説明

窒素供給設備

【課題】設備コストの削減を図ることの可能な窒素供給設備を提供する。
【解決手段】窒素使用設備に対して常用窒素ガスと該常用窒素ガスより高圧の非常用窒素ガスとを供給する窒素供給設備であって、前記常用窒素ガスの供給に使用される常用窒素ガス供給ラインと、前記非常用窒素ガスの供給に使用される非常用窒素ガス供給ラインとを具備し、前記常用窒素ガス供給ライン及び前記非常用窒素ガス供給ラインは、それぞれ独立した別系統の窒素ガス供給ラインとして設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNG基地内の窒素供給源として、PSA(Pressure Swing Adsorption)方式の窒素ガス発生装置(以下、PSA窒素ガス発生装置と称す)とタンクに貯留された液体窒素とが使用されている。周知のように、PSA窒素ガス発生装置とは、吸着剤を用いて空気中の酸素と窒素とを分離することで、高純度の窒素ガスを発生する装置である。
【0003】
図2に示すように、通常時では、PSA窒素ガス発生装置が発生する窒素ガス(以下、常用窒素ガスと称す)を、常用窒素供給ライン10を介してLNG基地内の窒素使用設備30に供給する。一方、非常時では、液体窒素の加熱により発生させた高圧の窒素ガス(以下、非常用窒素ガスと称す)を、非常用窒素供給ライン20を介して常用窒素供給ライン10に合流させて窒素利用設備30に供給する。例えば、窒素使用設備30がベントスタックの場合、常用窒素ガスはベントスタックのパージ用に使用され、非常用窒素ガスは火災発生時の消火用に使用される(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−337463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、非常時では、液体窒素の加熱により発生させた非常用窒素ガスを、非常用窒素供給ライン20を介して常用窒素供給ライン10に合流させて窒素利用設備30に供給するが、非常用窒素ガスは常用窒素ガスより高圧であるため、PSA窒素ガス発生装置による常用窒素ガスの供給が停止してしまう。そのため、非常時に必要な窒素ガス供給量の全てを非常用窒素ガスによって賄わなければならず、液体窒素設備(タンク、配管等)の大型化を招き、その結果、設備コストの増大を招くという問題があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、設備コストの削減を図ることの可能な窒素供給設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、窒素供給設備に係る第1の解決手段として、窒素使用設備に対して常用窒素ガスと該常用窒素ガスより高圧の非常用窒素ガスとを供給する窒素供給設備であって、前記常用窒素ガスの供給に使用される常用窒素ガス供給ラインと、前記非常用窒素ガスの供給に使用される非常用窒素ガス供給ラインとを具備し、前記常用窒素ガス供給ライン及び前記非常用窒素ガス供給ラインは、それぞれ独立した別系統の窒素ガス供給ラインとして設置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、窒素供給設備に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記常用窒素ガス供給ラインと前記非常用窒素ガス供給ラインとを接続する補助窒素ガス供給ラインと、前記補助窒素ガス供給ラインの途中に介挿された流量調整弁と、前記常用窒素ガス供給ラインの圧力に応じて前記流量調整弁の弁開度を制御する制御装置とをさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る窒素供給設備によれば、非常時に必要な窒素ガス供給量を常用窒素ガスと非常用窒素ガスとによって賄うことができるため、液体窒素設備(タンク、配管等)を小型化することができ、その結果、設備コストの削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における窒素供給設備Aの構成概略図である。
【図2】従来の窒素供給設備の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における窒素供給設備Aの構成概略図である。この図1に示すように、窒素供給設備Aは、窒素使用設備30に対して常用窒素ガスと該常用窒素ガスより高圧の非常用窒素ガスとを供給するものであり、常用窒素ガス供給ライン1、非常用窒素ガス供給ライン2、補助窒素ガス供給ライン3、流量調整弁4及び制御装置5から構成されている。
【0012】
常用窒素ガス供給ライン1は、通常時において、例えば不図示のPSA窒素ガス発生装置が発生した窒素ガス(常用窒素ガス)を窒素使用設備30に供給するために使用される窒素ガス供給ラインである。非常用窒素ガス供給ライン2は、非常時において、例えばタンクに貯留された液体窒素の加熱により発生させた窒素ガス(非常用窒素ガス)を窒素使用設備30に供給するために使用される窒素ガス供給ラインである。
これら常用窒素ガス供給ライン1及び非常用窒素ガス供給ライン2は、それぞれ独立した別系統の窒素ガス供給ラインとして設置されている。
【0013】
補助窒素ガス供給ライン3は、常用窒素ガス供給ライン1と非常用窒素ガス供給ライン2とを接続する補助用の窒素ガス供給ラインである。流量調整弁4は、補助窒素ガス供給ライン3の途中に介挿された電磁弁であり、制御装置5から入力される開度制御信号によってその弁開度が制御される。制御装置5は、例えばPIC(Pressure Indicator Controller)であり、常用窒素ガス供給ライン1の圧力に応じて流量調整弁4の弁開度を制御する(流量調整弁4に開度制御信号を出力する)ものである。
【0014】
このような構成の窒素供給設備Aにおいて、通常時では、常用窒素ガス供給ライン1を介して常用窒素ガスが窒素使用設備30に供給される。例えば、窒素使用設備30がベントスタックの場合、常用窒素ガスはベントスタックのパージ用に使用される。なお、流量調整弁4は、制御装置5から開度制御信号の入力が無い限り、閉状態となっている。
【0015】
ここで、制御装置5は、常用窒素ガスの供給時に、常用窒素ガス供給ライン1の圧力が所定の閾値を下回った場合、つまり窒素使用設備30に対して必要な量の常用窒素ガスが供給されていない場合、流量調整弁4に開度制御信号を出力することで流量調整弁4を開くと共に、液体窒素を加熱する設備を制御することで非常用窒素ガスを発生させる。非常用窒素ガスは、補助窒素ガス供給ライン3を介して常用窒素ガス供給ライン1に合流して窒素使用設備30に供給される。
【0016】
これにより、常用窒素ガスの不足分を非常用窒素ガスによって補充することができる。なお、非常用窒素ガスは常用窒素ガスより高圧であるため、補助窒素ガス供給ライン3を介して常用窒素ガス供給ライン1に合流する非常用窒素ガスの流量が大きいと、PSA窒素ガス発生装置による常用窒素ガスの供給が停止するため、補助窒素ガス供給ライン3を流れる非常用窒素ガスの流量が常用窒素ガスの供給を妨げないように流量調整弁4の弁開度を適切に制御する必要がある。
【0017】
一方、窒素供給設備Aにおいて、非常時では、非常用窒素ガス供給ライン2を介して非常用窒素ガスが窒素使用設備30に供給される。例えば、窒素使用設備30がベントスタックの場合、非常用窒素ガスは火災発生時の消火用に使用される。また、非常時では、流量調整弁4は常に閉状態となっており、非常用窒素ガスとともに常用窒素ガス供給ライン1を介して常用窒素ガスが窒素使用設備30に供給される。
【0018】
つまり、非常時において、常用窒素ガスと非常用窒素ガスは合流することなく、それぞれ完全に独立した別系統の窒素ガス供給ラインを介して窒素使用設備30に供給されて、火災発生時の消火などの非常用に使用される。ここで、常用窒素ガスと非常用窒素ガスは窒素使用設備30の上流側で合流しないため、PSA窒素ガス発生装置による常用窒素ガスの供給が停止することはない。
【0019】
以上のように、本実施形態における窒素供給設備Aによれば、非常時に必要な窒素ガス供給量を常用窒素ガスと非常用窒素ガスとによって賄うことができるため、液体窒素設備(タンク、配管等)を小型化することができ、その結果、設備コストの削減を図ることが可能となる。
【0020】
なお、上記実施形態では、窒素供給設備Aに補助窒素ガス供給ライン3、流量調整弁4及び制御装置5を設けた構成を例示したが、通常時において常用窒素ガスが不足する虞がない場合には、必ずしもこれらの設備を設ける必要はない。また、常用窒素ガス及び非常用窒素ガスを独立した別系統の窒素ガス供給ラインを介して供給すべき窒素使用設備30はベントスタックに限らず、リターンガスブロワ、ブリージングタンク、BOG圧縮機など、その他の設備であっても良い。
【符号の説明】
【0021】
A…窒素供給設備、1…常用窒素ガス供給ライン、2…非常用窒素ガス供給ライン、3…補助窒素ガス供給ライン、4…流量調整弁、5…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素使用設備に対して常用窒素ガスと該常用窒素ガスより高圧の非常用窒素ガスとを供給する窒素供給設備であって、
前記常用窒素ガスの供給に使用される常用窒素ガス供給ラインと、
前記非常用窒素ガスの供給に使用される非常用窒素ガス供給ラインと
を具備し、
前記常用窒素ガス供給ライン及び前記非常用窒素ガス供給ラインは、それぞれ独立した別系統の窒素ガス供給ラインとして設置されていることを特徴とする窒素供給設備。
【請求項2】
前記常用窒素ガス供給ラインと前記非常用窒素ガス供給ラインとを接続する補助窒素ガス供給ラインと、
前記補助窒素ガス供給ラインの途中に介挿された流量調整弁と、
前記常用窒素ガス供給ラインの圧力に応じて前記流量調整弁の弁開度を制御する制御装置と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の窒素供給設備。

【図1】
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【図2】
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