説明

突板化粧板及びその製造方法

【課題】 エンボス(凹凸感)も含め、本物の木の質感を発現させ、高い意匠感を得る化粧板を得る。
【解決手段】 クラフト紙のフェノール樹脂を含浸、乾燥したフェノール樹脂含浸コア紙、突板、化粧板用のオーバーレイ紙のメラミン樹脂を含浸、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を積層し、更に、前記樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に艶転写用プラスチックフィルムを配し、更にこの表面に前記艶転写用プラスチックフィルムより軟化点の低いプラスチックフィルム配し、熱圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は突板化粧板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に木目調のメラミン化粧板は、グラビア印刷等で木目柄が印刷された化粧紙にメラミン樹脂を含浸させた樹脂含浸化粧紙と、コア材とを積層し、必要に応じて樹脂含浸オーバーレイ紙を配し、ステンレスプレート、プラスチックプレート等の当て板を表面に重ね合わせ、当て板の艶や木目導管部をメラミン化粧板の表面に転写させる方法が採用される。
【0003】
印刷紙の代わりに天然木突板を用いた突板化粧板は、本物の「木」の風合い、立体感と、メラミン樹脂の優れた物性を兼ね備えた化粧板になる。従来、この突板化粧板の製造方法は、樹脂含浸コア紙、突板、樹脂含浸オーバーレイ紙、離型用のプラスチックフィルム、当て板を積層し、熱盤間に挿入して熱圧成形することにより得られる。
【特許文献1】特開昭54−41309号公報
【特許文献2】特開平8−230109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表面の艶や凹凸感については、熱圧成形の際に重ね合わせる当て板に拠るため、本物の木の質感を発現させることが難しく、導管部の深さが浅くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、エンボス(凹凸感)も含め、本物の木の質感を発現させ、高い意匠感を得る化粧板を得ることを目的とし、突板化粧板の製造方法において、樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に2枚のプラスチックフィルムを配することを主な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、天然木突板の木目導管部に同調したエンボスが発現されることにより、本物の木そのものの高級な意匠感が得られる。また、木目エンボスプレートを用いずとも平滑なステンレス当て板を用いるのみで天然質感に溢れる仕上がりとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係わる突板は、国内外の樹種の木材或いは人工的に着色、積層した人工木材をスライサー、ロータリーレーサー、ハーフロータリーレーサーといった機械で薄くスライスしたもので、厚みは0.1〜1.2mmで、裏面に和紙、不織布などを接着した通常公知のもので、樹種としては特に制約はない。接着する際には、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、ユリア樹脂接着剤、ユリア樹脂・酢酸ビニル樹脂エマルジョン混合接着剤、メラミン・ユリア共縮合接着剤、水性ビニルウレタン樹脂接着剤などの公知の接着剤が用いられる。
【0008】
樹脂含浸コア紙はクラフト紙、不織布、クロスなどの基材にレゾール型のフェノール樹脂を主成分とする樹脂液を含浸し乾燥したフェノール樹脂含浸コア紙が耐水性、耐熱性、強度などに優れ好適に用いられる。このレゾール型のフェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒下で反応させ溶剤を適量加えたもので、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、トリオキザールなどが挙げられる。
【0009】
また、必要に応じてパラトルエンスルフォンアミド、桐油、DOP、TCP(トリクレジルホスフェート)などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。
【0010】
樹脂含浸オーバーレイ紙は突板の保護層となるもので、坪量16〜50g/mの化粧板用の表面紙に熱硬化性樹脂を主な成分とする樹脂液を含浸したものが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いはこれらの混合物が挙げられ、とりわけ、硬度、耐衝撃性に優れるアミノ−ホルムアルデヒド樹脂を用いるのが好ましい。
【0011】
前記のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、アミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどとホルムアルデヒドを反応させた初期縮合物のほか、メチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ−ルによるエ−テル化、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤で変性されたものが適用でき、中でも耐久性に優れるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0012】
樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に当接される艶調整用のプラスチックフィルムは、樹脂含浸紙との離型性、熱圧成形時の溶融を考慮して選択される。具体的には、PP(ポリピロピレン)フィルム、OPP(延伸ポリピロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ビニロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、低密度PEフィルム、中密度PEフィルム、高密度PEフィルム、リニア低密度PE(L−LDPE)フィルム、などのPEフィルムなどが価格面から好ましい。
【0013】
前記の艶調整用のプラスチックフィルムの表面に当接されるフィルムとしても同様の樹脂種のフィルムが適用でき、とりわけ、軟化点は艶調整用のプラスチックフィルムよりも低いものを使用すると、突板の木目導管部にフィルムがより深く食い込み、立体感に溢れる仕上がりとなる。軟化点の低いフィルムとしては、極低密度PE(ポリエチレン)フィルム、低密度PEフィルム、中密度PEフィルム、高密度PEフィルム、リニア低密度PE(L−LDPE)フィルムなどのPEフィルムが挙げられ、軟化点が100〜130℃のものが好ましい。
【実施例1】
【0014】
樹脂含浸コア紙として、198g/mのクラフト紙に数1に示す含浸率が50%となるようにフェノール樹脂を含浸、乾燥したフェノール樹脂含浸コア紙を3枚と、30g/mのビニロン製不織布に厚み0.3mmの突板を酢酸ビニル系接着剤で接着した突板シート1枚と、樹脂含浸オーバーレイ紙として、23g/mのメラミン樹脂化粧板用の表面紙に数1に示す含浸率が250%となるようにメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含浸、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を1枚とを順次積層した。
【数1】

【0015】
次に、艶調整用のプラスチックフィルムとして、厚み40μm、軟化点140℃のOPPフィルムをメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙に当接し、更に厚み40μm、軟化点107℃のリニア低密度PE(L−LDPE)フィルムをOPPフィルムに当接し、この上に平滑なステンレス製の当て板を配して、温度130℃、圧力60kg/cm、時間90分で熱圧成形した。
【0016】
熱圧成形後、2枚のフィルムはラミネートされており、フィルムは剥離して実施例1の突板化粧板を得た。実施例1の突板化粧板は、導管部に同調したエンボスが発現し、自然な風合いを有していた。
【実施例2】
【0017】
実施例1において、OPPフィルムと低密度PEフィルムを事前にラミネートした複合フィルムを用いた以外は同様に実施した。
【0018】
参考例
実施例1において、低密度PEフィルムの代わりに、OPPフィルムを用いた以外は同様に実施した。実施例3の突板化粧板は、木目導管部の深さが実施例1に比べると浅かった。
【0019】
比較例1
実施例1において、低密度PEフィルムを用いなかった以外は同様に実施したが、木目導管部の深さはほとんどなく、平坦な仕上がりになった。
【0020】
比較例2
実施例1において、2枚のフィルムを用いず、平滑なステンレス製の当て板の代わりに、木目エンボス板を用いた以外は同様に実施したが、木目導管部と木目エンボスが同調せず、自然な風合いに欠けていた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の突板化粧板の製造方法を示す断面図。
【図2】参考例の突板化粧板の製造方法を示す断面図。
【図3】比較例1の化粧板の製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 平滑なステンレス製プレート
2 低密度ポリエチレンフィルム
3 延伸ポリプロピレンフィルム
5 メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙
6 突板シート
7 フェノール樹脂含浸コア紙
9 突板化粧板
10 化粧板




【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含浸コア紙、突板、樹脂含浸オーバーレイ紙を積層し、更に、前記樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に艶転写用プラスチックフィルムを配し、更にこの表面に前記艶転写用プラスチックフィルムより軟化点の低いプラスチックフィルムを配して熱圧成形してなることを特徴とする突板化粧板。
【請求項2】
突板化粧板の製造方法において、樹脂含浸オーバーレイ紙の表面に2枚のプラスチックフィルムを配することを特徴とする突板化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記2枚のプラスチックフィルム内、樹脂含浸オーバーレイ紙に当接する側は艶調整用プラスチックフィルムであり、もう1枚は前記艶調整用プラスチックフィルムより軟化点の低いプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項2記載の突板化粧板の製造方法。
【請求項4】
前記2枚のプラスチックフィルムは熱圧成形前又は熱圧成形後にラミネートされることを特徴とする請求項2記載の突板化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189650(P2011−189650A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58570(P2010−58570)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】