説明

端子付電線の製造方法、端子付電線及び成型装置

【課題】電線と端子との接続部分に保護膜を形成する際に、必要膜厚をなるべく確実に確保できるようにすることを目的とする。
【解決手段】電線12と端子20との接続部26の表面に保護膜30が形成された端子付電線10を製造する方法であって、(a)露出芯線部13aに端子20が接続された電線12を準備する工程と、(b)前記電線12と端子20との接続部26を、下型42に形成された溝44内に配設する工程と、(c)前記溝44内に保護剤を流し込む工程と、(d)前記溝44内に流し込まれた保護剤を、前記接続部26の表面を覆った状態で固化させて、保護膜30を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線と端子との接続部分に保護膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子と導体との接続部のまわりに樹脂を塗布して保護膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、端子と導体との接続部表面は複雑な凹凸形状を呈しているため、特許文献1に開示の技術では、保護に必要な膜厚を確保できない恐れがあった。凹凸形状を呈する表面に樹脂を塗布するだけでは、突起部分等で膜厚が薄くなってしまう恐れがあるからである。
【0005】
そこで、本発明は、電線と端子との接続部分に保護膜を形成する際に、必要膜厚をなるべく確実に確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様は、電線と端子との接続部の表面に保護膜が形成された端子付電線を製造する方法であって、(a)芯線に端子が接続された電線を準備する工程と、(b)前記電線と前記端子との前記接続部を、型に形成された溝内に配設する工程と、(c)前記溝内に保護剤を流し込む工程と、(d)前記溝内に流し込まれた保護剤を、前記接続部の表面を覆った状態で固化させて、保護膜を形成する工程とを備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記保護剤として、熱硬化性材料を用い、前記工程(d)では、加熱された前記型によって前記熱硬化性材料を硬化させる。
【0008】
第3の態様は、第2の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記工程(c)において、前記型を加熱した状態で、前記溝内に保護剤を流し込む。
【0009】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記接続部から前記端子の相手方端子接続部側への流出を抑制する流出抑制壁を配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される。
【0010】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記接続部の上方に天井部を配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される。
【0011】
第6の態様は、第4の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記流出抑制壁部から前記接続部の上方を通って前記電線の被覆部に達する位置に延出する天井部を、前記接続部の上方に配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される。
【0012】
第7の態様は、第6の態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記天井部に前記保護剤注入用の孔が形成されている。
【0013】
第8の態様は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係る端子付電線の製造方法であって、前記溝は、前記電線の被覆部のうち前記端子側の端部で狭くなっている。
【0014】
第9の態様に係る端子付電線は、端部に露出した芯線を有する電線と、前記電線の芯線に接続された端子と、前記電線と前記端子との接続部を前記溝内に配設した状態で、前記溝内に流し込まれた保護剤が固化することにより形成され、前記接続部の表面を覆う保護膜とを備える。
【0015】
第10の態様に係る成型装置は、電線と端子との接続部の表面に保護膜が形成された端子付電線を製造するための成型装置であって、前記電線と前記端子との前記接続部を配設可能な溝を有する型と、前記溝内に保護剤を供給する保護剤供給部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様に係る端子付電線の製造方法によると、溝内に流し込んだ保護剤を固化させることで保護膜を形成しているため、必要膜厚をなるべく確実に確保できる。
【0017】
第2の態様によると、金型を加熱することで、熱硬化性材料を迅速に硬化させることができる。
【0018】
第3の態様によると、溝内に保護剤を流し込むと、保護剤を迅速に固化させることができ、余分な部分への流れ出しを抑制することができる。
【0019】
第4の態様によると、相手側端子接続部側での保護膜の形成が抑制される。
【0020】
第5の態様によると、接続部上での保護膜の厚みを規制できる。
【0021】
第6の態様によると、接続部上ほぼ全体で保護膜の厚みを規制できる。
【0022】
第7の態様によると、天井部で覆われている接続部を中心に保護剤を注入でき、接続部周りにより確実に保護膜を形成できる。
【0023】
第8の態様によると、被覆部側への保護剤の流れ出しを抑制できる。
【0024】
第9の態様に係る端子付電線によると、前記電線と前記端子との前記接続部を溝内に配設した状態で、前記溝内に流し込まれた保護剤が固化することにより保護膜が形成されているため、必要膜厚をなるべく確実に確保できる。
【0025】
第10の態様に係る成型装置によると、前記電線と前記端子との前記接続部を溝内に配設した状態で、前記溝内に保護剤を供給して当該保護材を固化させることで、保護膜を形成することができる。このため、必要膜厚をなるべく確実に確保できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る端子付電線を示す概略側面図である。
【図2】同上の端子付電線を示す概略平面図である。
【図3】成型装置を示す概略斜視図である。
【図4】同上の成型装置を示す概略断面図である。
【図5】溝内に保護剤を流し込んだ状態を示す概略部分断面図である。
【図6】図5のVI−VI線における概略断面図である。
【図7】第1変形例に係る成型装置を示す概略断面図である。
【図8】溝内に保護剤を流し込んだ状態を示す概略部分断面図である。
【図9】図8のIX−IX線における概略断面図である。
【図10】第2変形例に係る溝を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る端子付電線の製造方法、端子付電線及び成型装置について説明する。
【0028】
図1は端子付電線10を示す概略側面図であり、図2は端子付電線10を示す概略平面図である。この端子付電線10は、電線12と端子20と保護膜30を備えている。
【0029】
電線12は、芯線部13の外周に被覆部14が押出被覆等によって被覆された構成とされている。芯線部13は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属線の単線又は撚り合わせ線によって構成されている。ここでは、芯線部13が、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属線を複数より合わせることによって構成されている例で説明する。また、電線12の端部の被覆部14が皮剥され、電線12の端部に露出芯線部13aが形成されている。
【0030】
端子20は、銅、銅合金等の金属板材を適宜プレス加工等することにより形成されている。端子20の表面には、スズ、ニッケル等のメッキ層が形成されていてもよい。ここでは、端子20の表面にスズメッキ層が形成されている例で説明する。
【0031】
端子20は、電線接続部22と相手側端子接続部28とを有している。
【0032】
相手側端子接続部28は、相手側の端子等と接続される部分であり、ここでは、略筒状の形状、いわゆるメス端子としての形状に形成されている。そして、この相手側端子接続部28に、ピン状或はタブ状の接続部を有する相手側端子(いわゆるオス端子)が挿入接続される。また、相手側端子接続部28の底部の一部にU字状のスリットを形成して下方に切り起すことにより下方に延出するスタビライザ29が形成されている。このスタビライザは、本端子20をコネクタのキャビティ内に挿入する際、当該キャビティに形成された溝内に案内される。これにより、キャビティ内で端子20が一定姿勢に維持されるようになっている。
【0033】
もっとも、相手側端子接続部28は、ピン状或はタブ状の形状、いわゆるオス端子としての形状に形成されていてもよく、また、ねじ等によって相手側の部材に接続可能な環状形状に形成されていてもよい。
【0034】
電線接続部22は、電線12の端部に接続可能に構成されている。ここでは、電線接続部22は、底板部23と、一対の被覆圧着片24と、一対の芯線圧着片25とを有している。底板部23は、相手側端子接続部28の基端部側に延出する長尺板状に形成されている。一体の被覆圧着片24は、底板部23の端部の両側部より延出する長尺片状に形成されている。電線接続部22のうち一対の被覆圧着片24が形成された部分は、断面略U字状に形成されている。一対の芯線圧着片25は、一対の被覆圧着片24と相手側端子接続部28との間で、底板部23の端部の両側部より延出する長尺片状に形成されている。電線接続部22のうち一対の芯線圧着片25が形成された部分は、断面略U字状に形成されている。
【0035】
そして、上記一対の芯線圧着片25が露出芯線部13aを抱持するように当該露出芯線部13aに圧着されると共に、一対の被覆圧着片24が被覆部14の端部を抱持するように当該被覆部14に圧着されることにより、電線12の端部と端子20とが接続されている。ここでは、一対の芯線圧着片25が露出芯線部13aに圧着された部分を、電線12と端子20との接続部26という。もっとも、露出芯線部13aと端子20との接続は、圧着による場合に限られず、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接、半田付による接合を利用したものであってもよい。
【0036】
なお、相手側端子接続部28と電線接続部22との間の底部には、方形状の孔部23hが形成されている。そして、端子20がコネクタのキャビティ内に挿入された状態で、キャビティ内に突出するように形成された係止突起(いわゆるランスと呼ばれる部分)が本孔部23hに嵌り込んで端子20に係止することで、キャビティ内での端子20の位置決めが図られるようになっている。
【0037】
保護膜30は、上記接続部26の表面、より具体的には、露出芯線部13aと端子20との境界を中心とする表面部分を覆うように形成されている。この保護膜30は、上記接続部26を後述する溝44内に配設した状態で、当該溝44内に流し込まれた保護剤が固化することにより形成されている。保護剤としては、液状態で塗布した後、揮発、冷却、加熱、光等(放置による揮発、冷却等も含む)によって固化可能なものを用いることができる。ここでは、保護剤として熱硬化性を想定した例で説明する。
【0038】
上記のような保護膜30は、接続部26表面を覆うことで、当該部分への液体の付着等を抑制し、もって劣化を抑制する役割を果す。特に、芯線部13としてアルミニウム又はアルミニウム合金を用い、端子20として銅又は銅合金の表面にスズメッキ層が形成された構成のものを用いた場合、両者間で電位差が大きくなる。このため、電線接続部22と露出芯線部13aとの接続部分に水分が付着すると、水分が電界液として作用し、電食が生じてしまう恐れがある。そこで、上記のように、接続部26の表面に保護膜30を形成することで、その表面部分での電食を有効に抑制することができる。このような保護膜30は、例えば、樹脂等の塗布材料を熱で溶融させて塗布した後、冷却固化する等、各種方法によって形成することができる。
【0039】
上記保護膜30の成形するための成型装置40について説明する。図3は成型装置40を示す概略斜視図であり、図4は同成型装置40を示す概略断面図である。
【0040】
成型装置40は、下型42と、上型50と、保護剤供給部60とを備えている。
【0041】
下型42は、金属等で形成された部材であり、上部に溝44が形成されている。溝44は、上記接続部26を配設可能な形状及び大きさに形成されている。より具体的には、溝44の長さ寸法は、電線接続部22の長さ寸法よりも大きく設定されている。また、溝44の幅寸法は電線接続部22の幅寸法よりも大きく設定されている。保護膜30が接続部26を保護するのに必要と想定される膜厚をh(mm)とすると、溝44の幅寸法は、電線接続部22の幅寸法(保護が必要とされる部分の最大幅寸法)に、前記必要膜厚hの2倍を加算した大きさよりも大きくしておくことが好ましい。これにより、電線接続部22の両側部で必要膜厚hを確保できるからである。また、溝44の深さ寸法は、電線接続部22の高さ寸法(保護が必要とされる部分の最大高さ寸法)に、前記必要膜厚hを加算した大きさよりも大きくしておくことが好ましい。これにより、電線接続部22の上方で必要膜厚を確保できるからである。なお、電線接続部22の下方部分は、端子20の底板部23の外面が一様に露出しており、露出芯線部13aと端子20との境界部分から離れているため、保護の必要性は少ない。このため、保護膜30は薄くても或は無くてもよい。
【0042】
そして、端子20の相手側端子接続部28及び電線12を溝44の両端開口から外方に延出させた状態で、電線12と端子20との接続部26を、溝44内に、はみ出ないように完全に収容できるようになっている(図4参照)。
【0043】
また、下型42には、ヒータ等の加熱部46が組込まれており、この加熱部46によって、下型42が、熱硬化性樹脂である保護剤を熱硬化可能な温度に加熱される。例えば、熱硬化性樹脂として硬化開始温度が75℃であるものを用いた場合、下型42を85度に加熱するとよい。また、下型42の熱が上型50にも伝達され加熱されるため、上型50を別の加熱装置で加熱しておくことは必要ではない。加熱は、下型42に設けられた加熱部46による他、赤外線ヒータ等の照射熱によって行われてもよい。また、保護剤として、その他の保護剤を用いた場合には、加熱部46は必須ではなく、溝44内の保護剤を固化可能な条件下に配設できればよい。
【0044】
上型50は、流出抑制壁部52と天井部54とを有している。流出抑制壁部52は接続部26から相手側端子接続部28側への流出を抑制可能に構成され、天井部54は接続部26の上方に配設可能に構成されている。
【0045】
より具体的には、上型50は、金属等によって形成されており、上記溝44内に配設可能なブロック状部材の一部を下方に突出させた形状とされている。そして、その下方突出部分が上記流出抑制壁部52に形成され、流出抑制壁部52の基端部より側方に延びる部分が天井部54に形成されている。
【0046】
流出抑制壁部52は、溝44内にその上方より挿入可能で、かつ、溝44内に配設された端子20のうち電線接続部22と相手側端子接続部28との間であって露出芯線部13aの先端部より離れた位置に配設可能に構成されている。ここでは、流出抑制壁部52は、相手側端子接続部28の基端側の一対の側壁部分28a間に配設可能に形成され、また、その先端部は孔部23h内に配設可能に形成されている。
【0047】
また、天井部54は、上記流出抑制壁部52より接続部26側へ突出している。そして、上記流出抑制壁部52が端子20のうち電線接続部22と相手側端子接続部28との間に配設された状態で、天井部54の下向き面が溝44内でかつ溝44内の接続部26より上方に離れた位置に配設されるようになっている。
【0048】
保護剤供給部60は、上記溝44内に液状である保護剤を流し込む装置である。保護剤供給部60として、ノズル62から液体を一定量ずる吐出するディスペンサ等を用いることができる。
【0049】
上記成型装置40を用いた端子付電線10の製造方法について説明する。
【0050】
まず、露出芯線部13aに端子20が接続された電線12を準備する(図1及び図2参照)。
【0051】
次に、上型50を下型42の上方に移動させた状態で、接続部26を溝44内に配設する(図4参照)。この際、接続部26を溝44内の一定位置に配設できるようにすることが好ましい。ここでは、スタビライザ29の溝44の一方側開口縁部に当接させることで、接続部26を溝44の軸方向一定位置に位置決めすることができる。また、端子20の相手側端子接続部28の幅寸法と溝44の幅寸法とを一致させ、相手側端子接続部28の両外面を、溝44の両側面に当接させることで、端子20を溝44内で幅方向一定位置に位置決めすることができる。そして、下型42を溝44内に向けて移動させる。これにより、流出抑制壁部52が、溝44内に配設された端子20のうち電線接続部22と相手側端子接続部28との間であって露出芯線部13aの先端部より離れた位置に配設される。また、天井部54が、溝44内で接続部26より上方に配設される。
【0052】
この状態で、図5に示すように、ノズル62により溝44内に保護剤を流し込む。露出芯線部13aと端子20との境界を中心として保護剤が供給されるように、ノズル62の先端部を、芯線圧着片25の上方位置に配設しておくことが好ましい。また、溝44内に流し込まれた保護剤が迅速に固化するために、保護剤を流し込む前に、下型42を予め加熱しておくことが好ましい。また、保護剤の吐出量は、溝44内で接続部26の所望部分を覆える程度の量であり、推論的考察、実験的経験的に決定することができる。
【0053】
すると、保護剤が溝44内に充填される。この際、接続部26に対して相手側端子接続部28側では、流出抑制壁部52が存在するため、相手側端子接続部28側への保護剤の流出が抑制される。また、接続部26に対して電線12の被覆部14側では、被覆圧着片24の圧着部分が芯線圧着片25の圧着部分よりも太径で、かつ、その内部に電線12が存在し中実であること等によって、当該被覆部14側への流出が抑制される。
【0054】
また、上記溝44を、保護剤を固化可能な条件下に曝しておくことによって、保護剤が溝44内を流れる途中で固化し、上記相手側端子接続部28或は被覆部14側への流出が抑制される。ここでは、下型42が加熱されているため、熱硬化性樹脂である保護剤が溝44内を流れる途中で固化し、上記相手側端子接続部28或は被覆部14側への流出が抑制される。
【0055】
また、少なくとも天井部54が設けられた部分では、接続部26の上方で保護膜30が必要以上の厚みになることを抑制できる。
【0056】
そして、溝44内の保護剤が加熱によって固化することで、接続部26を覆い、かつ、溝44の内周面に応じた外形状を有する保護膜30が形成される。
【0057】
保護膜30が固化した後、溝44から端子付電線10を取出すことで、保護膜30が形成された端子付電線10を得ることができる。
【0058】
以上のように構成された端子付電線10の製造方法、端子付電線10及び成型装置40によると、溝44内に流し込んだ保護剤を固化させることで保護剤を形成しているため、保護膜30の外形状は溝44の内周面形状に応じた形状となる。このため、接続部26の表面の形状に拘らず、一定形状の保護膜30を形成することができ、必要膜厚をより確実に確保できる。
【0059】
また、保護剤として熱硬化性樹脂を用いているため、下型42を加熱等しておくことで、保護剤を迅速かつ簡易に硬化させることができる。
【0060】
また、熱硬化性樹脂を用いることで、硬化後の保護膜30に耐熱性を持たせやすい。
【0061】
さらに、下型42を加熱した状態で、保護剤を溝44内に流し込むことで、当該保護剤をより迅速に固化させることができる。しかも、この際、芯線圧着片25を中心として保護剤を供給しているため、保護剤がその周りに流れ込みつつ固化して、接続部26を覆う。このため、保護剤が接続部26の周囲に流れ込むことを抑制できる。
【0062】
また、上記下型42の溝44に対しては、保護剤を流し込めればよく、内部空間に圧を加えたりする必要はない。このため、樹脂射出成型用の金型設備等の大がかりな金型設備を準備する必要がなく、簡易な設備で保護膜30を形成できる。
【0063】
また、流出抑制壁部52を配設した状態で保護剤の流し込み及び固化を行っているため、相手側端子接続部28での保護膜30の形成が抑制される。これにより、相手側端子接続部28と相手方端子との接続機能を維持できる。
【0064】
また、流出抑制壁部52が、キャビティの係止突起が係止するための孔部23hに嵌り込んでいるため、当該孔部23hが保護膜30によって塞がれることが抑制される。これにより、端子20をキャビティ内に挿入する際の位置決め機能が維持される。
【0065】
なお、流出抑制壁部52は必須ではない。また、溝44の底部から上記孔部23hに嵌め込まれる部分が突出しており、この突出部分が孔部23h内及び相手側端子接続部28への保護剤流出抑制を図っていてもよい。
【0066】
また、接続部26の上方にも天井部54を配設しているため、接続部26上で保護膜30が必要以上の厚さになってしまうことを抑制できる。
【0067】
勿論、天井部54は必須ではなない。また、上記流出抑制壁部52を省略し、天井部54だけを設けてもよい。
【0068】
なお、図7〜図9に示す変形例のように、上記天井部54に代えて、流出抑制壁部52から接続部26の上方を通って電線12の被覆部14に達するように延出する天井部154を設けてもよい。そして、この天井部154を接続部26の上方に配設した状態で、保護剤の流し込み、固化等を行ってもよい。
【0069】
これにより、接続部26の上方での保護膜30の厚み寸法を規制でき、保護膜30をより確実に一定形状に形成できる。
【0070】
この際、天井部154には、保護剤注入用の孔部154hを形成しておくことが好ましい。孔部154hは上記ノズル62を挿入可能な孔で、かつ、芯線圧着片25の上方位置に形成されていることが好ましい。
【0071】
これにより、天井部154で覆われている接続部、特に、芯線圧着片25部分を中心に保護剤を注入でき、接続部26を中心としてより確実に保護膜30を形成できる。
【0072】
また、図10に示す第2変形例のように、上記溝44に対応する溝244が、電線12の被覆部14の端部に対応する部分244aで、狭くなっていてもよい。この狭部分244aの幅は、被覆部14の直径に応じた大きさに形成されていることが好ましい。また、狭部分244aの深さ寸法は、被覆部14の直径に応じた大きさに形成されていることが好ましい。
【0073】
これにより、溝244内に流し込まれた保護剤が被覆部14側に流れ出すことを抑制できる。特に、被覆部14は、一対の被覆圧着片24の圧着部分とは異なり、比較的大きさ及び形状が安定している。このため、狭部分244aと被覆部14との隙間を安定して小さくすることができ、上記流れ出し防止効果が高い。
【0074】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0075】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0076】
10 端子付電線
12 電線
13 芯線部
13a 露出芯線部
14 被覆部
20 端子
22 電線接続部
25 芯線圧着片
26 接続部
28 相手側端子接続部
30 保護膜
40 成型装置
42 下型
44、244 溝
244a 狭部分
50 上型
52 流出抑制壁部
54、154 天井部
60 保護剤供給部
154h 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と端子との接続部の表面に保護膜が形成された端子付電線を製造する方法であって、
(a)芯線に端子が接続された電線を準備する工程と、
(b)前記電線と前記端子との前記接続部を、型に形成された溝内に配設する工程と、
(c)前記溝内に保護剤を流し込む工程と、
(d)前記溝内に流し込まれた保護剤を、前記接続部の表面を覆った状態で固化させて、保護膜を形成する工程と、
を備える端子付電線の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の端子付電線の製造方法であって、
前記保護剤として、熱硬化性材料を用い、
前記工程(d)では、加熱された前記型によって前記熱硬化性材料を硬化させる、
端子付電線の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の端子付電線の製造方法であって、
前記工程(c)において、前記型を加熱した状態で、前記溝内に保護剤を流し込む、
端子付電線の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の端子付電線の製造方法であって、
前記接続部から前記端子の相手方端子接続部側への流出を抑制する流出抑制壁を配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される、端子付電線の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の端子付電線の製造方法であって、
前記接続部の上方に天井部を配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される、端子付電線の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の端子付電線の製造方法であって、
前記流出抑制壁部から前記接続部の上方を通って前記電線の被覆部に達する位置に延出する天井部を、前記接続部の上方に配設した状態で、前記工程(c)及び(d)が実施される、端子付電線の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の端子付電線の製造方法であって、
前記天井部に前記保護剤注入用の孔が形成されている、端子付電線の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の端子付電線の製造方法であって、
前記溝は、前記電線の被覆部のうち前記端子側の端部で狭くなっている、端子付電線の製造方法。
【請求項9】
端部に露出した芯線を有する電線と、
前記電線の芯線に接続された端子と、
前記電線と前記端子との接続部を前記溝内に配設した状態で、前記溝内に流し込まれた保護剤が固化することにより形成され、前記接続部の表面を覆う保護膜と、
を備える端子付電線。
【請求項10】
電線と端子との接続部の表面に保護膜が形成された端子付電線を製造するための成型装置であって、
前記電線と前記端子との前記接続部を配設可能な溝を有する型と、
前記溝内に保護剤を供給する保護剤供給部と、
を備える成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204239(P2012−204239A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69353(P2011−69353)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】