説明

窓開口部画像表示装置、画像表示機能付き窓及び窓開口部画像投影システム

【課題】 建物の窓開口部に風景画像等を自然な形で表示し、居心地の良い空間を演出する。
【解決手段】建物の窓開口部1に設置したスクリーン6に風景画像14等をプロジェクタ9で投影する。投影しようとする画像を処理する画像処理部10を備え、画像処理部は、画像14中の水平線hの高さを調整する機能、カーテン8等の窓開口部への付設物の形状に相当する部分19a,19b,…,19xを投影対象の画像14から除く機能、画像14の輪郭部にグラデーション23a,23bを付加する機能、画像14に額縁25a,25b,…,25xを付加する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓開口部に風景画像等を自然な形で表示し、居心地の良い空間を演出できる窓開口部画像表示装置、画像表示機能付き窓及び窓開口部画像投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の窓から見える景色はいつも同じで代わり映えがしないし、特に都市部においては窓の外に隣の建物の壁がすぐ近くまで迫っていたり、電線等の見たくないものがたくさん見えたりして、窓からの景色を楽しめることは少ない。
そこで窓にスクリーンを設置し、当該スクリーンにきれいな風景の画像等をプロジェクタで投影することが考えられる。しかしその際、画像の水平線の位置が不自然な位置にあったり、カーテンやサッシの召し合せ框等に投影した画像の一部が映り込んだりすると、室内からその画像を見る人は強い違和感を覚え、臨場感が得ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、建物の窓開口部に風景画像等を自然な形で表示し、居心地の良い空間を演出できる窓開口部画像表示装置、画像表示機能付き窓及び窓開口部画像投影システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による窓開口部画像表示装置は、建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮めて表示させることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による窓開口部画像表示装置は、請求項1記載の発明の構成に加え、基準線は水平な基準線であり、画像中の水平線の高さを上下に調節自在としたことを特徴とする。ここで水平線とは、画像中に表れるほぼ水平な線、例えば空と地面との境界線や空と海との境界線のことをいう。
【0006】
請求項3記載の発明による窓開口部画像表示装置は、請求項2記載の発明の構成に加え、画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明による窓開口部画像表示装置は、建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、スクリーンよりも前方に位置する窓開口部への付設物の形状に相当する部分を除いて表示させることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明による窓開口部画像表示装置は、建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加して表示させることを特徴とする。
【0009】
請求項6記載の発明による窓開口部画像表示装置は、建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、複数の額縁画像のうちから選択した一の額縁画像に組み込んで表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項7記載の発明による画像表示機能付き窓は、建物の窓開口部に設けたサッシと、請求項1〜6の何れかに記載の窓開口部画像表示装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項8記載の発明による窓開口部画像投影システムは、建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、投影対象の画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮める処理を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項9記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項8記載の発明の構成に加え、画像処理部は、投影対象の画像中の水平な任意の基準線に対して一方側の領域を上下方向に伸ばし、他方側の領域を上下方向に縮める処理を行うことで、投影画像中の水平線の高さを上下に調整することを特徴とする。
【0013】
請求項10記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項9記載の発明の構成に加え、投影画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することを特徴とする。
【0014】
請求項11記載の発明による窓開口部画像投影システムは、建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、窓開口部に付設してある付設物の形状に相当する部分を投影対象の画像から除く処理を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項12記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項11記載の発明の構成に加え、画像処理部は、付設物の形状パターンが予め記憶してあると共に、その形状パターンを実際の付設物の形状に合わせて修正する機能を有することを特徴とする。
【0016】
請求項13記載の発明による窓開口部画像投影システムは、建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、投影対象の画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し、縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加する処理を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項14記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項13記載の発明の構成に加え、グラデーションの幅を調整自在としたことを特徴とする。
【0018】
請求項15記載の発明による窓開口部画像投影システムは、建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、複数の額縁画像を記憶すると共に、選択した一の額縁画像を投影対象の画像と合成する処理を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項16記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項8〜15の何れかに記載の画像処理部と、画像処理部により処理した画像を投影するプロジェクタと、建物の窓開口部に設置したスクリーンとを備えることを特徴とする。
【0020】
請求項17記載の発明による窓開口部画像投影システムは、請求項8〜15の何れかに記載の画像処理部と、画像処理部により処理した画像を投影するプロジェクタと、建物の窓開口部に設置したスクリーンと、建物の窓開口部に設けたサッシとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明による窓開口部画像表示装置は、窓開口部に設けたスクリーンにプロジェクタで好きな画像を投影して表示させることで、画像が窓開口部からのぞく様々な風景のようになって居心地の良い空間を演出でき、しかも画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮めて画像を表示させることで、画像の大きさを変えずに画像の上下又は左右の領域で異なる比率で伸縮させ、任意の画像を窓開口部に適したものに調整できる。
【0022】
請求項2記載の発明による窓開口部画像表示装置は、画像中の水平線の高さを上下に調節することで、好きな画像を実際に窓開口部からのぞく風景に近づけて表示できる。
【0023】
請求項3記載の発明による窓開口部画像表示装置は、画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することで、室内に居る人の目線の高さに関わらず、水平線が不自然な高さに見えることによる違和感を排除できる。また、画像を次々と変化させたときに、水平線の高さが大きく変わらないことで、画像を見る人の疲労感を抑えられる。
【0024】
請求項4記載の発明による窓開口部画像表示装置は、窓開口部に設けたスクリーンにプロジェクタで好きな画像を投影して表示させることで、画像が窓開口部からのぞく様々な風景のようになって居心地の良い空間を演出でき、しかもスクリーンよりも前方に位置する窓開口部への付設物の形状に相当する部分を除いて画像を表示させることができるため、カーテン等の付設物に画像が映りこむことによる違和感を払拭できる。
【0025】
請求項5記載の発明による窓開口部画像表示装置は、窓開口部に設けたスクリーンにプロジェクタで好きな画像を投影して表示させることで、画像が窓開口部からのぞく様々な風景のようになって居心地の良い空間を演出でき、しかも画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加して画像を表示させることで、特に室内の明かりを落として窓開口部に明るい画像を表示させたときに、窓開口部と画像の連続感が増し、画像を見る人の違和感を抑えられる。
【0026】
請求項6記載の発明による窓開口部画像表示装置は、窓開口部に設けたスクリーンにプロジェクタで好きな画像を投影して表示させることで、画像が窓開口部からのぞく様々な風景のようになって居心地の良い空間を演出でき、しかも複数の額縁画像のうちから選択した一の額縁画像に組み込んで画像を表示させることで、好きな画像を絵画のように見せることができる。
【0027】
請求項7記載の発明による画像表示機能付き窓は、サッシを設けた窓開口部に好きな画像を自然な形で表示させられ、画像を見る人が感じる違和感を抑えることができるため、画像が窓開口部からのぞく様々な風景のようになって居心地の良い空間を演出できる。
【0028】
請求項8記載の発明による窓開口部画像投影システムは、画像処理部が、投影対象の画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮める処理を行うことで、投影対象の画像の大きさを変えずに画像の上下又は左右の領域で異なる比率で伸縮させ、任意の画像を窓開口部に投影される画像に適したものに調整できる。
【0029】
請求項9記載の発明による窓開口部画像投影システムは、投影画像中の水平線の高さを上下に調整することで、好きな画像を実際に窓開口部からのぞく風景に近づけて投影できる。
【0030】
請求項10記載の発明による窓開口部画像投影システムは、投影画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することで、室内に居る人の目線の高さに関わらず、水平線が不自然な高さに見えることによる違和感を排除できる。また、画像を次々と変化させたときに、水平線の高さが大きく変わらないことで、画像を見る人の疲労感を抑えられる。
【0031】
請求項11記載の発明による窓開口部画像投影システムは、画像処理部が窓開口部に付設してある付設物の形状に相当する部分を投影対象の画像から除く処理を行うことで、カーテンやサッシの召し合せ框等に画像が映りこまないため、窓開口部に投影される画像を実際の風景のように見せる効果がある。
【0032】
請求項12記載の発明による窓開口部画像投影システムは、画像処理部に付設物の形状パターンが予め記憶してあり、その形状パターンを実際の付設物の形状に合わせて修正する機能を有しているので、簡易に投影画像から実際の付設物の形状に相当する部分を排除できる。
【0033】
請求項13記載の発明による窓開口部画像投影システムは、画像処理部が投影対象の画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し、縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加する処理を行うことで、特に室内の明かりを落として窓開口部に明るい画像を投影したときに、窓開口部と画像の連続感が増し、窓開口部に投影される画像を見る人の違和感を抑えられる。
【0034】
請求項14記載の発明による窓開口部画像投影システムは、グラデーションの幅を変化させることにより、室内の明るさや画像の明るさ等に応じて画像毎に最適なグラデーションを付加でき、画像を見る人が感じる違和感をより確実に抑えられる。
【0035】
請求項15記載の発明による窓開口部画像投影システムは、画像処理部が複数の額縁画像を記憶すると共に、選択した一の額縁画像を投影対象の画像と合成する処理を行うことで、開口部に投影される画像に好きな額縁を簡単に付加できる。
【0036】
請求項16記載の発明の窓開口部画像投影システムによれば、窓開口部に好きな画像を投影でき、しかも投影画像を見る人が感じる違和感を極力抑えることができるため、画像を窓開口部よりのぞく風景のように見せられ、変化に富む居心地の良い空間を演出できる。
【0037】
請求項17記載の発明の窓開口部画像投影システムによれば、サッシを設けた窓開口部に好きな画像を投影でき、しかも投影画像を見る人が感じる違和感を極力抑えることができるため、画像を窓開口部よりのぞく風景のように見せられ、変化に富む居心地の良い空間を演出できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る窓開口部画像投影システムの全体構成を示す図である。
【図2】窓開口部の縦断面図である。
【図3】窓開口部の横断面図である。
【図4】本システムのための画像処理ソフトの初期メニュー画面を示す図である。
【図5−1】水平線補正処理の手順を示す説明図である。
【図5−2】水平線補正処理の手順(図5−1の続き)を示す説明図である。
【図6】水平線補正処理のフローチャートである。
【図7】水平線を上に移動させる場合の処理方法の他の例を示す説明図である。
【図8】カーテン等排除処理の手順を示す説明図である。
【図9】カーテン等排除処理のフローチャートである。
【図10】グラーデーション付加処理の手順を示す説明図である。
【図11】グラデーション付加処理のフローチャートである。
【図12】額縁付加処理の手順を示す説明図である。
【図13】額縁付加処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の窓開口部画像投影システム30の全体構成を示している。住宅の窓開口部1には、窓枠2と外障子3と内障子4とからなるサッシ5が設置してあり、窓開口部1の外障子3と内障子4の室内側にはロールスクリーン6が設けてある。ロールスクリーン6は、図3に示すように、召し合わせ框7の左右で分割して設けてある。また、窓開口部1の室内側にはカーテン8が設置してある。図1に示すように、室内にはロールスクリーン6に画像を投影するプロジェクタ9が設置され、プロジェクタ9はパソコン10に接続されている。パソコン10には、窓開口部1のロールスクリーン6に投影する画像の処理を行う専用のソフトウエアがインストールされており、当該パソコン10が画像処理部として機能し、処理した画像データをプロジェクタ9に出力する。なお、窓開口部1に設置したロールスクリーン6が窓開口部画像表示装置31に相当し、サッシ5及びロールスクリーン6とで画像表示機能付き窓32を構成している。
【0040】
図4は、前記ソフトウエアを立ち上げたときにパソコン10のモニタ画面11に表示される初期メニュー画面を示している。本ソフトウエアは、基本的な機能として、デジタルカメラで撮影したり、インターネットからダウンロードするなどしてパソコンに取り込んだ多数の画像(動画を含む)のうちから、ユーザーが投影したい画像を適宜選択し、トリミングや拡大・縮小処理により選択された画像を窓開口部1に設置したロールスクリーン6にぴったり収まる所定のサイズに調整し、調整した画像データをプロジェクタ9に出力する。そうしてプロジェクタ9からロールスクリーン6に綺麗な風景画像等を投影することで、その画像が窓からのぞく風景のようになり、建物の立地や日当たり等の条件にかかわらず常に綺麗な景色を楽しむことができ、居心地の良い空間を演出できる。また静止画像に限らず、映画を投影したり、ゲームの画面を投影したりすることもできる。
画像の選択は、図4に示す初期メニュー画面中の「画像を選択する」ボタン12をマウス等でクリックすることで行うことができる。図4中の符号13は、マウス等の操作に連動してモニタ画面11中を移動するポインタを示す。
【0041】
窓開口部1のロールスクリーン6に画像を表示したときに、画像中の水平線が不自然な高さにあると、室内に居る人がその画像を見た時に違和感を覚える。また、画像を次々と変化させたときに画像中の水平線の高さが大きく変わると、その画像を見る人は首などが疲れる。これを防ぐために前記ソフトウエアは、付加的な機能として、画像中の水平線の高さを上下に調節する機能を有している。
図5−1,図5−2は、画像中の水平線h(図示の例では地平線)を上に移動させる場合の処理の手順を示しており、図6はこのときのパソコンの処理内容を示すフローチャートである。ユーザーが投影したい画像を選択した後、図4の初期メニュー画面中の「水平線を補正する」ボタン17をクリックすると、パソコンのモニタ画面11には図5−1(a)に示すように、選択した画像14が表示されると共に、室内に居る人が立った状態での目線高さのラインA(図1参照)と、室内に居る人が座った状態での目線高さのラインBと、後述する画像の伸縮処理の基準となる水平な基準線Hとが表示される(S1)。次に、図5−1(b)に示すように、ユーザーは基準線Hをポインタ13で選択して上下に移動させ、基準線Hの高さを画像中の水平線hの高さに合わせる(S2)。次に、図5−1(c)に示すように、ユーザーはモニタ画面11中の「水平線を上に移動」ボタン15をクリックする(S3)。するとパソコン10は、図5−2(d)に示すように、画像14の基準腺Hよりも上の領域14aを上下方向に所定の倍率で縮め、画像14の基準線Hよりも下の領域14bを上下方向に所定の倍率で伸ばす処理を行う(S4)。このように、基準線Hよりも上の領域14aが上下方向に縮み、基準線Hよりも下の領域14bが上下方向に伸びることで、図5−2(e)に示すように、画像中の水平線hが上に移動する(S5)。このとき、画像14のサイズは変更されない。この基準線Hを基準とする伸縮処理は、水平線hの高さが所望の高さになるまで、複数回に分けて少しずつ繰り返し行われる。このように水平線hの高さを調整した画像14のデータをプロジェクタ9に出力し、窓開口部1のロールスクリーン6には水平線hが補正された状態で画像14が表示される。
なお、上記の基準線Hを基準とする伸縮処理は、領域14a,14bの伸縮する倍率をユーザーが指定して行うようにしたり、最初に水平線hをどこまで移動させたいかを指定し、それに合うように領域14a,14bを伸縮させることもできる。
【0042】
水平線hを下に移動させる場合には、図5−1(c)の段階でユーザーが「水平線を下に移動」ボタン16をクリックし(S6)、するとパソコン10は、画像14の基準腺Hよりも上の領域14aを上下方向に所定の倍率で伸ばし、画像14の基準線Hよりも下の領域14bを所定の倍率で上下方向に縮める処理を行い(S7)、その結果、画像14のサイズが変更されることなく画像14中の水平線hが下に移動する。
【0043】
画像中の水平線hを上に移動させるにあたり、図7(a)に示すように、室内に居る人の座った状態での目線高さのラインBを基準とし、同ラインBよりも上の領域14cを上下方向に所定の倍率で縮め、同ラインBよりも下の領域14dを上下方向に所定の倍率で伸ばしても、図7(b)に示すように、画像中の水平線hを上に移動させることができる。
また、水平線hを下に移動させる場合に、室内に居る人が立った状態の目線高さのラインAを基準とし、同ラインAよりも上の領域を上下方向に所定の倍率で伸ばし、同ラインAよりも下の領域を上下方向に所定の倍率で縮めてもよい。
【0044】
以上に述べたように、画像14中の水平線hの高さを上下に調節することで、水平線hが不自然な位置にあることから生ずる違和感を抑え、好きな画像14を実際に窓開口部1からのぞく風景に近づけて表示させることができる。特に、水平線hの高さを室内に居る人が立った状態での目線高さAと座った状態での目線高さBの間に設定することで、室内に居る人の目線の高さに関わらず、水平線hが不自然な高さに見えることによる違和感を排除できる。また、画像14を次々と変化させたときに、水平線hの高さが前記目線高さA〜Bの所定の範囲内に揃えてあることで、画像14が変わるたびに見上げたり見下ろしたりする必要がなく、画像14を見る人の疲労感を抑えられる。
【0045】
本システム30では、画像中の垂直線、例えば立ち木や塔のような建物を左右に移動させることもできる。その場合は、伸縮処理の基準線を垂直な基準線とし、その基準線を移動させたい立ち木等の付近に設定し、基準線よりも左右いずれか一方側の領域を左右方向に伸ばし、他方側の領域を左右方向に縮めればよい。そのように画像を処理することで、画像のサイズを変えずに画像中の立ち木等を左右に移動させ、画像を窓開口部からのぞく風景により適したものに調整できる。
【0046】
窓開口部1のロールスクリーン6に画像を投影したときに、カーテン8や召し合わせ框7に投影画像が映りこむと、投影画像であることがすぐに分り、一気に興ざめしかねない。そこで本システム30では、カーテン8等に投影画像が映りこまないようにする機能を備えている。
図8は、この処理の手順を示しており、図9はこのときのパソコン10の処理内容を示すフローチャートである。図4に示す初期メニュー画面で、「カーテン等の部分を除く」ボタン18をクリックすると、図8(a)に示すように、パソコンのモニタ画面11に予め設定したカーテンや召し合わせ框の形状19a,19b,19c,…,19xが表示される。ユーザーは、そのうちから所望のカーテン等を選択する(S11)。すると、図8(b)の左側の図に示すように、パソコンのモニタ画面11には窓開口部の画像20に選択したカーテン19aと召し合わせ框19xの画像が合成して表示され、そのカーテンと召し合わせ框の画像データがプロジェクタ9に出力され、図8(b)の右側の図に示すように、実際の窓開口部1に選択したカーテン19aと召し合わせ框19xの形状が投影される(S12)。次にユーザーは、投影されたカーテン19aの形状と実際のカーテン8の形状とを比較し、図8(c)の左側の図に示すように、モニタ画面11上でカーテン19aの形状を特定するポイント21a,21b,21c,…をポインタ13で選択して移動させ、図8(c)の右側の図に示すように、投影しているカーテン19aの形状が実際のカーテン8の形状と合致するように形状を修正する(S13)。召し合わせ框19xの形状についても同様に修正することができる。その後、図8(d)の左側の図に示すように、修正したカーテン等の画像19a,19xを投影しようとする風景等の画像14の前に重ねるように合成し、処理した画像データをプロジェクタ9に出力する(S14)。すると窓開口部1には、図8(d)の右側の図に示すように、風景等の画像14がカーテン8と召し合わせ框7の部分を除いた状態で投影され、カーテン8と召し合せ框7に画像14が映りこまない。
【0047】
以上に述べたように、カーテン8と召し合わせ框7の形状に相当する部分を投影対象の画像14から除く処理を行うことで、カーテン8と召し合せ框7に画像が映りこまないため、窓開口部1に投影される画像14を実際の風景のように見せる効果がある。しかも、パソコン10のソフトウエアに予めカーテン等の形状19a,19b,…,19xが複数設定してあり、ユーザーはそのうちから必要なものを適宜選択し、実際のカーテン等7,8の形状と比較しながら形状を変更できるため、簡易に投影画像14から実際のカーテン等7,8の形状に相当する部分を排除できる。
【0048】
上述の例においては、ロールスクリーン6を召し合せ框7の左右で分割して設置している関係で、召し合せ框7の形状に相当する部分19xを投影画像14から除いているが、召し合わせ框7を隠すように一枚のロールスクリーン6を設置した場合には、投影画像14に仮想的な召し合わせ框7の画像を合成して投影することで、投影画像14を窓からのぞく風景のように見せることができる。
【0049】
プロジェクタ9で画像14を投影すると、特に部屋の中が暗いときに暗闇に画像14が浮かび上がり、画像14の輪郭部付近に違和感が生じる。そこで本システム30では、投影する画像14の輪郭部にグラデーションを付すことで、そうした違和感を抑える機能を備えている。
図10は、この処理の手順を示しており、図11はこのときのパソコン10の処理内容を示すフローチャートである。図4に示す初期メニュー画面で、「グラデーションを付ける」ボタン22をクリックすると、図10(a)に示すように、パソコンのモニタ画面11に予め設定したグラデーション23a,23bのパターンが表示される。一方のグラデーション23aのパターンは、画像の下縁部のみに位置し、縁に向かうにつれて次第に暗くなるものであり、もう一方のグラデーション23bのパターンは、画像の下縁部及び左右の側縁部に位置し、縁に向かうにつれて次第に暗くなるものである。ユーザーは、そのうちから所望のグラデーションパターンを選択する(S21)。次にユーザーは、図10(b)に示すように、グラデーション23aの幅yをパソコンのキーボードより入力し、これによりグラデーション23aの幅が調整される(S22)。次にパソコン10は、図10(c)に示すように、調整したグラデーション23aを投影しようとする画像14に合成する処理を行い、処理した画像データをプロジェクタ9に出力する(S23)。すると窓開口部1のロールスクリーン6には、図10(d)に示すように、画像14の輪郭部(図示の例では下側のみ)に縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーション23aが付加されて画像14が表示される。
【0050】
以上に述べたように、投影画像14の輪郭部に、縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーション23a,23bを付加する処理を行うことで、窓開口部1と画像14の連続感が増し、窓開口部1に投影される画像14を見る人の違和感を抑えられる。この処理は、特に室内の明かりを落として窓開口部1に明るい画像14を投影したときに効果がある。
さらに、グラデーション23a,23bの幅を適宜調整できるため、部屋の明るさや画像14の明るさに合わせて、最適なグラデーション23a,23bを付すことが容易に行える。
【0051】
さらに本システム30は、画像を額縁に嵌め込んで投影する機能を有している。図12は、この処理の手順を示しており、図13はこのときのパソコン10の処理内容を示すフローチャートである。
まず準備段階として、図12(a)に示すように、ユーザーが投影しようとする画像14を選択し、パソコンのモニタ画面11に表示させる。次に、図12(b)に示すように、選択した画像14中の気に入った部位14aを指定してトリミングし、すると図12(c)に示す状態になる。次に、図4に示す初期メニュー画面で、「額縁を付ける」ボタン24をクリックすると、図12(d)に示すように、パソコンのモニタ画面11に予め設定した材質や色等が異なる複数の額縁の画像25a,25b,25c,…,25xが表示されるので、ユーザーはそのうちから気に入った額縁を一つ選択する(S31)。するとパソコン10が、図12(e)に示すように、先にトリミングした画像14aを選択した額縁の画像25aと合成する処理を行う(S32)。次に、額縁25aを含めた画像26の大きさ及び投影位置を調整する(S33)。その後、調整した画像26を窓開口部1にプロジェクタ9で投影する(S34)。
【0052】
上述のように、画像14の不要部分をトリミングにより排除し、額縁25aを映像で付加することにより、画像14を強調し立体感や奥行きを増すことができる。また、画像14を風景画のように見せることができる。
【0053】
以上に述べたように本システムによれば、窓開口部1に設置したロールスクリーン6に好きな画像14を投影させられ、さらに画像14中の水平線hの高さを調整したり、カーテン8や召し合せ框7に画像14が映りこむのを防止したり、画像14の輪郭部にグラデーション23a,23bを付加したりすることで、室内から画像14を見た時に感じる違和感を抑え、画像14を窓からのぞく風景のように見せることができる。これにより、代わり映えのしない窓からの景色が変化に富んだものになり、居心地の良い空間を演出できる。
【0054】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。投影する画像は、デジタルカメラで撮影したりインターネットでダウンロード等した種々の写真画像の他、動画やCGであってもよい。画像処理部は、汎用パソコンを利用してもよいが、プロジェクタに組み込んだり、専用の端末を利用するものでもよい。スクリーンは、障子の室外側に設置することもでき、シャッターや雨戸をスクリーンとして利用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 窓開口部
5 サッシ
6 ロールスクリーン(スクリーン)
7 召し合わせ框
8 カーテン
9 プロジェクタ
10 パソコン(画像処理部)
14 画像
19a,19b,…19x カーテン等付設物の形状に相当する部分
23a,23b グラデーション
25a,25b,…,25x 額縁画像
30 窓開口部画像投影システム
31 窓開口部画像表示装置
32 画像表示機能付き窓
h 水平線
H 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮めて表示させることを特徴とする窓開口部画像表示装置。
【請求項2】
基準線は水平な基準線であり、画像中の水平線の高さを上下に調節自在としたことを特徴とする請求項1記載の窓開口部画像表示装置。
【請求項3】
画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することを特徴とする請求項2記載の窓開口部画像表示装置。
【請求項4】
建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、スクリーンよりも前方に位置する窓開口部への付設物の形状に相当する部分を除いて表示させることを特徴とする窓開口部画像表示装置。
【請求項5】
建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加して表示させることを特徴とする窓開口部画像表示装置。
【請求項6】
建物の窓開口部にスクリーンを備え、スクリーンに画像を、複数の額縁画像のうちから選択した一の額縁画像に組み込んで表示させることを特徴とする窓開口部画像表示装置。
【請求項7】
建物の窓開口部に設けたサッシと、請求項1〜6の何れかに記載の窓開口部画像表示装置とを備える画像表示機能付き窓。
【請求項8】
建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、投影対象の画像中の水平又は垂直な任意の基準線に対して一方側の領域を基準線と直交する方向に伸ばし、他方側の領域を基準線と直交する方向に縮める処理を行うことを特徴とする窓開口部画像投影システム。
【請求項9】
画像処理部は、投影対象の画像中の水平な任意の基準線に対して一方側の領域を上下方向に伸ばし、他方側の領域を上下方向に縮める処理を行うことで、投影画像中の水平線の高さを上下に調整することを特徴とする請求項8記載の窓開口部画像投影システム。
【請求項10】
投影画像中の水平線の高さを、室内に居る人が床に座った状態の目線の高さと立った状態の目線の高さの間に位置するように調整することを特徴とする請求項9記載の窓開口部画像投影システム。
【請求項11】
建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、窓開口部に付設してある付設物の形状に相当する部分を投影対象の画像から除く処理を行うことを特徴とする窓開口部画像投影システム。
【請求項12】
画像処理部は、付設物の形状パターンが予め記憶してあると共に、その形状パターンを実際の付設物の形状に合わせて修正する機能を有することを特徴とする請求項11記載の窓開口部画像投影システム。
【請求項13】
建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、投影対象の画像の下縁部及び側縁部の少なくとも一方に対し、縁に向かうにつれて次第に暗くなるグラデーションを付加する処理を行うことを特徴とする窓開口部画像投影システム。
【請求項14】
グラデーションの幅を調整自在としたことを特徴とする請求項13記載の窓開口部画像投影システム。
【請求項15】
建物の窓開口部に投影する画像を処理する画像処理部を備え、画像処理部は、複数の額縁画像を記憶すると共に、選択した一の額縁画像を投影対象の画像と合成する処理を行うことを特徴とする窓開口部画像投影システム。
【請求項16】
請求項8〜15の何れかに記載の画像処理部と、画像処理部により処理した画像を投影するプロジェクタと、建物の窓開口部に設置したスクリーンとを備える窓開口部画像投影システム。
【請求項17】
請求項8〜15の何れかに記載の画像処理部と、画像処理部により処理した画像を投影するプロジェクタと、建物の窓開口部に設置したスクリーンと、建物の窓開口部に設けたサッシとを備える窓開口部画像投影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−17200(P2011−17200A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162944(P2009−162944)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【Fターム(参考)】