説明

端子圧着用アプリケータ

【課題】電線の端部に端子を圧着する装置の小型化と構造の簡素化を図れるようにするとともに、端子帯の正確な搬送を可能にする。
【解決手段】搬送路21上を搬送される端子帯61の端子62をプレス位置Pにおいて金型31で加締めて電線と圧着する端子圧着用アプリケータ11において、搬送路21に、金型31のプレス方向と平行に延びる搬送前段部22と、搬送前段部22と直交する方向に延びて端子帯61の端子62を上記プレス位置Pに送る搬送後段部23とを設ける。そして、搬送路前段部22上に、金型31のうちの可動型33の動きにより直接的に端子帯61を送る送り手段51を備える。送り手段51は可動型33を保持するシャンク42に一体的に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の端部に対して圧着により端子を接続するのに用いられる端子圧着用アプリケータに関し、より詳しくは、小型化を図ることができるような端子圧着用アプリケータに関する。
【背景技術】
【0002】
端子圧着用アプリケータとしては、図4に示したような装置101が知られている。この装置101は、端子帯102を水平方向に搬送する搬送路103と、この搬送路103のプレス位置Pに配された加締め金型104を有し、加締め金型104は、搬送路103の下に備えられる固定型104aと、搬送路103の上に備えられる可動型104bで構成される。そして、加締めのたびに端子102aを送るべく、可動型104bの上下動に連動する送り手段105が設けられている。
【0003】
送り手段105は、ホルダ105aと、送り爪部材105bと、ばね105cで構成され、可動型104bの上下動を水平方向の動きに変換する変換手段106を介して備えられる。上記のばね105cは、送り爪部材105bの先端部を端子帯102のキャリアホール(図2中、63a参照)に引っ掛けるべく、端子帯102に対して立てるように付勢されている。
【0004】
そして、上記の変換手段106は、可動型104bの上下動によって上下動するカムフォロア106aと、これの上下動によって回動するカム106bで構成される。図中、106cはカム106bの回動軸である。また、図中107は、端子帯102の位置ずれを防止するための周知のブレーキユニットである。
【0005】
このような装置101では、可動型104bが降下して端子帯102の端子102aの加締めを行うたびに、送り爪部材105bが後退し、送り爪部材105bの先端部を搬送方向後段側の次のキャリアホールに引っ掛ける。そして、可動型104bが上昇するときに送り爪部材105bが搬送方向前段側に移動し、端子帯102を送る。
【0006】
しかし、このような装置101では、搬送103が水平方向に長く、そのうえ、上述のカム106b等を備えた変換手段106が必要となるので、装置101が大きくなってしまい、部品点数が多く構造も複雑になるという難点がある。
【0007】
この点、下記特許文献1に開示されている端子圧着用アプリケータのように、搬送路のプレス位置よりも前段側を垂直に立てて、搬送路の水平部分の長さを短くしたような構造のものがある。
【特許文献1】特許第3440847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の装置は上述と同様の変換手段を備えた構成であって、搬送路の垂直に立てた部分を金型側に近づけることができない。このため、装置の大幅な小型化、簡素化は望めない。
【0009】
また、送り爪部材はカムの先に備えられているので、カムの振動と、これによる位置ずれが起こりやすい。このような欠点はカムの長さを短くすれば改善できるように考えられるが、送り量が小さくなってしまい、端子帯の種類によっては送り量が足りなくなってしまう問題がある。
【0010】
そこで、この発明は、装置の小型化、簡素化を図れるようにするとともに、正確な搬送を可能にすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、搬送路上を搬送される端子帯の端子をプレス位置において金型で加締めて電線と圧着する端子圧着用アプリケータであって、上記搬送路が、金型のプレス方向と平行に延びる搬送前段部と、該搬送前段部と直交する方向に延びて端子帯の端子を上記プレス位置に送る搬送後段部とを有するとともに、上記搬送路前段部上に、上記金型のうちの可動型の動きにより直接的に端子帯を送る送り手段が備えられた端子圧着用アプリケータである。
【0012】
別の手段は、搬送路上を搬送される端子帯の端子をプレス位置において金型で加締めて電線と圧着する端子圧着用アプリケータであって、上記搬送路が、金型のプレス方向と平行に延びる搬送前段部と、該搬送前段部と直交する方向に延びて端子帯の端子を上記プレス位置に送る搬送後段部とを有するとともに、上記金型のうちの可動型又はこれを保持してプレス方向に動く保持部における搬送前段部に対向する部位に、可動型の動きにより直接的に端子帯を送る送り手段が設けられた端子圧着用アプリケータである。
【0013】
なお、上記の「直接的」とは、可動型の直線運動の運動方向と同じ方向での直線運動のまま動力伝達することを意味し、方向性が異なる方向に変換する手段を介しない意味である。
【0014】
また、上記の送り手段は、可動型と同時にプレス方向に動くホルダと、該ホルダに枢着された送り爪部材と、該送り爪部材の先端部が端子帯に係止する方向に付勢する付勢部材とを有するものであるとよい。
【0015】
さらに、上記の送り手段は、可動型のプレス動作時に可動型と同じ方向に移動して端子帯を送るべく、可動型に一体的に設けられるも、可動型の離型時に可動型と反対方向に移動して端子帯を送るべく、方向反転手段を介して可動型に一体的に設けられるも、いずれでもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、搬送路が、金型のプレス方向と平行に延びる搬送前段部を有するので、搬送路を金型側に近づけることができる。このため、搬送路が水平に延びている場合に比して、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
そのうえ、送り手段が、可動型の動きにより直接的に端子帯を送るものであって、カム等からなる変換手段を必要としないので、端子帯の振動や位置ずれを抑制し、所望の送り量で正確に送ることができる。また、複雑な変換手段が不要であることから、部品点数を低減し、簡素な構造にすることができ、低コスト化にも貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、端子圧着用アプリケータ11(以下、「装置」という。)の構造説明図、図2は端子帯61の斜視図、図3は他の例に係る装置11の構造説明図である。
【0019】
この発明では、装置11の小型化、簡素化を図れるようにするとともに、正確な搬送を可能にするという目的を、端子帯61を搬送する搬送路21に、金型31のプレス方向と平行に延びる搬送前段部22と、該搬送前段部22と直交する方向に延びて端子帯61の端子62をプレス位置Pに送る搬送後段部23とを設けるとともに、搬送路前段部22上に、金型31のうちの可動型33の動きにより直接的に端子帯61を送る送り手段51を備える、あるいは金型31のうちの可動型33又はこれを保持してプレス方向に動くシャンク42などの保持部における搬送前段部22に対向する部位に、可動型33の動きにより直接的に端子帯61を送る送り手段51を設けるという構成にて実現した。
【0020】
上記の「直接的」とは、可動型33の直線運動の運動方向と同じ方向性での直線運動のまま動力伝達することを意味し、方向性が異なる方向に変換する手段を介しない。つまり、プレスする金型の動作方向と同一方向の動作で端子帯61を送ることはもちろんのこと、その動作方向と反対方向の動作で端子帯61を送ることもできる。後者の場合には、方向反転手段71(図3参照)を介装すればよい。
【0021】
以下、具体的に説明する。
装置11は、図1に示したように、端子帯61を搬送する搬送路21と、搬送路21のプレス位置Pにおいて端子帯61の端子62を加締める金型31と、この金型31を駆動する駆動装置41と、金型31の動きと同時に同一の方向性で動いて端子帯61を所定量送る送り手段51とを有する。
【0022】
ここで、端子帯61は、図2に示したように、帯状のキャリア63と、このキャリア63の一側に等間隔に配設された端子62と、これらの端子62をキャリア63につなぐ繋ぎ部64とを有する。キャリア63には、等間隔にキャリアホール63aが形成され、このキャリアホール63aを利用して、端子帯61が所定の送り量ずつ搬送される。
【0023】
上記の搬送路21は、図1に示したように、プレス位置Pにおいては水平となるが、プレス位置Pよりも搬送前段側では垂直に立つ部分を有するように形成されている。すなわち、加締めるときのプレス方向である上下方向と平行な垂直方向に延びる搬送前段部22と、この搬送前段部22と直交する方向に延びて端子帯61の端子62を上記のプレス位置Pに送る搬送後段部23とを有し、これらの間は、円弧状をなす円弧状部24で連結されている。上記の搬送前段部22は、水平方向において金型31側に近づけて設けられる。
【0024】
上記の金型31は、搬送路21の下に設けられる固定型32と、搬送路21の上方に設けられる可動型33とからなり、可動型33の上下動で端子62の所定部位をプレスし、加締めを行うというものである。
【0025】
可動型33は、保持部としてのシャンク42に保持され、シャンク42はシャンクホルダ43内に上下動可能に保持される。シャンク42は、上記の駆動装置41で上下動させられるが、駆動装置41は周知の構造であるので詳しい説明を省略する。
【0026】
そして、上記のシャンク42に、上記の送り爪部材51が直接取り付けられている。
【0027】
送り手段51は、シャンク42に固定されるホルダ52と、このホルダ52の先端部に枢着される送り爪部材53と、この送り爪部材53を付勢する付勢部材54とで構成される。
【0028】
ホルダ52は、略直方体形状に形成され、先端部に送り爪部材53を回動可能に保持できる空間部52aを備える。そして、この空間部52aに、回動軸55を用いて送り爪部材53を取り付ける。送り爪部材53は、長さ方向の中間部が回動軸55で保持される。送り爪部材53の先端部53aには、上記の端子帯61のキャリアホール63aに引っ掛かる部分を有し、後端部53bに上記の付勢部材54が保持される。送り爪部材53は先端部53aをプレス方向の下に、後端部53bをプレス方向の上に位置させる。付勢部材54は引っ張りコイルばねで構成され、付勢部材54の他端は、ホルダ52の上面に設けられた突起部52bに固定される。
【0029】
すなわち、ホルダ52が降下すると、送り爪部材53はそのまま降下し、ホルダ52が上昇すると、送り爪部材53は、付勢部材54の付勢力に抗して回動し、端子帯61のキャリアホール63aに対する先端部53aの係止を外して後退する。そして、先端部53aを搬送方向後段側の次のキャリアホール63aに係止する。
【0030】
このような動作を可能にするため、キャリアホール63a間の間隔と、可動型33のストロークとが対応するように設定されている。なお、たとえば可動型33側の動きをギャ等で動力伝達させて、このギャのギャ比を変えることによって移動量を変化させるなど、簡素な変換手段を介装することもできる。
【0031】
なお、上記の搬送前段部22に設けられた、図1中、12は、搬送される端子帯61の位置ずれを防止するための周知のブレーキユニットであり、このブレーキユニット12は周知の構造である故にその詳しい説明を省略する。
【0032】
このように構成された装置11によれば、駆動装置41を駆動して可動型33を上下動させるたびに、端子帯61が順次送られて、端子62と電線(図示せず)の圧着ができる。
【0033】
すなわち、可動型33を降下させると、これと同時に、可動型33に一体的に設けられた送り爪部材53が、可動型33の直線運動をそのまま受け入れて可動型33と同じ方向に移動し、端子部材61を送り出す。そして、送り出されてプレス位置Pに位置した端子62は、可動型33によりプレスされ、加締められる。プレスが終了して可動型33が上昇すると、送り爪部材53は後退し、搬送方向後段側の次のキャリアホール63aに係止する。
【0034】
このように、可動型33によるプレスの動作ごとに、可動型33の動きによる直接的な動作で端子帯61が搬送される。
【0035】
このため、上下方向の直線運動を水平方向の直線運動に変換する必要はなく、変換のための手段を省略できる。この結果、部品手数を低減して構造の簡素化を図ることができ、低コスト化も実現できる。しかも、送り手段51は可動型33を保持するシャンク42に直接固定されているので、構造は至って簡素である。
【0036】
また、上下方向の直線運動を水平方向の直線運動に変換するためにカムなどの部材が必要ないので、カムを用いた場合に問題となった振動や位置ずれを解消でき、正確な送りが可能となる。
【0037】
さらに、垂直に立つ搬送前段部22を水平方向において金型31側に近づけることができ、しかも、上下方向の直線運動を水平方向の直線運動に変換する手段が必要ないので、装置11を小さくすることができる。
【0038】
以下、その他の形態について説明する。この説明において、先の構成と同一又は同等の部位ついては同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0039】
図3は、図1に示した装置11の送り手段51が、可動型33のプレス動作時に可動型33と同じ方向に移動して端子帯61を送るべく、可動型33に一体的に設けられたものであるのに対して、可動型33が固定型32から離れる離型時に可動型33の移動方向と反対方向に移動して端子帯61を送るべく、方向反転手段71を介して可動型33に一体的に設けられた装置11を示している。
【0040】
すなわち、送り手段51のホルダ52は、シャンク42に固定される固定部56と、送り爪部材53を枢着する可動部57とを有し、これら固定部56と可動部57との間には、上記の方向反転手段71が介装されている。方向反転手段71はシャンクホルダ43における搬送前段側の面から延設された突片部43aに回転可能に枢着されたピニオンギャ72と、これらのピニオンギャ72に噛合すべく固定部56と可動部57とに設けられたラック56a,57aと、突片部43aと可動部57との間に設けられたアリ溝構造部73とからなる。アリ溝構造部73は、可動部の上下方向のみの移動を許容する。
【0041】
シャンクホルダ43はシャンク42が上下動しても不動であるので、可動型33が降下したときに、可動型33を保持するシャンク42と同時に同じ方向に移動するホルダ52の固定部56の降下により、ピニオンギャ72が回転し、ホルダ52の可動部57を反対方向である上方に移動する。逆に可動型33が上昇したときには、ホルダ52の固定部56の上昇により、ピニオンギャ72が回転し、ホルダ52の可動部57を反対方向である下方に移動する。
【0042】
このように構成された装置11では、可動型33が降下してプレスをしたときに、送り爪部材53は後退し、送り爪部材53の先端部53aは搬送方向後段側の次のキャリアホール53aに係止する。そして、プレスが終了して可動型33が上昇するときに送り爪部材53が端子帯61を送り出す。
【0043】
この装置11においても、図1に示した装置11と同様の作用効果が得られる。
【0044】
この発明の構成と、上記の一形態の構成との対応において、
この発明の保持部は、シャンク42に対応するも、
この発明は上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
たとえば、送り手段51は、上記例のように、可動型33を保持するシャンク42に一体的に設けるのではなく、シャンク42を保持するシャンクホルダ等、装置のその他の部分に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】端子圧着用アプリケータの構造説明図。
【図2】端子帯の斜視図。
【図3】他の例に係る端子圧着用アプリケータの構造説明図。
【図4】従来技術の説明図。
【符号の説明】
【0046】
11…端子圧着用アプリケータ
21…搬送路
22…搬送前段部
23…搬送後段部
31…金型
32…固定型
33…可動型
42…シャンク
51…送り手段
52…ホルダ
53…送り爪部材
53a…先端部
54…付勢部材
61…端子帯
62…端子
71…方向反転手段
P…プレス位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を搬送される端子帯の端子をプレス位置において金型で加締めて電線と圧着する端子圧着用アプリケータであって、
上記搬送路が、金型のプレス方向と平行に延びる搬送前段部と、該搬送前段部と直交する方向に延びて端子帯の端子を上記プレス位置に送る搬送後段部とを有するとともに、
上記搬送路前段部上に、上記金型のうちの可動型の動きにより直接的に端子帯を送る送り手段が備えられた
端子圧着用アプリケータ。
【請求項2】
搬送路上を搬送される端子帯の端子をプレス位置において金型で加締めて電線と圧着する端子圧着用アプリケータであって、
上記搬送路が、金型のプレス方向と平行に延びる搬送前段部と、該搬送前段部と直交する方向に延びて端子帯の端子を上記プレス位置に送る搬送後段部とを有するとともに、
上記金型のうちの可動型又はこれを保持してプレス方向に動く保持部における搬送前段部に対向する部位に、可動型の動きにより直接的に端子帯を送る送り手段が設けられた
端子圧着用アプリケータ。
【請求項3】
前記送り手段が、可動型と同時にプレス方向に動くホルダと、該ホルダに枢着された送り爪部材と、該送り爪部材の先端部が端子帯に係止する方向に付勢する付勢部材とを有する
請求項1または請求項2に記載の端子圧着用アプリケータ。
【請求項4】
前記送り手段が、可動型のプレス動作時に可動型と同じ方向に移動して端子帯を送るべく、可動型に一体的に設けられた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の端子圧着用アプリケータ。
【請求項5】
前記送り手段が、可動型の離型時に可動型と反対方向に移動して端子帯を送るべく、方向反転手段を介して可動型に一体的に設けられた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の端子圧着用アプリケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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