説明

窯業用スライド転写紙の製造方法とそれを用いて製造した窯業製品

【課題】 本発明は立体的できらきら輝く多色の意匠を持ち、複雑な形状の製品にも形成できる転写紙を得る事にある。
【解決手段】 スクリーン印刷法で転写紙に多色印刷し、同上にガラス質フリットを印刷し、その上にガラス粉末をかけ全体にカバーコートを印刷する。それを水転写でスライド転写する事により3次元的な形状の製品にも用いる事が出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水転写用紙を利用しスクリーン印刷で意匠を形成しその意匠上の必要箇所にガラス粉末を付着させ、立体感のあるきらきら輝く意匠もしくは立体感のある意匠をコップ等のガラス製品やマグカップ等の陶磁器製品に転写する転写紙の製造方法とその転写紙を用いて製造した窯業製品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば市販されている、立体感のある意匠いわゆるクリンカー(登録商標)加工によるグラス等に見られる製品も有るが全て単色である。
【0003】
従来はコップ等のガラス製品に直接印刷するものであり複雑な形状即ち3次曲面をした製品や複雑な意匠即ち多色印刷等には応用する事は非常に難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−48811
【特許文献2】特開平5−279610
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東洋佐々木ガラス株式会社カタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
市販されているクリンカー(登録商標)加工のグラスの形成方法では立体的な感触は保つ事が出来るが直接印刷の為単色である。多色印刷の場合は精度よく印刷が出来ない。又3次曲面をした複雑な形状をしているものにも印刷が出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一般的な水転写紙を使用しスクリーン印刷を用い多色刷りで絵柄を形成し、ガラス質フリットの上にガラス粉末を付加し、カバーコートをかけた後にガラス製品や陶磁器製品へ水スライド転写し、焼成する事により立体感のあるきらきら輝く意匠もしくは立体的な意匠を作る事が出来た。
【0008】
本発明は平面な転写紙にスクリーン印刷で絵柄を形成するため多色印刷でもズレはほとんど無く精度よく印刷できる。
【0009】
絵柄をスクリーン印刷で形成し、同じくスクリーン印刷で必要な部分にガラス質フリットを形成する。その後にガラス粉末を振り掛けるのであるが、やはり平面上であるために安価で且つ容易に形成できる。
【0010】
本発明は水転写紙で意匠を形成しているために3次曲面をした複雑な形状をしているガラス製品や陶磁器製品にも容易に貼り付ける(転写する)事が出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明を利用する事によりきらきらと輝く感触的にも立体的に、安価で精度よく、且つ多色な色彩を持つカラフルな意匠を複雑な形状をしたガラス製品や陶磁器製品にも形成することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】水転写紙にスクリーン印刷で意匠を形成した断面の概念図
【図2】窯業製品に転写後に焼成した断面の概念図
【図3】窯業製品に転写後に焼成した断面の概念図
【図4】図3の35の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1の水転写紙にスクリーン印刷で意匠を形成した断面の概念図である。
【0015】
ガラス製品に水転写する転写紙とそれを転写したガラス製品の製造方法を実施例1に基づいて説明する。
【0016】
一般的な水転写紙11(例えば丸繁紙工株式会社製SPA)に所定の意匠(図柄)12をスクリーン印刷で形成する。例えば意匠121に赤色、122に黄色、123に青色といったようにスクリーン製版及び絵具を変える事により当然の事ながら何色でも印刷は可能である。
【0017】
もちろん必要が無ければ単色でも問題は無い。
【0018】
意匠を形成するための絵具は例えばヘレウス株式会社製のH15886等があるが、コップ等のガラス製品に付着させる事の出来る絵具(ガラス用絵具)及びガラス質フリットと馴染みの良い絵の具であれば問題は無く特に指定する事は無い。
【0019】
室温で約30分以上乾燥をさせる。
【0020】
形成された意匠部の上にガラス質フリット13をスクリーン印刷で形成する。ガラス質フリットとしてはヘレウス株式会社製のH15000等がある。このガラス質フリットは次に述べるガラス粉末と軟化点が近似していれば特に指定する事は無い。
【0021】
ガラス質フリットをスクリーン印刷で印刷したあと、ガラス質フリットが乾燥する前にガラス粉末14を振りかける。
【0022】
ガラス粉末の作製方法として例えば厚さ0.2mmから2mmの透明なスライドガラスや板ガラスを乳鉢を用いて細かく砕く。もちろんある程度砕いてから、ボールミル等を用いて砕いてもかまわない。
【0023】
スクリーンメッシュやふるいを用いて平均粒径0.2mmから0.5mmに選別する。
【0024】
不要な部分に振り掛けられたガラス粉末は刷毛や圧縮空気などで取り除く。
【0025】
ガラス質フリットとガラス粉末の密着を良くする為にローラー等を掛けてもかまわない。
【0026】
スクリーン印刷を用い、カバーコート15(例えば互応化学工業株式会社製のLO-176-SY)を全面にベタ印刷をする。
【0027】
室温で約30分以上乾燥をさせる。
【0028】
ガラス粉末が振りかけられた水転写紙を水の中に入れ、意匠部を浮かせコップ等のガラス製品にスライド転写する。
【0029】
スライド転写されたコップを焼成(例えば摂氏590度プラスマイナス10度)する事により立体的な意匠を持ったコップが出来上がる。図2にその模式図を記載する。
【実施例2】
【0030】
一般的な水転写紙11の上にガラス用絵具(色付き)12をスクリーン印刷し、ガラス用絵具が乾燥する前にガラス粉末14を振りかけて、その後は実施例1と同様に処理をする。
【0031】
実施例2は実施例1のガラス質フリットを省略しても立体的な質感を得る事が出来た。
【実施例3】
【0032】
一般的な水転写紙11の上に無色透明なガラス質フリット13をスクリーン印刷し、ガラス質フリットが乾燥する前にガラス粉末14を振りかけて、その後は実施例1と同様に処理をする。
【0033】
実施例3はガラス用絵具12のかわりにガラス質フリットを使用することで、無色透明な立体的な質感を得る事が出来た。
【実施例4】
【0034】
陶磁器製品についてもガラス製品と同様に製造する事が出来る。
【0035】
意匠部の絵具として陶器用絵具(例えばイザワピグメンツ株式会社の73204)を使用し、ガラス質フリット(例えばイザワピグメンツ株式会社の1098CCF)及びガラス粉末も陶器用絵具と処理温度が近似している材料を使用すればよい。
【0036】
カバーコート剤としては例えば互応化学工業株式会社製のLO-210がある。
【0037】
段落記号0035に記載の材料を使用し、実施例1の方法で製造すれば陶磁器用の立体的な意匠を持った転写紙が出来上がる。
【0038】
その転写紙の意匠部を陶磁器に水転写し焼成(例えば摂氏780度プラスマイナス10度)する事により立体的な意匠を持った陶磁器製品が出来上がる。
【実施例5】
【0039】
実施例1から4は感触的に立体的な凹凸のある意匠を形成することであったが、使用するガラス粉末の一部を加工する事できらきら輝く意匠を形成することも出来る。
【0040】
きらきら輝くガラス粉末とはガラス質フリットに振り掛けるガラス粉末に金絵具35を施しておく。即ち厚さ0.2mmから2mmの透明なスライドガラスや板ガラスに金絵具を印刷、乾燥、焼成後に粉末にしたものを用いる事で達成できる。
【0041】
ここで使用する金絵具は焼成後に艶の出る物が望ましい。
【0042】
金絵具材料としては株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のGSG−5G等が有る。又きらきら輝く絵具としてはその他に白金、パラジウム、銀などが有る。
【0043】
前述のガラス粉末を使用することにより、きらきら輝く立体感のある意匠をガラス製品に形成することが出来る。又実施例4に於いて使用した材料に金絵具例えば株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のSG−11N等を使用すれば陶磁器製品にもきらきら輝く立体感のある意匠を形成できる。その模式図を図3及び図4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明はコップ等のガラス製品やマグカップ等の陶磁器製品の表面に立体的な絵付けを施すためのガラス用転写紙及び陶磁器用転写紙を製造する産業及びガラス製品や陶磁器製品に絵付けを行う産業で利用される。
【符号の説明】
【0045】
11水転写紙
12、121,122,123意匠部
13ガラス質フリット
14ガラス粉末
15カバーコート
21ガラス製品
22意匠部
23溶融されたガラス質フリット
24周りが溶けたガラス粉末
31ガラス製品
32意匠部
33溶融されたガラス質フリット
34ガラス粉末の一部に金が施され周りが溶けたガラス粉末
35金絵具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写紙を利用しスクリーン印刷で単色もしくは多色刷り印刷を行いガラス質フリットを有しその上にガラス粉末を付加してなる転写紙。
【請求項2】
請求項1の転写紙をガラス製品や陶磁器製品に転写してなる製品。
【請求項3】
転写紙、絵具、ガラス質フリット、ガラス粉末、カバーコートからなるガラス製品や陶磁器製品に転写する事を目的とする転写紙。
【請求項4】
請求項2の転写紙をガラス製品や陶磁器製品に転写してなる製品。
【請求項5】
転写紙、絵具、ガラス粉末、カバーコートからなるガラス製品や陶磁器製品に転写する事を目的とする転写紙。
【請求項6】
請求項5の転写紙をガラス製品や陶磁器製品に転写してなる製品。
【請求項7】
転写紙、ガラス質フリット、ガラス粉末、カバーコートからなるガラス製品や陶磁器製品に転写する事を目的とする転写紙。
【請求項8】
請求項6の転写紙をガラス製品や陶磁器製品に転写してなる製品。
【請求項9】
スクリーン印刷されたガラス質フリットの上に平均粒径0.2mmから0.5mmのガラス粉末を振りかけてなる転写紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−782(P2011−782A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145164(P2009−145164)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(307010683)株式会社青木転写 (4)
【Fターム(参考)】