立体造形装置
【課題】粉末材料をローラで平坦化する場合に、粉末材料がステージ上の平坦化領域などに飛散するのを防止して、寸法精度の高い立体造形物を形成できる立体造形装置を提供する。
【解決手段】粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、ローラに対向して設けられて、ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、平坦化部をステージに対して相対的に移動させて粉末材料を平坦化する移動機構を備え、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときに、ステージに供給された粉末材料は、平坦化部により平坦化された平坦化領域と、平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、粉末除去板は、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときの未平坦化領域側であって、かつ、ローラの回転中心以下の位置でローラに接することを特徴とする。
【解決手段】粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、ローラに対向して設けられて、ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、平坦化部をステージに対して相対的に移動させて粉末材料を平坦化する移動機構を備え、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときに、ステージに供給された粉末材料は、平坦化部により平坦化された平坦化領域と、平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、粉末除去板は、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときの未平坦化領域側であって、かつ、ローラの回転中心以下の位置でローラに接することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料に対して造形液を吐出することにより立体造形物を形成する立体造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末材料に造形液を供給することで立体造形物を形成する種々の立体造形装置が提案されている。例えば、特許文献1の立体造形装置は、ステージ上に供給された粉末材料を伸展ローラによりステージ上に拡散させて、粉末材料の堆積面を平坦化する。
【0003】
そして、平坦化された粉末材料に対してプリントヘッドから結合剤溶液が吐出されて、粉末材料の所定の領域に吐出される。結合剤溶液が粉末材料に吐出されることで、粉末材料の粒子同士が結合される。この層の上にさらに粉末材料が供給されて、堆積された粉末材料の平坦化、結合剤溶液の吐出が繰り返されることで、立体造形物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−334581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、ステージ上に供給された粉末材料を伸展ローラにより平坦化する場合に、伸展ローラに集積した粉末材料が、平坦化された粉末材料の平坦化領域に飛散することがあった。平坦化領域の表面に余計な粉末が付着すると、立体造形物の寸法精度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、ステージに供給された粉末材料をローラで平坦化する場合に、ローラに付着した粉末材料がステージ上の平坦化領域などに飛散するのを防止して、寸法精度の高い立体造形物を形成できる立体造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の立体造形装置は粉末材料に対して造型液を滴下することで、立体造形物を形成する立体造形装置であって、前記粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、前記粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、前記ローラに対向して設けられて、前記ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、前記平坦化部を前記ステージに対して相対的に移動させて前記粉末材料を平坦化する移動機構を備え、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記ステージに供給された粉末材料は、前記平坦化部により平坦化された平坦化領域と、前記平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、前記粉末除去板は、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときの前記未平坦化領域側であって、かつ、前記ローラの回転中心以下の位置で前記ローラに接することを特徴とする。
【0008】
第2発明の立体造形装置は、上記第1発明の構成に加えて、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記粉末供給部は前記平坦化部と共に前記ステージに対して相対移動し、前記粉末供給部は前記ローラよりも前記平坦化領域から遠い側に配置されることを特徴とする。
【0009】
第3発明の立体造形装置は、上記第2発明に加えて、前記粉末除去板は前記ローラに対向する側とは反対側において、前記粉末供給部に固定されることを特徴とする。
【0010】
第4発明の立体造形装置は、上記第1ないし第3発明のいずれかにおいて、前記移動機構は、前記ステージを移動させることで、前記平坦化部を前記ステージに対して相対移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の立体造形装置によれば、粉末除去板は、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときの未平坦化領域側であって、かつ、ローラの回転中心以下の位置でローラに接する。そのため、ステージに供給された粉末材料をローラで平坦化する場合に、ローラに付着した粉末材料がステージ上の平坦化領域などに飛散するのを防止して、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0012】
第2発明の立体造形装置によれば、第1発明の効果に加え、平坦化部が粉末材料を平坦化するときに、粉末供給部は平坦化部と共にステージに対して相対移動し、粉末供給部はローラよりも平坦化領域から遠い側に配置される。そのため、平坦化領域に粉末材料が飛散するのをより効果的に防止することができ、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0013】
第3発明の立体造形装置によれば、第2発明に加え、粉末除去板はローラに対向する側とは反対側において、粉末供給部に固定されるため、ローラと粉末供給部との間に粉末除去板を隙間無く配置することができる。そのため、平坦化領域に粉末材料が飛散するのをさらに確実に防止することができ、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0014】
第4発明の立体造形装置によれば、第1発明ないし第3発明のいずれかに加え、移動機構はステージを移動させることで、平坦化部をステージに対して相対移動させるため、平坦化部に付着した粉末材料が平坦化部を移動することによる振動などで飛散して、平坦化領域の表面を荒らすことを防止できる。これにより、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の立体造形装置を示す外観図である。
【図2】図1の立体造形装置の正面視における概略構成を示す図である。
【図3】図1の立体造形装置の側面視における内部の概略構成を示す図である。
【図4】ステージを拡大して示す概略斜視図である。
【図5】ヘッドを拡大して示す概略斜視図である。
【図6】ローラと粉末供給部を拡大して示す概略斜視図である。
【図7】(A)本実施形態のローラとブレードを拡大して示す概略構成図、(B)従来例のローラとブレードを拡大して示す概略構成図である。
【図8】立体造形装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】立体造形装置の動作制御を示すフローチャートである。
【図10】図9の構造形成処理を示すフローチャートである。
【図11】図9の吐出処理を示すフローチャートである。
【図12】立体造形装置の動作を模式的に示す図である。
【図13】立体造形装置の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1〜図7を用いて、本発明の好ましい実施形態を示す。図1に示すように、本実施形態の立体造形装置1は、例えば、ネットワーク300を介してパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)200で作成された立体造形印刷用の座標データ、色データ等を受信する。立体造形装置1は、受信した座標データ、色データに基づいて、ステージ5上の粉末材料にインクジェットヘッド21から造型液を吐出して立体造形物を作成する。以下、各構成について説明する。
【0017】
立体造形装置1は、X軸方向を長手方向とする略直方体形状の筐体2を有し、その底面の略中央に、Y軸方向(筐体2の前後方向)に伸びる2本のレール3が列設されている(図3参照)。2本のレ−ル3は、図1の筐体2のY軸負側(筐体2の前側)に設けられた支持部31と図示しないY軸正側の支持部にそれぞれ支持されている。レール3はステージ支持台12の貫通孔14(図4参照)に挿通されており、ステージ支持台12はこのレール3に沿ってY軸方向に移動可能である。
【0018】
図3において、レール3のY軸正方向(図1の筐体2後方)の端部には図8のステージ駆動モータ57が設けられる。図4のステージ支持台12は、ステージ駆動モータ57の駆動によってキャリッジベルトを介してレール3に沿ってY軸方向に往復移動されるようになっている。これによりステージ支持台12の上部に固定されたステージ5がY軸方向へ移動する。
【0019】
図1及び図4のステージ5は箱型形状であり、その中央部は直方体形状の空洞部56を有している。また、ステージ支持台12の中央には、空洞部56に連通する円柱状の空洞部13が形成されている。ステージ5のY軸正方向(筐体2の後方)にはローラ8によって移動された余剰分の粉末を回収するための図3及び図4の粉末回収口87が設けられる。粉末回収口87に投入された粉末材料は、回収路89を通って粉末回収部85へ回収される(図2参照)。
【0020】
粉末回収部85に回収された粉末材料はユーザによって、粉末供給部7へ投入される。また、図示しない吸引機構などにより、粉末供給部7へ自動的に再投入されるようにしてもよい。
【0021】
昇降板51はステージ5の空洞部56内をZ軸方向へ移動可能に設けられる。昇降板51はステージ5上面と同じ位置から成形する立体造形物のZ座標の範囲を移動する。昇降板51の下面の中央には昇降板51を支持するためのボールねじ54が設けられる。昇降板51は図8の昇降板モータ53の駆動によりボールねじ54が回転することで、空洞部56の内部をZ軸方向に移動する。なお、ボールねじ54は図8の昇降板モータ53を介して、ステージ5の空洞部56に図示しない支持部材によりベアリングを介して設けられる。
【0022】
また、図2に示すように、筐体2のY軸方向の略中央で、かつ、ステージ5の上方には、インクジェットヘッド21のX軸方向への移動を案内するためのガイドレール9が架設されている。このガイドレール9のX軸負側(筐体2の左側)の端部付近に設けられたヘッドモータ24(図8参照)と、X軸正側(筐体2の右側)の端部付近に設けられた図示しないプーリーとの間にキャリッジベルトが筐体2のX軸方向にわたって架設されている。
【0023】
キャリッジベルトは図8のヘッドモータ24を介して駆動し、これによりインクジェットヘッド21が筐体2のX軸方向に往復移動されるようになっている。
【0024】
また、立体造形装置1は、カラーの立体造形物を作成可能であり、立体造形用のシアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ブラックインク、クリアインクが用いられている。図2のように、立体造形装置1のフレーム22内のX軸負側には、各インクを収容したインク収容部30がそれぞれ設けられている。
【0025】
図2において、インク収容部30は、インク供給用チューブ10を介して、各色のインクジェットヘッド21に接続されている。尚、このインク供給用チューブ10は、ポリエチレン等からなる可撓性のチューブであり、立体造形装置1において、インクジェットヘッド21の移動等に対応して屈曲や捩れが生じるような柔軟性を有する。
【0026】
インクジェットヘッド21は、図5において各インクを噴射するための、噴射チャンネル(図示外)をそれぞれ備えている。各噴射チャンネルには、各々個別に駆動される圧電アクチュエータが設けられ、各噴射チャンネルに対応してインクジェットヘッド21の底面に孔設された微細な噴射ノズルから下向きに、インクの液滴が噴射されるように制御されている。
【0027】
また、インクジェットヘッド21がガイドレール9の左端(X軸負側)の退避位置に移動した位置には、各インクジェットヘッド21のノズル面に対して密着・離脱が可能な吸引キャップを有するヘッド吸引機構23が設けられている。
【0028】
ヘッド吸引機構23は、図示外の吸引ポンプとキャップを有する。ヘッド吸引機構23は、図示外の昇降機構によってZ軸方向に昇降可能に構成される。インクジェットヘッド21が、ヘッド吸引機構23の上側に移動されると、ヘッド吸引機構23はZ軸正方向に上昇する。
【0029】
上昇したヘッド吸引機構23は、インクジェットヘッド21面に密着し、インクジェットヘッド21の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引を行う。各吸引キャップがインクジェットヘッド21に密着しているときに、ポンプに接続された吸引キャップを介してインクの吸引を行うことが可能となっている。また、印刷が行われないときには、吸引キャップでインクジェットヘッド21のノズル面が覆われ、インクの乾燥が防止される。
【0030】
図1〜3、図6の粉末供給部7は立体造形に用いる粉末材料を収容するための箱形状の容器であって、ステージ5の上方であって筐体2のX軸正側(筐体2の右側)に設けられる粉末回収部85の壁面に図示しない固定部材によって支持されている。粉末供給部7の上方の開放された投入口により、ユーザによって粉末材料が投入される。
【0031】
粉末供給部7は、ステージ5上のX軸方向に線上に伸びる全領域に粉末材料を供給可能なように、粉末供給部7の下部に開口部71を備えている(図6参照)。そのため、この開口部71は、ステージ5のX軸方向に延びてステージのX軸方向の長さとほぼ同じ長さを有する。
【0032】
図6において、粉末供給部7の開口部71は図示しないシャッタ部材を有している。ステージ5上へ粉末供給を開始するときには、図8のシャッタモータ72を介してシャッタ部材が移動して開口部71が開放される。これにより、ステージ5上へ所定量の粉末材料が投下される。そして、ステージ5上への粉末供給が終わると、シャッタモータ72によりシャッタ部材が開口部71を閉鎖する。
【0033】
ローラ8は、ステージ5上に供給された粉末材料を平坦化するために設けられる。図3及び図6に示すように、ローラ8は回転軸81に接続されたローラモータ83(図8参照)により図6の矢印B方向(反時計回り)へ回転する。ローラは回転軸81が回転可能なように、図示しないベアリングなどを介して固定部材によりX軸正側に設けられた粉末回収部85の壁部に固定されている(図1、図2参照)。
【0034】
図6に示すように、ブレード82はローラ8に付着した粉末材料を除去するために設けられ、平板状である。ローラ8に対向するブレード82の先端部はローラ8の表面に押圧するように接している。
【0035】
ブレード82がローラ8に接する位置は回転中心C以下の位置L2である。なお、図中の直線L1は回転中心CのZ軸方向の位置、直線L2はブレードがローラに接する接線である。
【0036】
仮に、図7(B)の従来例に示すように、ブレード282の先端部がローラ208の回転中心よりもZ軸正方向へ高い位置L3に配置されていた場合、ローラ208に付着した粉末材料はブレード282により掻き集められて再びローラ208の表面上へ堆積してしまう。ローラ208上へ集積した粉末材料はブレード282とローラ208との間に次々に集積してゆく。
【0037】
そのため、ローラ208の端部やブレード282を乗り越えて、ステージ251の粉末材料が平坦化された平坦化領域M1に落下するおそれがある。つまり、ローラ208で平坦化しても平坦化領域M1が不均一になるおそれがある。
【0038】
それに対して、図7(A)に示す本実施例では、ブレード82がローラ8に接する位置は回転中心以下の位置L2となっている。これにより、ブレード82で除去された粉末材料はステージ51上の未平坦化領域M2へ落下するので、ローラ8の表面で粉末材料が堆積することを防止することができる。すなわち、平坦化領域M1に余分な粉末材料が飛散するのを防止できるので、立体造形物の成形性を向上させることができる。なお、図7(A)のローラ8及び図7(B)のローラ208は、ともに矢印B方向(反時計回り)に回転する。
【0039】
また、図6に示すように、ブレード82はローラ8に対向する側の反対側が粉末供給部7に固定部84により固定される。このとき、ブレード82が粉末供給部7に固定される位置は、開口部71よりも平坦化領域に近い側に配置される。
【0040】
すなわち、ブレード82はローラ8と粉末供給部7との間に隙間無く連結されている。そのため、ローラ8で粉末材料を平坦化するときに、粉末材料が飛散しても、ブレード82によって平坦化領域M1に粉末材料が飛散するのを遮ることができる。
【0041】
また、図12(C)のように、インクジェットヘッド21側へ粉末材料が飛散して、インクジェットヘッド21に粉末材料が付着して吐出口を詰まらせたりすることを防止することができる。なお、ブレード82は導電性材料からなることが望ましい。静電気によりブレード82に粉末材料が付着することを低減するためである。なお、ブレード82は本発明の粉末除去板に相当する。また、ブレード82とローラ8が本発明の平坦化部に相当する。
【0042】
そして、図1に示すように、筐体2のX軸正側のフレーム部22の正面には、立体造形装置1の操作を行うための操作パネル28が設けられている。操作パネル28には、各種のランプ、ディスプレイが設けられている。また、操作パネル28には、操作指示のための各種のボタンが設けられている。
【0043】
次に、図8を用いて、本実施形態の立体造形装置1の電気的構成を説明する。立体造形装置1には、立体造形装置1の主制御を司るCPU110が設けられており、CPU110には、バス190を介し、ROM120、フラッシュRAM130が接続されている。制御部40はCPU110、ROM120、フラッシュRAM130を有している。
【0044】
CPU110は、フラッシュRAM130及びROM120と協動して、各種演算、処理を行う。ROM120は、立体造形装置1の動作を制御するための制御プログラム、印刷処理を実行するための印刷実行プログラム等を記憶している。フラッシュRAM130には、PC200から通信制御部160を介して受信した座標データが記憶される。座標データには座標データに関連付けられた色データも含まれる。
【0045】
またCPU110には、バス190を介して、ヘッド駆動部140と、モータ駆動部150と、通信制御部160とが接続されている。
【0046】
ヘッド駆動部140は、インク噴射を行うインクジェットヘッド21の各噴射チャンネルに設けられた圧電アクチュエータ(図示外)を駆動させる。ヘッド駆動部140は、CPU110からの吐出信号と色データとに従って、造形液の吐出タイミングと吐出すべき造形液の色を決定する。
【0047】
決定された造形液の色は、色選択信号としてインクジェットヘッド21に供給される。インクジェットヘッド21は、色選択信号に従って、各色のヘッドのうち、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0048】
モータ駆動部150は、ヘッドモータ24、ステージ駆動モータ57、昇降板モータ53、ローラモータ83、シャッタモータ72をそれぞれ制御して駆動させる。
【0049】
ヘッドモータ24は、インクジェットヘッド21を搭載したキャリッジ(図示外)を駆動する。これによりインクジェットヘッド21がX軸方向へ移動する(図1及び図2参照)。
【0050】
ステージ駆動モータ57は、粉末材料が載置されたステージ5を送り出すタイミングや速度を調整するステージローラ(図示外)を駆動する。これによりステージ5がY軸方向へ移動する(図3参照)。なお、ステージ駆動モータ57及びモータ駆動部150が本発明の移動機構に相当する。
【0051】
昇降板モータ53は、昇降板51を支持するボールねじ54を回転させることで、昇降板51をZ軸方向に移動させる(図1参照)。
【0052】
ローラモータ83は、ローラ8の回転軸81を回転させることで、ローラ8を所定の方向に回転させる。ここでは、ローラモータ83の駆動により、ローラ8が図6の矢印B方向(反時計回り)へ回転する。
【0053】
シャッタモータ72は粉末供給部7の図6の開口部71を塞ぐシャッタ(図示外)を移動させる。シャッタが移動することにより、粉末供給部7の開口部71が開放されたり塞がれたりする。開口部71が開放されると粉末供給部7内の粉末材料がステージ5へ投下される。
【0054】
これらのモータは、エンコーダを内蔵するステッピングモータ等であり、移動量、原点位置、回転速度等を検出可能である。検出されたこれらの移動量、原点位置、回転速度等のデータはバス190を介してCPU110に送信される。CPU110は送信されたこれらのデータに基づいてモータ駆動部150に駆動のための信号を送信する。
【0055】
さらに、CPU110には、バス190を介して、通信制御部160、操作パネル28、ヘッド吸引機構23が接続されている。
【0056】
通信制御部160は、立体造形装置1と外部との通信を行う。外部装置であるPC200から、この通信制御部160を介して必要な印刷データを受信してフラッシュRAM130に記憶する。
【0057】
操作パネル28は立体造形装置1の起動、停止、印刷開始等の操作をユーザから受け付けるための様々な入力ボタンを有する。操作パネル28に対して入力されたユーザからの操作は、操作信号としてCPU110に送信される(図1参照)。
【0058】
ヘッド吸引機構23は、CPU110からの信号に従い、Z軸方向への昇降、図5のインクジェットヘッド21へのキャップの装着、及びインクジェットヘッド21の吸引を行う。
【0059】
次に、図9〜図11を用いて、立体造形装置1の動作制御について説明する。
【0060】
図9に示す処理では、まず、制御部40に電源ONの指令が供給され、立体造形装置1の駆動が開始される。立体造形装置1の駆動が開始されると、ステップS0(以下、S0とする)で初期化処理が行われる。具体的には、ヘッド吸引機構23により、インクジェットヘッド21の下面の複数の吐出口に造形液が達するまで吸引が行われる(図1参照)。この吸引により、インクジェットヘッド21が吐出可能な状態となる。
【0061】
また、図1に示す昇降板51をステージ5表面と同じ位置から初期設定として予め定められるZ座標分だけ、図8のモータ駆動部150、昇降板モータ53を介して昇降板51をZ軸負方向に移動させる。このときZ負方向へ移動するZ座標は、立体造形物の1層目の厚さに対応する。一例として、約100μm程度である。
【0062】
初期化処理が行われると、S1では、PC200からの座標データの受信があったか否かが判断される。座標データを受信すると、フラッシュRAM130に座標データを記憶する(S2)。座標データを受信していないと判定されると(S1:No)、ユーザにより立体造形物に関するデータがPC200、及びバス190を介して制御部40に供給されていないため、ループ待機する。
【0063】
一方、フラッシュRAM130に座標データを記憶すると、処理が次のS3に移る。最初にS2からS3に処理が移るとき、フラッシュRAM130により記憶されている座標データのZ座標のうち、最小のZ座標を有する座標データが現在の座標位置Zとして指定される。
【0064】
次に、S3で構造形成処理が行われる。この構造形成処理により、ステージ5上にある座標位置Zにおける少なくとも1層分の粉末材料が供給される。また、ステージ5に供給された粉末材料が平坦化される。
【0065】
S4では、吐出処理が行われる。この吐出処理により、ステージ5に供給された粉末材料に造形液が吐出される。造形液の吐出により、粉末材料が造型液に溶解して互いに結合される。粉末材料が結合されることで、造形される立体造形物のうちの1層の造形がなされる。また、2層以上積層させる場合には、下層との結合造形もなされる。なお、着色された造形液の場合は、S4において、造形と同時に立体造形物の着色がなされる。
【0066】
S5は、造形が終了したか否かが判定される。造形終了でないと判定されると(S5:No)、処理がS6に移る。処理がS6に移ると、現在の座標位置Zを、フラッシュRAM130に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更する。そして、その座標位置に対応させてモータ駆動部150、昇降板モータ53を介して昇降板51をZ軸負方向に移動させる。そして、S5の構造形成処理に移る。
【0067】
一方、S5において、造形終了と判定されると(S5:Yes)、このフローが終了する。具体的には、制御部40に電源OFFの指令が供給されたか、またはフラッシュRAM42に記憶されている全ての座標位置Zに対する処理が完了したときに、造形終了と判定される。
【0068】
次に、図10を用いて、図9に示す動作制御におけるS3の構造形成処理について具体的に説明する。図10に示す構造形成処理では、まず、S31で現在の座標位置ZにおけるデータがフラッシュRAM130から読み出される。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0069】
S32では、粉末供給処理が行われる。図6のように、粉末供給部7の開口部71はシャッタが移動することにより開放されて、ステージ5の一端部にX軸方向に線状に供給される。ここで、供給される粉末材料の量は、現在の座標位置Zにおけるステージ5上の成形領域の全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給される量に調整される。
【0070】
そして、ローラモータ83を駆動させることにより、ローラ8を回転させる(図1、8参照)。ローラ8の回転数は、一例として5rpm/s程度である。
【0071】
S33では、粉末材料を平坦化するために、ステージ5をY軸方向へ移動制御を行う。具体的には、図8のモータ駆動部150、ステージ駆動モータ57の駆動により、ステージ5がY軸負方向へ移動する。これにより、ローラ8はステージ5の一端部から他端部へY軸方向へ相対的に水平移動することになる。一例として、ステージ5の移動速度は概ね50〜300mm/s程度である。
【0072】
S33の処理が行われると、図10に示す構造形成処理が完了し、図9に示すS4の吐出処理に移る。
【0073】
続いて、図11を用いて、図9に示す動作制御におけるS4の吐出処理について具体的に説明する。図11に示す吐出処理では、まずS41で、現在の座標位置ZにおけるデータがフラッシュRAM130から読み出される。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0074】
データが読み出されると、S42では、図1のインクジェットヘッド21を図8のモータ駆動部150、ヘッドモータ24を介して、X軸方向に所定の距離だけ移動して、初期位置へ移動させる。
【0075】
S43では、所定の座標に対して、制御部40からの吐出信号に基づいてインクジェットヘッド21による造形液の吐出を行う。それと共に、インクジェットヘッド21をヘッドモータ24を介してX軸方向に移動させる。これらは、フラッシュRAM130に記憶された立体造形物の位置座標データに応じて、移動及び吐出が行われる。
【0076】
また、ステージ駆動モータ57を駆動させて、ステージ5をY軸正方向へ移動させる(図1、8参照)。すなわち、インクジェットヘッド21のX軸方向の往復移動が1ラインずつ行われ、インクジェットヘッド21のX軸方向往復移動が1ライン完了すると、Y軸正方向のあらかじめ定められた次のラインまでステージ5が移動される。このようにして、インクジェットヘッド21は、初期位置からY軸正方向に向けて、X軸方向に1ラインずつ相対的に移動される。
【0077】
S43の処理により、現在の座標位置Zに対応した立体造形物の1層の全ラインに対する吐出が為される。現在の座標位置Zにおける吐出処理が終了すると、処理が、図9に示すS5に移る。
【0078】
次に、立体造形装置1のローラ8と粉末供給部7に対するステージ5の移動について、模式的に示す図12及び図13を用いて説明する。
【0079】
図12(A)において、まず図8の昇降板モータ53が駆動されることにより、昇降板51がステージ5表面と同じ位置からZ軸負方向(矢印A方向)へ所定のZ座標の位置まで降下する。図12(A)の位置がステージ5の初期位置である。
【0080】
次に、図12(B)において、シャッタモータ72が駆動されて開口部71が開放されることにより(図6、8参照)、粉末供給部7から粉末材料がステージ5上へ供給される。粉末材料をステージ5上へ供給した後、ローラ8の矢印B方向への回転が開始される。また、ステージ5のY軸負方向(矢印C方向)への移動が開始される。
【0081】
図12(C)において、ステージ5がさらにY軸負方向(矢印C方向)へ移動すると、ローラ8によりステージ5上の粉末材料が平坦化される。ステージ5上の粉末材料のうち、ローラ8によって平坦化された領域である平坦化領域M1が形成される。平坦化領域M1は、ローラ8に対してステージ5が移動する側であるY軸負側に形成される。ローラ8に対してY軸正側のステージ5上には、まだ平坦化されていない粉末材料が堆積しており、この領域が未平坦化領域M2である。
【0082】
また、ローラ8と粉末供給部7はその配置が固定されており、ステージ5が移動することで、ローラ8と粉末供給部7が共にステージ5に対して相対移動する。仮に、粉末供給部7がステージ5と共に移動すると、粉末供給部7が平坦化領域M1の上方に配置される場合がある。
【0083】
このような場合には、粉末供給部7の開口部71等(図6参照)に付着した飛散粉末が平坦化領域M1に落下して、平坦化領域M1の表面を不均一にして荒らす可能性がある。
【0084】
本実施形態のように、ローラ8と粉末供給部7が共にステージ5に対して相対移動することで、粉末供給部7は常に未平坦化領域M2上に配置される。これにより、平坦化領域M1の表面へ粉末供給部に付着した余分な粉末等が飛散することを低減することができる。そのため、立体造形物の成形性や寸法精度が向上する。
【0085】
そして、図13(D)において、ステージ5がさらにY軸負方向(矢印C方向)へ移動するにつれて、ステージ5上の粉末材料が平坦化され、平坦化領域M1がさらに形成されていく。図13(E)のように、さらにステージ5がY軸負方向へ移動すると、余剰分の粉末材料は図示外の粉末回収口へ落下する。
【0086】
このように、座標データにより定められる昇降板51上の所定の領域全てにインクジェットヘッド21から造型液が吐出されると、1層目の形成が終了する。ステージ5はY軸正方向へ移動して原点位置まで移動すると、一連の動作が繰り返されて積層されて立体造形物が形成される。
【0087】
以上説明した実施形態では、ステージ5がY軸方向へ移動することで、ローラ8と粉末供給部7がステージ5に対して相対移動したがこれに限定されない。ステージ5の配置が固定されて、ローラ8と粉末供給部7が共に移動するようにしてもよい。
【0088】
加えて、ブレード82が粉末供給部7に固定されて、ローラ8と粉末供給部7との間に隙間が無いように設けられてされていたが、ブレード82と粉末供給部7は固定されていなくてもよい。ブレード82を支持固定する支持部材が別に設けられていてもよい。
【0089】
また、余分な粉末材料がローラ8に付着するのを低減するため、ローラ8を加熱する加熱部を設けてもよい。造型液が付着した下層の粉末が仮にローラ8に付着した場合に、加熱により造型液を蒸発させてローラとブレードの間に粉末材料が集積していくのを防止することができる。これにより、ローラとブレードの間に粉末材料が集積して、平坦化領域に粉末が落下して立体造形物の寸法精度が悪くなるのを防止することができる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 立体造形装置
5 ステージ
7 粉末供給部
8 ローラ
82 ブレード
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料に対して造形液を吐出することにより立体造形物を形成する立体造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末材料に造形液を供給することで立体造形物を形成する種々の立体造形装置が提案されている。例えば、特許文献1の立体造形装置は、ステージ上に供給された粉末材料を伸展ローラによりステージ上に拡散させて、粉末材料の堆積面を平坦化する。
【0003】
そして、平坦化された粉末材料に対してプリントヘッドから結合剤溶液が吐出されて、粉末材料の所定の領域に吐出される。結合剤溶液が粉末材料に吐出されることで、粉末材料の粒子同士が結合される。この層の上にさらに粉末材料が供給されて、堆積された粉末材料の平坦化、結合剤溶液の吐出が繰り返されることで、立体造形物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−334581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、ステージ上に供給された粉末材料を伸展ローラにより平坦化する場合に、伸展ローラに集積した粉末材料が、平坦化された粉末材料の平坦化領域に飛散することがあった。平坦化領域の表面に余計な粉末が付着すると、立体造形物の寸法精度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、ステージに供給された粉末材料をローラで平坦化する場合に、ローラに付着した粉末材料がステージ上の平坦化領域などに飛散するのを防止して、寸法精度の高い立体造形物を形成できる立体造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の立体造形装置は粉末材料に対して造型液を滴下することで、立体造形物を形成する立体造形装置であって、前記粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、前記粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、前記ローラに対向して設けられて、前記ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、前記平坦化部を前記ステージに対して相対的に移動させて前記粉末材料を平坦化する移動機構を備え、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記ステージに供給された粉末材料は、前記平坦化部により平坦化された平坦化領域と、前記平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、前記粉末除去板は、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときの前記未平坦化領域側であって、かつ、前記ローラの回転中心以下の位置で前記ローラに接することを特徴とする。
【0008】
第2発明の立体造形装置は、上記第1発明の構成に加えて、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記粉末供給部は前記平坦化部と共に前記ステージに対して相対移動し、前記粉末供給部は前記ローラよりも前記平坦化領域から遠い側に配置されることを特徴とする。
【0009】
第3発明の立体造形装置は、上記第2発明に加えて、前記粉末除去板は前記ローラに対向する側とは反対側において、前記粉末供給部に固定されることを特徴とする。
【0010】
第4発明の立体造形装置は、上記第1ないし第3発明のいずれかにおいて、前記移動機構は、前記ステージを移動させることで、前記平坦化部を前記ステージに対して相対移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の立体造形装置によれば、粉末除去板は、移動機構により平坦化部が粉末材料を平坦化するときの未平坦化領域側であって、かつ、ローラの回転中心以下の位置でローラに接する。そのため、ステージに供給された粉末材料をローラで平坦化する場合に、ローラに付着した粉末材料がステージ上の平坦化領域などに飛散するのを防止して、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0012】
第2発明の立体造形装置によれば、第1発明の効果に加え、平坦化部が粉末材料を平坦化するときに、粉末供給部は平坦化部と共にステージに対して相対移動し、粉末供給部はローラよりも平坦化領域から遠い側に配置される。そのため、平坦化領域に粉末材料が飛散するのをより効果的に防止することができ、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0013】
第3発明の立体造形装置によれば、第2発明に加え、粉末除去板はローラに対向する側とは反対側において、粉末供給部に固定されるため、ローラと粉末供給部との間に粉末除去板を隙間無く配置することができる。そのため、平坦化領域に粉末材料が飛散するのをさらに確実に防止することができ、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【0014】
第4発明の立体造形装置によれば、第1発明ないし第3発明のいずれかに加え、移動機構はステージを移動させることで、平坦化部をステージに対して相対移動させるため、平坦化部に付着した粉末材料が平坦化部を移動することによる振動などで飛散して、平坦化領域の表面を荒らすことを防止できる。これにより、寸法精度の高い立体造形物を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の立体造形装置を示す外観図である。
【図2】図1の立体造形装置の正面視における概略構成を示す図である。
【図3】図1の立体造形装置の側面視における内部の概略構成を示す図である。
【図4】ステージを拡大して示す概略斜視図である。
【図5】ヘッドを拡大して示す概略斜視図である。
【図6】ローラと粉末供給部を拡大して示す概略斜視図である。
【図7】(A)本実施形態のローラとブレードを拡大して示す概略構成図、(B)従来例のローラとブレードを拡大して示す概略構成図である。
【図8】立体造形装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】立体造形装置の動作制御を示すフローチャートである。
【図10】図9の構造形成処理を示すフローチャートである。
【図11】図9の吐出処理を示すフローチャートである。
【図12】立体造形装置の動作を模式的に示す図である。
【図13】立体造形装置の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1〜図7を用いて、本発明の好ましい実施形態を示す。図1に示すように、本実施形態の立体造形装置1は、例えば、ネットワーク300を介してパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)200で作成された立体造形印刷用の座標データ、色データ等を受信する。立体造形装置1は、受信した座標データ、色データに基づいて、ステージ5上の粉末材料にインクジェットヘッド21から造型液を吐出して立体造形物を作成する。以下、各構成について説明する。
【0017】
立体造形装置1は、X軸方向を長手方向とする略直方体形状の筐体2を有し、その底面の略中央に、Y軸方向(筐体2の前後方向)に伸びる2本のレール3が列設されている(図3参照)。2本のレ−ル3は、図1の筐体2のY軸負側(筐体2の前側)に設けられた支持部31と図示しないY軸正側の支持部にそれぞれ支持されている。レール3はステージ支持台12の貫通孔14(図4参照)に挿通されており、ステージ支持台12はこのレール3に沿ってY軸方向に移動可能である。
【0018】
図3において、レール3のY軸正方向(図1の筐体2後方)の端部には図8のステージ駆動モータ57が設けられる。図4のステージ支持台12は、ステージ駆動モータ57の駆動によってキャリッジベルトを介してレール3に沿ってY軸方向に往復移動されるようになっている。これによりステージ支持台12の上部に固定されたステージ5がY軸方向へ移動する。
【0019】
図1及び図4のステージ5は箱型形状であり、その中央部は直方体形状の空洞部56を有している。また、ステージ支持台12の中央には、空洞部56に連通する円柱状の空洞部13が形成されている。ステージ5のY軸正方向(筐体2の後方)にはローラ8によって移動された余剰分の粉末を回収するための図3及び図4の粉末回収口87が設けられる。粉末回収口87に投入された粉末材料は、回収路89を通って粉末回収部85へ回収される(図2参照)。
【0020】
粉末回収部85に回収された粉末材料はユーザによって、粉末供給部7へ投入される。また、図示しない吸引機構などにより、粉末供給部7へ自動的に再投入されるようにしてもよい。
【0021】
昇降板51はステージ5の空洞部56内をZ軸方向へ移動可能に設けられる。昇降板51はステージ5上面と同じ位置から成形する立体造形物のZ座標の範囲を移動する。昇降板51の下面の中央には昇降板51を支持するためのボールねじ54が設けられる。昇降板51は図8の昇降板モータ53の駆動によりボールねじ54が回転することで、空洞部56の内部をZ軸方向に移動する。なお、ボールねじ54は図8の昇降板モータ53を介して、ステージ5の空洞部56に図示しない支持部材によりベアリングを介して設けられる。
【0022】
また、図2に示すように、筐体2のY軸方向の略中央で、かつ、ステージ5の上方には、インクジェットヘッド21のX軸方向への移動を案内するためのガイドレール9が架設されている。このガイドレール9のX軸負側(筐体2の左側)の端部付近に設けられたヘッドモータ24(図8参照)と、X軸正側(筐体2の右側)の端部付近に設けられた図示しないプーリーとの間にキャリッジベルトが筐体2のX軸方向にわたって架設されている。
【0023】
キャリッジベルトは図8のヘッドモータ24を介して駆動し、これによりインクジェットヘッド21が筐体2のX軸方向に往復移動されるようになっている。
【0024】
また、立体造形装置1は、カラーの立体造形物を作成可能であり、立体造形用のシアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ブラックインク、クリアインクが用いられている。図2のように、立体造形装置1のフレーム22内のX軸負側には、各インクを収容したインク収容部30がそれぞれ設けられている。
【0025】
図2において、インク収容部30は、インク供給用チューブ10を介して、各色のインクジェットヘッド21に接続されている。尚、このインク供給用チューブ10は、ポリエチレン等からなる可撓性のチューブであり、立体造形装置1において、インクジェットヘッド21の移動等に対応して屈曲や捩れが生じるような柔軟性を有する。
【0026】
インクジェットヘッド21は、図5において各インクを噴射するための、噴射チャンネル(図示外)をそれぞれ備えている。各噴射チャンネルには、各々個別に駆動される圧電アクチュエータが設けられ、各噴射チャンネルに対応してインクジェットヘッド21の底面に孔設された微細な噴射ノズルから下向きに、インクの液滴が噴射されるように制御されている。
【0027】
また、インクジェットヘッド21がガイドレール9の左端(X軸負側)の退避位置に移動した位置には、各インクジェットヘッド21のノズル面に対して密着・離脱が可能な吸引キャップを有するヘッド吸引機構23が設けられている。
【0028】
ヘッド吸引機構23は、図示外の吸引ポンプとキャップを有する。ヘッド吸引機構23は、図示外の昇降機構によってZ軸方向に昇降可能に構成される。インクジェットヘッド21が、ヘッド吸引機構23の上側に移動されると、ヘッド吸引機構23はZ軸正方向に上昇する。
【0029】
上昇したヘッド吸引機構23は、インクジェットヘッド21面に密着し、インクジェットヘッド21の吐出口に各色の造形液が達するまで吸引を行う。各吸引キャップがインクジェットヘッド21に密着しているときに、ポンプに接続された吸引キャップを介してインクの吸引を行うことが可能となっている。また、印刷が行われないときには、吸引キャップでインクジェットヘッド21のノズル面が覆われ、インクの乾燥が防止される。
【0030】
図1〜3、図6の粉末供給部7は立体造形に用いる粉末材料を収容するための箱形状の容器であって、ステージ5の上方であって筐体2のX軸正側(筐体2の右側)に設けられる粉末回収部85の壁面に図示しない固定部材によって支持されている。粉末供給部7の上方の開放された投入口により、ユーザによって粉末材料が投入される。
【0031】
粉末供給部7は、ステージ5上のX軸方向に線上に伸びる全領域に粉末材料を供給可能なように、粉末供給部7の下部に開口部71を備えている(図6参照)。そのため、この開口部71は、ステージ5のX軸方向に延びてステージのX軸方向の長さとほぼ同じ長さを有する。
【0032】
図6において、粉末供給部7の開口部71は図示しないシャッタ部材を有している。ステージ5上へ粉末供給を開始するときには、図8のシャッタモータ72を介してシャッタ部材が移動して開口部71が開放される。これにより、ステージ5上へ所定量の粉末材料が投下される。そして、ステージ5上への粉末供給が終わると、シャッタモータ72によりシャッタ部材が開口部71を閉鎖する。
【0033】
ローラ8は、ステージ5上に供給された粉末材料を平坦化するために設けられる。図3及び図6に示すように、ローラ8は回転軸81に接続されたローラモータ83(図8参照)により図6の矢印B方向(反時計回り)へ回転する。ローラは回転軸81が回転可能なように、図示しないベアリングなどを介して固定部材によりX軸正側に設けられた粉末回収部85の壁部に固定されている(図1、図2参照)。
【0034】
図6に示すように、ブレード82はローラ8に付着した粉末材料を除去するために設けられ、平板状である。ローラ8に対向するブレード82の先端部はローラ8の表面に押圧するように接している。
【0035】
ブレード82がローラ8に接する位置は回転中心C以下の位置L2である。なお、図中の直線L1は回転中心CのZ軸方向の位置、直線L2はブレードがローラに接する接線である。
【0036】
仮に、図7(B)の従来例に示すように、ブレード282の先端部がローラ208の回転中心よりもZ軸正方向へ高い位置L3に配置されていた場合、ローラ208に付着した粉末材料はブレード282により掻き集められて再びローラ208の表面上へ堆積してしまう。ローラ208上へ集積した粉末材料はブレード282とローラ208との間に次々に集積してゆく。
【0037】
そのため、ローラ208の端部やブレード282を乗り越えて、ステージ251の粉末材料が平坦化された平坦化領域M1に落下するおそれがある。つまり、ローラ208で平坦化しても平坦化領域M1が不均一になるおそれがある。
【0038】
それに対して、図7(A)に示す本実施例では、ブレード82がローラ8に接する位置は回転中心以下の位置L2となっている。これにより、ブレード82で除去された粉末材料はステージ51上の未平坦化領域M2へ落下するので、ローラ8の表面で粉末材料が堆積することを防止することができる。すなわち、平坦化領域M1に余分な粉末材料が飛散するのを防止できるので、立体造形物の成形性を向上させることができる。なお、図7(A)のローラ8及び図7(B)のローラ208は、ともに矢印B方向(反時計回り)に回転する。
【0039】
また、図6に示すように、ブレード82はローラ8に対向する側の反対側が粉末供給部7に固定部84により固定される。このとき、ブレード82が粉末供給部7に固定される位置は、開口部71よりも平坦化領域に近い側に配置される。
【0040】
すなわち、ブレード82はローラ8と粉末供給部7との間に隙間無く連結されている。そのため、ローラ8で粉末材料を平坦化するときに、粉末材料が飛散しても、ブレード82によって平坦化領域M1に粉末材料が飛散するのを遮ることができる。
【0041】
また、図12(C)のように、インクジェットヘッド21側へ粉末材料が飛散して、インクジェットヘッド21に粉末材料が付着して吐出口を詰まらせたりすることを防止することができる。なお、ブレード82は導電性材料からなることが望ましい。静電気によりブレード82に粉末材料が付着することを低減するためである。なお、ブレード82は本発明の粉末除去板に相当する。また、ブレード82とローラ8が本発明の平坦化部に相当する。
【0042】
そして、図1に示すように、筐体2のX軸正側のフレーム部22の正面には、立体造形装置1の操作を行うための操作パネル28が設けられている。操作パネル28には、各種のランプ、ディスプレイが設けられている。また、操作パネル28には、操作指示のための各種のボタンが設けられている。
【0043】
次に、図8を用いて、本実施形態の立体造形装置1の電気的構成を説明する。立体造形装置1には、立体造形装置1の主制御を司るCPU110が設けられており、CPU110には、バス190を介し、ROM120、フラッシュRAM130が接続されている。制御部40はCPU110、ROM120、フラッシュRAM130を有している。
【0044】
CPU110は、フラッシュRAM130及びROM120と協動して、各種演算、処理を行う。ROM120は、立体造形装置1の動作を制御するための制御プログラム、印刷処理を実行するための印刷実行プログラム等を記憶している。フラッシュRAM130には、PC200から通信制御部160を介して受信した座標データが記憶される。座標データには座標データに関連付けられた色データも含まれる。
【0045】
またCPU110には、バス190を介して、ヘッド駆動部140と、モータ駆動部150と、通信制御部160とが接続されている。
【0046】
ヘッド駆動部140は、インク噴射を行うインクジェットヘッド21の各噴射チャンネルに設けられた圧電アクチュエータ(図示外)を駆動させる。ヘッド駆動部140は、CPU110からの吐出信号と色データとに従って、造形液の吐出タイミングと吐出すべき造形液の色を決定する。
【0047】
決定された造形液の色は、色選択信号としてインクジェットヘッド21に供給される。インクジェットヘッド21は、色選択信号に従って、各色のヘッドのうち、吐出すべき色のヘッドから造形液を吐出する。
【0048】
モータ駆動部150は、ヘッドモータ24、ステージ駆動モータ57、昇降板モータ53、ローラモータ83、シャッタモータ72をそれぞれ制御して駆動させる。
【0049】
ヘッドモータ24は、インクジェットヘッド21を搭載したキャリッジ(図示外)を駆動する。これによりインクジェットヘッド21がX軸方向へ移動する(図1及び図2参照)。
【0050】
ステージ駆動モータ57は、粉末材料が載置されたステージ5を送り出すタイミングや速度を調整するステージローラ(図示外)を駆動する。これによりステージ5がY軸方向へ移動する(図3参照)。なお、ステージ駆動モータ57及びモータ駆動部150が本発明の移動機構に相当する。
【0051】
昇降板モータ53は、昇降板51を支持するボールねじ54を回転させることで、昇降板51をZ軸方向に移動させる(図1参照)。
【0052】
ローラモータ83は、ローラ8の回転軸81を回転させることで、ローラ8を所定の方向に回転させる。ここでは、ローラモータ83の駆動により、ローラ8が図6の矢印B方向(反時計回り)へ回転する。
【0053】
シャッタモータ72は粉末供給部7の図6の開口部71を塞ぐシャッタ(図示外)を移動させる。シャッタが移動することにより、粉末供給部7の開口部71が開放されたり塞がれたりする。開口部71が開放されると粉末供給部7内の粉末材料がステージ5へ投下される。
【0054】
これらのモータは、エンコーダを内蔵するステッピングモータ等であり、移動量、原点位置、回転速度等を検出可能である。検出されたこれらの移動量、原点位置、回転速度等のデータはバス190を介してCPU110に送信される。CPU110は送信されたこれらのデータに基づいてモータ駆動部150に駆動のための信号を送信する。
【0055】
さらに、CPU110には、バス190を介して、通信制御部160、操作パネル28、ヘッド吸引機構23が接続されている。
【0056】
通信制御部160は、立体造形装置1と外部との通信を行う。外部装置であるPC200から、この通信制御部160を介して必要な印刷データを受信してフラッシュRAM130に記憶する。
【0057】
操作パネル28は立体造形装置1の起動、停止、印刷開始等の操作をユーザから受け付けるための様々な入力ボタンを有する。操作パネル28に対して入力されたユーザからの操作は、操作信号としてCPU110に送信される(図1参照)。
【0058】
ヘッド吸引機構23は、CPU110からの信号に従い、Z軸方向への昇降、図5のインクジェットヘッド21へのキャップの装着、及びインクジェットヘッド21の吸引を行う。
【0059】
次に、図9〜図11を用いて、立体造形装置1の動作制御について説明する。
【0060】
図9に示す処理では、まず、制御部40に電源ONの指令が供給され、立体造形装置1の駆動が開始される。立体造形装置1の駆動が開始されると、ステップS0(以下、S0とする)で初期化処理が行われる。具体的には、ヘッド吸引機構23により、インクジェットヘッド21の下面の複数の吐出口に造形液が達するまで吸引が行われる(図1参照)。この吸引により、インクジェットヘッド21が吐出可能な状態となる。
【0061】
また、図1に示す昇降板51をステージ5表面と同じ位置から初期設定として予め定められるZ座標分だけ、図8のモータ駆動部150、昇降板モータ53を介して昇降板51をZ軸負方向に移動させる。このときZ負方向へ移動するZ座標は、立体造形物の1層目の厚さに対応する。一例として、約100μm程度である。
【0062】
初期化処理が行われると、S1では、PC200からの座標データの受信があったか否かが判断される。座標データを受信すると、フラッシュRAM130に座標データを記憶する(S2)。座標データを受信していないと判定されると(S1:No)、ユーザにより立体造形物に関するデータがPC200、及びバス190を介して制御部40に供給されていないため、ループ待機する。
【0063】
一方、フラッシュRAM130に座標データを記憶すると、処理が次のS3に移る。最初にS2からS3に処理が移るとき、フラッシュRAM130により記憶されている座標データのZ座標のうち、最小のZ座標を有する座標データが現在の座標位置Zとして指定される。
【0064】
次に、S3で構造形成処理が行われる。この構造形成処理により、ステージ5上にある座標位置Zにおける少なくとも1層分の粉末材料が供給される。また、ステージ5に供給された粉末材料が平坦化される。
【0065】
S4では、吐出処理が行われる。この吐出処理により、ステージ5に供給された粉末材料に造形液が吐出される。造形液の吐出により、粉末材料が造型液に溶解して互いに結合される。粉末材料が結合されることで、造形される立体造形物のうちの1層の造形がなされる。また、2層以上積層させる場合には、下層との結合造形もなされる。なお、着色された造形液の場合は、S4において、造形と同時に立体造形物の着色がなされる。
【0066】
S5は、造形が終了したか否かが判定される。造形終了でないと判定されると(S5:No)、処理がS6に移る。処理がS6に移ると、現在の座標位置Zを、フラッシュRAM130に記憶されている座標位置Zのうち、現在の座標位置Zの次の座標位置Zに変更する。そして、その座標位置に対応させてモータ駆動部150、昇降板モータ53を介して昇降板51をZ軸負方向に移動させる。そして、S5の構造形成処理に移る。
【0067】
一方、S5において、造形終了と判定されると(S5:Yes)、このフローが終了する。具体的には、制御部40に電源OFFの指令が供給されたか、またはフラッシュRAM42に記憶されている全ての座標位置Zに対する処理が完了したときに、造形終了と判定される。
【0068】
次に、図10を用いて、図9に示す動作制御におけるS3の構造形成処理について具体的に説明する。図10に示す構造形成処理では、まず、S31で現在の座標位置ZにおけるデータがフラッシュRAM130から読み出される。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0069】
S32では、粉末供給処理が行われる。図6のように、粉末供給部7の開口部71はシャッタが移動することにより開放されて、ステージ5の一端部にX軸方向に線状に供給される。ここで、供給される粉末材料の量は、現在の座標位置Zにおけるステージ5上の成形領域の全ての座標(X、Y)に対し、粉末材料が供給される量に調整される。
【0070】
そして、ローラモータ83を駆動させることにより、ローラ8を回転させる(図1、8参照)。ローラ8の回転数は、一例として5rpm/s程度である。
【0071】
S33では、粉末材料を平坦化するために、ステージ5をY軸方向へ移動制御を行う。具体的には、図8のモータ駆動部150、ステージ駆動モータ57の駆動により、ステージ5がY軸負方向へ移動する。これにより、ローラ8はステージ5の一端部から他端部へY軸方向へ相対的に水平移動することになる。一例として、ステージ5の移動速度は概ね50〜300mm/s程度である。
【0072】
S33の処理が行われると、図10に示す構造形成処理が完了し、図9に示すS4の吐出処理に移る。
【0073】
続いて、図11を用いて、図9に示す動作制御におけるS4の吐出処理について具体的に説明する。図11に示す吐出処理では、まずS41で、現在の座標位置ZにおけるデータがフラッシュRAM130から読み出される。読み出されるデータは、座標位置Zにおける座標(X、Y)の座標データである。
【0074】
データが読み出されると、S42では、図1のインクジェットヘッド21を図8のモータ駆動部150、ヘッドモータ24を介して、X軸方向に所定の距離だけ移動して、初期位置へ移動させる。
【0075】
S43では、所定の座標に対して、制御部40からの吐出信号に基づいてインクジェットヘッド21による造形液の吐出を行う。それと共に、インクジェットヘッド21をヘッドモータ24を介してX軸方向に移動させる。これらは、フラッシュRAM130に記憶された立体造形物の位置座標データに応じて、移動及び吐出が行われる。
【0076】
また、ステージ駆動モータ57を駆動させて、ステージ5をY軸正方向へ移動させる(図1、8参照)。すなわち、インクジェットヘッド21のX軸方向の往復移動が1ラインずつ行われ、インクジェットヘッド21のX軸方向往復移動が1ライン完了すると、Y軸正方向のあらかじめ定められた次のラインまでステージ5が移動される。このようにして、インクジェットヘッド21は、初期位置からY軸正方向に向けて、X軸方向に1ラインずつ相対的に移動される。
【0077】
S43の処理により、現在の座標位置Zに対応した立体造形物の1層の全ラインに対する吐出が為される。現在の座標位置Zにおける吐出処理が終了すると、処理が、図9に示すS5に移る。
【0078】
次に、立体造形装置1のローラ8と粉末供給部7に対するステージ5の移動について、模式的に示す図12及び図13を用いて説明する。
【0079】
図12(A)において、まず図8の昇降板モータ53が駆動されることにより、昇降板51がステージ5表面と同じ位置からZ軸負方向(矢印A方向)へ所定のZ座標の位置まで降下する。図12(A)の位置がステージ5の初期位置である。
【0080】
次に、図12(B)において、シャッタモータ72が駆動されて開口部71が開放されることにより(図6、8参照)、粉末供給部7から粉末材料がステージ5上へ供給される。粉末材料をステージ5上へ供給した後、ローラ8の矢印B方向への回転が開始される。また、ステージ5のY軸負方向(矢印C方向)への移動が開始される。
【0081】
図12(C)において、ステージ5がさらにY軸負方向(矢印C方向)へ移動すると、ローラ8によりステージ5上の粉末材料が平坦化される。ステージ5上の粉末材料のうち、ローラ8によって平坦化された領域である平坦化領域M1が形成される。平坦化領域M1は、ローラ8に対してステージ5が移動する側であるY軸負側に形成される。ローラ8に対してY軸正側のステージ5上には、まだ平坦化されていない粉末材料が堆積しており、この領域が未平坦化領域M2である。
【0082】
また、ローラ8と粉末供給部7はその配置が固定されており、ステージ5が移動することで、ローラ8と粉末供給部7が共にステージ5に対して相対移動する。仮に、粉末供給部7がステージ5と共に移動すると、粉末供給部7が平坦化領域M1の上方に配置される場合がある。
【0083】
このような場合には、粉末供給部7の開口部71等(図6参照)に付着した飛散粉末が平坦化領域M1に落下して、平坦化領域M1の表面を不均一にして荒らす可能性がある。
【0084】
本実施形態のように、ローラ8と粉末供給部7が共にステージ5に対して相対移動することで、粉末供給部7は常に未平坦化領域M2上に配置される。これにより、平坦化領域M1の表面へ粉末供給部に付着した余分な粉末等が飛散することを低減することができる。そのため、立体造形物の成形性や寸法精度が向上する。
【0085】
そして、図13(D)において、ステージ5がさらにY軸負方向(矢印C方向)へ移動するにつれて、ステージ5上の粉末材料が平坦化され、平坦化領域M1がさらに形成されていく。図13(E)のように、さらにステージ5がY軸負方向へ移動すると、余剰分の粉末材料は図示外の粉末回収口へ落下する。
【0086】
このように、座標データにより定められる昇降板51上の所定の領域全てにインクジェットヘッド21から造型液が吐出されると、1層目の形成が終了する。ステージ5はY軸正方向へ移動して原点位置まで移動すると、一連の動作が繰り返されて積層されて立体造形物が形成される。
【0087】
以上説明した実施形態では、ステージ5がY軸方向へ移動することで、ローラ8と粉末供給部7がステージ5に対して相対移動したがこれに限定されない。ステージ5の配置が固定されて、ローラ8と粉末供給部7が共に移動するようにしてもよい。
【0088】
加えて、ブレード82が粉末供給部7に固定されて、ローラ8と粉末供給部7との間に隙間が無いように設けられてされていたが、ブレード82と粉末供給部7は固定されていなくてもよい。ブレード82を支持固定する支持部材が別に設けられていてもよい。
【0089】
また、余分な粉末材料がローラ8に付着するのを低減するため、ローラ8を加熱する加熱部を設けてもよい。造型液が付着した下層の粉末が仮にローラ8に付着した場合に、加熱により造型液を蒸発させてローラとブレードの間に粉末材料が集積していくのを防止することができる。これにより、ローラとブレードの間に粉末材料が集積して、平坦化領域に粉末が落下して立体造形物の寸法精度が悪くなるのを防止することができる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 立体造形装置
5 ステージ
7 粉末供給部
8 ローラ
82 ブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料に対して造型液を滴下することで、立体造形物を形成する立体造形装置であって、
前記粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、
前記粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、前記ローラに対向して設けられて、前記ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、
前記平坦化部を前記ステージに対して相対的に移動させて前記粉末材料を平坦化する移動機構を備え、
前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記ステージに供給された粉末材料は、前記平坦化部により平坦化された平坦化領域と、前記平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、
前記粉末除去板は、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときの前記未平坦化領域側であって、かつ、前記ローラの回転中心以下の位置で前記ローラに接することを特徴とする立体造形装置。
【請求項2】
前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記粉末供給部は前記平坦化部と共に前記ステージに対して相対移動し、
前記粉末供給部は前記ローラよりも前記平坦化領域から遠い側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記粉末除去板は前記ローラに対向する側とは反対側において、前記粉末供給部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の立体造形装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記ステージを移動させることで、前記平坦化部を前記ステージに対して相対移動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の立体造形装置。
【請求項1】
粉末材料に対して造型液を滴下することで、立体造形物を形成する立体造形装置であって、
前記粉末材料をステージに供給する粉末供給部と、
前記粉末供給部より供給された粉末材料を平坦化するために回転するローラと、前記ローラに対向して設けられて、前記ローラに付着した粉末材料を除去する粉末除去板とを備えた平坦化部と、
前記平坦化部を前記ステージに対して相対的に移動させて前記粉末材料を平坦化する移動機構を備え、
前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記ステージに供給された粉末材料は、前記平坦化部により平坦化された平坦化領域と、前記平坦化部により平坦化されていない未平坦化領域を有し、
前記粉末除去板は、前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときの前記未平坦化領域側であって、かつ、前記ローラの回転中心以下の位置で前記ローラに接することを特徴とする立体造形装置。
【請求項2】
前記移動機構により前記平坦化部が前記粉末材料を平坦化するときに、前記粉末供給部は前記平坦化部と共に前記ステージに対して相対移動し、
前記粉末供給部は前記ローラよりも前記平坦化領域から遠い側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記粉末除去板は前記ローラに対向する側とは反対側において、前記粉末供給部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の立体造形装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記ステージを移動させることで、前記平坦化部を前記ステージに対して相対移動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の立体造形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−166487(P2012−166487A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30474(P2011−30474)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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