説明

端子台装置

【課題】ねじの押し上げ時にねじ回し工具で端子台本体を傷付けることがなくかつねじがぶら下がり状態にあるかどうかを確認容易な端子台装置を提供する。
【解決手段】端子台装置1は、前面開口8およびこの前面開口8に連続する上面開口9を有するねじ収納部7を形成した端子台本体6を備える。端子台本体6には、ねじ孔部を有する端子金具21を取り付ける。ねじ孔部には電線接続用の座金付ねじ31を螺着する。電線接続作業の際には、前面開口8からねじ収納部7の中に挿入したねじ回し工具20によって座金付ねじ31を押し上げると、ねじ頭部37の下部が端子台本体6のねじ頭部受部13に引っ掛る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじの押し上げ時に工具で端子台本体を傷付けることがなく、かつ、ねじがぶら下がり状態にあるかどうかを容易に確認できる端子台装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上方に向って開口する工具挿入口および前方に向って開口する工具移動窓部を有するねじ収納部が形成されかつこのねじ収納部内に向って突出する対をなす接触凸部が形成された端子台本体と、この端子台本体に取り付けられた端子金具と、この端子金具に螺着された電線接続用のねじとを備えた端子台装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、この端子台装置では、電線接続作業の際には、工具移動窓部からねじ収納部の中に挿入したねじ回し工具によってねじを押し上げると、ねじ頭部が接触凸部によって挟まれてねじがねじ収納部内においてぶら下がり状態に保持され、このぶら下がり状態のねじと端子金具との間に電線挿入空間が確保される。
【特許文献1】特開2005−116318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の端子台装置では、工具移動窓部からねじ収納部の中に挿入したねじ回し工具によってねじを押し上げようとした際に、誤ってねじ回し工具で工具移動窓部の上方の前壁部を傷付けるおそれがある。また、ねじ収納部内においてねじがぶら下がり状態に保持されるため、ねじがぶら下がり状態にあるかどうかを確認しずらいという問題もある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ねじの押し上げ時に工具で端子台本体を傷付けることがなく、かつ、ねじがぶら下がり状態にあるかどうかを容易に確認できる端子台装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の端子台装置は、前面開口およびこの前面開口に連続する上面開口を有するねじ収納部が形成された端子台本体と、この端子台本体に取り付けられ、ねじ孔部を有する端子金具と、前記ねじ孔部に螺合されたねじ軸部および工具にて回転操作されるねじ頭部を有する電線接続用のねじとを備え、電線接続作業の際には、前記ねじ孔部に対する前記ねじ軸部の螺合を解除した後、前記前面開口から前記ねじ収納部の中に挿入した工具によって前記ねじを前記ねじ頭部が前記上面開口から前記ねじ収納部の外に出るまで押し上げると、前記ねじ頭部の下部が前記端子台本体の前記上面開口に臨んだ部分に引っ掛ることにより前記ねじがぶら下がり状態に保持され、このぶら下がり状態のねじと前記端子金具との間に電線挿入空間が確保されるものである。
【0007】
請求項2記載の端子台装置は、請求項1記載の端子台装置において、端子台本体は、ねじの上下方向の移動を案内するねじ案内部を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、端子台本体のねじ収納部の前面開口と上面開口とが連続しているため、ねじの押し上げ時に工具で端子台本体を傷付けることがなく、また、ねじ頭部の下部が端子台本体の上面開口に臨んだ部分に引っ掛ることによりねじがぶら下がり状態に保持されるため、ぶら下がり状態ではねじ頭部が端子台本体の上面から突出することとなり、ねじがぶら下がり状態にあるかどうかを容易に確認できる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、端子台本体がねじの上下方向の移動を案内するねじ案内部を有するため、ねじ回し工具によってねじをスムーズに押し上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の端子台装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし図3において、1は端子台装置で、この端子台装置1は、例えば先端に丸型圧着端子等の接続端子2を取り付けた6本の配線である電線3が接続される6P型のものである。
【0012】
端子台装置1は、絶縁性を有する合成樹脂にて左右方向長手状に形成された端子台本体6を備えている。端子台本体6には、前方および上方に向って開口する複数、例えば6つのねじ収納部7が端子台本体6の長手方向に並んだ状態に形成されている。
【0013】
ねじ収納部7は、略矩形状の前面開口8およびこの前面開口8の上端に連続する上面開口9を有している。上面開口9は、図5に示されるように、略八角形状の第1開口部分11と、この第1開口部分11の前端に連続し第1開口部分11より幅狭の略矩形状をなす第2開口部分12とにて構成されている。そして、端子台本体6の上面部のうち、ねじ収納部7の上面開口9の第1開口部分11の前端部に臨んだ部分が、第1開口部分11を介して互いに離間対向する対をなすねじ頭部受部13となっている。
【0014】
また、端子台装置1は、端子台本体6に固着された複数、例えば6つの端子金具21を備えている。端子金具21は、導電性を有する金属製のもので、ねじ孔部22およびこのねじ孔部22に連続する截頭円錐状の孔部23が形成された基板部24と、この基板部24の前後端から下方に向って突出し端子台本体6の金具被固定部15に固定された固定板部25とを有している。基板部24の前端から下方に向って突出した固定板部25の下端には端子部26が設けられ、この端子部26は端子台本体6の下面部より下方に突出している。なお、端子台本体6のねじ収納部7は、端子金具21の基板部24にて構成された底板部28と左右の側板部29と後板部30とにて区画形成されている。
【0015】
さらに、端子台装置1は、端子台本体6のねじ収納部7内にこのねじ収納部7から抜け出ないように収納された複数、例えば6つの電線接続用のねじである座金付ねじ31を備えている。座金付ねじ31は、例えば平子ねじ部材32と、この平子ねじ部材32に取着された略正方形状の角座金33および略円形状のばね角座金34とにて構成されている。
【0016】
そして、平子ねじ部材32は、図4に示されるように、端子金具21の基板部24のねじ孔部22に脱着可能に螺合されるねじ軸部36と、ドライバ−等のねじ回し工具(工具)20にて回転操作される略円板状のねじ頭部37と、ねじ軸部36およびねじ頭部37間に位置しこれらねじ軸部36とねじ頭部37とをつなぐ連絡軸部38とを有している。ねじ頭部37には、ねじ回し工具20であるプラスドライバ−およびマイナスドライバ−の両方に対応可能な係合溝39が形成されている。連絡軸部38の外周側には、角座金33およびばね角座金34が嵌着されている。
【0017】
また、端子台本体6の側板部29には、座金付ねじ31の角座金33の角部と摺接して座金付ねじ31の上下方向の移動を案内するねじ案内部41が設けられている。ねじ案内部41は、例えば側板部29に一体に突設され互いに離間対向する上下方向長手状で対をなす案内突条42にて構成されている。
【0018】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0019】
端子台装置1に電線3を接続する場合、まず、ねじ回し工具20にて座金付ねじ31のねじ頭部37を緩め方向に回転操作することにより、端子金具21のねじ孔部22に対するねじ軸部36の螺合を解除する。
【0020】
その後、ねじ回し工具20の先端部を端子台本体6のねじ収納部7の前面開口8からねじ収納部7の中に挿入して角座金33と端子金具21の基板部24との間に差し込む。
【0021】
そして、その角座金33と端子金具21の基板部24との間に差し込んだねじ回し工具20の先端部によって、座金付ねじ31をねじ頭部37が上面開口9からねじ収納部7の外に出るまで押し上げると、ねじ頭部37の下部が端子台本体6の上面開口9に臨んだ部分、すなわち例えばねじ頭部受部13に引っ掛ることにより座金付ねじ31がそのねじ頭部受部13にてぶら下がり状態に保持され、このぶら下がり状態の座金付ねじ31のねじ軸部36の下面と端子金具21の基板部24の上面との間に電線3の接続端子2を挿入可能な電線挿入空間45が確保される。
【0022】
すなわち、ねじ頭部37の全体が上面開口9からねじ収納部7の外に出る位置まで座金付ねじ31をねじ回し工具20にて押し上げてから、そのねじ回し工具20を座金付ねじ31から離すと、ねじ頭部37の下面の一部が端子台本体6のねじ頭部受部13上に載った状態になり、座金付ねじ31全体が端子金具21の基板部24から上方に離反した状態に保たれ、この座金付ねじ31と端子金具21の基板部24との間に電線挿入空間45が確保される。
【0023】
そして、その電線挿入空間45内に電線3の接続端子2を挿入した後、ねじ回し工具20にて座金付ねじ31のねじ頭部37をねじ頭部受部13を乗り越えるようにねじ収納部7内に押し込み、その後、ねじ回し工具20にて座金付ねじ31のねじ頭部37を締付け方向に回転操作することによりねじ軸部36を端子金具21のねじ孔部22に螺合し、電線3の接続端子2を角座金33と端子金具21の基板部24とで挟持する。
【0024】
なお、磁力を帯びたねじ回し工具20を用いる場合には、ねじ回し工具20にてねじ頭部37を緩め方向に回転操作することによりねじ孔部22に対するねじ軸部36の螺合を解除した後、座金付ねじ31を磁力で吸着したままねじ収納部7内において端子金具21の基板部24から上方に離反した位置まで持ち上げ、座金付ねじ31と端子金具21の基板部24との間に電線挿入空間45を形成し、この電線挿入空間45内に電線3の接続端子2を挿入することが可能である。
【0025】
そして、端子台装置1によれば、座金付ねじ31の紛失を防止できるばかりでなく、端子台本体6のねじ収納部7の前面開口8と上面開口9とが連続しているため、ねじ回し工具20による座金付ねじ31の押し上げ時にねじ回し工具20で端子台本体6を誤って傷付けてしまうことがない。
【0026】
また、座金付ねじ31の平子ねじ部材32のねじ頭部37の下部が端子台本体6の上面開口9に臨んだ部分のねじ頭部受部13に引っ掛ることにより座金付ねじ31がねじ頭部受部13にてぶら下がり状態に引掛保持されるため、そのぶら下がり状態ではねじ頭部37が端子台本体6の上面部から突出することとなり、座金付ねじ31がぶら下がり状態にあるかどうかを容易に確認できる。
【0027】
さらに、端子台本体6が座金付ねじ31の側板部29に沿った上下方向の移動を案内するねじ案内部41を有するため、ねじ回し工具20の先端部によって座金付ねじ31をスムーズに押し上げることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、6本の電線3を接続する6P型について説明したが、例えば図示しないが、3本の電線を接続する3P型、4本の電線を接続する4P型、或いは1本の電線を接続する1P型等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の端子台装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上端子台装置のねじ下がり状態時における斜視図である。
【図3】同上端子台装置の正面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同上端子台装置の端子台本体の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 端子台装置
3 電線
6 端子台本体
7 ねじ収納部
8 前面開口
9 上面開口
20 工具であるねじ回し工具
21 端子金具
22 ねじ孔部
31 ねじである座金付ねじ
36 ねじ軸部
37 ねじ頭部
41 ねじ案内部
45 電線挿入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口およびこの前面開口に連続する上面開口を有するねじ収納部が形成された端子台本体と、
この端子台本体に取り付けられ、ねじ孔部を有する端子金具と、
前記ねじ孔部に螺合されたねじ軸部および工具にて回転操作されるねじ頭部を有する電線接続用のねじとを備え、
電線接続作業の際には、前記ねじ孔部に対する前記ねじ軸部の螺合を解除した後、前記前面開口から前記ねじ収納部の中に挿入した工具によって前記ねじを前記ねじ頭部が前記上面開口から前記ねじ収納部の外に出るまで押し上げると、前記ねじ頭部の下部が前記端子台本体の前記上面開口に臨んだ部分に引っ掛ることにより前記ねじがぶら下がり状態に保持され、このぶら下がり状態のねじと前記端子金具との間に電線挿入空間が確保される
ことを特徴とする端子台装置。
【請求項2】
端子台本体は、ねじの上下方向の移動を案内するねじ案内部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の端子台装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−109462(P2007−109462A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297449(P2005−297449)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000103194)エムデン無線工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】