説明

窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物

【課題】窒素肥料の脱窒と浸出の損失を減少させる組成物を提供する。
【解決手段】窒素肥料を2-10質量パーセントのニームエキス、10-60質量パーセントのニーム油、10-25質量パーセントの結合剤及び25-50質量パーセントの有機溶媒を含むニームベースの組成物で被覆する。また、0.5〜1.0質量パーセントのニームベースの組成物と混合することによって窒素肥料を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物に関する。
本発明は、また、ニームベースの組成物を製造する方法、窒素肥料をその組成物で被覆する方法及びその組成物で被覆された窒素肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素は、世界中で作物に用いられている主要な窒素肥料である。直接土壌に施す際に、尿素は加水分解と硝化によって化学的/生化学的変換を受ける。加水分解は水とウレアーゼと呼ばれる酵素の存在下で行われ、結果として窒素のアミド形態がアンモニア窒素又は炭酸アンモニウムに分解される。結果として生じたアンモニア窒素は、更に、酸素と土壌細菌(ニトロソモナス種やニトロバクター種)の存在下で変換、即ち、硝化を受け、窒素の亜硝酸塩と硝酸塩の形態を生じる。尿素肥料の加水分解と硝化は、ほとんどの大気中の条件で15-20日間で大部分は完了するが、ほとんどの栽培作物は、それらのライフサイクルを完了するのに一般的には90-100日間を超える。硝酸塩は高度に水溶性であり、尿素の加水分解と硝化が急速なために、発育の初期の段階で作物が必要とする限られた量が過剰に多量に形成された場合、作物の活性根域を越えて土壌断面に浸出しやすい。このことにより、作物によって尿素肥料の使用効率が低下する。更に、水分を多く含んだ状態で、酸素要求量を満たす土壌細菌の作用によって硝酸塩は亜酸化窒素と元素の窒素に還元する。このことにより、窒素不足の生育が生じ且つ作物収量が悪くなる。
作物収量が悪いための経済的損失の他に、主に硝酸塩の浸出及び温室ガスである亜酸化窒素の放出の形での肥料窒素の損失は、深刻な環境災害を引き起こす。国連の世界保健機構は、飲料水における硝酸塩の最大許容値を実際に50mg/リットルに規定している。このことは、主に、飲料水中の硝酸塩含有量が高いと、最終的には新生児が血液癌(メトヘモグロビン血症)になってしまうためである。一方、亜酸化窒素は、他の温室ガス二酸化炭素に対して極めて著しい310倍のより地球規模の温暖化の可能性を有する。それ故、肥料窒素の浸出と脱窒の減少につながるあらゆる開発が、作物使用効率と生産性を高めるだけでなく、環境的安全性を確実にする。
ニームや他の非食用脂肪種子、例えば、カランジ、マフア又はキャスタの成分は、有効な窒素抑制剤であることが報告されている(Devkumar and Sukhdev, 1993, In. Neem Research and Development, Society of Pesticide Science, New Delhi 63 - 96; Prasad and others, 1971, Advance in Agronomy, 23, 357 - 383; Prasad and others, 1996, In, Neem Research and Development, New Age International Publishers, New Delhi, 121-132)。尿素をニームケークで又はニーム油のみか又はニーム脂肪酸蒸留残査と組合わせて被覆することが報告されている(インド特許第185675号、同第193152号、I K Suri and other 2000, Fertiliser New 71-72)。
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は、窒素肥料に被覆するためのニームベースの組成物であって、窒素肥料の脱窒と浸出の損失を減少させる前記組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物であって、作物による肥料の使用効率及び作物の収量を高める前記組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物を製造する方法であって、前記組成物が窒素肥料の脱窒と浸出の損失を減少させる前記方法を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物を製造する方法であって、前記組成物が作物による肥料の使用効率及び作物の収量を高める前記方法を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料を窒素肥料の脱窒と浸出の損失を減少させるニームベースの組成物で被覆する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料を作物による肥料の使用効率及び作物の収量を高めるニームベースの組成物で被覆する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、窒素肥料の脱窒と浸出の損失を減少させるニームベースの組成物で被覆された窒素肥料を提供することである。
本発明の他の目的は、作物による肥料の使用効率及び作物の収量を高めるニームベースの組成物で被覆された窒素肥料を提供することである。
本発明の他の目的は、尿素の脱窒と浸出の損失を減少させるニームベースの組成物で被覆された尿素又は尿素小球を提供することである。
本発明の他の目的は、作物による肥料の使用効率及び作物の収量を高めるニームベースの組成物で被覆された尿素又は尿素小球を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明によれば、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物であって、2-10質量パーセントのニームエキス、10-60質量パーセントのニーム油、10-25質量パーセントの結合剤及び25-50質量パーセントの有機溶媒を含む前記組成物が提供される。
本発明によれば、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物を製造する方法であって、2-10質量パーセントのニームエキス、10-60質量パーセントのニーム油、10-25質量パーセントの結合剤及び25-50質量パーセントの有機溶媒を含む前記方法が提供される。
好ましくは、組成物は、5質量パーセントのニームエキス、40質量パーセントのニーム油、15質量パーセントの結合剤及び40質量パーセントの有機溶媒を含む。
好ましくは、組成物におけるニームエキスは、5〜10質量パーセントのトリテルペンを含有する。好ましくは、ニームエキスにおけるトリテルペンは、サラニン及びデアセチルサラニンを含む。
結合剤は、合成ポリマー、アラビアゴム又はロジンより選ばれ、好ましくはロジンである。有機溶媒は、キシレン、アロマックス、CIX又は脱臭灯油より選ばれ、好ましくは脱臭灯油である。
好ましくは、組成物は、密度が0.93-0.96g/cc、有機炭素分が70%w/w、最低、全窒素含有量が0.45-0.55%w/w、カールフィッシャーによる水分が2.0%w/w、最高及びメタノール可溶分が20.0%w/w、最低である。
本発明によれば、窒素肥料を被覆する方法であって、窒素肥料と上記0.5〜1.0質量パーセントのニームベースの組成物とを混合することを含む、前記方法が提供される。
本発明によれば、上記0.5〜1.0質量パーセントのニームベースの組成物で被覆された窒素肥料が提供される。
好ましくは、窒素肥料は、0.5〜1.0質量パーセントの上記ニームベースの組成物で被覆された尿素又は尿素小球を含む。
【実施例】
【0005】
実験は、5質量%のニームエキス、40質量%のニーム油、15質量%のロジンピッチ及び40質量%の脱臭灯油を含み、密度が0.93-0.96g/cc、有機炭素分が70%w/w、全窒素含有量が0.45-0.55%w/w、カールフィッシャーによる水分が2.0%w/w及びメタノール可溶分が20.0%w/wである、本発明の典型的なニームベースの組成物を用いて行った。成分を種々のパーセントの後述されるトリテルペンと共に混合することによって組成物を形成した。尿素を、組成物と混合することによって組成物で被覆した。実験の詳細は、以下の通りであった。
35日間実験条件下で2つ土壌における亜酸化窒素の放出(脱窒)について尿素を本発明の組成物で被覆することの影響を実験し、結果を以下の表1に示した。

【0006】
表1

N1 = 2%トリテルペンを含有するニームエキスを含む組成物
N2 = 5%トリテルペンを含有するニームエキスを含む組成物
N3 = 10%トリテルペンを含有するニームエキスを含む組成物
C1 = 0.03%w/wの尿素の被覆の厚さ
C2 = 0.05%w/wの尿素の被覆の厚さ
C3 = 1.0%w/wの尿素の被覆の厚さ
【0007】
現場条件下(75日間)米土壌における亜酸化窒素の放出及び浸出による硝酸塩の蓄積について尿素を本発明の組成物で被覆することの影響を実験し、結果を以下の表2に示した。
【0008】
表2

【0009】
現場条件下(小麦-試料採取: 70日間)浸出損失及び揮発損失の減少について尿素を本発明の組成物で被覆することの影響を実験し、結果を以下の表3に示す。





【0010】
表3

【0011】
尿素を本発明の組成物で被覆することの影響を小麦と米の穀粒収量に対して現場条件で実験し、結果は以下の表4に示す通りであった。
【0012】
表4

【0013】
表1〜4からわかるように、本発明のニーム油ベースの組成物は、窒素肥料、特に尿素の脱窒と浸出の損失を減少させ、作物による尿素の使用効率を高めると共に作物の収量を増加させる。亜酸化窒素の放出が減少するので、温室効果及び結果として生じた環境的問題が減少する。本発明によれば、本発明の組成物の成分は、適切なパーセントのトリテルペンが最適比率で選択され用いられて、活性が改善された組成物を得る。ニームエキスは必要量のトリテルペンを供給し、ニーム油は展着剤として働き、所望の粘度はロジンピッチと脱臭灯油によって組成物に与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-10質量パーセントのニームエキス、10-60質量パーセントのニーム油、10-25質量パーセントの結合剤及び25-50質量パーセントの有機溶媒を含む、窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物。
【請求項2】
5質量パーセントのニームエキス、40質量パーセントのニーム油、15質量パーセントの結合剤及び40質量パーセントの有機溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ニームエキスが、5〜10質量パーセントのトリテルペンを含有する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
トリテルペンが、サラニン及びデアセチルサラニンを含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
結合剤がロジンであり、有機溶媒が脱臭灯油である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
密度が0.93-0.96g/cc、有機炭素分が70%w/w、最低、全窒素含有量が0.45-0.55%w/w、カールフィッシャーによる水分が2.0%w/w、最高、メタノール可溶分が20.0%w/w、最低である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
窒素肥料を被覆するためのニームベースの組成物を製造する方法であって、2-10質量パーセントのニームエキス、10-60質量パーセントのニーム油、10-25質量パーセントの結合剤及び25-50質量パーセントの有機溶媒を混合することを含む、前記方法。
【請求項8】
組成物が、5質量パーセントのニームエキス、40質量パーセントのニーム油、15質量パーセントの結合剤、40質量パーセントの有機溶媒を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
組成物が、5〜10質量パーセントのトリテルペンを含有するニームエキスを含む、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
組成物が5〜10質量パーセントのトリテルペンを含有するニームエキスを含み、トリテルペンがサラニン及びデアセチルサラニンを含んでいる、請求項7又は8記載の方法。
【請求項11】
組成物が結合剤としてロジン、有機溶媒として脱臭灯油を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
組成物の密度が0.93-0.96g/cc、有機炭素分が70%w/w、最低、全窒素含有量が0.45-0.55%w/w、カールフィッシャーによる水分が2.0%w/w、最高、メタノール可溶分が20.0%w/w、最低である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
窒素肥料を被覆する方法であって、窒素肥料と0.5〜1.0質量パーセントの請求項1〜6のいずれか1項に記載のニームベースの組成物とを混合することを含む、前記方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法によって0.5〜1.0質量パーセントの請求項1〜6のいずれか1項に記載のニームベースの組成物で被覆された窒素肥料。
【請求項15】
請求項13記載の方法によって0.5〜1.0質量パーセントの請求項1〜6のいずれか1項に記載のニームベースの組成物で被覆された尿素又は尿素小球を含む、請求項14記載の窒素肥料。

【公開番号】特開2007−261940(P2007−261940A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−113504(P2007−113504)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(507132857)ゴドレイ アグロヴェット リミテッド (1)
【Fターム(参考)】