説明

突起付可動接点体の製造方法

【課題】各種電子機器の入力操作用のパネルスイッチ等に使用される突起付可動接点体の製造方法に関し、柔軟性の高い樹脂フィルムから、バリ発生を抑えて打ち抜かれた小径円柱状の突起部材を効率よく装着できる製造方法を提供する。
【解決手段】柔軟性の高い第1樹脂フィルム51とそれより剛性の高い材質からなる第1補強フィルム53が粘着剤層52を介して貼り合わせられた第1基材56にハーフカット加工を施して突起部材45に形成し、その加工形成後の突起部材45が第1補強フィルム53に残るように上記第1樹脂フィルム51を剥がし取って、接着剤47が塗布されている第2樹脂フィルム61に貼り合わせ、その後、接着剤47を硬化させて突起部材45を第2樹脂フィルム61に装着するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作用のパネルスイッチ等に使用される突起付可動接点体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は小型軽量化が進められると共に、その電子機器の入力操作用のパネルスイッチとしても、厚さが薄くできて、操作時に良好な感触が得られ、しかも電気的に安定した接触が得られることなどから、ドーム状に加工された弾性を有する導電金属板製の個々の可動接点が、複数個、絶縁性樹脂シートに保持された構成のもの、いわゆる可動接点体を用いてパネルスイッチに構成することが多くなっている。さらに、その機器としても、夜間などを含めて良好に使用することができるように、操作釦が照光されるものが好まれ、通常では、LED発光によるものが普及している。
【0003】
このような従来の可動接点体およびそれを用いて構成したパネルスイッチについて、以下に図面を用いて説明する。
【0004】
図18は従来の可動接点体を用いて構成したパネルスイッチの断面図、図19は同分解斜視図である。
【0005】
同図において、1は、PETからなる樹脂シート製のベースフィルムであり、その下面には、所定パターンで粘着剤層2が塗布形成されている。
【0006】
そして、3は、外形が円形で上方に突出するドーム状に加工形成された弾性を有する導電金属板製の個別の可動接点であり、その個々の上面部が粘着剤層2に粘着されてベースフィルム1に保持されている。
【0007】
なお、ベースフィルム1には、後述するLED13の配置位置に応じて複数箇所に貫通孔1Aが設けられている(図19参照)。
【0008】
そして、5は、PETからなる樹脂シートを小径の円柱状に打ち抜き加工して形成された突起部材であり、可動接点3の中央位置に応じたベースフィルム1上に接着剤6により固着されている。
【0009】
そして、上記ベースフィルム1および突起部材5は、接着剤6で接着される面それぞれに易接着層1Bおよび5Aを有し、後述するスイッチ操作が繰り返して行われても突起部材5が剥離などせず上記ベースフィルム1の上面に所定の固着状態で維持されるように構成されている。なお、図面を見やすくするために、図19の分解斜視図においては易接着層1Bおよび5Aの図示は省略し、また、図18の断面図においては厚み方向を拡大したものとしており、以下の各図面においてもそれらは同様である。
【0010】
以上のように、従来の可動接点体8は構成されている。そして、上記従来の可動接点体8は、対応する配線基板10上にベースフィルム1の粘着剤層2で貼り合わせられてパネルスイッチに構成されて使用される。
【0011】
その配線基板10としては、可動接点3の配置位置毎に応じた上面位置に、一対の固定接点11(11A、11B)を有するものが用いられ、上記可動接点体8の装着状態で、それぞれの可動接点3は、対応する中央固定接点11Bに中央部下面が間隔の空いた対峙状態となるように、外周下端が対応する外周固定接点11A上に常接状態で載せられ、それぞれで押圧タイプの単体スイッチを構成している。
【0012】
また、配線基板10上の所定位置にはLED13が実装されており、上記LED13は、上記可動接点体8の配置状態で、ベースフィルム1に設けられた貫通孔1A内に位置している。
【0013】
そして、以上のように構成されたパネルスイッチは、その上方位置に図示しない光透過性部材からなる操作釦が配され、その操作釦を押し下げ操作すると、操作釦が下がって可動接点体8の対応する突起部材5が押し下げられ、その力が上記突起部材5等を介して対応する可動接点3の中央部に加わり、上記押し下げ力が所定の大きさを超えると、上記可動接点3の中央部が節度感を伴い反転して、その中央部の下面が中央固定接点11Bに接触する。これにより、固定接点11Aと11Bの間が上記可動接点3を介して導通したスイッチON状態となる。
【0014】
そして、その操作力を解除すると、上記可動接点3が元の上方凸型に自己復帰して、操作釦を押し戻しつつ、元の図18に示すスイッチOFF状態に戻る。また、LED13を点灯すると操作釦がその光で照光されるものであった。
【0015】
ここに、上記構成のものは、点光源となるLED13で操作釦の照光がされるものであったため、均一な照光状態とするために導光体などが必要になることもあり、その改善策として、近年では、面状発光素子であるEL素子を備えた構成とされた可動接点体も実用化されており、続いてその可動接点体19について図20〜図22を用いて説明する。
【0016】
その可動接点体19としては、図20に示すように、光透過性のPETからなるベースフィルム15下面に印刷・焼付けを繰り返してEL素子を構成する各機能層17を形成すると共に、その最下層に前述したものと同様に粘着剤層2を形成して、その粘着剤層2に上記可動接点3の中央上面を保持させたものである。そのEL素子の各機能層17としては、図21に示すように、ベースフィルム15側から順に少なくとも、透明電極層17A・発光体層17B・誘電体層17C・背面電極層17D・絶縁層17Eが積層されて構成されている。なお、図20に示した20は、輸送保管時などに可動接点3や粘着剤層2を不要な塵埃から保護するために粘着剤層2に貼り合わせられたセパレータであり、その上面には剥離処理が施されている。
【0017】
当該仕様の可動接点体19であっても、図22に示したように、前述した固定接点11を備えた配線基板10上に粘着剤層2で貼り合わせてパネルスイッチに構成されて使用されることは同様である。また、その操作状態も、ベースフィルム15上からの押圧操作により、ベースフィルム15やEL素子の各機能層17を介して可動接点3に押し下げ力を加えて可動接点3を反転動作させ、それによってスイッチングさせるなど殆ど同様の動作である。そして、当該可動接点体19は、EL素子の透明電極層17Aと背面電極層17Dとの間に所定の交流電圧を印加することにより、EL素子が所定の色に面状発光して、その上方位置に配された操作釦を均一的に照光することができるものであった。
【0018】
以上に説明した前者の可動接点体8および後者の可動接点体19は、いずれも安価に構成すべく、ベースフィルム1や突起部材5、およびベースフィルム15をPET製のフィルムを用いていた。ここに、PET製のフィルムは材質的に腰が強く弾性が少ない部類に入るので、押圧操作時の反転動作する可動接点3の動作力をなまらせてしまい、それによるクリック率の低下を抑えるため、厚みとしては薄い厚みのものを採用して良好な操作感触が得られるようにしていた。
【0019】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3が知られている。
【特許文献1】特開2004−193047号公報
【特許文献2】特開2001−273831号公報
【特許文献3】特開平9−286160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、後者の可動接点体19は、面発光のためムラなど少なく照光でき好ましかったが、ベースフィルム15として、例えば12μm〜100μmの薄い厚みのPET製のフィルムを用いていても、それにEL素子を重ねて形成した構成であったため、剛性が高くなってしまい可動接点3から得られる操作感触が低下して感じられ、さらに、前者の可動接点体8のように突起部材5をつけていない構成であったため、操作釦との組み合わせずれを少なくして良好な操作感触が得られるようにしなければならず、機器側の制約も大きかった。
【0021】
本出願人は、その改善を図るべく、まずそのベースフィルム15の素材を柔軟な材質のもの、つまりポリウレタン樹脂製のサーモプラスチックポリウレタン(以下、TPUと記載する)に置き換える検討を進めており、それと同時に、突起部材も柔軟な材質のもので形成して付設することを検討していた。
【0022】
しかしながら、TPUフィルムから小径円柱状の突起部材に単に打ち抜き加工をすると、TPUフィルムは柔軟性が高いために、切断刃で最後に引きちぎる感じとなって切断方向の下端側にバリが多く発生した加工状態となることも多く、そのような状態では突起部材の装着安定性が確保し難く、場合によっては選別して装着しなければならないという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、TPUフィルムなどの柔軟性の高い樹脂フィルムから、バリ発生を抑えて突起部材に打ち抜くことができ、さらにその突起部材を効率よく対応する可動接点体に装着して突起付の可動接点体に製造することができる突起付可動接点体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、柔軟性の高い第1樹脂フィルムの下面に粘着剤層を介して上記第1樹脂フィルムより剛性の高い材質からなる第1補強フィルムが貼り合わせられた第1基材を準備し、その第1基材の上面側から突起部材形状に上記第1樹脂フィルムおよび上記粘着剤層が切断されるハーフカット加工を施して第1仕掛り部材に形成する第1工程と、上記第1補強フィルムに上記加工形成後の突起部材が残るように上記第1樹脂フィルムの不要部分を剥がし取って、その剥がし取られた箇所の上記粘着剤層が表出した第2仕掛り部材に形成する第2工程と、柔軟性の高い第2樹脂フィルムの片面に突起部材接着用の接着剤を塗布して第3仕掛り部材とする第3工程と、上記第2仕掛り部材の突起部材が上記第3仕掛り部材の上記接着剤で上記第2樹脂フィルムに貼り合わせられるように位置合わせをして上記第2仕掛り部材の表出した上記粘着剤層で上記第2仕掛り部材を上記第3仕掛り部材に貼り合わせて第4仕掛り部材とする第4工程と、上記接着剤を硬化させた後、上記突起部材の配置位置に対応させて上記第2樹脂フィルムの反対の面側に可動接点を装着する第5工程とを有する突起付可動接点体の製造方法としたものである。
【0026】
当該製造方法であれば、TPUフィルムなどの柔軟性の高い第1樹脂フィルムから突起部材の切断加工をする際、第1補強フィルムが支えになるため、突起部材の切断バリを抑えて容易に形成することができ、さらには上記第1補強フィルムを生産補助部材として有用に活用しつつ突起付可動接点体を連続的に製造することができるという作用を有する。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、第3工程で使用する第2樹脂フィルムにおいても上記第2樹脂フィルムより剛性の高い材質からなる第2補強フィルムが片面に貼り合わせられた第2基材を用いて、その第2樹脂フィルムに重ねてEL機能層を形成し、その後、上記第2補強フィルムを剥がして露出した上記第2樹脂フィルム面を洗浄して突起部材接着用の接着剤を塗布するものであり、第2樹脂フィルムの取り扱い性が向上すると共に、洗浄工程を付加することにより、接着剤の塗布状態や接着固定状態が安定したものとなるという作用を有する。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、柔軟性の高い樹脂フィルムから、バリ発生を抑えて突起部材に打ち抜くことができ、さらにその突起部材を効率よく対応する可動接点体に装着して突起付可動接点体に製造することができる突起付可動接点体の製造方法を得ることができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明による実施の形態について、図1〜図17を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による突起付可動接点体の製造方法で製造した突起付可動接点体の断面図、図2は同分解斜視図である。
【0031】
同図において、41はTPUフィルムからなる所定の外形形状に切断加工済みの光透過性のベースフィルムで、その下面にはEL素子の各機能層17が積層されて形成され、さらにその下面には粘着剤層2を介して可動接点3が個々に所定位置に粘着保持されている。そして、可動接点3の中央位置に対応するベースフィルム41上の位置には、同じくTPUフィルムから打ち抜き加工形成された小径円柱状の突起部材45が接着剤47を介して装着されて突起付可動接点体に構成されている。
【0032】
そのTPUフィルムから打ち抜き加工されて形成された突起部材45の大きさは、可動接点3がφ4の場合には、直径φ1.0〜φ1.5の小径円柱状のものを装着しており、ここに、当該突起付可動接点体は、本発明による製造方法で製造されているため、突起部材45において、課題の項に説明したような切断バリの発生が抑えられて形成されたものとなっており、その選別などもすることなく安定した装着状態のものとなっている。
【0033】
そして、当該突起付可動接点体は、同図にも示したように、上方側から第1補強フィルム53で覆われた形態で製造される。その第1補強フィルム53に関する説明は、後の製造方法の説明時に詳述するが、第1補強フィルム53を剥がし取った形態として輸送保管などをしてもよい。また、20は、可動接点3や粘着剤層2を不要な塵埃から保護するために下方側から粘着剤層2に貼り合わせられた、上面に剥離処理が施されているセパレータである。
【0034】
以下、上記形態の突起付可動接点体が得られる本発明の突起付可動接点体の製造方法について説明する。
【0035】
まず、突起部材45を形成する第1工程として、柔軟性の高い光透過性の第1樹脂フィルム51(TPUフィルム)を準備すると共に、上記第1樹脂フィルム51より剛性の高い材質からなる第1補強フィルム53(PETフィルム)が、粘着剤層52を介して、同様に剛性の高い材質からなる補助フィルム54(PETフィルム)に貼り合わせられた図3の断面図に示す母材55を準備する。このとき、第1樹脂フィルム51は、必要とする突起部材45の高さ(150μm〜300μm)に対応する厚みのもの、また第1補強フィルム53は、支障なく取り扱えて、後述するハーフカット加工が可能な厚みのものであればよい。例えば、上記材質で第1樹脂フィルム51の厚みが150μm〜300μmのものであるとき、第1補強フィルム53は50μm以上が好ましい。
【0036】
そして、母材55に対し、図3の断面図や図4の平面図に示すように、両端部のパイロット孔を設けた後、それらや基準孔を基準として、補助フィルム54側から少なくとも補助フィルム54が切断されるハーフカット加工を枠状で施す。なお、そのハーフカットされた枠部55A内の領域が、複数個の突起部材45が同時に形成される形成領域としてなる。
【0037】
続いて、その枠部55A内の形成領域にあたる補助フィルム54部分を、図5の断面図に示すように剥ぎ取ってその形成領域内の粘着剤層52を表出させ、その後、図6の断面図や図7の平面図に示すように、上記形成領域内に、それと同等もしくはそれより若干狭い形状で形成された上記第1樹脂フィルム51を粘着剤層52により貼り合わせて第1基材56とする。なお、枠部55Aからの外方位置は、第1補強フィルム53と補助フィルム54が貼り合わされた母材55状態のままであり、その部分は腰が強く、以後の工程も含んで持ち手部分として活用できるので、作業性も良好である。
【0038】
そして、その第1基材56に対し上記パイロット孔等を基準として、図8の断面図に示すように、第1樹脂フィルム51および粘着剤層52が切断状態となるように突起部材45形状でハーフカット加工を第1樹脂フィルム51側から行い、上記枠部55A内の形成領域に、複数個の突起部材45を小径円柱状で同時に形成する。なお、その形成位置としては、対応する可動接点体への装着位置に整合させている。この加工済みのものが、第1仕掛り部材である。
【0039】
なお、上記ハーフカット加工時において、第1樹脂フィルム51は、第1補強フィルム53に支えられた状態で切断加工されるようにできるため、切断方向の下端側に発生しやすい突起部材45の切断バリの発生が大きく抑えられた形成状態のものとして容易に形成でき、また、その切断形成後には各突起部材45は第1樹脂フィルム51から打ち抜かれた状態で、しかも粘着剤層52により第1補強フィルム53に粘着している状態にできる。このため、それら各突起部材45を腰の強い第1補強フィルム53と一体で取り扱うことができて、突起部材45を個々に取り扱う煩雑さなどもなくせる。
【0040】
次に、第2工程として、図9の斜視図および図10の断面図に示すように、第1仕掛り部材から、突起部材45以外の第1樹脂フィルム51の不要部分を剥がし取って第2仕掛り部材とする。この第2仕掛り部材としては、図11の断面図に示したように、第1樹脂フィルム51と粘着剤層52とを含めて切断加工された状態で形成されている上記各突起部材45が第1補強フィルム53上に残り、さらに、第1樹脂フィルム51を剥がし取った後の部分において、第1補強フィルム53上に粘着剤層52が残って表出したものとなっている。なお、上記のように第1補強フィルム53上に粘着剤層52が残るようにするためには、第1樹脂フィルム51の粘着剤層52への被着面を粗面化するなどしておくとよい。
【0041】
一方、上記第1工程および第2工程と並行して、対応する可動接点体の形成を行っておく。なお、その工程を第3工程として続いて説明する。
【0042】
第3工程においても、まず、図12の断面図に示すように、柔軟性の高い第2樹脂フィルム61(TPUフィルム)と、上記第2樹脂フィルム61より剛性の高い材質からなる第2補強フィルム63(PETフィルム)が、粘着剤層62を介して貼り合わせられた第2基材65を準備する。なお、この第2樹脂フィルム61がベースフィルム41に相当するものとなるため、製品外形に予め形成されていると好ましい。そして、その厚みとしては、柔軟性に富むTPUフィルムからなるものではあるが、例えば150μm以下の薄い厚みのもので、特に50μm以下のものを用いると好ましい。一方、第2補強フィルム63は、前述のものと同様に容易に取り扱いできて、後述する印刷工程で支障のでない厚みがあればよい。
【0043】
そして、上記第2基材65に対し、図13の断面図に示すように、第2樹脂フィルム61に重ねて、従来同様に、印刷・焼付けを繰り返してEL素子を構成する各機能層17を所定パターンで形成し、さらにその各機能層17に重ねて粘着剤層2を所定パターンで印刷形成した後、粘着剤層2により仮のセパレータ67を貼り合わせ、その後、第2補強フィルム63および粘着剤層62を一体で剥ぎ取って、第2樹脂フィルム61からなるベースフィルム41における、EL素子の各機能層17が形成された面とは反対の面側を露出させる。なお、外形形成を第2樹脂フィルム61側から第2補強フィルム63に向かうハーフカット加工により行って不要部分を同時に取るようにしてもよく、その場合には、第2樹脂フィルム61が第2補強フィルム63で支えられつつ上記外形加工を行うことができるため、その外形輪郭部の切断バリ発生が低減したものにできる。
【0044】
続いて、その第2樹脂フィルム61の露出させた面上に、突起部材接着用の接着剤47を各突起部材45の配置位置に応じて点在させて塗布し、第3仕掛り部材とする。このとき、露出させた第2樹脂フィルム61面側において糊残りや汚れなどがない状態としておくことが重要である。つまり、上述内容からも判るように、その露出させた面が可動接点体の上面側になり、そこに各突起部材45を接着固定させるためであり、ここに不純物などがあると接着剤47による接着安定性の阻害要因になるからである。このため、上記工程で露出させた面側を所定の薬剤で洗浄して、その後、接着剤47を点在状態で塗布すると、視覚的には確認できないが露出させた第2樹脂フィルム61面にシリコンなどの不純物の転移や残存などがあっても取り除くことができ、硬化後の接着剤47による接着力低下を防ぐことができる。
【0045】
続いて、第4工程で、上記に説明した第2仕掛り部材と第3仕掛り部材とを組み合わせて第4仕掛り部材とする。
【0046】
つまり、図14の断面図に示すように、上記第2仕掛り部材の突起部材45が上記第3仕掛り部材の接着剤47で上記第2樹脂フィルム61からなるベースフィルム41上に装着されるように位置合わせをして、上記第2仕掛り部材を、その表出している上記粘着剤層52で上記第3仕掛り部材に貼り合わせて第4仕掛り部材とする(図15参照)。
【0047】
次に、第5工程として、接着剤47を硬化させて突起部材45を上記ベースフィルム41上に接着固定し、その後、図16の断面図に示すように、EL素子を構成する各機能層17側に貼り合わせられた仮のセパレータ67を剥がして粘着剤層2を露出させ、各突起部材45の配置位置に可動接点3の中央位置を上下で合わせ込んでEL素子の各機能層17側に露出した粘着剤層2で上記可動接点3を粘着保持させることによって、図17の断面図に示すように、上面側が第1補強フィルム53で覆われた状態での突起付可動接点体を完成させる。そして、最後に、可動接点3や粘着剤層2を保護するためのセパレータ20を当該突起付可動接点体の下面側に貼り合わせて図1に示したものとする。
【0048】
なお、当該突起付可動接点体は、機器への搭載時には、第1補強フィルム53やセパレータ20を剥がして従来同様に対応する配線基板に粘着剤層2で貼り付け装着されることによって、パネルスイッチに構成されて使用される。なお、その詳細構成についての説明は省略するが、当該構成のものは、柔軟性の高いTPUフィルムから切断バリなど少なく形成された突起部材45が、同じく柔軟性の高いTPUフィルム製のベースフィルム41に装着されて構成された突起付可動接点体を用いて構成されたものとなるため、機器側における操作釦との位置合わせの制約も少なくて突起部材45の装着安定性にも優れ、良好な操作感触が長期に亘って得られるものにできる。
【0049】
以上のように、本発明による製造方法を用いると、柔軟性に富むTPUフィルムを用い、しかもその厚みが薄いものを用いたとしても、切断バリの発生が抑えられて突起部材45が形成できる上、第1補強フィルム53などを生産補助材として有用に活用しつつ製造工程を進めることができるため、仕掛り部材などの取り扱い性も良く、高品質の突起付可動接点体を連続的に製造することができる。また、上記突起部材45を一括して可動接点体に装着できる製造方法としているため、製造工数の削減効果も得ることができる。
【0050】
なお、上述したTPU製のベースフィルム41にTPU製の突起部材45を装着する構成とする際には、突起部材45を光透過性のものとして、さらに第1補強フィルム53やその粘着剤層52も光透過性のものとしておき、接着剤47をウレタンアクリレートからなる紫外線硬化型のものとすることが好ましい。すなわち、上記材質の接着剤47であれば、接着剤47および、被接着部材となるベースフィルム41、突起部材45の全てが同じウレタン系樹脂どうしにできて、その接着界面の間の親和性が高くなり強固な接着状態で突起部材45がベースフィルム41に固着されているものに構成でき、しかも接着剤47の硬化時間も短くて済むためである。
【0051】
そして、上記には、第1樹脂フィルム51と第2樹脂フィルム61を共にTPUフィルムを用いた場合について説明したが、両者の材質は異なっていてもよく、また、TPUフィルム以外の柔軟性の高い材質からなる樹脂フィルムを用いてもよい。さらには、PETなどの剛性の高い材質からなるフィルムであっても、例えば50μmを切るような厚みのものであれば、取り扱い難くなるため、本発明の製造方法を適用してもよい。
【0052】
さらに、上記には、EL素子の各機能層17を有する形態のものを詳述したが、各機能層17を形成していない形態のものであっても本発明は適用可能である。その際などに、第2樹脂フィルムとしては単一基材からなるものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による突起付可動接点体の製造方法は、TPUフィルムなどの柔軟性の高い樹脂フィルムから、バリ発生を抑えて突起部材に打ち抜くことができ、さらにその突起部材を効率よく対応する可動接点体に装着して突起付可動接点体を製造することができるという有利な効果を有し、各種電子機器の入力操作用のパネルスイッチ等に使用される突起付可動接点体を製造する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による突起付可動接点体の製造方法で製造した突起付可動接点体の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同製造方法における第1工程を説明するための断面図
【図4】同第1工程を説明するための平面図
【図5】同第1工程を説明するための断面図
【図6】同第1工程を説明するための断面図
【図7】同第1工程を説明するための平面図
【図8】同第1工程を説明するための断面図
【図9】同第2工程を説明するための斜視図
【図10】同第2工程を説明するための断面図
【図11】同第2工程を説明するための断面図
【図12】同第3工程を説明するための断面図
【図13】同第3工程を説明するための断面図
【図14】同第4工程を説明するための断面図
【図15】同第4工程を説明するための断面図
【図16】同第5工程を説明するための断面図
【図17】同第5工程を説明するための断面図
【図18】従来の可動接点体を用いて構成したパネルスイッチの断面図
【図19】同分解斜視図
【図20】EL素子の各機能層を有する形態とされた他の従来の可動接点体の断面図
【図21】同可動接点体におけるベースフィルムに形成されたEL素子の各機能層を説明するための要部拡大断面図
【図22】同可動接点体を用いて構成したパネルスイッチの断面図
【符号の説明】
【0055】
2、52、62 粘着剤層
3 可動接点
17 EL素子の各機能層
20 セパレータ
41 ベースフィルム
45 突起部材
47 接着剤
51 第1樹脂フィルム
53 第1補強フィルム
54 補助フィルム
55 母材
55A 枠部
56 第1基材
61 第2樹脂フィルム
63 第2補強フィルム
65 第2基材
67 仮のセパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性の高い第1樹脂フィルムの下面に粘着剤層を介して上記第1樹脂フィルムより剛性の高い材質からなる第1補強フィルムが貼り合わせられた第1基材を準備し、その第1基材の上面側から突起部材形状に上記第1樹脂フィルムおよび上記粘着剤層が切断されるハーフカット加工を施して第1仕掛り部材に形成する第1工程と、上記第1補強フィルムに上記加工形成後の突起部材が残るように上記第1樹脂フィルムの不要部分を剥がし取って、その剥がし取られた箇所の上記粘着剤層が表出した第2仕掛り部材に形成する第2工程と、柔軟性の高い第2樹脂フィルムの片面に突起部材接着用の接着剤を塗布して第3仕掛り部材とする第3工程と、上記第2仕掛り部材の突起部材が上記第3仕掛り部材の上記接着剤で上記第2樹脂フィルムに貼り合わせられるように位置合わせをして上記第2仕掛り部材の表出した上記粘着剤層で上記第2仕掛り部材を上記第3仕掛り部材に貼り合わせて第4仕掛り部材とする第4工程と、上記接着剤を硬化させた後、上記突起部材の配置位置に対応させて上記第2樹脂フィルムの反対の面側に可動接点を装着する第5工程とを有する突起付可動接点体の製造方法。
【請求項2】
第3工程で使用する第2樹脂フィルムにおいても上記第2樹脂フィルムより剛性の高い材質からなる第2補強フィルムが片面に貼り合わせられた第2基材を用いて、その第2樹脂フィルムに重ねてEL機能層を形成し、その後、上記第2補強フィルムを剥がして露出した上記第2樹脂フィルム面を洗浄して突起部材接着用の接着剤を塗布する請求項1記載の突起付可動接点体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−104871(P2009−104871A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274976(P2007−274976)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】