説明

立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の製造方法

(a)粉の最大粒子サイズが2μm以上で、かつ1mm以下の結晶質のダイヤモンド粉を供給すること;(b)微粉を製造するために、窒素ジェットミリングによる微粒子化を用いて前記結晶質のミクロンダイヤモンド粉を粉砕すること;(c)炭化タングステンの遊星ボールミルを用いてステップb)に記載の微粉をナノミリングすること;(d)ステップc)に記載のナノミリングされた粉を酸処理すること;(e)遠心分離によって立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)を抽出すること;の連続したステップを含む、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)を製造する方法。有利には円形の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の製造方法に関する。本発明は同様に、本発明の方法に従って製造することができる、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノダイヤモンドは、超小型の高度に結晶化したc−ダイヤモンドである。ナノダイヤモンドのサイズは通常100nm以下で、かつ、たとえば約5nmのように10nm以下でありうる。
【0003】
ナノダイヤモンドは、光学活性欠陥に関する固有の蛍光性の理由で、近来、物理学、化学および生物学における応用のため、増大する関心を集めてきた。
【0004】
異なる実施形態によって、
− ダイヤモンドの単離した色中心は物理学において量子計算、量子暗号のための単一光子源として用いられ、かつ同様にNV(窒素格子欠陥)を添加したナノダイヤモンドを、革新的なナノスケールの画像磁力測定のために、mGの桁での原子(nm未満)空間分解能および感度に達する磁界センサとして用いることができ、
− 生物学においては、ダイヤモンドの色中心の例外的な光安定性が、単一分子の画像化および追跡における多くの応用を開拓し、実際、10nm未満の蛍光ナノダイヤモンドは、細胞内力学のための単粒子追跡のために理想的に適応し、このような小サイズのため、細胞媒体中の拡散への影響は劇的に低減され、明滅が無いことは、フレームとフレームの対応の問題を解決するための追跡アルゴリズムの必要がより少ない、はるかに容易な軌道再建をし、それらが従来の蛍光団によって達成可能でない長期間の反復的測定を継続するので、それらは同様に生化学および生命過程の定量的側面(DNAチップ、定量的PCR、衛生および疾患における遺伝子産物の免疫学的検出法)のために使われることができ、生物学においては、超小型フォトルミネッセンス・ナノダイヤモンドで分子(核酸、ペプチドまたはタンパク質)を標識付けする可能性は定量的生物学の新しい可能性を開き、
− 材料科学および工業においては、純粋で構造的に明確に定義されたダイヤモンドのナノ粒子は薄膜CVDダイヤモンド合成のためのシード添加基板として有益に用いられることができ、かつその目的のために実際に使用する爆発法ナノダイヤモンドを置き換え、たとえばハードディスク・コンピュータ産業におけるように、形状が制御されたダイヤモンドのナノ粒子を、超低粗度表面が必要な研摩材として用いることができ、それらは同様に、切削材の製造または、たとえば生物電子工学のような特定の応用、または次世代集積回路のために使用されることができ、ナノダイヤモンドは、固い、変更不能なオーバレイを得るために、レンズおよび材料をコーティングするために有利に用いることができるように、
用いることができる。
【発明の概要】
【0005】
一般的に用いられるナノダイヤモンドは、ダイヤモンド材料が爆発から生じる爆発法ナノダイヤモンドである。直径約5nmのダイヤモンド粒子は、RDX(シクロトリメチレントリニトラミン)およびTNT(トリニトロトルエン)の混合物を爆発させるときに形成される。
【0006】
合成の後、ダイヤモンドは、酸の中での長期間の高温高圧沸騰で煤煙から抽出される。爆発法ナノダイヤモンド粒は大抵はダイヤモンド立方格子を有し、構造的に不完全でかつ形状は均一でなく、複数のファセットを含む。
【0007】
たとえば爆発法ナノダイヤモンドのような、周知のナノダイヤモンドの実使用上の主要障害は、製造方法の低い信頼性および前記ナノダイヤモンドの不均一形状である。
【0008】
従って、本発明の目的は、均一形状のナノ結晶を製造するための信頼性が高く、かつ適切な、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を製造する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この目的は、
(a)粉の最大粒子サイズが2μm以上で、かつ1mm以下の結晶質のダイヤモンド粉を提供すること、
(b)微粉の最大粒子サイズが2μm未満である上述の微粉を製造するために、窒素ジェットミリングによる微粒子化を用いて、上述の結晶質のミクロンダイヤモンド粉を粉砕すること、
(c)ナノミリングされた、最大サイズが100nm以下の粒子を含む粉体を製造するために、炭化タングステンの遊星ボールミルを用いて、ステップb)に記載の微粉をナノミリングすること、
(d)ステップc)において発生した可能性のある炭化タングステン粒子を溶解するために、ステップc)に記載のナノミリングされた粉体を酸処理すること
(e)遠心分離によって立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を抽出すること
の連続したステップを含んでいる、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を製造する方法により、本発明に従って達成される。
【0010】
本発明の方法の結果、10nm未満の一般的なサイズを有する超小型円形立方晶ダイヤモンドのナノ結晶でできているナノ炭素材料が得られた。
【0011】
本発明の方法は、物理学、素材産業、化学、生物学のような多数の応用に適した、純粋またはドーピングされた超小型で高度に結晶化したC−ダイヤモンドのナノ粒子の費用効率の高い工業的製造の道を開く。
【0012】
結合されることができる本発明の異なる実施形態によって、
− ステップ(a)に記載の結晶質のミクロンダイヤモンド粉の粒子は、10μmおよび200μmの間を含む最大サイズを有し、
− ステップ(c)に記載の窒素ジェットミリング微粒子化が少なくとも5barの研磨圧力で1時間から5時間持続し、
− 6%のコバルト添加の炭化タングステン合金のくぼみ、蓋および、ボールのサイズが5mmから30mmを含むボールで、ステップ(c)に記載のナノミリングが実施され、
− くぼみの外壁温度が約60℃未満、たとえば約50℃以下、に保たれるように、冷却期間によって分割される複数の連続した期間で、ステップ(c)に記載のナノミリングが実施され、
− ステップ(d)に記載の酸処理は、100℃および200℃の間を含む温度での、フッ化水素酸および硝酸混合を有するオートクレーブ処理を含み、
− ステップ(e)に記載の抽出の間に、超純水がステップ(d)に記載の酸処理から生じるサンプルに加えられ、前記混合物が遠心分離され、かつ第1酸性ペレットが酸の上澄みを廃棄した後に集められ、
− 第1酸性ペレットがpHが1以下の少量の超純水中に懸濁され、前記混合物が遠心分離され、かつ第2ペレットが酸の上澄みを外へ廃棄した後に集められ、
− 第2ペレットが超純水の中に懸濁され、アンモニア水溶液によって中和されて遠心分離され、かつ結果として生じる上澄みが貯められ、濾過によって脱塩される。
【0013】
本発明は同様に、
− ダイヤモンドのナノ結晶が円形であり、
− ダイヤモンドのナノ結晶の表面がその層の原子領域数が1以下であるアモルファス炭素層を含み、
− ダイヤモンドのナノ結晶が0から2000ppmのドーパント、50ppm以下の不純物を含む炭素を含む、
最大サイズが100nm以下の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶に関する。
【0014】
異なる実施形態によれば、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶は、
− 前記ナノ結晶が蛍光性であり、かつドーパントが窒素(N)またはニッケル(Ni)と結合した窒素であり、
− 前記ナノ結晶は蛍光性でなく、かつドーパントはボロン(B)、リン(P)を含む一覧から選択され、
− ダイヤモンドのナノ結晶の最大サイズは100nm以下で、たとえば約5nmのように、10nm以下でありうる、
結合されることができる特徴を有することができる。
【0015】
本発明は同様に、任意の前述の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶で標識付けされる分子を対象にする。
【0016】
本発明は同様に、前述の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶をグラフトすることを含む、分子に標識付けをする方法に関する。
【0017】
本発明は同様に、生体分子標識付け、生体分子ベクトル化、生体分析、量子情報処理、磁力測定、映像化技術、化学蒸着析出ダイヤモンド合成ナノコンポジット構成要素を含む一覧から選択される技術分野における、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の使用において、前述の立方晶ナノ結晶の使用に関する。
【0018】
本発明は、下記に記載および説明されるように、非制限的な実施例および実施形態の詳細な記載において更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の透過型電子顕微鏡画像およびデータを示す。
【図2】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の透過型電子顕微鏡画像およびデータを示す。
【図3】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の透過型電子顕微鏡画像およびデータを示す。
【図4】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の透過型電子顕微鏡画像およびデータを示す。
【図5】本発明の方法に従って、得られた立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の対数正規分布を示す。
【図6】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の原子間力顕微鏡プロットを示す。
【図7a】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の分光学プロットを示す。
【図7b】本発明による立方晶ダイヤモンドのナノ結晶の分光学プロットを示す。
【0020】
本発明の方法の一実施形態によれば、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶は、以下のようにして得られる。
【0021】
− 初期原料は、極めて高い耐久性、熱的安定性および衝撃強さを有する、80−100メッシュ(187−150μm)のずんぐりして非常に均一な立方八面体形状のダイヤモンド結晶を含む、高度に結晶質の合成ミクロンダイヤモンド粉(「Element Six PDA999 80−100」として商業化された)である。
【0022】
− これらのマイクロダイヤモンドをより小さい粒子に変換するために、鉄化合物による重大な汚染を引き起こすステンレス鋼ビードを用いる遊星ミルによる粉砕よりも好まれる、窒素ジェットミリング自己微粒子化が用いられる。
【0023】
− 初期原料の250gの試料が、窒素流量60m/hおよび高研磨圧力(8bar)で、100AFG対向ジェット流動床ミル(ドイツのHosokawa−Alpine社によって商業化された)中で2時間かけて、純粋な微粉へと最初の微粒子化がなされ、このステップの後、純粋な灰色の微粉(2μm未満のサイズを有する粒子が97%の)が得られる。
【0024】
− ジェットミリング生成物をナノダイヤモンド(ND)に変換するために、この灰色の微粒子化された粉からの10グラムの部分試料を用いて、その後ナノミリング処置が開始される。部分試料は、2つの弁(アルゴン下での粉砕用)および、同じ炭化タングステン−コバルト超硬合金製の30個の10mmのボールを備えた、6%のコバルト添加の炭化タングステン硬質合金のくぼみおよび蓋を有する、「Vario Planetary Mill, Pulverisette 4」(ドイツのFritsch社によって商業化される)という名の遊星ボールミルを用いて、アルゴン下でボールミル粉砕される。ボールに対する粉体の重量比Rは、1/35である。メインディスクの絶対速度は400回転/分であり、かつ、支持ディスクに関するバイアルの相対回転速度は−2.17である。
【0025】
− 72時間かかる手順で、部分試料は、15分間の連続する期間でボールミル粉砕され、各期間は30分間の冷却期間で分割される(24時間の有効研磨時間)。くぼみの外壁で測定される温度は約50℃である。このプログラムされた段階的研磨モードは、粉砕温度を室温と50℃の間に制御するためには、バイアル周辺で液体窒素を流すより好都合であることがわかっている。
【0026】
− 粉砕の後、ビードはふるい分けによって回収され、粉末試料は粉砕ダイヤモンド(MD)と呼ばれる。粉砕によって発生し、かつふるい分けによって回収されないMD試料中に存在する最も微細な炭化タングステン粒子は、強酸処理によって溶解され、MD試料の750mgの部分試料は100mlのテフロン・オートクレーブ中(200ml、「Zeoclave」−Autoclave France社によって商業化される)に30mlのフッ化水素酸および硝酸混合(2/1v/v)と共に150℃で48時間置かれる。
【0027】
− 酸処理の完了後、過剰の「ミリQ」超純水(MQW)が最大100mlまで試料に加えられ、ダイヤモンド試料はこれらの酸の条件下で沈殿するため、試料はその後、遠心分離(25℃で4000 x g、30分)の前に機械的に分散され、収集したペレットは酸の上澄みを流出させ、かつ廃棄するのに十分堅く、NDの精製度を高めるために、この第1ペレットは小容積のMQW中で強く振動させることにより懸濁される。遠心分離(4000 x g、30分)の後、強い酸性の上澄みは廃棄され、かつその後沈殿ナノダイヤモンドを含んでいたペレットが50mlのMQW中で懸濁される。この新規の懸濁は最終的に水性アンモニア溶液によって中和され、かつ再び遠心分離され(4000 x g、30分)、結果として生じる。微細なダイヤモンドのナノ粒子を含む上澄みは、更なる処理のために貯蔵される。微細なダイヤモンドのナノ粒子の抽出を完了させるために、残留するペレットは50mlのMQW中で再懸濁され、かつ2倍の回数で遠心分離される(4000 x g、30分)。3つの中性の上澄みは、その後貯蔵されて、Biomax膜を備えているMillipore Pellicon XLカセットを用いてタンジェンシャルフロー濾過によって脱塩される。ここで得られる精製された試料は、P(残留ペレット)およびND(貯蔵、濃縮、および脱塩された上澄み)と名づけられる。この3種類の試料は、Buchi Rotavaporを使用して乾燥される。X線回折および表面群分析のために部分試料がとられる。別のものは、透過型電子顕微鏡観察およびEDX分析のためのMQW中で再懸濁される。PおよびNDの質量はMD質量か、または乾燥した純粋ダイヤモンドの総質量(P+ND)と関連して表されるようにして得られる。
【0028】
この実施形態に従う準備収率は、ステップc)に記載のナノミリングされた粉の重量%で、ND=10.6%、P=59.9%、汚染(WCその他)=29.5%である。
【0029】
透過電子顕微鏡解析は、スーパーツインポーラーピース(super−twin polar pieces)を備えて、かつ200kVで作動する、「FEI F−20ST」(Philips社によって商業化される)電界放出型透過顕微鏡上で実施される。TEMと連動するエネルギー分散型X線(EDX)分析は、選択領域の元素組成を識別するために用いられる。画像は、ほぼScherzer焦点はずしで非点収差補正の後CCDマルチスキャンカメラ上に記録されて、最終的にDigital Micrographソフトでフィルターをかけられる。水の中で試料の超音波分散によって5mmに調整された透過型電子顕微鏡のための材料は、穴のあいた炭素で被覆される銅の格子上に沈殿される。沈殿懸濁物は、その後、透過電子顕微鏡解析の前に空気で乾燥される。炭素材料の同素変態を誘発する いかなる電子照射損傷をも回避するために、弱められたビーム強度が用いられ、長時間曝露の後でさえ、爆発法ナノダイヤモンドで一般に観察されるような相変化は観察されない。X線回折(XRD)は、粉砕前および直後の試料構造および構成を断定するために用いられる。Shimadzu Lab社によって商業化された、放射Cu(Kαλ)=1.54056Åを有するX線回折計「XRD−6000」を用いて、データが収集される。
【0030】
表面群の分析は、昇温脱離質量分析法によって行われる。約5mgのダイヤモンドのナノ結晶の小さい乾燥試料は、るつぼに入れられ、ネオン1体積パーセント(99/1、vol/vol)を有する、流速1分間10cmのヘリウム中、大気圧において1分間当たり30℃で、100から1450℃まで加熱される。生成ガスは、連続的に監視され、かつ質量分析器によって定量化される。CO発生推移は、分子状窒素によるm/z28寄与から補正される。システムは、1%のネオンを有する純粋なヘリウムのガス混合体を使用して較正される。各々の質量の信号振幅は、ネオンのm/z20信号振幅と比較される。おそらく有極性の水分子と加熱器と検知器間の移送路の内壁との相互作用の理由で、加熱された試料から物理的に水を取り除くことは幅広いピークを発生させる。試料の水分を評価するために、それ故、乾燥して灰分のない状態での有機炭素または全炭素含有量に関してガス収率を補正するために、統合された水ピークが用いられる。
【0031】
除染および微細抽出の後得られる完全に精製されたND試料は、図1から4に示すように純粋なナノ結晶質のダイヤモンドでできている。
【0032】
図1は、スケールバーが20nmであるND立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を示す。
【0033】
図2は、NDダイヤモンドのナノ結晶のより詳細な図を示す。{111}面の平行格子面間の距離は
【数1】


で、a=3.5625Åは単位格子寸法で、θ=0.6154radは{111}面と{110}面の角度である。{400}面の平行格子面間の距離は
【数2】


である。
【0034】
(110)格子のフリンジに対応するHRTEM高速フーリエ変換(FFT)位相画像は、ダイヤモンド格子のいかなる局所変形も示さなかった。ナノダイヤモンドが観察用サポート(穴のある炭素被覆されるTEM銅格子)上にランダムに堆積されているため、サポート上のダイヤモンドのブラッグ平面によって形成される多面体の影は楕円膜を伴う変形した平坦な多角形のように見え、かつアスペクト比は1.13から1.75まで変化する(2〜50nmの粒子サイズ範囲の平均値=1.37)。実際、不鮮明な多角形の影(図3に示すように)は、おそらく平面サポート上に完全に整列配置されない自形のダイヤモンドの投影から生じる。
【0035】
興味深いことに、最初の均一な立方八面体形のダイヤモンド結晶から派生するこれらの粒子の円形形状は、それらの破砕性の理由で選択された、Ibタイプの介在物の豊富な高温高圧ミクロンダイヤモンド結晶を鋼球粉砕することによって得られる、商業的なダイヤモンドのナノ粒子の角形状と、顕著に異なる。
【0036】
ND結晶の回折データは、図4に報告される。
【0037】
ND結晶の分布を調査するために、画像上の等価な断面積の球の直径の代わりに、楕円の短軸に対応する直径dが採用されると、d=2(A/p)1/2で、Aは、ナノ粒子の投影面積である。ND結晶の分布は過剰な歪みおよび尖度を示し、図5に示すように3.25でおこる最頻値および平均値3.5±0.3を有するND結晶の標準対数正規分布式によりよく適合しうる。分布の対数正規特性は、おそらく、所与の倍率および機器のパラメータの組み合わせのために、それ以下ではサイズ情報が検出可能でない解像限界があるという事実から生じるのであろう。ND結晶の平均サイズ(3.25および3.5nm)は、破砕によって製造されるダイヤモンド粗粒子で予測される最小サイズ(30nm)よりもはるかに下であり、かつ最も小さい合成または天然ナノダイヤモンドとして報告されているものと同じ桁である。本発明のND結晶の前記サイズは、それらの予測された物理化学的安定限界に近い。
【0038】
前述の製造実施形態に従って得られた立方晶ダイヤモンドのナノ結晶は、それらの潜在的蛍光性特徴の観点から調査された。200から400μmを含むサイズのナノ結晶は、窒素格子欠陥(NV)を作り出すために、電子照射を受け、かつ焼きなましされた。
【0039】
前記ドーピングしたダイヤモンドのナノ結晶を、明視野透過顕微鏡を使用して光学観察すると、紫色の混合物が見える。前記ドーピングしたダイヤモンドのナノ結晶を、蛍光性顕微鏡を使用して光学観察すると、赤色の混合物が見える。
【0040】
図6は、結晶のサイズが約250から300nmと推定され得るこの種のドーピングしたダイヤモンドのナノ結晶の原子間力顕微鏡(AFM)によるプロットを示す。
【0041】
図7aは、AFMによるプロットが図6に報告されている、ドーピングしたダイヤモンドのナノ結晶の、フォトルミネッセンス・スペクトルを示す。
【0042】
フォトルミネッセンス・スペクトルにおいて、蛍光強度Iが波長に従ってプロットされる。
【0043】
前記スペクトルは、約725nmで最大強度を有する一般的なNCセンター放出フォトルミネッセンス・スペクトルである。
【0044】
図7bは、同じダイヤモンドのナノ結晶の二次蛍光性自己相関関数g(2)(τ)を示す。前記機能のディップの対照分析は、蛍光を発している欠陥の数を決定することを可能にする。本実施例では、対照は、0.08であって、ダイヤモンドのナノ結晶の12NVの発光体に対応する。
【0045】
このように、本発明による方法が、新規で有利な立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を製造可能にすることが証明された。
【0046】
本発明は、一般的な発明の概念の限定のない実施形態を用いて、上記に記載されてきて、特に、本発明の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶を製造する方法のパラメータは、変化させることができ、記載された実施例に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粉の最大粒子サイズが2μm以上で1mm以下の結晶質のダイヤモンド粉を提供すること、
(b)微粉の最大粒子サイズが2μm未満である上述の微粉を製造するために、窒素ジェットミリングによる微粒子化を用いて、上述の結晶質のミクロンダイヤモンド粉を粉砕すること、
(c)ナノミリングされた、最大サイズが100nm以下の粒子を含む粉体を製造するために、炭化タングステンの遊星ボールミルを用いて、ステップb)に記載の微粉をナノミリングすること、
(d)ステップc)において発生した可能性のある炭化タングステン粒子を溶解するために、ステップc)に記載のナノミリングされた粉体を酸処理すること
(e)遠心分離によって立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)を抽出すること、
の連続したステップを含む、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)を製造する方法。
【請求項2】
ステップ(a)に記載の結晶質のミクロンダイヤモンド粉が、10μmおよび200μmの間を含む最大サイズを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)に記載の窒素ジェットミリングによる微粒子化が少なくとも5barの研磨圧力で1時間から5時間持続する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
6%のコバルト添加の炭化タングステン合金のくぼみ、蓋および、ボールのサイズが5mmから30mmを含むボールで、ステップ(c)に記載のナノミリングが実施される、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
くぼみの外壁温度が約60℃未満、たとえば約50℃以下、に保たれるように、冷却期間によって分割される複数の連続した期間で、ステップ(c)に記載のナノミリングが実施される、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)に記載の酸処理が、100℃および200℃の間を含む温度での、フッ化水素酸および硝酸混合を有するオートクレーブ処理を含む、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(e)に記載の抽出の間に、超純水がステップ(d)に記載の酸処理から生じる試料に加えられ、前記混合物が遠心分離され、かつ第1ペレットが酸の上澄みを廃棄した後に集められる、請求項1から6のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1ペレットが硫酸を添加したpHが1以下の超純水中に懸濁され、前記混合物が遠心分離され、かつ第2ペレットが酸の上澄みを外へ廃棄した後に集められる、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第2ペレットが超純水の中に懸濁され、アンモニア水溶液によって中和されて遠心分離され、かつ結果として生じる上澄みが貯められ、濾過によって脱塩される、請求項1から8のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)が円形であり、ダイヤモンドのナノ結晶の表面が、その層の原子領域数が1以下であるアモルファス炭素層を含み、ダイヤモンドのナノ結晶(10)が、0〜2000ppmのドーパント、50ppm以下の不純物を含む炭素を含む、最大サイズが100nm以下の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)。
【請求項11】
前記ナノ結晶が蛍光性であり、かつドーパントが窒素(N)またはニッケル(Ni)と結合した窒素である、請求項10に記載の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)。
【請求項12】
ダイヤモンドのナノ結晶の最大サイズが100nm以下、たとえば10nm以下、である、請求項10または11の請求項に記載の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)。
【請求項13】
請求項11に記載の、立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)で標識付けされる分子。
【請求項14】
請求項10から12のうちいずれか1項の請求項に従って立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)をグラフトすることを含む、分子を標識付けする方法。
【請求項15】
生体分子標識付け、生体分子ベクトル化、生体分析、量子情報処理、磁力測定、映像化技術、化学蒸着析出ダイヤモンド合成を含む一覧から選択される技術分野における、請求項10から12のうちいずれか1項の請求項に記載の立方晶ダイヤモンドのナノ結晶(10)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2012−519647(P2012−519647A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553413(P2011−553413)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052910
【国際公開番号】WO2010/102977
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【出願人】(507199942)
【Fターム(参考)】