説明

端子圧着装置

【課題】極細電線に端子を圧着した際に、電線圧着部の形状が安定化し、機械的性能及び電気的性能に優れた電線圧着部が得られる端子圧着装置を提供する。
【解決手段】電線の芯線が載置される湾曲した基板部及び当該基板部の両側縁にそれぞれ立ち上げられた一対の圧着片を有する端子金具を支持するアンビルと、前記アンビルとの間で前記端子金具の圧着片を押圧可能に配置され前記アンビルとの対向部に2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部32が形成されたクリンパ19とを備え、前記アンビルと前記クリンパ19とにより前記圧着片を押圧し、前記端子金具に載置された前記芯線に前記圧着片を圧着する端子圧着装置において、前記クリンパ19の前記加締め部32の曲率半径Rが、成形される圧着部の設定幅Wに対して0.25W≦R≦0.27Wである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板部の両側縁にそれぞれ立ち上げられた一対の圧着片(バレル)を有する端子金具を電線の芯線に圧着する端子圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の芯線に端子を圧着する端子圧着装置として、アンビルとクリンパとにより端子の圧着片を押圧して芯線に加締めるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、図8に示すように、端子金具6を保持するアンビル4と、該アンビル4の上方に配置されアンビル4との対向面に一対の加締め部2,2を有するクリンパ3とを備えている。そして、この装置は、アンビル4に支持された端子金具6上に芯線7を載置収容した状態で、クリンパ3を下降させて端子金具6の断面U字状の圧着片6a,6aをアンビル4との間で押圧して、圧着片6a,6aを芯線7に加締めるものである。
【0004】
近年、電子機器の小型化に伴い、芯線の断面積が0.08〜0.13mmのような極細電線が接続される端子金具が提案されている。この種の極細電線は、電線強度の点から、従来、材料として使用されていた軟銅、黄銅よりも硬い銅合金が採用される。しかし、上記従来技術は、このような細くて硬い極細電線を対称にしていないため、上記従来技術により極細電線に端子金具を圧着すると、端子金具の圧着片の食い込みや、電線圧着部の高さや幅にばらつきが生じる恐れがある。そして、この種のばらつきが生じると、圧着形状が不安定になり、固着力や電気性能が低下する恐れがある。また、極細電線の場合は、ばらつきによる接続性能への影響が特に大きい。
【0005】
そこで、極細電線を対象にした端子圧着方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の方法は、端子金具の寸法と出来上がりの寸法(圧着部の高さ及び幅)を、電線のサイズダウンに伴い縮小し、製造することで、最適な範囲を導き出している。そして、高強度の芯線からなる極細電線の場合、その芯線に接触することなく加締めることで、その芯線は圧着しても十分な引っ張り強度が確保されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−373755号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−49117号公報(図3,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術による極細電線の圧着技術では、製造上の端子金具の圧着片の食い込みや、圧着部の高さ(クリンプハイト)及び幅(クリンプワイド)にばらつきが生じた場合、圧着形状が不安定になり、固着力や電気性能が低下する恐れがある。
【0008】
端子金具を極細電線に圧着した場合、端子金具の一方の圧着片の他方への乗り上げ、クリンプハイトが高いことに起因する接触面積の低下、一方の圧着片の底付き、クリンプハイトが低いことに起因する導体強度の低下等を生じてしまう。したがって、端子金具と電線との固着力を低下させ、機械的及び電気的性能の低下を招くという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決することにあり、極細電線に端子を圧着した際に、電線圧着部の形状が安定化し、機械的性能及び電気的性能に優れた電線圧着部が得られる端子圧着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電線の芯線が載置される湾曲した基板部及び当該基板部の両側縁にそれぞれ立ち上げられた一対の圧着片を有する端子金具を支持するアンビルと、前記アンビルとの間で前記端子金具の圧着片を押圧可能に配置され前記アンビルとの対向部に2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部が形成されたクリンパとを備え、前記アンビルと前記クリンパとにより前記圧着片を押圧し、前記端子金具に載置された前記芯線に前記圧着片を圧着する端子圧着装置において、
前記クリンパの前記加締め部の曲率半径Rが、成形される圧着部の設定幅Wに対して
0.25W≦R≦0.27W
であることを特徴とする端子圧着装置。
【0011】
(2) 断面積が0.08〜0.13mmの前記芯線に前記端子金具を圧着することを特徴とする請求項1記載の端子圧着装置。
【0012】
(3) 銅合金製の前記芯線に前記端子金具を圧着することを特徴とする請求項1又は2記載の端子圧着装置。
【0013】
前記(1)の構成によれば、極細電線に圧着片を圧着した際に、電線圧着部の高さや幅が安定化し、電線圧着部の形状が安定化する。本願発明者はクリンパのアーチ形状の加締め部の曲率半径Rと、成形される圧着部の設定幅Wとの関係を種々検討した結果、
0.25W≦R≦0.27W
であることにより、電線圧着部の形状が安定化することが分かった。
【0014】
そして、R≦0.24Wではクリンパのアーチ形状が適正に形成されず、円弧面の境界部が鋭利な縁にならず面となり、押圧型として不良であることが分かった。
【0015】
また、R≧0.28Wでは圧着部において一方の圧着片が他方の圧着片に乗り上げる形状不良となり、機械的性能及び電気的性能の低下した圧着部となることが分かった。
【0016】
なお、成形される圧着部の設定幅Wは、一対の円弧面からなる加締め部の曲率中心どうしを結ぶ線上の開口幅に等しい。
【0017】
前記(1)の構成の端子圧着装置は、特に、断面積が0.08〜0.13mmの芯線に端子金具を圧着する際に有効であり、電線圧着部の形状が安定化する。
【0018】
また、前記(1)の構成の端子圧着装置は、特に、従来使用されていた軟銅や黄銅よりも硬度の高い銅合金製の芯線に端子金具を圧着する際に有効であり、電線圧着部の形状が安定化する。
【0019】
例えば、本発明は、材料として錫(Sn)を成分とする銅合金等の銅合金製の芯線に端子金具を圧着する際に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線圧着部の高さや幅を設定通りに形成することができ、電線圧着部の形状が安定化するので、機械的特性及び電気的特性の低下のないこれらの特性に優れた電線圧着部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態である端子圧着装置の正面図、図2は図1の圧着装置に用いるクリンパとアンビルとの外観斜視図、図3は図1の圧着装置の要部拡大図である。
【0022】
図1、図2に示すように、本発明の第1実施形態である圧着装置10は、フロア上などに設置されるベース11と、駆動源12と、端子金具40と電線50とを圧着接続する圧着用アプリケータ13と、から構成されている。
【0023】
ベース11は、水平方向に沿って略平坦な平坦部14を備えている。圧着用アプリケータ13は、ベース11に載置されて支持されている。
【0024】
駆動源12は、図示しないサーボモータと、駆動力を伝達する駆動軸15と、シャンク16の不図示の円板部に掛止されるフック17と、からなる。サーボモータの回転運動は、ピストン・クランク機構を介して直線運動に変換されて、ラム18を昇降動作させることができるようになっている。駆動源12としては、サーボモータの代わりに、ダイレクトドライブ方式でシャンク16に連結するピストンロッドを備えた油圧シリンダ等を用いてもよい。
【0025】
圧着用アプリケータ13は、クリンパ(端子圧着型)19とアンビル20とを備え、クリンパ19の昇降動作により端子金具40の圧着片41を加締めて電線50を圧着する構造になっている。
【0026】
圧着用アプリケータ13により加締められる端子金具40としては、種々の形態の端子金具が適用可能であり、例えば、箱状の電気接触部を有する雌型の端子金具や、タブ状の電気接触部を有する雄型の端子金具や、双方の電線を繋ぐジョイント用の端子金具などが適用可能である。
【0027】
端子金具40は、導電性板母材を所定形状に打ち抜き加工してから、折り曲げ成形して形成されたものであり、電線50の被覆部51に圧着される被覆圧着部42と、電線50の被覆部51を除去した芯線52が載置される湾曲した基板部43と、基板部43の両側縁にそれぞれ立ち上げられた一対の圧着片41と、角筒状の電気接触部45と、を備えている。
【0028】
端子金具40は、一対の圧着片41が、クリンパ19の昇降動作により内向きに加締められて、電線50の芯線52に圧着されて電気的に接続される。
【0029】
クリンパ19の昇降動作は、サーボモータの回転運動を、ピストン・クランク機構により直線運動に変換し、クリンパ19を保持するラム18を上昇または下降させることにより行われる。ラム18の昇降動作を制御する不図示の制御部では、ラム18の加速、減速、圧着、待避等の制御を行う。
【0030】
圧着用アプリケータ13は、フレーム21と、アンビル20を有するホルダ22と、フレーム21に続くラム18と、ラム18に螺合して昇降動作するラムボルト23と、ラムボルト23が螺合するシャンク16と、端子送りユニット24と、から構成されている。
【0031】
フレーム21は、側方からみてコ字状に形成されており、ホルダ22の取付部25と、上方に延在する支柱部26と、ラム支持部27と、から構成されている。
【0032】
フレーム21は、ベース11の平坦部14に載置されており、不図示のボルトとナット等により締結固定されている。なお、フレーム21をベース11に一体的に固定してもよい。
【0033】
ラム支持部27は、ホルダ22の取付部25から上方に延在する支柱部26の上端部に連結されている。ラム支持部27には、ラム18をガイドする空間が設けられており、ラム18がスライド自在に嵌入できるようになっている
【0034】
ホルダ22には、端子金具40が載置されるアンビル20が埋設されている。ホルダ22は、クリンパ19とラム18の下端面28との双方に対向する平坦面29を備えている。すなわち、平坦面29は、昇降方向と接離方向との双方に対し略直交して形成されている。
【0035】
アンビル20は、ホルダ22に収納保持された状態で、フレーム21の取付部25に装着される。アンビル20は、その底板30をホルダ22の底壁に密着させた状態で保持されており、ぐらつかない状態で端子金具40が載置されるようになっている。
【0036】
アンビル20は、端子金具40の基板部43に当接し、クリンパ19の押圧力を受けた際に、端子金具40の圧着片41を所定の形状に加締めるようになっている。
【0037】
そして、アンビル20は、端子金具40の基板部43に当接する接触面に湾曲面31が形成されている。
【0038】
ラム18は、方体状に形成されている。ラム18は、鉛直方向に沿って昇降自在にラム支持部27に支持されている。また、ラム18は、その長手方向が昇降方向即ち鉛直方向に沿っている。ラム18の下端面28は、前記昇降方向に対し交差する方向に沿って平坦に形成されている。
【0039】
ラム18の下半部に、アンビル20に対して対向するようにクリンパ19が配置されている。クリンパ19は、ラム18がラム支持部27に昇降自在に支持されることによって、アンビル20に対し接離自在になっている。言い換えると、クリンパ19がアンビル20に接離するのと連動して、ラム18が昇降動作するようになっている。
【0040】
クリンパ19は、方形板状をなしており、アンビル20側の内面にアーチ形状の加締部32が形成されている。加締部32は、端子金具41の圧着片41を所定の形状に加締めることができるような湾曲状または円弧状に形成されている。
【0041】
ラムボルト23は、ラム18の上端面33のねじ孔に螺合して取付けられている。ラムボルト23がラム18に取り付けられることで、ラム18は、昇降自在に動作するようになる。
【0042】
シャンク16は、中空の円柱状に形成されている。シャンク16は、一方の側の円板部が駆動源12のフック17に結合され、他方の側のねじ部がラムボルト23のねじ孔に螺合するようになっている。すなわち、シャンク16は、駆動源12の駆動力を、ラムボルト23を介してラム18に伝達して、クリンパ19を昇降動作させる。
【0043】
また、シャンク16は、ラムボルト23のねじ孔に対するねじ込み量が調整されることによって、ラムボルト23との間の相対位置が変更可能にラムボルト23に取付られている。ラムボルト23のねじ孔に対するねじ込み量を調整して、シャンク16のラムボルト23に対する相対位置が変更されると、アンビル20とクリンパ19との間の間隔も変更される。
【0044】
シャンク16には、ねじ溝に螺合するナット34が備わっており、シャンク16がラムボルト23のねじ孔にねじ込まれた際に、ナット34を締結することによって、ラムボルト23とシャンク16とが互いに固定される。
【0045】
端子送りユニット24は、ラム18の側部に備わる不図示のカムと、カムに当接して水平方向に移動する同じく不図示の連接棒と、連接棒を内部に収容するレバー支持部35と、レバー支持部35に嵌入されるクランク状のレバー36と、レバー36を回動自在に支持する枢軸37と、レバー36の先端部に備わる端子送り爪38と、から構成されている。
【0046】
端子送りユニット24は、カムが駆動源12の駆動力によって降下し、その際に連接棒の一側の端部がカムに当接して水平方向に押され、連接棒の他側の端部がレバー36に当接して、枢軸37を回動中心としてレバー36が回動し、そして、不図示の連鎖帯の送り孔に引っかかった端子送り爪38が連鎖帯を一端子毎に端子送り方向に送り出す。
【0047】
図3に示すように、アンビル20の湾曲面31上に端子金具40の基板部43が載置され、基板部43上に電線50の芯線52が載置される。そして、ラム18が降下されることで、アンビル20とクリンパ19とによって、電線50の芯線52を中心にして圧着片41で挟み込み、圧着片41をクリンパ19の加締部32で加締める。
【0048】
クリンパ19は、アンビル20に向かって開口したアーチ形状の加締め部32を有し、上下方向に移動可能に設けられている。アンビル20は、クリンパ19の下方に配置され、クリンパ19の加締め部32内に侵入可能な形状に形成されている。アンビル20の頂部面が圧着面として形成され、この圧着面には、端子金具40が載置される湾曲面31が設けられている。
【0049】
そして、断面U字状の圧着片41の内方に芯線52が収容された端子金具40を湾曲面31に載置し、クリンパ19を下降させて端子金具40を上下方向にプレスすると、圧着片41の両端部はその上端が凹部を形成する壁と摺接して壁に沿って徐々に上方に進みながら内側に押し曲げられてから折り曲げられて、芯線52を包囲するとともに芯線52に喰い込むように圧着し加締められる。
【0050】
クリンパ19の加締め部32は、左右対称な一対の円弧面からなり、円弧面の境界部はアンビル方向に向かって突出している。また、加締め部32の開口端側は、圧着片41を円弧面に案内するための案内面となっている。
【0051】
図4に示すように、加締め部32は曲率半径がRの円弧面と、この円弧面に連続した案内面とからなり、加締め部32の曲率半径Rと、圧着部の設定幅Wが下式の関係になるように形成されている。
0.25W≦R≦0.27W
ここで、成形される圧着部の設定幅Wは、一対の加締め部32,32の曲率中心O,Oどうしを結ぶ線上の開口幅Wに等しい。
【0052】
図5は端子金具40の圧着片41に芯線52を圧着する工程を示したものである。圧着片41に芯線52を圧着する工程を説明すると、図5(a)に示すように、クリンパ19とアンビル20とによって端子金具40の圧着片41が折り曲げられ始め、図5(b)に示すように、圧着片41が更に折り曲げられ先端が下側に向き、図5(c)に示すように、圧着片41が更に折り曲げられ先端どうしが当接し、図5(d)に示すように、圧着片41が更に折り曲げられ先端が芯線52に食い込んで加締められる。
【0053】
クリンパ19の加締め部32の曲率半径Rと圧着部の設定幅Wとが上記の関係に設定されていることにより、図5(b)に示す工程において、圧着片41の先端が下方を向きやすい方向に押圧力が作用する。また、図5(d)に示す工程においては、左右の圧着片41の食い込みが均等になる。この結果、端子金具40の電線圧着部が高さ及び幅を設定通りに形成され、安定した形状になる。
【0054】
特に、芯線52の断面積が0.08〜0.13mmであり、銅合金のような従来の材料より硬い材料からなる極細電線を用いた場合には、電線圧着部の形状が安定化し、機械的性能や電気的性能の低下のない安定した性能の電線圧着部が得られる。
【0055】
図6は加締め部32の曲率半径Rと圧着部の設定幅Wとの関係を段階的に変更して圧着片41に芯線52を圧着した結果の状態を示したものである。ここで使用した芯線52は、材料として錫(Sn)を成分(含有率:0.3%)とする銅合金が用いられ、芯線部の断面積が0.13mmの電線である。なお、芯線部の断面積が0.08mmの電線でも同様の結果となった。
【0056】
図6(a)はR=0.24Wの関係となる加締め部32により芯線52を圧着した結果の状態であり、圧着部の高さが設定より高くなり圧着片41と芯線52の接触面積が設定より小さくなってしまい、更に圧着片41の芯線52への食い込みが不十分となり電線固着力が低下したものとなった。
【0057】
図6(b)はR=0.25Wの関係となる加締め部32により芯線52を圧着した結果の状態であり、電線圧着部が設定通りの高さと幅に形成された。
【0058】
図6(c)はR=0.26Wの関係となる加締め部32により芯線52を圧着した結果の状態であり、電線圧着部が設定通りの高さと幅に形成された。
【0059】
図6(d)はR=0.27Wの関係となる加締め部32により芯線52を圧着した結果の状態であり、電線圧着部が設定通りの高さと幅に形成された。
【0060】
図6(e)はR=0.28Wの関係となる加締め部32により芯線52を圧着した結果の状態であり、左右の圧着片41の食い込みが均等にならず、圧着片41の一方が他方に乗り上げて加締められ、また圧着部の高さが設定よりも低くなり、電線圧着部の機械的強度が低下してしまった。
【0061】
図6の結果及び断面積が0.08mmの極細電線についての結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
以上のことから、0.25W≦R≦0.27Wのアーチ形状の加締め部32を有するクリンパ19を用いると、電線圧着部の高さ及び幅が設定通りに形成され、機械的強度及び電気的特性の低下のない形状の安定化した電線圧着部が得られることが分かる。
【0064】
また、Rが0.24W以下のアーチ形状の加締め部32を有するクリンパ19を用いると、図7に示すように円弧面の境界部が鋭利な縁とならずに狭幅の面となり、アーチ形状が適正に形成されなくなってしまう。この結果、クリンパ19による押圧不良が発生し、電線圧着部における圧着片41と芯線52の接触面積が小さくなるとともに圧着片41への芯線52の食い込みが不十分となって、電線圧着部の電線固着力が低くなることが分かる。
【0065】
また、Rが0.28W以上のアーチ形状の加締め部32を有するクリンパ19を用いると、電線圧着部の高さが設定よりも低くなり、電線圧着部の機械的強度が低下することが分かる。
【0066】
以上のように上記実施形態の端子圧着装置10によれば、電線圧着部の形状を安定させることができ、端子金具40の圧着片41と電線50の芯線52との圧着状態での接触面積及び接触荷重を安定させることができる。
【0067】
すなわち、端子金具40の一方の圧着片41の他方への乗り上げ、クリンプハイトが高いことに起因する接触面積の低下、一方の圧着片41の底付き、クリンプハイトが低いことに起因する芯線52の強度低下等を防止することができる。
したがって、端子金具40の各圧着片41の均等かつ適度な電線50への食い込みを容易に実現することができ、各圧着片41と芯線52との安定した圧着状態を得ることができる。これにより、実際にクリンパを作製することなく、圧着性能を的確に予測したクリンパ設計を可能とすることができ、機械的及び電気的性能の向上、設計・評価工数及びコストの削減を図ることができる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明の目的を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る圧着装置の正面図である。
【図2】図1の圧着装置に用いるクリンパとアンビルとの外観斜視図である。
【図3】図1の圧着装置の要部拡大図である。
【図4】クリンパの要部拡大図である。
【図5】端子に電線を圧着する工程図である。
【図6】形状の異なるクリンパにより形成した圧着部の断面図である。
【図7】クリンパの要部拡大図である。
【図8】従来の圧着装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0070】
3,19 クリンパ
4,20 アンビル
7,50 電線
6,40 端子金具
6a,41 圧着片
52 芯線
32 加締め部
R 加締め部の曲率半径
W 圧着部の設定幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の芯線が載置される湾曲した基板部及び当該基板部の両側縁にそれぞれ立ち上げられた一対の圧着片を有する端子金具を支持するアンビルと、前記アンビルとの間で前記端子金具の圧着片を押圧可能に配置され前記アンビルとの対向部に2つの円弧面からなるアーチ形状の加締め部が形成されたクリンパとを備え、前記アンビルと前記クリンパとにより前記圧着片を押圧し、前記端子金具に載置された前記芯線に前記圧着片を圧着する端子圧着装置において、
前記クリンパの前記加締め部の曲率半径Rが、成形される圧着部の設定幅Wに対して
0.25W≦R≦0.27W
であることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
断面積が0.08〜0.13mmの前記芯線に前記端子金具を圧着することを特徴とする請求項1記載の端子圧着装置。
【請求項3】
銅合金製の前記芯線に前記端子金具を圧着することを特徴とする請求項1又は2記載の端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−177033(P2008−177033A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9136(P2007−9136)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】