説明

端子台

【課題】 端子の不適正な接続を防止することが可能な端子台を提供する。
【解決手段】 外力が加わらない状態ではネジ孔2aの少なくとも一部を覆い、圧着端子201を押し込むとスライドするスライド部材3を備え、圧着端子201を所定の位置まで押し込み可能なように、スライド部材3が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線や通信線などに取り付けられた端子を、ネジを介して接続する端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
電線などに取り付けられた圧着端子を端子台に接続する場合、端子台の端子板にネジ孔が形成され、端子には、接続ネジを挿入するための丸孔やスリットなどの挿入孔が形成されている。そして、端子の挿入孔を端子板のネジ孔に合わせた状態で、接続ネジをネジ孔に締め付けることで、端子板と接続ネジとで端子を挟持するものである。また、接続ネジの脱落・離脱を防止するために、ネジ孔の軸方向に対して接続ネジが移動自在に保持されている端子台が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−140665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような端子台では、端子の挿入孔が端子板のネジ孔に合っていない状態でも、接続ネジをネジ孔に締め付けることができる。このため例えば、図8に示すように、端子100の挿入孔100aに接続ネジ101を挿入しないで、端子100の先端のみを挟んだ状態で、接続ネジ101を端子板102のネジ孔102aに締め付けてしまう場合があり得る。特に、多数の端子板102、ネジ孔102aが密接して配設され、多くの端子100を接続する場合には、このような不適正な接続が生じるおそれがある。そして、端子100の接続が不適正であると、電線103などに外力が加わった場合に、端子100が端子板102から外れたり、接触不良が生じたりするおそれがある。また、上記特許文献1の端子台は、接続ネジの脱落を防止することはできるが、端子の不適正な接続を防止することはできない。
【0005】
そこでこの発明は、端子の不適正な接続を防止することが可能な端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、端子板にネジ孔が形成され、前記ネジ孔に接続ネジが螺合されて前記端子板と接続ネジとで端子を挟持する端子台であり、外力が加わらない状態では前記ネジ孔の少なくとも一部を覆い、前記端子を押し込むと移動または変形する障害体を備え、前記端子を所定の位置まで押し込み可能なように、前記障害体が配設されている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、端子を押し込まない状態では、障害体によってネジ孔が覆われているため、ネジ孔に接続ネジを螺合することができない。また、端子を押し込むことで、障害体が移動または変形し、端子を所定の位置まで押し込んだ状態でネジ孔に接続ネジを螺合することで、端子が端子板と接続ネジとで挟持される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の端子台において、前記障害体は、前記端子板にスライド自在に配設され、前記端子を押し込むとスライドして移動する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の端子台において、前記障害体は、板バネから構成され、前記端子を押し込むと変形する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、端子を押し込まない状態では、障害体によってネジ孔が覆われているため、例えば、端子が障害体つまりネジ孔に達していない状態で、接続ネジをネジ孔に螺合させる(端子の先端のみを挟んで接続する)、という不適正な接続が生じることがない。また、端子を押し込んで、障害体を移動または変形させても、端子の挿入孔とネジ孔とが一致しない状態では、端子の挿入孔の周縁が障害・邪魔になって接続ネジをネジ孔に螺合させることができない。つまり、端子を所定の位置まで押し込んで、端子の挿入孔とネジ孔とを一致させなければ、接続ネジをネジ孔に螺合させることができない。このようにして、端子の不適正な接続を防止することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、障害体がスライド自在となっているため、端子の押し込みが円滑となり、端子の接続作業を容易に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、障害体が板バネから構成されているため、構成が簡易で、容易かつ低コストで製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る端子台を示す斜視図である。
【図2】図1の端子台に端子を押し込む前の状態を示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図3】図1の端子台に端子を押し込んだ状態を示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図4】図1の端子台のスライド部材を示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図5】図1の端子台のガイド部材を示す平面図(a)とそのA−A断面図(b)である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る端子台に端子を押し込む前の状態を示す平面図(a)と、端子を押し込んだ状態を示す平面図(b)である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る端子台に端子を押し込む前の状態を示す平面図(a)と、端子を押し込んだ状態を示す平面図(b)である。
【図8】従来の端子台に端子の先端部のみを装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る端子台1を示す斜視図である。この端子台1は、電線や通信線などに取り付けられた端子を、ネジを介して接続する接続台であり、この実施の形態では、制御ケーブル200の先端に圧着端子(端子)201が取り付けられ、この圧着端子201に円形の挿入孔201aが形成されている場合について説明する。
【0016】
端子台1は、主として、端子板2と、スライド部材(障害体)3と、ガイド部材4とを備えている。
【0017】
端子板2は、平板状で導電材から構成され、略中央部にネジ孔(雌ネジ)2aが形成されている。そして、後述するようにして、ネジ孔2aに圧着端子201の挿入孔201aを一致させて、ネジ孔2aに接続ネジ202(雄ネジ、図3)を螺合させることで、端子板2と接続ネジ202の頭部とで圧着端子201が挟持される。
【0018】
また、端子板2には、図1〜3に示すように、ネジ孔2aと連通する長孔状のスライド孔2bが形成されている。このスライド孔2bは、圧着端子201の押し込み・差し込み方向(図2中矢印X方向)に延びる略長方形で、その幅(矢印Xと垂直な方向の長さ)は、後述するスライド部材3の垂直部3aの幅H1よりもやや大きく設定されている。また、スライド孔2bの長さは、後述するようにしてスライド部材3がスライドし、圧着端子201の挿入孔201aがネジ孔2aに一致するように、設定されている。
【0019】
スライド部材3は、端子板2の板面に沿ってスライド自在に端子板2に配設された部材であり、図4に示すように、垂直部3aと基部3bとツバ部3cとを備えている。垂直部3aは、図中垂直上方に延びる角棒状で、端子板2のスライド孔2bに、スライド自在に挿入・装着される。また、基部3bは、垂直部3aの下部に突出するように形成された直方体で、ツバ部3cは、基部3bの両側面の反垂直部3a側に、両側面から突出するように形成されている。そして、基部3bが、後述するガイド部材4のガイド溝4bに挿入・装着され、ツバ部3cが、後述するガイド部材4の収容部4a側に位置するようになっている。
【0020】
ガイド部材4は、図5に示すように、略直方体で、上面から中央部にかけて四角形にくり抜いた収容部4aが形成され、この収容部4aから一方の端部に向かって切り抜かれたガイド溝4bが形成されている。収容部4aの深さは、スライド部材3の基部3bの高さよりもやや大きく設定され、収容部4aの長さ(図5中横方向の長さ)は、後述するようにしてスライド部材3がスライド可能で、かつ圧縮バネ5が収縮できるように設定されている。
【0021】
また、ガイド溝4bの幅H3は、スライド部材3の基部3bの幅H2よりもやや大きく設定され、収容部4aとガイド溝4bとによる段差である肩部4cに、スライド部材3のツバ部3cが当接するようになっている。そして、スライド部材3の垂直部3aが端子板2のスライド孔2bに装着され、基部3bがガイド部材4のガイド溝4bに装着され、ツバ部3cが収容部4a側に位置する状態で、スライド部材3のツバ部3c側の端面と収容部4aとの間に圧縮バネ5が収容されて、ガイド部材4が端子板2の下面に取り付けられている。
【0022】
このような組み付け状態において、図2、3に示すように、端子板2の上面からの垂直部3aの突出量が、圧着端子201の厚みよりも小さくなるように、垂直部3aの長さが設定され、これにより、接続ネジ202などが垂直部3aに当たらないようになっている。また、圧縮バネ5によってスライド部材3が常にネジ孔2a側に押圧され、外力が加わらない状態では、図2に示すように、垂直部3aがネジ孔2aの約半分を覆うようになっている。一方、図2中矢印X方向に圧着端子201を押し込むと、圧縮バネ5の力に抗してスライド部材3がX方向にスライドして移動・後退し、これに伴って、垂直部3aがスライド孔2bに沿ってスライドする。
【0023】
このため、圧縮バネ5の力・バネ定数は、人手で圧着端子201を押し込むだけでスライド部材3が円滑にスライドするように、設定されている。また、圧着端子201を押し込み続けると、圧着端子201を所定の位置まで、つまり図3に示すように、圧着端子201の挿入孔201aがネジ孔2aに一致するまで、スライド部材3がスライドするように、圧縮バネ5の自然長、ガイド部材4の収容部4aの長さなどが設定されている。そして、このようにしてスライド部材3がスライド・後退した状態では、ネジ孔2aが完全に開放され、挿入孔201aに接続ネジ202を挿入してネジ孔2aに螺合可能となる。
【0024】
このような端子板2やスライド部材3、ガイド部材4などが、多数並列に配設され、端子台1が構成されている。また、隣接する端子板2間には、側壁(図6、7参考)が設けられ、この実施の形態では上記のように、図2中矢印X方向からのみ圧着端子201を押し込め、X方向およびその反対方向にスライド部材3がスライド・往復動するようになっている。
【0025】
次に、このような構成の端子台1への圧着端子201の接続方法などについて説明する。
【0026】
まず、圧着端子201をネジ孔2a側に押し込まない状態では、図2に示すように、スライド部材3の垂直部3aがネジ孔2aを覆っているため、ネジ孔2aに接続ネジ202を螺合させることができない。次に、端子板2の上面に沿って圧着端子201をネジ孔2a側に押し込むと、スライド部材3がガイド部材4側にスライド、後退し、垂直部3aがネジ孔2aを覆わない状態となる。しかし、この時点では、圧着端子201の挿入孔201aの周縁(先端部)が障害・邪魔になって、接続ネジ202をネジ孔2aに螺合させることができない。
【0027】
続いて、さらに圧着端子201をネジ孔2a側に押し込むと、図3に示すように、圧着端子201の挿入孔201aがネジ孔2aに一致し、この時点で、接続ネジ202を挿入孔201aに挿入してネジ孔2aに螺合する。そして、接続ネジ202を締め付けることで、接続ネジ202の頭部と端子板2とによって、圧着端子201が強固に挟持される。
【0028】
一方、圧着端子201を取り外す場合には、接続ネジ202を外して圧着端子201を端子板2から取り離す。これにより、スライド部材3が圧縮バネ5によってネジ孔2a側にスライド、前進し、再びスライド部材3の垂直部3aがネジ孔2aを覆う状態となるものである。
【0029】
以上のように、この端子台1によれば、圧着端子201を押し込まない状態では、垂直部3aでネジ孔2aが覆われているため、圧着端子201を押し込まずに先端のみを挟んだ状態で接続しようとしても、接続ネジ202をネジ孔2aに螺合させることができない。また、圧着端子201を押し込んでスライド部材3を後退させても、圧着端子201を所定の位置まで押し込んで、圧着端子201の挿入孔201aとネジ孔2aとを一致させなければ、接続ネジ202をネジ孔2aに螺合させることができない。このように、挿入孔201aとネジ孔2aとが一致した状態でなければ、接続ネジ202を螺合できないため、圧着端子201の不適正な接続が防止され、圧着端子201を確実、強固に接続することが可能となる。
【0030】
しかも、スライド部材3がスライドして移動するため、圧着端子201の押し込みが円滑となり、圧着端子201の接続作業を容易に行うことが可能となる。特に、多くの圧着端子201を接続する場合には、作業労力、時間を著しく軽減することが可能となる。
【0031】
(実施の形態2)
図6は、この実施の形態に係る端子台10を示す平面図であり、この実施の形態では、障害体が板バネから構成されている点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。下記の実施の形態3も同様とする。
【0032】
符号12は、隣接する端子板2間に設けられた側壁であり、この側壁12は、圧着端子201の押し込み方向Xと平行に設けられている。さらに、側壁12のネジ孔2a側(図中右側)には、側壁12に対して垂直な前壁13が設けられ、この前壁13に板バネ(障害体)11が配設されている。
【0033】
この板バネ11は、薄いばね鋼板で構成され、変形自在な帯状で、両端部が側壁12と前壁13との角部に固定され、外力が加わらない状態では、ネジ孔2a側に曲がったアーチ型・弓なりとなり、図6(a)に示すように、ネジ孔2aの一部を覆うように形成されている。また、圧着端子201をネジ孔2a側に押し込むと、図6(b)に示すように、板バネ11が椀型に変形し、圧着端子201の挿入孔201aをネジ孔2aに一致させることができるようになっている。さらに、圧着端子201を取り外すと、板バネ11が復元し、再びネジ孔2aの一部を覆うものである。
【0034】
この実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、圧着端子201の挿入孔201aがネジ孔2aに一致するまで、圧着端子201を押し込まなければ、接続ネジ202をネジ孔2aに螺合させることができない。このため、圧着端子201の不適正な接続が防止され、圧着端子201を確実、強固に接続することが可能となる。しかも、障害体が板バネ11から構成されているため、構成が簡易で、容易かつ低コストで端子台10を製作することが可能となる。さらに、従来の既製の端子台に板バネ11を取り付けるだけで、容易に端子台10を構成することができる。
【0035】
(実施の形態3)
図7は、この実施の形態に係る端子台20を示す平面図であり、この実施の形態では、2つの板バネ21、22を備える点で実施の形態2と構成が異なる。
【0036】
すなわち、板バネ21、22は、薄いばね鋼板で構成され、変形自在な帯状で、第1の板バネ21は、一方の側壁12に配設され、第2の板バネ22は、他方の側壁12に配設されている。そして、外力が加わらない状態では、図7(a)に示すように、第1の板バネ21および第2の板バネ22の自由端部が、ネジ孔2aの中央部まで真っ直ぐに延び、ネジ孔2aの一部を覆うように形成、配設されている。また、圧着端子201をネジ孔2a側に押し込むと、図7(b)に示すように、両板バネ21、22板が反るように変形し、圧着端子201の挿入孔201aをネジ孔2aに一致させることができるようになっている。さらに、圧着端子201を取り外すと、板バネ21、22が復元し、再びネジ孔2aの一部を覆うものである。
【0037】
この実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、圧着端子201の不適正な接続を防止して、圧着端子201を確実、強固に接続することが可能になるとともに、障害体が板バネ21、22から構成されているため、構成が簡易となる。しかも、2つの板バネ21、22がネジ孔2aの中央部で分離し、かつそれぞれが別個に変形自在であるため、圧着端子201の押し込みが容易となり、圧着端子201の接続作業を容易に行うことが可能となる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1では、ネジ孔2aの深さ方向に対してもスライド部材3が存在し、ネジ孔2aの一部が切り欠かれた状態となっているが、端子板2の上面に板状のスライド部材を配設して、外力が加わらない状態で、スライド部材でネジ孔2aの全上面またはその一部を覆うようにしてもよい。また、圧着端子201の挿入孔201aが円形の場合について説明したが、挿入孔がスリットの場合であっても、適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1、10、20 端子台
2 端子板
2a ネジ孔
2b スライド孔
3 スライド部材(障害体)
4 ガイド部材
5 圧縮バネ
11、21、22 板バネ(障害体)
201 圧着端子(端子)
201a 挿入孔
202 接続ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子板にネジ孔が形成され、前記ネジ孔に接続ネジが螺合されて前記端子板と接続ネジとで端子を挟持する端子台であり、
外力が加わらない状態では前記ネジ孔の少なくとも一部を覆い、前記端子を押し込むと移動または変形する障害体を備え、
前記端子を所定の位置まで押し込み可能なように、前記障害体が配設されている、
ことを特徴とする端子台。
【請求項2】
前記障害体は、前記端子板にスライド自在に配設され、前記端子を押し込むとスライドして移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記障害体は、板バネから構成され、前記端子を押し込むと変形する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子台。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−146540(P2012−146540A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4572(P2011−4572)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】