説明

窒素酸化物除去触媒、それを用いた窒素酸化物除去方法及び窒素酸化物除去装置

【課題】リンによる触媒の劣化を抑制し、耐酸性および耐熱性に優れた窒素酸化物除去触媒を提供する。
【解決手段】排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒であって、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン化合物による劣化を抑制することが可能な窒素酸化物除去触媒、該触媒を用いた窒素酸化物除去方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所,各種向上,自動車などから排出される排ガス中のNOxは、環境悪化の原因物質であり、その効果的な除去方法として、アンモニア(NH3)を還元剤とした選択的接触還元による排煙脱硝法が火力発電所を中心に用いられている。触媒には、バナジウム(V),モリブデン(Mo)あるいはタングステン(W)を活性成分にした酸化チタン(TiO2)系触媒が使用されており、特に活性成分のひとつとしてバナジウムを含むものは活性が高いだけでなく、排ガス中に含まれる不純物による劣化が小さいこと、より低温から使用できることなどから、現在の脱硝触媒の主流になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、米国では、PRB炭と称される亜瀝青炭や瀝青炭など、低品位の石炭を使用するボイラが増加する傾向にあり、また排ガス規制が強化されてきたことから、ボイラへの脱硝装置の設置が増加している。一般に米国で多く産出される亜瀝青炭の中には、通常の石炭焚きの場合に比べて排ガス中および灰中にリンを多く含むものがあり、リンは脱硝触媒にとって触媒毒になることから、リンを多く含有する石炭燃焼排ガス処理では、通常の石炭焚きの場合に比べて脱硝触媒の性能低下が大きいという問題があった。しかしながら、これまでにリンによる劣化を防止することを目的とした対策は採られていなかった。
【0004】
窒素酸化物除去触媒には酸化チタンを担体とし、これに活性成分を担持して使用する場合が多いが、排ガス中のリンあるいは砒素などの触媒毒成分に対する耐久性を持つには、直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した場合、前記触媒が有する細孔の直径が20〜100Åであることが必要である。このためには前記細孔を有する酸化チタンが有効であった。
【0005】
一方、前記細孔を有する酸化チタンは400℃以上の加熱温度に対して耐熱性に乏しい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭57−36012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リンによる触媒の劣化を抑制し、耐酸性および耐熱性に優れた窒素酸化物除去触媒、それを用いた除去方法及び除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒であって、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする。
【0009】
前記担体が酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素として含まれるジルコニウムの対チタンモル濃度比が1/9〜1/4であることが好ましい。
【0010】
前記担体に担持される窒素酸化物除去成分が、バナジウム,タングステン,モリブデンのうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
前記窒素酸化物除去成分のバナジウムあるいはバナジウムとモリブデンの合計モル数が、前記担体である酸化チタンのチタン成分のモル数に対してモル比率で95:5〜90:10であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒を備えた窒素酸化物除去装置であって、前記窒素酸化物除去触媒は、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒を用いた窒素酸化物除去方法であって、前記窒素酸化物除去触媒は、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排ガス中の窒素酸化物の除去において、耐熱性を保有しつつリン化合物による触媒の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る窒素酸化物除去装置の構成を模式的に示す図。
【図2】ボイラ排ガスの脱硝システムの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
PRB炭燃焼ボイラでは、リンは還元性の強い亜リン酸や有機リン酸として排ガス中にガス状態で存在すると考えられ、排ガス中のリン化合物は窒素酸化物除去触媒に到達すると触媒成分に吸着する。リン化合物は還元剤のアンモニアと同じ点にかつ強固に吸着するため、アンモニアの吸着を阻害して、触媒の脱硝活性が低下すると推定される。
【0018】
また、リンと類似の成分として砒素も排ガス中にガス状態で亜ヒ酸などの形態で存在すると考えられている。
【0019】
このようなリンや砒素の挙動を前提とすると、リン化合物や砒素化合物が侵入しにくいメソ細孔を形成して、メソ細孔中に脱硝活性成分元素を担持すれば、脱硝活性が維持できるとともにリン被毒,砒素被毒による触媒の劣化を防止することが可能である。
【0020】
具体的には、本発明の触媒は担体上に窒素酸化物除去成分が担持されており、前記担体はチタンを含む酸化物であり、さらには、前記担体はチタンの他にジルコニウムを含むことが有効である。
【0021】
かつ、前記担体にチタンの他にジルコニウムを含む前記成分の含有量が対チタンモル濃度比で1/9から1/4であることがなお望ましい。
【0022】
チタン以外に担体中にジルコニウムを含む理由は、チタン酸化物の耐熱性を向上させるためである。したがって、チタンと前記チタン以外の担体中の成分との濃度比には適正値が存在し、前記成分の含有量が対チタンモル濃度比で1/9から1/4であることがチタン酸化物単独成分よりも耐熱性を向上させ、チタン酸化物の触媒としての特性を保持しうる。
【0023】
かつ前記担体に窒素酸化物除去成分を担持した前記触媒は20〜3000Åの直径を有する細孔を測定するガス吸着法で計測される細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、該20〜100Åの直径の細孔の容積が該ガス吸着法で計測される細孔の全細孔容積に対して50%以上有することによって、窒素酸化物除去性能が維持できるとともにリン被毒による触媒の劣化を防止することが可能である。
【0024】
触媒の細孔径とリン,砒素などの被毒物質との関係については以下のように考えられている。
【0025】
平均細孔直径が20〜100Åの範囲のメソ細孔であることの意味は、一つには平均細孔直径が20Åよりも小さい細孔では、排ガス中のリン化合物が細孔入口を閉塞させることで細孔内部に担持された窒素酸化物除去成分が窒素酸化物除去性能を十分に発揮しえないこと、逆に100Å以上の細孔では、細孔直径よりもリン化合物の分子直径が小さく、細孔内にリン化合物も侵入して、窒素酸化物除去成分を被毒する結果、窒素酸化物除去性能が十分発揮できない。
【0026】
平均細孔直径が20〜100Åの範囲のメソ細孔を構造的に維持し続けるためには、300℃以上の触媒使用温度でも構造的に変形しないことが必要である。
【0027】
そのために、前記担体にチタンの他にジルコニウムを含む酸化物が必要である。
【0028】
ここでは、リン化合物に限定しているが、砒素化合物についても同様に考えられている。
【0029】
メソ細孔を有する酸化チタン担体の耐熱性を具備させるために、チタンと同時にジルコニウムを含み、前記成分の含有量が対チタンモル濃度比で1/9から1/4であること本発明の効果を達せしめるに重要であった。
【0030】
次に、本発明の窒素酸化物除去方法について説明する。
【0031】
本発明の窒素酸化物除去方法は還元剤を用いる選択接触還元法と呼ばれるものである。還元剤にはアンモニアを用いる場合もある。
【0032】
還元剤としてアンモニア以外の化合物、例えば分解してアンモニアを発生する尿素などの物質あるいは炭化水素,一酸化炭素(CO)などを流通してもよい。
【0033】
本発明の対象とする窒素酸化物にはNO,N23,NO2,N24などが含まれうるが、これら化合物が共存する場合にそれらの反応を全て分離して分析することは不可能である。
【0034】
アンモニアを還元剤とした場合、200〜450℃程度の温度範囲において、以下の反応がおこり、N2とH2Oが生成する。
【0035】
3NO2+4NH3→7/2N2+6H2
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2
【0036】
すなわち数%程度の酸素ガス共存下で、アンモニアを用いて数100ppmのNOを触媒上で還元する方法である。
【0037】
次に、本発明に係る窒素酸化物除去装置について説明する。
【0038】
図1は、窒素酸化物浄化装置の構成を模式的に示す図である。窒素酸化物浄化装置は、NOxを含有する排ガス1が通過する煙道2と、煙道2中にアンモニア3を散布するノズル4と、触媒層5が充填された窒素酸化物浄化器6と、窒素酸化物が浄化されて無害になった排ガス7が導かれる煙道8とを備えている。窒素酸化物浄化器6内に、本発明に係る窒素酸化物除去触媒が充填されている。窒素酸化物除去触媒の形状は板状である。板状以外に、粒子やハニカム状を用いてもよい。
【0039】
まず、NOxを含有する排ガス1が煙道2に導かれる。煙道2にはアンモニア3を噴霧するノズル4が設置されており、アンモニアを含有する排ガスとなって窒素酸化物除去器6に導かれる。窒素酸化物除去器6には触媒層5が配置され、加熱された触媒層5上でNOxが還元されて無害なN2とH2Oが生成する。N2とH2Oは、排ガス7となり煙道8を通過して排出される。
【0040】
図2は、ボイラ排ガスの脱硝システムの構成を模式的に示す図である。ボイラ9の後段には、脱硝設備10と、電気集塵器13と、脱硫塔11とが配置されている。アンモニアを排ガス中に均一に噴霧できるように、煙道2にはノズル4が設置されている。ノズル4は、アンモニア製造設備15と接続している。
【0041】
ボイラ9からの燃焼排ガスは、煙道2においてノズル4から噴霧されたアンモニアを含みながら、所定温度に昇温された脱硝設備10に導かれる。脱硝設備10は、図1の窒素酸化物除去器6と略同様の構成を備えており、脱硝設備10において、排ガス中のNOxは還元されて無害なN2とH2Oになる。電気集塵器13は、排ガス中の粉塵を除去するために配置される。石炭焚きボイラの場合には、SOx濃度が高いため電気集塵器13の後段に、脱硫塔11が設置されてSOxを除去する。
【0042】
次に窒素酸化物除去触媒について説明する。
【0043】
チタンの原料としては、チタニアゾル,硫酸塩,塩化物,シュウ酸塩,ペルオキソクエン酸アンモニウム四水和塩、またはチタンテトライソプロポキシドのようなチタンを含む金属アルコキシドなどが使用される。水酸化チタンまたはチタニアを含むゾル液も使用できる。
【0044】
酸化チタンは、一般的にゾル−ゲル法といわれる手法でチタンを含む金属アルコキシドなどを加水分解して得られた。またすでに製造市販されている酸化チタン粉末を使用することも可能である。
【実施例1】
【0045】
「触媒の調製」
本発明では実施例触媒1,実施例触媒2および実施例触媒3を調製した。
【0046】
実施例触媒1,実施例触媒2および実施例触媒3の担体成分はチタン−ジルコニウム酸化物とした。チタンの原料はチタンテトライソプロポキシドを使用し、ジルコニウムの原料は四塩化ジルコニウムとした。
【0047】
「実施例触媒1の調製」
はじめにメソ細孔形成用の界面活性剤1gをn−プロパノ−ル10gに溶解したのち、チタンテトライソプロポキシドを2.274gを溶解した。さらに塩酸を0.986g溶解した後に四塩化ジルコニウムを0.466g溶解して、溶液全体を45℃で乾燥した。
【0048】
乾燥して得られた固形物を大気中で400℃で2時間焼成してチタン−ジルコニウム酸化物粉末を得た。この調製条件によるチタンとジルコニウムのモル濃度比は8:2である。
【0049】
該チタン−ジルコニウム酸化物粉末を200℃で乾燥した後、窒素雰囲気中であらかじめ調製したバナジウムテトラヒドロフラン溶液を該チタン−ジルコニウム酸化物粉末にTMP法で接触させた。
【0050】
「実施例触媒2の調製」
メソ細孔形成用の界面活性剤1gをn−プロパノール10gに溶解したのち、チタンテトライソプロポキシドを2.558gを溶解した。さらに塩酸を0.986g溶解した後に四塩化ジルコニウムを0.233g溶解して、溶液全体を45℃で乾燥した。
【0051】
乾燥して得られた固形物を大気中で400℃で2時間焼成してチタン−ジルコニウム酸化物粉末を得た。この調製条件によるチタンとジルコニウムのモル濃度比は9:1である。
【0052】
該チタン−ジルコニウム酸化物粉末を200℃で乾燥した後、窒素雰囲気中であらかじめ調製したバナジウムテトラヒドロフラン溶液を該チタン−ジルコニウム酸化物粉末にTMP法で接触させた。
【0053】
「実施例触媒3の調製」
メソ細孔形成用の界面活性剤1gをn−プロパノール10gに溶解したのち、チタンテトライソプロポキシドを2.700gを溶解した。さらに塩酸を0.986g溶解した後に四塩化ジルコニウムを0.1165g溶解して、溶液全体を45℃で乾燥した。
【0054】
乾燥して得られた固形物を大気中で400℃で2時間焼成してチタン−ジルコニウム酸化物粉末を得た。この調製条件によるチタンとジルコニウムのモル濃度比は9.5:0.5である。
【0055】
該チタン−ジルコニウム酸化物粉末を200℃で乾燥した後、窒素雰囲気中であらかじめ調製したバナジウムテトラヒドロフラン溶液を該チタン−ジルコニウム酸化物粉末にTMP法で接触させた。
【0056】
TMP法に使用したバナジウムテトラヒドロフラン溶液は窒素雰囲気中でバナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシドをテトラヒドロフランに溶解して調製した。バナジウムの溶解量は、チタン−ジルコニウム酸化物に対する重量比で95:5になるようにした。
【0057】
バナジウム担持後のチタン−ジルコニウム酸化物粉末は、溶媒を完全に揮発した後に大気中で400℃で2時間焼成し、実施例触媒1,実施例触媒2および実施例触媒3を得た。
【0058】
「比較例1の調製」
比較例1は酸化ジルコニウムを含有しない酸化チタンである。
【0059】
メソ細孔形成用の界面活性剤1gをn−プロパノ−ル10gに溶解したのち、チタンテトライソプロポキシドを2.842gを溶解した。さらに塩酸を0.986g溶解して、十分に攪拌した後に溶液全体を45℃で乾燥した。
【0060】
乾燥して得られた固形物を大気中で400℃で2時間焼成してチタン酸化物粉末を得た。
【0061】
該チタン酸化物粉末を200℃で乾燥した後、窒素雰囲気中であらかじめ調製したバナジウムテトラヒドロフラン溶液を該チタン酸化物粉末にTMP法で接触させた。
【0062】
TMP法に使用したバナジウムテトラヒドロフラン溶液は窒素雰囲気中でバナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシドをテトラヒドロフランに溶解して調製した。バナジウムの溶解量は、チタン酸化物に対する重量比で95:5になるようにした。
【0063】
バナジウム担持後のチタン酸化物粉末は、溶媒を完全に揮発した後に大気中で400℃で2時間焼成し、比較例1を得た。
【0064】
「窒素酸化物除去率測定法」
窒素酸化物除去性能の測定法は以下のとおりである。
【0065】
調製した触媒粉末はプレス成形後に粉砕し、これを10〜20mesh(1.7mm〜870μm)に分級し粒状触媒とした。使用前の粒状触媒の窒素酸化物浄化性能について、常圧流通式反応装置を用いて、以下の条件で測定した。
【0066】
[ガス組成]NO:200ppm,NH3:240ppm,CO2:12%,O2:3%,
2O:12%,N2:バランス
[空間速度(SV)]120,000h-1
[反応温度]350℃
【0067】
初期NOx除去率ηoは、下記の(1)式により算出した。
【0068】
ηo(%)=(入口NOx濃度−出口NOx濃度)÷入口NOx濃度×100 …(1)
【0069】
初期NOx除去率ηoのときの速度定数koは、下記の(2)式の関係がある。
【0070】
ko∝ln{1/(1−ηo/100)} …(2)
【0071】
「リン被毒処理」
以下の方法で実際の排ガス中の被毒物質であるリン化合物を模擬した被毒後の触媒を調製した。
【0072】
触媒重量に対しP25換算で4wt%相当と同量のリンを含むリン酸水溶液を粒状触媒に含浸した。室温で30分放置した後、120℃で乾燥後、350℃で2時間焼成して、リン被毒処理後の触媒を得た。
【0073】
本法で調製した被毒後触媒を用いて、リン被毒後NOx除去率ηを測定した。
【0074】
リン被毒後触媒によるNOx除去率ηは、下記の(3)式により算出できる。
【0075】
η(%)=(入口NOx濃度−出口NOx濃度)÷入口NOx濃度×100 …(3)
【0076】
ηのときの速度定数kは、下記の(4)式の関係がある。
【0077】
k∝ln{1/(1−η/100)} …(4)
【0078】
劣化率k/k0を(5)式からもとめて耐毒性能を判定した。
【0079】
k/k0=ln{1/(1−η/100)}/ln{1/(1−ηo/100)}…(5)
【0080】
k/k0は、k0を初期(リン被毒処理前)の触媒の速度定数、kをリン被毒処理後の触媒の速度定数としたときの速度定数比である。
【0081】
従って(6)式に示すように、k/k0=1の場合は触媒の劣化がなく、k/k0の値が小さいほど劣化の程度が大きいことを意味する。
【0082】
劣化率=1−(k/k0) …(6)
【0083】
本発明の実施例触媒1〜3の、BET法による比表面積,全細孔容積,初期NOx除去率,劣化率の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から明らかなように、本実施例は劣化率が0〜0.1と触媒の耐劣化特性が高い。組成に関する傾向としては、Ti:Zr組成比が大きいほど初期NOx除去率,劣化率ともに高くなる傾向がある。
【実施例2】
【0086】
実施例触媒1,実施例触媒2,実施例触媒3および比較例1の各担体の物性値を表2に示す。表2の値は焼成温度400℃での結果である。
【0087】
【表2】

【0088】
表2から明らかなように、本実施例によれば20〜100Åの範囲の細孔が全細孔容積に占める容積率はいずれも50%を超えており、かつ平均細孔直径が20〜100Åである。比較例1は純TiO2であるため、触媒担体としての性能は最も高いが、平均細孔径が大きく、かつ20〜100Å細孔容積率が37%と低いために劣化率が高い。
【符号の説明】
【0089】
1 NOxを含有する排ガス
2,8 煙道
3 アンモニア
4 ノズル
5 触媒層
6 窒素酸化物浄化器
7 排ガス
9 ボイラ
10 脱硝設備
11 脱硫塔
13 電気集塵器
14 煙突
15 アンモニア製造設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒であって、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、
前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする窒素酸化物除去触媒。
【請求項2】
前記担体が酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素として含まれるジルコニウムの対チタンモル濃度比が1/9〜1/4であることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物除去触媒。
【請求項3】
前記担体に担持される窒素酸化物除去成分が、バナジウム,タングステン,モリブデンのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の窒素酸化物除去触媒。
【請求項4】
前記窒素酸化物除去成分のバナジウムあるいはバナジウムとモリブデンの合計モル数が、前記担体である酸化チタンのチタン成分のモル数に対してモル比率で95:5〜90:10であることを特徴とする請求項3記載の窒素酸化物除去触媒。
【請求項5】
排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒を用いた窒素酸化物除去方法であって、前記窒素酸化物除去触媒は、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、
前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする窒素酸化物除去方法。
【請求項6】
排ガス中の窒素酸化物を除去する窒素酸化物除去触媒を備えた窒素酸化物除去装置であって、前記窒素酸化物除去触媒は、担体が直径20〜3000Åの細孔を測定するガス吸着法で計測した細孔の平均細孔直径が20〜100Åであり、かつ前記平均細孔直径20〜100Åの細孔の容積が、前記ガス吸着法で計測した細孔の全細孔容積に対して50%以上であり、
前記担体が、酸化チタンを主成分とし、担体中にチタン以外の成分元素としてジルコニウムを含むことを特徴とする窒素酸化物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201347(P2010−201347A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50071(P2009−50071)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】