入ガイド73と、刃ホルダ23の上部領域を受け入れる受容部74とを含む。挿入ガイド73は、前後方向に向けられた略コ字型のレール状に設けられ、その開放側がそれぞれ相反する方向に向くように配置されている。ここで、挿入ガイド73の前端側は、傾斜面73Aとされており、刃ホルダ23を着脱する際の当該刃ホルダ23の角度変位を許容するようになっている。
【0021】
前記受容部74は、前記挿入ガイド73間の上部に位置する二つの仕切部68間に設けられている。この受容部74は、図7に示されるように、仕切部68の下部に位置する基部75と、この基部75の前後方向中間付近から上方に向けられた起立部76と、当該起立部76の上端から上部後方に向かって傾斜する傾斜起立部77と、この傾斜起立部77の上端に連なって前後方向に向けられた上平面部79とを含む。基部75は、起立部76の直近後方において、上下方向に開通する通路80を備えており、この通路80よりも後部側は、後方に向かって上面位置が低くなる傾斜面81として形成されている。また、基部75の前端部下面側には、切欠部82が形成されている一方、前記上平面部79の前端側は、上向きに突出する爪部84が形成されている。
【0022】
前記リンク部材21は、前記本体ブロック60と側端ブロック61との間の取付空間S1(図6参照)内に位置して前記操作レバー18とスライド部材20とを連結するように設けられている。このリンク部材21は、図2及び図3に示されるように、操作レバー18におけるアーム54の前記回転軸16寄り部分と、スライド部材20の上部とを直接連結する略円弧状の片状体を用いて形成されている。リンク部材21は、その中心に対して対称形状に設けられており、リンク部材21と操作レバー18との連結位置を第1の連結位置A1とする一方、リンク部材21とスライド部材20との連結位置を第2の連結位置A2としたときに、操作レバー18の初期位置における第1の連結位置A1が前記回転軸16に対して後方上部に位置する一方、第2の連結位置A2が回転軸16に対して前方に位置するように設定され、また、操作レバー18の倒伏位置で、第1の連結位置A1と第2の連結位置A2がパンチ刃24の軸線と略同一軸線上に位置するように設定されている。
【0023】
前記リンク部材21は、図3に示されるように、二枚一組として構成されている。リンク部材21の一端側は操作レバー18のアーム54の板面を挟むように配置され、軸ピン86を介して相対回転可能に連結することで、前記第1の連結位置A1が構成されるようになっている。この一方、リンク部材21の他端側は、スペーサ87を配置した状態で、当該スペーサ87内を貫通する軸ピン89の両端を前記本体ブロック60に形成された穴69と、側端ブロック61に形成された孔70に支持させることで、前記第2の連結位置A2が形成されている。
【0024】
前記刃ホルダ23は、図7に示されるように、パンチ刃24を支持する下部ユニット90と、この下部ユニット90の前端側上部に連結された上部ユニット91とからなる。下部ユニット90は、図6にも示されるように、平面視略方形底部92と、この底部92に連なる前壁93、左右一対の側壁94、後壁95、前壁93から突出する連結凸部97とを含む。底部92の中央部には、パンチ刃24を上方より抜き差し可能とする支持筒98が形成されているとともに、側壁94の内面には、前後方向に向けられた突条部100が設けられている。また後壁95は、左右両側に切欠部95Aが形成され、当該切欠部95Aにより、前記挿入ガイド73内に突条部100を位置させることができるようになっている。ここで、突条部100は、下部ユニット90が挿入ガイド73に支持された状態において、図7に示されるように、上端面100Aが水平面内に位置する一方、下端面100Bが前方(図7中右方)に向かって次第に上昇する傾斜面として形成されている。なお、前記連結凸部97には、左右一対の突起102と、これら突起102間で上下方向に貫通する穴104が形成されている。
【0025】
前記上部ユニット91は、前記突起102に嵌合する下部形状を備えているとともに上部が側面視で二股に分岐した片状部材105と、この片状部材105の上端部に回転可能に取り付けられたストッパ106とを含んで構成されている。上部ユニット91は、前記連結凸部97の下端から挿入される図示しないねじにより片状部材105の下端を連結することで一体化される。また、ストッパ106は後端下部に下向きの鈎状部106Aを備えたレバー状をなし、その前端側を操作端として上方より押し下げることで鈎状部106A側が上方に変位可能となっている。鈎状部106Aは、前記爪部84に係り合うように形成されている。なお、ストッパ106は、その回転軸回りに装着される図示しないばねにより、片状部材105に対して図7に示される位置を保つように設けられ、前記鈎状部106Aが爪部84に係り合った状態で、刃ホルダ23の角度変位を規制するようになっている。
【0026】
前記パンチ刃24は、図8に示されるように、中空筒状に設けられており、下端断面が鋭角に形成されて用紙Pを打ち抜くように設けられている一方、上端部は大径筒部24Aとされて前記支持筒98内に着座可能とされている。大径筒部24Aの上端は、図7に示されるように、刃ホルダ23が前記スライド部材20の本体ブロック60に装着された状態で、前記通路80と連通するように当該通路80の下部外周側に突き当たり、これにより、パンチ刃24の軸方向移動を規制した状態で、パンチ刃24の内部と通路80とが連通し、パンチ刃24内を通過する用紙Pの抜き屑Pa(図8参照)が通路80を経て後部側に落下させて図示しないトレイに回収できるようになっている。
【0027】
前記ガード部材26は、常時は、前記差し込み空間S内に位置するように配置されているとともに、前記ベース12に対して上下方向に変位可能に設けられている。このガード部材26は、前記側部材14、15の外面側に軸107を介して回転可能に支持された左右一対の板状アーム108と、これら板状アーム108の前端側を相互に連結して前記差し込み空間S内に位置するガード部本体109とからなる。ガード部本体109は、図9に示されるように、用紙差し込み方向(図1中矢印a方向)に直交する左右一対の起立面110と、これら起立面110の間に位置する傾斜面111とを備えた形状に設けられている。起立面110は、前部上方起立面113と、当該前部上方起立面113の下端に水平面115を介して連なる後部下方起立面117とを含み、傾斜面111は、前部上方起立面113の各内方端から前方に向けられた突出面119間を相互に連結するとともに、下方に向かうに従って後方に傾斜する形状に設けられている。下部後方起立面117と傾斜面111の下端は、平坦な底面120に連なるように設けられている。ここで、前記一対の起立面110は、パンチ刃24に対応する前方領域に配置されている。
【0028】
前記押さえ部材27は、図3及び図6に示されるように、左右方向に延びて用紙Pを上方より押さえ付ける細長い板状の押さえ面部130と、この押さえ面部130の前端中央部に連なるとともに前記スライド部材20の上下方向に沿って相対移動可能に取り付けられる取付部131と、当該取付部131から前記スライド部材20の上部側に位置する上方部132とからなる。押さえ面部130の面内には、左右二箇所位置に切欠部135が形成されており、当該切欠部135をパンチ刃24が上下方向に通過するようになっている。ここで、押さえ面部130の左右両端側は、図3に示されるように、側部材14、15の下端面に形成された段部14A、15Aに下方から突き当たるようになっており、当該突き当たった位置で押さえ部材27の上昇限とされている。押さえ面部130において、取付部131の後方位置の二箇所には、前記本体ブロック60の上面部66の下面側に設けられたばね受け凸部136に対向するばね受け隆起部130Aが形成されており、これらばね受け凸部136とばね受け隆起部130Aとの間にコイルばね137が配置され、これにより、前記押さえ部材27に下向きの力が付与されるようになっている。
【0029】
前記取付部131は、板状に設けられており、その面が左右若しくは上下方向に沿う向きに設けられ、取付部131の中央部には、上下方向に向けられたスロット穴138が上下二箇所に形成されている。これらスロット穴138内には、前記スライド部材20の中央部に設けられた凸部63が位置するようになっており、当該凸部63にワッシャ付きねじ140(図3参照)をねじ込むことで、押さえ部材27がスライド部材20に対して上下方向に相対変位可能な状態で取り付けられる。
【0030】
押さえ部材27の上方部132は、図6、図7に示されるように、取付部131の上端から後方に向けられてスライド部材20の上面側を前後方向に横切る上板面部141と、この上板面部141の後端に連なる湾曲面部143とからなる。湾曲面部143は、上方側が開放する向きとなっており、当該湾曲面部143は、前記回転軸16の下半部外周面に突き当たってこれに係り合うように設けられている。湾曲面部143は、前記押さえ面部130の両端が側部材14、15の下面側に設けられた段部14A、15Aに突き当たると同時に回転軸16の下半部外周面に下方から係り合って押さえ部材27の上昇限とするようになっている。
【0031】
なお、図1中符号144は、前記側部材14、15の後半部を覆うバックカバーを示し、符号145は、前半部を覆うフロントカバーを示す。これらカバーは側部材14,15に着脱自在となっており、バックカバー144の下半部には、図示しないトレイが出し入れ可能に配置されており、このトレイに用紙Pの抜き屑Paが回収されるようになっている。また、符号146は、用紙Pの差し込み方向における差し込み量を調整するダイヤルを示す。
【0032】
次に、本実施形態に係る穿孔装置10の全体的な作用について、図10ないし図12をも参照しながら説明する。
【0033】
パンチ刃24の交換時や用紙Pをベース12の支持面11に載せる時は、図11に示されるように、操作レバー18が起立した位置に保たれる。この際、側部材14の上端に位置する摘み部材51を操作レバー18に沿って起立させる姿勢へ回転させておくことで、操作レバー18の回転操作を禁止することができる。なお、図12に示される摘み部材51の位置は、操作レバー18の回転操作を許容している状態である。
【0034】
多数枚、例えば、300枚程度の用紙Pに穿孔を行う場合には、前記摘み部材51を起立向きに回転させて操作レバー18の回転を許容する状態とし(図1参照)、この状態で、用紙Pをベース12の支持面11に載せ、差し込み側端縁P1を矢印a方向に差し込めばよい。この際、差し込み側端縁P1の中心に対して対称位置に穿孔を行う場合には、図4に示されるように、センタリング部材30をベース12の側端から引き出しておき、前記一対の片部材34を上方にそれぞれ突出させて当該片部材34の各内面に用紙Pの側端縁P2が接するように配置すればよい。
【0035】
差し込み空間Sを遮るように存在するガード部材26は、傾斜面111が起立面110よりも前方に位置しているため、傾斜面111が差し込み側端縁P1を乗り上がるようにガード部材26が回転変位し、これにより、用紙Pの差し込み側端縁P1領域を差し込み空間S内に差し込むことができる。
この一方、穿孔を行わない状態においては、傾斜面111が中央部に位置し、その左右両側に起立面110が形成されているため、差し込み空間S内に手指をアクセスしようとしても、指先等が起立面110に突き当たるのみとなり、上向きの力を意識的に与えない限り、ガード部材26が回転変位してしまうようなことはない。従って、不用意に差し込み空間S内に手指をアクセスすることにより生じ得る危険性を大幅に低下させることができる。
【0036】
用紙Pへの穿孔操作において、図2に示されるように、初期位置にある操作レバー18の把手部56を掴み、穿孔時位置に向けて回転操作すればよい。操作レバー18は、初期位置から前記垂直線L1を通過して、θ1と同程度の角度となる傾斜向きの直線L3付近に至るまでの範囲においては、前記第1の連結位置A1が前方に移動することで、操作レバー18の回転量に対するスライド部材20の下降量は相対的に小さいが、直線L3付近を通過すると、第1の連結位置A1は、第2の連結位置A2を通る垂直線に接近した位置となることから、スライド部材20の下降量は相対的に大きくなる。
【0037】
スライド部材20が下降して押さえ部材27の押さえ面部130が最上位の用紙Pに接することで、用紙Pに押さえ付け力が付与されることとなる。この状態で操作レバー18を更に回転させると、押さえ部材27は下降が規制された状態で、当該押さえ部材27に対してスライド部材20が相対的に下降することとなり、この下降によって、用紙P内にパンチ刃24を打ち込んで穿孔を行うことができる。
【0038】
そして、パンチ刃24が支持面11の図示しないパンチ受け面部に突き当たることで全ての用紙Pにパンチ刃24が貫通する状態となる。この時の操作レバー18は、図2に示されるように、水平線L2から角度θ2回転した倒伏位置となる。
【0039】
次いで、操作レバー18を逆方向に回転させると、初期の段階では、押さえ面部130による押さえ付け力が用紙Pに十分に及んでいるため、パンチ刃24が多数枚の用紙Pのうち、下位の用紙Pから抜け出てスライド部材20と共に上昇する。しかしながら、スライド部材20の上昇に伴って押さえ面部130の押さえ付け力が低下するため、パンチ刃24が上位側の用紙Pから抜け出にくくなり、用紙Pが上下に分離されて上位の用紙Pがパンチ刃24と共に上昇する傾向をもたらす。これは、パンチ刃24の先端側に付随して持ち上げられた上位の用紙Pの存在によって押さえ面部130がコイルばね137の力に抗してパンチ刃24の先端よりも上位に位置してしまうことに起因する。
【0040】
操作レバー18の更なる回転によって、押さえ面部130の両端側が側部材14、15の下端側に設けられた段部14A、15Aに突き当たり、また、前記湾曲面部143が回転軸16に突き当たって上昇限に達すると、それ以後の操作レバー18の回転は、スライド部材20と共にパンチ刃24が押さえ面部130に対して上方に上昇するため、この時、パンチ刃24の先端側に付随している上位の用紙Pが強制的にパンチ刃24の先端側から脱落するようになり、これによって、全ての用紙Pからパンチ刃24が抜け出ることとなる。
【0041】
このように、押さえ面部130が上昇限に達した後に、パンチ刃24の抜き出しが行われるため、押さえ面部130と段部14A、15Aとの接触面には一定の負荷が与えられることになるが、本実施形態では、押さえ面部130が段部14A、15Aに突き当たると同時に、押さえ部材27の上部に設けられた湾曲面部143が回転軸16の下半部外周面に接して突き当たるため、前記負荷が上下複数箇所に分散されることになる。これにより、押さえ部材27の変形や、段部14A、15Aの損傷等が回避される。
【0042】
なお、用紙Pの差し込み側端縁P1に四箇所の穿孔を行う場合には、図11に示されるように、センタリング部材30をベース12から引き出しておき、位置規制部材31を起立させればよい。この状態で、用紙Pの一方の側端P2を位置規制部材31に突き当てた状態で、用紙Pの差し込み側端縁P1を差し込み空間S内に差し込み、前述したように、操作レバー18を回転操作すればよい。この際、右側に位置するセンタリング部材30は、拡張された支持面として、ベース12の支持面11からはみ出した領域を支持するようになり、当該領域の垂れ下がりを防止し、垂れ下がることによる用紙位置ずれを効果的に回避することとなる。
このようにして、差し込み側端縁P1の二箇所に穿孔を行った後に、用紙Pの束を表裏反転させ、前記位置規制部材31で位置規制を行って穿孔することで、差し込み側端縁P1の中心に対して合計四箇所に穿孔を行うことができる。つまり、表紙Pの表裏を反転させる作業を中間において一回行うことを条件に穿孔操作を二回することで、パンチ刃24の二倍の数となる穿孔を行うことができる。
【0043】
ところで、穿孔を行うことにより、パンチ刃24は、その内部に多数の抜き屑Paが圧縮された状態で詰まることとなる(図8参照)。この抜き屑Paは、刃ホルダ23がスライド部材20の本体スライド60に装着されている状態では、パンチ刃24の内部と通路80とが直線上に連なっていることで、それらの接合部間を跨ぐように棒状に連なって存在することになる。そのため、パンチ刃24の交換等、保守、点検を行うべく、刃ホルダ23を本体スライド60の前方に取り外そうとしても、圧縮されて且つ棒状に連なる抜き屑Paによって困難となる。
そこで、前記ストッパ106の操作端となる前端側を押し下げて鈎状部106Aと爪部84との係り合いを解除することで、突条部100の下面側に設けられた傾斜面100Bにより、下部ユニット90が傾斜でき、刃ホルダ23を全体として、上部が手前側となるように傾斜させて棒状に連なる抜き屑Paを折ることができる。従って、この傾斜姿勢において、図10に示されるように、前方に引き出すように操作することで刃ホルダ23を難なく取り外すことができ、下部ユニット90の支持筒98の上部にパンチ刃24を抜き出して交換等を行うことができる。
【0044】
従って、このような実施形態によれば、操作レバー18の操作角度を従来タイプに比べて小さく設定でき、操作力を軽減して数百枚の用紙に穿孔を行うことができる他、差し込み空間S内への手指のアクセスを禁止して安全性の向上を図ることができる。
また、用紙Pからパンチ刃24を抜き出す際に押さえ部材27と、これに係り合う部位の損傷を防止することができる。
更に、抜き屑Paによって刃ホルダ23の取り外しを困難とする要因を解消して刃ホルダ24の着脱を簡易且つ迅速に行うことができるとともに、刃ホルダ23を傾斜可能としても、ストッパ106によって常時は一定の位置に刃ホルダ23の装着位置を保持することが可能となる。
更に、パンチ刃24の数の二倍の穿孔を行う際に、センタリング部材30を利用して用紙Pの支持面を拡大できるため、用紙Pが相互に面位置をずらしてしまうような不都合を回避しつつ所定位置に穿孔を行うことができる。
【0045】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0046】
例えば、前記実施形態では、リンク部材21を片側各二枚用いる構成としたが、一枚のリンク部材によって構成することもできる。このリンク部材21は、その長さや曲率は、操作レバー18の回転角度を拡大させることがない範囲で任意に決定することができる。
【0047】
また、ガード部材26の傾斜面111は、用紙Pを差し込み空間S内に差し込むときに、当該用紙Pの端縁P1を乗り上がることができるものであれば足り、その左右方向幅は、図示構成例よりも相当に小さいものであってもよい。また、傾斜面111を複数箇所に分散させてもよい。要するに、本発明は、パンチ刃24の前方領域に起立面110があればよい。
【0048】
更に、位置規制部材31は、左右両側のセンタリング部材30に対応してそれぞれ設けることもできる。このように構成した場合には、用紙Pの表裏を反転させることなく、用紙Pを左右方向にずらすだけでパンチ刃24の二倍の数の穿孔を行うことができる。この場合の位置規制部材31は、片側ずつ起立させて利用すればよい。
【0049】
更に、刃ホルダ23は、上部が手前側となるように傾斜させて着脱させる構成に限らず、上部が後方に向くように傾斜させて着脱するようにしてもよい。要するに、抜き屑Paによって刃ホルダ23の着脱が妨げられることがないように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】操作レバーが初期位置にある状態を示す穿孔装置の全体構成を示す概略斜視図。
【図2】前記穿孔装置の概略側面図。
【図3】前記穿孔装置の一部を断面した概略正面図。
【図4】センタリング部材の使用状態を示す図1と同様の概略斜視図。
【図5】位置規制部材の使用状態を示す図1と同様の概略斜視図。
【図6】スライド部材、紙押さえ部材及び刃ホルダの一部を示す分解斜視図。
【図7】刃ホルダがスライド部材に装着されている状態を示す部分断面図。
【図8】刃ホルダをスライド部材に着脱する際の途中の状態を示す部分断面図。
【図9】(A)はガード部材の側面図、(B)はガード部材の平面図、(C)ガード部材の正面図。
【図10】刃ホルダをスライド部材に着脱する際の初期若しくは終期の状態を示す部分断面図。
【図11】位置規制部材の使用状態を示す図1と同様の概略斜視図。
【図12】操作ハンドルが穿孔時位置に倒伏した状態を示す穿孔装置の概略斜視図。
【符号の説明】
【0051】
10 穿孔装置
11 支持面
12 ベース
14、15 側部材
16 回転軸
18 操作レバー
20 スライド部材
24 パンチ刃
73 挿入ガイド
80 通路
106 ストッパ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔対象となる用紙の支持面を有するベースと、当該ベース上に配置された一対の側部材と、これら側部材間に設けられた回転軸を回転中心として回転可能な操作レバーと、当該操作レバーの回転により前記側部材間で昇降可能に支持されたスライド部材と、このスライド部材に刃ホルダを介して着脱自在に装着されて前記ベース側に突出する中空筒状のパンチ刃とを含み、前記操作レバーを回転操作することで前記パンチ刃を介して用紙が穿孔可能に設けられた穿孔装置において、
前記スライド部材は、前記パンチ刃の上端位置を規制するとともに当該パンチ刃の内部に連なる通路を備え、
前記刃ホルダは前記通路に対して所定角度変位した姿勢で前記スライド部材に着脱自在に設けられていることを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
前記スライド部材は前記刃ホルダを前後に移動可能に案内する挿入ガイドを備え、前記刃ホルダは前記挿入ガイド内で角度変位可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記刃ホルダがスライド部材に装着されたときの前記角度変位を規制するストッパを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記刃ホルダは、パンチ刃の支持筒を備えた底部と、一対の側壁と、後壁と、前壁とにより前記支持筒を囲む形状に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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