説明

窓ガラスの追設工法

【課題】簡単に積層窓ガラスに改築できて、改築工費が安価で、時間も短くて済み、ゴミや騒音なども出ない窓ガラスの追設工法を提供する。
【解決手段】既設の枠部材2に窓ガラス4が既に設置されており、窓ガラス4の表面よりも突出している枠部材2の突出部分5に、窓ガラス4から隙間8をおいて追設する窓ガラス6を嵌めこむ工程と、枠部材2の突出部分5と追設窓ガラス6の周囲との間をシール部材7でシールする工程と、シール部材7に設けられたガス注入管9から機能性ガス12を注入すると共に、シール部材7に設けられた空気排出管10から、注入する機能性ガス12によって隙間8に存在する既存空気13を外部に追い出して、隙間8に機能性ガス12を充填する工程と、ガス注入管9と空気排出管10をシールする工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば店舗や住宅などの既設の窓に新たに窓ガラスを追設して積層の窓ガラス構造とする窓ガラスの追設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅を例にとった場合、暖房時には窓、外壁、換気、床、屋根などを通して屋内の熱が屋外へ逃げて行き、暖房効果が下がる。また、冷房時には反対に窓、外壁、換気、床、屋根などを通して屋外の熱が屋内に入って来て、冷房効果が下がる。特に日本の住宅は窓ガラスが多いため、暖房時に窓から逃げ出す熱量は全体の約50%、冷房時に窓から入って来る熱量は約70%だと言われており、窓を通しての熱の漏洩、侵入が問題となっている。
積層の窓ガラス構造に関しては、例えば下記のような特許文献を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平9−60434号公報
【特許文献2】 特開平11−21149号公報
【特許文献3】 特開2001−323742号公報
【特許文献4】 特開2003−201152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、店舗や住宅などでは、窓からの熱の漏洩ならびに侵入を抑制して暖房効果ならびに冷房効果を高めて、エネルギーロスを少なくして、地球の温暖化を防ぐために、今まで1枚であった窓ガラスを2枚以上の積層構造の窓ガラスに変更する傾向が高まっている。
【0005】
ところが、既存の窓ガラス、窓枠、ビートならびに窓枠を支持している壁の一部などを取り壊して、新たな積層ガラス構造を新設するためには、改築費が高く、工期も長くかかり、さらに窓の取り壊しによって廃棄物が出て、その処分が必要であるなどの諸問題が生じる。また、改築のために広い場所が必要であり、騒音が出たり、ゴミが発生することなどから、店舗の場合には営業に支障をきたし、また、住宅の場合には日常生活に支障をきたすなどの問題もある。
【0006】
さらに、前述の積層窓ガラスに関する特許文献には、積層窓ガラス自体の構造などについては各種提案されているが、後述する本発明のように、既設の窓ガラスを取り壊すことなく、そのまま利用して積層窓ガラスに改築するという技術的思想はない。
【0007】
本発明の目的は、前述した従来技術の欠点を解消し、簡単に積層窓ガラスに改築できて、改築工費が安価で、時間も短くて済み、ゴミや騒音なども出ない窓ガラスの追設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明は、既設の枠部材に窓ガラスが既に設置されており、その窓ガラスの表面よりも突出している前記既設枠部材の突出部分に、前記既設の窓ガラスから隙間をおいて追設する窓ガラスを嵌めこむ工程と、
前記既設枠部材の突出部分と前記追設窓ガラスの周囲との間をシール部材でシールする工程と、
前記シール部材に設けられたガス注入口から例えばアルゴンやクリプトンなどの不活性ガス、あるいは乾燥空気などの機能性ガスを注入すると共に、前記シール部材に設けられた空気排出口から、前記注入する機能性ガスによって前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に存在する既存空気を外部に追い出して、前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に前記機能性ガスを充填する工程と、
前記ガス注入口と空気排出口をシールする工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は前述のように構成されており、既設の窓ガラスを取り壊すことなく、そのまま利用して、簡単に積層窓ガラスに改築できる。そのため、改築工費が安価で、時間も短くて済み、ゴミや騒音なども出ない窓ガラスの追設工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例において、機能性ガス注入途中のガス注入管付近の状態を示している断面図である。
【図2】本発明の実施例において、隙間内での機能性ガスと空気の置換を示している一部断面図である。
【図3】本発明の実施例で用いるガス注入管の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例において、機能性ガス注入途中の空気排出管付近の状態を示している断面図である。
【図5】本発明の実施例において、機能性ガス注入終了後のガス注入管付近の状態を示している断面図である。
【図6】本発明の実施例において、機能性ガス注入終了後の空気排出管付近の状態を示している断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は前述のように、既設の窓ガラスを取り壊すことなく、そのまま利用して積層窓ガラスに改築する工法を採用している。
具体的には、
既設の枠部材に窓ガラスが既に設置されており、その窓ガラスの表面よりも突出している前記既設枠部材の突出部分に、前記既設の窓ガラスから隙間をおいて追設する窓ガラスを嵌めこむ第1の工程と、
前記既設枠部材の突出部分と前記追設窓ガラスの周囲との間をシール部材でシールする第2の工程と、
前記シール部材に設けられたガス注入口から機能性ガスを注入すると共に、前記シール部材に設けられた空気排出口から、前記注入する機能性ガスによって前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に存在する既存空気を外部に追い出して、前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に前記機能性ガスを充填する第3の工程と、
前記ガス注入口と空気排出口をシールする第4の工程とを備えている。
【0012】
前記機能性ガスとしては、空気よりも熱伝導率の低く、かつ空気よりも密度の高い、例えばアルゴン(熱伝導率:1.63×10−2W・m−1・K−1、密度:1.784g/l)やクリプトン(熱伝導率:0.87×10−2W・m−1・K−1、密度:3.708g/l)などの不活性ガス、あるいは乾燥空気などが使用される。
【0013】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。図1は機能性ガス注入途中のガス注入管付近の状態を示している断面図、図2は隙間内での機能性ガスと空気の置換を示している一部断面図、図3は実施例で用いるガス注入管の拡大断面図、図4は機能性ガス注入途中の空気排出管付近の状態を示している断面図、図5は機能性ガス注入終了後のガス注入管付近の状態を示している断面図、図6は機能性ガス注入終了後の空気排出管付近の状態を示している断面図である。
【0014】
図1に示すように、店舗や住宅などの壁1の所定の位置にはアルミニウム等からなる窓枠2が設置され、その窓枠2の内側に合成ゴムなどの弾性材料からなるビート3を介して1枚の窓ガラス4が設置されている。この窓枠2とビート3と窓ガラス4からなる窓は、予め設置されている既設の窓である。
【0015】
通常、この既設の窓には、窓枠2に前記既設窓ガラス4の表面よりも屋内あるいは屋外側に突出した突出部5が形成されているため、この突出部5を利用して2枚目の窓ガラス6を追設する。
【0016】
すなわち、前記突出部5で囲まれる内側部分に、合成ゴムなどの弾性材料からなるビート7を介して1枚の窓ガラス6を設置する。その際に前記既設窓ガラス4に対して例えば2〜3mm程度の隙間8をおいて追設窓ガラス6を嵌め込む。図1に示すように、前記突出部5の内周部ならびに既設窓ガラス4のビート7と対向する部分は、ビート7の支持部として機能する。
【0017】
また図2に示すように、枠状をしたビート7の上部の一方の端部には金属製の微細なパイプからなるガス注入管9が埋設され、ビート7の上部で前記ガス注入管9とは反対側の位置には金属製の微細なパイプからなる空気排出管10が埋設されている。
【0018】
前記ガス注入管9の一方の開口はビート7の外周面よりも外側に露出しており、他方の開口は前記隙間8に臨んでおり、その他方の開口には図3に示すように弾性変形可能な弁体11が付設されている。また、空気排出管10の一方の開口は前記隙間8に臨んでおり、他方の開口はビート7の外周面よりも外側に露出している。
【0019】
図1ならびに図4に示すように、ガス注入管9ならびに空気排出管10の所は除いて(開口部を形成して)、窓枠2の突出部5の外面から支持板15を当接固定して、ビート7を固定する。また、前記ビート7の一部は、既設窓ガラス4と追設窓ガラス6の間の隙間8を保持するスペーサとしても機能する。
【0020】
前記突出部5の内側部分に追設窓ガラス6を嵌め込み、追設窓ガラス6の外周部をビート7で気密にシールすると、前記ガス注入管9の一方の開口から例えばアルゴンやクリプトン等からなる機能性ガス12を前記隙間8に注入する。その隙間8には空気13が予め存在しているが、前述のアルゴンやクリプトン等は空気13よりも密度(比重)が高いため、図2に示すように、前記隙間8に機能性ガス12を徐々に注入すると、その密度(比重)差により隙間8内の空気13は押し出される形で、前記空気排出管10から自然に排出される。図1は機能性ガス注入途中のガス注入管9付近の状態を示している断面図、図4は機能性ガス注入途中の空気排出管10付近の状態を示している断面図である。
【0021】
既設窓ガラス4と追設窓ガラス6の間に形成された隙間8の容積は予め算出できるから、その容積よりも多い量の機能性ガス12を注入すれば、隙間8内は空気13から機能性ガス12に完全に置換することができる。そして隙間8内の機能性ガス12の圧力を利用して、図3に示すように弁体11をガス注入管9の開口端に押し付けて、自動的に塞ぐことができる。
【0022】
このようにして隙間8に十分量の機能性ガス12が充填されると、図5ならびに図6に示すようにガス注入管9ならびに空気排出管10の外側に向いて開口している側の開口部にシール剤14を注入し硬化して、ガス注入管9ならびに空気排出管10の開口部をシールする。
【0023】
本実施例では図1ならびに図4に示すように、支持板15のガス注入管9ならびに空気排出管10の開口部と対向する位置には、機能性ガス12の注入ならびに既存空気13の排出のために予め貫通穴16が形成されている。この貫通穴16は、ガス注入管9ならびに空気排出管10の開口部をシール剤14でシールする際にはシール剤溜めとして利用でき、確実なシールが行なわれる。
【0024】
本実施例ではシール剤14を注入して、ガス注入管9ならびに空気排出管10の開口部を気密にシールしたが、ガス注入管9ならびに空気排出管10の開口部を加熱溶融して、開口部を気密にシールすることもできる。この際、貫通穴16は、管開口部を塞いだ溶融部の収納に役立つ。
【0025】
本実施例で使用するアルゴンの熱伝導率は1.63×10−2W・m−1・K−1、クリプトンの熱伝導率は0.87×10−2W・m−1・K−1であるのに対して、空気の熱伝導率は2.41×10−2W・m−1・K−1と非常に高い。
従って、隙間8の既存空気13を追い出して隙間8にアルゴンやクリプトンなどの熱伝導率の低い機能性ガス12を充填することにより、窓を通しての熱の出入りを抑制して、断熱効果を高めることができる。
【0026】
アルゴンやクリプトンなどの熱伝導率の低いガスに替えて乾燥空気を機能性ガス12として充填すれば、結露の防止に役立つ。また、特殊遮熱フィルムを貼着した追設窓ガラス6を使用したり、前記隙間8に乾燥剤などを入れることもできる。
【0027】
窓枠2に形成されている突出部5の位置によって、追設窓ガラス6は既設窓ガラス4の屋内あるいは屋外側に設置することができる。また突出部5の状態によっては、追設窓ガラス6を中間にしてその両側に隙間8を介して既設窓ガラス4を設置した3重構造にすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1...壁
2...窓枠
3...ビート
4...既設窓ガラス
5...突出部
6...追設窓ガラス
7...ビート
8...隙間
9...ガス注入管
10...空気排出管
11...弁体
12...機能性ガス
13...空気
14...シール剤
15...支持板
15...貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の枠部材に窓ガラスが既に設置されており、その窓ガラスの表面よりも突出している前記既設枠部材の突出部分に、前記既設の窓ガラスから隙間をおいて追設する窓ガラスを嵌めこむ工程と、
前記既設枠部材の突出部分と前記追設窓ガラスの周囲との間をシール部材でシールする工程と、
前記シール部材に設けられたガス注入口から機能性ガスを注入すると共に、前記シール部材に設けられた空気排出口から、前記注入する機能性ガスによって前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に存在する既存空気を外部に追い出して、前記既設窓ガラスと前記追設窓ガラスの隙間に前記機能性ガスを充填する工程と、
前記ガス注入口と空気排出口をシールする工程と
を含むことを特徴とする窓ガラスの追設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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