説明

立体映像の映像データ構成方法、映像データ構成装置及び立体視システム

【課題】撮像手段からの1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の一組の映像を同一の時刻に撮像された映像に構成する。
【解決手段】右眼用及び左眼用の撮像器の各々について、個別の映像同期信号で制御可能とし、撮像装置の同期信号と、被写体映像信号と、プログレッシブ映像信号及び/又は表示信号とのフィールド位相の相関を演算するための前記相関演算制御手段と、右眼用及び左眼用の映像信号の位相を制御するフィールド位相制御とを有する映像信号構成手段により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画の立体映像を鮮明に表示させるための映像データの構成技術であり、特に、インターレース映像信号を両眼立体視のためのプログレッシブ映像信号に変換する方法、装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、3Dシアターシステムやプロジェクタに限らず、一般家庭においても立体映像観賞のニーズが高まりつつある。特に、ハイビジョンの普及とともに、産業界における高画質、表示装置の大画面化が進んでおり、一般消費者からは、スポーツや映画における動きのある映像を、2次元映像ではなく3次元映像として、より鮮明で、より臨場感ある立体映像で観賞できるような立体視システムの提供が強く望まれている。特に、そのようなニーズに応えるためには、よりリアルな動画像、即ち「早いスピードのある映像」においても解像度の高い、正確な被写体映像を提供する立体視システムが望まれる。
【0003】
立体視システムとしては、一般的に行われている方法の1つに、2次元映像撮像装置としてのテレビカメラを用いて被写体の映像を撮影し、この映像をモニター表示する平面映像表示装置(以下、表示装置とも称する)を用いて立体映像を実現するような、偏光メガネ方式がある。偏光メガネ方式で立体視を実現する両眼立体視システムでは、一般的には2台の撮像器を左右に所定の間隔だけ離した位置に配置して被写体の撮影を行い、各々の撮像器で順次送られる映像信号を所定の処理の後に、それぞれ左眼用映像信号及び右眼用映像信号として用いる。偏光メガネ方式では、平面映像表示装置の表示面の走査線(以下、フィールドとも称する)部分、即ち、走査線に相当する水平に配置された1連の画素の組毎に異なる偏光特性を有する透過型の光学フィルタが塗布又は貼付された表示装置を備える。そのような表示装置の映像は、それぞれ左眼用映像信号及び右眼用映像信号に対応する平面映像表示装置の走査線等の偏光に合わせて表示装置に表示される。左右に異なる偏光特性を有する偏光メガネにて、その映像を観察することにより、右眼と左眼に視差のある映像を立体映像として認識できる。
【0004】
両眼立体視システムにおいて、被写体を両眼視によって立体感を生じさせるためには、被写体における注視したポイントと他のポイントとの間で、両眼各々の視線をなす角度による両眼視差によって相対距離を認識できるように、撮像装置及び表示装置の相関のとれた構成とされている必要がある。両眼視差のある左眼用及び右眼用映像(以下、左右被写体映像とも称する)を交互に合成して平面映像表示装置の表示面に表示すると、通常、2重像に見えるはずの映像である。しかし、適正な両眼視差が与えられている限りは、偏光メガネを用いてその表示映像を観る者は、この2重像を脳の働きによって1つに融合し、2重像のズレ量から方向、又は奥行き感を認識できる。従って、人間の眼の間隔に相当する位置関係で2台の撮像器等により撮像した左右被写体映像で、対応する両眼立体視表示装置を用いれば、偏光メガネ等を介して忠実な立体視を得ることができる。また、意図的にそれら位置関係を操作することで、幅広い立体映像表現を行うこともできる。これに反して、適正な両眼視差が得られない場合には、脳の働きによっても1つに融合されず、立体視の破壊、即ち「立体感の喪失」を生じさせたり、又は「立体映像の鮮明さ」が失われることもある。これらの要因は、必ずしも撮像装置と表示装置の位置関係に限らず、両眼映像情報の時間的・空間的ずれからも生じうる。
【0005】
従って、2次元映像撮像装置に用いられる2台の撮像器によって撮像された映像は、飛び越し走査方式(以下、インターレース方式と称する)で撮像された映像信号が一般的であるため、左眼用映像信号と右眼用映像信号とが、同期して撮像された映像を両眼立体映像のために用いることが要求される。それらの信号が非同期で撮像され、非同期で表示装置に映像表示を行った場合には、適正な両眼視差を得ることができず、立体視の破壊、即ち、立体感の喪失を招く。左眼用映像信号と右眼用映像信号(以下、被写体映像信号と称する)にそれぞれ対応するように表示装置に映像表示を行うには、いずれかの手段により、撮像装置の撮像の同期を取ると共に、撮像装置の被写体映像信号と表示装置の表示と間で同期又は信号処理タイミング調整を図る必要がある。その撮像装置の撮像と表示装置の表示の信号処理タイミングを調整する方法として、同一の同期信号で動作する2台の撮像器等の撮像手段から得られた左右被写体映像信号を、一旦被写体映像信号の各フィールド毎に交互に選択して、映像信号を順次走査する方式(以下、プログレッシブ方式と称する)に適合する一連の信号として配列させる(以下、多重化と称する)。従来技術によれば、左右被写体映像信号が多重化された信号、即ち多重化映像信号を基準として、表示装置に左眼用又は右眼用に交互に切り替えて表示装置に左右被写体映像を表示する方法が実現されている(例えば、非特許文献1又は非特許文献2参照。)。この技法を用いれば、撮像から表示に至るまでの被写体映像信号について、タイミングジッタ又は各装置の微妙な同期信号のズレ等による悪影響を根本的に解決することができるため、立体視システムとして極めて有効な技法である。
【0006】
更に別の従来技術によれば、その撮像装置と表示装置の間の被写体映像信号をタイミング調整する方法には、同一の同期信号で動作する2台の撮像器等の撮像手段から得られた左右被写体映像信号を一旦、交互にフィールド毎の配列とした後の処理により、遅延させない映像信号の奇数フィールドと1フィールド分遅延させた映像信号の奇数フィールド(同一の映像)とを交互に切り替えることで、安定した立体視表示の実現を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
【非特許文献1】西田信夫監修、「プロジェクターの最新技術」、(株)シーエムシー出版、2005年6月30日、p211-216
【非特許文献2】川里久雄著、「液晶データプロジェクタを用いた立体映像シアターシステム」、東芝レビュー、55巻2月号、特集I業務用プロジェクタ、 2000年2月、p1-5
【特許文献1】特開平4−132489号公報(請求項1、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は、前述の従来技術を概略的に示した両眼立体視を実現する立体視システム例のブロック図を示す。図2の立体視システム例は、第1の撮像器51及び第2の撮像器52と、映像同期信号発生器14と、映像信号構成手段50と、映像信号制御回路57と、映像表示手段15とを備える。第1の撮像器51及び第2の撮像器52は、インターレース方式の撮像手段を備えた映像入力装置であり、両眼立体視を実現するのに適した所定の間隔で、被写体Aの映像(例えば、図示60)を撮像し、それぞれ右眼用映像信号IRと左眼用映像信号IL(以下、被写体映像信号とも称する)を出力する。映像同期信号発生器14は、第1の撮像器51及び第2の撮像器52の被写体映像信号(左眼用映像信号IL及び右眼用映像信号IR)の同期を取るために、基準信号CLK0を出力する。第1の撮像器51及び第2の撮像器52のそれぞれは、基準信号CLK0によって同期して、それぞれの関係において同時刻で撮像した被写体映像信号(左眼用映像信号IL及び右眼用映像信号IR)を同時刻で生成し、被写体映像信号を出力する。映像信号構成手段50は、基準信号CLK0によって同期して動作する映像信号制御回路57により、被写体映像信号から、後述で詳説する多重化映像信号ORLを生成及び出力するための手段である。従って、映像信号構成手段50も、映像信号制御回路57を介して、基準信号CLK0によって同期して動作している。尚、撮像器間の所定の間隔は、前述したように立体映像に適した配置であればよく、その配置自体は本発明の主題ではない。映像表示手段15は、プログレッシブ方式の表示装置であり、走査線毎に左眼用映像表示部及び右眼用映像表示部を備える。或いは、映像表示手段15は、プログレッシブ方式の表示装置であり、左眼用映像表示装置及び右眼用映像表示装置を各々個別に備えてもよい。
【0008】
映像信号構成手段50は、多重化手段54、偶数又は奇数のフィールド遅延手段55、或いは被写体映像信号(IR、IL)の信号切り替え手段としてのマルチプレクサ56を備えており、それら各々は映像信号制御回路57により制御される。映像信号構成手段50は、第1の撮像器51及び第2の撮像器52のそれぞれにより出力された各被写体映像信号(IR、IL)を、プログレッシブ方式に適合するように、マルチプレクサ56により、左眼用映像信号ILと右眼用映像信号IRを各フィールド毎に交互に切り替わる構成で多重化54を行い、その多重化された映像信号(多重化映像信号と称する)ORLを生成し、映像表示手段15に出力する。ここで、前述の特許文献1によれば、多重化映像信号ORLを用いて、個別の左眼用映像表示装置及び右眼用映像表示装置の各々に適合させるために、偶数又は奇数のフィールド遅延手段55をも備えている。フィールド遅延手段55の詳細な動作及び問題点は後述する。
【0009】
映像表示手段15は、多重化映像信号ORLに基づいて、表示用の映像信号(以下、映像表示信号とも称する)を生成する。また、映像表示手段15は、その映像表示信号に基づいた映像を、プログレッシブ方式の表示方法で、それぞれの偏光の異なる左眼用映像表示部及び右眼用映像表示部に走査線毎に切り替え表示させる。尚、多重化映像信号ORLと映像表示信号は、便宜上に区別しているにすぎず、映像信号構成手段50が、映像表示信号を備えてもよいことは言うまでもない。映像信号構成手段50により出力される多重化映像信号ORLをプログレッシブ方式で映像表示手段15に表示すれば、偏光メガネ59を用いずに認識される映像は、例えば図示61のような2重映像となっているが、映像表示手段15により左眼用及び右眼用の各表示部に分離表示された左眼用映像及び右眼用映像から、偏光メガネ59を用いて認識される映像Bは、例えば、図示62のような立体映像として復元される。
【0010】
図2に示す映像信号構成手段50では、第1の撮像器の右眼用映像信号IRと、第2の撮像器の左眼用映像信号ILとの間の同期ズレを解消し、また、多重化を行うことで他の起因(例えばタイミングジッタ等による同期ズレ)による立体視の破壊等を生じることなく、安定した立体映像を得ることができる。しかしながら、これら従来の技術では、右眼用の映像信号と左眼用の映像信号の撮影時刻から見た被写体映像は、基準信号CLK0によって同期した各々の撮像器からの被写体映像信号(IR、IL)から、多重化させた多重化映像信号ORLに変換した映像である。即ち、映像信号を基準としてインターレース−プログレッシブ変換した映像であるために、実際の撮像時刻を基準とした映像からすれば、右眼用及び左眼用とで互いに1フィールド分ずれた撮像時の映像信号から映像表示していることになる。
【0011】
また、前述の特許文献1に記載の従来技術に基づいて説明すれば、その従来技術は、右眼用及び左眼用の表示部を備えている都合上、多重化映像信号ORLから適宜にフィールド遅延手段55を用いて、右眼用及び左眼用の各々について1フィールド分遅延させた映像信号と遅延させない映像信号を構成させている。しかしながら、表示装置に左眼用及び右眼用の間で生じている1フィールド分の撮像時における右眼用及び左眼用映像の時間差を補償できていない。その結果、被写体が静止状態或いは被写体映像が比較的低速である場合には、立体視を実現する上で問題とはならないが、前述の「早いスピードのある映像」においては、左眼用及び右眼用の間で生じる1フィールド分の時間差は、「立体感の喪失」或いは「立体映像の鮮明さ」の観点から好ましくない。これらの問題については、更に詳しく後述する。
【0012】
図4は、従来技術による両眼立体視システムのフィールド時刻毎の立体表示映像を説明するタイミングブロック図である。図2及び図4を参照しながら、前述の問題について、フィールド時刻毎に説明する。
【0013】
図4(a)は、2台の撮像器(第1の撮像器51及び第2の撮像器52)で撮影した被写体映像が、映像信号構成手段50に、インターレース方式による奇数(又は偶数)のフィールド時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と順次に供給される様子を示している。第1の撮像器51及び第2の撮像器52は、基準信号CLK0により撮像同期で制御され、図2において、第1の撮像器51により生成される被写体映像信号からの映像を右眼映像(R)と、第2の撮像器52により生成される被写体映像信号からの映像を右眼映像(L)とする。「インターレース方式の左眼映像(L)」列(図示65a〜65c)と、「インターレース方式の右眼映像(R)」列(図示65d〜65f)における、各時刻ft_1〜ft_3の奇数(又は偶数)の各1フィールド分は、それぞれ「Lのフィールド1」及び「Rのフィールド1」(図示65a、65d)、「Lのフィールド2」及び「Rのフィールド2」(図示65b、65e)、「Lのフィールド3」及び「Rのフィールド3」(図示65c、65f)・・・として、それぞれ同一時刻(例えば、時刻ft_1後)に撮影された1フィールド分の映像信号である。被写体映像信号(便宜上、フィールド単位で示している)である「Lのフィールド」及び「Rのフィールド」(図示65a〜65f)の各々が、各時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と順次に、映像信号構成手段50に供給される。
【0014】
図4(b)は、2台の撮像器(第1の撮像器51及び第2の撮像器52)で撮影した被写体映像が、映像信号構成手段50へ供給され、インターレース方式による奇数(又は偶数)のフレーム時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と順次に供給された被写体映像信号を交互に切り替えて、両眼立体視用の多重化映像信号ORLを生成する様子を示す。従来技術の一般的な実施例では、インターレース方式で供給された被写体映像信号を、プログレッシブ方式で変換又は表示するために、各時刻毎(例えば、時刻ft_1後)に「左眼映像(L)」列(図示66a〜66c)と、「右眼映像(R)」列(図示66d〜66f)のいずれか一方を交互に選択する方法がとられている。図4(b)では、時刻ft_1後において、「Rのフィールド1」(図示66d)を廃棄して「Lのフィールド1」(図示66a)を選択し、時刻ft2後において、「Lのフィールド2」(図示66b)を廃棄して「Rのフィールド2」(図示66e)を選択している。時刻ft_3後において、「Rのフィールド3」(図示66f)を廃棄して「Lのフィールド3」(図示66c)を選択している。そのようなシーケンスで、各時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と繰り返し、それら選択された映像信号が、多重化映像信号として、映像表示手段15に出力される。従って、映像表示手段15に表示される映像表示信号68として、多重化映像信号から直接表示することから、映像表示手段15にて表示された映像では、同一時刻で撮影された被写体映像信号での立体視を実現することはできない。
【0015】
図4(c)は、前述の特許文献1に基づく従来例における動作の基本原理を説明する図である。インターレース方式による奇数(又は偶数)のフィールド時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と順次供給された被写体映像信号を交互に遅延及び切り替えて、両眼立体視用の映像信号を作り出す様子を示す。2台の撮像器(第1の撮像器51及び第2の撮像器52)で撮影した「インターレース方式による左右多重映像」(多重化映像信号である)の映像信号のうちいずれか1つ(例えば「Lのフィールド1」(図示67a))を1フィールド分だけ遅延させ、他方の映像信号(例えば「Rのフィールド2」(図示67b))とともに、それぞれ左眼用及び右眼用に映像信号を選択して多重化した映像信号を映像表示手段15に表示する。この従来技術では、図4(c)の「表示部における立体映像」の「左眼映像(L)」列(図示67e、67c)と、「右眼映像(R)」列(図示67b、67f)は、図示68に示すように、時刻ft_2で、「Lのフィールド1」及び「Rのフィールド2」(図示68e、68b)、時刻ft_3で、「Lのフィールド3」及び「Rのフィールド2」(図示68c、68f)と選択することになる。そのようなシーケンスで、各時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・と繰り返し、それら選択された映像信号が、映像表示手段15に出力される。従って、映像表示手段15に表示される映像表示信号68が、時刻ft_2で「Lのフィールド1」(図示68e)及び「Rのフィールド2」(図示68b)、時刻ft_3で「Lのフィールド3」(図示68c)及び「Rのフィールド2」(図示68f)、・・・と繰り返して表示させることになり、映像表示手段15にて表示された映像から、同一時刻で撮影された被写体映像での立体視を実現することはできない。
【0016】
以上のように、従来技術においては、被写体が静止状態或いは被写体映像が比較的低速である場合には、立体視を実現する上で問題とはならないが、前述の「早いスピードのある映像」においては、左眼用及び右眼用の間で生じる1フィールド分の時間差が問題となる。「早いスピードのある映像」とは、具体的には、撮像中の被写体に早いスピードで移動する物体がある場合、又は、撮像中の被写体に注視したポイントと他のポイント(例えば、高速移動する車両を注視した場合の背景・前景)などの相対速度の高い被写体映像を有する場合をいう。図3は、「早いスピードのある映像」について従来技術における立体視の問題点を観念的に示す。図3(a)は、撮像手段である第1の撮像器51と第2の撮像器52で撮像されるべき被写体映像図であり、図3(b)は、図2に示した従来技術において、瞬間的に、又は、連続的に人間の感じる違和感を観念的に表現した立体映像として、2次元的に表した図である。図3は、より明確にするために2次元的に表しているが、実際のその違和感は、3次元的又は、脳内での融合映像の違和感として感じられる性質のものであることは、当業者に明らかである。この問題は、立体視の破壊、即ち「立体感の喪失」を生じる要因となり、或いは、その違和感から生じる「立体映像の鮮明さ」を損なう要因となる。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためのものであり、「立体感の喪失」を生じることなく、或いは「立体映像の鮮明さ」を損なうことなく、あらゆる映像においても安定で解像度の高い映像を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る立体映像を実現する映像データの構成方法を有する立体視システムは、両眼視差を与えるための、被写体を撮像する少なくとも1つの撮像手段と、前記撮像手段により生成された右眼用及び左眼用の被写体映像信号からフィールド毎に選択してプログレッシブ方式で処理するための映像信号構成手段と、前記映像信号構成手段により生成された多重化映像信号に基づく映像表示信号又は映像記録信号により、表示又は記録する映像表示手段又は映像記録手段とを備えている。前記撮像手段は、インターレース方式で被写体を撮像する手段と、インターレース方式で左眼用及び右眼用の被写体映像信号のそれぞれを出力する映像出力手段とを有している。前記撮像手段又は前記被写体映像信号出力手段は、単一の映像同期信号に基づいて前記相関演算制御手段により生成された1つ以上の新たな映像同期信号によって制御されている。前記フィールド位相制御手段は、前記被写体映像信号の位相に対して左眼用又は右眼用のフィールドを位相制御する。前記相関演算制御手段は、右眼用及び左眼用のそれぞれの映像信号について、前記撮像手段からの被写体映像信号と、前記多重化映像信号と、前記映像表示信号又は前記映像記録信号との間で、フィールド位相の相関を演算し、前記フィールド位相制御手段を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像手段からの1フィールドごとに繰り返される右眼用及び左眼用の一組の映像を同一の時刻に撮像された映像に構成するために、両眼立体視のための右眼用及び左眼用映像を表示するようにした。これにより、被写体を撮像した撮像時刻に対し、撮像時間差の無い映像としての両眼立体視を実現できるため、より正確で、安定した解像度の高い映像を提供することができる。
【0020】
特に、撮像中の被写体に早いスピードで移動する物体がある場合、又は、撮像中の被写体に注視したポイントと他のポイント(例えば、高速移動する車両を注視した場合の背景・など)などの相対速度の高い被写体映像を有する場合(「早いスピードのある映像」)においても、「立体感の喪失」を生じることなく、「立体映像の鮮明さ」を維持して表示させることができ、より正確で、安定した解像度の高い映像を提供することができる。図3を参照して説明すれば、従来技術では図3(b)のような違和感を生じさせる立体映像に対し、本発明によれば、図3(a)のような違和感の無い立体映像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明により両眼立体視を実現するシステムの概略について説明する。
【0022】
図1は、本発明による両眼立体視システムの概略を示すブロック図である。この両眼立体視システムは、インターレース方式の撮像手段11と、撮像手段11で撮像された被写体映像信号 (IR、IL)から多重化映像信号(ORL又はORL’)を出力するための映像信号構成手段10と、映像表示手段15又は映像記録手段16と、映像同期信号発生器14とを備える。映像表示手段15は、多重化映像信号ORLに基づいた信号(映像表示信号とも称する)で立体表示させる手段であって、両眼立体視表示装置を含む。映像記録手段16は、多重化映像信号ORL’に基づいた信号(映像記録信号とも称する)で映像信号を記録する手段であって、記録装置を含む。
【0023】
撮像手段11は、被写体を撮像し、両眼視差を与えるための左眼用及び右眼用の被写体映像信号を生成及び出力する。尚、撮像手段11は、単一の撮像器から両眼視差を与えるための左眼用及び右眼用の被写体映像信号を生成させる構成でもよいし、左眼用及び右眼用の被写体映像信号を生成させる複数の撮像器であってもよい。撮像手段11は、新たな映像同期信号(CLK-R、CLK-L)によって、撮像時刻が制御され、又は、被写体映像信号(IR、IL)の位相が制御される。映像信号構成手段10は、プログレッシブ方式に信号処理する多重化手段81と、多重化映像信号(ORL又はORL’)を生成及び出力するためのフィールド位相制御手段80及び相関演算制御手段79とを備える。相関演算制御手段79は、映像同期信号発生器14からのCLK0に基づいて新たな映像同期信号(CLK-R、CLK-L)を生成し、更に、左眼用及び右眼用の被写体映像信号のフィールド位相を制御するためのフィールド位相制御手段80に制御信号を生成する。フィールド位相制御手段80は、左眼用及び右眼用の被写体映像信号のフィールド位相を制御するにあたり、多重化手段81の前の手段であっても、後の手段であっても良い。なぜなら、フィールド位相制御手段80は、撮像手段11で撮像された時刻を基準にして、映像表示手段15又は映像記録手段16に対して、同一時刻の撮影映像を表示又は記録するのに適した位相とさせる手段であるためである。
【0024】
図1のように構成された両眼立体視システムであれば、同一時刻で撮影された左眼用及び右眼用の被写体映像信号について、撮像手段11から表示手段15又は記録手段16までの間でのフィールド位相制御が可能となる。そのため、同一時刻で撮影されたインターレース方式の左右被写体映像を、撮像時における1フィールド分の位相差を生じることなく、表示手段15にて表示又は記録手段16にて映像信号として記録でき、所望の立体映像を得ることができる。尚、図1に示した両眼立体視システムの各手段の動作の詳細については、実施例として後述する。
【0025】
また、後述の実施例において、映像信号構成手段10a、10b、10c、10f及び10gは、代表的な例として区別しているにすぎず、映像信号構成手段10の一例を意味する。同様に、多重化手段81a、81b、81c、81f及び81gは、映像信号構成手段10の一例を意味する。同様に、相関演算制御手段79a、79b、79c、79f及び79gは、映像信号構成手段10の一例を意味する。同様に、フィールド位相制御手段80a、80b、80c、80f及び80gは、映像信号構成手段10の一例を意味する。
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0027】
(実施例1)
まず、本発明による両眼立体視システムの実施例1について説明する。図5は、本発明による両眼立体視システムの実施例のフィールド時刻毎の立体表示映像を説明するタイミングブロック図である。図1及び図5を参照しながら、図4と対比可能なように、特に従来技術で説明した問題を解決する方法について説明する。図5(a)は、図4との対比を容易とするために、図4(a)に示したものと同一の図である。図5(b)は、前述の特許文献1に基づく従来技術と対比するように、両眼立体視システムの動作を説明する図である。また、図5(b)にある、「左眼映像(L)」(図示27a〜27c)は、2台の撮像器(第1の撮像器51及び第2の撮像器52)で撮影した「インターレース方式の左眼映像(L)」列(図示65a〜65c)と同一である。「左右の多重映像」(図示27d〜27f)は、時刻ft_1、時刻ft_2、時刻ft_3、・・・に従って、「Rのフィールド1」(図示27d)、「Lのフィールド1」(図示27e)、「Rのフィールド3」(図示27f)、・・・と繰り返す多重化された被写体映像信号(多重化映像信号)である。時刻ft_1後の被写体映像信号(IR、IL)は、時刻ft_2で、映像信号「Lのフィールド2」(図示27b)を廃棄して、「Lのフィールド1」(図示27a)を1フィールド分遅延させて生成した多重化映像信号の「Lのフィールド1」(図示27e)と、「Rのフィールド1」(図示27d)を1フィールド分遅延させた「Rのフィールド1」(図示27g)とを生成させる。時刻ft_2で、映像表示手段15に表示する左眼用映像信号は、「Lのフィールド1」(図示27e)を用い(図示28e)、映像表示手段15に表示する右眼用映像信号は、「Rのフィールド1」(図示27g)を用い(図示28e)、結果として左眼用及び右眼用の同一時刻で撮像された被写体映像信号が表示される。次に、時刻ft_3で、「Lのフィールド1」(図示27e)及び「Rのフィールド1」(図示27g)を、それぞれ更に1フィールド分遅延させ、「Lのフィールド1」(図示27h)及び「Rのフィールド1」(図示27i)を生成し、左眼用及び右眼用の同一時刻で撮像された被写体映像信号として表示させる(図示28h、28i)。同様に、時刻ft_3では、「Lのフィールド3」(図示27c)及び「Rのフィールド3」(図示27f)を、それぞれ更に1フィールド分遅延させることにより、時刻ft_1〜時刻ft_3での動作をその後も繰り返す。このようにして、図示28に示すように、左眼用及び右眼用の同一時刻で撮影された被写体映像信号に基づいて、立体視表示を連続して行うことが出来る。
【0028】
図5では、従来技術である図4との対比を容易とするため、図示28に示すように、左眼用及び右眼用の表示装置を個別に備えている実施例について説明している。従って、図5(b)に示される「2フィールド遅延」(例えば、図示27h、27i)は、本実施例において必ず必要とされるものではない。例えば、左眼用及び右眼用の映像信号を、1つの表示装置で奇数及び偶数フィールドで切り替える方式であれば、前述の「左右多重映像」(図示27d〜27f)を用いることによって、時刻ft_1、時刻ft_2、時刻ft_3、・・・に従って、「Rのフィールド1」(図示27d)、「Lのフィールド1」(図示27e)、「Rのフィールド3」(図示27f)、・・・と繰り返すことになり、左眼用及び右眼用の同一時刻で撮像された被写体映像信号に基づいて立体視表示を連続して行うことが出来る。
【0029】
図6は、図1に示した両眼立体視システムを、具体的な両眼立体視を実現するシステムに適用した場合のブロック図を示す。図6の両眼立体視システムは、第1の撮像器71と、第2の撮像器72と、第1の信号処理回路73と、第2の信号処理回路74と、第3の信号処理回路81と、映像信号構成手段10aと、映像同期信号発生器14と、記録部82又は表示部83と、偏光メガネ59を備える。両眼視差を与えるための第1の撮像器71(例えば左眼用)と第2の撮像器72(例えば右眼用)はそれぞれ、被写体を撮像し、被写体映像信号を生成及び出力する。第1の信号処理回路73と第2の信号処理回路74は、第1の撮像器71(例えば左眼用)と第2の撮像器72(例えば右眼用)から、それぞれの被写体映像信号を入力し、所定の信号処理(例えば、被写体映像信号がアナログ信号であればデジタル信号に変換する処理など)を行って、被写体映像信号(IR、IL)を出力する。映像信号構成手段10aは、被写体映像信号(IR、IL)を入力し、プログレッシブ方式に適合するように多重化手段81aにより多重化して、多重化映像信号ORLを出力する。第3の信号処理回路81は、多重化映像信号ORLを入力し、所定の信号処理(例えば、多重化映像信号が60pデジタル信号であれば24pデジタル信号に変換する処理など)を行って、記録部82及び/又は表示部83に供給する。記録部82に記録された情報から表示部83に表示することも可能であり、表示部83に表示された映像は、偏光メガネ59を介して立体視を実現できる。
【0030】
映像信号構成手段10aは、被写体映像信号(IR、IL)を多重化映像信号(IR/IL)とするための信号切り替え手段であるマルチプレクサ75aと、多重化映像信号(IR/IL)を記憶する記憶器76aと、記憶器76aへの書込みタイミングを制御する書込み制御回路77aと、記憶器76aからの読み出しタイミングを制御する読出し制御回路78aと、書込み制御回路77a及び読出し制御回路78aを多重化映像信号(IR/IL)の各フィールド毎に制御するフィールド位相制御回路80aと、相関演算制御回路79aとを備える。多重化手段81aは、マルチプレクサ75a、記憶器76a、書込み制御回路77a及び読出し制御回路78aで構成されている。相関演算制御回路79aは、同期信号(CLK-R,CLK-L)及びフィールド位相制御80aの制御のタイミング調整を図ることが出来る演算回路であり、第1の撮像器71及び第2の撮像器72に対し、それぞれ異なる同期信号又は同一の同期信号(CLK-R,CLK-L)を生成する。相関演算制御回路79aは、単一の映像同期信号14(CLK0)に基づいて動作する。フィールド位相制御回路80aは、相関演算制御回路79aから制御信号を入力し、マルチプレクサ75aで多重化映像信号(IR/IL)を生成するように制御する。更に、フィールド位相制御回路80aは、記録器76aに供給された多重化映像信号(IR/IL)について、被写体映像信号(IR、IL)の位相を調整するように書込み制御回路77a及び読出し制御回路78aを制御する。尚、図6において、マルチプレクサ75により多重化映像信号(IR/IL)を生成し、その後に記憶器76aにて、多重化映像信号(IR/IL)内のフィールド毎の位相を制御すると説明したが、記憶器76aでのフィールド位相制御を用いずとも、同期信号のCLK-RとCLK-Lにてフィールド位相制御することもできる。
【0031】
相関演算制御回路79aは、第1の撮像器71及び第2の撮像器72について、例えば左眼用被写体映像信号をCLK-Lで、例えば右眼用被写体映像信号をCLK-Rで、被写体を撮像した時刻を左眼用及び右眼用と分離して制御することを可能としている。その制御に応じた左眼用及び右眼用の被写体映像信号のフィールド位相について、相関演算制御回路79aは、所望の相関演算を行って、フィールド位相制御80aを制御する。フィールド位相制御80aは、マルチプレクサ75a及び記憶器76aへの書込み制御回路77aにより、多重化映像信号(IR/IL)を適宜に廃棄又は選択ができる。同様に、読出し制御回路78aにより、記憶器76aから被写体映像信号(IR/IL)を適宜に選択し、多重化映像信号ORLを生成できる。従って、相関演算制御回路79aによって、被写体の撮像から、映像表示に要求される映像表示信号まで、一括管理をすることが可能となり、右眼用及び左眼用の被写体映像信号との間で、フィールド単位で位相を進めたり、遅らせたりすることができる。尚、本実施例では、被写体映像信号と多重化映像信号をそれぞれ用いているが、多重化を再度繰り返すことも可能であることは明らかである。それにより、右眼用被写体映像信号と左眼用被写体映像信号を、フィールド毎に交互に切り替わる多重化映像信号(IR/IL)を生成することから、複数の撮像手段による同期ブレを起こすことなく、また撮像から表示に至るまでのタイミングジッタ等による映像品質の悪化を生じることなく、右眼用及び左眼用の同一時刻で撮像された立体映像で表示可能な立体視システムを実現できる。
【0032】
(実施例2)
次に、本発明による両眼立体視システムの実施例2について説明する。図7は、本発明のよる具体的な両眼立体視を実現するシステムの実施例2の動作タイミング図を示す。図7(a)は、本発明の一実施例である、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の同一被写体位置で、両眼立体視を実現するための動作タイミング図の一例である。本動作タイミングは、図6で示した映像信号構成手段10aによって実施でき、具体的には、左眼用被写体映像信号をCLK-Lで、例えば右眼用被写体映像信号をCLK-Rでフィールド位相をずらして制御する。映像信号構成手段10aに供給される撮像時の状態を表す右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILと、多重化されている多重化映像信号ORLと、例えば複数表示装置用に個別の多重化映像信号ORL-R及びORL-Lについて、フィールド時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・のように、1走査線毎の信号間隔で繰り返す各映像信号の相関関係を示す。図7(a)において、撮像時の状態を表す右眼用映像信号IRは、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IR_0、IR_1、IR_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。左眼用映像信号ILは、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IL_0、IL_1、IL_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。多重化されている多重化映像信号ORLは、右眼用映像信号IR から偶数フィールドについてのみ選択した信号(図示201)と、左眼用映像信号IL から偶数フィールドについてのみ選択し、1フィールド分遅延させた信号(図示202)とからなり、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IR_0、IL_0、IR_2、IL_2・・・の順に信号生成されている。そのように多重化された映像信号ORLを用いて、偶数及び奇数のフィールドで左眼用又は右眼用の表示部を有する両眼立体視表示装置で立体映像を構成すれば、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の同一被写体位置で、両眼立体視を実現することができる。
【0033】
多重化映像信号ORLの生成方法とほぼ同様の手法で、個別の多重化映像信号ORL-R及びORL-Lは、それぞれ右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILから生成される信号(図示205、図示206)と、多重化映像信号(ORL-R、ORL-L)から生成される信号(図示203、図示204)とを交互に選択又は遅延することで、多重化映像信号ORLそれぞれ時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、(IR_0、IL_0)、(IR_0、IL_0)、(IR_2、IR_2) 、(IR_2、IR_2)・・・の組み合わせの順に信号生成されている。そのように多重化された多重化映像信号(ORL-R、ORL-L)を用いて、例えば左眼用及び右眼用の個別の複数表示装置用に立体映像を構成すれば、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の同一被写体位置で、両眼立体視を実現することができる。
【0034】
尚、本実施例において、左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を遅延させて動作させているが、相関演算制御手段79を用いて左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を進めて動作させても、本発明を実施できることは明らかである。更に、本実施例では、被写体映像信号と多重化映像信号をそれぞれ用いているが、多重化映像信号を複数生成することも可能であることは明らかである。これにより、右眼用被写体映像信号と左眼用被写体映像信号を、フィールド毎に交互に切り替わる多重化映像信号(IR/IL)を生成させることができ、複数の撮像手段による同期ブレを起こすことなく、また撮像から表示に至るまでのタイミングジッタ等による映像品質の悪化を生じることの無く、右眼用及び左眼用の撮影時同一時刻の立体表示可能な立体視システムを実現できる。
【0035】
(実施例3)
次に、本発明による両眼立体視システムの実施例3について説明する。図7(b)は、図7(a)と異なる効果を示す、本発明の更なる一実施例として、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の非同一被写体位置で、両眼立体視を実現するための動作タイミング図の一例である。同一時刻で1フィールド分ずらして本発明の立体視システムを動作させることにより、左眼用及び右眼用の撮像装置による撮像時の空間的位置を偶数列及び奇数列で、それぞれ例えば左眼用及び右眼用として分けることができ、同一時刻の被写体の動作を、立体視させた場合の立体映像(前述した脳内融合による)は、図7(a)に示す方法と比較して、垂直周波数の改善した立体映像を得ることができる。本動作タイミングは、図6で示した映像信号構成手段10aによって実施でき、具体的には、左眼用被写体映像信号をCLK-Lで、例えば右眼用被写体映像信号をCLK-Rでフィールド位相をずらして制御する。
【0036】
図7(b)は、映像信号構成手段10aに供給される撮像時の状態を表す右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILと、多重化されている多重化映像信号ORLと、例えば複数表示装置用に個別の多重化映像信号ORL-R及びORL-Lとについて、フィールド時刻ft_0、ft_1、ft_2、ft_3・・・のように、1走査線毎の信号間隔で繰り返す各映像信号の相関関係を示す。図7(b)において、撮像時の状態を表す右眼用映像信号IRは、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IR_0、IR_1、IR_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。左眼用映像信号ILは、時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・の順に従って、IL_0、IL_1、IL_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。従って、撮像時の状態を表す右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILは、1フィールド分ずらして撮像されており、同一時刻で撮像された左眼用及び右眼用の撮像時の被写体の垂直方向位置が、インターレース方式の撮像装置であることから、ちょうど偶数奇数でずれた位置を撮像及び信号出力されることになる。多重化されている多重化映像信号ORLは、左眼用映像信号IR から偶数フィールドについてのみ選択し、1フィールド分遅延させた信号 (図示211)と、左眼用映像信号IL から偶数フィールドについてのみ選択し、1フィールド分遅延させた信号(図示212)とからなり、時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・の順に従って、IR_0、IL_0、IR_2、IL_2・・・の順に信号生成されている。そのように多重化された多重化映像信号ORLを用いて、偶数及び奇数のフィールドで左眼用又は右眼用の表示部を有する両眼立体視表示装置で立体映像を構成すれば、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の非同一被写体位置で、両眼立体視を実現することができる。
【0037】
多重化映像信号ORLの生成方法とほぼ同様の手法で、個別の多重化映像信号ORL-R及びORL-Lは、それぞれ右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILから生成される信号(図示213、図示214)と、左眼用及び右眼用の多重化映像信号(ORL-R、ORL-L)から生成される信号(図示215、図示216)を交互に選択又は遅延することで、多重化映像信号ORLそれぞれ時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、(IR_0、IL_0)、(IR_0、IL_0)、(IR_2、IR_2) 、(IR_2、IR_2)・・・の組み合わせの順に信号生成されている。そのように多重化された左眼用及び右眼用の多重化映像信号(ORL-R、ORL-L)を用いて、例えば左眼用及び右眼用の個別の複数表示装置用に立体映像を構成すれば、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の非同一被写体位置で、両眼立体視を実現することができる。尚、本実施例において、左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を遅延させて動作させているが、相関演算制御手段79を用いて左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を進めて動作させても、本発明を実施できることは明らかである。尚、本実施例では、被写体映像信号と多重化映像信号をそれぞれ用いているが、多重化映像信号を複数生成することも可能であることは明らかである。それにより、右眼用被写体映像信号と左眼用被写体映像信号を、フィールド毎に交互に切り替わる多重化映像信号(IR/IL)を生成することから、複数の撮像手段による同期ブレを起こすことなく、また撮像から表示に至るまでのタイミングジッタ等による映像品質の悪化を生じることなく、右眼用及び左眼用の撮影時同一時刻の立体表示可能な立体視システムを実現できる。
【0038】
(実施例4)
次に、本発明による両眼立体視システムの実施例4について説明する。図8(a)に、本発明の別の実施例である映像信号構成手段10bのブロック図を示す。図8(a)では、図6に示した立体視システムの映像信号構成手段10aについての異なる実施例を示すものであり、図6と共に説明する。映像信号構成手段10bは、被写体映像信号IR及びILを記憶する記憶器76bと、記憶器76bへの書込みタイミングを制御する書込み制御回路77bと、記憶器76bからの読出しタイミングを制御する読出し制御回路78bと、書込み制御回路77b及び読出し制御回路78bを被写体映像信号IR及びILの各フィールド毎に制御するフィールド位相制御回路80bと、相関演算制御回路79bとを備える。多重化手段81bは、記憶器76b、書込み制御回路77b及び読出し制御回路78bで構成されている。第1の撮像器71及び第2の撮像器71のそれぞれ異なる同期信号又は同一の同期信号(CLK-R,CLK-L)を生成する相関演算制御回路79bは、同期信号(CLK-R,CLK-L)、記憶器76bの書込み制御回路77b及び読出し制御回路78bを制御するフィールド位相制御回路80bの制御のタイミング調整を図ることが出来る演算回路である。記憶器76bで、実施例1に示したマルチプレクサ75aの機能を包含させ、被写体映像信号(IR、IL)を多重化映像信号(IR/IL)とし、同一時刻で撮影された信号としたフィールド位相制御を実現しつつ、多重化映像信号としてORLを出力する。従って、図8(a)のような映像信号構成手段10bとしても、実施例1で説明した機能を実現することができる。
【0039】
(実施例5)
次に、本発明による両眼立体視システムの実施例5について説明する。図8(b)に、本発明の更に別の実施例である映像信号構成手段10cのブロック図を示す。図8(b)では、映像信号構成手段10cは、右眼用映像信号IRを整数倍のフィールド単位で遅延可能なフィールド遅延制御回路84と、左眼用映像信号ILを所定の時間に整数倍のフィールド単位で補間(内挿)可能なフィールド補間制御回路85と、マルチプレクサ75cと、映像同期信号相関手段79cとを備えている。多重化手段81cは、マルチプレクサ75c、フィールド遅延制御回路84及びフィールド補間制御回路85で構成されている。フィールド遅延された右眼用映像信号IR’ と、フィールド補間制御回路85によって相対的に遅延した左眼用被写体映像信号IL’は、マルチプレクサ75cにより交互に切り替えられ、被写体映像信号IR及びILを多重化映像信号(IR/IL)とし、同一時刻で撮像された信号としたフィールド位相制御回路80cを実現しつつ、多重化映像信号としてORLを出力する。従って、図8(b)のような映像信号構成手段10cとしても、実施例1で説明した機能を実現することができる。本実施例によれば、奇数(又は偶数)フィールドのいずれかを遅延させた場合に、被写体映像の垂直方向位置に不整合が生じることを防止するため、他方のフィールドに係る映像信号に1フィールド分の補間(内挿)を行うこともできる。それにより、撮像時の同一時刻の映像信号を維持しつつ、被写体映像の垂直方向位置の不整合をも解消する。尚、本発明の応用として、又は、実施形態の都合上において、1つ以上の遅延手段又は1つ以上の補間手段を用いることが出来ることは明らかである。更に、同一フィールド上において、遅延手段及び補間手段を用いて、本発明を実現することもできる。
【0040】
図9は、本発明の多岐に渡る応用例を、より明確化するための模式図を示す。図9(a)は、インターレース方式の撮像器のフレーム数/秒が、表示入力フレーム数/秒と等しい場合(同図において、便宜上、撮像装置と表示装置は同一のフィールド数)を説明しており、左眼用映像信号ILが、IL_0、IL_1、IL_2・・・の順にインターレース方式で撮影される様子を示し(図示102)、右眼用映像信号IRが、IR_0、IR_1、IR_2・・・の順にインターレース方式で撮影される様子を示している(図示101)。例えば図7(a)によれば、左眼用映像信号がIL_0、IL_2、IL_4・・・の順にプログレッシブ方式で表示され、右眼用映像信号がIR_0、IR_2、IR_4・・・の順にプログレッシブ方式で表示されることにより(図示103)、左眼用及び右眼用の同一時刻かつ同一撮影位置の両眼立体映像を得ることができる。
【0041】
図9(b)は、インターレース方式の撮像器のフィールド数/秒が、表示入力フレーム数/秒と等しい場合(同図において、便宜上、撮像装置と表示装置は同一のフィールド数)を説明している。図11(a)の撮影方法とは異なり、左眼用映像信号ILのみ、1フィールド線ずれたIL_2n+1’、IL_0’、IL_1’・・・の順にインターレース方式で撮影される様子を示し(図示105)、右眼用映像信号IRが、IR_1、IR_2、IR_3・・・IR_2n+1の順にインターレース方式で撮影される様子を示している(図示104)。例えば図7(b)によれば、左眼用表示映像がIL_0’、IL_2’、IL_4’・・・の順にプログレッシブ方式で表示され、右眼用表示映像がIR_0、IR_2、IR_4・・・の順にプログレッシブ方式で表示されることにより(図示106)、左眼用及び右眼用の同一時刻であるが、左眼用及び右眼用の撮影位置は、垂直方向で交差しており、図9(a)に示す方法よりも、垂直方向の解像度が高い(前述の脳内融合効果による)両眼立体映像を得ることができる。
【0042】
以上のように、実施例1〜5で説明した方法は、遅延又は記憶手段、或いは、位相制御によって、被写体映像信号(IR、IL)を多重化映像信号(IR/IL)とし、両眼立体視を得るようにしたが、相関演算制御回路79によって、異なる同期信号 (CLK-R,CLK-L)を生成させて、被写体映像信号(IR、IL)のうちいずれかの信号の位相を進めて、奇数又は偶数フィールドの映像信号のみを取り出して多重化映像信号(IR/IL)とし、両眼立体視を実現することもできる。
【0043】
実施例1〜5で説明した方法は、被写体映像信号IR及びILを多重化映像信号(IR/IL)とするための信号切り替え手段により、奇数フィールドの映像信号のみを取り出して多重化映像信号(IR/IL)としても、或いは偶数フィールドの映像信号のみを取り出して多重化映像信号(IR/IL)としても、両眼立体視を実現することも可能できる。
【0044】
実施例1〜5で説明した方法は、被写体映像信号IR及びILを多重化映像信号(IR/IL)とするための信号切り替え手段により、奇数フィールドの映像信号のみを取り出して、多重化映像信号(IR/IL)とし、両眼立体視を得るように説明したが、奇数及び偶数フィールドの映像信号それぞれを取り出して、それぞれの多重化映像信号(IR/IL)を用いた両眼立体視を実現することも可能である。
【0045】
実施例1〜5で説明した方法は、被写体映像信号IR及びILを多重化映像信号(IR/IL)とするための信号切り替え手段により、奇数フィールドの映像信号のみを取り出して、多重化映像信号(IR/IL)とし、両眼立体視を得るように説明したが、奇数及び偶数フィールドの映像信号それぞれを取り出して、既知の手段により、それぞれの多重化映像信号(IR/IL)を用いて、より映像を滑らかとするような映像処理を行って、両眼立体視を実現することも可能である。
【0046】
上述の実施例で明らかなように、本発明は、被写体の撮像段階から立体視表示及び又は記録の最終段階まで全工程での時間管理を行うことを可能とし、中間過程での同期ブレやタイミングジッタによる悪影響を生じさせること無く、且つ、早いスピード移動を有する被写体に対し、即ち、一瞬の映像でさえも、両眼視にあたり違和感の無いリアルな立体映像を、より正確に、より忠実に再現することができる。
【0047】
(実施例6)
次に、本発明による両眼立体視システムの実施例6について説明する。図10は、本発明の更なる応用例を示す図である。この両眼立体視システムは、第1の映像信号構成手段10fと、更に第2の映像信号構成手段10gとを備えている。第1の映像信号構成手段10fは、前述と同様に、被写体映像信号(IR、IL)を多重化映像信号(IR/IL)とするための信号切り替え手段により、多重化映像信号(IR/IL)を生成するが、奇数又は偶数フィールドの映像信号のそれぞれを取り出して多重化映像信号(IR/IL)を生成する。即ち、第1の映像信号構成手段10fは、奇数フィールドの多重化映像信号(IR/IL)を出力信号ORLとして出力し、偶数フィールドの多重化映像信号(IR/IL)を出力信号ORL’として出力する。実施例6により、出力信号ORL及びORL’を構成する被写体映像信号IR及びILは、それぞれ右眼用及び左眼用の同時刻の多重化映像信号(IR/IL)で構成されている。図10では、完全に映像信号の同期をとるために、第1の映像信号構成手段10fと第2の映像信号構成手段10gには、同一の映像同期信号14が供給されているが、相関演算制御手段80f又は79fによって映像信号のタイミング調整を図り、相対的に本発明と同一の効果を得ることはできるため、個別の映像同期信号とすることもできる。
【0048】
図10において、第1の映像信号構成手段10fは、多重化手段81fと、フィールド位相制御手段80fと、相関演算制御手段79fとを備え、第2の映像信号構成手段10gは、多重化手段81gと、フィールド位相制御手段80gと、相関演算制御手段79gとを備えており、それらの動作説明は、前述の実施例と同質であり、本実施例で特別な動作をするものではない。
【0049】
第2の映像信号構成手段10gは、本発明を応用し、出力信号ORL及びORL’から、左眼用表示映像信号DRと右眼用表示映像信号DLを生成するように構成される。これら左眼用及び右眼用の映像表示信号DR及びDLを生成することは、例えば被写体を撮影した撮像手段11の走査線数よりも、多い走査線数の映像表示手段15aを有する場合に特に有効である。即ち、表示手段の大画面化に伴って情報量が増加する場合に、被写体映像に対して、より正確な表示映像信号DR及びDLを用いることが出来るようになる。又、図10に示したように、映像記録手段16bに対して、映像記録信号DR’及びDL’を出力することもできる。表示映像信号DR及びDLと、映像記録信号DR’及びDL’は、説明上において区別しているにすぎず、全く同質のものである。映像表示手段15aは、表示映像信号DR及びDLを供給され、映像記録手段16aは、映像記録信号DR’及びDL’を供給され、立体映像を表示又は立体映像信号を記録するものであり、映像表示手段15aの効果を示す代表的な例は後述する。
【0050】
図11に、本発明の更なる応用である撮像時の左眼用及び右眼用の映像信号の全てを用いた両眼立体視を実現するシステムの動作タイミングの一例を示す。図11の動作タイミングは、図10で示した映像信号構成手段10f及び10gを用いることによって立体視システムにおいて実施可能なタイミング例であり、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻及び全ての左眼用及び右眼用の同一被写体映像を用いての表示を可能とする。このため、例えば撮像した映像を大画面表示する際に増加する走査線数を補う際に、より正確で、高解像度の立体視映像を実現できる。図11には、映像信号構成手段10fに供給される撮像時の状態を表す右眼用映像信号IR及び左眼用映像信号ILと、多重化されている多重化映像信号ORL(偶数フィールド選択)と、多重化されている多重化映像信号ORL’(奇数フィールド選択)と、映像表示手段15a用に個別の多重化映像信号DR及びDL(映像記録手段16a用に個別の多重化映像信号DR’及びDL’)とを、フィールド時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・のように、1走査線毎の信号間隔で順次繰り返される各映像信号の相関関係を示している。
【0051】
図11において、撮像時の状態を表す右眼用映像信号IRは、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IR_0、IR_1、IR_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。左眼用映像信号ILは、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IL_0、IL_1、IL_2・・・の順に撮像及び信号出力されている。多重化されている多重化映像信号ORL(偶数フィールド選択)は、右眼用映像信号IR から偶数フィールドについてのみ選択した信号(図示221)と、左眼用映像信号IL から偶数フィールドについてのみ選択し、1フィールド分遅延させた信号(図示222)とからなり、時刻ft_0、ft_1、ft_2、・・・の順に従って、IR_0、IL_0、IR_2、IL_2、・・・の順に信号生成されている。同様に、多重化されている映像信号ORL’(奇数フィールド選択)は、右眼用映像信号IR から奇数フィールドについてのみ選択した信号(図示223)と、左眼用映像信号IL から奇数フィールドについてのみ選択し、1フィールド分遅延させた信号(図示224)とからなり、時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・の順に従って、IR_1、IL_1、IR_3、IL_3、・・・の順に信号生成されている。そのように多重化された映像信号ORL又はORL’を用いて、偶数及び奇数のフィールドで左眼用又は右眼用の表示部を有する両眼立体視表示装置で立体映像を構成すれば、撮影時の左眼用及び右眼用の同一時刻かつ左眼用及び右眼用の同一被写体位置で、両眼立体視を実現することができることは、前述の実施例に示す通りである。
【0052】
映像表示手段15a用に個別の映像表示信号DR及びDL(映像記録手段16a用に個別の映像表示信号DR’及びDL’)を生成するには、多重化映像信号ORL又はORL’の生成方法とほぼ同様の手法で、それぞれ多重化された多重化映像信号ORL及び多重化された映像信号ORL’から生成される信号(図示225、図示226)と、更に1フィールド分遅延した多重化された映像信号ORL及び多重化された映像信号ORL’から生成される信号(図示227、図示228)を交互に選択又は遅延することで生成することができる。結果として、映像表示手段15a用に個別の映像表示信号DR及びDL(映像記録手段16a用に個別の映像表示信号DR’及びDL’)は、それぞれ時刻ft_1、ft_2、ft_3、・・・の順に従って、(IR_0、IL_0)、(IR_1、IL_1)、(IR_2、IR_2) 、(IR_3、IR_3)、・・・の組み合わせの順に信号生成されている。そのように多重化された映像表示信号DR及びDL(又はDR’及びDL’)を用いて、例えば左眼用及び右眼用の個別の表示装置に立体映像を構成すれば、より大画面で立体映像を構成することができる。更に、左眼用及び右眼用の映像信号DR及びDL(又はDR’及びDL’)を用いた多重化映像信号(DR/DL)又は(DR’/DL’)を、実施例1〜5で説明したような本発明の応用により生成し、例えば左眼用及び右眼用の個別の表示部をフィールド毎に切り替える方式の表示装置に立体映像を構成すれば、より大画面で立体映像を構成することもできる。尚、本実施例において、左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を遅延させて動作させているが、相関演算制御手段79を用いて左眼用及び右眼用のいずれか一方のフィールド位相を進めて動作させても、本発明を実施できることは明らかである。
【0053】
実施例1〜6において、映像同期信号と相関演算制御からの新たな映像同期信号とを異なる周波数とすることが出来ることは、当業者に明らかである。
【0054】
図12は、インターレース方式の撮像器のフレーム数/秒が、表示入力フレーム数/秒と等しい場合(同図において、便宜上、撮像装置に対し表示装置は2倍のフィールド数)を説明しており、即ち、大画面表示を意味している。左眼用映像信号ILが、IL_0、IL_1、IL_2・・・の順にインターレース方式で撮影される様子を示し、右眼用映像信号IRが、IR_0、IR_1、IR_2・・・の順にインターレース方式で撮影される様子を示している。本発明の実施例4によれば、左眼用表示映像がIL_0、IL_1、IL_2・・・の順にプログレッシブ方式で表示され、右眼用表示映像がIR_0、IR_1、IR_2・・・の順にプログレッシブ方式で表示されることにより、左眼用及び右眼用の同一時刻かつ同一撮影位置であり、更に高解像度かつ大画面の両眼立体映像を得ることができる。尚、便宜上、撮像装置に対し表示装置は2倍のフィールド数について説明したが、より滑らかな映像を得たい場合や、更なる大画面化する場合などにおいても、実施例6の方法により、それぞれ奇数及び偶数の多重化映像信号(IR/IL)を用いることは極めて有効である。
【0055】
尚、本実施例を用いることなく、撮像装置から直接両眼立体視の映像を得ることは、従来技術で説明したように、同期ブレ等の問題を生じうることは言うまでもない。
【0056】
実施例1〜6は、偏光メガネ方式の両眼立体視について説明したが、時分割方式の両眼立体視においても適用できる。HDTV方式又はNTSC方式の映像表示及び又は記録手段、3Dシアターシステム又はプロジェクタ、3Dハイビジョン、TV電話又は放送手段など、立体映像を取り扱う全てのアプリケーションにおいて適用できる。
【0057】
実施例1〜6で、相関演算制御手段は、被写体映像信号と多重化映像信号との間で、同一時刻で撮像された被写体映像信号を基準とした位相が1フィールド分の時刻差となるように、被写体映像信号の位相又は前記多重化映像信号内の被写体映像信号に対応する位相を相関演算するように説明したが、相関演算手段は、予め定めた位相の相関値とすることも含む。
【0058】
実施例1〜6で、複数の撮像手段(撮像器)を用いた被写体映像を例にして説明したが、両眼立体視を可能とする他の撮像手段、例えば、1つの被写体映像から擬似的に左眼用及び右眼用の両眼映像を生成し、それらの映像を用いて両眼立体視を実現するシステムにおいても適用できる。
【0059】
以上の説明では、多重化映像信号と、表示装置及び記録装置に適した映像表示信号及び映像記録信号とで、便宜上、区別して説明したが、多重化映像信号は、映像表示信号及び映像記録信号を包含するものとして捉えるべきである。例えば、多重化映像信号を、映像信号構成手段10に備えずに、映像表示手段15又は映像記録手段16に備えても、本発明を実現できる。従って、多重化映像信号を、映像表示信号及び映像記録信号と区別することによっても本発明は制限されない。
【0060】
更に、映像信号構成手段10は、撮像手段11、映像表示手段15及び映像表示手段16のいずれかに1つ以上備えることができ、或いは映像信号構成手段10を備える個別の装置とすることもできる。また、両眼立体視システム全体として映像信号構成手段10を備える立体視システムとすることもできる。従って、映像信号構成手段10を、複数の手段で分割利用することによっても本発明は制限されない。
【0061】
上述した実施例において、代表的な例として本発明を説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、一般的な機器又は手段としての撮像器、被写体映像信号の出力手段、信号処理手段、表示装置又は記録装置などの各機器又は各手段によって、左眼用及び右眼用の被写体映像信号のそれぞれの位相を個別に設定しても、両眼立体視システム全体として本発明を実現できる。従って、本発明は、上述の説明によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
「早いスピードのある映像」を有するインターレース方式で撮影した映像を、プログレッシブ変換して両眼立体視を実現する場合において、立体視を損なうことなく、立体映像の鮮明さを維持して表示させることができるため、より正確で、安定した解像度の高い映像を提供する方法、装置及びシステムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を概略的に示した両眼立体視を実現するシステム例のブロック図である。
【図2】従来技術を概略的に示した両眼立体視を実現するシステム例のブロック図である。
【図3】従来技術の問題点を観念的に表した模式図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、従来技術による両眼立体視システムにおいて、フィールド時刻毎の立体表示映像を説明するタイミングブロック図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、本発明による両眼立体視システムにおいて、フィールド時刻毎の立体表示映像を説明するタイミングブロック図である。
【図6】本発明による、より具体的な両眼立体視を実現するシステム例のブロック図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、本発明による両眼立体視を実現する動作タイミング図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、本発明の別の実施例である映像信号構成手段のブロック図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、本発明による応用例を、より明確化した模式図である。
【図10】本発明の更なる応用例を示した両眼立体視を実現するシステム例のブロック図である。
【図11】本発明による更なる応用例である両眼立体視を実現する動作タイミング図である。
【図12】本発明による応用例を、より明確化した模式図である。
【符号の説明】
【0064】
10 映像信号構成手段
10f 第1の映像信号構成手段
10g 第2の映像信号構成手段
11 撮像手段
14 映像同期信号
15 映像表示手段
16 映像記録手段
51 第1の撮像器
52 第2の撮像器
53 多重化制御
54 フィールド遅延制御
55 信号切り替え制御(マルチプレクサ)
71 第1の映像信号
72 第2の映像信号
75 マルチプレクサ
76 記憶器
79 相関演算制御手段
80 フィールド位相制御手段
84 フィールド遅延制御手段
85 フィールド補間制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターレース方式の撮像器によって、両眼視差を与えるための左眼用及び右眼用のそれぞれについて生成された少なくとも2つ以上の被写体映像信号を供給され、左眼用及び右眼用の前記被写体映像信号を走査線毎に選択可能とし、左眼用及び右眼用の前記被写体映像信号の各々について走査線毎に切り替わるプログレッシブ方式の多重化映像信号を生成する少なくとも1つの映像信号構成方法であって、
前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、左眼用及び右眼用の映像信号の位相の相関を演算し、前記被写体映像信号の位相を制御する1つ以上の新たな映像同期信号を生成する相関演算ステップと、
前記相関演算ステップに基づいて、前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、映像信号の位相を制御するフィールド位相制御ステップとを有する、映像信号構成方法。
【請求項2】
前記被写体映像信号が、右眼用と左眼用のそれぞれ2つの被写体撮像信号からなり、
前記新たな映像同期信号が、2つの映像同期信号からなり、
前記相関演算ステップが、前記2つの被写体映像信号の位相の相関を演算し、前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、同一時刻で撮像された前記2つの被写体映像信号を基準とした位相が1フィールド分の時刻差となるように、前記2つの被写体映像信号の位相又は前記多重化映像信号内の前記2つの被写体映像信号に対応する位相を相関演算する請求項1に記載の映像信号構成方法。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の映像信号構成方法により生成された前記多重化映像信号に基づいて、立体映像を表示する両眼立体視表示装置又は立体映像の映像信号を記録する両眼立体視映像記録装置を備える立体視システム。
【請求項4】
インターレース方式の撮像器によって、両眼視差を与えるための左眼用及び右眼用のそれぞれについて生成された少なくとも2つ以上の被写体映像信号を供給され、左眼用及び右眼用の前記被写体映像信号を走査線毎に選択可能とし、左眼用及び右眼用の前記被写体映像信号の各々について走査線毎に切り替わるプログレッシブ方式の多重化映像信号を生成する少なくとも1つの映像信号構成装置であって、
前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、左眼用及び右眼用の映像信号の位相の相関を演算し、前記被写体映像信号の位相を制御する1つ以上の新たな映像同期信号を生成する相関演算手段と、
前記相関演算手段に基づいて、前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、映像信号の位相を制御するフィールド位相制御手段とを有する、映像信号構成装置。
【請求項5】
前記被写体映像信号が、右眼用と左眼用のそれぞれ2つの被写体撮像信号からなり、
前記新たな映像同期信号が、2つの映像同期信号からなり、
前記相関演算手段が、前記2つの被写体映像信号の位相の相関を演算し、前記被写体映像信号と前記多重化映像信号との間で、同一時刻で撮像された前記2つの被写体映像信号を基準とした位相が1フィールド分の時刻差となるように、前記2つの被写体映像信号の位相又は前記多重化映像信号内の前記2つの被写体映像信号に対応する位相を相関演算する請求項4に記載の映像信号構成装置。
【請求項6】
請求項4〜5のいずれかに記載の映像信号構成装置により生成された前記多重化映像信号に基づいて、立体映像を表示する両眼立体視表示装置又は立体映像の映像信号を記録する両眼立体視映像記録装置を備える立体視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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