説明

窒素ガス発生用配合物

【課題】本発明は、窒素ガスの発生に適した固体多孔性材料を提供する。
【解決手段】前記材料は、20〜75vol.%の多孔度を有し、かつ材料の重量を基準にして、60〜90wt.%のアジ化ナトリウムと、少なくとも1400J/K/kgの熱容量を有する少なくとも1種の無機塩に基づく0.1〜20wt.%の不活性化学冷却剤と、金属酸化物および金属炭酸塩から選択される0.1〜20wt.%の調整剤と、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩である水ガラス、またはポリテトラゾールからなる群から選択される3〜15wt.%の量のバインダーと、で構成された組成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された条件下で、窒素ガス発生固体材料を分解することにより、冷温の、かつ必要により高純度の窒素ガスを発生することが可能な固体推進剤によるガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の比較的純粋な、あるいは純粋な、かつ冷温のガスを、要求に応じて供給する供給源が必要とされる多くの用途が存在する。窒素は、この点で、多くの用途に対して、良好な不活性ガスである。ガス供給ボンベは、ある種の欠点を有している。すなわち、それらは、比較的嵩が高く、かつ高重量であり、しかも、ボンベ内の圧力がまだ十分にあるかを、定期的に検査しなければならない。
【0003】
したがって、それほど嵩が高くなく、かつより軽量であり、しかも頻繁な監視を必要としない窒素ガスの代替供給源を有することが強い関心となっている。一つの解決手段は、固体推進剤によるガス発生装置であり、これは、固体材料(「推進剤」とも呼ばれる)を、窒素とスラグ物質とに分解する装置であり、後者は、ガス発生装置のハウジング内に保持される。
【0004】
そのような固体推進剤によるガス発生装置の特に有用な典型的用途は、以下のとおりである。
−局所雰囲気中の酸素濃度を低減するための窒素を提供すること。
−火災抑制剤と混合される窒素を提供すること。
−消火器用の駆動ガスを提供すること。
−爆発抑制用のガスを提供すること。
−他のガスの希釈用の窒素を発生させること。
−ニューマチック(緊急)装置用の窒素ガスを発生させること。
【0005】
これらの場合のいずれにおいても、好ましくは保守を行うことなく、長期間(数年間)にわたり貯蔵可能であり、かつ人にも装置にも環境にも害をもたらさない窒素ガス供給源が利用可能でなければならない。
【0006】
初期の窒素ガス発生装置では、伝統的な有機バインダー、および以下の欠点を有する特別な冷却装置(機械的および化学的)が使用されてきた。
−ガス発生装置が、高重量で、複雑なものになった。
−窒素中に、多くの汚染物質が発生した。
【0007】
そのようなガス発生装置は、消火器として使用する上でも、爆発抑制やガス希釈のための装置として使用する上でも、それほど適したものではない。
【0008】
さらに、機械的および化学的な冷却装置にかかわらず、こうした典型的なガス発生装置は、依然として、比較的高温のガスを送給する。
【0009】
従来の化学ガス発生装置に関しては、いずれの場合も、分解温度が高いので、ガスを冷却しなければならない。独国特許第19903237号明細書[特許文献1]および同第19726296号明細書[特許文献2]では、ガスを冷却するための手段が特に検討の対象となっており、一方、米国特許第6183008号明細書[特許文献3]ならびに欧州特許第0876943号明細書[特許文献4]および同第1057514号明細書[特許文献5]には、ガスを精製するために使用されるフィルターが、ガスを冷却するためにも役立つと教示されている。したがって、ほとんどの化学ガス発生装置では、フィルターのサイズおよび質量は、濾過される汚染物質の量だけでなく、冷却しなければならないガスの温度にも依存する。こうした追加の装置、またはガスを冷却するために増大されたサイズを有するフィルターは、ガス発生装置の質量、体積、およびコストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第19903237号明細書
【特許文献2】独国特許第19726296号明細書
【特許文献3】米国特許第6183008号明細書
【特許文献4】欧州特許第0876943号明細書
【特許文献5】欧州特許第1057514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、先行技術のそのような欠点を克服して、低温かつ好ましくは高純度でもある窒素ガスを生成可能なガス発生装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明は、必要に応じて、冷温の窒素ガスを提供するための固体推進剤によるガス発生装置である。さらに、本発明は、所定の速度で、必要に応じて、窒素ガスを発生させるための固体ガス発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題であるガス発生装置は、さらに、ロシア特許第2108282号明細書や国際特許出願公開第2001/023327A号パンフレットに開示されるのと同一の技術を適用することにより、特別な冷却装置やクーラントフィルターの使用を回避する。
【0014】
本発明に係るガス発生装置は、好適なハウジング内に収容された装入物またはガス発生化合物を含み、装入物の化学組成は、基本的には、ガス発生化合物のアジ化ナトリウムNaNと、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩、好ましくは水ガラス、またはポリテトラゾールからなるバインダーと、冷却剤と、分解速度調整剤と、で構成される。
【0015】
したがって、その最も広義の形態では、本発明は、制御された条件下で、多孔性固体窒素ガス発生材料を分解することにより、冷温(<90℃、好ましくは<40℃)で、かつ好ましくは高純度の窒素を発生可能な固体推進剤によるガス発生装置に関するものである。
【0016】
本発明は、特に、窒素発生材料の特定の組成に依拠しており、その組成は、特定量の成分のバランスのとれた組合せに基づくものであり、材料の組成を変化させることにより、変更可能な速度で、低温の清浄な窒素の発生が行われるようになる。
【0017】
特定的には、本発明は、窒素ガスを発生させるのに適した固体多孔性材料に関するものであり、前記材料は、20〜75vol.%の多孔度を有し、かつ材料の重量を基準にして、60〜90wt.%のアジ化ナトリウムと、少なくとも1400J/K/kgの熱容量を有する少なくとも1種の無機塩に基づく0.1〜20wt.%の不活性な化学冷却剤と、金属酸化物および金属炭酸塩から選択される0.1〜20wt.%の調整剤と、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩である水ガラス、またはポリテトラゾールからなる群から選択される3〜15wt.%の量のバインダーと、で構成された組成を有する。
【0018】
本発明の重要な態様は、固体窒素ガス発生材料の多孔度である。材料は、20〜75vol.%の多孔度を有しており、この多孔度は、固体材料(装入物)中に、均一に分布しているので、発生ガスは、固体材料の細孔内を通過することが可能である。
【0019】
発熱反応を扱うものとはいえ、ガス発生装置は、冷温ガスを送給し、ほとんどの場合、送給ガスの温度は、40℃以下であり、常に90℃以下である。
【0020】
純度、速度、および温度のようなガスの所要の性質を提供するために、ガス発生装入物の組成を指定の範囲内で変化させることが可能である。より特定的には、結果的に窒素生成の温度および速度に影響を及ぼす所要の多孔度または所要の機械的強度に応じて、バインダーの量を変化させることが可能である。さらに、冷却剤の量も、また、分解速度に影響を及ぼす。一方、冷却剤の量を多くすると、窒素生成が低減される可能性がある。
【0021】
窒素発生剤としては、アジ化ナトリウムが使用される。これは、窒素ガスと金属ナトリウムとに分解する。このナトリウム(またはその反応生成物、たとえば水との反応生成物)が最終窒素ガス中に存在しないようにするために、以下で説明されるように、ガス用フィルターの使用および/または中和手段の組込みを行うことが可能である。
【0022】
組成の重要な成分は、特定のバインダーである。先行技術の組成でのバインダーの使用は、一般的には、性質の妥協点に基づくものである。バインダーは、強い結合性を有することが重要であり、そうすれば、少量で使用することが可能になるので、最終のガス中に汚染した化合物が発生しすぎることはない。しかしながら、ほとんどの先行技術のバインダーは、比較的無害であるが、多量に使用する必要があるため、窒素が許容レベル未満に希釈されることが多いか、または比較的少量で使用可能であるが、ガス中で低レベルであっても、許容できない、かなり危険な汚染した物質を発生するか、のいずれかである。
【0023】
本発明では、特定のバインダーおよび調整剤とアジ化ナトリウムとの組合せにより、以上の基準を満たして、適正に機能する、ガス発生組成が得られることを見いだされた。
【0024】
固体であるが、多孔性である装入物は、さらに、冷却剤を含有する。この冷却剤は、不活性な化学冷却剤であり、かつ無機塩からなる群から選択される。冷却剤の熱容量は、十分な冷却を提供するために、600Kで測定した場合に、少なくとも1400J/K/kgでなければならない。さらに、冷却剤は、スラグ調整剤として重要な機能を有する。その性質に起因して、それは、ガス発生装置が機能した後、スラグを所定の位置に保持するのに役立つ。冷却剤は、不活性でなければならない。このことは、それがガス発生の反応温度で分解したり、装入物中の他の成分と反応したりしないことを意味する。好ましい実施形態では、熱容量は、少なくとも1900J/K/kgである。
【0025】
所要の熱容量のほかに、本明細書中で規定されるように、冷却剤は、また、不活性であるという要件、すなわち、600Kのようなガス発生の温度で分解しないという要件を満たさなければならない。このことは、水酸化物および炭酸塩を、ここでは使用できないことを意味する。なぜなら、それらは、適切でないからである。
【0026】
冷却剤は、好ましくは、LiF、LiO、Li、Li、LiSO、Li、Li、およびLiSiOから選択される1種以上の化合物を含む。スラグ調整剤と冷却剤とに関して組み合わされた性質が優れていることを考えると、リチウム化合物が好ましい。
【0027】
さらなる必須成分として、装入物は、金属酸化物および金属炭酸塩から選択される調整剤、より特定的には燃焼調整剤を含有する。一般的には、これらの調整剤は、冷却剤の高い熱容量を有してない。さらに、調整剤は、系内で発熱反応するか、または触媒機能を有するか、のいずれかである。
【0028】
調整剤としては、好ましくは、酸化第二鉄(Fe)または炭酸ナトリウム(NaCO)が使用される。
【0029】
以上に述べたように、すべての成分の特定の組合せにより、先に述べたような特定の用途の要件を満たすように微調整可能な十分にバランスのとれた性質を有するガス発生装置が得られる。
【0030】
固体ガス発生材料は、20〜75vol.%の多孔度を有する1個以上の多孔性装入物の形態である。2個以上のガス発生装入物の場合、最初の装入物は、点火装置(イグナイター)を利用して起爆され、他の装入物は、先行する1個もしくは複数個の装入物により逐次的に点火される。反応(分解)フロントは、点火装置から離れる方向に制御速度で移動し、一方、熱い分解ガスは、1個もしくは複数個の多孔性装入物中を通過することにより、1個もしくは複数個の装入物と熱交換するので、1個もしくは複数個の装入物は、加温され、かつガスは、初期装入温度に冷却される。
【0031】
1個もしくは複数個の装入物は、個別に製造されたものであり、発生ガスの大部分、好ましくは分解ガスの90%超、より特定的には95%超が、1個もしくは複数個の多孔性装入物の細孔内を通過するように、ガス発生装置のハウジング内に装着される。
【0032】
1個もしくは複数個の装入物は、装入物の長さ方向、および/または幅方向にわたり変化する組成を有することができる。
【0033】
ガス発生装置は、さらに、分解生成物を発生して、1個もしくは複数個の主要なガス発生多孔性装入物のスラグ、好ましくはガス状硫黄を中和したり、分解により生成されたナトリウム(またはその反応生成物)を中和したりすることを可能にする、副次的な装入物を含有することができる。
【0034】
点火装置は、典型的な花火のタイプのものであることができるが、他の(従来の)点火装置を使用することも可能である。
【0035】
(最初の)装入物は、ガス発生装置の出口から離れた装入物の位置で点火される。点火は、最初の多孔性装入物の頂部で行われる。このようにして、ハウジングは、熱い不活性の分解ガスが、1個もしくは複数個の固体多孔性装入物中を通過するようにする。それにより、発生ガスは、冷却され、一方、1個もしくは複数個の装入物は、加熱される。1個もしくは複数個の多孔性装入物の温度を上昇させることにより、制御分解が保持される。最後の装入物の出口部では、ガスは、一般的には、最後の多孔性装入物の(初期)温度に達し、装入物の未燃焼部分とその熱を完全に交換した状態にある。
【0036】
ガス発生装置が、ナトリウム(またはその反応生成物)を排出しないこと、かつガスが粒状物質や望ましくない化学汚染物質を含有しないことを保証するために、ガス発生装置は、ナトリウムおよび任意の他の望ましくない汚染物質および固体もしくは液体の物質を濾別する特別なフィルターを備えることができる。好適なフィルターは、活性炭、サンド、ゼオライト、金属酸化物、およびそれらの組合せのような顆粒状材料を、互いに混合した状態または連続した状態のいずれかで含む。
【0037】
エアバッグ用配合物と比較して、本発明に係るタイプのガス発生装置の重要な態様は、エアバッグ用配合物の爆発タイプの分解の代わりに、安定な燃焼挙動を得る必要性に依拠する。さらに、(存在する場合、フィルターの)低い圧力負荷および低いガス負荷の必要性が存在する。
【0038】
この態様では、冷却剤は、まだ分解されていない装入物の部分(粒子)中の生成ガスを冷却する主要な機能を有している。さらに、それは、所定の位置に液体反応生成物を保持することにより、フィルター負荷を低減する。
【0039】
好ましくは、ガス発生装置は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%の窒素含有率を有する不活性ガスを送給する。非常に清浄な窒素の場合、ガスは、空気中での引火下限よりもはるかに低い濃度で引火性もしくは可燃性のガスを含有することが好ましく、かつ好ましくはメタンの濃度は0.2体積%以下であり、水素の濃度は1.0体積%以下であり、一酸化炭素の濃度は0.02体積%以下であり、排出ガス中のアンモニアの濃度は好ましくは0.05体積%以下である。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るガス発生装置の典型的な用途は、以下のとおりである。
−消火器用の駆動ガスを提供すること。
−爆発抑制用または火災抑制用の駆動ガスを提供すること。
−他のガスの希釈用の窒素を発生させること。
−ニューマチック(緊急)装置用のガスを発生させること。
−エアバッグを膨張させること。
【0041】
他の可能な用途は、以下のとおりである。
−重い荷物または重い装置を持ち上げるためにバッグを膨張させること、膨張式ボートを膨張させること。
−パワーアクチュエーターに窒素を提供すること。
−高速ガスのストリームを提供すること。
−粉末の散布のために、液体スプレー(たとえば塗料)の散布のために、または材料の輸送のために、ガスフローを提供すること。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るガス発生装置の概略の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明に係るガス発生装置の概略の配置が示された図を利用して本発明を説明する。
【0044】
以下の説明は、図に示された特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。なぜなら、この図は、主に、本発明およびその好ましい実施形態を理解する助けとして提示されたものであるからである。
【0045】
図を利用してガス発生装置を説明する。それは、点火装置(1)と1個以上の多孔性ガス発生装入物(2)とを含有する。こうした1個もしくは複数個の装入物は、多孔性であることが不可欠であり、その結果、分解ガスは、こうした1個もしくは複数個の装入物中を通過することが可能になる。さらに、ガス発生装置は、1個以上のフィルター(3)を含有することができる。ガス発生装置は、ハウジング(4)とベント(5)とを有し、かつ第2の点火装置を有することができる。この点火装置は、任意のものである。さらに、ガス発生装置は、中和用の装入物を有することができる。この中和用の装入物も、また、任意のものである。
【0046】
装入物は、任意の好適な形状を有するか、主要な装入物よりも短い直径であることができるか、または有孔であることができるが、これは、好ましくはない。また、中和用の装入物が主要な点火装置により点火される(いくらか遅れて)配置も可能である。
【0047】
点火装置(1)は、主要なガス発生装入物(2)を点火する。ガス発生装置により送給されるガスの純度に関して厳しい要件が存在しないのであれば、点火装置は、任意の好適な典型的な花火のタイプであることができる。点火装置は、起爆装置を含むことができる。これは、電気式起爆装置、撃発作動式起爆装置、またはレーザー点火式起爆装置であることができる。
【0048】
主要なガス発生装入物は、さまざまな形状をとりうるか、または好適な形状の装入物のスタックで構成することができる。
【0049】
各スタックは、また、たとえば燃焼速度もしくはガスの組成を調整するために、さまざまな組成を有することが可能であり、および/または組成は、装入物の幅方向もしくは長さ方向にわたり変化させることが可能である。
【0050】
図では、装入物は円柱状である。この結果、生成ガスの質量流量は、かなり一定したものになる。しかしながら、(切頭)円錐の形状、2個の切頭円錐の形状、球の形状、または他の好適な形状で装入物を作製することにより、その特定の用途に応じて、ガスの質量流量を事前に計画することが可能である。熱ガスは、1個もしくは複数個の多孔性装入物中を通過することにより、初期(バージン)冷装入材料とその熱を交換して、ガスを冷却する。
【0051】
次に、装入物を出た後、分解生成物をフィルターに通してガスを精製することが可能である。フィルターの副次的な機能は、最後の多孔性装入物のごく最終部分で発生したガスを冷却することである。
【0052】
装入物は、容器内に投入可能であるが、場合により、ライナーを用いて、より後の段階で個別に投入して、ハウジング内に装着することも可能である。
【0053】
ガス発生装置の配置は、分解ガスが、常に多孔性装入物(2)中を通過することにより、その熱を主要な装入物と交換するようにしたものである。適正なシーリングにより、あるいは装入物がハウジングに結合もしくはケース結合されるか、またはハウジング内に密嵌されるので、一般的には、装入物のいかなる迂回も回避される。これは、以下の2つの目的に役立つ。
分解ガスを周囲温度に冷却すること、及び、それと同時に、装入物を加熱して、分解反応を持続させること。
【0054】
装入物の分解速度は、酸化鉄(Fe)および炭酸ナトリウム(NaCO)のような金属酸化物および金属炭酸塩から選択される少量の燃焼速度調整剤を添加することにより調整される。分解速度の制御は、発生質量流束を制御するためだけでなく、分解フロントの安定な進行を確保したり、安定な燃焼を確保したりするためにも重要である。たとえば、以下の表は、50%の多孔度を有する典型的なNaN(79wt%)とLiF(10〜13wt%)とK−ケイ酸塩(水ガラス、7wt.%)との装入物の分解速度に及ぼすFeの効果を示している。
【0055】
【表1】

【0056】
装入物の多孔度は、好ましくは約50%である。主要なガス源は、アジ化ナトリウム(NaN)であり、フッ化リチウムは、冷却剤であり、かつK−ケイ酸塩(水ガラス)は、バインダーである。良好な性能は、以下の好ましい範囲内にある装入物組成を用いて、達成可能である。
【0057】
【表2】

【0058】
冷却剤としてのフッ化リチウム(LiF)に加えて、またはその代わりに、他の冷却剤を使用することが可能であり、特定的には、LiO、Li、Li、LiSO、Li、Li、およびLiSiOが可能な冷却剤である。それらは、全装入物質量の0.1%〜20%の範囲内の重量パーセントで使用される。酸化鉄(Fe)に加えて、またはその代わりに、金属酸化物および金属炭酸塩から選択される他の調整剤を使用することが可能である。
【0059】
種々の好ましい冷却剤材料の冷却剤特性を、以下の表に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
アジ化ナトリウムの分解後、(純粋な)ナトリウムが装入物のスラグ中に残留する。大気中に常に存在する水と一緒になって、ナトリウムは、発熱反応で水酸化ナトリウムおよび水素を形成することができる。このナトリウムを中和して、NaOHおよびHの形成を防止するために、ガス発生装置内に中和用装入物を組み込むことが可能である。この中和用装入物は、効果的な中和剤、たとえば硫黄と組み合わされたガス発生組成で構成することが可能である。
【0062】
好ましい組成に基づく装入物の実験および化学分析の結果から、発生ガスの純度が確認される。
【0063】
【表4】

【0064】
いずれの場合も、ガス発生装置は、98%超のNを含有する窒素ガスを発生する。
【0065】
ガス発生装置からのナトリウムの排出を防止するためだけでなく、ガス発生装置により送給されるガスの純度を増大させるためにも、化学フィルター(3)を多孔性装入物と排出物との間に配置することが可能である。
【0066】
フィルターは、また、任意の微細なドロップレットおよび粒状物質を濾別するために、サンド、ペーパー、ガラス繊維、ゼオライト、または金属メッシュ材料のような不活性材料を含有することができる。装入物の残りの部分の熱容量が小さすぎて、発生ガスのごく最終部分を冷却することができない場合には、フィルターは、また、機能しているガス発生装置の端部に向かうガスを冷却する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガスの発生に適した固体多孔性材料であって、該材料は、20〜75vol.%の多孔度を有し、かつ材料の重量を基準にして、60〜90wt.%のアジ化ナトリウムと、少なくとも1400J/K/kgの熱容量を有する少なくとも1種の無機塩に基づく0.1〜20wt.%の不活性の化学冷却剤と、金属酸化物および金属炭酸塩から選択される0.1〜20wt.%の調整剤と、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩である水ガラス、またはポリテトラゾールからなる群から選択される3〜15wt.%の量のバインダーと、で構成された組成を有する窒素ガス発生用固体多孔性材料。
【請求項2】
前記冷却剤が、LiF、LiO、Li、Li、LiCl、NaCl、CaF、LiSO、Li、Li、LiSiO、およびLiFからなる群から選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記調整剤が、酸化鉄(Fe)または炭酸ナトリウム(NaCO)から選択される、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記ポリテトラゾールが、ナトリウムポリ−5−ビニルテトラゾール、またはアルカリ金属の任意のテトラゾール塩であるカリウムポリ−5−ビニルテトラゾール、または類似のポリテトラゾールであるアンモニウムポリ−5−ビニルテトラゾールである、請求項1−3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
前記アルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムとの混合物である、請求項1−3のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
前記冷却剤が、少なくとも1900J/K/kgの熱容量を有する無機塩である、請求項1−5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
ガス発生材料および点火装置に対するハウジングを含み、前記ガス発生材料が、請求項1−6のいずれかに記載のものであることを特徴とする、窒素ガス発生用ガス発生装置。
【請求項8】
前記ガス発生材料の下流に、さらにフィルターが存在する、請求項7に記載のガス発生装置。
【請求項9】
分解ガスの90%以上が装着材料中を通過するように、請求項1−6のいずれかに記載のガス発生材料が、ガス発生装置のハウジング内に装着される、請求項7または8に記載のガス発生装置。
【請求項10】
窒素ガスを発生させるための方法であって、請求項7−9のいずれかに記載のガス発生装置内でガス発生材料を点火することからなる窒素ガス発生方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−509902(P2011−509902A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537880(P2010−537880)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050772
【国際公開番号】WO2009/078707
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(509232980)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPAST−NATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【住所又は居所原語表記】Schoemakerstraat 97 NL−2628 VK Delft The Netherlands
【Fターム(参考)】