説明

立体駐車装置のリフト冠水防止方法及び装置

【課題】ピット内に急な浸水が生じてもリフト装置の冠水を防止できるようにする。
【解決手段】建屋1内に、入出庫口2に通じるリフト昇降部3を設けてリフト装置9を昇降駆動可能に収納する。リフト昇降部3の両側の格納スペース4に、リフト装置9との間で車両5を受け渡し可能な棚7を多段に備える。リフト昇降部3下端の建屋1内底部に、入出庫口2とリフト装置9上のパレット6上との間で車両5の乗り入れ乗り出しが可能となる位置までリフト装置9を下降させるためのピット13を設ける。ピット13の底部に、排水マス23を設け、その上部位置に浸水センサ24を設ける。制御器25により、入出庫作業が行われていない待機時は、リフト装置9を2階以上の上階に待機させ、浸水センサ24により排水マス23内の水位の上昇が検出される場合は、ピット13に水が溜まっている虞があるため、リフト装置9のピット13への下降を防止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を建屋内に上下方向に多段に並べて駐車させるエレベータ方式の立体駐車装置における建屋内に、大雨や洪水等により浸水が生じても、リフト装置が冠水しないようにするための立体駐車装置のリフト冠水防止方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
限られた敷地に効率よく車両を駐車するための設備の一つとして、エレベータ方式の立体駐車装置が知られている。かかるエレベータ方式の立体駐車装置の一つとしては、図3にその一例の概略を示す如く、入庫する車両をパレット上に乗り入れさせた後、該パレットごと搬送する形式のものがある。
【0003】
すなわち、図3に示すエレベータ方式の立体駐車装置は、地上に立設した建屋1の中央部に、車両乗り入れ階となる1階部分の中央部前面に設ける入出庫口2に通じるリフト昇降部(昇降路)3が上下方向に形成してある。又、建屋1内における上記リフト昇降部3を左右で挟む位置には、格納スペース4が形成してあり、該左右の各格納スペース4には、車両5を搭載するためのパレット6の長手方向(前後方向)両端部を横送り装置10を介して支持できるようにした棚7が、所要の配列ピッチで上下方向へ多段に亘り階層状にそれぞれ設けてある。更に、横送り装置10を備えたリフト装置(リフトケージ)9を、上記リフト昇降部3に配置して、建屋1内の頂部の支持台8上に設置してある巻上装置11のワイヤーロープ12に吊り下げて支持させてある。これにより、該巻上装置にてワイヤーロープ12を巻上下することにより、上記リフト装置9がリフト昇降部3を昇降させられるようにしてある。上記リフト昇降部3の底部には、上記リフト装置9上にセットされるパレット6の上面が入出庫口2とほぼ同じ高さレベルに配置されるようになるまで該リフト装置9を吊り降ろすためのピット13を設けてなる構成としてある。14は建屋1の鉄骨である。
【0004】
上記構成としてあるエレベータ方式の立体駐車装置を用いて車両5を入庫させる場合は、予め、所要段の棚7より取り出された空のパレット6をリフト装置9上にセットした状態にてピット13内へ吊り降ろしておくようにする。次に、駐車させる車両5を、中央部の入出庫口2より上記リフト装置9上のパレット6上に乗り入れて搭載させる。次いで、巻上装置11により上記リフト装置9を吊り上げて、上記実車パレット6を、駐車予定棚7の高さ位置に対応するまで上昇させる。しかる後、リフト装置9の横送り装置10で車両5をパレット6ごと横行させて該棚7に格納させるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、駐車している車両5を出庫する場合は、上記入庫の場合とは逆の操作手順を行うようにすればよい。すなわち、先ず、巻上装置11により、リフト装置9を、出庫対象となる車両5が載置されている実車パレット6の格納してある所要の棚7の高さ位置に対応するように昇降させる。次に、該棚7に格納してある出庫対象車両5の実車パレット6を、リフト装置9の横送り装置10により横行させてリフト装置9上に搭載させる。次いで、巻上装置11により上記リフト装置9をピット13内へ吊り降ろし、しかる後、上記車両5をリフト装置9上のパレット6の上から入出庫口2を経て外部へ乗り出させるようにすればよい。
【0006】
上記車両5の出庫作業が終了すると、リフト装置9上には空のパレット6が残るようになる。この空パレット6を入出庫口2の位置に待機させておけば、次に行われる作業が車両5の入庫作業である場合に入庫作業を速やかに開始できるようになることから、上記車両5の出庫作業を終了した後は、空パレット6がセットされたリフト装置9を、ピット13内へ吊り降ろした状態のまま待機させるようにすることが一般に行われている。
【0007】
上記の如きエレベータ方式の立体駐車装置における入出庫口2は、通常、図示しない入出庫扉を装備してあり、たとえば、リフト装置9の昇降動作中や、入出庫作業を行わせていない待機中等、入出庫口2を通して車両5をパレット6上に乗り入れたり、パレット6上から外部へ乗り出しを行う以外のときは、上記入出庫口2を入出庫扉によって閉じて、建屋1内部を無人の状態とさせるようにしておくようにすることが一般的である。又、上記の如きエレベータ方式の立体駐車装置では、雨天時に車両5の入出庫を行うとき等に建屋1内に多少の水が入ることがある。このため、通常は、この建屋1内に浸入した水を上記ピット13の所要個所に設けた図示しない排水会所(排水マス)へ集め、排水ポンプの如き所要の排水装置を用いて外部へ排出させるようにしてある。
【0008】
ところで、近年、地下を使って複数台の駐車スペースを確保できるようにするための装置として、地下ピット昇降式の多段の立体駐車装置が多く利用されるようになってきている。
【0009】
かかる地下ピット昇降式の立体駐車装置は、図4にその一例の概略を示す如く、地下にピット15を形成し、該地下ピット15の底面に支柱16を立てる。又、駐車パレット17を、上下方向複数段、たとえば、上下2段に配置すると共に、該各駐車パレット17同士を上下方向に延びるパレット支柱18で一体に連結して車両積載用の構造体19とし、該車両積載用構造体19を、上記支柱16に沿い上下方向に変位(移動)可能に支持させ、更に、上記車両積載用構造体19を昇降駆動するための所要の昇降駆動装置20を備えた構成としてある。これにより、通常は、上記車両積載用構造体19を地下ピット15内へ収容するように下降させて、上段駐車パレット17を地面と同じ高さレベルに配置させた状態とすることにより、該上段駐車パレット17に対し車両21を入出庫できるようにしてある。又、上記昇降駆動装置20を作動させて上記車両積載用構造体19を支柱16に沿わせて上昇させ、上記下段駐車パレット17を地面と同じ高さレベルに配置させた状態とすることにより、該下段駐車パレット17に対しての車両21の入出庫作業を行うことができるようにしてある。
【0010】
上記のような地下ピット昇降式の立体駐車装置では、雨水等が地下ピット15内に流れ込んで上記昇降駆動装置20が冠水すると、該昇降駆動装置20が機能停止する虞が懸念される。そのために、図5に示す如く、図4に示したと同様の立体駐車装置において、車両積載用構造体19を昇降させる昇降駆動装置20を、上段の駐車パレット17に支持させてなる構成として、地下ピット15(図4参照)内に雨水等が流入して昇降駆動装置20の電気系統が冠水する虞が懸念されるときには、図示しない操作盤により上記昇降駆動装置20を作動させて、上記車両積載用構造体19を、下段駐車パレット17に対する車両21(図4参照)の入出庫が可能となる位置まで上昇させるようにしている。これにより、上記昇降駆動装置20を上段駐車パレット17と一緒に地面よりも高い位置まで上昇させて、該昇降駆動装置20の冠水を防止するようにすることが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0011】
又、上記と同様に、地下ピット内に、上下方向複数段の駐車パレットを上下方向に延びるパレット支柱で連結して車両を多段に収納できるようにしてなる車両積載用の構造体(車両昇降装置)を、昇降可能に具備してなる地下ピット昇降式の立体駐車装置においては、豪雨等により地下ピット内に多量の浸水が生じると、地下部分に収納されている車両の水没事故が生じる虞が懸念される。そのために、図6に示す如く、地下ピット15内に、浸水のレベルが該ピット15の床面よりも所要量上部となる位置を異常レベルとして検出するための異常検出器22を設けて、該異常検出器22にて地下ピット15内の浸水レベルが検出されると、車両積載用構造体(車両昇降装置)19を、最下段の車両21が地上に出る配置となるまで自動的に上昇させるようにすることも従来考えられてきている(たとえば、特許文献3参照)。なお、図6において、図4に示したものと対応するものにはそれぞれ対応する符号が付してある。
【0012】
【特許文献1】特許第3239198号公報
【特許文献2】特開平7−18990号公報
【特許文献3】特開平10−219711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、図3に示した如き従来のエレベータ方式の立体駐車装置におけるピット13内の排水を行うための排水装置は、雨天時における車両の入出庫等に伴って建屋1内へ浸入する程度の比較的少量の水の浸入を前提としてその排水能力が設定されているため、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋1に多量の浸水が生じてピット13内に多量の雨水等が浸入するようになると、上記排水装置による排水が間に合わなくなってピット13内に水が溜まる虞がある。
【0014】
このようにしてピット内13に水が溜まった状態のときに、入出庫作業の進行に伴い該ピット13内へのリフト装置9の吊り降ろし動作を行わせると、該リフト装置9が冠水し、これにより、横送り装置10等の上記リフト装置9に付属している電気機器が水没して悪影響を受ける虞が懸念される。
【0015】
更に、上記従来のエレベータ方式の立体駐車装置では、駐車車両5の出庫作業終了後に、空のパレット6がセットされた状態となるリフト装置9をピット13内に吊り降ろした状態のまま待機させるようにすることが一般に行われているため、この待機状態のときにピット13内に多量の浸水が生じると、上記リフト装置9が直ちに冠水してしまう可能性もある。
【0016】
なお、上記図5に記載されたものは、地下ピット昇降式の立体駐車装置における車両積載用構造体19を昇降させるための昇降駆動装置20の冠水防止を図るためのものであって、図3に示した如きエレベータ方式の立体駐車装置におけるリフト装置9の冠水防止対策にそのまま適用できるものではない。
【0017】
しかも、図5に記載されたものでは、地下ピット15(図4参照)内に雨水等が流入して昇降駆動装置20の電気系統が冠水するようになる虞が懸念されるときに、上記昇降駆動装置20を作動させるようにしてあるが、この際、地下ピット15内に溜まる雨水等の量を検出するための手段は何ら示されておらず、又、上記昇降駆動装置20の作動は、操作盤の操作を介して行わせるようにする考えが示されているのみであることから、地下ピット15内の水位に応じて上記昇降駆動装置20を自動的に作動させることができるようにはなっていない。これに対し、前述したように、図3に示した如きエレベータ方式の立体駐車装置では、一般に、ピット13内にリフト装置9を吊り下ろした状態で車両5を入出庫させるとき以外のときには入出庫口2を入出庫扉により閉じて、建屋1の内部を無人化するようにしてあるため、作業者がピット13内の水位を確認したり、該水位に応じてリフト装置9を直接操作することは困難である。
【0018】
図6に示したものでは、地下ピット15内に、浸水レベルが該ピット15の床面よりも所要量上部となる位置を異常レベルとして検出する異常検出器22を設けて、該異常検出器22による地下ピット15内の浸水レベルの検出信号を基に、車両積載用構造体(車両昇降装置)19を自動的に上昇させる考えが記載されていることから、この考えに鑑みて、図3に示した如きエレベータ方式の立体駐車装置において、浸水レベルがピット13の床面よりも所要量上部となる位置を異常レベルとして検出する異常検出器を設けて、該異常検出器による該ピット13内の浸水レベルの検出信号を基に、リフト装置9を自動的に上昇させるようにして、ピット13内でのリフト装置9の冠水防止対策を図ることが考えられる。しかし、このような対策を施したとしても、車両5の出庫作業終了後に、空のパレット6がセットされたリフト装置9をピット13内に吊り降ろした状態で待機させているときに、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋1が浸水してピット13内に多量の雨水等が急に浸入するようになる場合には、上記異常検出器でピット13内の浸水が検出されてからリフト装置9を上昇させようとするよりも早くピット13内の水位が上昇してしまい、リフト装置9の上方への退避が間に合わない可能性があり、このため、リフト装置9が冠水する虞を確実に解消できるものではない。
【0019】
そこで、本発明は、エレベータ方式の立体駐車装置にて、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋内のピットに多量の浸水が急に生じても、リフト装置の冠水を確実に防止することができる立体駐車装置のリフト装置冠水防止方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、建屋内に、入出庫口に通じる上下方向のリフト昇降部を設けてリフト装置を昇降駆動可能に収納し、且つ該リフト昇降部の下端となる建屋内底部にピットを設けて、該ピット内へ上記リフト装置を下降させることにより、上記入出庫口と該リフト装置の上側との間で車両の乗り入れ乗り出しを行わせることができるようにし、上記リフト装置を用いて入出庫作業を行うことができるようにしてある立体駐車装置における上記リフト装置を、入出庫作業を行わない待機時には2階以上の上階位置に待機させるようにすると共に、上記ピット内に水が溜まっている虞があるときには、上記リフト装置のピットへの下降を停止させて冠水を防止させるようにする立体駐車装置のリフト冠水防止方法、及び、建屋内に、入出庫口に通じる上下方向のリフト昇降部を設けてリフト装置を昇降駆動可能に収納し、且つ該リフト昇降部の下端となる建屋内底部にピットを設けて、該ピット内へ上記リフト装置を下降させることにより、上記入出庫口と該リフト装置の上側との間で車両の乗り入れ乗り出しを行わせることができるようにし、上記リフト装置を用いて入出庫作業を行うことができるようにしてある立体駐車装置における上記ピットに、排水マスを設けると共に、該排水マス内における水位の上昇を検出するための浸水センサを設け、更に、該浸水センサの信号を基に、上記リフト装置の昇降を制御する制御器を備えた構成を有する立体駐車装置のリフト冠水防止装置とする。
【0021】
又、上記において、ピット内に水が溜まっている虞があるか否かを、上記ピットの底部に設ける排水マス内における水位の上昇が検出されるか否かを基に判断するようにする方法とする。
【0022】
又、上述の構成において、制御器を、入出庫作業が行われていない待機時には、リフト装置を2階以上の上階に待機させる機能、及び、浸水センサにより排水マス内の水位の上昇が検出されるときには、リフト装置の上記ピットへの下降を防止する機能を有するものとした構成とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)建屋内に、入出庫口に通じる上下方向のリフト昇降部を設けてリフト装置を昇降駆動可能に収納し、且つ該リフト昇降部の下端となる建屋内底部にピットを設けて、該ピット内へ上記リフト装置を下降させることにより、上記入出庫口と該リフト装置の上側との間で車両の乗り入れ乗り出しを行わせることができるようにし、上記リフト装置を用いて入出庫作業を行うことができるようにしてある立体駐車装置における上記リフト装置を、入出庫作業を行わない待機時には2階以上の上階位置に待機させるようにすると共に、上記ピット内に水が溜まっている虞があるときには、上記リフト装置のピットへの下降を停止させて冠水を防止させるようにする立体駐車装置のリフト冠水防止方法、及び、上記と同様の構成としてある立体駐車装置における上記ピットに、排水マスを設けると共に、該排水マス内における水位の上昇を検出するための浸水センサを設け、更に、該浸水センサの信号を基に、上記リフト装置の昇降を制御する制御器を備えた構成を有する立体駐車装置のリフト冠水防止装置とし、更に、上記制御器を、入出庫作業が行われていない待機時には、リフト装置を2階以上の上階に待機させる機能、及び、浸水センサにより排水マス内の水位の上昇が検出されるときには、リフト装置の上記ピットへの下降を防止する機能を有するものとした構成としてあるので、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋に浸水が生じてピットに水が溜まるようになるときには、リフト装置がピット内へ下降しないようになるため、該リフト装置が冠水する虞を未然に防止できる。しかも、入出庫作業の間の待機中には、リフト装置は2階以上の上階の位置で待機するため、ピットへ多量の水が急に浸入しても、リフト装置が冠水する虞を確実に防止できる。したがって、該リフト装置に付設されている電気機器が水没して悪影響を受ける虞を未然に防止することが可能となる。
(2)上記において、ピット内に水が溜まっている虞があるか否かを、上記ピットの底部に設ける排水マス内における水位の上昇が検出されるか否かを基に判断するようにすることにより、雨天時における車両の入出庫作業に伴って建屋内に入る水を排出するために、上記のような立体駐車装置のピットの排水マスに一般に設けられている排水装置の排水能力を上回るような浸水が生じて、ピットに水が溜まる虞が生じる場合に、確実にリフト装置の冠水を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1(イ)(ロ)は本発明の立体駐車装置のリフト冠水防止方法及び装置の一形態を示すもので、図3に示したと同様の構成としてあるエレベータ方式の立体駐車装置において、ピット13の内底部所要個所に、排水マス23を設けると共に、該排水マス23の内底部より排水を行わせるための図示しない排水装置を設けて、雨天時における車両5の入出庫等に伴って建屋1内へ浸入する水の排水を行うことができるようにする。又、上記排水マス23における所要高さ位置には、水面レベルを検出するためのフロートスイッチ等の浸水センサ24を設ける。更に、上記浸水センサ24より入力される検出信号に応じて、後述する制御則に基づいて巻上装置11へ指令を与えてリフト装置9の昇降動作を制御する機能を有する制御器25を備えた構成とする。
【0026】
詳述すると、上記浸水センサ24を設置する高さ位置は、建屋1へ浸入する水量が、上記排水マス23に設けられている排水装置の排水能力を上回ることによって、該排水マス23内で水位が上昇していることを検出できるような高さレベル、たとえば、上記排水マス23における上部所要位置に設置するようにする。これにより、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋1に浸水が生じて、ピット13へ浸入する水量が上記排水装置の排水能力を上回って上記排水マス23内で水位が上昇し、該排水マス23がほぼ満杯なると、上記浸水センサ24より水面レベルの検出信号が出力されるようになる。この浸水センサ24からの検出信号が制御器25に入力されると、その後、直ぐに、排水マス13内に受けきれない水がピット13内に溜まり始めている虞があるとの判断ができるようにしてある。
【0027】
建屋1の入出庫口2は、図示しない入出庫扉を具備してなる構成としてある。又、該入出庫口2近傍となる建屋1の外部所要個所、たとえば、建屋1の外側壁に、車両5の入庫作業を開始させるための入庫開始スイッチ27と、出庫作業を開始させるための出庫開始スイッチ28と、上記入出庫口2の入出庫扉を閉じるための扉閉スイッチ29とを備えた操作盤26を設け、該操作盤26を上記制御器25に接続する。
【0028】
図2は上記制御器25における制御則の基本的な制御フローを示すもので、該制御器25は、前提条件として、入出庫作業の行われていない待機時には、リフト装置9を2階以上の上階に待機させるようにしてある(ステップ1:S1)。この待機状態のときに、上記操作盤26における入庫開始スイッチ27又は出庫開始スイッチ28が操作されて入出庫作業の開始が指示されると(ステップ2:S2)、上記制御器25は、上記浸水センサ24からの検出信号の入力の有無に基づいてピット13内の排水マス23が満杯となっているか否かを判断する(ステップ3:S3)。該ステップ3(S3)にて、上記浸水センサ24からの検出信号が入力されているときには、上記排水マス23が満杯となっており、その後、直ぐに、上記ピット13内に水が溜まり始めている虞があると判断できるため(ステップ4:S4)、この場合には、上記水が溜まり始めている虞のあるピット13内へ上記リフト装置9を吊り下ろして冠水させることがないように、上記リフト装置9のピット13内への下降を防止し(ステップ5:S5)、上記ステップ1(S1)の待機状態のまま保持させるようにしてある。
【0029】
一方、上記ステップ3(S3)にて、上記浸水センサ24からの検出信号が制御器25へ入力されていないときには、上記排水マス23が満杯となっておらず、したがって、上記ピット13内に水が溜まっている虞がないと判断できるため、制御器25は、図3に示した従来のエレベータ方式の立体駐車装置と同様にして、上記リフト装置9を、空パレット6を載置した状態、又は、出庫対象車両5の実車パレット6を搭載した状態でピット13内へ吊り降ろして、入庫作業又は出庫作業を開始させるようにしてあり(ステップ6:S6)、その後、所定の入出庫作業が完了すると(ステップ7:S7)、上記ステップ1(S1)に戻って、上記リフト装置9を、再び2階以上の上階まで上昇させた状態で待機させるようにしてある。
【0030】
更に、本実施の形態においては、上記制御器25は、図1(ロ)に示す如く、リフト装置9に具備された横送り装置10の作動を制御する機能と、入出庫口2の図示しない入出庫扉の開閉操作を制御する機能を併せて有するようにしてある。
【0031】
その他、図3に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0032】
以上の構成としてある、エレベータ方式の立体駐車装置を使用する手順について具体的に示す。車両5を入庫させる場合は、利用者(図示せず)が操作盤26により入庫開始スイッチ27を操作すると、制御器25はその信号を受けて、先ず、2階以上の上階に待機させてあるリフト装置9に、図3に示した従来のエレベータ方式の立体駐車装置における入庫作業と同様に、所要の棚7に対応する空のパレット6を載置させた状態とした後、巻上装置11に指令を与えて、該リフト装置9をピット13内まで下降させて上記空のパレット6が入出庫口2の内側に配置されるようにし、次いで、入出庫口2の入出庫扉を開放させるようにする。
【0033】
その後、利用者が、上記入出庫口2を通って空のパレット6上へ車両5を乗り入れた後、車両5から降りて入出庫口2より外部へ退出し、安全確認をした後、操作盤26の扉閉スイッチ29を操作すると、制御器25は、上記入出庫口2の入出庫扉を閉じた後、巻上装置11により上記リフト装置9を吊り上げて、上記車両5が搭載された実車パレット6を、駐車予定棚7の高さ位置に対応するまで上昇させ、しかる後、リフト装置9の横送り装置10により上記車両5をパレット6ごと横行させて該棚7に格納させる。その後、制御器25は、上記実車パレット6の棚7への格納によって空となるリフト装置9を、その場で停止させた状態で待機させるようにする。
【0034】
その後、続けて別の車両5の入庫を行わせるべく、上記操作盤26の入庫開始スイッチ27が操作されると、制御器25は、上記巻上装置11に指令を与えて上記リフト装置9を空のパレット6が収納されている所要の棚7と対応する位置まで昇降させ、該棚7の空のパレット6をリフト装置9に搭載させた後、該リフト装置9をピット13内まで下降させて、上記と同様の手順によって入庫作業を行わせるようにする。
【0035】
一方、建屋1内部に格納してある駐車車両5を出庫させる場合は、利用者が、操作盤26にて、たとえば、入庫時に各駐車車両5に割り当てられる番号等を図示しない入力キーを用いて入力することにより出庫作業の対象車両5を指定すると共に、該操作盤26の出庫開始スイッチ28を操作すると、上記制御器25はその信号を受けて、先ず、2階以上の上階にて、リフト装置9が空パレット6を搭載した状態で待機している場合には、予め、巻上装置11に適宜指令を与えてリフト装置9を、該リフト装置9上の空パレット6と対応する棚7に応じた位置まで昇降させてからリフト装置9の横送り装置10により上記空パレット6を対応する棚7へ格納させてリフト装置9を一旦空の状態とさせる。一方、リフト装置9が空で待機している場合にはその状態のままでよい。次に、制御器25は、図3に示した従来のエレベータ方式の立体駐車装置における出庫作業と同様に、巻上装置11に指令を与えて上記空のリフト装置9を出庫対象車両5が格納してある所要の棚7の高さ位置に対応するように昇降させてから、該棚7とリフト装置9の横送り装置10により、該棚7より出庫対象車両5の実車パレット6を横行させてリフト装置9上に搭載させる。次いで、制御器25は、巻上装置11に指令を与えて上記リフト装置9をピット13内へ下降させた後、入出庫口2の入出庫扉を開放させるようにする。
【0036】
この状態にて、利用者は、上記入出庫口2まで移送された出庫対象車両5を運転して、リフト装置9上のパレット6の上から入出庫口2を経て外部へ乗り出す。しかる後、上記利用者が安全を確認した後、操作盤26の扉閉スイッチ29を操作すると、制御器25は、上記入出庫口2の入出庫扉を閉じた後、上記巻上装置11に指令を与えて、上記車両5が出庫された後の空パレット6を載置してなるリフト装置9を、ピット13内より2階以上の上階、たとえば、図1(イ)に示す如く、2階位置まで上昇させた後、該位置で次の入出庫作業が開始されるまで待機させるようにする。
【0037】
更に、集中豪雨等の大雨時や洪水等により建屋1内に浸水が生じて、上記ピット13へ、該ピット13に付設されている排水装置の排水能力を越えるような多量の水が浸入すると、排水マス23内の水位レベルが上昇して浸水センサ24により検出されるようになり、この浸水センサ24からの検出信号が制御器25に入力されると、該制御器25では、ピット13内に水が溜まっている虞が生じていると判断し、巻上装置11に直ちに指令を与えてリフト装置9のピット13内への下降を行わせないようにする。
【0038】
すなわち、たとえば、入庫作業の開始前に上記浸水センサ24からの検出信号が制御器25へ入力される場合には、該制御器25は、巻上装置11への指令を与えないか、あるいは、停止指令を発することによって、2階以上の上階にて待機させてあるリフト装置9を、その待機位置のまま保持してピット13内へ下降させないようにする。
【0039】
又、入庫作業を行うべく空のパレット6を搭載したリフト装置9をピット13へ向けて下降させている途中で上記浸水センサ24の検出信号が制御器25へ入力されるようになる場合には、制御器25は、直ちに巻上装置11へ停止指令を与えることにより、リフト装置9の下降動作を直ちに停止させて、該リフト装置9のピット13内への下降を行わせないようにする。
【0040】
更に、入庫作業に伴って入庫した車両5の実車パレット6をリフト装置9に搭載して格納予定棚7へ搬送している途中で上記浸水センサ24からの検出信号が制御器25へ入力されるようになる場合には、その後、上記実車パレット6の格納予定棚7への移送作業を継続しても、リフト装置9がピット13へ下降することはないため、制御器25は、上述した入庫作業の場合と同様にして、リフト装置9を、格納予定棚7と対応する位置まで上昇させた後、リフト装置9から上記車両5をパレット6ごと棚7へ横行させて格納させ、しかる後、リフト装置9をその場で停止させて待機状態とさせるようにする。
【0041】
一方、出庫動作の開始前に上記浸水センサ24の検出信号が制御器25へ入力される場合には、該制御器25は、巻上装置11への指令を発しないことによって、2階以上の上階にて待機させるようにしてあるリフト装置9を、待機位置にそのまま保持してピット13内への下降を行わせないようにする。
【0042】
又、出庫作業を行うべく出庫対象車両5の実車パレット6を搭載したリフト装置9をピット13へ向けて下降させている途中で上記浸水センサ24の検出信号が制御器25へ入力されるようになる場合には、制御器25は、直ちに巻上装置11へ停止指令を与えることにより、リフト装置9の下降動作を直ちに停止させて、該リフト装置9のピット13内への下降を行わせないようにする。
【0043】
なお、上記入出庫作業の途中で浸水センサ24の検出信号に基づいてリフト装置9のピット13内への下降を停止させる場合には、リフト装置9の冠水を防止することを目的として該リフト装置9の動作を停止しているため、入出庫作業ができない旨を、操作盤26に表示する等して入出庫作業を行おうとしている利用者に知らせるようにすることが望ましい。
【0044】
その後、建屋1への浸水が止まって、排水マス23に装備されている排水装置の働きによりピット13内の水が排水されて、排水マス23における水位が低下すれば、浸水センサ24からの検出信号が制御器25へ入力されなくなるため、該制御器25は、リフト装置9のピット13内への下降を許可するようになる。このため、通常の入出庫作業を行うことができるようになる。
【0045】
このように、本発明の立体駐車装置のリフト冠水防止方法及び装置によれば、集中豪雨等の大雨時や洪水の発生等により建屋1に浸水が生じてピット13に多量の水が浸入して該ピット13内に溜まる虞が生じると、リフト装置9をピット13内へ下降させないようにしてあるため、該リフト装置9が冠水する虞を未然に防止できる。しかも、入出庫作業の間の待機中には、リフト装置9を、予め、2階以上の上階の位置で待機させるようにしてあるため、ピット13へ多量の水が速い速度で浸入しても、リフト装置9が冠水する虞を確実に防止できる。したがって、該リフト装置9に付設されている横送り装置10等の電気機器が水没して悪影響を受ける虞を未然に防止することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、入出庫口2の内側となる建屋1の内底部に設けたピット13と、その上方のリフト昇降部3でリフト装置9を昇降させることにより、建屋1の入出庫口2と建屋1内の格納スペース4との間で駐車車両5の移送を行うようにしてあるエレベータ方式の立体駐車装置であれば、たとえば、リフト装置9の昇降を、ワイヤーロープ12の巻上げ下げを行う巻上装置11以外の昇降駆動装置により行わせるようにした形式、リフト装置9と格納スペース4に多段に階層状に設けられた棚7との間でパレット6の受け渡しを行うための横送り装置をリフト装置9側あるいは棚7側のいずれか一方のみに設けるようにした形式、リフト装置の上側、及び、格納スペース4の各棚7に上側に車両を直接載置して横送りできるようにしてある横送り装置をそれぞれ具備して、入出庫口2よりピット13内へ吊り下ろした上記リフト装置の横送り装置上へ直接車両5を乗り入れさせた後、リフト装置9を所要の棚の位置まで上昇させてから、該リフト装置上と棚7側の各横送り装置を協働させて、リフト装置上から棚への車両の受け渡しを行えるようにした形式、その他、いかなる形式のエレベータ方式の立体駐車装置にも適用できる。又、建屋1の形状や建屋1内の格納スペース4における棚7の配置は適宜変更してもよい。
【0047】
操作盤26は、入庫開始スイッチ27と出庫開始スイッチ28と扉閉スイッチ29とを備えてなるものとして示したが、これらのスイッチ27,28,29はいかなる形式のものでもよく、その他に、入出庫させる車両5のデータや暗証番号等を入力するためのキーや、エレベータ方式の立体駐車装置の操作盤に従来備えられているような各種スイッチを適宜具備するようにしてもよい。更に、建屋1内が無人となることの確認や、安全確認を自動で行うことができれば、上記扉閉スイッチ29を省略してもよい。
【0048】
制御器25は、少なくとも入出庫作業の行われていない待機時に、リフト装置9を2階以上の上階に待機させる機能と、浸水センサ24からの検出信号の入力があるときには、リフト装置9のピット13内への下降を防止する機能とを有していればよく、リフト装置9に具備された横送り装置10の作動を制御する機能、入出庫口2の図示しない入出庫扉の開閉操作を制御する機能を別の制御器に持たせるようにしてもよい。あるいは、エレベータ方式の立体駐車装置を運用するために所望される制御機能を併せ持つようにしてもよい。
【0049】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の立体駐車装置のリフト冠水防止方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は駐車装置全体を示す概略切断側面図、(ロ)は制御系統を示す概要図である。
【図2】図1の装置の制御器における基本の制御フローを示す図である。
【図3】従来のエレベータ方式の立体駐車装置を示す概略切断側面図である。
【図4】従来提案されている地下ピット昇降式の立体駐車装置の一例を示す概要図である。
【図5】地下ピット昇降式の立体駐車装置における昇降駆動装置の冠水を防止するために従来提案されている手法を示す概要図である。
【図6】地下ピット昇降式の立体駐車装置における車両の水没事故を防止するために従来提案されている手法を示す概要図である。
【符号の説明】
【0051】
1 建屋
2 入出庫口
3 リフト昇降部
4 格納スペース
5 車両
7 棚
9 リフト装置
13 ピット
23 排水マス
24 浸水センサ
25 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に、入出庫口に通じる上下方向のリフト昇降部を設けてリフト装置を昇降駆動可能に収納し、且つ該リフト昇降部の下端となる建屋内底部にピットを設けて、該ピット内へ上記リフト装置を下降させることにより、上記入出庫口と該リフト装置の上側との間で車両の乗り入れ乗り出しを行わせることができるようにし、上記リフト装置を用いて入出庫作業を行うことができるようにしてある立体駐車装置における上記リフト装置を、入出庫作業を行わない待機時には2階以上の上階位置に待機させるようにすると共に、上記ピット内に水が溜まっている虞があるときには、上記リフト装置のピットへの下降を停止させて冠水を防止させるようにすることを特徴とする立体駐車装置のリフト冠水防止方法。
【請求項2】
ピット内に水が溜まっている虞があるか否かを、上記ピットの底部に設ける排水マス内における水位の上昇が検出されるか否かを基に判断するようにする請求項1記載の立体駐車装置のリフト冠水防止方法。
【請求項3】
建屋内に、入出庫口に通じる上下方向のリフト昇降部を設けてリフト装置を昇降駆動可能に収納し、且つ該リフト昇降部の下端となる建屋内底部にピットを設けて、該ピット内へ上記リフト装置を下降させることにより、上記入出庫口と該リフト装置の上側との間で車両の乗り入れ乗り出しを行わせることができるようにし、上記リフト装置を用いて入出庫作業を行うことができるようにしてある立体駐車装置における上記ピットに、排水マスを設けると共に、該排水マス内における水位の上昇を検出するための浸水センサを設け、更に、該浸水センサの信号を基に、上記リフト装置の昇降を制御する制御器を備えた構成を有することを特徴とする立体駐車装置のリフト冠水防止装置。
【請求項4】
制御器を、入出庫作業が行われていない待機時には、リフト装置を2階以上の上階に待機させる機能、及び、浸水センサにより排水マス内の水位の上昇が検出されるときには、リフト装置の上記ピットへの下降を防止する機能を有するものとした請求項3記載の立体駐車装置のリフト冠水防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−138431(P2007−138431A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330314(P2005−330314)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)