説明

立体画像表示装置

【課題】簡単な構成で、より美しい立体画像を全周囲から再現性良く視認できるようにする。
【解決手段】内部に回転軸を有し、前記回転軸の上下に円形のフランジを有する円筒状の回転部と、前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、曲面形状に形成された凹面側が発光面とされ、前記発光面に複数の発光素子が配設されることにより形成された表示素子アレイと、前記表示素子アレイを内蔵して前記回転部のフランジに固定される複数のハウジングと、前記ハウジングと前記フランジとの間に挿入され、個々の前記ハウジングの寸法誤差に応じた厚みを有するシムと、前記発光面に対向する位置において、前記回転部の周面に設けられたスリットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、立体画像表示装置に関し、特に、簡単な構成で、より美しい立体画像を全周囲から再現性良く視認できるようにする立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受像機などに採用されている平面ディスプレイに立体視可能な映像を表示する3次元表示技術が存在する。この3次元表示技術は、例えば、ディスプレイを見る人の左右の眼の視差を利用するものがある。具体的には、例えば、平面ディスプレイに左目用の画像と右目用の映像を交互に表示し、さらに偏光フィルタなどを介することにより、左目には左目用の映像だけが、右目には右目用の映像だけが見られるようにして立体視を実現している。
【0003】
これに対して、被写体を中心とする円周上に設けられた複数の視点から撮像した(または、コンピュータグラフィックスにより被写体を全周囲から見た状態を想定して生成した)視点の異なる複数の画像(以下、視点画像と称する)を用い、全周囲の任意の方向から見ても被写体を立体的に視認できるように表示を行う全周囲立体映像表示装置が数多く提案されている。
【0004】
例えば、被写体を全周囲に渡って撮像したり、コンピュータにより作成した立体画像表示用の2次元映像情報等に基づいて被写体の全周囲に渡る立体画像を再生する光線再生方式の全周囲立体画像表示装置に関しては、これまでにも多くの提案がなされている。
【0005】
例えば、全方向から見ることができる立体映像表示装置が開示されている。この立体映像表示装置によれば、視野角制限スクリーン、回転機構、上部の鏡、下部の鏡群、プロジェクタ及びパーソナルコンピュータを備え、両眼視差を利用した立体的な映像を表示する。
【0006】
また、立体画像表示用の筒状の回転体及びモータを備え、回転体の周面には光が透過可能な複数の垂直ラインを設けた、全周囲から見ることができる3Dビデオディスプレイも提案されている。この3Dビデオディスプレイによれば、全周360°の範囲に立体像を表示できるので、両眼視差用めがねを掛けないで、立体像を観察できるようになる。
【0007】
しかしながら、例えば、上述の立体映像表示装置では、視野角制限スクリーン、回転機構、上部の鏡、下部の鏡群、プロジェクタ及びパーソナルコンピュータを備えなければならないので、システムが大きくなって制御が複雑となる。
【0008】
また、上述の3Dビデオディスプレイによれば、回転体の周面に設けられた複数の垂直ラインから透過する光で立体像を表示するので、光線の利用効率が悪くなり、エネルギー損出が大きくなるおそれがある。
【0009】
そこで、出願人は、立体表示機構を複雑化することなく、立体画像を全周囲から再現性良く視認できるようにした立体画像表示装置を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この立体映像表示装置は、その筐体が円筒形状を成しており、筐体の内部には小型のLED(light emitting diode)などを大量に配置して成す複数の表示部が設けられている。また、筐体にはスリットが設けられており、複数の表示部の映像がスリット越しに筐体の外部から視認できるようになされている。そして、筐体が高速回転することにより、円筒形状の筐体側面を任意の方向から見るユーザに対して、複数の表示面の映像が立体的に視認できるようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2010067838A1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の技術を用いた立体表示機構を構成する場合、筐体を高速回転されることによりスリットにひずみが生じる可能性がある。すなわち、回転の際の遠心力によりスリットが変形し、スリット幅が上下不均一となる可能性がある。
【0013】
例えば、遠心力によってスリットが変形してスリット幅が拡がると、隣接画素からの漏れ込みが生じ、映像の解像感低下に繋がる。
【0014】
本技術はこのような状況に鑑みて開示するものであり、簡単な構成で、より美しい立体画像を全周囲から再現性良く視認できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術の一側面は、内部に回転軸を有し、前記回転軸の上下に円形のフランジを有する円筒状の回転部と、前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、曲面形状に形成された凹面側が発光面とされ、前記発光面に複数の表示素子が配設されることにより形成された表示素子アレイと、前記表示素子アレイを内蔵して前記回転部のフランジに固定される複数のハウジングと、前記ハウジングと前記フランジとの間に挿入され、個々の前記ハウジングの寸法誤差に応じた厚みを有するシムと、前記発光面に対向する位置において、前記回転部の周面に設けられたスリットとを備え、前記複数の表示素子は、前記発光面の方向に応じた光を、前記スリットを介して前記回転部の外部に放射する画像表示装置である。
【0016】
前記ハウジングは、前記ハウジングの一方の端面を、前記シムを介して一方の前記フランジに固定するための取付ネジと、前記ハウジングの他方の端面を他方の前記フランジに密着させるための調整ネジにより固定されるようにすることができる。
【0017】
前記フランジには、前記回転部の内部における重量の偏りを是正する重りとして、回転バランス用ネジが取り付けられるようにすることができる。
【0018】
前記スリットは、前記回転軸に平行な方向に設けられているようにすることができる。
【0019】
立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備えるようにすることができる。
【0020】
立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備え、前記表示制御部は、m行×n列(m,n=2以上の整数)のマトリクス状に配設され、前記表示素子アレイの行方向に配列されるm個の表示素子がそれぞれ、前記回転部の回転に応じて異なるタイミングで発光を開始するような発光制御を行うようにすることができる。
【0021】
本技術の一側面においては、内部に回転軸を有し、前記回転軸の上下に円形のフランジを有する円筒状の回転部と、前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、曲面形状に形成された凹面側が発光面とされ、前記発光面に複数の表示素子が配設されることにより形成された表示素子アレイと、前記表示素子アレイを内蔵して前記回転部のフランジに固定される複数のハウジングと、前記ハウジングと前記フランジとの間に挿入され、個々の前記ハウジングの寸法誤差に応じた厚みを有するシムと、前記発光面に対向する位置において、前記回転部の周面に設けられたスリットとが設けられ、前記発光面の方向に応じた光が、前記スリットを介して前記回転部の外部に放射される。
【発明の効果】
【0022】
本技術によれば、簡単な構成で、より美しい立体画像を全周囲から再現性良く視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本技術を適用した3次元映像表示システムの構成例を示す図である。
【図2】全周囲立体視映像表示装置の内部に設けられる表示部の斜視図である。
【図3】ライトハウジングおよび発光素子基板から成るアレイ型ディスプレイの背面斜視図である。
【図4】アレイ型ディスプレイの断面図である。
【図5】発光素子基板の斜視図である。
【図6】発光素子基板の断面図である。
【図7】LEDの構成例を示す断面図である。
【図8】全周囲立体画像表示装置の動作例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。
【図9】視点pから観察される発光点の軌跡例を示す説明図である。
【図10】視点pから観察される発光点の別の軌跡例を示す説明図である。
【図11】視点pから観察される発光点のさらに別の軌跡例を示す説明図である。
【図12】複数の視点に対してスリットを介して光線を出力する様子を説明する図である。
【図13】複数の視点に対してスリットを介して光線を出力する様子を説明する別の図である。
【図14】複数の視点に対してスリットを介して光線を出力する様子を説明するさらに別の図である。
【図15】本技術を適用した場合の円筒部の内部の構成例を示す図である。
【図16】円筒部が回転する際の軸ぶれを説明する図である。
【図17】シムの挿入について説明する図である。
【図18】調整ネジについて説明する図である。
【図19】回転バランス用ネジについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、ここで開示する技術の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本技術を適用した3次元映像表示システムの構成例を示している。この3次元画像表示システム10は、画像信号処理装置20、および全周囲立体映像表示装置30から構成される。
【0026】
画像信号処理装置20は、例えば被写体を全周囲方向から撮像したビデオ信号を全周囲立体映像表示装置30に供給する。
【0027】
全周囲立体映像表示装置30は、複数のスリット32が設けられた円筒部31に表示部40(図2)が内蔵されて構成されている。スリット32は、円筒部31の回転軸と平行に設けられている。表示部40は、スリット32の数と同じ数のアレイ型ディスプレイから構成される。全周囲立体映像表示装置30は、画像信号処理装置20から入力されるビデオ信号から被写体の全周囲の各視点から見た場合の画像を抽出して所定の順序で各アレイ型ディスプレイに表示する。これに合わせて円筒部31は高速で回転駆動される。
【0028】
これにより、全周囲立体映像表示装置30の円筒部31の側面を見るユーザには、表示部40を構成するアレイ型ディスプレイの映像がスリット32から漏れて見えることになる。すなわち、画像信号処理装置20から供給されるビデオ信号に基づいて、後述するようにアレイ型ディスプレイに設けられた複数のLEDの発光が制御される。この映像は、複数の各アレイ型ディスプレイの対応する位置に配置されたR,G,B成分のLEDの光が合成されて見えるので映像が本来有する色を発色しており、円筒部31の側面を任意の方向から見た場合、ビデオ信号の被写体の全周囲に亘る立体像をユーザは視認できることになる。
【0029】
次に、全周囲立体映像表示装置30の円筒部31に内蔵されている表示部40の構成例について、図2乃至図6を参照して説明する。なお、図2は表示部40の構成例、図3はアレイ型ディスプレイの背面斜視図、図4はアレイ型ディスプレイの断面図を示している。また、図5は発光素子基板43の斜視図、図6は発光素子基板43の断面図を示している。
【0030】
図2に示す構成例の場合、表示部40は、3つのアレイ型ディスプレイにより構成されている。各アレイ型ディスプレイは、複数の発光素子基板43の各LED面52によって曲面が形成されるようにライトハウジング41に装着されて構成される。
【0031】
各ライトハウジング41は、円筒部31の台座に等角度(いまの場合、120度)間隔で配置されている。これにより、円筒部31が回転駆動されたときの回転軸のぶれを低減することができる。
【0032】
ライトハウジング41には、その側面にスリット42が設けられており、このスリット42と、円筒部31に設けられたスリット32とが一致するように、表示部40は円筒部31の内部に設置されている。
【0033】
ライトハウジング41は、中空構造の略半円筒形状を有しており、その円弧状の側面には発光素子基板43を取り付けるために位置決め穴が設けられている。これにより、発光素子基板43を高い精度でライトハウジング41の所定の位置に取り付けることができる。また、複数の発光素子基板43は、位置決め穴に従ってフィン状に取り付けられている。このような形状的特徴により、発光素子基板43等にて発生する熱を、表示部40が回転駆動される際に効率よく排熱することができる。
【0034】
さらに、ライトハウジング41の上面および下面には空孔が設けられている。これにより、表示部40が回転駆動されると、この上下の空孔を通じてライトハウジング41内に空気の流れが生じるので排熱が促進される。
【0035】
発光素子基板43は、その長手方向の両端に、ライトハウジング41に取り付けるためのアタッチメント51が設けられている。なお、アタッチメント51の素材には、アルミニウムなどの熱伝導率が高い材質が用いられる。これにより、発光素子基板43にて発生する熱を効率よくライトハウジング41側に移したり、放熱することができる。
【0036】
また、発光素子基板43は、その断面がL型(または逆L型)の形状を成しており、L型の短辺となる位置に、発光素子であるLEDが複数配置されて構成される矩形のLED面52が取り付けられている。すなわち、LED面52の長手方向は、ライトハウジング41のスリット42と平行なるように取り付けられる。さらに、その長辺となる位置に、LEDを駆動するためのドライバ基板53が取り付けられている。
【0037】
図4に示されたように、アレイ型ディスプレイは、その画面が円弧状に形成されている。すなわち、アレイ型ディスプレイは、複数の発光素子基板43の各LED面52が、画面の円弧中心とライトハウジング41のスリット42とを結ぶ線上の点の方向に向けて円弧状に連なって配置されることにより構成される。これにより、LEDから照射される光の利用効率を上げることができる。また、各発光素子基板43の間に隙間ができるので、発生した熱を放熱することができる。
【0038】
さらに、アレイ型ディスプレイを構成する複数の発光素子基板43は、アレイ型ディスプレイの中心を境として、その断面がL型のものと逆L型のものとが用いられる。これにより、L型または逆L型の一方のみを用いてアレイ型ディスプレイを構成した場合に生じ得る、画面の段差に起因する映像の左右不均一(例えば、画面の右側(または左側)だけで縦方向の画素の隙間が目立つなど)を防止することができる。
【0039】
上述したように、LED面52は、その方向がアレイ型ディスプレイの円弧中心とスリット42とを結ぶ線上の方向に向けて配置されている。さらに、LED面52の各LEDについても、従来のLEDに比較して、その照射光の指向性が高められており、光の利用効率が向上するようになされている。
【0040】
図7は、LED面52を成すLEDの構成例を示している。この例では、基板60上に設けられたLEDチップ61を中心とし、LEDチップ61を覆うように樹脂レンズ64が形成されている。LEDの上面から見て樹脂レンズ64を円形に形成することにより、LEDの照射光を正面に集めることができるので、迷光が低減して光の利用効率が向上する。したがって、表示される映像のコントラストが向上する。また、見かけ上の発光面積が増すので、立体映像のドット感が目立ってしまうことを抑止することができる。
【0041】
また、樹脂レンズ64の位置および形状を精度良く形成する方法として、基板60の樹脂レンズ64を形成させる領域以外には、撥水撥油処理剤などを塗布することにより低表面張力皮膜63が形成されている。すなわち、低表面張力皮膜63を高い位置精度で形成することにより、樹脂レンズ64の位置および形状を高い精度で形成させることができる。
【0042】
次に、図8乃至図14を参照して全周囲立体画像表示装置30の動作原理について説明する。図8は、全周囲立体画像表示装置30の円筒部31の動作例を示す回転軸方向から見下ろした模式図である。
【0043】
図8の例では、円筒部31が回転軸103を回転中心として矢印Rの方向に、あるいは、その逆の方向に回転する構造となっている。また、この例では、説明を簡単にするために、円筒部31の内部にライトハウジング41が1つのみ装着されているものとし、そのライトハウジング41のアレイ型ディスプレイがアレイ型ディスプレイ101として表示されている。つまり、図8において符号101が付された円弧状の曲面が、例えば、図4を参照して上述したように、複数のLED面52によって円弧状に形成された曲面に対応する。
【0044】
そして、この例では、やはり説明を簡単にするために、円筒部31には、1つのスリット102が設けられ、アレイ型ディスプレイ101から出射した光が、このスリット部位以外から漏れないように構成されている。このスリット構造により、アレイ型ディスプレイ101の各発光素子201乃至発光素子212から出射された光がスリット102より左右方向の放射角度が大きく制限される。
【0045】
なお、ここでは、LEDを発光素子として表現し、その数を12行個としている。すなわち、図中の発光素子201乃至発光素子212で示される位置の紙面奥行方向にLEDが連なってLED面が形成されていることになる。従って、アレイ型ディスプレイ101には、発光素子がm行×n列(m,n=2以上の整数)のマトリクス状に配設されることになるが、図中ではm(ここではm=12)行の発光素子として記載されている。この発光素子201乃至発光素子212によって、回転軸103を基準にして結像する立体画像の光は、円筒部31の内部からスリット102を介して外部へ漏れ出るようになる。ここで、発光素子201乃至発光素子212の各々と、スリット102と結んだ各々の方向をベクトルで示すことにする。
【0046】
発光素子201とスリット102と結んだ線分が示す方向を、当該発光素子201からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。以後、この方向を”ベクトル201V方向”と記述する。以下、同様にして、発光素子202とスリット102と結んだ線分が示す方向を、発光素子202からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。この方向を”ベクトル202V方向”と記述する。同様に、発光素子212とスリット102と結んだ線分が示す方向を、発光素子212からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。この方向を”ベクトル212V方向”と記述する。
【0047】
例えば、発光素子201から出力された光は、スリット102を通過してベクトル201V方向に放射される。発光素子202から出力された光は、スリット102を通過してベクトル202V方向に放射される。同様に発光素子202乃至発光素子212から出力された光もスリット102を通過してベクトル203V乃至ベクトル212V方向に放射される。このように、各発光素子201乃至発光素子212の光が各々違った方向に放射されるため、スリット102で規制される縦1ライン分の光線再生が可能となっている。
【0048】
こうしたスリット構造の円筒部31を視点pに対して回転走査することで、円筒形状の光線再生面を形成できるようになる。更に、視点pに対する回転走査の角度に応じて、ビデオ信号をアレイ型ディスプレイ101に供給することで、任意の再生光線を出力することが可能となる。
【0049】
次に、視点pから観察される発光点の軌跡例について説明する。
【0050】
アレイ型ディスプレイ101において、回転軸103に直交する平面内には、上述したように、例えば12個の発光素子が互いに異なる位置に配置されている。発光素子はそれぞれ、スリット102を介して円筒部31の回転に応じてそれぞれ異なる視点位置用の光を外部に向けて放射する。ここで、円筒部31が回転している状態において、円筒部31の周囲における任意の1つの視点位置から回転軸103の方向を観測したとする。このとき、複数の発光素子による発光点の軌跡によって、円筒部31の内部に任意の視点位置に応じた例えば平面状の画像が形成されるように複数の発光素子の発光制御が行われる。各視点位置ではその視点位置に応じた少しずつ視差のある例えば平面状の画像が観測される。従って、両眼の位置に相当する任意の2つの視点位置から観測したときには、各視点位置に応じた互いに視差のある例えば平面状の画像が観測される。これにより、観測者は回転部の周囲の任意の位置において、立体画像を認識することができる。
【0051】
図9乃至図11は、視点pから観察される発光点の軌跡例を示す説明図である。図9A乃至図9Dに示すように、円筒部31が等速で回転され、視点p=300に対して回転走査される場合、視点300から観測される発光素子が時間Tの間隔で発光素子201から順に発光素子202,203,・・・212と移って行く。
【0052】
発光点の軌跡(図中の黒小丸印)が例えば平面を成して見える構造は、アレイ型ディスプレイ101の発光面形状とスリット102の位置を調整することで実現される。例えば、図9Aに示す時刻t=0において、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0053】
図9Bに示す時刻t=Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図中の右側から第1番目の白抜きの小丸印は、発光素子201の発光点を示している。図9Cに示す時刻t=2Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図9Cにおける第2番目の小丸印は、発光素子202の発光点を示している。
【0054】
図9Dに示す時刻t=3Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図9Dにおける第3番目の小丸印は、発光素子203の発光点を示している。
【0055】
また、図10Aに示す時刻t=4Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図10Aにおける第4番目の小丸印は、発光素子204の発光点を示している。図10Bに示す時刻t=5Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。図10Bにおける第5番目の小丸印は、発光素子205の発光点を示している。
【0056】
図10Cに示す時刻t=6Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図10Cにおける第6番目の小丸印は、発光素子206の発光点を示している。図10Dに示す時刻t=7Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。図10Dにおける第7番目の小丸印は、発光素子207の発光点を示している。
【0057】
図11Aに示す時刻t=8Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図11Aにおける第8番目の小丸印は、発光素子208の発光点を示している。図11Bに示す時刻t=9Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。図11Bにおける第9番目の小丸印は、発光素子209の発光点を示している。
【0058】
図11Cに示す時刻t=10Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図11Cにおける第10番目の小丸印は、発光素子210の発光点を示している。図11Dに示す時刻t=11Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。図11Dにおける第11番目の小丸印は、発光素子211の発光点を示している。図11Dにおける第12番目の黒小丸印は、発光素子212の発光点を示している。
【0059】
続いて、複数の視点に対してスリット102を介して光線を出力する様子について説明する。図12乃至図16は、複数の視点pに対してスリット102を介して光線を出力する様子を説明する図である。この例では、アレイ型ディスプレイ101の全周囲(360°)に対して、6°置きに60箇所の視点p=300乃至359を設定した場合であって、円筒部31が任意の基準位置から30°回転する、時刻t=0乃至t=5T(1/12周)に至る区間の様子を示している。
【0060】
図12A,B、図13A,B及び図14A,Bに示すように発光素子201乃至発光素子212の数だけ、一度に複数の視点pに対して光線を出力する。この出力で、視点p=300だけでなく、別の視点p=349乃至359に対しても発光点の軌跡が平面を成して観測される。
【0061】
例えば、図12Aに示す時刻t=0において、視点300(pを省略する)でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。この例では、円筒部31を時計方向に回転し、視点300を基準にして角度6°ずつ視点をシフトした場合である。図12Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0062】
図12Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図12Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0063】
図12Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図12Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0064】
図12Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図12Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0065】
図12Aに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図12Aに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0066】
図12Aに示す視点300から角度60°だけ反時計方向に存在する視点350で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図12Aに示す視点300から角度66°だけ反時計方向に存在する視点349で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0067】
また、図12Bに示す時刻t=Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0068】
図12Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0069】
図12Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0070】
図12Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0071】
図12Bに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0072】
図12Bに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図12Bに示す視点300から角度60°だけ反時計方向に存在する視点350で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0073】
また、図13Aに示す時刻t=2Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0074】
図13Aに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0075】
図13Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0076】
図13Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0077】
図13Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0078】
図13Aに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図13Aに示す視点300から角度54°だけ反時計方向に存在する視点351で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0079】
また、図13Bに示す時刻t=3Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。
【0080】
図13Bに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0081】
図13Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0082】
図13Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0083】
図13Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0084】
図13Bに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図13Bに示す視点300から角度48°だけ反時計方向に存在する視点352で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0085】
更に、図14Aに示す時刻t=4Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。
【0086】
図14Aに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。
【0087】
図14Aに示す視点300から角度24°だけ時計方向に存在する他の視点304で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。
【0088】
図14Aに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0089】
図14Aに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0090】
図14Aに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図14Aに示す視点300から角度42°だけ反時計方向に存在する視点353で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0091】
また、図14Bに示す時刻t=5Tにおいて、視点300でスリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子206から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度6°だけ時計方向に存在する他の視点301で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子205から漏れ出る光が観測される。
【0092】
図14Bに示す視点300から角度12°だけ時計方向に存在する他の視点302で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子204から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度18°だけ時計方向に存在する他の視点303で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測される。
【0093】
図14Bに示す視点300から角度24°だけ時計方向に存在する他の視点304で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度30°だけ時計方向に存在する他の視点305で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。
【0094】
図14Bに示す視点300から角度6°だけ反時計方向に存在する他の視点359で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子207から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度12°だけ反時計方向に存在する視点358で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子208から漏れ出る光が観測される。
【0095】
図14Bに示す視点300から角度18°だけ反時計方向に存在する視点357で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子209から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度24°だけ反時計方向に存在する視点356で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0096】
図14Bに示す視点300から角度30°だけ反時計方向に存在する視点355で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。図14Bに示す視点300から角度36°だけ反時計方向に存在する視点354で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0097】
なお、時刻t=6T乃至11Tについても、同様に12個の発光素子201乃至発光素子212から漏れ出る光が1ずつシフトして観測される。この間、円筒部31は角度30°から60°へ至り回転する。従って、円筒部31が全周(1周)、すなわち、360°回転すると、12個の発光素子201乃至発光素子212による時刻t=0乃至59Tに係る発光が観測される。このようにして、視点300から角度6°を基準にして時計方向又は及び反時計方向に存在する他の視点で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察する。この結果、12個の発光素子201乃至発光素子212から漏れ出る光が1ずつシフトして観測できるようになる。
【0098】
このように、アレイ型ディスプレイ101による発光点の軌跡例によれば、全て(60箇所)の視点300乃至視点359で、時刻t=0乃至59Tの発光点の軌跡が平面を成して観測される。すなわち、円筒部31の回転に応じて異なるタイミングで発光素子201乃至発光素子212を発光させるように制御することで、視点300乃至視点359において任意の画像を観察させることが可能となる。
【0099】
3次元画像表示システム10においては、上述したように、アレイ型ディスプレイ101の各発光素子201乃至発光素子212から出射された光がスリット102より左右方向の放射角度が大きく制限される。すなわち、各発光素子201乃至発光素子212の光が各々違った方向に放射されるため、スリット102で規制される縦1ライン分の光線再生が可能となっている。
【0100】
また、3次元画像表示システム10においては、上述したように、視点300から時計方向又は及び反時計方向に存在する他の視点で、スリット102を介してアレイ型ディスプレイ101を観察する。この結果、12個の発光素子201乃至発光素子212から漏れ出る光が1ずつシフトして観測できるようになる。すなわち、円筒部31の周囲の各視点において観察させる画像を想定して、円筒部31の回転の角度に応じて各発光素子の発光が制御されるようになされている。
【0101】
これにより、全周囲立体映像表示装置30の周囲の各位置において、それぞれ異なる3次元画像を観察させることができるのである。
【0102】
3次元画像表示システム10の機能が適切に発揮されるようにするためには、各視点において、スリット102(または図1における円筒部31のスリット32)から漏れる光は、常に、発光素子201乃至発光素子212のうち、予め想定されたいずれかの発光素子とされるようにする必要がある。従って、アレイ型ディスプレイ101の発光素子201乃至発光素子212から出射された光について、常に、スリット102により左右方向の放射角度が適切に制限される必要がある。また、円筒部31の周囲の各視点において観察させる画像を事前に想定するためには、例えば、上述したベクトル201V乃至ベクトル212Vを正確に算出する必要がある。
【0103】
このため、円筒部31の回転軸103は、常に円筒部31が台座に対して垂直であるようにしなければならない。また、同様に、ライトハウジング41の側面のスリット42と、円筒部31に設けられたスリット32とが正確に平行になるように、ライトハウジング41について極めて高い精度で位置決めを行って円筒部31に固定しなければならない。
【0104】
例えば、円筒部31において軸ぶれが生じた場合、円筒部31が台座に対して垂直に固定されないため、発光素子201乃至発光素子212から出射された光の方向がベクトル201V乃至ベクトル212Vと一致しなくなる。
【0105】
しかしながら、例えば、ライトハウジング41の製造過程において寸法誤差が生じた場合、軸ぶれが生じることがある。また、図中では示されていないが、円筒部31の内部に配置される各部には、電気配線などが多く接続されており、円筒部31の内部において重量の偏りが生じることもある。円筒部31の内部において重量の偏りが生じた状態で、円筒部31を高速で回転させるとやはり軸ぶれが生じてしまう。
【0106】
そこで、本技術においては、次のようにして位置決めを正確に行い、また、軸ぶれを抑止できるようにする。
【0107】
図15は、本技術を適用した場合の円筒部31の内部の構成例を示す図である。
【0108】
同図に示されるように、円筒部31は、円形の上部フランジ31aおよび下部フランジ31b、並びに上部フランジ31aと下部フランジ31bを接続する軸部31cにより構成されており、軸部31cの周囲にライトハウジング41が取り付けられる。なお、この例では、図2乃至図5を参照して上述した場合と異なり、発光素子基板43が外部に露出しないように構成されたライトハウジング41が用いられている。
【0109】
同図に示されるように、ライトハウジング41は、取付ネジにより上部フランジ31aおよび下部フランジ31bに固定されるようになされている。なお、同図の例では、ライトハウジング41が上部フランジ31aにのみ固定されているように見えるが、実際には、下部フランジ31bにもネジ等によって固定されている。
【0110】
また、同図に示されるように、ライトハウジング41が取付ネジにより上部フランジ31aおよび下部フランジ31bに固定される際に、必要に応じてシム401が組み込まれるようになされている。
【0111】
例えば、図16に示されるように、円筒部31の内部の2つライトハウジングに寸法誤差が生じると軸ぶれが生じてしまう。設計上2つライトハウジングは同じ寸法で製造されるべきところ、図16の例では、製造過程における寸法誤差により、ライトハウジング41−1の図中垂直方向の長さが、ライトハウジング41−2の図中垂直方向の長さを超えている。
【0112】
このような状態でライトハウジング41−1とライトハウジング41−2を、取付ネジ421−1と取付ネジ421−2によって上部フランジ31aおよび下部フランジ31bに固定しようとすると、軸部31cが図中右側に傾いて軸ぶれが生じてしまう。
【0113】
そこで、図17に示されるように、ライトハウジング41−1と上部フランジ31aの間にシム401−1を挿入し、ライトハウジング41−2と上部フランジ31aの間にシム401−2を挿入する。同図の例では、シム401−1とシム401−2の厚みがそれぞれ異なるように構成されており、シム401−2の方がシム401−1より厚いシムとされている。そして、シム401−1とシム401−2がそれぞれ挿入された状態で、ライトハウジング41−1とライトハウジング41−2を、取付ネジ421−1と取付ネジ421−2によって上部フランジ31aおよび下部フランジ31bに固定する。
【0114】
このようにシム401−1とシム401−2を挿入することにより、軸部31cが傾くことを抑止することができ、軸ぶれを防止することができる。
【0115】
なお、ここでは、ライトハウジング41−1、または、ライトハウジング41−2と上部フランジ31aの間にシムを挿入する例について説明したが、ライトハウジング41−1、または、ライトハウジング41−2と下部フランジ31bの間にシムが挿入されるようにしてもよい。
【0116】
また、図18に示されるように、シム401−1とシム401−2を挿入して、ライトハウジング41−1とライトハウジング41−2を固定した後、さらに、調整ネジ431−1と調整ネジ431−2を用いた調整が行なわれるようにするとよい。調整ネジ431−1と調整ネジ431−2には、例えば、取付ネジとは逆方向の螺旋状の溝が設けられており、調整ネジを回転させることにより、ライトハウジング41−1の図中右側とライトハウジング41−2の図中左側がそれぞれ下方向に押されることになる。
【0117】
このようにすることで、ライトハウジング41−1とライトハウジング41−2がより安定した状態で固定されるようにすることができ、その結果、軸ぶれ防止効果をさらに高めることができる。
【0118】
なお、上記では、調整ネジ431−1と調整ネジ431−2には、取付ネジとは逆方向の螺旋状の溝が設けられると説明したが、必ずしも逆方向の螺旋状の溝を設ける必要はない。例えば、上部フランジ31aの一部にネジ穴の構成を変えるようにし、調整ネジをネジ穴にいれて回転させることにより、ライトハウジング41−1の図中右側とライトハウジング41−2の図中左側がそれぞれ下方向に押されるようにしてもよい。
【0119】
すなわち、取付ネジ421−1および取付ネジ421−2によって、ライトハウジング41−1およびライトハウジング41−2の上側の端面が、シム401−1およびシム401−2を介して上部フランジ31aに固定されるようにすればよい。そして、調整ネジ431−1および調整ネジ431−2によって、ライトハウジング41−1およびライトハウジング41−2の下側の端面が下部フランジ31bに密着させられるようにすればよい。
【0120】
また、上述したように、円筒部31の内部に配置される各部には、電気配線などが多く接続されており、円筒部31の内部において重量の偏りが生じることもある。円筒部31の内部において重量の偏りが生じた状態で、円筒部31を高速で回転させるとやはり軸ぶれが生じてしまう。
【0121】
そこで、図19に示されるように、上部フランジ31aおよび下部フランジ31bに回転バランス用ネジを取り付ける。同図の例では、円形の上部フランジ31aおよび下部フランジ31bにおいて、ほぼ外周に近い位置(円の中心から遠い位置)に複数の回転バランス用ネジが取り付けられている。このように、回転バランス用ネジが取り付けられることにより、円筒部31の内部における重量の偏りが是正されることになる。
【0122】
なお、同図には、回転バランス用ネジの頭部のみが描画されており、円形の上部フランジ31aおよび下部フランジ31bのほぼ外周に沿うように配置された複数の円として回転バランス用ネジが示されている。また、図中では便宜上、上部フランジ31aに取り付けられた回転バランス用ネジ451−1および回転バランス用ネジ451−2のみに符号が付されているが、上部フランジ31aの外周付近に示される他の円のそれぞれも回転バランス用ネジとされる。また、図中では便宜上、下部フランジ31bに取り付けられた回転バランス用ネジ451−101および回転バランス用ネジ451−102のみに符号が付されているが、下部フランジ31bの外周付近に示される他の円のそれぞれも回転バランス用ネジとされる。回転バランス用ネジを個々に区別する必要がない場合、適宜、回転バランス用ネジ451と称することにする。
【0123】
図19の例では、上部フランジ31aおよび下部フランジ31bの外周付近に均等な間隔で回転バランス用ネジ451が取り付けられているが、実際には、円筒部31の内部における重量の偏りに応じて回転バランス用ネジ451が取り付けられる。従って、図19では、回転バランス用ネジ451が取り付けられている位置であっても、実際には、回転バランス用ネジ451が取り付けられない位置が存在することになる。すなわち、回転バランス用ネジ451は、円筒部31の内部における重量の偏りが是正するための重りとして取り付けられる。
【0124】
このようにすることで、円筒部31の内部において重量の偏りの発生を抑止することができ、軸ぶれを防止することができる。
【0125】
このように、本技術によれば、軸部31が傾くことを抑止することができるので、軸ぶれを防止することができる。また、円筒部31の内部において重量の偏りの発生を抑止することができるので軸ぶれを防止することができる。その結果、アレイ型ディスプレイ101の発光素子201乃至発光素子212から出射された光について、常に、スリット102により左右方向の放射角度が適切に制限されるようにすることができる。これにより、事前に想定した通りの画像を、円筒部31の周囲の各視点において観察させることができる。
【0126】
従って、本技術によれば、簡単な構成で、より美しい立体画像を全周囲から再現性良く視認させることができる。
【0127】
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0128】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0129】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0130】
(1) 内部に回転軸を有し、前記回転軸の上下に円形のフランジを有する円筒状の回転部と、
前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、
曲面形状に形成された凹面側が発光面とされ、前記発光面に複数の表示素子が配設されることにより形成された表示素子アレイと、
前記表示素子アレイを内蔵して前記回転部のフランジに固定される複数のハウジングと、
前記ハウジングと前記フランジとの間に挿入され、個々の前記ハウジングの寸法誤差に応じた厚みを有するシムと、
前記発光面に対向する位置において、前記回転部の周面に設けられたスリットと
を備え、
前記複数の表示素子は、
前記発光面の方向に応じた光を、前記スリットを介して前記回転部の外部に放射する
画像表示装置。
(2) 前記ハウジングは、
前記ハウジングの一方の端面を、前記シムを介して一方の前記フランジに固定するための取付ネジと、前記ハウジングの他方の端面を他方の前記フランジに密着させるための調整ネジにより固定される
(1)に記載の画像表示装置。
(3) 前記フランジには、
前記回転部の内部における重量の偏りを是正する重りとして、回転バランス用ネジが取り付けられる
(1)または(2)に記載の画像表示装置。
(4) 前記スリットは、前記回転軸に平行な方向に設けられている
(1)乃至(3)のいずれかに記載の画像表示装置。
(5) 立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備える
(1)乃至(4)のいずれかに記載の画像表示装置。
(6) 立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、m行×n列(m,n=2以上の整数)のマトリクス状に配設され、
前記表示素子アレイの行方向に配列されるm個の表示素子がそれぞれ、前記回転部の回転に応じて異なるタイミングで発光を開始するような発光制御を行う
(1)乃至(5)のいずれかに記載の画像表示装置。
【符号の説明】
【0131】
10 3次元画像表示システム, 30 全周囲立体映像表示装置, 31 円筒部, 31a 上部フランジ, 31b 下部フランジ, 31c 軸部, 32 スリット, 40 表示部, 41 ライトハウジング, 42 スリット, 43 発光素子基板, 51 アタッチメント, 52 LED面, 401−1,401−2 シム, 421−1, 421−2 取付ネジ, 431−1,431−2 調整ネジ, 451 回転バランス用ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回転軸を有し、前記回転軸の上下に円形のフランジを有する円筒状の回転部と、
前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、
曲面形状に形成された凹面側が発光面とされ、前記発光面に複数の表示素子が配設されることにより形成された表示素子アレイと、
前記表示素子アレイを内蔵して前記回転部のフランジに固定される複数のハウジングと、
前記ハウジングと前記フランジとの間に挿入され、個々の前記ハウジングの寸法誤差に応じた厚みを有するシムと、
前記発光面に対向する位置において、前記回転部の周面に設けられたスリットと
を備え、
前記複数の表示素子は、
前記発光面の方向に応じた光を、前記スリットを介して前記回転部の外部に放射する
画像表示装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記ハウジングの一方の端面を、前記シムを介して一方の前記フランジに固定するための取付ネジと、前記ハウジングの他方の端面を他方の前記フランジに密着させるための調整ネジにより固定される
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記フランジには、
前記回転部の内部における重量の偏りを是正する重りとして、回転バランス用ネジが取り付けられる
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記スリットは、前記回転軸に平行な方向に設けられている
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備える
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
立体画像用の映像情報に基づいて、前記複数の表示素子の発光制御を行う表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、m行×n列(m,n=2以上の整数)のマトリクス状に配設され、
前記表示素子アレイの行方向に配列されるm個の表示素子がそれぞれ、前記回転部の回転に応じて異なるタイミングで発光を開始するような発光制御を行う
請求項1に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−20068(P2013−20068A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152907(P2011−152907)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】