説明

窒化アルミニウム焼結体の製造方法

【課題】 直接窒化法により得られる窒化アルミニウム塊状物を粉砕した窒化アルミニウム粉末を、上記粉砕時に生成する微粉を含んだ状態でそのまま使用しながら、成形、焼成して、高熱伝導性、高絶縁性等の特性を実現することが可能な窒化アルミニウム焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】 直接窒化法によって得られる窒化アルミニウム塊状物を累積90%体積粒径が5〜9μm、好ましくは、比表面積が3.6m/g以上となるように粉砕後、上記粉砕時に生成する微粉を分離することなく、上記窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤として、希土類金属酸化物を3〜7質量%、カルシウム系化合物をCaO換算で100〜500ppmの割合となるように添加して、非酸化性雰囲気下、1700℃を超え1800℃以下の温度で焼成することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム塊状物を粉砕した窒化アルミニウム粉末を使用する、窒化アルミニウム焼結体の新規な製造方法に関する。詳しくは、上記粉砕時に生成する微粉を含んだ状態の窒化アルミニウム粉末をそのまま使用しながら、高熱伝導性、高絶縁性等の特性を実現することが可能な窒化アルミニウム焼結体の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム焼結体は、高熱伝導性、高耐プラズマ性、電気絶縁性などの優れた特性を有している。そのため、高熱伝導性と電気絶縁性を利用した絶縁放熱基板として産業用ロボット分野や電気鉄道車両、自動車分野、LED証明分野など様々な分野で用いられている。これらの分野は近年の地球温暖化防止対策や、省エネルギー対策の観点から高い成長率が期待されており、特にLED分野においては高い需要が見込まれている。しかしながら窒化アルミニウム焼結体はすぐれた特性を有するものの、原料となる窒化アルミニウム粉末そのものが高価であるため、同じ絶縁基板であるアルミナ焼結体と比較して普及が困難となっている。
【0003】
一方、窒化アルミニウム粉末の工業的に生産する手法としてはAl粉末を原料としてカーボン、窒素と反応させる還元窒化法、金属Al粉末を直接窒素と反応させる直接窒化法が知られている。
【0004】
そのうち、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム粉末は、還元窒化法による方法に比べてその製造方法が簡易であることより安価であるため、これを使用して高性能の窒化アルミニウム焼結体を得ることができれば、その需要は更に拡大することが期待される。
【0005】
しかしながら、直接窒化法によって得られる窒化アルミニウムは、製造条件により塊状の状態で得られるため、焼結体用原料として用いるためには粉砕が不可欠であり、粉砕時に微粉が生成する。上記微粉は、比表面積が大きいため、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量を増加させる要因となり、かかる微粉を含む窒化アルミニウム粉末を焼成した場合、要求される優れた熱特性や電気特性を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることは困難であった。
【0006】
そのため、直接窒化法による窒化アルミニウム粉は、前記窒化アルミニウム塊状物を粉砕した後、微粉を除去したものを製品とすることが多く、比較的多量である微粉分損失と、微粉の除去操作により、生産コストの向上を招いていた。これらの問題を解決するために、例えば粉砕時の酸化反応の抑制を目的として従来の大気中での乾式粉砕ではなく有機溶媒中で湿式粉砕した後乾燥させる方法が考案されているが、微粉の存在により粉砕後はやはり同じ問題が起きていた。更には前記粉砕後の微粉を含む窒化アルミニウム粉末に炭素質物質を混合し、非酸性雰囲気下で熱処理することで還元反応により酸素濃度を減少させるとともに、粒成長により微粉を減少させた製品も存在するが、これらの製品は前期のような処理による生産コストの増大が問題とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3237965号公報
【特許文献2】特開2003−104777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム塊状物を粉砕した窒化アルミニウム粉末を使用する窒化アルミニウム焼結体の製造方法において、粉砕後、微粉を含んだ状態の窒化アルミニウム粉末をそのまま使用しながら、高熱伝導性、高絶縁性等の優れた特性を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能な窒化アルミニウム焼結体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム塊状物の粉砕の程度を特定の大きさに制限し、焼成による焼結性と微粉の生成量とのバランスを取ると共に、焼結助剤として、かかる微粉に対しての有効量となる程度のカルシウム系化合物を、希土類金属酸化物と共に使用し、特定の温度下に焼成することにより、前記粉砕により生成する微粉を分離する等の別途の処理を行うことなく、窒化アルミニウム粉末に含有した状態で、高熱伝導性、高絶縁性等の優れた特性を有する窒化アルミニウム焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、直接窒化法によって得られる窒化アルミニウム塊状物を累積90%堆積粒径が5〜9μmとなるように粉砕後、上記粉砕時に生成する微粉を分離することなく窒化アルミニウム粉末として使用し、窒化アルミニウム焼結体を製造する方法であって、上記窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤として、希土類金属酸化物を3〜7質量%、カルシウム系化合物をCaO換算で100〜500ppmの割合となるように添加して、1700を超え、1800℃以下の温度で焼成することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法である。
【0011】
上記方法において、窒化アルミニウム塊状物を粉砕後の窒化アルミニウム粉末は、累積90%堆積粒径が5〜9μmであり、且つ、比表面積が3.6m/g以上となるように粉砕を行うことが 物性と粉末利用効率のバランスの面で好ましい。
【0012】
更にまた、本発明によれば、前記微粉を含む窒化アルミニウム粉末を使用しながら、相対密度99%以上、熱伝導率160W/m・K以上、絶縁耐力20kV/mm以上である窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム塊状物を粉砕した窒化アルミニウム粉末を使用する、窒化アルミニウム焼結体の製造方法において、粉砕後、微粉を含んだ状態の窒化アルミニウム粉末をそのまま使用しながら、高熱伝導性、高絶縁性等の優れた特性を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能となる。
【0014】
本発明者らは、上記本発明の方法により、前記効果を発揮できる作用を以下のように推定している。即ち、従来破棄されていた酸素を多分に含む表面が活性な微粉とカルシウムと優先的に反応することによって、窒化アルミニウムへの酸素固溶を抑制すると同時に低温にて適量の液相を生成することにより、本来焼結しにくい大粒径粒子の反応性を向上させ、しかる後に希土類酸化物が微粉以外の窒化アルミニウム粉末表面のアルミナと反応し、溶解、高熱伝導率化させることが可能となったと考えられる。
従って、直接窒化法によって得られる窒化アルミニウム塊状物を粉砕した状態の窒化アルミニウム粉末をそのまま使用することができ、それにより、極めて安価な材料を使用して窒化アルミニウム焼結体を安価に得ることが可能となり、窒化アルミニウム焼結体の需要の拡大を実現できるため、その産業上の貢献は極めて高いといえる。また、従来廃棄されていた粉末を利用できるとともに、必要とされていた粉砕後の後処理が不要となるため環境負荷の低減に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のAlN焼結体の製造方法において、原料AlN粉末は直接窒化法を用いて作製し、粉砕工程によって生じる微粉を含み、累積90%体積が5〜9μmのものを対象としている。
【0016】
上記AlN粉末の累積90%体積粒径が5.0μmよりも小さく粉砕した粉末は酸素濃度が非常に高くなってしまうため、Ca化合物の添加によって酸素をトラップさせ、緻密化することは可能であるが多くのCa化合物の添加が必要となるため、導電性物質である12CaO・7Al2が生成され易くなり、電気物性が徐々に低下してしまう。また、不必要な液相の増加によって、色むらや反りが発生しやすくなり、熱伝導率や曲げ強度などの機械物性に悪影響を与える。一方、前記累積90%体積粒径が9μmよりも大きい場合は全体的に粒度が大きくなるため焼成が困難となり、成形法や焼成温度が限定されてしまいコスト高となる。
【0017】
また、本発明において、原料AlN粉末は、粉砕後のAlN粉末を、微粉を分離せずに使用することを特徴とするものであり、かかる微粉を含むAlN粉末は、微粉を分離して使用していた従来のAlN粉末と比べて比表面積が高く、3.6m/g以上の比表面積を有するものが一般的である。
【0018】
上記窒化アルミニウム粉末を得るための粉砕方法は、乾式粉砕、湿式粉砕などが特に制限なく使用することができる。例えば、乾式法ではジョークラッシャー、ロールクラッシャー、振動ミル、ボールミル等、湿式方ではビーズミル、ボールミル等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、これらの粉砕方法を単独で実施して粉砕を行ってもよいし、組み合わせて粉砕を行ってもよい。また、粉砕は、酸化を防ぐために活性雰囲気下または有機溶媒中で行ってもよいが、コスト低減の観点から大気中で乾式法により粉砕することが好ましい。
【0020】
本発明のAlNの製造方法は、前記AlN粉末を使用することに対して、使用する焼結助剤として、希土類金属酸化物とカルシウム系化合物とを併用すると共に、後で詳述するように、該カルシウム系化合物の使用量を従来一般に使用されていた量より少なく制限したことを特徴とする。
【0021】
上記希土類酸化物としては、特に限定されないが、熱伝導率の観点からイットリウム化合物特には酸化イットリウムを使用することが好ましい。該希土類化合物はAlN粉末に対し3〜7質量%添加する。該希土類化合物の添加量が3質量%よりも少ない場合は、緻密化や熱伝導率の向上が不十分となり、7質量%よりも多い場合は余剰の液相が生成することにより却って緻密化にむらが生じる他、助剤しみによる外観不良が発生する。
【0022】
また、本発明においては併用するカルシウム化合物の添加量がAlN粉末に含有されるカルシウム分も含めてCaO換算で100〜500ppm割合となるように添加することが必要である。従来、Ca化合物を焼結助剤として添加する手法は、焼結を低温で行いながら緻密化を達成する方法として検討されてきた。そして、その多くは、Ca化合物の使用量がCaO換算で0.1〜10重量部(望ましくは1〜5重量部)程度と多いものであった。これに対して、本発明においては、あくまで微粉由来の酸素がAlNに固溶することを防ぎ、適度な量の液相を生成させることを目的として使用するため、その添加量はCaO換算で100〜500ppmと微量であることが必要となる。そして、カルシウム化合物をこのような微量添加した場合は、微粉由来の酸素と該カルシウム化合物が優先的に反応し、系全体の焼結性向上に貢献する。
【0023】
即ち、カルシウム化合物の添加量がCaO換算で100ppmより少ない場合は、微粉と反応するための十分なカルシウム分が不足するため、微粉表面に存在するアルミナの酸素がAlN粒子に固溶することによって熱伝導率が低下するとともに、系内に含まれる大粒径粒子の反応性を向上させることができないため、緻密化が困難となる。一方、該Ca化合物の添加量がCaO換算で500ppmよりも多い場合には、導電性物質である12CaO・7Alが生成しやすくなり、窒化アルミニウム焼結体の特徴である高い電気絶縁特性を十分に活かすことができなくなる。また、500ppmよりも多い場合は必要以上の液相が低温で生成して希土類化合物と反応し、本体希土類化合物添加の目的である固溶酸素のトラップ効果が不十分となる上、冷却時に偏析し、色むらや反りが発生しやすくなり熱伝導率や機械物性の低下を招く。
【0024】
また、本発明おいて、AlN粉末と焼結助剤粉末の混合は例えば、ボールミル、ビーズミル等、公知の方法であれば特に制限なく採用できる。また、上記混合は、前記焼結助剤の少なくとも一部を窒化アルミニウム粗粒の粉砕時に添加するといった手法を用いることも可能である。
【0025】
更に、上記原料混合工程において、AlN粉末の微粉とカルシウム化合物の比率を変化させないため、0.5μm以下の微粉の増加率が1容量%未満となるように混合条件を考慮することが望ましい。同様の観点から焼結助剤の粒径は凝集しやすい微粉(例えば、平均粒径0.1μm以下)のものよりも、凝集の少ない、例えば、平均粒径1〜5μm程度のものの方が好ましい。更には有機溶媒中で混合したスラリーを高圧分散処理のようなジェットミルによる分散処理をすることによって、焼結助剤の分散性が向上し、緻密化と高熱伝導化が容易になる。
【0026】
本発明の焼結体の製造方法において、AlN粉末の成形は、例えば、ドクターブレード法、プレス成形法、押出し成形法、射出成形法など公知の方法が特に制限無く採用される。具体例を挙げると、原料AlN粉末に、焼結助剤粉末を1〜10重量部の範囲で添加し、更には必要に応じて有機バインダー、可塑剤、分散剤などを添加し、遊星ボールなどで混合機によって、乾式または湿式により混合したものを、例えば、ドクターブレード法、押出し成形法などによって成形することが好ましい。
【0027】
本発明において、焼成前のAlN粉末の成形体(グリーン体)の製造には、有機バインダーが使用することが望ましい。かかる有機バインダーとしては、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、ポリメタクリルブチル等のアクリル樹脂など公知のものが挙げられる。上記有機バインダーは、原料AlN粉末100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部の割合で配合することが好ましい。また、上記組成物中には、必要に応じてグリセリン化合物類などの分散剤及びフタル酸エステル類などの可塑剤を添加しても良い。
【0028】
本発明において、前記グリーン体は、焼成に先立ち、脱脂処理を行うのが一般的である。上記脱脂処理の条件は、公知の条件が特に制限なく採用される。例えば、酸化性雰囲気下或いは非酸化性雰囲気下で、温度300〜1000℃で1〜10時間処理する方法が一般的である。この際、得られる脱脂体は炭素が極力残存していないことが好ましい。炭素が存在した場合、カルシウム化合物と反応するはずの微粉由来の酸素が炭素によって還元されてしまうため、適量の液相が生成せず焼結性を悪化させる虞がある。
【0029】
本発明において、焼成は、1700℃を超え、1800℃以下の温度で行うことが必要である。即ち、従来、カルシウムなどアルカリ土類化合物を添加したものでは焼成温度を下げることを目的としているため、1700℃以下の低温で焼結されるが、本発明において、アルカリ土類化合物は微粉の酸素をトラップするために使用しており、焼成温度が1700℃以下では所期の効果が得られずかつ十分な緻密化ができない。一方、1800℃よりも高い温度で焼成した場合は、焼結助剤が緻密化や固溶酸素のトラップなどの、本来の役割果たさず物性が低下するとともに焼結助剤の染み出しによる焼結体の外観不良が発生し易くなる。
【0030】
また、本発明において、焼成における雰囲気は、公知の条件が特に制限なく採用されるが、特に、窒素などの非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。また、焼成時間は、2〜10時間、好ましくは2〜5時間が一般的である。
【0031】
以上説明した本発明のAlN焼結体の製造方法によれば、低コストで高熱伝導率、高絶縁性のAlN焼結体が得られる。因みに、本発明の製造方法により得られるAlN焼結体は、好ましくは160W/mK以上、さらに好ましくは180W/mK以上の熱伝導率を達成することができ、また、20kV/mm以上、好ましくは25kV/mm以上の絶縁耐力を達成可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
<測定方法>
1)粒度分布
日機装製MICROTRACK−HRAを用いて、レーザー回折法により求めた。水90mlに対し、5%ピロリン酸ソーダ水溶液を加えた溶液の中に窒化アルミニウム粉末を加え、これをホモジナイザーにて出力200mA,3分間分散させたものを測定した。前記方法からD90を求めた。なお、データは個数分布である。
【0034】
2)比表面積
島津製作所製流動式表面積自動測定装置フローソーブ2300形を用いてN吸着によるBET法により求めた。
【0035】
3)密度
焼結体の密度はアルキメデス法により測定した。
【0036】
4)熱伝導率
作製したAlN焼結体の熱伝導率は京都電子工業製LFA−502を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。
【0037】
5)絶縁耐力
多摩電測製耐電圧絶縁抵抗試験機を用いて、耐圧試験機法により求めた。
【0038】
6)酸素濃度
(株)堀場製作所製 酸素・窒素同時分析装置(EMGA−620W/C)を用いて、不活性ガス中でインパルス加熱融解法によりAlNを融解して抽出された酸素を一酸化炭素の形態として、この一酸化炭素を非分散赤外線検出器にて測定した。キャリアガスとしてHeガス(純度:99.995%以上)を用いた。
【0039】
<窒化アルミニウム粉末の調製>
直接窒化法により作製したAlN塊状物を、ジョークラッシャー、ロールミル、振動ミルを用いて、乾式で多段的に粉砕を行い、窒化アルミニウム粉末を得た。振動ミルでの粉砕を窒素雰囲気下で行い、それ以外は大気中で粉砕を行った。得られた窒化アルミニウム粉末の累積90%堆積粒径と比表面積を表1に示す。a〜cが本発明の範囲であり、dは粉砕過剰、eは粉砕不足の例である。
【0040】
【表1】

【0041】
<実施例1〜5>
上記AlN粉末aを使用し、希土類化合物(酸化イットリウム粉末)5質量%、CaO換算で200ppmとなるように炭酸カルシウムを添加して、更に分散剤と溶媒を添加してボールミルを用いて3時間混合した。その後、バインダーとしてポリビニルブチラール及び可塑剤を添加して18時間混合してAlNスラリーを得た。AlNスラリーを脱泡後粘度2万cpsに調整しドクターブレード法で厚み0.75mmの成形体を作製した。
【0042】
得られた成形体を540℃、4時間、空気雰囲気中で脱脂して得た脱脂体を窒素雰囲気中にて本発明の範囲である1750℃の範囲で5時間焼成して、AlN焼結体を得た。得られた焼結体の物性を表2に示す。
【0043】
<実施例2〜5>
上記AlN粉末a〜cを使用し、本発明の範囲である希土類化合物(酸化イットリウム粉末)3〜7質量%、CaO換算で100〜500ppmとなるように炭酸カルシウムを添加した以外は実施例1と同様の手順で成形体、脱脂体を得た。得られた脱脂体は1700〜1800℃にて3〜5時間焼成してAlN焼結体を得た。得られた焼結体の物性を表2に示す。
【0044】
<比較例1〜4>
炭酸カルシウムの添加量をCaO換算で100ppm未満、または500ppmよりも多くした以外は実施例1と同様の手順でAlN焼結体を得た。得られた焼結体の物性を表2に示す。
【0045】
<比較例5,6>
焼成温度を1680℃、1820℃とした以外は実施例1と同様の手順でAlN焼結体を得た。得られた焼結体の物性を表2に示す。
【0046】
<比較例7.8>
累積90%堆積粒径が5μm未満、9μmよりも大きく粉砕した粉末を使用した以外は実施例1と同様の手順でAlN焼結体を得た。得られた焼結体の物性を表2に示す。
【0047】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接窒化法によって得られる窒化アルミニウム塊状物を累積90%堆積粒径が5〜9μmとなるように粉砕後、上記粉砕時に生成する微粉を分離することなく窒化アルミニウム粉末として使用し、窒化アルミニウム焼結体を製造する方法であって、上記窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤として、希土類金属酸化物を3〜7質量%、カルシウム系化合物をCaO換算で100〜500ppmの割合となるように添加して、1700℃を超え、1800℃以下の温度で焼成することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記窒化アルミニウム粉末の比表面積が3.6m/g以上である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【請求項3】
得られる窒化アルミニウム焼結体が、相対密度99%以上、熱伝導率160W/m・K以上、絶縁耐力20kV/mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。

【公開番号】特開2013−82592(P2013−82592A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224583(P2011−224583)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】